JP3820369B2 - 水性相からのフッ素化乳化剤の回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(説明)
本発明は、フッ素化単量体がテロゲン性を持たないが故にそれらの重合において用いられるフッ素化乳化剤を含んでいる廃水、特に軽度に汚染されている廃水の仕上げ処理(work-up)に関する。特に、過フッ素化されたまたは一部フッ素化されたアルカンカルボン酸類または同スルホン酸類の塩、好ましくはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩が使用される。これらの化合物はエレクトロフルオリネーション(electrofluorination)により、またはフッ素化単量体のテロメリゼーションにより製造されるが、それには相当の努力を伴う。従って、これらの有価物質を廃水から回収する多数の試みが存在していた。
【0002】
米国特許−A−第5,442,097号明細書は、汚染されている出発材料からフッ素化カルボン酸を有価形態で回収する方法を開示している。この方法において、フッ素化カルボン酸は、必要ならば、水性媒体中でこれら材料から十分に強い酸を用いて遊離され、このフッ素化カルボン酸は適当なアルコールと反応せしめられ、そして形成されたエステルが蒸留によって抽出される。ここで使用される出発材料は、特に乳化重合からの重合液であることができるが、この乳化重合液中ではフルオロポリマーが比較的大量の乳化剤の助けを借りてコロイド粒子の形で製造される。「重合液」は、ここでは、フルオロポリマーを凝固(洗浄のようなさらなる加工工程なし)により単離する時に生成する廃水を意味するために用いられる。この方法は非常にうまくいくことが分かっているが、出発材料中にはある一定濃度のフッ素化カルボン酸を必要とする。
【0003】
フッ素化カルボン酸の蒸留による回収は、また、アルコール類の非存在下でも行うことができる。この変形方法において、フッ素化カルボン酸は蒸留により高度に濃縮された共沸混合物の形で抽出される。この変形方法は、しかし、エネルギー上の理由から工業的には不利である。加えて、結果として生ずる廃水が処理前よりもさらに高度に汚染されている。
【0004】
ドイツ特許−A−第20 44 986号明細書は、ペルフルオロカルボン酸の希薄溶液を弱塩基性のアニオン交換体樹脂と吸着接触させ、それによってその溶液中に存在するペルフルオロカルボン酸をアニオン交換体樹脂上に吸着させ、そのアニオン交換体樹脂をアンモニア水溶液で溶離し、吸着されたペルフルオロカルボン酸をかくして溶離剤中に移し、最後にその酸を溶出液から単離する、希薄溶液からのペルフルオロカルボン酸の単離方法を開示している。しかし、完全な溶離には比較的大量の希薄アンモニア溶液が必要とされ、加えてこの方法は非常に時間のかかる方法である。これらの欠点は、吸着フッ素化乳化剤酸のアニオン交換体からの溶離が希薄鉱酸と有機溶媒との混合物を用いて行われる、アニオン交換体上に吸着されたフッ素化乳化剤酸の溶離に関する米国特許−A−第4,282,162号明細書に開示される方法によって克服される。この方法においては、鉱酸の使用でアニオン交換体樹脂の再生が同時に行われる。
【0005】
廃水処理におけるアニオン交換体樹脂の工業規模での使用は、フルオロポリマーのラテックス粒子の存在によって本質的に妨げられる。ラテックス粒子はアニオン的に安定化され、その結果としてアニオン交換体樹脂中で凝固されるのである。その交換体カラムは従って閉塞されることになる。
【0006】
この困難は、廃水中の微細な固体を界面活性剤または界面活性物質を用いて安定化し、続いてフッ素化乳化剤酸をアニオン交換体樹脂に結合させ、それよりそのフッ素化乳化剤酸を溶離させる、提案されたフッ素化乳化剤樹脂の単離方法(WO−A−99/62830)によって克服される。その実施例では、ノニオン界面活性剤が100〜400mg/Lの濃度で用いられている。
【0007】
水性相が、乳化剤の外に、少量のフルオロポリマー粒子を、そして恐らくはさらなる物質も含んでいる、水性相からのフッ素化乳化剤の回収方法であって、
【0008】
−ノニオン界面活性物質の上限濃度値にして、それより低い濃度ではアニオン交換体に結合している乳化剤の脱着のさらなる減少は起こらないそのような上限濃度を求め、
【0009】
−上記水性相を、上記のようにして求められた上限濃度値と、上記フルオロポリマー粒子の凝固を妨げるのに依然として有効である、上記濃度よりも低い濃度との間のノニオン界面活性剤濃度に調整し、
【0010】
−上記のようにして調整された水性相を、上記乳化剤の吸着をアニオン交換体樹脂の上に成し遂げるためにそのアニオン交換体樹脂と接触させ、そして
【0011】
−上記乳化剤を上記アニオン交換体樹脂から遊離させる
上記の方法がここに見いだされた。
【0012】
ノニオン界面活性剤の適した濃度は、重合体のタイプ、界面活性剤、および水性相中に存在する任意の他の物質に依存する。従って、処理されるべき各廃水についてノニオン界面活性剤の適した濃度範囲を測定することが賢明である。10ppmと言う最大濃度、ほとんどの場合5〜0.1ppmの範囲の濃度が通常は十分である。
【0013】
上記のように、本発明に従って処理されるべき廃水は汚染が僅かであるのが好ましいから、その廃水のさらなる仕上げ処理に対して新しい汚染を引き起こすことを避けるために必要な、単に十分な助剤化学薬品を、その廃水に加えることが理にかなっている。他方、異なる廃水の混合物を一緒に仕上げ処理しなければならない可能性のある工業的な実施においては、それらの限度値それぞれの測定を避けたい場合、約3ppmという平均値が、一般に、問題なしに使用することができる。
【0014】
不必要なコストを避けることの外に、少量のノニオン界面活性剤使用のさらなる利点は、また、泡が抑制されることである。泡は工業規模では非常に厄介であることがあり、そしてある場合には抑泡剤による廃水のさらなる汚染が不可避となる。
【0015】
ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化熱可塑性樹脂およびフッ素化エラストマーのようなフルオロポリマーの製造では、これら重合体は凝固で分離、取り出される。凝固は高剪断比を用いて機械的に行われるか、または鉱酸若しくは無機塩類による沈殿によって化学的に行われる。この凝固フルオロポリマーは通常凝集され、そして水で洗浄される。かくして、比較的大量のプロセス廃水、即ち通常はフルオロポリマー1トン当たり約5〜10トンの廃水が生ずる。これらのプロセス工程において、フッ素化されている乳化剤の大部分は洗い落とされ、従ってそれは廃水中に存在する。その濃度は通常1リットルあたり数ミリモルで、これは約1000ppmに相当する。前記で既に述べた成分の外にも、廃水は、さらに、乳化剤とほぼ同じオーダーで存在する、開始剤や緩衝剤のような重合由来の化学薬品、および凝固しなかった非常に少量のフルオロポリマーのラテックス粒子も含んでいる。これらラテックス粒子の廃水中における割合は、通常0.5重量%未満である。
【0016】
フッ素化された乳化剤の製造は、特にこれらの物質が高純度で用いられる必要がある故に、相当の努力を伴うことは既に述べた。さらに、これらの乳化剤は生分解性が低く、従って廃水から可能なほとんど完全な除去が必要であると思われる。本発明による方法は、前記で定義された僅かに汚染されたタイプの廃水からでさえも事実上定量的な回収を可能にする。
【0017】
ノニオン界面活性剤のこの低濃度のさらにもう1つの利点は、アニオン交換された廃水からのラテックス粒子の分離がさらに効果的なことである。これらの粒子は少量の有機凝集剤で有利に凝固され、この場合必要とされる凝集剤の量はノニオン界面活性剤の濃度が高くなると共に増加することが見いだされている。この結果として得られる、今や少量の界面活性剤および凝集剤で汚染されているフルオロポリマーは建築材料で使用することができ、従って完全な仕上げ処理に付す必要またはゴミ処理場に廃棄する必要がない。
【0018】
適したノニオン界面活性剤は、商業的に入手できる、有機ヒドロキシル化合物のオキシエチレート類およびオキシプロピレート類であるが、環境保護の理由から非芳香族のオキシアルキレート類が好ましい。それ故、長鎖アルコールのオキシエチレート類が好ましい。
【0019】
有機凝集剤は、例えばニューヨーク(New York)、ワイレイ・インターサイエンス社(Wiley Interscience)刊のEncycl. Polym. Sci. Engng.、7、211(1987)に記載されている。
【0020】
有機凝集剤はカチオン性の製品、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが有利である。
【0021】
例えばジデシルジメチルアンモニウムクロリドのようなカチオン界面活性剤も、ノニオン性の安定化されたラテックス粒子の沈殿に同様に使用することができる。しかし、工業規模でのそれらの使用は、もし沈殿が不適当に行われるならば、カチオン安定化ラテックス粒子を与える粒子の電荷反転が優先的に起こる可能性があるので、問題である。この電荷反転は沈殿の程度を相当に低下させる。
【0022】
本発明は以下の実施例でさらに詳細に説明される。
【0023】
(実施例)
以下の実施例においては、ラテックス粒子のみならず、重合で用いられたペルフルオロオクタン酸の約90重量%も含んでいる、機械的に凝固された重合体の分散液の廃水が用いられた。それらは洗浄水で凝集樹脂から希釈されていない。テトラフルオロエチレンとエチレン、ペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテル、ヘキサフルオロプロペンとの重合、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとフッ化ビニリデンとの三元共重合体の重合からの廃水、並びにこのような廃水の混合物を調べた。上記三元共重合体の廃水、テトラフルオロエチレンと上記エーテルとの共重合体の廃水、およびエチレンの共重合体の廃水は、交換体カラムを閉塞させる傾向があることが見いだされたので、この廃水をより詳細に調べた。
【0024】
アニオン交換体カラムの寸法は次のとおりであった:高さ5cm、直径4cm、充填量500mL、流量0.5〜1L/時、作動法:頂部から底部へ。商業的に入手できる、容量1.2ミリモル/mLの強塩基性アニオン交換体・アンパーライトTM(AMPERLITETM)IRA 402が用いられた。
【0025】
カラムの閉塞は一定静水圧の下で流量を監視することによって確認された。実験は、ペルフルオロオクタン酸が出現するまで行われた。実験室規模での典型的な実験は、150Lまでの量を必要とした。流量は、開始時と終点時に、所定の時間の間にイオン交換された廃水を秤量することによって求められた。実験終点時における<20%の流量低下は許容できると見なされた。実験の開始時において、アニオン交換体樹脂はOH-形をしていた。ペルフルオロオクタン酸の測定限度は5ppmであった。
【0026】
実施例1
テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロペンとフッ化ビニリデンとの三元共重合体の重合からの、重合体ラテックス粒子を0.3重量%およびペルフルオロオクタン酸を0.1重量%含んでいるプロセス廃水(「重合液」)を用いた。商業的に入手できるp−オクチルフェノールオキシエチレートであるトリトンTM(TRITONTM)X100(ローム・アンド・ハース社[Rohm & Hass]、CAS No. 9002-93-1)を用いた。
【0027】
【表1】
Figure 0003820369
【0028】
漏出に近いペルフルオロオクタン酸濃厚物は、前記ノニオン界面活性剤の比較的高い濃度において「流出(run-out)」することを示している。公称イオン交換容量は、ノニオン界面活性剤の比較的高い濃度において低下せしめられると思われる。
【0029】
実施例2
使用されたノニオン界面活性剤が商業的に入手できる脂肪アルコールポリグリコールエーテルであるジェナポールTM(GENAPOLTM)X080(ヘキスト社[Hoechst AG])とするように変えて実施例1を繰り返す。
【0030】
【表2】
Figure 0003820369
【0031】
実施例3
実施例2を繰り返したが、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(n−プロピルビニル)エーテルとの共重合体の重合からの、ペルフルオロオクタン酸を0.1重量%および重合体ラテックス粒子を0.4重量%含んでいるプロセス水(「重合液」)を用いた。
【0032】
【表3】
Figure 0003820369
【0033】
実施例4
実施例2を繰り返したが、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体の重合からの、ペルフルオロオクタン酸を0.2重量%および重合体ラテックス粒子を0.6重量%含んでいるプロセス水(「重合液」)を用いた。
【0034】
【表4】
Figure 0003820369
【0035】
実施例5
表5および6に示されるタイプの廃水を、商業的に入手できる有機凝集剤であるマグノフロックTM(MAGNOFLOCTM)1697(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アライド・コロイズ社[Allied Colloids Company])により処理した。ラテックス粒子を定量的に沈殿させるための上記凝集剤の最低濃度を滴定で測定した。上記凝集剤の0.1重量%濃度溶液を、穏やかに攪拌しながらイオン交換体溶出液に滴下した。ラテックス粒子は事実上瞬間的に沈殿し、そして非常に速やかに沈降する。滴下は、さらなる沈殿が観察されなくなるときに終わりとする。結果は次の表に示される。
【0036】
【表5】
Figure 0003820369
【0037】
【表6】
Figure 0003820369

Claims (8)

  1. フッ素化された乳化剤とともに少量のポリマー粒子を含んでいる水性相からのフッ素化された乳化剤の分離方法であって、
    それによって、ノニオン界面活性剤と混合された水性相をアニオン交換体樹脂と接触させ、そして
    上記水性相を、30ppmと、上記ポリマー粒子の凝固を避けるのに依然として有効である、上記濃度よりも低い濃度との間のノニオン界面活性剤濃度に調整する
    上記の方法。
  2. ノニオン界面活性剤の濃度が
    Figure 0003820369
    であることを特徴とする、上記請求項1記載の方法。
  3. ノニオン界面活性剤の濃度が5〜0.1ppmである、請求項2記載の方法。
  4. ノニオン界面活性剤が非芳香族である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. ノニオン界面活性剤が脂肪アルコールオキシエチレートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  6. フルオロポリマー粒子を本質的に全て沈殿させるために、水性相に有効量の有機凝集剤を加える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  7. 凝集剤が有機カチオン凝集剤である、請求項6記載の方法。
  8. 凝集剤を無処理のまたは処理された水性相に加える、請求項6または7に記載の方法。
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