JP2010100890A - コネクタ用銅合金条 - Google Patents

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Abstract

【課題】コネクタ等の電気・電子部品に用いられる導電材料に適しており、複雑な曲げ加工を施しても割れが生じない優れた曲げ加工性と高温環境下における優れた耐応力緩和性を両立し、さらに高い機械的強度と良好な導電性を併せ持ったコネクタ用銅合金条を提供する。
【解決手段】本発明に係る銅合金条は、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなり、その圧延方向に垂直な断面での金属組織に関して、前記銅合金条の両表面から厚さ方向に板厚全体の20%までの部分を範囲とする表面層における前記銅合金条の母材の平均結晶粒径が10μm未満であり、前記表面層以外の部分を範囲とする内部層における前記母材の平均結晶粒径が10μm以上であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、コネクタ等の電気・電子部品に用いられる銅合金条に関し、特に、高い機械的強度と良好な導電性を持ち、かつ優れた曲げ加工性と耐応力緩和性を併せ持つ銅合金条に関するものである。
コネクタ、リレー、スイッチ等の電気・電子部品に用いられる材料には、電気的接点で十分な接触圧を得るのに必要なばね材としての機械的強度や、高温下で長期間使用しても該接触圧が維持できるような耐応力緩和性、さらに複雑な曲げ加工においても割れ等が生じない良好な曲げ加工性などの特性が求められる。近年、特に車載向けの電気・電子部品ではエンジンルーム等の高温環境下での使用に耐えられるものの需要が高まっており、耐応力緩和性の高い材料に対する要求が強まっている。また同時に、小型で複雑な形状の部品を一体成形で製作する要求も強く、厳しい条件の曲げ加工に適用できることも求められている。
従来、ばね性が要求される電気・電子部品の材料には、りん青銅が広く使用されてきた。しかし、りん青銅は前述の耐応力緩和性が不十分であることから高温環境下での長期間の使用に対応できない問題がある。また、りん青銅はその導電率が20%IACS程度と低いことから通電電流の増加に対応できない問題がある。
こうした問題を改善する材料としてCu-Ni-Siを主成分とする各種の銅合金が開発されており、使用されるようになってきた(例えば、特許文献1乃至5参照)。Cu-Ni-Si合金は、熱処理によってNiとSiの化合物を材料中に分散析出させることで良好な機械的強度・ばね性・導電性が得られる材料であり、耐応力緩和性に関してもりん青銅よりも良好な特性が期待できる材料である。
特開2002−266042号公報 特許第2572042号公報 特許第2977845号公報 特許第3465541号公報 特許第3383615号公報
前述したように、コネクタ等の材料には、良好な機械的特性・耐応力緩和特性・曲げ加工性などを兼備することが求められる。これらのうち良好な曲げ加工性を得る手法の1つとして、材料の結晶粒を微細化する方法が挙げられる。曲げ加工時に起こる材料の割れは、結晶粒界近傍に生じる微細な窪みが成長することで大きな割れに至ると言われている。よって、結晶粒を微細化して粒界密度を増せば、微細な窪みの密度も増大し、窪みに掛かる(集中する)応力が分散されるため大きな割れの発生を抑えることができると考えられる。
しかしながら、耐応力緩和性の観点から見た場合、結晶粒の微細化は特性低下の一因となる。応力緩和はクリープの一種であり、原子の拡散や転位の移動が経時的に進むことによって材料の変形が進行していく現象である。ここで、結晶粒界は拡散の主経路として機能するため、結晶粒の微細化によって粒界密度が高くなると原子の拡散が促進されて応力緩和が進行しやすくなる。
