JP2018026965A - 回転子及び永久磁石式回転電機 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に示す永久磁石埋め込み型回転子は、電磁鋼板を積層して形成される回転子鉄心と、回転子鉄心の外周部に沿って設けられた複数の磁石挿入孔と、複数の磁石挿入孔に埋め込まれた複数の永久磁石とを備えている。そして、各磁石挿入孔は、全体が略コの字状であり、各磁石挿入孔の両端は回転子鉄心の半径方向内側に屈曲して永久磁石が存在しない周方向端部が円弧状の空気領域を形成している。そして、この空気領域は、永久磁石の外周側表面よりも軸孔側に配置するように構成されるとともに、永久磁石の内周面側表面よりも軸孔側に延びるよう構成されている。具体的に述べると、空気領域の周方向端部は、磁石挿入孔の外周側の直線部に接する円弧の一部で構成され、空気領域の半径方向内側端はその円弧の一部に接する半径の小さな円弧の一部で構成されている。
この特許文献1に示す永久磁石埋め込み型回転子によれば、高速回転時の遠心力による応力集中を緩和することができる。
即ち、この永久磁石埋め込み型回転子が高速回転した際に、最も応力が集中するのは、空気領域の最も軸孔に近い空気領域の半径方向内側端の円弧のところである。しかし、この空気領域の半径方向内側端の円弧は半径が小さいため、応力集中の緩和効果が十分ではない。
従って、本発明はこの従来の問題点を解決するためのなされたものであり、その目的は、高速回転時の遠心力による応力集中を十分に緩和することができる回転子及びこの回転子を備えた永久磁石式回転電機を提供することにある。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る回転子を備えた永久磁石式回転電機は、図1に示されており、永久磁石式回転電機1は、8極48スロットの埋込磁石型同期電動機である。なお、本発明は、極数やスロット数、その他の各部分の寸法などによって何ら制約を受けるものではない。
図1に示す永久磁石式回転電機1は、この固定子10の内周側に回転自在に配置された回転子20とを備えている。
また、回転子20は、図1乃至図3に示すように、軸孔22を中心に形成した円筒状に形成され、積層鉄心で構成された回転子コア21と、この回転子コア21に設けられた8つの磁極23とを備えている。回転子コア21の軸孔22には回転軸30が嵌挿固定され、回転子20は、回転軸30によって回転する。
そして、各磁石スロット24は、図3に示すように、回転子コア21の周方向に細長く延びる径方向外周面24a1及び径方向内周面24a2を有する矩形状の永久磁石挿入部24aと、永久磁石挿入部24aの周方向両端に形成された一対の空気領域24bとを備えている。永久磁石挿入部24aには、図1及び図2に示すように、断面が矩形状の永久磁石25が埋め込まれる。永久磁石挿入部24aの径方向内周面24a2の周方向両端部には、径方向外側に突出する一対のストッパ24fが形成されている。これらストッパ24fは、永久磁石挿入部24a内に埋め込まれた永久磁石25の周方向両側への移動を規制する。
また、径方向延出部24dの周方向外側面24d2は、図3に示すように、q軸に対して間隔d1だけ離れた直線状に形成されている。この間隔d1は、隣接する磁石スロット24と適切な間隔を保つために適宜決定される大きさである。但し、間隔d1は、後述する円弧C3の半径を大きくするためにできるだけ小さいことが好ましい。
また、径方向延出部24dの径方向内端面24d3及び周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3は、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2と、軸孔22から径方向外側に回転子コア21の機械的強度を最低限確保できる所定距離d2離れた軸孔22の同心円C2との双方に接する円弧C3の一部で構成されている。
しかし、前述の間隔d1を小さくすると、隣接する磁石スロット24との間隔が狭くなり、機械的強度が弱くなるという不都合がある。従って、回転子コア21の機械的強度と応力緩和効果の双方を考慮し、適宜、間隔d1の大きさを決定する。
さらに、周方向第2延出部24eの突出する長さl1を大きくすると、一対の空気領域24bの周方向第2延出部24e間の距離が短くなるため、磁束が通る間隔が短くなり、磁気的特性が悪化することになる。従って、周方向第2延出部24eの突出する長さl1は、応力集中の緩和効果と磁気的特性の悪化の程度を考慮して適宜決定する。
