JP3376840B2 - 銅合金材の製造方法 - Google Patents

銅合金材の製造方法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器に用いら
れる銅合金、特に高強度及び高熱伝導性を備えた銅合金
材及びその製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】電子機器用の金属材料は、製造工程中に
変形や破損の生じない強度、耐熱性、打ち抜きや加工に
対する加工性、発生する熱を外部に放出できる熱伝導
性、めっき性、はんだ付け性、耐蝕性等の特性のほか、
低価格であることが要求される。例えば、半導体装置に
用いられるリードフレームにおいては、素子の小型化・
高集積化に対応した特性、つまり、材料の薄板化に対応
して、より強度が高く、かつ熱の発生量が増加すること
から、十分な放熱性を確保しうる熱伝導性及び導電性を
備えた材料の開発が望まれている。 【0003】従来、リードフレームの材料には、主とし
てFe(鉄)−42wt%Ni(ニッケル)等の鉄系合
金や銅系合金が用いられてきた。鉄系合金は高強度をも
つ長所があるのに対し、導電率が低く、熱伝導性も悪い
という短所がある。一方、銅系合金は導電性、熱伝導
性、加工性に優れ、低価格にできるという特長がある。
しかし、銅系合金は強度、耐熱性等の面で鉄系合金に劣
っている。そこで、強度を高めた銅系合金の開発が従来
より行われている。 【0004】銅系合金の導電率を高レベルに保ちながら
高強度化を達成するためには、析出強化を用いるのが有
利である。そこで、Cu(銅)−Ni−Si(珪素)
系、Cu−Fe−P(リン)系、Cu−Cr(クロム)
系等の銅系合金を用いて析出強化を図るようにした銅合
金が検討されている。中でも、Cu−Ni−Si合金
(コルソン合金)を基本とする合金は、引張強度が70
0MPaという高い値を期待できることから、有望視さ
れている。 【0005】このCu−Ni−Si合金は析出硬化型の
合金である。通常、800℃程度の高温から急冷する液
体化処理と、300〜500℃程度に加熱保持する時効
処理によって合金元素をNi2 Siの化合物の形でCu
母相中に析出させ、転位の運動に対する障害物にするこ
とで強度が向上する。また、合金元素を積極的に析出さ
せるため、固溶状態にある合金に比較して熱伝導性及び
導電性を良好に保ちやすい。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかし、Cu−Ni−
Si合金によると、その製造に通常の単純な溶体化処理
及び時効化処理による製造工程をとった場合、強度面で
は700MPaという高い引張強度が得られるものの、
導電率が30〜40%IACSのレベルに止まってい
る。この導電率は、QFP(Quad Fiat Package)による
半導体装置のリードフレームに用いるには不満が残る。
また、はんだ付け性や変色・酸化等を防ぐ耐蝕性等に対
しても、満足できるレベルには至っていない。 【0007】そこで本発明は、高い強度と高い導電率を
備えた銅合金材を提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明は、1.5〜5.0wt%のNi及び0.
3〜1.0wt%のSiを重量比Ni/Siが4.5〜
5.5の範囲で含むとともに、1.5〜5.0wt%の
Znと、0.003〜0.3wt%のPと、1種あたり
0.01〜1.0wt%で総量が0.01〜5.0wt
%に設定されたB、Ca、Ga、Ge、Y、Nb、M
o、Ag、Cd、In、Te、Hf、W、Pb、ミッシ
ュメタルの内の少なくとも1種とをCuに添加した構成
にしている。 【0009】この構成によれば、NiとSiの添加によ
り固溶元素量が低減され、高強度化及び高導電率化が図
られる。更に、Zn及びPの添加によりはんだの接合強
度と長寿命化が図られ、B、Ca、Ga、Ge、Y、N
b、Mo、Ag、Cd、In、Te、Hf、W、Pb、
ミッシュメタル等の添加は強度を高めるほか、更には耐
酸性、耐熱性、耐蝕性等を高めるように作用する。この
結果、強度及び導電率を大幅に向上させた銅合金材を得
ることができる。 【0010】しかして、上記の銅合金材は、700℃以
上に加熱して溶体化処理し、20〜80%の加工率で冷
間圧延し、400〜500℃で0.5〜3時間による1
回目の時効処理を施し、350〜450℃で0.5〜3
時間による2回目の時効処理が施される。 【0011】この方法によれば、20〜80%の加工率
による冷間圧延は、時効処理における析出物の発生を十
分にしながら粗大化を防止し、時効処理による効果を高
める。更に時効処理は、400〜500℃で十分な析出
が得られ、微細な析出物を多量に発生させ、強度及び導
電率を高める。つづく2回目の時効処理は、1回目の時
効処理で析出しきれず、固溶状態で残留している合金元
素を析出するように作用する。これにより、強度及び導
電率を大幅に向上させた銅合金材を得ることができる。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明者らは、或る種の副成分を
