JP2016014165A - 銅合金材、銅合金材の製造方法、リードフレームおよびコネクタ - Google Patents

銅合金材、銅合金材の製造方法、リードフレームおよびコネクタ Download PDF

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佳紀 山本
聡至 関
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聡至 関
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Abstract

【課題】導電性、強度、および耐応力緩和性をバランスよく向上させた銅合金材、銅合金材の製造方法、リードフレームおよびコネクタを提供する。【解決手段】銅合金材は、0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、銅合金材、銅合金材の製造方法、リードフレームおよびコネクタに関する。
リードフレームや、端子またはコネクタなどには、銅合金材が用いられている。このような銅合金材には、高導電性および高強度が求められている。なかでも、高導電性および高強度を有する銅合金材として、Cu−Fe−Ni−P系の銅合金材が開発されている(例えば特許文献1および2参照)。
特許第2956696号 特開2012−1781号公報
近年では、これまでよりもさらに高導電性および高強度を兼ね備えた銅合金材が求められている。さらに、高導電性および高強度を有することに加え、高温環境下でも充分な信頼性が確保されるように、これまでよりも高い耐応力緩和性を有する銅合金材が強く望まれている。
本発明の目的は、導電性、強度、および耐応力緩和性をバランスよく向上させた銅合金材、銅合金材の製造方法、リードフレームおよびコネクタを提供することである。
本発明の一態様によれば、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、
導電率が70%IACS以上であり、
0.2%耐力が500MPa以上であり、
150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である
銅合金材が提供される。
本発明の他の態様によれば、
鋳塊を鋳造する鋳造工程と、
前記鋳塊に熱間圧延を行い、熱間圧延材を形成する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延材に冷間圧延を行い、第1冷間圧延材を形成する第1冷間圧延工程と、
前記第1冷間圧延材に熱処理を行い、熱処理材を形成する熱処理工程と、
前記熱処理材に冷間圧延を行い、第2冷間圧延材を形成する第2冷間圧延工程と、
を有し、
前記鋳造工程では、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%0.2質量%のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる前記鋳塊を鋳造し、
前記第2冷間圧延工程では、
50%以上80%以下の総加工度で前記冷間圧延を行う
銅合金材の製造方法が提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である基材を有する
リードフレームが提供される。
本発明の更に他の態様によれば、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である導体部を有する
コネクタが提供される。
本発明によれば、導電性、強度、および耐応力緩和性をバランスよく向上させた銅合金材、銅合金材の製造方法、リードフレームおよびコネクタを提供することができる。
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について概略を説明する。
発明者等の鋭意検討により、銅合金材の耐応力緩和性に関して、以下のような知見が見出された。応力緩和とは、銅合金材に(例えば高温で)一定歪みが印加された状態において、時間の経過とともに弾性歪みが塑性歪みに変化し、応力が減少していく現象のことである。このような応力緩和は、原子レベルでは、原子の拡散と転位の移動との両方によって進行する。原子の拡散は、原子が空孔を媒介としてジャンプして移動することにより進行する。銅合金材の耐応力緩和性を向上させるためには、このような原子の拡散や転位の移動を抑制することが必要となる。
また、銅合金材の導電性および強度に関して、以下のような知見が見出された。Cu−Fe−Ni−P系の銅合金では、鉄(Fe)またはニッケル(Ni)の含有量を増加させると、Feおよびリン(P)の化合物(以下、Fe−P化合物)、またはNiおよびPの化合物(以下、Ni−P化合物)が分散析出することにより、銅合金材の強度が向上する。その一方で、FeまたはNiの含有量を増加させると、Fe−P化合物またはNi−P化合物を生成することなく銅合金材中に固溶するFeまたはNiが増加することによって、銅合金材の導電性が低下してしまう可能性がある。反対に、FeまたはNiの含有量を減少させると、銅合金材の導電性が向上する一方で、銅合金材の強度が低下してしまう可能性がある。このように、Cu−Fe−Ni−P系の銅合金材の導電性と強度とはトレードオフの関係にある。
本発明は、本発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
<本発明の一実施形態>
次に、本発明の一実施形態にかかる銅合金材の構成について説明する。
(1)銅合金材の構成
本実施形態にかかる銅合金材は、所定量のFe、Ni、Pおよびマグネシウム(Mg)を含有し、錫(Sn)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、およびチタン(Ti)から選択した1種以上の元素を所定量含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる。また、本実施形態にかかる銅合金材の導電率は70%IACS以上であり、銅合金材の0.2%耐力は500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である。以下、詳細を説明する。
本実施形態の銅合金材は、例えば、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を含有する。これらの元素は、銅合金材の耐応力緩和性を向上させ、車載向けの電気部品に要求されるような高い耐応力緩和性を実現させる効果を有する。また、これらの元素は、銅合金材の強度を向上させる効果も併せ持つ。
Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiは、原子半径が母相となるCuの原子半径とほぼ同等か、或いはCuの原子半径よりも大きいという共通の特徴を有する。以下、Cuの原子半径とほぼ同等か、またはCuの原子半径よりも大きい元素を「原子半径の大きい元素」と略称する。
ここで、原子半径の大きい元素は、銅合金材の結晶中に取り込まれると、銅合金材の結晶の格子歪みを生じさせる。しかしながら、原子半径の大きい元素は、その格子歪みを軽減するように、銅合金材の結晶中の空孔と結びつく傾向がある。空孔が原子半径の大きな元素と結びつくことにより、空孔の容積は小さくなる。例えば銅合金材が高温環境下で使用され、母相のCu原子が移動しようとしたときであっても、母相のCu原子は、容積が小さくなった空孔に入り込み難くなるため、当該空孔を介して移動し難くなる。このようにして、原子の拡散を抑制することができる。
また、銅合金材中に取り込まれた原子半径の大きい元素は、銅合金材の結晶の格子歪みを軽減するように、銅合金材中の転位の周辺に偏析する。この状態は、コットレル雰囲気と呼ばれる。コットレル雰囲気は、エネルギー的に安定となる。例えば銅合金材が高温環境下で使用され、転位が移動しようとしたときであっても、転位はコットレル雰囲気の状態を維持したまま移動しなければならないため、転位は移動し難くなる。このようにして、転位の移動を抑制することができる。
本実施形態では、銅合金材が原子半径の大きい元素としてSn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を含有することにより、これらの元素が上記作用によって原子の拡散および転位の移動を抑制する。これにより、耐応力緩和性を向上させることができる。
Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の含有量は、例えば、合計で0.001質量%以上0.05質量%以下である。Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量が0.001質量%未満である場合、これらの元素が空孔と結びつく量が少なくなり、またはこれらの元素が転位の周辺に偏析する量が少なくなる可能性がある。このため、銅合金材の耐応力緩和性を向上させることができない可能性がある。これに対して、本実施形態では、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量が0.001質量%以上であることにより、原子半径の大きいこれらの元素による銅合金材の耐応力緩和性を向上させる効果を発現させることができる。具体的には、後述するように150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率を30%以下とすることができる。また、原子半径の大きいこれらの元素による銅合金材の強度を向上させる効果も発現させることができる。さらに、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましい。これにより、原子半径の大きいこれらの元素による銅合金材の耐応力緩和性および強度を向上させる効果をより確実に発現させることができる。一方、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量が0.05質量%を超える場合、これらの元素が銅合金材中に多く固溶することによって、これらの元素による銅合金材の導電性を低下させる影響が無視できなくなる可能性がある。このため、銅合金材の高導電性を維持することが困難となる可能性がある。これに対して、本実施形態では、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量が0.05質量%以下であることにより、これらの元素による銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制することができる。さらに、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量は、0.04質量%以下であることが好ましい。これにより、これらの元素による銅合金材の導電性を低下させる影響をさらに抑制することができる。
本実施形態の銅合金材は、Mgをさらに含有する。Mgは、銅合金材中に固溶することにより、銅合金材の導電性の低下を抑制しつつ、銅合金材の強度を向上させる効果を示す。銅合金材中にMgを後述するFe、NiおよびPとともに添加することにより、高導電性を維持しつつ、銅合金材の強度を向上させることができる。
また、Mgの原子半径も、Cuの原子半径よりも大きいため、Mgは、銅合金材の耐応力緩和性を向上させる効果を有する。しかしながら、上記したSn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を添加することなく、Mgのみを添加した場合では、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率を所望の値(30%)以下とすることができない場合がある。そこで、本実施形態では、銅合金材に、Mgとともに、所定量のSn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を添加する。これにより、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率を所望の値(30%)以下とすることができる。
本実施形態の銅合金材中のMgの含有量は、例えば、0.01質量%以上0.2質量%以下である。Mgの含有量が0.01質量%未満である場合、Mgが不可避不純物としての酸素(O)や硫黄(S)と結合してしまうことによって、一定量のMgを銅合金材中に固溶させることができない可能性がある。なお、MgOやMgS等は、銅合金材の強度を向上させる効果を有しない。このため、銅合金材の強度を向上させることができない可能性がある。また、Mgによる銅合金材の耐応力緩和性を向上させる効果を充分に得ることができない可能性がある。これに対して、本実施形態では、Mgの含有量が0.01質量%以上であることにより、Mgの一部が不可避不純物としてのOやSと結合しても、一定量のMgを銅合金材中に固溶させることができる。これにより、銅合金材の強度を向上させることができる。例えば、銅合金材の0.2%耐力を500MPa以上とすることができる。また、Mgの含有量が上記値以上であることにより、Mgによる銅合金材の耐応力緩和性を向上させる効果を発現させることができる。さらに、Mgの含有量は、0.03質量%以上であることが好ましい。これにより、銅合金材の強度および耐応力緩和性をさらに向上させることができる。一方、Mgは導電性を低下させる影響が少ない成分であるが、Mgの含有量が0.2質量%を超える場合、Mgが銅合金材中に多く固溶することによって、Mgによる銅合金材の導電性を低下させる影響が無視できなくなる可能性がある。このため、銅合金材の高導電性を維持することが困難となる可能性がある。これに対して、本実施形態では、Mgの含有量が0.2質量%以下であることにより、Mgによる銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制し、銅合金材の高導電性を維持させることができる。さらに、Mgの含有量は、0.1質量%以下であることが好ましい。これにより、Mgによる銅合金材の導電性を低下させる影響をさらに抑制することができる。
本実施形態にかかる銅合金材では、Fe、NiおよびPが含有されることにより、Fe−P化合物の分散析出だけでなく、Ni−P化合物の分散析出も合わせて起こる。本実施形態における銅合金中に生成されるFe−P化合物は、例えばFeP等であり、Ni−P化合物は、例えばNi、NiP等である。このようなP化合物が分散析出することにより、銅合金材の強度が向上する。
ここで、本実施形態では、Feよりも導電率を低下させる影響が大きいNiの含有量が、例えば、特許文献1に記載の範囲(0.1質量%以上0.5質量%以下)よりも少ない。これにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制し、(Niの含有量が減少する分だけ銅合金材が純銅に近づくことにより)銅合金材の導電性を向上させることができる。一方で、銅合金材中のNi−P化合物の析出量が少なくなるため、Ni−P化合物による銅合金材の強度を向上させる効果が減少する。そこで、本実施形態では、上述のように銅合金材に所定量のMgが添加されることにより、Niの含有量を特許文献1に記載の範囲よりも減少させた場合であっても、銅合金材の高導電性を維持しつつ、銅合金材の強度を向上させることができる。
具体的には、本実施形態の銅合金材中のNiの含有量は、例えば、0.02質量%以上0.06質量%以下である。
Niの含有量が0.02質量%未満である場合、銅合金材中のNi−P化合物の析出量が少なくなる。このため、銅合金材の所望の強度が得られなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態では、Niの含有量が0.02質量%以上である。Niの含有量が0.02質量%以上であれば、一定量のNi−P化合物が銅合金材中に生成されることにより、Ni−P化合物による銅合金材の強度を向上させる効果を発現させることができる。さらに、Niの含有量は、0.03質量%以上であることが好ましい。これにより、Ni−P化合物による銅合金材の強度を向上させる効果をより確実に発現させることができる。
一方、Niの含有量が0.06質量%を超える場合、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響が無視できなくなる可能性がある。このため、銅合金材の導電率が所望の値(例えば70%IACS)よりも低下してしまう可能性がある。これに対して、本実施形態では、Niの含有量が0.06質量%以下であることにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制し、銅合金材の導電性を向上させることができる。例えば、銅合金材の導電率を70%IACS以上とすることができる。さらに、Niの含有量は、0.05質量%以下であることが好ましい。これにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響をさらに抑制することができる。
