JP4556842B2 - 剪断加工性に優れる高強度銅合金材およびその製造方法 - Google Patents

剪断加工性に優れる高強度銅合金材およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、剪断加工性に優れる高強度銅合金材およびその製造方法に関し、特に、端子、コネクタ、リードフレームなどの電気・電子部品に用いられる銅合金材において、打ち抜き加工時に発生する「だれ」や「かえり」が少なく、加工後の残留応力が小さく、かつ、金型の摩耗が少ない、優れた剪断加工性を持つ銅合金材およびその製造方法に関する。
近年、各種の電気・電子機器において、小型・薄型化および軽量化が進行し、そこで使用される部品の小型化が進んでいる。例えば、端子・コネクタ部品には小型で電極間ピッチの狭いものが求められ、リードフレームのリード間距離は縮小する傾向にある。
こうした小型化によって、使用される材料もより薄肉になっているが、薄肉であっても接続の信頼性を保つ必要から、高強度で高いばね性を持った材料が要求されている。
また、機器の高機能化に伴う電極数の増加や通電電流の増加によって、発生するジュール熱も多大なものになりつつあり、従来以上に導電性の良い材料への要求も強まっている。
従来、ばね性を要求される電気・電子部品の材料には、りん青銅が広く使用されている。また、より高い機械的強度や導電性の要求に低コストで対応できる材料として、Cu−Ni−Si系の銅合金材が用いられている(例えば、特許文献1乃至特許文献4参照)。Cu−Ni−Si系の銅合金材では、熱処理によってNiとSiの化合物を材料中に分散析出させることで良好な強度、ばね性、および導電性の兼備を可能にしている。
一方、前述した小型化に伴い、部品加工時の寸法精度の要求はより厳しくなっている。例えば、打ち抜き加工においては、パンチが食い込む際に材料が引き込まれて角の部分に丸みが生じる「だれ」や、打ち抜き下面でダイの縁に沿ってとがった部分が生じる「かえり」の発生が無いこと、および平坦性を確保するために残留応力を小さくすることが求められている。
しかしながら、上記従来の銅合金材では、このような打ち抜き加工時の寸法精度要求に十分応えられない問題が生じている。
そこで、打ち抜き加工を含む剪断加工性を向上させる材料として、Cu−Ni−Si系の銅合金において、粒径の大きなNi−Si化合物を析出させた銅合金材が知られている(特許文献5参照)。
特開2002−266042号公報 特許第2572042号公報 特許第2977845号公報 特許第3465541号公報 特開平10−219374号公報
しかしながら、特許文献5に記載の銅合金材のように、粒径の大きな析出物を生成することは機械的強度の低下や、わずかな伸びでも破断に至るなどの悪影響を伴い、期待する改善効果を得るには不十分である。
従って、本発明の目的は、高い機械的強度(単に「強度」と表記する場合もある。なお、機械的強度には引張強さと耐力を含む。)、ばね性と良好な導電率を兼備し、かつ、優れた剪断加工性を併せ持つ銅合金材およびその製造方法を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金材で、その圧延方向に垂直な断面にて観察されるNiSi析出物の分布に関して、前記銅合金材の両表面から厚さ方向に板厚全体の各20%までの部分を範囲とする表面層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をa個/mm、前記表面層を除いた部分を範囲とする内部層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をb個/mmとしたときのa/bの比率が2以上であることを特徴とする銅合金材を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、さらにZnとSnの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金材で、その圧延方向に垂直な断面にて観察されるNiSi析出物の分布に関して、前記銅合金材の両表面から厚さ方向に板厚全体の各20%までの部分を範囲とする表面層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をa個/mm、前記表面層を除いた部分を範囲とする内部層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をb個/mmとしたときのa/bの比率が2以上であることを特徴とする銅合金材を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記本発明の銅合金材の製造方法であって、上記金属組成を有する銅合金を素材として形成した後、前記銅合金素材を700〜900℃に加熱した後、25℃/分以上の速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を行い、続いて1パスの加工率を5%以下に規定した圧延を繰り返して合計加工率10%以上の圧延加工を加え、その後300〜450℃で5分〜5時間加熱する第2の熱処理を行い、さらに450〜600℃で5分〜5時間加熱する第3の熱処理を行うことを特徴とする銅合金材の製造方法を提供する。