また、各空気領域24bにおいて、ストッパ24fの周方向外側面、即ち径方向延出部24dの周方向内側面24d4と、周方向第2延出部24eの径方向外側面24e1とは、双方に接する円弧により繋がれている。
ここで、径方向延出部24dの径方向内端面24d3、及び径方向延出部24dから周方向内側に永久磁石挿入部24aの径方向内周面24a2と軸孔22との間に至るまで延びる周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3が、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2に接する円弧C3の一部で構成されている。このため、径方向延出部24dの径方向内端面24d3に形成される円弧の半径が比較的大きいため、遠心力による径方向延出部24dの径方向内端面24d3近傍における応力集中を適切に緩和することができる。
更に、円弧C3は、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2と、軸孔22から径方向外側に回転子コア21の機械的強度を最低限確保できる所定距離d2離れた軸孔22の同心円C2との双方に接する円弧であるので、径方向延出部24dの径方向内端面24d3近傍における応力集中を適切に緩和できる一方で、回転子コア21の機械的強度を最低限確保することができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る回転子について図4及び図5を参照して説明する。図4及び図5において、図2及び図3に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図4に示す回転子20は、図2に示す回転子20と基本構成は同様であるが、図2に示す複数(8個)の磁石スロット24の各々が、永久磁石挿入部24aの周方向中央部のところで仕切り壁21aによって周方向左側と周方向右側とに2分割されて、2つの磁石スロット241、242で構成されている点で相違している。
また、径方向延出部24dの周方向外側面24d2は、図5に示すように、q軸に対して間隔d3だけ離れた直線状に形成されている。この間隔d3は、隣接する磁石スロット24と適切な間隔を保つために適宜決定される大きさである。但し、間隔d3は、後述する円弧C6の半径を大きくするためにできるだけ小さいことが好ましい。
また、径方向延出部24dの径方向内端面24d3及び周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3は、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2と、軸孔22から径方向外側に回転子コア21の機械的強度を最低限確保できる所定距離d4離れた軸孔22の同心円C5との双方に接する円弧C6の一部で構成されている。
また、軸孔22の同心円C5の半径を小さくすると、軸孔22と周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3との間の距離d4が短くなり、回転子コア21の機械的強度が弱くなる。従って、回転子コア21の機械的強度を考慮し、軸孔22の同心円C5の半径の大きさ、即ち軸孔22からの所定距離d4は、回転子コア21の機械的強度を最低限確保できる距離とする。
そして、周方向第2延出部24eの径方向外側面24e1は、周方向第2延出部24eの径方向の幅を考慮して永久磁石挿入部24aの径方向内周面24a2と平行な直線状に形成される。この直線状に形成された周方向第2延出部24eの径方向外側面24e1と周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3を構成する円弧C3との双方に接するR面を形成し、これにより周方向第2延出部24eの周方向内側面24e2を形成する。
このように構成された永久磁石式回転電機1においても、径方向延出部24dの径方向内端面24d3、及び径方向延出部24dから周方向内側に永久磁石挿入部24aの径方向内周面24a2と軸孔22との間に至るまで延びる周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3が、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2に接する円弧C6の一部で構成されている。このため、径方向延出部24dの径方向内端面24d3に形成される円弧の半径が比較的大きいため、遠心力による径方向延出部24dの径方向内端面24d3近傍における応力集中を適切に緩和することができる。