また、本実施形態の銅合金材中のFeの含有量は、例えば、0.2質量%以上0.6質量%以下である。Feの含有量が0.2質量%未満である場合、銅合金材中のFe−P化合物の析出量が少なくなる。このため、銅合金材の所望の強度が得られなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態ではFeの含有量が0.2質量%以上であることにより、一定量のFe−P化合物が銅合金材中に生成される。したがって、銅合金材の強度を向上させることができる。さらに、Feの含有量は、0.3質量%以上であることが好ましい。これにより、銅合金材の強度をさらに向上させることができる。一方、Feの含有量が0.6質量%を超える場合、Fe−P化合物が生成されることなく銅合金材中に固溶するFeが増加することによって、銅合金材の導電性が低下する可能性がある。このため、銅合金材の所望の導電性が得られなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態ではFeの含有量が0.6質量%以下であることにより、銅合金材中にFeが固溶することを抑制することができる。結果として、銅合金材の導電性が低下することを抑制することができる。さらに、Feの含有量は、0.5質量%以下であることが好ましい。これにより、銅合金材の導電性が低下することをさらに抑制することができる。
また、本実施形態の銅合金材中のPの含有量は、例えば、0.07質量%以上0.3質量%以下である。Pの含有量が0.07質量%未満である場合、Fe−P化合物およびNi−P化合物の析出量が少なくなる。このため、銅合金材の所望の強度が得られなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態ではPの含有量が0.07質量%以上であることにより、一定量のFe−P化合物とNi−P化合物とが銅合金材中に生成される。したがって、銅合金材の強度を向上させることができる。さらに、Pの含有量は、0.1%質量%以上であることが好ましい。これにより、銅合金材の強度をさらに向上させることができる。一方、Pの含有量が0.3質量%を超える場合、Fe−P化合物またはNi−P化合物の生成に寄与することなく、銅合金材中に固溶するPが増加することによって、銅合金材の導電性が低下する可能性がある。このため、銅合金材の所望の導電性が得られなくなる可能性がある。また、Pの含有量が0.3質量%を超える場合、後述する鋳造工程や熱間圧延工程などにおいてFe−P化合物やNi−P化合物などのPの化合物が偏析することによって銅合金材が割れてしまう可能性がある。したがって、銅合金材の加工性が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態ではPの含有量が0.3質量%以下であることにより、銅合金材中にPが固溶することを抑制することができる。結果として、銅合金材の導電性が低下することを抑制することができる。また、銅合金材の加工性が低下することを抑制することができる。さらに、Pの含有量は、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、銅合金材の導電性が低下することをさらに抑制することができ、また加工性が低下することをさらに抑制することができる。
また、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)は、例えば、5以上10以下である。質量比Fe/Niが5未満である場合、Niの含有量が相対的に多くなることによって、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響が無視できなくなる可能性がある。このため、銅合金材の高い導電性を維持することができない可能性がある。これに対して、本実施形態では、質量比Fe/Niが5以上であることにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制することができる。さらに、質量比Fe/Niが7以上であることが好ましい。これにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響をさらに抑制することができる。一方、質量比Fe/Niが10を超える場合、Niの含有量が相対的に少なくなるため、銅合金材中のNi−P化合物の析出量が少なくなる可能性がある。Ni−P化合物による強度向上の効果はFe−P化合物による強度向上の効果よりも大きいため、Ni−P化合物の析出量が少ないことによって、銅合金材の強度を充分に向上させることができない可能性がある。これに対して、本実施形態では質量比Fe/Niが10以下であることにより、一定量のNi−P化合物が銅合金材中に生成されることにより、銅合金材の強度を向上させることができる。
さらに、本実施形態の銅合金材は、亜鉛(Zn)を含有しても良い。これにより、後述するように例えばリードフレームの基材等に本実施形態の銅合金材を適用した場合に、Znが銅合金材中に固溶することにより、銅合金材のはんだ付け性を改善することができ、銅合金材とはんだ層とが剥離することを抑制することができる。このようなはんだ付けに対する信頼性は、リードフレーム等にとって重要な特性の一つである。
また、Znの原子半径も、Cuの原子半径よりも大きいため、Znは、耐応力緩和性を向上させる効果を有する。しかしながら、上記したSn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を添加することなく、MgおよびZnのみを添加した場合では、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率を所望の値(30%)以下とすることができない場合がある。そこで、本実施形態では、銅合金材に、MgおよびZnとともに、所定量のSn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を添加する。これにより、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率を所望の値(30%)以下とすることができる。
銅合金材がZnを含有する場合、銅合金材中のZnの含有量は、例えば、0.001質量%以上0.005質量%以下である。Znの含有量が0.001質量%未満である場合、Znが不可避不純物としてのOやSと結合してしまうことによって、一定量のZnを銅合金材中に固溶させることができない可能性がある。なお、ZnOやZnS等は、はんだ付け性を向上させる効果を有しない。このため、はんだ付け性を向上させる効果が発現しない可能性がある。また、Znによる耐応力緩和性を向上させる効果を充分に得ることができない可能性がある。これに対して、本実施形態では、Znの含有量が0.001質量%以上であることにより、Znの一部が不可避不純物としてのOやSと結合しても、一定量のZnを銅合金材中に固溶させることができる。これにより、はんだ付け性の向上効果を発現させることができる。なお、発明者等の鋭意検討により、Znの含有量が0.001質量%以上であれば、はんだ付け性向上の一定の効果が得られることが確認されている。また、Znの含有量が上記値以上であることにより、Znによる銅合金材の耐応力緩和性を向上させる効果を発現させることができる。一方、先行技術では、Znの含有量が0.005質量%を超える場合が多く見られる。しかしながら、Znの含有量が0.005質量%を超える場合、Znが銅合金材中に多く固溶することによって、Znによる銅合金材の導電性を低下させる影響が無視できなくなる可能性がある。これに対して、本実施形態では、Znの含有量が0.005質量%以下であることにより、銅合金材の導電性を低下させることなく、はんだ付け性を向上させることができる。
(2)銅合金材を用いたリードフレームまたはコネクタ
上記した銅合金材は、例えば以下の製品に用いられる。
(リードフレーム)
本実施形態に係るリードフレームは、例えば、半導体素子が載置されるダイパッドと、半導体素子に電気的に接続されるリードと、を有する基材(基板)を有する。リードフレームの基材は、例えば、本実施形態の銅合金材を打ち抜き加工することにより形成される。すなわち、基材は、0.2質量%以上0.6質量%以下のFeと、0.02質量%以上0.06質量%以下のNiと、0.07質量%以上0.3質量%以下のPと、0.01質量%以上0.2質量%以下のMgと、を含有し、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなり、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)が5以上10以下である。これにより、リードフレームの基材は、高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性を有する。例えば、基材の導電率は70%IACS以上であり、基材の0.2%耐力は500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の基材の応力緩和率が30%以下である。
さらに、リードフレームの基材は、0.001質量%以上0.005質量%以下のZnを含有することが好ましい。これにより、上述のように、リードフレームの導電性を低下させることなく、リードフレームへのはんだ付け性を向上させることができる。
(コネクタ(端子))
