JP3817320B2 - インクジェット用圧着紙 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧着した親展面同士を必要時に剥離でき、剥離することによってインクジェットプリンタを用いて親展面に印字されている個人向け情報を確認できるという圧着はがき等に用いられるインクジェット用圧着紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、郵便法の改正に伴い、封書よりも郵便料金が安く、封書と同様に通信の機密保持が可能な親展性を有するはがきが開発されてきている。中でも、用紙の親展面に塗被された剥離性を持つ感圧接着剤の層に各種情報を印字した後、用紙を二つ折り又は三つ折りに折り畳み、50〜100kg/cm2 の強圧をかけて親展面同士を前記感圧接着剤を介して圧着することによりはがきの形態を構成した所謂「圧着はがき」が、大量の通知書類の発送を必要とする業界で封書からの切り替えとして急速に進んでいる。
【0003】
従来より圧着はがきへの各種情報の印字方式としては、主としてレーザービーム方式が使用されてきた。ところが、レーザービーム方式では、トナー定着のために圧着はがきを加熱する必要があり、その加熱によって不快臭が発生したり、感圧接着剤の老化が進むという問題があった。また、レーザービーム方式を採用したプリンタの大部分は連続式であるにもかかわらず、圧着はがきの原紙が巻き取り状ではなくて1セットを基準とする折り畳み式であること、その原紙の接着面どうしが接触した状態からこれを展開して給紙し圧着する必要があること、などにより、接着面の接触箇所が大きな力で接着しているような場合には加工や取扱いの不備によってブロッキングが発生しやすかった。
【0004】
そこで、最近、レーザービーム方式に代わる印字方式として水溶性インク(「水性インク」と称することもある)を用いる高速インクジェット方式が注目されている。この高速インクジェット方式は、印刷と同様に巻取紙に直列ノズル連続インクジェット方式で直接印字を行い、そのインク部を高周波乾燥装置で局所的に発熱させて乾燥するという方式である。かかる高速インクジェット方式によれば、ランニングコストが安く、最大300m/minにも達する高速印字によって大量の情報処理が可能となる。高速インクジェット方式に使用される水溶性インク、例えばサイテックス社#1007等の水溶性インクは、染料が5〜6重量%であってその他の大部分は水分であるので、誘電率が高く発熱に対する効率が良いという性質を有している。
【0005】
他方、インクジェット用圧着紙には、圧着紙に当然に要求される機能に加えて、水溶性インクを使用対象とする一般的なインクジェット用紙と同じく、印字品質、インクの耐水性及び耐候性、インクの乾燥性、インクの裏抜け防止性能等が要求される。これらの品質の中では、圧着はがき郵送中の雨濡れ等による事故防止の点から、インクの耐水性に関してより高度の特性が要求される。
【0006】
この場合の耐水性については、直接染料又は酸性染料を着色剤とした水溶性インクについての耐水性が対象となる。この種の水溶性インクは、染料分子中のスルホン基及び/又はカルボキシル基の塩によって染料の水溶化がなされており、水溶性を与えている部分は強い負の電荷を帯びている。ここで、水溶性インクについての従来の耐水化技術の主なものは、インクジェット受容層をカチオン性を呈するポリマーで処理することによって電荷的に染料分子を捕捉し、水の蒸発に伴って近接した両者間にファンデルワールス力を働かせて染料分子をインクジェット受容層に固定するというものである。インクジェット受容層の処理に用いられるポリマーとして、具体的には、例えば4級化ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン、4級化ポリエチレンイミン、ポリアリルスルフォン、ジシアンジアミド縮合物、ポリエチレンポリアミン系ポリマー、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン等、多くのカチオン性ポリマーの応用が紹介されている。
【0007】
また、特開昭55−53591号公報には、多価金属塩類で染料を不溶化して耐水化する方法が開示されている。特開昭60−49990号公報にも、イミン基を有するカチオン性ポリマーと多価金属塩類とを併用する耐水化法等染料を不溶化する為に多価金属を利用する方法が開示されている。さらに、特開平5−124329号公報や特開平7−149038号公報には、カチオン性ポリマー層上にアニオン性塗工層を形成して2層構造の塗被層とし、その塗被層によってインクの耐水性を改善したインクジェット用紙が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
圧着紙に利用されるインクジェット方式は、フォーム印刷及びレーザービーム印字機能を代替するものが主体である。現在、サイテックス社のインクジェット方式が最も有力であるが、これに使用されるインクは従来のインクに比べると耐水化が極めて困難である。この点に関して、サイテックス社のインクジェット用インクのうち、具体的に黒インク#1007を対象として説明する。
【0009】
サイテックス社#1007インクは、固形分のほとんどが染料であり、その染料には3個のスルホン基を有するテトラキスアゾ系直接染料が使われている。このインク中の染料の電荷は、粒子表面電荷検出器PCD−2(ミューテック社製)の測定では−150〜−160mVであり、カチオン化剤を添加しても電荷の変動が起こらず、安定している。このため、大量のカチオン性ポリマーの添加によって凝集が起こったとしても基材への定着は困難である。
【0010】
また、圧着紙の親展面同士を接着する接着剤組成物はアニオン分散系であり、カチオン性ポリマーや多価金属塩類とは反応して凝集が起こるため、同時に混合ができない。さらに、サイテックス社のインクジェット用インクの耐水化には大量の耐水化剤が必要であり、耐水化剤の脱落が起こりやすい。従って、カチオン性ポリマー等の耐水化剤を下塗りし、その上に接着剤組成物の上塗り層を設ける2層構造にしようとしても、実際の塗工では上塗り層の塗工中に下塗り層の耐水化剤の脱落が起こる。これが戻り液に混じって接着剤組成物中に戻されるため、増粘、凝集が起こり、短時間で塗工作業は不可能となり、計量した接着剤組成物を上塗り層として流し出すダイコーターのような形式でない限り、製品化することはできない。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、塗工された単層の接着剤組成物が剥離可能な接着性とインクジェット適性を同時に満足し、特にインクジェットで印字した部分が水濡れ状態や浸水状態になっても印字の脱落や滲み、汚れ等が生じることのない高品質のインクジェット用圧着紙を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、親展面を有する用紙の親展面同士がその親展面に塗被された接着剤組成物を介して剥離可能に圧着される圧着紙において、前記接着剤組成物が、コールドシール剤、微細鉱物粉末に加えて、高pH域で電荷が零乃至負となるカチオン性ポリマーであるN−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミンと正電荷を保持しているポリカチオンからなることを特徴とするインクジェット用圧着紙、及び、同一組成物に更に多価金属塩類を添加したものからなることを特徴とするインクジェット用圧着紙である。
【0013】
前記接着剤組成物中のN−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミンの配合量は、コールドシール剤100重量部に対し、10〜40重量部であることが望ましい。また、前記接着剤組成物中のポリカチオンは、コールドシール剤100重量部に対し、1.0〜5.0重量部を配合する。
【0014】
さらに、インク中の染料を不溶化するには、前記接着剤組成物に多価金属塩類として、カルシウム及び/又はマグネシウム塩を併用することも有効である。前記ポリカチオンを接着剤組成物に混合すると、この塗料への多価金属塩類の相溶性が良くなり、不可逆的な凝塊の生成が皆無で、増粘傾向を著しく抑制することができる。多価金属塩類は染料の親水基と塩置換して、これを不溶化させるので、ポリカチオン量を減量することが可能となり、より加工適性の高いインクジェット用圧着紙の接着剤組成物を作ることができる。
【0015】
接着剤組成物中のコールドシール剤は、天然ゴム系ラテックスとメタアクリル酸メチル等を重合させた物を基剤としたものが、自着性、基材及び充填剤に対する接着力等の点で優れている。このコールドシール剤は、アンモニアで安定化したアニオン性エマルジョンであるため、カチオン性や酸性の物質、多価金属塩類を加えると不可逆的に反応して凝集する。
【0016】
微細鉱物粉末としては、3μm以下の超微細粉無定型シリカが望ましい。このような微細鉱物粒子は圧着時の強い圧力によっても二次粒子が圧潰せず、圧着面を剥離した際に脱落した粉末が対向面に転移する頻度が低下して、印字の転写防止が推進される。他の微細鉱物粉末も水溶性インクの吸収性が良く、印刷インクの受理性の高い顔料であれば使用できる。例えば、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン等印刷適性を考慮して選択する。
【0017】
高pH域において電荷が零乃至負に変化するカチオン性ポリマーとして、変性ポリエチレンイミンを使用することができる。ポリエチレンイミンは、1,2,3級アミノ基による分岐構造を有したポリイミンである。この1,2級アミン部分をヒドロキシルアルキル化したN−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミンが最適である。
【0018】
2,3級アミノ基は高pH域で解離しないので、正の電荷が減じ、1級アミノ基を変性したポリマーの電荷は零乃至負となり、アニオン分散系でpHの高い接着剤組成物とは、いかなる比率でも混合するので、染料の主たる耐水化剤として大量使用が可能であるが、実用的にはコールドシール剤100重量部当たり、10〜40重量部が適量である。これは、10重量部以下では耐水化が不完全であり、又大量添加域では接着力も低下し、特に利点がないからである。
【0019】
例えば、N−ヒドロキシプロピルポリエチレンイミン(ポリミンPP061 日本触媒化学製)は下記の構造である。
【0020】
【化1】
Figure 0003817320
【0021】
この構造式で示されるN−ヒドロキシプロピルポリエチレンイミンは、メーカー側の説明書でもイオン性がカチオンと表示されているが、商品の有姿は50%でpHは10以上あるので、粒子表面電荷検出器PCD−2(ミューテック社製)による測定では−320mVとなり、アニオン分散系であるコールドシール剤との相溶性が良好である点で特徴がある。
【0022】
この変性ポリエチレンイミンを混用することにより、インクの耐水化が可能ならば好都合であるが、サイテックス社#1007ブラック、#1011レッド、#1008ブルー等のインクで印字した場合、市場の要求水準にはほど遠く、耐水性がわずかに発現するにとどまる。
【0023】
上記の問題点の対策を鋭意研究した結果、高pH域でも高いカチオン密度を保持しているポリカチオンを少量併用することによって、サイテックス社のインクの耐水化を達成し得ることを知見した。ポリカチオンの添加量は、接着剤組成物の分散系が正に転換しないことが条件であり、この発明の範囲は接着剤組成物の電荷が負であって、充分な流動性を維持している範囲となるので、コールドシール剤100重量部当たり5重量部以下の少量であり、ポリカチオンの種類によっては上限はより低い値となる。ポリカチオンの添加量が増加するに従って耐水性が向上するが、粘度の上昇を伴うので、実用的な流動性の範囲ということで上限を定めた。
【0024】
これら後添加に用い得るポリカチオンは、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミドアンモニウム縮合物、ジシアンジアミドポリアルキレン・ポリアミン縮合物、ポリ(ジアリル)ジメチルアンモニウムクロライド、ポリアリルアミン、アリルアミン・ジアリルアミン共重合物、2−プロペンアミン・ハイドロクロライドホモポリマー、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン付加重合物、ポリビニルアミン等一般に染料固着剤として市販されている主として4級もしくは1級アミノ基を高率に含有する化合物である。これらのポリカチオンは、変性ポリエチレンイミンを添加していない接着剤組成物に添加すると添加時点で凝集塊を生成し、インクを不溶化するのに必要なポリカチオン量を混用することはできない。
【0025】
上記ポリカチオンを変性ポリエチレンイミンと併用することによってインクの耐水性は格段に向上し、市場で受け入れられる水準まで改善することができる。
【0026】
変性ポリエチレンイミンとポリカチオンを併用した系は前述の通り、アニオン分散系であるにも拘らず、ポリカチオンの添加により多価金属塩類の受容性が高く、多価金属塩類を添加しても増粘が僅かであるという現象が実用的に極めて重要なことである。多価金属塩類を使用することによって、ポリカチオンの配合比率を下げても充分な耐水性を維持することが可能となり、これによって接着剤組成物からなる塗料の流動性を著しく改善することができる。
【0027】
多価金属塩類についてはいずれも効果が認められるが、2価の金属塩類、特にカルシウム及びマグネシウム塩が染料の塩置換により不溶化した染料組成物の性能が元来の染料に近似しているため最適である。これらの金属塩として塩酸、硝酸、硫酸塩等溶解度の高い塩類が使用し易いが、少量でも充分効果があるポリカチオンもあり、微粉砕品であれば、ほとんど水に溶けない燐酸塩や水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムでも利用できる。また、2種以上の利用もインジェット適性の調整には有用である。カルシウム及び/又はマグネシウム塩の使用量は、コールドシール剤100重量部当たり、無水物換算0.5〜12重量部であるが、これによってポリカチオンの添加量は、40%以下に減量できる。
【0028】
接着剤組成物には必要に応じて顔料の分散剤、消泡剤、pH調整剤、老化防止剤、消臭剤、防腐剤等を使用する。
【0029】
本発明のイクンジェット用圧着紙は、三つ折りはがきや二つ折りはがき等のように折り畳んで圧着するタイプのはがき、あるいはカード等に適用できる。このうち、三つ折り又は二つ折りはがきでは、親展面上の少なくとも一部に接着剤組成物の塗被膜を設けて、この塗被膜の表面に個人向けの各種情報をインクジェットプリンタで印字後、三つ折り又は二つ折り状に折り畳み、圧着することにより構成する。
【0030】
【発明の実施の形態】
染料の耐水化剤を下塗りし、この上に接着剤組成物を塗工すると、計量時に生じる余剰液ヘカチオン性ポリマーや多価金属塩類等が溶出し、アニオン性である接着剤組成物に混入して増粘、凝集等が起こる。従って、接着剤組成物に弱アニオン性に変性したポリエチレンイミン誘導体とポリカチオン、或いはポリカチオンと多価金属塩類を混合して、一液でインクジェット適性と圧着性能を保証できる接着剤組成物とした。
【0031】
接着剤組成物中のコールドシール剤と相溶性が良く、分散系を安定させる機能がある変性ポリエチレンイミンを使用する。このカチオン性ポリマーは、イミンから構成されているにも拘らず、サイテックス社のインクについては、耐水化効果が不充分であるため、ポリカチオン又はポリカチオン及び多価金属塩類を併用し、変性ポリエチレンイミンによる耐水化反応を増強するものである。
【0032】
前記接着剤組成物の塗工層にインクジェットプリンタからのインク滴が付着すると、インクを構成するスルホン酸ソーダ、カルボン酸ソーダ等の可溶性成分がポリカチオン及び/又は多価金属塩類によって不溶化し、これがイミン基に捕捉され、乾燥によってファンデルワールス力が働くようになり、基材上に染料が固定される。
【0033】
この定着方式は前記サイテックス社製インクにとどまらず、直接染料及び酸性染料を着色剤とした水溶性インク全てに適用可能である。
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。また例中の部或いは%は断らない限り、それぞれ乾燥(または無水物)重量及び重量%を示す。
【0035】
【実施例】
<実施例1>
代表粒径1.2μmの無定形シリカ(カープレックスFPS101 塩野義製薬製)100重量部と、天然ゴム系ラテックス(FB−06FK 三井フラー社製)100重量部に、N−ヒドロキシプロピルポリエチレンイミン(エポミンPP061 日本触媒化学製)25重量部、ポリカチオンとしてジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物(ネオフィックスE−117 日華化学製)2.7〜4.6重量部を加えて塗料とした。これを上質紙に固形分7g/m2 の塗工量となるようにコーティングロッドで塗工した。
【0036】
<実施例2>
ポリカチオンとして、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(ネオフィックスR250 日華化学製)1.4〜2.6重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0037】
<実施例3>
ポリカチオンとして、2−プロペンアミンハイドロクロライドホモポリマー(ネオフィックスRD−5 日華化学製)(酸性が強いため、アンモニア水を加えてpHを5以上として添加、以下の例でも強酸性ポリカチオンは同様の前処理を行った。)1.2〜2.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0038】
<実施例4>
ポリカチオンとして、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(センカフィックスCP−101 センカ製)0.5〜1.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0039】
<実施例5>
ポリカチオンとして、ポリアリルアミン塩酸塩(PAA−HCI−3L 日東紡績製)0.7〜1.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0040】
<実施例6>
実施例1について、ネオフィックスE−117 0.68重量部に変更し、これに硝酸マグネシウム1.0〜5.0重量部を併用した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0041】
<実施例7>
実施例6についてポリカチオンを、センカフィックスCP−101 0.28重量部に変更した以外は、実施例6と同様に実施した。
【0042】
<実施例8>
実施例6について、ポリカチオンをポリアリルアミン塩酸塩(PAA−HCI−3L 日東紡績製)0.35重量部に変更した以外は、実施例6と同様に実施した。
【0043】
<実施例9>
実施例6について、ポリカチオンをポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PAL−2 センカ製)0.20重量部に、硝酸マグネシウム6.3〜12重量部に変更した以外は、実施例6と同様に実施した。
【0044】
<実施例10>
実施例1について、ネオフィックスE−117の配合部数を0.68重量部に変更し、これに塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウムをそれぞれ2〜12重量部添加した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0045】
<実施例11>
実施例1について、エポミンPP061を10〜20重量部、ポリカチオンとしてPAA−HCI−3Lを0.35重量部に変更し、これに硫酸マグネシウム4〜11重量部を添加した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0046】
<実施例12>
代表粒径1.2μmの無定形シリカ(カープレックスFPS101 塩野義製薬製)100重量部、微細タルク(代表粒径3μm)50重量部と天然ゴム系ラテックス(FB−06FK 三井フラー製)100重量部に、N−ヒドロキシプロピルポリエチレンイミン(エポミンPP061 日本触媒化学製)25〜35重量部と、カチオン化PVA(クラレポバールC−506 クラレ製)10重量部を添加し、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物(ネオフィックスE−117 日華化学製)2.8重量部と塩化カルシウム6重量部を添加して塗料とした。これを上質紙に固形分6g/m2 の塗工量となるようにコーティングロッドで塗工した。
【0047】
上記実施例に従って製作したインクジェット用圧着紙について、インク発色製及び印字の耐水性の各性能試験を行った。以下各性能試験の方法とその評価の仕方を説明する。
【0048】
(1)インク発色性
インクジェットプリンタ(シャープIO−735X)のインクタンクにサイテックス社インク#1007黒、#1011赤、#1008青をそれぞれ注入し、普通モードで接着面に各色のベタ印刷を行った。印字濃度は黒についてのみマクベス濃度計によって測定した。
【0049】
(2)印字の耐水性
印字品を垂直にして、30℃の水中に2分間浸した後、鏡面板に貼り付け、浸漬時と同じ状態で風乾し、水浸漬後の試料とした。水浸漬後の印字濃度は黒についてのみマクベス濃度計によって、測定した。水浸漬後の試料の目視判定は、◎、○、○′、△、×の5段階に区別した。○′が合格の限度で下部に僅かに染料が染み出す程度を表し、◎は水浸漬後もドット端がシャープなものである。×は染料が殆ど溶出してしまう状態をいう。
【0050】
以上の実施例1乃至5の結果を図1に示す。実施例6乃至9の結果を図2に示す。実施例10の結果を図3に、実施例11の結果を図4に、実施例12の結果を図5にそれぞれ示す。
【0051】
実施例1乃至5の結果を示す図1において、ポリカチオンの耐水化効果は、インクの種類によって異なり、黒インクの耐水化が最も容易とは必ずしもいえない。ポリカチオンの添加量に応じて耐水性が向上するが、塗料の粘度上昇を伴うことが判る。但し、印字濃度の低下は比較的小さい。
【0052】
実施例6乃至9の結果を示す図2で明らかなように、ポリカチオンの種類によって耐水性を与える硝酸マグネシウムの適量は異なる。この系でもポリカチオンが変わるとインクの色別の耐水化の難易度に差が生じることが判る。
【0053】
実施例10の結果を示す図3で明らかなように、塩化カルシウムは最も効果が高いことが判る。塩酸、硝酸塩はほぼ同程度であるが、共通して潮解性を持つ欠点があり、硫酸マグネシウムはその欠点はないが大量の添加を必要とすることが判る。
【0054】
実施例11の結果を示す図4で明らかなように、インクの耐水化は変性ポリエチレンイミン量が少ない程、多価金属塩類を多量に必要とすることが判る。多価金属塩の増量に伴ってドットの径が小さくなり、白地へのインクの染み込みが少なくなるため印字濃度が低下するが、変性ポリエチレンイミンの使用量と印字濃度とは僅かながら逆の関係になっていることが判る。
【0055】
実施例12の結果を示す図5で明らかなように、コールドシール剤に対する微細鉱物粉末或いは水溶性接着剤の比率が増加すれば、耐水化に必要とする変性ポリエチレンイミンの量は増加することが判る。
【0056】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、各種情報をインクジェット方式で親展面に印字しても、優れたインク発色性を示し、耐水性が良好で水に濡れても印字の滲み、脱落、汚染などの事故が起こらない塗工層を形成することができ、しかも通常の圧着紙と同様に高圧下での再剥離性接着を与えることができる。
【0057】
しかも、塗料作成の際、アニオン分散系塗料にポリカチオン、或いはポリカチオン及び多価金属塩を混用するにも拘らず、粘度の上昇を抑制できるので、塗工を2回行って2層構造の塗工層を設ける必要が無くなり、塗工形式を問わず、目的とする加工紙の作成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1乃至実施例5の結果を示す図表である。
【図2】 本発明の実施例6乃至実施例9の結果を示す図表である。
【図3】 本発明の実施例10の結果を示す図表である。
【図4】 本発明の実施例11の結果を示す図表である。
【図5】 本発明の実施例12の結果を示す図表である。

Claims (5)

  1. 親展面を有する用紙の親展面同士がその親展面に塗被された接着剤組成物を介して剥離可能に接着するように折り畳んで圧着してなる圧着紙において、前記接着剤組成物が、コールドシール剤、微細鉱物粉末、及び2種のカチオン性ポリマーからなり、前記2種のカチオン性ポリマーのうちの一つは、N−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミンであり、他の一つは正電荷を保持しているポリマーであることを特徴とするインジェット用圧着紙。
  2. 親展面を有する用紙の親展面同士がその親展面に塗被された接着剤組成物を介して剥離可能に接着するように折り畳んで圧着してなる圧着紙において、前記接着剤組成物が、コールドシール剤、微細鉱物粉末、2種のカチオン性ポリマー、及び多価金属塩類からなり、前記2種のカチオン性ポリマーのうちの一つは、N−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミンであり、他の一つは正電荷を保持しているポリマーであることを特徴とするインジェット用圧着紙。
  3. −ヒドロキシアルキルポリエチレンイミンは、コールドシール剤100重量部当たり、10〜40重量部を添加したことを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェット用圧着紙。
  4. コールドシール剤100重量部に対し、微細鉱物粉末60〜200重量部、N−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミン10〜40重量部、高pH域で正電荷を保持するポリカチオン1.5〜5.0重量部からなる請求項1記載のインクジェット用圧着紙。
  5. コールドシール剤100重量部に対し、微細鉱物粉末60〜200重量部、N−ヒドロキシアルキルポリエチレンイミン10〜40重量部、高pH域で正電荷を保持するポリカチオン0.2〜3.0重量部、多価金属塩類0.5〜12重量部からなる請求項2記載のインクジェット用圧着紙。
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