本発明によれば、高い機械的強度、ばね性と良好な導電率を兼備し、かつ、優れた剪断加工性を併せ持った銅合金材を提供できる。
〔銅合金材の組成〕
本実施の形態における銅合金材は、その平均組成において、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有する銅合金材で、その圧延方向に垂直な断面にて観察されるNiSi析出物の分布に関して、前記銅合金材の両表面から厚さ方向に板厚全体の各20%までの部分を範囲とする表面層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をa個/mm、前記表面層を除いた部分を範囲とする内部層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をb個/mmとしたときのa/bの比率が2以上であることを特徴とする。
より望ましい本実施の形態においては、上記の組成に加えてZnもしくはSnの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有させることを特徴とする。
本実施の形態において、銅合金材を構成する合金成分の添加理由と限定理由を以下に説明する。
NiとSiは、NiSiで表される化合物を作って材料中に分散析出し、それによって材料の強度やばね性が高まると共に良好な導電率を保つことができる。ここで、NiとSiの含有量を上記の範囲に規定することで、より効果的に高い機械的強度とばね性、良好な導電性を両立させることができる。なお、NiとSiの化合物としては、NiSiの他にNiSi、NiSi等も考えられるが、本発明においては実質的にNiSiと考えてよい。
Siの添加量を0.2質量%未満にすると、十分な量のSi化合物を形成することができず、満足できる強度、ばね性が得られない。また、1.0質量%を超えて添加すると、導電性低下の悪影響が出ると共に、鋳造時や熱間加工時にSi化合物の偏析に起因する割れが起こりやすくなる。よって、Siの組成範囲は0.2〜1.0質量%に規定する。より望ましくは、0.4〜0.7質量%に規定する。
このSiの組成範囲に対して効果的に化合物を形成させ高強度と高導電性を両立させるためには、Niの組成範囲を1.0〜5.0質量%に規定する必要がある。Niの含有量が組成範囲の下限を下回る場合、化合物の形成量が不十分になり、強度、ばね性が不足する。また、組成範囲の上限を超える場合は、余剰のNiが銅中に固溶して導電率を低下させる。より望ましくは、Niの組成範囲を2.5〜3.5質量%に規定する。ここで、NiとSiの添加量の間には最適な比率があり、両者の質量比がNi/Si=4〜10の範囲にあることが望ましい。この場合、化合物を形成しない余剰な合金元素を少なく抑えることができる。より望ましくは、Ni/Si=4〜6の範囲に規定する。
さらに上記の組成に加えてZnもしくはSnの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有させた場合、機械的強度、ばね性をさらに向上させることができると共に、電気・電子部品材料に要求されるめっき密着性やはんだ濡れ性、耐マイグレーション性などを向上させることができる。
Znは、機械的強度、ばね性、耐マイグレーション性の向上とともに、はんだ濡れ性やめっき密着性の改善に大きな効果がある副成分である。Snは、機械的強度、ばね性の向上とともに、高温下での耐応力緩和性(ばね性の耐久性、耐熱性)を大きく向上させる効果を持った副成分である。ただし、これらの含有量が合計5.0質量%を超える場合、導電率を低下させる悪影響が大きくなる。よって、ZnとSnの組成範囲は合計5.0質量%以下に規定する。より望ましくは、0.3〜2.0質量%に規定する。
次に、本実施の形態において、銅合金材の圧延方向に垂直な断面にて観察される所定の粒径のNiSi析出物の分布について限定する理由を以下に説明する。
対象とする析出物の粒径を0.03〜3μmとするのは、0.03μm未満の析出物はミクロクラックの発生源とならず、剪断加工性の改善効果が期待できないからである。また、3μmを超える大きな析出物については、その大部分が銅合金素材の形成時(特に合金鋳造時)に晶出したものであり、かつ、その際の分布を制御することは難しく、また、後工程における加工・熱処理で析出物の粒径や分布を制御することが困難なためである。ただし、こうした大きな(粒径が3μmを超えるような)析出物は、機械的強度低下などの悪影響の原因となりうるため、銅合金素材の形成時に晶出させないことが望ましい。
すなわち、粒径0.03μm以上のNiSi析出物は、剪断加工において応力を集中的に受けて析出物を起点としたミクロクラックの発生源となりやすいことから、剪断加工性を大幅に改善する働きを持つ。しかし、粗大な析出物を材料の全面に発生させた場合、全体としての機械的強度の低下やわずかな伸びで破断に至るなどの悪影響が生じる。そこで、こうした悪影響を抑えるため、粒径が3μm以内の析出物を表面層に集中して存在させることとした。
剪断加工において「だれ」や「かえり」を小さくするには、上記のように剪断の開始点および終了点になる上下(両側)の表面層に存在するNiSi析出物を増やし、ミクロクラックが発生しやすくすればよい。ここで、表面層の範囲としては、表面から厚さ方向に板厚全体の20%までの部分とすれば十分な効果が期待できる。
表面層に存在する析出物の数密度をa個/mm、内部層に存在する析出物の数密度をb個/mmとしたときのa/bの比率が2以上になるように限定するのは、表面層の析出物密度が内部層の2倍以上になるように析出物を表面層に集中して存在させたときに、全体としての機械的強度低下などの悪影響を伴わずに、剪断加工性を改善する効果が十分に得られるためである。ここで、NiSi析出物の数密度は、銅合金材の圧延方向に垂直な断面に対して、例えば走査型電子顕微鏡を用いて1000〜100000倍程度の倍率で観察し、得られた像を画像解析することで調べることができる。
以上のようにすることにより、機械的強度低下などの悪影響を伴わずに、剪断部に生じる「だれ」や「かえり」を大幅に小さくすることができ、より効果的な剪断加工性に優れた材料を得ることができる。
〔銅合金材の製造方法〕
図1は、本発明の実施の形態に係る銅合金材の製造工程のフローを示す図である。上記本実施の形態の銅合金材は、上記の平均組成を有する銅合金を素材として形成した後、形成した銅合金素材を700〜900℃に加熱した後、25℃/分以上の速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を行い、続いて1パスの加工率を5%以下に規定した圧延を繰り返して合計加工率10%以上の圧延加工を加え、その後300〜450℃で5分〜5時間加熱する第2の熱処理を行い、さらに450〜600℃で5分〜5時間加熱する第3の熱処理を行うことにより製造することができる。なお、銅合金素材の形成工程は、合金鋳造工程と鋳造後の熱間加工工程からなる工程が1例として挙げられる。
(第1の熱処理)
第1の熱処理においては、形成した銅合金素材をまず700〜900℃に加熱した後、25℃/分以上の速度で300℃以下まで冷却する。より望ましくは、770〜860℃に加熱昇温後、300℃以下まで150℃/分以上の速度で冷却する。加熱昇温時の保持時間は特に規定されないが、生産性の観点からは短い方が好ましく、実質的に当該温度領域に1秒以上保持されれば良い。第1の熱処理の目的は、制御された析出状態を得るための事前準備として、高温に加熱することで粗大な晶出物を形成した合金元素を十分に固溶させることにある。ここで、加熱温度が700℃未満では目的とする晶出物の固溶が十分に起こらず、900℃を超える温度では結晶粒が粗大化(過度の再結晶)して機械的特性(曲げ加工性)の低下を引き起こす。また、冷却速度が25℃/分より遅い場合、冷却途中の段階で析出物が生成、成長するため、目的とする制御された析出状態を得ることができなくなる。
(圧延加工)
第1の熱処理後の圧延加工においては、1パスの加工度を5%以下に限定した圧延を繰り返して合計加工度10%以上の圧延加工を加える。この圧延加工の目的は、表面層に集中して格子欠陥を導入することにある。1パスの加工率を低くすると、材料の内部層に比べて表面層が集中的に引き延ばされる。これによって、材料の内部層と表面層に導入される格子欠陥(例えば転位)の密度に差が生じ、表面層により多くの格子欠陥を導入することができる。ここで、表面層に集中的に格子欠陥を導入する目的を達成するためには1パスの加工度を5%以下にする必要があり、それを超える加工度で圧延した場合、内部層も表面層と同様に変形し格子欠陥の密度差を効果的に生じさせることができない。また、期待する剪断加工性の改善効果を得るためにはある程度以上の数密度で析出物を生成させなければならず、そのためには圧延の合計加工度を10%以上にして十分な量の格子欠陥を導入する必要がある。
(第2の熱処理)
第2の熱処理においては、300〜450℃で5分〜5時間加熱して、格子欠陥を起点としてNiSiの析出を進行させる。より望ましくは、350〜450℃で1〜4時間加熱する。第2の熱処理の目的は、表面層に集中して導入した格子欠陥を起点としてNiSiを析出させることにある(格子欠陥部には核生成し易い)。ここで、加熱温度が300℃未満では十分な析出が起こらず、450℃を超える温度では内部層でも十分な析出が進行するため、表面層と内部層の析出物の数的密度差が小さくなる。
(第3の熱処理)
第3の熱処理においては、450〜600℃で5分〜5時間加熱して、析出物の粒径を効果的な大きさにまで成長させる。より望ましくは、470〜530℃で1〜4時間加熱する。第3の熱処理の目的は、第2の熱処理で発生させた析出物を剪断加工性の改善に効果的な粒径まで成長させることにある。ここで、加熱温度が450℃未満では析出物を十分に成長させることができず、600℃を超える温度では析出物が再固溶する可能性(確率)が高くなる。
以上のような工程を採ることにより、効果的な粒径の析出物を表面層に優先的に発生させることができ、目的の析出状態を持った材料を得ることができる。
〔実施の形態の効果〕
上記の本発明の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)700N/mmを超える高い引張強さと40%IACSを超える良好な導電率を兼備し、かつ、打ち抜き加工時の「だれ」や「かえり」の発生や加工後の残留応力が小さく、かつ、金型の摩耗が少ない優れた剪断加工性を併せ持った電気・電子部品用銅合金材を得ることができる。
(2)銅合金材の性質上、引張強さを高めることで材料の耐力も高い値を実現することができ、その結果、十分なばね性も確保できる。
(3)上記(1)および(2)の優れた性質を併せ持つため、小型化が進む電気・電子部品において、その設計の自由度を大幅に広げることができる。
(4)上記(1)および(2)の優れた性質を兼備するにもかかわらず、従来材と同等のコストで製造することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜2、比較例1〜11〕
表1に示す合金組成からなる試料No.1〜No.2(実施例1〜2)、および試料No.3〜No.13(比較例1〜11)を、表3に示す製造条件にて製造し、それらの特性の評価を行なった。以下、各々について説明する。なお、表1において、不可避不純物はCuに含めて表記した。
(実施例1)
Ni:3.0質量%、Si:0.7質量%を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30mm、長さ250mmのインゴットに鋳造した。
このインゴットを850℃に加熱して押出加工(熱間加工)し、幅20mm、厚さ8mmの板状にした後、厚さ0.5mmまで冷間圧延した(第1の冷間圧延)。次に、冷間圧延した材料を800℃に加熱して10分間保持した後、水中に投入して約300℃/分の速度で室温(約20℃)まで冷却する熱処理を行った(第1の熱処理)。冷却した材料を1パスの加工率が5%を超えないようなパススケジュールで厚さ0.3mmまで冷間圧延した(第2の冷間圧延)。その後、400℃で1時間保持する熱処理を行い(第2の熱処理)、引き続いて500℃で1時間保持する熱処理を行った(第3の熱処理)(試料No.1)。
以上のようにして製造した試料No.1について、引張強さおよび導電率を測定した。測定方法に関して、引張強さについてはJIS Z 2241に、導電率についてはJIS H 0505に規定された方法に準拠した。測定した結果を表2に示す。
表2に示した通り、試料No.1は、鋳塊割れがなく、引張強さ726N/mm、導電率44%IACSという良好な特性を持つ材料が得られたことが判る。
また、圧延方向に垂直な断面において、表面から厚さ方向に0.06mm(板厚の20%)までの両表面層および表面から0.06mmを超える内部層からそれぞれ任意に10視野ずつを選択して走査型電子顕微鏡による観察を行い、画像解析装置を用いて観察像中の粒径0.03〜3μmの析出物の数を測定した。その結果から求めた表面層の平均析出物密度(a個/mm)と内部層の平均析出物密度(b個/mm)の比(a/b)は2.8であった。結果を表4に示す。
さらに、この試料No.1の剪断加工性を評価するため、プレス加工によって長さ30mm、幅1mmのリードを打ち抜いて、その断面形状を観察した。観察結果から、だれ部分について曲率が生じている領域の上面からの深さと、かえり部分について下面から突起先端までの高さを測定し、それぞれ「だれ量」、「かえり高さ」として評価した。その結果、だれ量は20μm、かえり高さは5μmとなった。だれ量を30μm未満、かえり高さを10μm未満に抑えれば、後工程(製品仕様)上の問題は生じないと考えられることから、試料No.1は良好な剪断加工性を持つと評価できる。
(実施例2)
Ni:3.0質量%、Si:0.7質量%に加えて、Zn:1.5質量%、Sn:0.3質量%を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30mm、長さ250mmのインゴットに鋳造した。
このインゴットを実施例1(試料No.1)と同じ工程で加工・熱処理することで製造した試料No.2について、引張強さおよび導電率を実施例1と同様に測定した。その結果、引張強さ746N/mm、導電率42%IACSという良好な特性が得られ、ZnとSnの添加によって試料No.1に比べてさらに良好な強度を得ることができた。また、鋳塊割れもなかった。結果を表2に示す。
この試料No.2についても試料No.1と同様に析出物の数を測定した結果、表面層と内部層の析出物密度の比(a/b)は3.0であった。また、試料No.1と同様に剪断加工試験を行った結果、だれ量は15μm、かえり高さは5μmとなり良好な剪断加工性を持つと評価できた。結果を表4に示す。
(比較例1〜5)
本発明の材料について、その合金組成の限定理由を、比較例を挙げて説明する。表1の比較例1〜5に示す合金組成の銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30mm、長さ250mmのインゴットに鋳造した。
このインゴットを実施例1(試料No.1)と同じ工程で加工・熱処理することで製造した試料No.3〜No.7について、引張強さおよび導電率を実施例1、2と同様に測定した。鋳塊割れの有無と共に、測定結果を表2に示す。
試料No.3およびNo.4は、Niの含有量が規定範囲から外れた例である。Niが過剰になると導電率の値が悪くなり、Niが不足すると引張強さが不十分になる。
試料No.5およびNo.6は、Siの含有量が規定範囲から外れた例である。Siが過剰になると鋳塊に割れが発生して加工が困難になる。また、Siが不足すると導電率、引張強さの両方が不十分になる。
試料No.7は、Zn、Snを過剰に添加した場合の例である。これらの副成分が過剰になった場合、引張強さは高いものの導電率が不十分になる。
(比較例6〜11)
次に、本発明の銅合金材の製造条件についての限定理由を、比較例を挙げて説明する。実施例1の試料No.1と同じ組成の銅合金について、実施例1と同様の工程で鋳造・加工した後、第1の熱処理の加熱条件、第2の冷間圧延における1パスの加工率、および第2,第3の熱処理の各加熱条件を表3に示す条件で加工・熱処理を行い、試料No.8〜No.13を製造した。
得られた各試料について引張強さと導電率を前述と同様に測定した。また、実施例1の試料No.1と同様の方法で表面層と内部層の析出物密度の比率を測定するとともに、プレス加工後のだれ量とかえり高さで剪断加工性の評価を行った。測定した結果を表4に示す。
試料No.8は、第1の熱処理温度が規定範囲から外れた例である。温度が低すぎると引張強さが不十分になるとともに、だれ量やかえり高さが増加して剪断加工性の低下が生じている。
試料No.9は、圧延加工における1パスの加工率が5%を超えた場合の例である。この場合、引張強さと導電率は良好な値が得られているが、析出物の表面層への集中度が小さくなり、剪断加工性が本発明材より劣る結果となっている。
試料No.10およびNo.11は、第2の熱処理温度が規定範囲から外れた例であり、試料No.12およびNo.13は、第3の熱処理温度が規定範囲から外れた例である。いずれの場合も剪断加工性が本発明材より劣る結果となっている。
Figure 0004556842
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Figure 0004556842
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本発明の実施の形態の銅合金材の製造工程のフローを示す図である。

Claims (3)

  1. Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる銅合金材で、その圧延方向に垂直な断面にて観察されるNiSi析出物の分布に関して、前記銅合金材の両表面から厚さ方向に板厚全体の各20%までの部分を範囲とする表面層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をa個/mm、前記表面層を除いた部分を範囲とする内部層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をb個/mmとしたときのa/bの比率が2以上であることを特徴とする銅合金材。
  2. Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、さらにZnとSnの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金材で、その圧延方向に垂直な断面にて観察されるNiSi析出物の分布に関して、前記銅合金材の両表面から厚さ方向に板厚全体の各20%までの部分を範囲とする表面層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をa個/mm、前記表面層を除いた部分を範囲とする内部層における粒径0.03〜3μmの前記NiSi析出物の数密度をb個/mmとしたときのa/bの比率が2以上であることを特徴とする銅合金材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の銅合金材の製造方法であって、
    請求項1又は請求項2に示す組成を有する銅合金を素材として形成した後、前記銅合金素材を700〜900℃に加熱した後、25℃/分以上の速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を行い、続いて1パスの加工率を5%以下に規定した圧延を繰り返して合計加工率10%以上の圧延加工を加え、その後300〜450℃で5分〜5時間加熱する第2の熱処理を行い、さらに450〜600℃で5分〜5時間加熱する第3の熱処理を行うことを特徴とする銅合金材の製造方法。
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