また、 更に、円弧C6は、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2と、軸孔22から径方向外側に回転子コア21の機械的強度を最低限確保できる所定距離d4離れた軸孔22の同心円C5との双方に接する円弧であるので、径方向延出部24dの径方向内端面24d3近傍における応力集中を適切に緩和できる一方で、回転子コア21の機械的強度を最低限確保することができる。
次に、本発明の第3実施形態に係る回転子を構成する回転子コアについて図6を参照して説明する。図6において、図3に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
図6に示す回転子コア21は、図3に示す回転子コアと基本構成は同様であるが、各磁石スロット24における永久磁石挿入部24a及び空気領域24bの形状が相違している。
具体的に述べると、各磁石スロット24は、回転子コア21の周方向に細長く延びる径方向外周面24a1及び径方向内周面24a2を有する矩形状の永久磁石挿入部24aと、永久磁石挿入部24aの周方向両端に形成された一対の空気領域24bとを備えている。
この永久磁石挿入部24aには、図示はしないが、断面形状を永久磁石挿入部24aの形状に対応させた永久磁石が埋め込まれる。永久磁石挿入部24aの径方向内周面24a2の周方向両端部には、径方向外側に突出する一対のストッパ24fが形成されている。これらストッパ24fは、永久磁石挿入部24a内に埋め込まれた永久磁石の周方向両側への移動を規制する。
また、径方向延出部24dの周方向外側面24d2は、図6に示すように、q軸に対して間隔d5だけ離れた直線状に形成されている。この間隔d5は、隣接する磁石スロット24と適切な間隔を保つために適宜決定される大きさである。但し、間隔d5は、円弧C9及び後述する円弧C11の半径を大きくするためにできるだけ小さいことが好ましい。
ここで、円弧C11の半径の大きさは、径方向延出部24dの径方向内端面24d3の近傍における応力集中の緩和効果を増加させる重要なポイントであり、円弧C11の半径の大きさが大きければ大きい程、応力集中の緩和効果が大きい。従って、この円弧C11の半径の大きさを大きくするために、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2とq軸との間隔d5を小さくする、軸孔22の同心円C10の半径を小さくする、周方向第2延出部24eの突出長さl3を大きくすることが好ましい。
また、軸孔22の同心円C10の半径を小さくすると、軸孔22と周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3との間の距離d6が短くなり、回転子コア21の機械的強度が弱くなる。従って、回転子コア21の機械的強度を考慮し、軸孔22の同心円C10の半径の大きさ、即ち軸孔22からの所定距離d6は、回転子コア21の機械的強度を最低限確保できる距離とする。
そして、周方向第2延出部24eの径方向外側面24e1は、周方向第2延出部24eの径方向の幅を考慮し直線状に形成される。この直線状に形成された周方向第2延出部24eの径方向外側面24e1と周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3を構成する円弧C11との双方に接するR面を形成し、これにより周方向第2延出部24eの周方向内側面24e2を形成する。
このように構成された永久磁石式回転電機1においても、径方向延出部24dの径方向内端面24d3、及び径方向延出部24dから周方向内側に永久磁石挿入部24aの径方向内周面24a2と軸孔22との間に至るまで延びる周方向第2延出部24eの径方向内端面24e3が、径方向延出部24dの直線状に形成された周方向外側面24d2に接する円弧C11の一部で構成されている。このため、径方向延出部24dの径方向内端面24d3に形成される円弧の半径が比較的大きくなり、遠心力による径方向延出部24dの径方向内端面24d3近傍における応力集中を適切に緩和することができる。
なお、第1乃至第3実施形態における軸孔22からの所定距離d2、d4、d6について詳細に説明すると、回転子コア21に回転軸30を焼き嵌めたとき、回転子コア21にかかる応力は同心円C2、C5、C6から軸孔22に向かうに従って急激に大きくなり、軸孔22部分で最大となる。この応力の最大値は、所定距離d2、d4、d6が小さいほど大きくなる。従って、所定距離d2、d4、d6は、この応力の最大値が回転子コア21の応力限界を超えない距離以上確保する必要がある。
例えば、図2に示す第1実施形態に係る回転子20において、1つの磁極23につき1つの磁石スロット24及び1つの永久磁石25を配置しているが、2つの磁極23に配置される2つの永久磁石25の極性を同一にして、1つの磁極につき2つの磁石スロット24及び2つの永久磁石を配置するようにしてもよい。
また、図4及び図5に示す第2実施形態に係る回転子20において、図2に示す複数(8個)の磁石スロット24の各々が、永久磁石挿入部24aの周方向中央部のところで仕切り壁21aによって周方向左側と周方向右側とに2分割されて、2つの磁石スロット241、242で構成されているが、永久磁石挿入部24aのところで3分割以上に分割されてもよい。
10 固定子
14 固定子巻線
20 回転子
21 回転子コア
22 軸孔
24 磁石スロット
24a 永久磁石挿入部
24a1 径方向外周面
24a2 径方向内周面
24b 空気領域
24c 周方向第1延出部
24c1 径方向外周面
24d 径方向延出部
24d1 径方向外周面
24d2 周方向外側面
24d3 径方向内端面
24e 周方向第2延出部
24e3 径方向内端面
25 永久磁石
C1、C3、C4、C6、C7、C8、C9、C11 円弧
C2、C5、C10 同心円
Claims (8)
- 軸孔を中心に複数の磁石スロットを外周部に沿って配設した円筒状の回転子コアと、前記複数の磁石スロットの各々に埋め込まれた複数の永久磁石とを備え、
前記複数の磁石スロットの各々が、周方向に細長く延びる径方向外周面及び径方向内周面を有する永久磁石挿入部と、該永久磁石挿入部の周方向両端に形成された一対の空気領域とを備え、
前記一対の空気領域の各々は、前記永久磁石挿入部の周方向端部から周方向外側に延びる周方向第1延出部と、該周方向第1延出部から径方向内側に前記永久磁石挿入部の径方向内周面よりも軸孔側に至るまで延び、周方向外側面が直線状に形成された径方向延出部と、該径方向延出部から周方向内側に前記永久磁石挿入部の径方向内周面と軸孔との間に至るまで延びる周方向第2延出部とを備え、
前記径方向延出部の径方向内端面及び前記周方向第2延出部の径方向内端面は、前記径方向延出部の直線状に形成された周方向外側面に接する円弧の一部で構成されていることを特徴とする回転子。 - 前記円弧は、前記径方向延出部の直線状に形成された周方向外側面と、前記軸孔から径方向外側に前記回転子コアの機械的強度を最低限確保できる所定距離離れた前記軸孔の同心円との双方に接する円弧であることを特徴とする請求項1に記載の回転子。
- 前記永久磁石挿入部は、周方向に細長く延びる矩形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転子。
- 前記周方向第1延出部の径方向外周面及び前記径方向延出部の径方向外周面は、前記永久磁石挿入部の径方向外周面に接する前記回転子コアと同心円の円弧の一部で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の回転子。
- 前記複数の磁石スロットの各々は、前記永久磁石挿入部のところで複数分割されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の回転子。
- 前記永久磁石挿入部は、前記径方向外周面が前記回転子コアと同心円の円弧の一部で構成され、前記径方向内周面が、前記径方向外周面の円弧よりも小さい半径を有する、前記回転子コアと同心円の円弧の一部で構成される形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の回転子。
- 前記周方向第1延出部の径方向外周面及び前記径方向延出部の径方向外周面は、前記永久磁石挿入部の径方向外周面及び前記径方向延出部の直線状に形成された周方向外側面に接する円弧の一部で構成されることを特徴とする請求項6に記載の回転子。
- 固定子巻線を巻装した固定子と、該固定子の内周側に回転自在に配置された、請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の回転子とを備えたことを特徴とする永久磁石式回転電機。
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