添加することによって特性の改善が図られ、固溶状態に
ある合金元素をなるべく微細な形状で多量に析出させる
ことにより、高強度及び高導電率を併せもつ銅合金が得
られることを見いだした。以下に実施例を示して具体的
に本発明を説明する。 【0013】 【実施例】図1は本発明による銅合金材の製造工程を示
すフローチャートである。図1を参照して本発明を説明
する。本発明者らは、表1〜表2の組成により試料を作
成した。本発明による組成がF〜Vの17種であり、比
較用組成(従来例)としてA〜Eの5種を作成した。な
お、表中のMMはミッシュメタルを意味している。 【0014】 【表1】【0015】 【表2】 【0016】表1〜表2に示す組成を持つ銅合金を無酸
素銅を母材にして高周波溶解炉で溶製し、直径30m
m、長さ250mmのインゴットに鋳造した(ステップ
101)。このインゴットを850℃に加熱して熱間押
し出し加工し、幅20mm、厚さ8mmの板状にした。
この後、中間焼鈍をはさみながら厚さ0.42mmまで
冷間圧延した(ステップ102)。 【0017】ついで、800℃に加熱後、水中に入れて
急冷し、溶体化した(ステップ103)。溶体化後の材
料を加工率40%で厚さ0.25mmに冷間圧延し(ス
テップ104)、所定の温度、例えば420℃で1時間
の時効処理(1回目の時効処理)、更に所定の温度、例
えば370℃で1時間の時効処理(2回目の時効処理)
を施した(ステップ105)。以上のようにして試料を
作成する。 【0018】溶体化処理と1回目の時効処理の間で冷間
圧延を行うことにより、溶体化材の結晶格子内に適度な
格子欠陥が導入される。この格子欠陥は析出物形成の核
として機能し、析出物を微細な形状でより均一かつ多量
に発生させることができる。冷間圧延の加工率を高くす
ると、より多量の格子欠陥が導入されるため、多量の析
出物が形成されやすくなるが、析出の進行が速くなるた
め、粗大化も急速に進行する。したがって、冷間圧延の
加工率は20〜80%にするのが好ましい。 【0019】1回目の時効処理においては、微細な形状
の析出物をできるだけ多く発生させることが重要であ
り、このためには温度及び保持時間を規定する必要があ
る。ここでは温度を400〜500℃、保持時間を30
分〜3時間にしている。これよりも低温及び短時間の時
効処理では十分な量の析出が生じない。逆に、高温及び
長時間になると粗大な形状の析出物が発生する。 【0020】2回目の時効処理は、1回目の時効処理で
析出しきれず、固溶状態で残留している合金元素を析出
させ、導電率を更に回復させることを目的に実施してい
る。この導電率の回復を強度を低下させることなく行う
ためには、1回目の時効で発生した析出物をできるだけ
粗大化させずに微細な析出物を追加して発生させること
が望ましい。そこで、温度条件を1回目の時効処理より
低い350〜450℃に規定し、且つ保持時間を30分
〜3時間に規定している。これよりも低温及び短時間の
時効処理では析出物の発生が不十分であり、逆に、高温
及び長時間になると1回目の時効処理で発生した析出物
が粗大化したり、新たに粗大な析出物が発生する。 【0021】本発明者らは、表1〜表3に示した各組成
及び加工条件(冷間加工率及び時効処理条件)により、
上記した製造工程にしたがって本発明品の試料(No.
8〜24)及び比較品(No.1〜7)を製作した。こ
れらの全てについて、引張強さと導電率を測定したとこ
ろ、表3に示す結果を得た。 【0022】 【表3】【0023】表3から明らかなように、本発明による試
料は、730MPa以上の強度が得られ、また、導電率
は50%IACS以上が得られるという良好な結果を得
た。これにより、QFPによる半導体装置のリードフレ
ームに用いることが可能になった。これに対し、組成条
件、加工率条件、時効条件の何れかが本発明から外れた
比較例では、引張強度及び導電率が低く、半導体装置の
リードフレームに用いることができない。 【0024】次に、表3に示す本発明の試料No.8〜
24と、比較例の試料No.7を基に、はんだ耐熱剥離
性を評価した。60%Sn−40%Pbはんだ中で浸漬
めっきした試料を150℃で1000時間加熱した後、
曲率半径0.25mmで90°曲げし、その後に曲げ戻
した時のはんだ剥離の有無を顕微鏡で観察し、評価し
た。その結果、本発明の試料No.8〜24は、はんだ
の剥離は見られなかった。これに対し、比較例の試料N
o.7は界面剥離を生じた。 【0025】以上のように、本発明による銅合金は高い
強度と高い導電率が得られるため、リードフレームに用
いた場合、より小型化、多ピン化、高速化を目的とした
半導体装置への対応が可能になり、特に、QFP等の多
ピンリードフレームに用いるのに適している。また、は
んだ剥離が生じないことから、接続の信頼性を向上させ
ることができる。 【0026】ここで、表1〜表2に示した各元素の組成
比について説明する。Ni及びSiの添加量が低いと、
析出硬化による高強度化が不十分になる。逆に、Ni及
びSiの添加量が多くなると、析出しきれない固溶元素