以上のように、曲げ加工性と耐応力緩和性は二律背反の関係にある特性値であり、単純な組織制御によって両者の向上を両立することは困難な状況にあった。従って、本発明の目的は、複雑な曲げ加工を施しても割れが生じない優れた曲げ加工性と高温環境下における優れた耐応力緩和性を両立し、さらに高い機械的強度と良好な導電性を併せ持ったコネクタ用銅合金条を提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するため、Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金条であって、
その圧延方向に垂直な断面での金属組織に関して、前記銅合金条の両表面から厚さ方向に板厚全体の20%までの部分を範囲とする表面層における前記銅合金条の母材の平均結晶粒径が10μm未満であり、前記表面層以外の部分を範囲とする内部層における前記母材の平均結晶粒径が10μm以上であることを特徴とする銅合金条を提供する。
また、本発明は、上記目的を達成するため、上記の本発明に係る銅合金条において、前記銅合金条は、さらにZn,Snの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有することを特徴とする銅合金条を提供する。
本発明によれば、複雑な曲げ加工を施しても割れが生じない優れた曲げ加工性と高温環境下における優れた耐応力緩和性を両立し、さらに高い機械的強度と良好な導電性を併せ持ったコネクタ用銅合金条を提供することができる。
[銅合金条の構成]
本実施の形態における銅合金条は、その平均組成においてNiを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金条であって、その圧延方向に垂直な断面での金属組織に関して、前記銅合金条の両表面から厚さ方向に板厚全体の20%までの部分を範囲とする表面層における前記銅合金条の母材の平均結晶粒径が10μm未満であり、前記表面層以外の部分を範囲とする内部層における前記母材の平均結晶粒径が10μm以上であることを特徴とする。
より望ましい実施形態においては、上記の組成に加えてZnもしくはSnの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有させることを特徴とする。
本実施形態において、銅合金条を構成する合金成分の添加理由と限定理由を以下に説明する。
NiとSiは、Ni2Siで表される化合物を作って材料中に分散析出し、それによって材料の機械的強度やばね性が高まると共に良好な導電率を保つことができる。ここで、NiとSiの含有量を上記の範囲に規定することで、より効果的に高い機械的強度とばね性、良好な導電率を両立させることができる。なお、NiとSiの化合物としては、Ni2Siの他にNi5Si2、Ni3Si等も考えられるが、本発明においては実質的にNi2Siと考えてよい。
Siの添加量を0.2質量%未満にすると、十分な量のSi化合物を形成することができず、満足できる機械的強度・ばね性が得られない。また、1.0質量%を超えて添加すると、導電性低下の悪影響が出ると共に、鋳造時や熱間加工時にSi化合物の偏析に起因する割れが起こりやすくなる。よって、Siの組成範囲は0.2〜1.0質量%に規定する。より望ましくは、0.3〜0.7質量%に規定する。Siの組成範囲を0.3〜0.7質量%にすることによって、より良好な鋳造性や圧延加工性が得られる。
このSiの組成範囲に対して効果的に化合物を形成させ、高い機械的強度と高導電性を両立させるためには、Niの組成範囲を1.0〜5.0質量%に規定する必要がある。Niの含有量が組成範囲の下限を下回る場合、化合物の形成量が不十分になり、機械的強度・ばね性が不足する。また、組成範囲の上限を超える場合は、余剰のNiが銅中に固溶して導電率を低下させる。ここで、NiとSiの添加量の間には最適な比率があり、両者の質量比がNi/Si=4〜6の範囲にあることが望ましい。この場合、化合物を形成しない余剰な合金元素を少なく抑えることができ高い導電性を得ることができる。