本実施形態に係るコネクタ(端子)は、例えば、電子機器側(相手側)のコネクタ(端子)に電気的に接続される導体部と、導体部が収容されるハウジング(収容部)と、を有する。コネクタの導体部は、例えば、本実施形態の銅合金材により形成される。すなわち、導体部は、0.2質量%以上0.6質量%以下のFeと、0.02質量%以上0.06質量%以下のNiと、0.07質量%以上0.3質量%以下のPと、0.01質量%以上0.2質量%以下のMgと、を含有し、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなり、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)が5以上10以下である。これにより、コネクタの導体部は、高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性を有する。例えば、導体部の導電率は70%IACS以上であり、導体部の0.2%耐力は500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の導体部の応力緩和率が30%以下である。
さらに、コネクタの導電部は、0.001質量%以上0.005質量%以下のZnを含有することが好ましい。これにより、上述のように、コネクタの導電部の導電性を低下させることなく、コネクタの導電部へのはんだ付け性を向上させることができる。
(3)銅合金材の製造方法
次に、本実施形態にかかる銅合金材の製造方法について説明する。
(鋳造工程)
まず、母材である無酸素銅を例えば高周波溶解炉等を用いて窒素雰囲気下で溶解して銅の溶湯を生成する。次に、Feと、Niと、Pと、Mgと、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素と、を添加し、銅合金の溶湯を生成する。このとき、例えば、Feの含有量を0.2質量%以上0.6質量%以下とし、Niの含有量を0.02質量%以上0.06質量%以下とし、Pの含有量を0.07質量%以上0.3質量%以下とし、Mgの含有量を0.01質量%以上0.2質量%以下とし、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素の合計の含有量を0.001質量%以上0.05質量%以下とし、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)を5以上10以下とする。なお、このときの銅合金の溶湯には、0.001質量%以上0.005質量%以下のZnをさらに含有させても良い。次に、この銅合金の溶湯を鋳型に注いで冷却し、所定の組成を有する鋳塊を鋳造する。
(熱間圧延工程)
上記した鋳塊を所定温度に加熱して、当該鋳塊に熱間圧延を行い、所定厚さの熱間圧延材を形成する。なお、ここでいう熱間圧延材とは、熱間圧延工程が行われた銅合金の板材のことである。このとき、熱間圧延の温度を例えば900℃以上1000℃以下とする。また、鋳塊に対する総加工度を例えば90%以上95%以下とする。
(第1冷間圧延工程)
次に、熱間圧延材に冷間圧延を行い、所定厚さの第1冷間圧延材を形成する。本実施形態では、例えば、熱間圧延材に対する冷間圧延と、被圧延材に対する焼鈍と、を所定回数交互に繰り返す。なお、ここでいう第1冷間圧延材とは、第1冷間圧延工程の全体の工程(所定回数の冷間圧延および焼鈍)が行われた銅合金の板材のことであり、被圧延材とは、第1冷間圧延工程のうちの1回の冷間圧延が行われた銅合金の板材のことである。第1冷間圧延工程の最後には、焼鈍ではなく、冷間圧延が行われるようにする。
第1冷間圧延工程では、被圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度で焼鈍を行う。具体的には、焼鈍の温度は、例えば、300℃以上600℃以下である。焼鈍時間は、例えば、30秒間以上5分間以下である。これにより、被圧延材に再結晶を生じさせずに、冷間圧延の加工性を回復させることができる。したがって、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することを抑制することができる。
また、第1冷間圧延工程において、最後の焼鈍後に行われる最後の冷間圧延を、例えば15%以上60以下の加工度で行う。なお、冷間圧延における加工度とは、「加工度(%)={1−(冷間圧延後の板厚/冷間圧延前の板厚)}×100」で定義される。最後の冷間圧延の加工度が15%未満である場合、被圧延材中に格子欠陥が導入され難い可能性がある。被圧延材に格子欠陥が導入されないと、P化合物(Fe−P化合物またはNi−P化合物)が析出され難くなる可能性がある。このため、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することがある。これに対して、本実施形態では、最後の冷間圧延の加工度が15%以上であることにより、被圧延材中に格子欠陥を導入することができる。なお、最後の冷間圧延前の冷間圧延によっても被圧延材中に格子欠陥が導入されるが、最後の冷間圧延前の冷間圧延によって被圧延材中に導入された格子欠陥は焼鈍で一部回復する可能性があるため、最後の冷間圧延の加工度を15%以上とすることによって被圧延材中に所定量の格子欠陥を残存させることができる。これにより、後工程の熱処理工程において、格子欠陥を核とするP化合物(Fe−P化合物またはNi−P化合物)の析出物が生成されることを促すことができる。したがって、最終的に製造される銅合金材の強度を向上させることができる。一方で、最後の冷間圧延の加工度が60%超である場合、当該冷間圧延によって被圧延材内部に過剰の歪みが蓄積される可能性がある。その結果、後工程の熱処理工程(時効工程)において被圧延材(第1冷間圧延材)に再結晶が生じやすくなり、より低温の熱処理でも被圧延材(第1冷間圧延材)に再結晶が生じてしまう可能性がある。被圧延材(第1冷間圧延材)に再結晶が生じると、最終的に製造される銅合金材の強度が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では、最後の冷間圧延の加工度が60%以下であることにより、後工程の熱処理工程(時効工程)において被圧延材(第1冷間圧延材)に再結晶が生じることを抑制し、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することを抑制することができる。
また、第1冷間圧延工程では、第1冷間圧延材の総加工度が所定値となるように、冷間圧延および焼鈍が繰り返される。冷間圧延および焼鈍の繰り返し回数は、例えば1回以上3回以下である。なお、上述のように第1冷間圧延工程の最後には、焼鈍ではなく、冷間圧延が行われるようにする。
(熱処理工程(時効工程))
次に、第1冷間圧延材に対して所定温度で熱処理(時効処理)を行い、熱処理材を形成する。なお、ここでいう熱処理材とは、熱処理工程が行われた銅合金の板材のことである。
熱処理工程では、第1冷間圧延材を、例えば380℃以上の温度であって、第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度(生じ始める温度)よりも低い温度で加熱する。熱処理工程の温度が380℃未満である場合、Fe−P化合物またはNi−P化合物を充分に分散析出させることができず、FeまたはNiが熱処理材中に固溶する量が増加する可能性がある。このため、最終的に製造される銅合金材の導電性が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では、熱処理工程の温度が380℃以上であることにより、FeまたはNiが熱処理材中に固溶することを抑制し、Fe−P化合物またはNi−P化合物を充分に分散析出させることができる。これにより、最終的に製造される銅合金材の導電性が低下することを抑制するとともに、当該銅合金材の強度を向上させることができる。一方、熱処理工程の温度が第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度以上である場合、熱処理工程の対象である第1冷間圧延材に再結晶が生じてしまう。このため、最終的に製造される銅合金材の強度が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では、熱処理工程の温度が第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度よりも低いことにより、熱処理工程の対象である第1冷間圧延材に再結晶が生じることを抑制することができる。これにより、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することを抑制することができる。