量が増加する。そこで、Niを1.5〜5.0wt%、
Siを0.3〜1.0wt%に規定している。また、N
i/Siの重量比を4.5〜5.5に規定し、Ni2
iの析出が十分におきたとき、余剰分として存在するN
iもしくはSiの量を少なくしている。 【0027】更に、Znを1.5〜5.0wt%にする
ことで、はんだとの接合強度及び長期寿命を改善する効
果、及び強度の向上、めっき性を改善する効果がある。
また、P(リン)は脱酸剤としての効果があり、0.0
03〜0.3wt%にすると合金鋳造時のSiの酸化に
よる悪影響を防止することができる。Zn及びPの量
は、所定量より多くなると導電率の低下や加工性の劣化
を生じる。 【0028】また、B(ホウ素)、Ca(カルシウ
ム)、Ge(ゲルマニウム)又はIn(インジウム)の
添加は強度の向上に効果がある。更に、V(バナジウ
ム)の添加は強度の向上、耐熱性の改善、耐酸性の改善
に効果があり、Y(イットリウム)、Nb(ニオブ)、
W(タングステン)又はHf(ハフニウム)の添加は強
度の向上のほか、耐蝕性及び耐熱性の改善に効果があ
る。また、Mo(モリブデン)の添加は強度の向上及び
耐蝕性の改善に効果がある。 【0029】更に、Ag又はTeの添加は、高強度化及
び耐熱性の向上に効果があり、添加量が増えても導電率
への悪影響が少ない。また、Taの添加は耐熱性及び耐
蝕性の改善に効果がある。Pbの添加は耐蝕性及び耐熱
性の改善のほか、打ち抜き加工性の改善に寄与する。M
M(ミッションメタル)は、Ce、La、Ce族希土類
元素の混合物であり、強度の向上、耐蝕性及び耐熱性の
改善に寄与する。 【0030】なお、B、Ca、Ga、Ge、Y、Nb、
Mo、Ag、Cd、In、Te、Hf、W、Pb、ミッ
シュメタルは、これらの内の1種又は2種以上を添加す
るものとし、その1種あたりの添加量が0.01〜1.
0wt%に規定する。そして、総量が0.01〜5.0
wt%になるようにするのがよい。 【0031】 【発明の効果】以上より明らかな如く、本発明によれ
ば、重量比Ni/Siを4.5〜5.5にした1.5〜
5.0wt%のNi及び0.3〜1.0wt%のSi
と、1.5〜5.0wt%のZnと、0.003〜0.
3wt%のPと、1種あたり0.01〜1.0wt%で
総量を0.01〜5.0wt%に設定されたB、Ca、
Ga、Ge、Y、Nb、Mo、Ag、Cd、In、T
e、Hf、W、Pb、ミッシュメタルの内の少なくとも
1種が添加され、残部がCuである銅合金材を700℃
以上に加熱して溶体化処理し、20〜80%の加工率で
冷間圧延し、400〜500℃で0.5〜3時間の1回
目の時効処理を施し、350〜450℃で0.5〜3時
間の2回目の時効処理を施す方法であるから、NiとS
iの添加により固溶元素量が低減され、高強度化及び高
導電率化が図られる。更に、Zn及びPの添加によりは
んだの接合強度と長寿命化が図られ、B、Ca、Ga、
Ge、Y、Nb、Mo、Ag、Cd、In、Te、H
f、W、Pb、ミッシュメタル等の添加は強度を高める
ほか、更には耐酸性、耐熱性、耐蝕性等を高めるように
作用する。この結果、強度及び導電率を大幅に向上させ
た銅合金材を得ることができる。 【0032】加えて、20〜80%の加工率による冷間
圧延は、時効処理における析出物の発生を十分にしなが
ら粗大化を防止し、時効処理による効果を高める。更に
時効処理は、400〜500℃で十分な析出が得られ、
微細な析出物を多量に発生させ、強度及び導電率を高め
る。つづく2回目度目の時効処理は、1回目の時効処理
で析出しきれず、固溶状態で残留している合金元素を析
出するように作用する。これにより、強度及び導電率を
大幅に向上させた銅合金材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明による銅合金材の製造工程を示すフロー
チャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/08 C22C 9/06

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 1.5〜5.0wt%のNi及び0.3
    〜1.0wt%のSiを重量比Ni/Siが4.5〜
    5.5の範囲で含むとともに、 1.5〜5.0wt%のZnと、 0.003〜0.3wt%のPと、 1種あたり0.01〜1.0wt%で総量が0.01〜
    5.0wt%に設定されたB、Ca、Ga、Ge、Y、
    Nb、Mo、Ag、Cd、In、Te、Hf、W、P
    b、ミッシュメタルの内の少なくとも1種が添加され、
    残部がCuである銅合金を700℃以上に加熱して溶体
    化処理し、 20〜80%の加工率で冷間圧延し、 400〜500℃及び0.5〜3時間による1回目の時
    効処理を施し、 350〜450℃及び0.5〜3時間による2回目の時
    効処理を施すことを特徴とする銅合金材の製造方法。
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