さらに上記の組成に加えてZnもしくはSnの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有させた場合、機械的強度・ばね性をさらに向上させることができると共に、電気・電子部品材料に要求されるめっき密着性・はんだ濡れ性・耐マイグレーション性などを向上させることができる。
Znは、機械的強度・ばね性・耐マイグレーション性の向上とともに、はんだ濡れ性やめっき密着性の改善に大きな効果がある副成分である。Snは、機械的強度・ばね性の向上とともに、高温環境下での耐応力緩和性(ばね性の耐久性、耐熱性)を大きく向上させる効果を持った副成分である。ただし、これらの含有量が合計5.0質量%を超える場合、導電率を低下させる悪影響が大きくなる。よって、ZnとSnの組成範囲は合計5.0質量%以下に規定する。
次に、本実施形態において、銅合金条の圧延方向に垂直な断面にて観察される金属組織について規定する理由を以下に説明する。
曲げ加工においては材料の表面部分に最も大きな歪みが加わるため、割れは表面近傍部分を起点として発生する。金属材料の加工歪みは粒界近傍に集積しやすく微細な窪みを生成させ、その窪みに応力集中する結果、窪みが成長して割れ(亀裂)になると考えられる。そこで、表面近傍部分の結晶粒を微細化する(粒界密度を高くする)ことは、割れ抑制の有効な手段の1つである。これは、加工歪みの集積箇所(結晶粒界)を増やすことで各集積箇所における歪みの蓄積量を減少させ、応力が特定の箇所に集中しないように分散できるためである。
一方、前述したように、良好な耐応力緩和性を得るためには粒界密度を低くする(結晶粒を大きくする)ことが有効である。そこで、材料内部の結晶粒径を一定以上に維持しつつ表面近傍部分の結晶粒のみを選択的に微細化すれば、耐応力緩和性を維持しつつ曲げ加工性の向上を図ることができると考えた。
本発明では、その指標として材料を両表面から厚さ方向に板厚全体の20%までの部分を範囲とする表面層とそれ以外の部分を範囲とする内部層に分け、それぞれの層について平均結晶粒径の範囲を規定した。表面層の平均結晶粒径を10μm未満としたのは、10μm以上の粒径の結晶組織になると曲げ加工時の歪みが十分に分散されず、割れが発生しやすくなるためである。また、内部層の平均結晶粒径を10μm以上としたのは、これよりも微細な結晶組織になると粒界密度が高くなるため粒界を主経路とする原子の拡散が進みやすくなり、耐応力緩和性の低下につながるからである。さらに、表面層の平均結晶粒径を5μm以下、内部層の平均結晶粒径を15μm以上に規定すればより望ましい特性を得ることができる。
[銅合金条の製造方法]
上記実施形態の銅合金条を製造する方法の1例について説明する。はじめに、前述した平均組成を有する銅合金を素材として形成する。銅合金素材の形成工程は、合金鋳造工程と鋳造後の熱間加工工程からなる工程が1例として挙げられる。形成した銅合金素材を700〜900℃に加熱した後に25℃/分以上の速度で300℃以下まで冷却する第1の熱処理を行い、その後300〜600℃で5分〜5時間加熱する第2の熱処理を行い、続いて1パスの加工率を5%以下に規定した冷間圧延を繰り返して合計加工率が10〜30%の圧延加工を加え、その後700℃以下で5秒〜5分間加熱する第3の熱処理を行うことにより製造することができる。以下、更に詳細に説明する。
(第1の熱処理)
第1の熱処理においては、形成した銅合金素材をまず700〜900℃に加熱した後に25℃/分以上の速度で300℃以下まで冷却する。加熱昇温時の保持時間は特に規定されないが、生産性の観点からは短い方が好ましく、実質的に当該温度領域に1秒以上保持されれば良い。第1の熱処理の目的は、最終的な銅合金条が適切な分散析出状態を有するための事前準備として、高温に加熱することで粗大な晶出物を形成した合金元素を十分に固溶させることにある。ここで、加熱温度が700℃未満では目的とする晶出物の固溶(溶体化)が十分に起こらず、900℃を超える温度では結晶粒が過度に粗大化して機械的特性の低下を引き起こす。また、冷却速度が25℃/分より遅い場合、冷却途中の段階で析出物が生成し成長するため、望ましい機械的強度を得るための析出状態が実現されなくなる。