具体的には、熱処理工程では、第1冷間圧延材を例えば450℃以下の温度で加熱することが好ましい。これにより、熱処理工程の温度を第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度とすることができる。したがって、熱処理工程の対象である第1冷間圧延材に再結晶が生じることを抑制することができる。
また、熱処理工程では、第1冷間圧延材を例えば3時間以上加熱することが好ましい。これにより、充分な量のP化合物(Fe−P化合物またはNi−P化合物)を第1冷間圧延材中に析出させることができる。したがって、最終的に製造される銅合金材の強度を向上させることができる。
(第2冷間圧延工程)
次に、熱処理材に冷間圧延を行い、第2冷間圧延材を形成する。本実施形態では、例えば、熱処理材に対する冷間圧延を所定回数繰り返す。なお、ここでいう第2冷間圧延材とは、第2冷間圧延工程の全体の工程(所定回数の冷間圧延)が行われた銅合金の板材のことである。また、第2冷間圧延工程が最終工程である場合、第2冷間圧延材が最終的に製造される銅合金材となる。
第2冷間圧延工程では、例えば50%以上80%以下の総加工度で冷間圧延を行う。なお、第2冷間圧延工程における総加工度とは、「総加工度(%)={1−(第2冷間圧延工程後(所定回数の冷間圧延および焼鈍の後)の板厚/第2冷間圧延工程前の板厚)}×100」で定義される。総加工度が50%未満である場合、熱処理材の加工硬化が不十分となり、最終的に製造される銅合金材の強度が不十分となる可能性がある。これに対して、本実施形態では総加工度が50%以上であることにより、熱処理材を加工硬化させることができる。これにより、最終的に製造される銅合金材の強度を向上させることができる。一方、総加工度が80%超である場合、銅合金材中にSn、Ag、Mn、Cr、およびTiなどの原子半径の大きい元素から解放された空孔や、原子半径の大きいこれらの元素の偏析から解放された転位が生じるため、銅合金材の耐応力緩和性が低下する可能性がある。これに対して、本実施形態では総加工度が80%以下であることにより、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiなどの原子半径の大きい元素が空孔と結びついた状態を維持し、また原子半径の大きいこれらの元素が転位の周囲に偏析した状態を維持することで、銅合金材の耐応力緩和性を向上させることができる。
また、第2冷間圧延工程では、第2冷間圧延材の総加工度が所定値となるように、冷間圧延が繰り返される。冷間圧延の繰り返し回数は、例えば1回以上5回以下である。
以上により、所定厚さの銅合金材が形成される。
(4)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
(a)本実施形態によれば、銅合金材は、0.2質量%以上0.6質量%以下のFeと、0.02質量%以上0.06質量%以下のNiと、0.07質量%以上0.3質量%以下のPと、0.01質量%以上0.2質量%以下のMgと、を含有し、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる。Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素(原子半径の大きい元素)を所定量含有することにより、銅合金材の高導電性を維持しつつ、銅合金材の耐応力緩和性を向上させることができる。また、Niの含有量を特許文献1に記載の範囲よりも減少させることにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制し、銅合金材の導電性を向上させることができる。さらに、銅合金材中にMgを所定量添加することにより、Niの含有量を特許文献1に記載の範囲よりも減少させた場合であっても、高導電性を維持しつつ、銅合金材の強度を向上させることができる。このようにして、銅合金材の導電性、強度、および耐応力緩和性をバランス良く向上させることができる。例えば、銅合金材の導電率を70%IACS以上とし、銅合金材の0.2%耐力を500MPa以上とし、150℃の条件下で1000時間加熱後の銅合金材の応力緩和率を30%以下とすることができる。したがって、近年の高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性の要求を満たすことができる。
(b)本実施形態によれば、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)が5以上10以下である。質量比Fe/Niが5以上であることにより、Niによる銅合金材の導電性を低下させる影響を抑制することができる。質量比Fe/Niが10以下であることにより、一定量のNi−P化合物が銅合金材中に生成されることにより、銅合金材の強度を向上させることができる。したがって、銅合金材の高導電性および高強度を両立することが可能となる。
(c)本実施形態によれば、銅合金材は、0.001質量%以上0.005質量%以下のZnを含有していても良い。これにより、導電性を低下させることなく、はんだ付け性を向上させることができる。
(d)本実施形態によれば、鋳造工程では、0.2質量%以上0.6質量%以下のFeと、0.02質量%以上0.06質量%以下のNiと、0.07質量%以上0.3質量%以下のPと、0.01質量%以上0.2質量%以下のMgと、を含有し、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる鋳塊を鋳造する。続いて、所定の圧延工程および熱処理工程を行うことにより、銅合金材を形成する。上記のような組成を有する鋳塊を鋳造することにより、高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性を有する銅合金材を得ることができる。
(e)本実施形態によれば、第1冷間圧延工程では、被圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度で焼鈍を行う。これにより、被圧延材に再結晶が生じることを抑制することができる。したがって、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することを抑制することができる。
(f)本実施形態によれば、第1冷間圧延工程では、最後の焼鈍後に行われる最後の冷間圧延を15%以上60%以下の加工度で行う。最後の冷間圧延の加工度が15%以上であることにより、被圧延材中に格子欠陥を導入することができる。これにより、後工程の熱処理工程において、格子欠陥を核とするP化合物(Fe−P化合物またはNi−P化合物)の析出物が生成されることを促すことができる。したがって、最終的に製造される銅合金材の強度を向上させることができる。また、最後の冷間圧延の加工度が60%以下であることにより、後工程の熱処理工程(時効工程)において被圧延材(第1冷間圧延材)に再結晶が生じることを抑制し、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することを抑制することができる。
(g)本実施形態によれば、熱処理工程では、第1冷間圧延材を、380℃以上の温度であって、第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度で加熱する。熱処理工程の温度が380℃以上であることにより、FeまたはNiが熱処理材中に固溶することを抑制し、Fe−P化合物またはNi−P化合物を充分に分散析出させることができる。これにより、最終的に製造される銅合金材の導電性が低下することを抑制するとともに、当該銅合金材の強度を向上させることができる。また、熱処理工程の温度が第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度よりも低いことにより、熱処理工程の対象である第1冷間圧延材に再結晶が生じることを抑制することができる。これにより、最終的に製造される銅合金材の強度が低下することを抑制することができる。
(h)本実施形態によれば、第2冷間圧延工程では、50%以上80%以下の総加工度で冷間圧延を行う。総加工度が50%以上であることにより、熱処理材を加工硬化させることができる。これにより、最終的に製造される銅合金材の強度を向上させることができる。また、総加工度が80%以下であることにより、Sn、Ag、Mn、Cr、およびTiなどの原子半径の大きい元素が空孔と結びついた状態を維持し、また原子半径の大きいこれらの元素が転位の周囲に偏析した状態を維持することで、銅合金材の耐応力緩和性を向上させることができる。
