JP3814743B2 - 水性樹脂組成物及びそれを含有する水性硬化性樹脂組成物 - Google Patents

水性樹脂組成物及びそれを含有する水性硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規にして有用なる水性樹脂組成物と、該水性樹脂組成物を必須の成分として含有する、新規にして有用なる水性硬化性樹脂組成物とに関する。さらに詳細には、本発明は、酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで構成され、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、次の構造式(S−I)
【0002】
【化8】
Figure 0003814743
【0003】
〔ただし、式中のそれぞれ、炭素原子および該炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成するものとし、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0004】
で示される結合を介して複合化している形の複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる、それぞれ、水性樹脂組成物、ならびに該水性樹脂組成物を必須の成分として含有する、水性硬化性樹脂組成物に関するし、
【0005】
とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性、耐暴露汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性をはじめとして、とりわけ、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れる塗膜を形成することが出来て、しかも、優れた硬化性と、優れた保存安定性とを兼備した水性樹脂組成物を提供するというものであるし、該水性樹脂組成物を含有する、硬化性にも優れ、しかも、前述したような耐久性をはじめとする諸性能に優れる硬化塗膜を与える水性硬化性樹脂組成物をも提供するものである。
【0006】
【従来の技術】
これまでにも、塗料用の水性硬化性樹脂組成物としては、塩基性基ないしは酸基と、水酸基のような、いわゆる官能基とを併有するビニル系重合体を、酸性化合物あるいは塩基性化合物で以て中和せしめたのち、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂と、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂またはアミノ樹脂のような、種々の硬化剤とから成る水性硬化性樹脂組成物が、幅広く、使用されている。
【0007】
しかしながら、こうした、これまでに使用されて来たような水性樹脂をベースとする水性硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、とりわけ、曝露時の光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性が不十分であり、したがって、高度の耐久性などが要求されるような用途には、全くと言ってよいほど、利用することが出来ない、という問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の問題点を、悉く解決するべく、鋭意、研究を開始した。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性に優れた硬化物を与えることができ、しかも、硬化性や保存安定性などにも優れる、新規にして有用なる水性樹脂組成物と、かかる新規にして有用なる水性樹脂組成物を含有する、前述したような耐久性に加えて、とりわけ、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れるという、極めて実用性の高い水性硬化性樹脂組成物をも提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述したような発明が解決しようとする課題に照準を合わせて、鋭意、検討を重ねた結果、
【0011】
酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)で構成され、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、下記の構造式(S−I)
【0012】
【化9】
Figure 0003814743
【0013】
〔ただし、式中のそれぞれ、炭素原子および該炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成するものとし、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0014】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂組成物が、とりわけ、硬化性ならびに保存安定性などに優れるということを見出し、
【0015】
該水性樹脂を必須の成分として含有する水性硬化性樹脂組成物が、とりわけ、光沢保持性、耐酸性雨性ならびに耐曝露汚染性などの耐久性に優れるということをも見出し、ひいては、上述したような発明が解決しようとする課題を、見事に、解決することが出来るということを確信するに及んで、ここに、本発明を完成させるに到った。
【0016】
すなわち、本発明は、基本的には、酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)で構成され、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、共に、次のような構造式(S−I)
【0017】
〔ただし、式中のそれぞれ、炭素原子および該炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成するものとし、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0018】
(ただし、式中、炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。)
【0019】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂組成物(D)を提供し、該水性樹脂組成物(D)を必須の成分として含有することから成る、水性硬化性樹脂組成物を提供しようとするものであるし、さらには、該水性樹脂組成物(D)と、該水性樹脂組成物(D)の水性樹脂中に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(E)とを含有することから成る、水性硬化性樹脂組成物をも提供しようとするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
本願は、一つには、酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)で構成され、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、次のような構造式(S−I)
【0021】
【化11】
Figure 0003814743
【0022】
〔ただし、式中のそれぞれ、炭素原子および該炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成するものとし、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0023】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる、極めて実用性の高い水性樹脂組成物(D)それ自体を請求しようとするものであるし、
【0032】
二つには、前記水性樹脂(D)と、水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(E)を含有することから成る、水性硬化性樹脂組成物をも請求しようとするものである。
【0111】
あるいは前記した化合物(E)が、珪素原子の結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物であるという、特定の水性硬化性樹脂組成物をも請求しようとするものである。
【0112】
以下に、本発明を、さらに一層、詳細に、説明することにする。
【0113】
本発明に係る水性樹脂組成物(D)とは、親水性を付与するための酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、耐久性等を付与するための珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)とで構成されるような樹脂を指称するものであり、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、次のような構造式(S−I)
【0114】
【化17】
Figure 0003814743
【0115】
〔ただし、式中のそれぞれ、炭素原子および該炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成するものとし、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0116】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られるような樹脂を指称するものである。