(第2の熱処理)
第2の熱処理においては、300〜600℃で5分〜5時間加熱する。第2の熱処理の目的は、NiとSiの化合物(Ni2Si)を材料全体に十分に析出させることにある。この処理によって材料中の全体にNiとSiの化合物が十分に析出し、良好な機械的強度・ばね性・導電性を実現することができる。ここで、加熱温度が300℃未満では十分な析出が起こらず、600℃を超える温度では析出物が粗大になり過ぎて機械的強度が不十分になる。なお、第1の熱処理後に冷間加工を加え、その後に第2の熱処理を施すことも有効である。この場合、冷間加工によって材料中に導入された格子欠陥(例えば転位)が析出物発生の起点となるため、より効果的に析出を進行させることができる(格子欠陥部には核生成し易い)。
(冷間圧延加工)
第2の熱処理後の冷間圧延加工においては、1パスの加工度を5%以下に限定した冷間圧延を繰り返して合計加工度が10〜30%の圧延加工を加える。この圧延加工の目的は、表面層に集中的に塑性変形(加工歪み)を与えることにある。ここで、該目的を達成するためには1パスの加工度を5%以下にする必要があり、それを超える加工度で圧延した場合、内部層にも表面層と同程度に塑性変形が加わってしまう。また、合計加工度が10%未満では表面層の組織微細化が不十分であり、合計加工度が30%を超えると圧延方向とそれに直交する方向との材料特性差が大きくなり、コネクタ等に使用される材料としては好ましくない。
(第3の熱処理)
第3の熱処理においては、700℃以下の温度で5秒〜5分間加熱する。第3の熱処理の目的は、材料中の余分な残留歪みを除去し、全体の延性を向上させることにある。ここで、加熱温度が700℃を超える温度では、再結晶が起こって結晶粒径が均一化し、本発明が目的とする結晶粒径分布が得られない。
[実施の形態の効果]
上記の本発明の実施形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)端子・コネクタ用材料として用いられている従来の銅合金に比して、同等以上の機械的強度・ばね性・導電性を確保するとともに、優れた曲げ加工性と耐応力緩和性を併せ持つ。
(2)上記の優れた性質により、小型化が進む電気・電子部品において、その設計の自由度を大幅に広げることができる。
(3)上記の優れた性質を有するにもかかわらず、従来材と同等のコストで製造することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜2、比較例1〜13]
表1に示す合金組成からなる試料No.1〜No.7を用いて、表2に示す製造条件にて銅合金条を製造し、それらの特性評価を行った。以下、各々について説明する。なお、表1において不可避不純物はCuに含めて表記した。
Figure 2010100890
Figure 2010100890
(実施例1〜2の作製)
Ni:2.5質量%、Si:0.6質量%を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金(試料No.1)を高周波溶解炉で溶製し、直径30 mm、長さ250 mmのインゴットに鋳造した。このインゴットを850℃に加熱して押出加工し、幅20 mm、厚さ8mmの板状にした後、厚さ0.32 mmまで冷間圧延した。次に、冷間圧延した材料を800℃に加熱して10分間保持した後に水中に投入して約300℃/分の速度で室温(約20℃)まで冷却する第1の熱処理を行った。次に、冷却した材料を450℃で2時間保持する第2の熱処理を行い、引き続いて1パスの加工率が5%を超えないようなパススケジュールで厚さ0.25 mmまで冷間圧延した。その後、これに500℃で1分間保持する第3の熱処理を行った(実施例1)。
Ni:2.5質量%、Si:0.6質量%に加えて、Zn:1.5質量%、Sn:0.3質量%を含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金(試料No.2)を高周波溶解炉で溶製し、直径30 mm、長さ250 mmのインゴットに鋳造した。このインゴットに対し、上記実施例1と同じ工程で加工・熱処理を行った(実施例2)。
(比較例1〜5の作製)
表1に示した試料No.3〜No.7の組成を有する銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30 mm、長さ250 mmのインゴットに鋳造した。このインゴットに対し、上記実施例1と同じ工程で加工・熱処理を行い、それぞれ比較例1〜5とした。
(比較例6〜13の作製)
表1に示した試料No.1の組成を有する銅合金を高周波溶解炉で溶製し、直径30 mm、長さ250 mmのインゴットに鋳造した。このインゴットを850℃に加熱して押出加工し、幅20 mm、厚さ8mmの板状にした後、厚さ0.32 mmまで冷間圧延した。その後、表2に示した試料No.8〜No.15の条件で加工・熱処理(第1の熱処理、第2の熱処理、冷間圧延、第3の熱処理)を行い、それぞれ比較例6〜13とした。
(引張強さ・導電率の測定結果)
以上のようにして作製した試料No.1〜No.15(実施例1〜2、比較例1〜13)について、引張強さおよび導電率を測定した。測定方法に関して、引張強さについてはJIS Z 2241に、導電率についてはJIS H 0505に規定された方法に準拠した。試料No.1〜No.7(実施例1〜2、比較例1〜5)の結果を表3に示す。なお、表3には、鋳造時のインゴットの割れ(鋳塊割れ)の有無を併記した。試料No.8〜No.15(比較例6〜13)の結果は表4に示す。
Figure 2010100890
表3に示したように、実施例1は、引張強さ690 N/mm2、導電率48%IACSという良好な特性を持つことが確認できた。また、実施例2は、引張強さ722 N/mm2、導電率42%IACSという良好な特性が得られ、ZnとSnの適正な添加によって実施例1に比べて更に良好な強度が得られた。すなわち、本発明に係る実施例1および実施例2は、いずれも700 N/mm2程度の高い引張強さと40%IACSを超える良好な導電率を両立して達成していることが確認された。
これらに対し、比較例1および比較例2は、Niの含有量が本発明の規定範囲から外れた例である。Niが過剰になると導電率の値が悪くなり(比較例1)、Niが不足すると強度が不十分になる(比較例2)ことが判る。比較例3および比較例4は、Siの含有量が本発明の規定範囲から外れた例である。Siが過剰になると鋳塊に割れが発生して加工自体が困難になる(比較例3)。またSiが不足する場合は導電率、強度の両方が不十分になっている(比較例4)。比較例5は、ZnとSnを過剰に添加した場合の例である。これらの副成分が過剰になった場合、引張強さは高い値を示したが導電率が不十分になる問題がある。なお、試料No.8〜No.15(比較例6〜13)の結果については後述する。
(平均結晶粒径・曲げ加工性・耐応力緩和性の測定結果)
上記のようにして作製した試料No.1,No.2,No.8〜No.15(実施例1〜2、比較例6〜13)について、平均結晶粒径、曲げ加工性および耐応力緩和性を測定した。平均結晶粒径については、圧延方向に垂直な断面の結晶組織を走査型電子顕微鏡で観察し、表面から厚さ方向に0.05 mm(板厚の20%)までの表面層および表面から0.05 mmより深い内部層のそれぞれについてJIS H 0501に規定される切断法で平均結晶粒径を測定した。結果を表4に記した。また、引張強さ・導電率の測定結果も併記した。
曲げ加工性については、JIS Z 2248のVブロック法に準じて曲げ加工試験を行った。曲げ軸を圧延平行方向(Bad way方向)にとり試料表面に割れが発生する最小曲げ半径R(mm)を測定した。なお、曲げ加工性は割れが発生する最小曲げ半径Rと試料の板厚t(mm)との比「R/t」によって通常表される。すなわち、「R/t」の値が小さいほど良好な曲げ加工性を持つことを意味する。結果を表4に併記した。
耐応力緩和性については、日本伸銅協会技術標準JCBA T309に規定された曲げによる応力緩和試験を行った。試料の表面最大応力が耐力の80%になるように曲げた状態で150℃に加熱し、1000 h経過後に生じた試料の永久変形から応力緩和率を測定した。なお、応力緩和率は値が小さいほど良好であり、20%を下回る値であれば十分望ましい特性と評価できる。測定結果は表4に併記した。
Figure 2010100890
表4に示したように、実施例1は、表面層の平均結晶粒径が6μm、内部層の平均結晶粒径が12μmであった。曲げ加工性は曲げ半径R=0mmの曲げにおいても割れが発生せず、応力緩和率は16%であった。また、実施例2は、表面層の平均結晶粒径が6μm、内部層の平均結晶粒径が12μmであり、曲げ加工性「R/t」が0mm、応力緩和率は16%であった。すなわち、平均結晶粒径が本発明の規定を満たす実施例1および実施例2は、いずれも良好な曲げ加工性と良好な耐応力緩和性を両立させていることが確認された。また、前述した高い引張強さと良好な導電率をも兼備しており、優れた銅合金条であると言うことができる。
これらに対し、比較例6および比較例7は、第1の熱処理温度が例示した範囲から外れた例である。第1の熱処理温度が低過ぎると機械的強度が不十分になるとともに、内部層の平均結晶粒径が本発明の規定範囲を外れて耐応力緩和性が低下した。第1の熱処理温度が高過ぎると表面層の平均結晶粒径が本発明の規定範囲を外れて曲げ加工性が悪化した。比較例8および比較例9は、第2の熱処理温度が例示した範囲から外れた例である。第2の熱処理温度が低過ぎる場合は化合物の析出が不十分となり、機械的強度や導電性が低くなった。また、第2の熱処理温度が高過ぎる場合は表面層の平均結晶粒径が本発明の規定範囲を外れ、曲げ加工性の低下につながることが確認された。
比較例10は冷間圧延加工における1パスの加工率が5%を超えた場合の例であり、比較例11および比較例12は合計加工率が10〜30%の範囲から外れた例である。1パスの加工率が高い場合は、表面層と内部層の平均結晶粒径が共に微細になっており、耐応力緩和性が低下した。また、合計加工率が低過ぎると機械的強度が不足すると共に表面層の平均結晶粒径が大きくなって曲げ加工性が低下した。一方、合計加工率が高過ぎると内部層の平均結晶粒径が小さくなり、耐応力緩和性が悪化することが確認された。比較例13は第3の熱処理温度が例示した範囲から外れた例である。第3の熱処理温度が高過ぎると表面層の平均結晶粒径が大きくなり、曲げ加工性が低下した。
以上の結果から、表面層の平均結晶粒径が10μm以上ものは曲げ加工性が悪化し、内部層の平均結晶粒径が10μm未満のものは耐応力緩和性が悪化していることが判る。言い換えると、良好な曲げ加工性と良好な耐応力緩和性を兼備するためには、表面層と内部層の平均結晶粒径を本発明の規定範囲に制御することが有効であると言える。また、本発明に示した適正な合金組成を有し適正な製造方法で表面層と内部層の平均結晶粒径を制御した銅合金条は、良好な機械的強度と導電性を持つと共に優れた曲げ加工性と耐応力緩和性を兼備することを実証した。

Claims (2)

  1. Niを1.0〜5.0質量%、Siを0.2〜1.0質量%含有し、残部がCuおよび不可避的不純物からなる銅合金条であって、
    その圧延方向に垂直な断面での金属組織に関して、前記銅合金条の両表面から厚さ方向に板厚全体の20%までの部分を範囲とする表面層における前記銅合金条の母材の平均結晶粒径が10μm未満であり、前記表面層以外の部分を範囲とする内部層における前記母材の平均結晶粒径が10μm以上であることを特徴とする銅合金条。
  2. 請求項1に記載の銅合金条において、
    前記銅合金条は、さらにZn,Snの一方もしくは両方を合計5.0質量%以下の範囲で含有することを特徴とする銅合金条。
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