(i)本実施形態にかかる銅合金材は、リードフレームの基材に適用することが特に有効である。近年、電子機器の多機能化、小型化、軽量化に伴い、電子機器に搭載される半導体パッケージは、薄型化、小型化、高密度化されることが求められている。こうした要求に対して、半導体パッケージに使用されるリードフレームには、放熱性を確保するための高導電性や、薄型化に適応するための高強度が求められている。また、車載用途では使用環境が高温になることから、リードフレームには、高温環境下でも充分な信頼性が確保されるように、これまでよりもさらに高い耐応力緩和性が望まれている。したがって、本実施形態にかかる銅合金材をリードフレームの基材に適用することにより、近年の高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性の要求を満たすことができる。
(j)本実施形態にかかる銅合金材は、コネクタの導体部に適用することが特に有効である。特に自動車内の電気系統に用いられるコネクタ等の電気部品などでは、自動車の電装化が進んでいるため、当該電気部品に流れる電流値が増加している。このような電気部品には、ジュール熱の発生を抑えるための高導電性や、自動車の仕様として要求されるバネ性を満たすための高強度が求められている。また、高温環境下においても接触圧を長期にわたり維持するために、高い耐応力緩和性が望まれている。したがって、本実施形態にかかる銅合金材をコネクタの導体部に適用することにより、近年の高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性の要求を満たすことができる。
ここで、参考までに、これまでの銅合金材について説明する。
これまでの半導体パッケージのリードフレームとしては、例えば、0.05質量%以上0.15質量%以下のFeと、0.025質量%以上0.04質量%以下のPと、を含有するC19210合金や、2.1質量%以上2.6質量%以下のFeと、0.015質量%以上0.15質量%以下のPと、0.05質量%以上0.20質量%以下のZnと、を含有するC19400合金が用いられてきた。Cu−Fe−P系のC19210合金では、導電率が90%IACS程度であった一方で、0.2%耐力は450MPa以下であった。したがって、C19210合金の強度は近年の高強度の要求に対して不十分である可能性があった。また、C19210合金の耐応力緩和性は、車載向けに要求されるレベルには不十分である可能性があった。また、C19400合金では、質別調整によって、0.2%耐力を500MPa以上とすることができた一方で、C19400の導電率は65%IACS程度であった。したがって、C19400の導電性は近年の高導電性の要求に対して不十分である可能性があった。また、C19400合金の耐応力緩和性は、車載向けに要求されるレベルには不十分である可能性があった。
端子やコネクタなどの電気部品には、例えば、2.2質量%以上4.2質量%のNiと、0.25質量%以上1.2質量%以下のシリコン(Si)と、0.05質量%以上0.30質量%以下のMgと、を含有するC70250合金が用いられてきた。Cu−Ni−Si系のC70250合金では、0.2%耐力が500MPaを上回り、耐応力緩和性も良好であった一方で、導電率は45%IACS程度であった。したがって、C70250合金の導電性は近年の高導電性の要求に対して不十分である可能性があった。
さらに、本発明者等により、0.1質量%以上0.5質量%以下のFeと、0.03質量%以上0.2質量%以下のNiと、0.03質量%以上0.2質量%以下のPと、を含有し、Pに対するFeおよびNiの質量比((Fe+Ni)/P)が3以上10以下であり、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)が0.8以上1.2以下であるCu−Fe−Ni−P系の銅合金材が開発された(特許文献1)。特許文献1に記載のCu−Fe−Ni−P系の銅合金材では、高強度が得られるとともに、導電率は60%IACS以上であった。しかしながら、近年の高導電性に対する要求を鑑みると、さらなる導電率の向上が望まれる。また、特許文献1に記載のCu−Fe−Ni−P系の銅合金材の耐応力緩和性は、車載向けに要求されるレベルには不十分である可能性があった。
これに対して、本実施形態によれば、銅合金材が上記組成を有することにより、銅合金材の導電率を70%IACS以上とし、銅合金材の0.2%耐力を500MPa以上とし、150℃の条件下で1000時間加熱後の銅合金材の応力緩和率を30%以下とすることができる。したがって、上記した近年の高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性の要求を満たすことができる。
(本発明の他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
上述の実施形態では、上述の製造工程により所望の高導電性、高強度、および高い耐応力緩和性を有する銅合金材が形成される場合について説明したが、この方法に限定されず、上記以外の製造方法であっても同様の銅合金材を形成することができる。
次に、本発明に係る実施例を説明する。
以下のように、試料1〜30を作製し、各試料について導電性及び強度についての評価を行った。
<試料の作製>
(試料1〜14)
試料1では、以下のようにして銅合金材を形成した。まず、無酸素銅を母材にして、0.35質量%のFe、0.040質量%のNi、0.12質量%のP、0.10質量%のMg、原子半径の大きい元素として0.01質量%のSn、0.003質量%のZnを添加し、高周波溶解炉を用いて、窒素雰囲気下で溶製し、厚さ25mm、幅30mm、長さ150mmの鋳塊を鋳造した(鋳造工程)。次に、鋳塊を950℃に加熱して、鋳塊に熱間圧延を行い、厚さ8mmの熱間圧延材を形成した(熱間圧延工程)。次に、熱間圧延材に冷間圧延を行い、被圧延材の厚さを2mmとした。次に、被圧延材を550℃1分間焼鈍した。次に、焼鈍を行った被焼鈍材に、(第1冷間圧延工程中の最後の)冷間圧延を加工度50%で冷間圧延を行い、厚さ1mmの第1冷間圧延材を形成した(第1冷間圧延工程)。次に、第1冷間圧延材を温度420℃で6時間加熱し、熱処理材を形成した(熱処理工程)。次に、熱処理材に総加工度70%で冷間圧延を行い、厚さ0.3mmの第2冷間圧延材を形成した(第2冷間圧延工程)。以上により、試料1の銅合金材を形成した。
なお、試料2〜14では、以下の表1に示されているように、鋳造工程における鋳塊の組成を、試料1の組成から所定の範囲内で変更した。なお、原子半径の大きい元素として、試料3および4ではAgを、試料5ではMnを、試料6ではInを、試料7ではCrを、試料8ではTiを、試料9および10ではSnを、試料11および12ではSnおよびAgを、試料13ではMnおよびInを、試料14ではCrおよびTiを選択した。その他の工程には試料1の銅合金材を製造する方法と同様の方法を適用することにより、試料2〜14の銅合金材を形成した。
(試料15〜31)
試料15〜31では、以下の表1に示されているように、鋳造工程における鋳塊の組成を、試料1の組成から所定の範囲外に変更した。なお、原子半径の大きい元素として、試料15〜24、30および31ではSnを、試料27ではSnおよびAgを、試料29ではAgを選択した。その他の工程には試料1の銅合金材を製造する方法と同様の方法を適用することにより、試料15〜31の銅合金材を形成した。
(試料32〜35)
試料32〜35では、鋳造工程における鋳塊の組成を試料1の組成と同様とした。一方で、以下の表3に示されているように、第1冷間圧延工程、熱処理工程および第2冷間圧延工程の条件を、試料1の条件から所定の範囲内で変更した。
(試料36〜40)
試料36〜40では、鋳造工程における鋳塊の組成を試料1の組成と同様とした。一方で、以下の表3に示されているように、第1冷間圧延工程、熱処理工程および第2冷間圧延工程の条件を、試料1の条件から所定の範囲外に変更した。
<評価>
試料1〜30に対して、以下のように評価を行った。
(導電率の評価)
導電率は、JIS H0505に準拠した導電率測定方法により測定した。その結果を表1〜3に示す。
(強度の評価)
引張強さ、0.2%耐力は、JIS Z2241に準拠した引張試験方法により測定した。その結果を表1および3に示す。
(耐応力緩和性の評価)
耐応力緩和性の評価(応力緩和試験)は、日本電子材料工業会標準規格EMAS−1011および日本伸銅協会技術標準JCBA−T309に準拠した方法により、以下のように測定した。各試料を片持ち梁の状態にして、初期の表面最大応力が0.2%耐力の80%の値になるように曲げを加え、150℃に加熱して1000時間保持した。保持終了後に曲げ応力を除荷して、生じた永久変形による撓み量を測定した。以下の表1および3に示される応力緩和率は、最初に付加した曲げの撓み量に対する加熱保持後の永久変形による撓み量の割合によって算出した。
(はんだ密着性の評価)
以下の方法で、はんだ耐熱剥離試験を実施した。まず、厚さ0.3mmの各試料から幅10mm、長さ30mmの試験片を採取した。次に、260℃に溶融保持したPbフリーはんだ(Sn−3質量%Ag−0.5質量%Cu)に浸漬して、試験片の表面にはんだ層を形成した。この試験片を温度180℃で100時間加熱保持した。次に、試験片に180°の曲げ戻しを行い、曲げ戻し部分のテープ剥離試験を実施した。その結果を表2に示す。