【0117】
水性樹脂組成物(D)を構成する、酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)としては、たとえば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体またはポリオレフィン系重合体の如き、各種のビニル系重合体に基づくセグメントがあるし、さらには、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などのビニル系重合体以外の重合体に基づくセグメントがある。
【0118】
これらのうちでも特に好ましいものとしては、ビニル系重合体セグメントまたはポリウレタン系重合体セグメントが挙げられ、さらに、ビニル重合体セグメントのうちで特に望ましいものとしては、アクリル系重合体セグメントが挙げられる。
【0119】
また、重合体セグメント(A)中に含まれる、酸性化合物で以て中和された塩基性基の代表的なものとしては、たとえば、それぞれが中和された、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基およびアンモニウムヒドロオキシド基などが挙げられる。
【0120】
そして、塩基性基を中和する際に使用される酸性化合物の代表的なものとしては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸または乳酸などの各種のカルボン酸類;燐酸モノメチルエステルまたは燐酸ジメチルエステルなどの燐酸の各種のモノ−ないしはジエステル類;
【0121】
メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸もしくはドデシルベンゼンスルホン酸の如き、各種の有機スルホン酸類;さらには、塩酸、硫酸、硝酸もしくは燐酸の如き種々の無機酸などが挙げられる。
【0122】
重合体セグメント(A)において、かかる酸性化合物で以て中和された塩基性基の量としては、重合体セグメント(A)の1,000グラム当たりの中和された塩基性基のモル数として、0.005モル〜約10モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.01〜5モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.05〜3モルなる範囲内が適切である。
【0123】
水性樹脂組成物(D)を構成するポリシロキサンセグメント(B)は、反応性の官能基として、珪素原子に結合した水酸基を有し、しかも、その原料成分の少なくとも一部分として後掲するようなオルガノトリアルコキシシランやテトラアルコキシシランの如き3官能または4官能シラン化合物を使用することにより分岐構造を導入したものである。
【0124】
また、複合樹脂(C)における重合体セグメント(A)と、ポリシロキサンセグメント(B)との比率は、(A):(B)なる重量割合として、5:95〜99:1程度になるように、好ましくは、15:85〜95:5になるように、さらに好ましくは、20:80〜85:15になるように設定するのがよい。
【0125】
重合体セグメント(A)の重量割合が5%未満になるように設定すると、どうしても、ポリシロキサンセグメント(B)が多すぎるために、とりわけ、耐アルカリ性などに乏しい硬化塗膜が得られるようになったり、水性樹脂組成物(D)の安定性が劣るようになってしまったりするし、一方、重合体セグメント(A)の重量割合が99%を超えて余りにも多くなるような場合には、どうしても、ポリシロキサンセグメント(B)が少なすぎるために、高度の耐久性などを有する硬化塗膜が得られ難くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0126】
かかる水性樹脂の前駆体である複合樹脂(C)を調製するには、(1)予め調製した、セグメント(A)を形成するための前駆体である重合体(a−1)あるいは(a−2)と、セグメント(B)を形成するための前駆体であるポリシロキサン(b−1)とを、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように縮合反応せしたのち、縮合反応生成物中に含まれる塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめる方法、(2)酸性化合物の存在下において、予め調製した、セグメント(A)を形成するための前駆体である重合体(a−1)あるいは(a−2)と、セグメント(B)を形成するための前駆体であるポリシロキサン(b−1)とを、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように縮合反応せしめる方法、
【0127】
(3)(b−1)の存在下に(a−1)あるいは(a−2)を調製する反応を行なう過程で、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、(a−1)あるいは(a−2)と(b−1)を縮合反応せしめたのち、縮合反応生成物中に含まれる塩基性基を酸性化合物で部分中和ないしは完全に中和せしめる方法、(4)酸性化合物と(b−1)の存在下に(a−1)あるいは(a−2)を調製する反応を行なう過程で、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、(a−1)あるいは(a−2)と(b−1)を縮合反応せしめる方法、
【0128】
(5)(a−1)あるいは(a−2)の存在下に、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を行なう過程で、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、(a−1)あるいは(a−2)と(b−2)を縮合反応せしめたのち、縮合反応生成物に含まれる塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめる方法、(6)酸性化合物と(a−1)あるいは(a−2)の存在下に、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を行なう過程で、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、(a−1)あるいは(a−2)と(b−2)を縮合反応せしめる方法、
【0129】
(7)(a−1)あるいは(a−2)を調製する反応と、前記したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、並行して行なう過程で、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、(a−1)あるいは(a−2)と(b−2)を縮合反応せしめたのち、縮合反応生成物中に含まれる塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめる方法、さらには、(8)酸性化合物の存在下において、(a−1)あるいは(a−2)を調製する反応と、前記したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、並行して行なう過程で、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、(a−1)あるいは(a−2)と(b−2)を縮合反応せしめる方法、等の各種の方法を適用できる。
【0130】
そして、セグメント(A)とセグメント(B)とを、前記した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化せしめるには、前記した重合体(a−1)あるいは(a−2)として加水分解性シリル基を有するものを使用すればよい。
【0131】
次いで、複合樹脂(C)の調製方法について、詳しく述べることにする。
【0132】
まず、複合樹脂(C)を調製する際に使用される重合体の一つである、塩基性基と加水分解性シリル基とを有する重合体(a−1)とは、塩基性基と加水分解性シリル基とを併有する重合体を指称するものであり、かかる加水分解性シリル基とは、次のような一般式(S−III)
【0133】
【化18】
Figure 0003814743
【0134】
(ただし、式中のR1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基なる1価の有機基を、R2 は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表わすものとし、また
、aは0あるいは1または2なる整数であるものとする。)
【0135】
で示されるような、加水分解されて珪素原子に結合した水酸基、つまりシラノール基、を生成する基を指称するものであって、しかも、該加水分解性シリル基それ自体が、直接に、炭素原子と共有結合することにより、あるいはシロキサン結合を介して、炭素原子と共有結合することにより、此の重合体(a−1)に結合しているものであるとする。
【0136】
また、ここでいう塩基性基としては、たとえば、1級アミノ基、2級アミノ基または3級アミノ基の如き、各種のアミノ基などに加えて、アンモニウムヒドロオキシド基などが挙げられる。
【0137】
前記した各種の塩基性基の中でも、特に好ましいものとしては、3級アミノ基が挙げられる。
【0138】
斯かる重合体(a−1)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体または芳香族ビニル系重合体の如き、各種のビニル系重合体;あるいはポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などである。
【0139】
これらのうちでも特に好ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体が挙げられ、さらに、ビニル重合体のうちで特に望ましいものとしては、アクリル系重合体が挙げられる。
【0140】
斯かる重合体(a−1)のうちの、此のビニル系重合体を調製するには、たとえば、(i) 加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、塩基性基を有するビニル系単量体を共重せしめたり、前記した両タイプ(二タイプ)の単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類とを共重合せしめる方法であるとか、
【0141】
(ii) 加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、塩基性基を有するビニル系単量体を重合せしめたり、または、該単量体と共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0142】
(iii) 加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と塩基性基を有するビニル系単量体を共重合せしめたり、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、前記した両タイプ(二タイプ)の単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0143】
(iv) 予め調製しておいた、水酸基と塩基性基とを併有するビニル系重合体に、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランのような、各種のイソシアナート基含有シラン化合物を反応せしめる方法、
【0144】
などの、公知慣用の種々の方法を適用することが出来るが、これらのうちでも、上記(i)〜(iii)なる方法によるのが、特に簡便であるので推奨され得よう。
【0145】
当該重合体(a−1)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体とは、前掲したような構造式(S−III)で示される加水分解性シリル基を有する単量体を指称するものであって、斯かる単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルもしくは3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、
【0146】
または3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、もしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランなどである。
【0147】
また、当該重合体(a−1)を調製する反応において使用される、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤とは、上述したような加水分解性シリル基と、メルカプト基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のような、いわゆる遊離ラジカルにより活性化される基ないしは原子とを併有する化合物を指称するものである。
【0148】
かかる連鎖移動剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジクロロシラン、3−メルカプトプロピルジメチルクロロシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシランまたは3−ブロモプロピルトリエトキシシランなどである。
【0149】
さらにまた、前記(a−1)を調製する際に使用される、前記したような加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤とは、分子中に、上述したような加水分解性シリル基を有する化合物を指称するものであり、これらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0150】
2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリメトキシシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリエトキシシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−ジメトキシメチルシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−ジエトキシメチルシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]または4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)の如き、活性水素含有基を有する各種のアゾ系開始剤と、たとえば、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランまたは3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシシランの如き、イソシアナートシランとを反応せしめて得られるような形の、アミド結合あるいはウレタン結合を介して、加水分解性シリル基が結合した形のアゾ系化合物などのような、各種のアゾ系化合物;
【0151】
あるいはtert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリメトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリエトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジメトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジエトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−3−メチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエートまたはtert−ブチルパーオキシ−4−エチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物などである。
【0152】
続いて、当該重合体(a−1)を調製する際に使用される、塩基性基を有するビニル系単量体のうち、3級アミノ基を有するビニル系単量体として代表的なものを例示するにとどめれば、
【0153】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートまたはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0154】
ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールもしくはN−ビニルキノリンの如き、各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;
【0155】
N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;
【0156】
N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミドまたはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドの如き、各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;
【0157】
2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテルまたは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルの如き、各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類などである。
【0158】
そしてまた、前述した(i)〜(iii)なる方法に従って、斯かるビニル系重合体(a−1)を調製するに当たって重合せしめるべきビニル系単量体としては、(i)と(iii)においては、塩基性基含有ビニル系単量体と加水分解性シリル基含有ビニル系単量体との併用系のみであってもよし、(ii)においては、塩基性基を有するビニル系単量体のみであってもよいが、これらに加えて、これらの各ビニル系単量体と共重合可能なる其の他のビニル系単量体をも併用することが出来る。
【0159】
このような共重合可能なる其の他のビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート〔イソブチル(メタ)アクリレート〕、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレートの如き、C1 〜C22なる炭素数を有する1級ないしは2級アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;
【0160】
ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレートもしくはイソボロニル(メタ)アクリレートの如き、各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートもしくは4−メトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0161】
スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル系単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルもしくは安息香酸ビニルの如き、各種のカルボン酸ビニルエステル類;
【0162】
クロトン酸メチルもしくはクロトン酸エチルの如き、各種のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジメチルイタコネートもしくはジ−n−ブチルイタコネートの如き、各種の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;
【0163】
(メタ)アクリロニトリルもしくはクロトノニトリルの如き、各種のシアノ基含有単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレンもしくはヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンの如き、各種のクロル化オレフィン類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンもしくは1−ヘキセンの如き、各種のα−オレフィン類;
【0164】
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルもしくはn−ヘキシルビニルエーテルの如き、各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくは4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類;
【0165】
またはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルピロリドンの如き、各種の3級アミド基含有単量体類などである。
【0166】
以上に掲げられたような種々の単量体を用いて、当該ビニル系重合体(a−1)を調製するには、溶液重合法、非水分散重合法または塊状重合法などのような、公知慣用の種々の重合法を適用することが出来るが、それらのうちでも、特に、有機溶剤中での溶液ラジカル重合法によるのが、最も簡便である。
【0167】
此の溶液ラジカル重合法を適用する際には、前記したような、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を必須成分として共存させ、ビニル系単量体のラジカル重合を行なうケースがある。かかる加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を使用しない場合には、加水分解性シリル基を含まないラジカル重合開始剤を使用しても、あるいは使用しなくてもよいが、ラジカル重合反応を円滑に進行せしめる上からは、ラジカル重合開始剤を使用するのが望ましい。
【0168】
そして、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を必須の成分に使用して、ラジカル重合を行なうに当たっては、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を単独で使用することもできるし、加水分解性シリル基を含まないラジカル重合開始剤を併用することもできる。
【0169】
こうした、加水分解性シリル基を含まないラジカル重合開始剤としては、勿論ながら、公知慣用の種々の化合物が使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0170】
2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)もしくは2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の如き、各種のアゾ化合物類;
【0171】
またはtert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイドや、
【0172】
ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネートなどのような、各種の過酸化物類などである。
【0173】
また、溶液ラジカル重合法を適用する際に使用できる有機溶剤としては、公知慣用の有機溶剤のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でもよいし、2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0174】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンもしくはシクロオクタンの如き、各種の脂肪族系ないしは脂環式系の炭化水素類;
【0175】
トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルもしくは酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートもしくはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの如き、各種のエステル類;
【0176】
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、i−アミルアルコールもしくはtert−アミルアルコール
【0177】
またはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルもしくはエチレングリコールモノn−ブチルエーテルの如き、各種のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトンまたはシクロヘキサノンの如き、各種のケトン類;
【0178】
あるいはジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルまたはジ−n−ブチルエーテルの如き、各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタンの如き、各種の塩素化炭化水素類などであるし、さらには、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネートなどである。
【0179】
以上に掲げたような、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を適用することによって、目的とする塩基性基と加水分解性シリル基とを有するビニル系重合体(a−1)を調製することが出来る。
【0180】
本発明に係る水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂の前駆体である、前記した複合樹脂(C)を調製する際に使用される、もう一方の重合体である、塩基性基と加水分解性シリル基と、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基とを有する重合体(a−2)とは、前記したような塩基性基と加水分解性シリル基に加えて、これら両官能基以外の、公知慣用の種々の官能基をも含有する重合体を指称するものである。
【0181】
そして、当該重合体(a−2)中に導入されるべき、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド、カーバメート基および次のような構造式(S−II)
【0182】
【化19】
Figure 0003814743
【0183】
で示される官能基などである。
【0184】
そしてまた、上記した2級アミド基は、N−ヒドロキシメチルアミド基、N−アルコキシメチルアミド基または次のような構造式(S−IV)
【0185】
【化20】
−C(O)−NH−CH(OR3)−COOR4 (S−IV)
【0186】
(ただし、式中のR3 は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わし、また、R4 は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)
【0187】
で示される官能基をも包含するものである。
【0188】
また、これらの官能基は、当該重合体(a−2)中に、1種のみを導入せしめるようにしてもよいし、2種以上を導入せしめるようにすることも出来る。
【0189】
塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の、前掲したような各種の官能基のうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基などである。
【0190】
こうした各種の官能基を有する重合体(a−2)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体または芳香族ビニル系重合体のような、各種のビニル系重合体;あるいはポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などである。
【0191】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体などが挙げられるし、さらに、此のビニル重合体のうちでも特に望ましいものとしては、アクリル系重合体が挙げられる。
【0192】
また、当該重合体(a−2)のうちの、此のビニル系重合体を調製するには、公知慣用の種々の方法を利用し適用することができるが、それらのうちでも、(v) 水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示される官能基のような、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の各種官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、
【0193】
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、塩基性基を有するビニル系量体とを共重合せしめたり、前記した三タイプの単量体と、これらと共重合可能なる其の他のビニル系単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0194】
(vi) 加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基のような、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の各種官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、塩基性基を有するビニル系単量体を共重合せしめたり、前記した二タイプの単量体類と、これらと共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0195】
(vii) 加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基のような、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の各種官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、塩基性基を有するビニル系単量体を共重合せしめたり、前記した三タイプの単量体類と、これらと共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法などが、特に簡便である。
【0196】
こうした諸々の方法によって、特に、当該重合体(a−2)のうちの、此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤、塩基性基を有するビニル系単量体および此等と共重合可能なる其の他のビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前記したビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして、それぞれにつき、既に例示したような、各種の単量体などである。
【0197】
また、此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、水酸基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0198】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;
【0199】
2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル類;前掲したような各種の水酸基含有単量体類と、ε−カプロラクトンなどで以て代表されるような、種々のラクトン類との付加物;またはグリシジル(メタ)アクリレートなどで以て代表されるような、種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸などで以て代表されるような、種々の酸類との付加物などであるし、
【0200】
さらには、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)などで以て代表されるような、α−オレフィンのエポキサイド系化合物以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物などのような種々の水酸基含有単量体類などである。
【0201】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、ブロックされた水酸基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテルもしくは4−トリメチルシロキシブチルビニルエーテルの如き、特開昭62−283163号公報に開示されているような、各種のシリルエーテル基含有ビニル系単量体類;
【0202】
2−(1−エトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(1−n−ブトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシテトラヒドロフランもしくは2,2−ジメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソランの如き、特開平4−41515号公報に開示されているような、各種のアセタール基ないしはケタール基含有含有ビニル系単量体類;
【0203】
または3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジン、2,2−ジメチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンもしくは2−イソブチル−2−メチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンの如き、各種のオキサゾリジン基含有ビニル系単量体類などである。
【0204】
さらに、此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、酸基含有ビニル系単量体のうち、遊離のカルボキシル基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸類;
【0205】
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルの如き、不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類との各種のモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニルまたはコハク酸モノビニルの如き、各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;
【0206】
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸または無水トリメリット酸の如き、各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、前掲したような各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物などであるし、さらには、前掲したような各種のカルボキシル基含有単量体類と、ラクトン類とを付加反応せしめて得られるような各種の単量体類などである。
【0207】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、ブロックされたカルボキシル基を有する単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレートもしくはトリメチルシリルクロトネートの如き、特開昭62−254876号公報に開示されているような、各種のシリルエステル基含有ビニル系単量体類;
【0208】
1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンもしくは2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフランの如き、特開平5−222134号公報に開示されているような、各種の、ヘミアセタールエステル基ないしはヘミケタールエステル基含有単量体類;またはtert−ブチル(メタ)アクリレートもしくはtert−ブチルクロトネートの如き、各種のtert−ブチルエステル基含有単量体類などである。
【0209】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、カルボン酸無水基含有単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸もしくは無水イタコン