JP3821183B2 - 永久磁石電動機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
発明は、空気調和機や冷蔵庫のコンプレッサ等に用いるインナーロータ型の永久磁石電動機に係り、さらに詳しく言えば、マグネットトルクを得る永久磁石の形状により、リラクタンストルクの有効利用を可能とする永久磁石電動機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の永久磁石電動機のインナーロータの構成は、ロータコアに永久磁石を埋設しており、例えば図5に示すものが提案されている。
【0003】
図5に示すように、24スロットのステータコア1内のロータコア2には、当該永久磁石電動機の極数(4極)分だけ板状の永久磁石3が外径に沿って円周方向に埋設されている。なお、4は中心孔(シャフト用の孔)、5はカシメピン、6はかしめ部である。
【0004】
この場合、永久磁石3の形状がほぼ断面扇状であり、この扇状の外側孤をコアの外周に沿って、またその扇状の内側孤を直線としていることから、永久磁石3の使用量(磁石量)が多く、大きいマグネットトルクを得ることができる。また、前記扇状の内側は直線としているため、コア中心部には正方形のボス部が形成され、このボス部にカシメピン5を通し、かつ、かしめ部6を形成することができ、永久磁石3と中心孔4との間には距離もあり、コア強度の面からも好ましい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記永久磁石電動機においては、リラクタンストルクの利用ができず、モータ効率の向上が見込めないという欠点がある。すなわち、永久磁石3の使用量をより多くするためには、隣接する永久磁石3の間が狭く、また、永久磁石3の幅(厚さ)を大きくしているために、ステータコア1からの磁束の路を確保することが困難だからである。
【0006】
発明は、前記課題に鑑みなされたものであり、その目的は永久磁石の断面形状を変えることにより、マグネットトルクおよびリラクタンストルクを有効利用し、ひいてはモータ効率の向上を図ることができるようにした永久磁石電動機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、極数分の永久磁石がコア外周に沿って等間隔に埋設されているロータコアを内部に有する永久磁石電動機において、前記永久磁石が断面両凸レンズ状の永久磁石であり、その一方の凸面を前記コア外周に沿った 曲線とし、他方の凸面を孤の中点とシャフト挿通用の中心孔との距離を所定値とした曲線にするとともに、前記永久磁石の両端部側を面取りすることによってフラックスバリアを形成してなることを特徴としている。
【0008】
この場合、請求項2に記載されているように、前記埋設する永久磁石の隣接同士を異極とし、該異極の永久磁石の間隔を当該ロータコアに使用する電磁鋼板1枚の厚さ以上にすることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、発明の実施の形態を図1ないし図4を参照して詳しく説明する。なお、図中、図5と同一部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0010】
発明の永久磁石電動機は、ロータコアに埋設する永久磁石の断面形状を凸レンズ形状とすれば、永久磁石の使用量(磁石量)を多くすることができ、つまりマグネットトルクが向上し、またステータコアからの磁束の路を確保することができ、つまりリラクタンストルクの利用が見込めることに着目にしたものである。
【0011】
そのため、図1および図2に示すように、この永久磁石電動機のロータコア10には、断面凸レンズ形状の永久磁石11がコア外周に沿って当該極数(四極)分だけ等間隔に埋設されている。各永久磁石11は一方の面をコア外周に沿うようにし、他方の面を中心孔4に向けている。
【0012】
さらに、図3に示すように、隣接する異極の永久磁石11の間は、ステータコア1からの磁束の路を確保するために所定幅sとし、例えば、ロータコア10に使用する電磁鋼板1枚の厚さ以上にすると好ましい。なお、永久磁石11の他方の面(中心孔4を向いている面)は、ステータコア1からの磁気の通路(いわゆる磁束の路)に沿った曲線にするとよい。
【0013】
したがって、図1において、q軸に関してはステータコア1からの磁束の路には永久磁石11が介在し、d軸に関してはステータコア1からの磁束の路がその曲線に沿った形でロータコア10に形成されることになる。つまり、q軸とd軸インダクタンスの差が大きくなり、リラクタンストルクの発生が見込める。
【0014】
また、各永久磁石11が断面凸レンズ形状であることから、各永久磁石11および中心孔4との間にはある程度の領域が生じ、この領域には、カシメピン12を通し、かしめ部13を形成する。
【0015】
さらに、図4に示すように、各永久磁石11の両端部側にはフラックスバリア用の孔11aを形成するとよい。この場合、各永久磁石11の両端部をカットすればよい。このフラックスバリア用の孔11aは、磁束の短絡、漏洩を防止することから、永久磁石11の磁束の損失を抑え、ひいてはマグネットトルクの低下を抑える。
【0016】
ところで、ロータコア10の製造においては、コアプレス金型を用いて自動プレスで電磁鋼板を打ち抜き、金型内でかしめてロータコア10を一体的に形成するコア積層方式(自動積層方式)を採用する。
【0017】
このプレス加工工程では、コアシート10aを打ち抜くとき、永久磁石11の孔およびカシメピン12の孔を打ち抜くとともに、かしめ部13をコアシート10aの積層毎に形成する。したがって、従来の自動積層方式によるプレス加工をそのまま利用することができる。
【0018】
このようにして、自動的にプレス、積層されたコアをかしめた後、永久磁石11の孔に磁石(例えばフェライト磁石)を埋設して蓋をし、カシメピン12を通してロータコア10をかしめ、かつ永久磁石11を凸レンズ形状の厚さ方向に磁化、着磁する。
【0019】
なお、図4について追加説明をすると、24スロットのステータコア1には、三相(U相、V相およびW相)の電機子巻線が施されているが、スロット数や電機子巻線が異なっていてもよい。また、ステータコア1において、例えば外径側の巻線をU相、内径側の巻線をW相、その中間の巻線をV相としてもよい。
【0020】
このように、各永久磁石11の断面を凸レンズ形状とすることで、永久磁石11の使用量は少なくとも従来と変わらず、つまりマグネットトルクが小さくならず、その凸レンズの形状によっては使用量を多くすることが可能であり、フラックスバリア用の孔11aにより、磁束の短絡、漏洩を防止することができる。
【0021】
また、隣接する永久磁石11の間隔を所定に開け、かつ永久磁石11の断面を凸レンズ形状としていることから、ステータコア1からの磁気の路を十分に確保することができ、リラクタンストルクの発生を見込むことができる。すなわち、q軸とd軸インダクタンスの差(Lq−Ld)が大きくなり、これによりリラクタンストルクを発生させることができるからである。したがって、マグネットトルクおよびリラクタンストルクの有効利用が図れ、ひいてはモータ効率の向上が図れる。
【0022】
なお、永久磁石11の他方の面(中心孔4を向いている面)については、永久磁石11と中心孔4との距離を考慮して決めるとよい。これにより、コア強度を低下させず済み、ひいては信頼性の低下を防止することができる。また、前述により形成されるロータコアを組み込んでブラシレスDCモータとし、空気調和機の圧縮機モータ等として利用すれば、コストをアップすることなく、空気調和機の性能アップ(運転効率の上昇、振動や騒音の低下)を図ることができる。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によると、極数分の永久磁石がコア外周に沿って等間隔に埋設されているロータコアを内部に有する永久磁石電動機において、前記永久磁石を断面両凸レンズ状の永久磁石としていることにより、永久磁石の断面積(磁石の使用量)を少なくとも従来と同じ程度することができる。しかも、永久磁石のシャフト挿通用中心孔側が曲線であることから、ステータコアからの磁束の路を確保してリラクタンストルクを発生させることができ、これによりマグネットトルクおよびリラクタンストルクを有効利用することができ、ひいてはモータ効率の向上を図ることができる。また、永久磁石の一方の面をコア外周に沿った曲線とし、他方の凸面を孤の中点とシャフト挿通用の中心孔との距離を所定値とした曲線にするとともに、前記永久磁石の両端部側を面取りすることによってフラックスバリアを形成してなるので、コア強度を保ちながら、永久磁石の使用量(磁石量)を最大限に多くすることができるとともに、永久磁石の磁束の短絡、漏洩を防止し、より大きいマグネットトルクの発生を見込むことができるため、モータ効率の向上を図ることができるという効果がある。
【0024】
請求項2記載の発明によると、請求項1において、前記埋設する永久磁石の隣接同士を異極とし、この異極の永久磁石の間隔を当該ロータコアに使用する電磁鋼板1枚の厚さ以上としたので、請求項1の効果に加え、ステータコアからの磁束の路をより確保することになる。つまり、磁気抵抗を小さくし、より大きいリラクタンストルクの発生を見込むことができるため、モータ効率の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明による永久磁石電動機の実施形態を示す概略的平面図。
【図2】 図1に示されているロータコアの概略的断面図。
【図3】 図1に示されているロータコアの一部分を拡大した概略的平面図。
【図4】ロータコアの好ましい実施形態を示す図3と同様の概略的平面図。
【図5】従来の永久磁石電動機を示す概略的平面図。
【符号の説明】
1 ステータコア
4 中心孔(シャフト用)
10 ロータコア(磁石埋込型界磁鉄心)
10a コアシート
11 永久磁石(断面凸レンズ形状)
11a 孔(フラックスバリア用)
12 カシメピン
13 かしめ部

Claims (2)

  1. 極数分の永久磁石がコア外周に沿って等間隔に埋設されているロータコアを内部に有する永久磁石電動機において、
    前記永久磁石が断面両凸レンズ状の永久磁石であり、その一方の凸面を前記コア外周に沿った曲線とし、他方の凸面を孤の中点とシャフト挿通用の中心孔との距離を所定値とした曲線にするとともに、前記永久磁石の両端部側を面取りすることによってフラックスバリアを形成してなることを特徴とする永久磁石電動機。
  2. 前記埋設する永久磁石の隣接同士を異極とし、該異極の永久磁石の間隔を当該ロータコアに使用する電磁鋼板1枚の厚さ以上とした請求項1記載の永久磁石電動機。
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