なお、以下の表1において、表1に記載のそれぞれの銅合金材を構成する元素以外の残部はCuおよび不可避不純物からなる。
Figure 2016014165
Figure 2016014165
Figure 2016014165
<評価結果>
表1に示されているように、試料1〜14は、0.2質量%以上0.6質量%以下のFeと、0.02質量%以上0.06質量%以下のNiと、0.07質量%以上0.3質量%以下のPと、0.01質量%以上0.2質量%以下のMgと、0.001質量%以上0.005質量%以下のZnと、を含有し、Sn、Ag、Mn、In、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05%以下含有し、残部をCuおよび不可避不純物からなり、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)が5以上10以下である銅合金とした。その結果、試料1〜14では、導電率が70%IACS以上であり、引張強さが570MPa以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下であった。したがって、試料1〜14の銅合金材は上記組成を有することにより、導電性、強度、および耐応力緩和性をバランス良く向上することができることが確認された。
ここで、表1において、Feの含有量について、試料1〜14、および試料15〜17を比較する。Feの含有量を0.2質量%未満とした試料15および16では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。Feの含有量が少なくなるとFe−P化合物の析出量が少なくなるため、充分な強度が得られなかったと考えられる。一方で、Feの含有量を0.6質量%超とした試料17では、導電率が70%IACS未満であった。したがって、Feの含有量は0.2質量%以上0.6質量%以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表1において、Niの含有量について、試料1〜14、および試料16〜18を比較する。Niの含有量を0.02質量%未満とした試料16では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。Niの含有量が少なくなるとNi−P化合物の析出量が少なくなるため、充分な強度が得られなかったと考えられる。一方で、Niの含有量を0.06質量%超とした試料17および18では、導電率が70%IACS未満であった。したがって、Niの含有量は0.02質量%以上0.06質量%以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表1において、Pの含有量について、試料1〜14、試料19および20を比較する。Pの含有量を0.07質量%未満とした試料19では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。Pの含有量が少ない場合も、FeまたはNiの含有量が少ない場合と同様にP化合物の析出量が少なくなることから、強度が不十分となったと考えられる。一方で、Pの含有量を0.3質量%超とした試料20では、導電率が70%IACS未満であった。Pの含有量が多い場合も、FeまたはNiの含有量が多い場合と同様にして導電率が低下していた。したがって、Pの含有量は0.07質量%以上0.3質量%以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表1において、Mgの含有量について、試料1〜14、試料21および22を比較する。Mgの含有量を0.01質量%未満とした試料21では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。Mgを添加することによる強度の向上効果が充分に得られなかったと考えられる。一方で、Mgの含有量を0.2質量%超とした試料22では、導電率が70%IACS未満であった。Mgは導電性を低下させる影響が比較的少ない成分だが、試料22のようにMgの含有量が多い場合、Mgによる導電性を低下させる影響が無視できなくなったと考えられる。したがって、Mgの含有量は0.01質量%以上0.2質量%以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表1において、Niに対するFeの質量比(Fe/Ni)について、試料1〜14、試料23および24を比較する。質量比Fe/Niを5未満とした試料23では、導電率が70%IACS未満であった。一方で、質量比Fe/Niを10超とした試料24では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。したがって、質量比Fe/Niは5以上10以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表1において、Sn、Ag、Mn、In、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素について、試料1〜14、および試料25〜29を比較する。これらの元素を含まない試料25では、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%を超えていた。耐応力緩和性を向上させる効果を有するMgやZnを含有するものの、Sn、Ag、Mn、In、Cr、およびTi等の原子半径の大きい元素を含まないため、耐応力緩和性を向上させる効果が不十分であったと考えられる。一方で、これらの元素の合計の含有量を0.05%超とした試料26〜29では、応力緩和率は30%以下であったものの、導電率が70%IACS未満であった。他の含有成分と同様に、これらの元素による導電性を低下させる影響が無視できなくなったと考えられる。したがって、Sn、Ag、Mn、In、Cr、およびTiから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05%以下含有することが好ましいことが確認された。
次に、表2において、Znの含有について、試料1、9〜10、30および31を比較する。Znの含有量を0.001質量%以上0.005質量%以下とした試料1、9、10では、はんだ密着性の評価において剥離が見られず、はんだ付け性が向上していた。また、導電率が70%IACS以上であり、Znを含有することによる導電率の低下は見られなかった。これに対して、Znを含有しない試料30では、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下であったが、はんだ密着性の評価において、一部剥離が見られた。一方で、Znの含有量を0.005質量%超とした試料31では、はんだ密着性の評価において、剥離は見られなかったものの、導電率が70%IACS未満であった。以上の結果から、はんだ付け性を向上させる場合は、銅合金材にZnを含有させることが好ましく、Znの含有量は0.001質量%以上0.005質量%以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表3において、銅合金材の製造方法について、試料1、32〜40を比較する。
表3に示されているように、試料1、32〜35では、第1冷間圧延工程における最後の冷間圧延の加工度を15%以上60%以下とし、熱処理工程において380℃以上450℃以下の温度で3時間以上加熱し、第2冷間圧延工程における総加工度を50%以上80%以下とした。その結果、試料1、32〜35では、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下であった。したがって、試料1、32〜35では上記のような工程を行うことにより、導電性、強度、および耐応力緩和性をバランス良く向上させることができることが確認された。
