JP3824884B2 - 端子ないしはコネクタ用銅合金材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子電気機器部品用銅合金材に関し、特に、電子電気機器部品の小型化に対応し得る端子、コネクタ、スイッチ、リレー等に好適な電子電気機器部品用銅合金材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、端子、コネクタ用材料として銅合金が用いられ、Cu-Zn系合金、耐熱性に優れたCu-Fe系合金、Cu-Sn系合金が多く用いられている。特に、自動車等の用途では安価なCu-Zn系合金が多く使用されているが、近年の自動車用端子、コネクタは小型化傾向が著しく、またエンジンルーム内などの過酷な環境にさらされる場合が多いため、Cu-Zn系合金ではもちろんのこと、Cu-Fe系合金、Cu-Sn系合金でも対応できなくなってきているのが現状である。
このように、使用されている環境の変化に伴い、端子、コネクタ用材料に求められる特性もより厳しくなってきている。このような用途に使用される銅合金には、応力緩和特性、機械的強度、熱伝導性、曲げ加工性、耐熱性、Snメッキの接続信頼性、耐マイグレーション特性など多岐に渡っているが、特に機械的強度や応力緩和特性、熱・電気の伝導性、曲げ加工性が重要な特性である。
これらの厳しい要求特性を満たす銅系材料として、Cu-Ni-Si系合金が注目されており、例えば特開昭61-127842号公報が知られている。しかしながら、このようなCu-Ni-Si系合金でも使用に耐えない状態に陥っている。具体的には部品の小型化、例えば一般的な箱型端子において、挿入されるオス端子のタブ幅が約2mmから約1mmへ小型化されたためバネ部の幅が1mm程度となり、十分な接続強度を得ることが困難になっている。また、小型化に関連してバネ部での接続強度を確保するために、端子の構造にも多くの工夫がなされているが、その結果、材料に要求される曲げ加工性もより厳しくなっており、従来のCu-Ni-Si系合金では曲げ部にクラックが生じる場合も多い。応力緩和特性も同様であり、材料に負荷される応力の増大、使用環境の高温化により従来のCu-Ni-Si系合金では長時間の使用は不可能な状況である。
【0003】
このような状況下、例えば応力緩和特性を改善するためにはMgの添加が有効である。例えば特開平5-59468号公報などにもMgの有効性が示されている。しかしながら、Mgの添加により応力緩和特性は向上するものの、曲げ加工性が劣化し、例えば180°密着曲げ試験でクラックが発生してしまう。自動車コネクタなどに使用する場合には曲げ加工性の改善が不可欠である。
曲げ加工性を改善するための検討もされているが、強度及びバネ性を保ったまま曲げ加工性を改善することはこれまで困難であった。
さらに、熱・電気の伝導性が悪いと、自己の発熱で応力緩和を促進するため、伝導性と応力緩和特性のバランスを考慮する必要がある。これらを満足した銅合金としては、本発明者らによる、特開平11-222641号公報に開示された銅合金が挙げられる。しかし、次に述べるように、メッキを施す際のメッキ適性、及びメッキ後のメッキの劣化防止性(総称してメッキ特性ともいう)についてはさらなる改良の余地があった。
前述の箱型端子等の自動車コネクタに銅系材料を使用する際は信頼性向上のため、材料にCuメッキを下地として施し、さらに表層にSnメッキを施すことが一般的である。メッキ厚さよりも材料表面の凹凸が大きい場合、凸部にメッキされずにメッキがはじいた状態になり、均一なメッキができない。また材料-メッキ界面の面積が増大し、CuとSnの相互拡散が起こりやすくなり、Cu-Sn化合物とボイド(空孔)の生成により、メッキが剥離しやすくなる。このため材料表面はなるべく平滑にする必要がある。
また、携帯端末やパソコン等の電気電子機器用端子、コネクタには下地Niメッキの上にAuメッキを施すのが一般的であるが、このような、表層がAuメッキで、かつ、下地がNiメッキである場合も、材料表面の凹凸により上記のようなメッキ剥離などのメッキの劣化が発生する。
そこで、前記の各特性に加え、上記のようなメッキ特性についても満足することのできる銅合金が求められていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの要求に鑑み、第1に、優れた機械的特性、導電性、応力緩和特性と曲げ加工性、メッキ適性を兼ね備えた電子電気機器部品用銅合金材を提供することを目的とする。第2に、上記性質を有する銅合金材にメッキを施してなる、メッキの劣化防止性に優れる電子電気機器部品用銅合金材を提供することを目的とする。
本発明は、特にメッキ特性(メッキ適性またはメッキ劣化防止性)に優れる、端子、コネクタに好適な、メッキ前またはメッキ後の電子電気機器部品用銅合金材を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の(1)〜(7)により上記課題を解決するものである。
(1)Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、SnまたはSn合金メッキが施され、SnまたはSn合金メッキの厚さが0.1μm〜10μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
(2)Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Ag、Co及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.005〜2.0mass%(但しCrは0.2mass%以下)、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、SnまたはSn合金メッキが施され、SnまたはSn合金メッキの厚さが0.1μm〜10μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
(3)前記端子ないしはコネクタ用銅合金材に、リフロー処理が行われていることを特徴とする(1)または(2)項記載の端子ないしはコネクタ用銅合金材。
(4)前記端子ないしはコネクタ用銅合金材に、下地CuまたはCu合金メッキが施され、さらにその上にSnまたはSn合金メッキが施されていることを特徴とする(1)または(2)項記載の端子ないしはコネクタ用銅合金材。
(5)前記端子ないしはコネクタ用銅合金材に、下地CuまたはCu合金メッキが施され、さらにその上にSnまたはSn合金メッキが施され、かつ、リフロー処理が行われていることを特徴とする(1)または(2)項記載の端子ないしはコネクタ用銅合金材。
(6)Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、下地NiまたはNi合金メッキが施され、さらにその上にAuまたはAu合金メッキが施され、AuまたはAu合金メッキの厚さが0.01μm〜2.0μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
(7)Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Ag、Co及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.005〜2.0mass%(但しCrは0.2mass%以下)、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、下地NiまたはNi合金メッキが施され、さらにその上にAuまたはAu合金メッキが施され、AuまたはAu合金メッキの厚さが0.01μm〜2.0μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
本発明は端子、コネクタ材に好適な合金であるが、機械的特性と導電性、応力緩和特性、曲げ加工性、メッキ特性を要求されるあらゆる電子電気機器部品用材料に適用可能である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の端子ないしはコネクタ用銅合金材は、Cuマトリックス中にNiとSiの化合物を析出させ、適当な機械的特性及び熱・電気導電性を有する銅合金に、Sn、Mg、Znを特定量添加して応力緩和特性と曲げ加工性を改善し、また表面が平滑になるよう表面粗度を規定してSn等によるメッキ性を向上させたものである。本発明者らは、この合金材成分の含有量と表面粗度を子細に規定することで実用的に優れた電子電気機器部品用材料を実現させることができた。
以下に本発明の端子ないしはコネクタ用銅合金材(以下、これに限定した意味で電子電気機器部品用銅合金材ということがある。)に用いられる銅合金材の成分、及び表面粗度の限定理由を説明する。
【0007】
まず、本発明の電子電気機器部品用銅合金材に用いられる銅合金材に含有される各成分について説明する。
CuにNiとSiを添加するとNi-Si化合物を作り、これをCu中に析出させると強度及び導電率が向上することが知られている。
Ni含有量が1.0mass%未満であると析出量が少ないため目標とする強度が得られない。逆にNi含有量が3.0mass%を越えて添加されると鋳造、熱間加工時に強度上昇に寄与しない析出が生じ添加量に見合う強度を得ることができないばかりか、熱間加工性、曲げ加工性にも悪影響を与えることになる。
Si含有量は析出するNiとSiの化合物が主にNi2Si相であると考えられるため、添加Ni量を決定すると最適なSi添加量が決まる。Si含有量が0.2mass%未満であるとNi含有量が少ないときと同様十分な強度を得ることができない。逆にSi含有量が0.7mass%を越えるときもNi含有量が多いときと同様の問題が生じる。
本発明では、Ni含有量を、好ましくは1.7〜3.0mass%、より好ましくは2.0〜2.8mass%、Si含有量を、好ましくは0.4〜0.7mass%、より好ましくは0.45〜0.6mass%となるように調整することが好ましい。
【0008】
Mg、Sn、Znは本発明を構成する重要な添加元素である。これらの元素は相互に関係しあって良好な特性バランスを実現している。
Mgは先述の通り応力緩和特性を大幅に改善するが、曲げ加工性には悪影響を及ぼす。応力緩和特性の観点からは、0.01mass%以上で含有量は多ければ多いほど良い。逆に、0.01mass%未満だと応力緩和特性の改善効果が現れず、0.2mass%を越えて添加すると曲げ加工性を満たさなくなる。
SnはMgと相互に関係しあって、より一層応力緩和特性を向上することができる。Snはりん青銅にも見られるように、応力緩和特性の改善効果を有するものの、その効果はMgほど大きくない。Snが0.05mass%未満であると改善効果は現れず、逆に1.5mass%を越えて添加されると導電性が低下する。
Znは応力緩和特性には寄与しないが、曲げ加工性を改善することができる。Znを0.2〜1.5mass%添加することにより、Mgを最大0.2mass%まで添加しても実用上問題ないレベルの曲げ加工性を達成できる。また、ZnはSnメッキや半田メッキの耐熱剥離性、耐マイグレーション特性も改善し、0.2mass%以上添加することが好ましい。逆に導電性を考慮し、1.5mass%を越えて添加することは好ましくない。本発明では、Mg含有量は、好ましくは0.03〜0.2mass%、より好ましくは0.05〜0.15mass%、Sn含有量は、好ましくは0.05〜1.0mass%、より好ましくは0.1〜0.5mass%、Zn含有量は、好ましくは0.2〜1.0mass%、より好ましくは0.4〜0.6mass%である。
【0009】
Sは熱間加工性を悪化させる元素であり、その含有量を0.005mass%未満に規制することで、熱間加工性を向上させる。特にS含有量を0〜0.002mass%未満にする事が好ましい。
【0010】
前記(2)項に記載の発明は、前記(1)項記載の銅合金材に、さらに、Ag、Co及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させた以外は前記(1)項記載の電子電気機器部品用銅合金材と同様である。これらの合金元素Ag、Co及びCrは、さらなる強度向上に寄与することができる。
これらの合金元素の含有量は合計で0.005〜2.0mass%であり、好ましくは0.005〜0.5mass%である。0.005mass%未満ではその効果が十分に得られず、2.0mass%を越えると、Agはコスト高を招き、CoおよびCrは鋳造時及び熱間加工時に粗大な化合物を晶出(析出)して含有量に見合う強度が得られなくなり、また熱間加工性および曲げ加工性が低下するためである。
Agは、耐熱性を向上させる効果及び結晶粒の粗大化を阻止して曲げ加工性を向上させる効果も有する。しかし、高価なためAgの含有量は0.3mass%以下が好ましい。
CoはNiと同様の作用を果たし、Niよりもその効果が大きい。またCo-Si化合物は析出硬化能が高いため応力緩和特性も改善される。従って、熱・電気伝導性が重視される部材などにはNiの一部をCoで代替するのが有効である。しかし、高価であるためCoの含有量は2.0mass%以下が好ましい。
Crは銅中に微細に析出して強度向上に寄与する。Crは曲げ加工性を低下させるためその含有量は0.2mass%以下であり、好ましくは0.1mass%以下である。
【0011】
なお、基本的な特性を低下させない程度に、例えば総量として0.01〜0.5mass%の含有率で、Fe、Zr、P、Mn、Ti、V、Pb、Bi、Alなどを添加することができる。例えばMnは熱間加工性を改善する効果があり、導電性を劣化させない程度に0.01〜0.5mass%添加することは有効である。
本発明に用いられる銅合金材において、以上の各成分以外の残部は、Cu及び不可避的不純物である。
本発明に用いられる銅合金材は、常法により製造することができ、特に制限するものではないが、鋳塊を熱間圧延し、次いで冷間加工、例えば冷間圧延した後に、再結晶と溶体化させる目的で熱処理を行い、直ちに焼き入れを行うことにより製造することができる。また必要に応じて時効処理を行うこともできる。
【0012】
材料の表面状態を表す指標として表面粗度がある。
本発明において規定されるRaとは、算術平均粗さであり、JIS B 0601に説明されている。Rmaxとは、最大高さであり、JIS B 0601にRyとして説明されているものと同じである。
本発明の電子電気機器部品用銅合金材は、前記組成を有する銅合金材の最終塑性加工後の表面が、本発明に規定する表面粗度RaまたはRmaxを有するようにして製造される。RaまたはRmaxの調整は、例えば、圧延、研磨などにより行うことができる。
実操業においては表面粗度を調整した圧延ロールなどを用いて圧延することにより、銅合金材の表面粗度を調整することができる。
【0013】
本発明の電子電気機器部品用銅合金材にはメッキを施す。メッキは、その方法に特に制限はなく、通常行われる方法により施される。
本発明の電子電気機器部品用銅合金材にSnメッキを施す場合、特にRaあるいはRmaxの値が大きいとはじき(不均一なメッキ)が発生する。また、材料とSnメッキの界面面積が大きくなり、材料のCu原子とメッキのSn原子の拡散が起こりやすくなる。そのため、Cu-Sn化合物とボイド(空孔)が発生しやすくなり、高温で保持した場合、メッキが剥離しやすくなる。
本発明の電子電気機器部品用銅合金材にAuメッキを施す場合、RaあるいはRmaxの値が大きいと、ピンホールが発生して耐食性が劣化する。よってRaは0μmを越え0.1μm未満、あるいはRmaxは0μmを越え2.0μm未満と規定することでメッキ性が向上する。好ましくはRaが0.09μm未満、あるいはRmaxが0.8μm未満であることが好ましい。
本発明の電子電気機器部品用銅合金材の表面にSnまたはSn合金メッキを施すと大気中での変色を防止することができ、好ましい。 SnまたはSn合金メッキを施す場合、 0.1 μ m を越え 10 μ m 以下の厚さで行うものである。メッキ厚さが、0.1μm未満ではその効果が得られず、10μmを越えるとこの効果は飽和するとともにコストが高くなる。Snメッキの下にCuあるいはCu合金をメッキするとメッキはじきを防止でき、さらに好ましい。CuまたはCu合金メッキの厚さは、好ましくは1.0μm以下である。なお、Sn合金として例えばSn-Pb系合金、Sn-Sb-Cu系合金、またCu合金としてCu-Ag系合金、Cu-Cd系合金などを用いることができる。
またリフロー処理を施すことも好ましく、この処理によりウィスカーが発生しなくなり、短絡を防止できる。ここでリフロー処理とは加熱溶融処理を意味し、メッキした材料を加熱し溶融させ、その後冷却しメッキを凝固させることである。
また本発明の電子電気機器部品用銅合金材の表面にAuまたはAu合金メッキを施すとコネクタ等の接続信頼性を向上させることができ、好ましい。 AuまたはAu合金メッキを施す場合、 0.01 μ m を越え 2.0 μ m 未満の厚さで行うものである。挿抜寿命特性向上のためにNiあるいはNi合金メッキをAuメッキの下に施しても良い。NiまたはNi合金メッキの厚さは2.0μm以下が好ましい。なお、Au合金として例えばAu-Cu系合金、Au-Cu-Ag系合金、またNi合金としてNi-Cu系合金、Ni-Fe系合金などを用いることができる。
【0014】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
高周波溶解炉にて、表1に記す組成の合金を溶解し、サイズ30mm×100mm×150mmに鋳造した。次にこれらの鋳塊を900℃まで昇温し、1時間保持後に熱間圧延によって30mmを12mmまで加工後、速やかに冷却を行った。表面の酸化皮膜を除去するために厚さ9mmまで両面面削し、冷間圧延により厚さ0.27mmに加工した。この後、供試材を再結晶と溶体化させる目的で、750〜850℃で30sの熱処理を行い、直ちに15℃/s以上の冷却速度で焼き入れを行った。次に圧下率5%の冷間圧延を行い、時効処理を施した。時効処理条件は不活性雰囲気中で515℃×2時間である。時効後、最終塑性加工である冷間圧延を行い、最終的な板厚を0.25mmにそろえた。最終塑性加工後、バネ性を改善する目的で350℃×2時間の焼鈍を施した。得られた銅合金材の表面を耐水ペーパーにて研磨し、表2に示した表面粗度に仕上げた。ここで、表面粗度Ra及びRmaxは、圧延方向に対して直角方向に長さ4mmの間をそれぞれRaとRmaxについて測定し、任意の部位を5回測定し、その平均値を用いた。このようにして得られた電子電気機器部品用銅合金材の試料について各種特性評価を行った。
【0015】
引っ張り強さと伸びはJISZ2241に準じ、導電率はJISH0505に準じて測定し、結果を表2に併記した。
曲げ加工性の評価は、内側曲げ半径が0mmの180°曲げを行った。評価の指標はクラックの有無による二段階評価とした。
応力緩和特性の評価は、日本電子材料工業会標準規格であるEMAS-3003に準拠して行った。ここで、特開平11-222641号公報の段落[0038]に記載の片持ちブロック式を採用し、表面最大応力が450MPaとなるよう負荷応力を設定し、150℃恒温槽で試験を行った。表2には1000時間試験後の緩和率(S.R.R)で示した。なお、S.R.Rは23%以上を好ましくないものとした。
【0016】
また、上記各試験で用いた試料とは別に、以下のように、Sn又はAuのメッキを施した試料を作製し、メッキ特性を試験した。
Snメッキは、前記試料上に、下地Cuメッキを厚さ0.2μm、さらにSnメッキを厚さ1.0μmとして施した。また、Auメッキは、前記試料上に、下地Niメッキを厚さ1.0μm、さらにAuメッキを厚さ0.2μmとして施した。
メッキはじき試験は、このようにして得られたSnメッキされた試料の外観を、目視により判断することにより行った。
メッキ剥離試験は、Snメッキされた試料について、150℃×1000時間の大気圧下加熱後に180°曲げ加工を行い、メッキの剥離の有無(耐熱剥離性)を目視にて確認することにより行った。
耐食性試験は、Auメッキされた試料に対して、温度35℃、5%NaCl水溶液雰囲気中で96時間まで塩水噴霧試験を行い、腐食生成物の発生有無について目視にて判断することにより行った。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
表1及び2より明らかなように、比較例の各試料は、本発明の試料に比べ、各特性の少なくとも1つが劣っている。具体的には、比較例のNo.151はNi及びSi含有量が少なかったため所定の強度が得られなかった。No.152、153はMg含有量が少ないため応力緩和特性に劣った。No.154はMg含有量が多いため曲げ加工性が劣った。No.155はSn含有量が少ないため応力緩和特性が劣った。No.156はSn含有量が多いため導電率が低下した。No.157はZn含有量が少ないためスズメッキ層の密着性が低下し、No.158はCr含有量が多いため曲げ加工性が低下した。No.159はS含有量が多いため熱間加工中に割れが発生し製造を中止した。No.160はZn含有量が多いため導電率が低下した。No.161はNi含有量が多いため曲げ加工性が劣った。No.162はSi含有量が多いため導電率が低下し、曲げ加工性が劣った。No.163はNi及びSi含有量がともに多いため熱間加工中に割れが発生し製造を中止した。No.164及びNo.165はRa及びRmaxの値が大きいためSnメッキ耐熱剥離性が劣り、Snメッキはじきが発生した。またAuメッキの耐食性が劣った。
これに対し、本発明例(試料No.101〜No.124)は、比較例に比べ、引張強さ、伸び、導電率、曲げ加工性、応力緩和特性及びメッキ特性のいずれも優れた特性を示していることがわかる。
【0020】
【発明の効果】
本発明の電子電気機器部品用銅合金材は、機械的特性(引張強さ、伸び)や導電性、応力緩和特性、曲げ加工性、メッキ適性(メッキはじき防止性)に優れるものである。
また、上記性質を有する銅合金材にメッキを施してなる本発明の電子電気機器部品用銅合金材は、メッキの劣化防止性(メッキ剥離防止性、メッキの耐食性)に優れるものである。
したがって、本発明は、近年の電子電気機器の小型、高性能化に対する要求に好適に対応できる。また従来のものよりメッキ特性が改善されたので、端子、コネクタ用に好適なものであるが、その他スイッチ、リレー材等、一般電子電気機器用導電材料としても好適である。
Claims (7)
- Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、SnまたはSn合金メッキが施され、SnまたはSn合金メッキの厚さが0.1μm〜10μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
- Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Ag、Co及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.005〜2.0mass%(但しCrは0.2mass%以下)、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、SnまたはSn合金メッキが施され、SnまたはSn合金メッキの厚さが0.1μm〜10μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
- 前記端子ないしはコネクタ用銅合金材に、リフロー処理が行われていることを特徴とする請求項1または2記載の端子ないしはコネクタ用銅合金材。
- 前記端子ないしはコネクタ用銅合金材に、下地CuまたはCu合金メッキが施され、さらにその上にSnまたはSn合金メッキが施されていることを特徴とする請求項1または2記載の端子ないしはコネクタ用銅合金材。
- 前記端子ないしはコネクタ用銅合金材に、下地CuまたはCu合金メッキが施され、さらにその上にSnまたはSn合金メッキが施され、かつ、リフロー処理が行われていることを特徴とする請求項1または2記載の端子ないしはコネクタ用銅合金材。
- Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、下地NiまたはNi合金メッキが施され、さらにその上にAuまたはAu合金メッキが施され、AuまたはAu合金メッキの厚さが0.01μm〜2.0μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
- Niを1.0〜3.0mass%、Siを0.2〜0.7mass%、Mgを0.01〜0.2mass%、Snを0.05〜1.5mass%、Znを0.2〜1.5mass%、Ag、Co及びCrからなる群から選ばれる少なくとも1種を総量で0.005〜2.0mass%(但しCrは0.2mass%以下)、Sを0.005mass%未満(零を含む)含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金材であって、最終塑性加工後の、表面粗度Raが0μmを越え0.1μm未満であるか、または表面粗度Rmaxが0μmを越え2.0μm未満であり、下地NiまたはNi合金メッキが施され、さらにその上にAuまたはAu合金メッキが施され、AuまたはAu合金メッキの厚さが0.01μm〜2.0μmであることを特徴とする端子ないしはコネクタ用銅合金材。
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