ここで、表3において、第1冷間圧延工程における最後の冷間圧延の加工度について、試料1、32〜35、36および38を比較する。第1冷間圧延工程における最後の冷間圧延の加工度を15%未満とした試料36では、0.2%耐力が500MPa以上となっているが、記載されていない試料において、第1冷間圧延工程における最後の冷間圧延の加工度を15%未満とした場合、0.2%耐力が500MPa未満となることがあった。第1冷間圧延工程における最後の冷間圧延の加工度を60%超とした試料38では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。したがって、第1冷間圧延工程における最後の冷間圧延の加工度は15%以上60%以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表3において、熱処理工程の温度について、試料1、32〜35、試料39および40を比較する。熱処理工程の温度を380℃未満とした試料39では、導電率が70%IACS未満であった。温度が低かったため、Fe−P化合物またはNi−P化合物を充分に分散析出させることができず、FeまたはNiが熱処理材中に固溶する量が増加したと考えられる。一方で、熱処理工程の温度を450℃超とした試料40では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。温度が高かったため、熱処理工程の対象である第1冷間圧延材に再結晶が生じてしまったと考えられる。したがって、熱処理工程の温度は380℃以上450℃以下であることが好ましいことが確認された。
次に、表3において、第2冷間圧延工程における総加工度について、試料1、32〜35、および試料36〜38を比較する。第2冷間圧延工程における総加工度を50%未満とした試料38では、0.2%耐力が500MPaよりも低かった。第2冷間圧延工程の対象である熱処理材の加工硬化が不十分だったと考えられる。第2冷間圧延工程における総加工度を80%超とした試料36および37では、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%を超えていた。銅合金材中に原子半径の大きい元素(この試料でのSn)から解放された空孔や原子半径の大きい元素(この試料でのSn)の偏析から解放された転位が生じたためと考えられる。したがって、第2冷間圧延工程における総加工度は50%以上80%以下であることが好ましいことが確認された。
以上の結果により、本実施例によれば、導電性、強度、および耐応力緩和性をバランスよく向上させた銅合金材および銅合金材の製造方法を提供することができることが確認された。
<好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
[付記1]
本発明の一態様によれば、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、
導電率が70%IACS以上であり、
0.2%耐力が500MPa以上であり、
150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である
銅合金材が提供される。
[付記2]
付記1に記載の銅合金材であって、好ましくは、
前記ニッケルに対する前記鉄の質量比が5以上10以下である。
[付記3]
付記1または2に記載の銅合金材であって、好ましくは、
0.001質量%以上0.005質量%以下の亜鉛をさらに含有する。
[付記4]
付記1〜3のいずれかに記載の銅合金材であって、好ましくは、
引張強さが570MPa以上である。
[付記5]
本発明の他の態様によれば、
鋳塊を鋳造する鋳造工程と、
前記鋳塊に熱間圧延を行い、熱間圧延材を形成する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延材に冷間圧延を行い、第1冷間圧延材を形成する第1冷間圧延工程と、
前記第1冷間圧延材に熱処理を行い、熱処理材を形成する熱処理工程と、
前記熱処理材に冷間圧延を行い、第2冷間圧延材を形成する第2冷間圧延工程と、
を有し、
前記鋳造工程では、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%0.2質量%のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる前記鋳塊を鋳造し、
前記第2冷間圧延工程では、
50%以上80%以下の総加工度で前記冷間圧延を行う
銅合金材の製造方法が提供される。
[付記6]
付記5に記載の銅合金材の製造方法であって、好ましくは、
前記第1冷間圧延工程では、
前記熱間圧延材に対する前記冷間圧延と、被圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度での焼鈍と、を所定回繰り返し行う。
[付記7]
付記6に記載の銅合金材の製造方法であって、好ましくは、
前記第1冷間圧延工程では、
最後の焼鈍後に行われる最後の冷間圧延を15%以上60%以下の加工度で行う。
[付記8]
付記5〜7のいずれかに記載の銅合金材の製造方法であって、好ましくは、
前記熱処理工程では、
前記第1冷間圧延材を、380℃以上の温度であって、前記第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度で加熱する。
[付記9]
付記5〜8のいずれかに記載の銅合金材の製造方法であって、好ましくは、
前記熱処理工程では、
前記第1冷間圧延材を450℃以下の温度で加熱する。
[付記10]
付記5〜9のいずれかに記載の銅合金材の製造方法であって、好ましくは、
前記熱処理工程では、
前記第1冷間圧延材を3時間以上加熱する。
[付記11]
本発明の更に他の態様によれば、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である基材を有する
リードフレームが提供される。
[付記13]
本発明の更に他の態様によれば、
0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である導体部を有する
コネクタが提供される。

Claims (9)

  1. 0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、
    導電率が70%IACS以上であり、
    0.2%耐力が500MPa以上であり、
    150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である
    銅合金材。
  2. 前記ニッケルに対する前記鉄の質量比が5以上10以下である
    請求項1に記載の銅合金材。
  3. 0.001質量%以上0.005質量%以下の亜鉛をさらに含有する
    請求項1または2に記載の銅合金材。
  4. 鋳塊を鋳造する鋳造工程と、
    前記鋳塊に熱間圧延を行い、熱間圧延材を形成する熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延材に冷間圧延を行い、第1冷間圧延材を形成する第1冷間圧延工程と、
    前記第1冷間圧延材に熱処理を行い、熱処理材を形成する熱処理工程と、
    前記熱処理材に冷間圧延を行い、第2冷間圧延材を形成する第2冷間圧延工程と、
    を有し、
    前記鋳造工程では、
    0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%0.2質量%のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなる前記鋳塊を鋳造し、
    前記第2冷間圧延工程では、
    50%以上80%以下の総加工度で前記冷間圧延を行う
    銅合金材の製造方法。
  5. 前記第1冷間圧延工程では、
    前記熱間圧延材に対する前記冷間圧延と、被圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度での焼鈍と、を所定回繰り返し行う
    請求項4に記載の銅合金材の製造方法。
  6. 前記第1冷間圧延工程では、
    最後の焼鈍後に行われる最後の冷間圧延を15%以上60%以下の加工度で行う
    請求項5に記載の銅合金材の製造方法。
  7. 前記熱処理工程では、
    前記第1冷間圧延材を、380℃以上の温度であって、前記第1冷間圧延材に再結晶が生じる温度よりも低い温度で加熱する
    請求項4〜6のいずれか1項に記載の銅合金材の製造方法。
  8. 0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である基材を有する
    リードフレーム。
  9. 0.2質量%以上0.6質量%以下の鉄と、0.02質量%以上0.06質量%以下のニッケルと、0.07質量%以上0.3質量%以下のリンと、0.01質量%以上0.2質量%以下のマグネシウムと、を含有し、錫、銀、マンガン、クロム、およびチタンから選択した1種以上の元素を合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含有し、残部が銅および不可避不純物からなり、導電率が70%IACS以上であり、0.2%耐力が500MPa以上であり、150℃の条件下で1000時間加熱後の応力緩和率が30%以下である導体部を有する
    コネクタ。
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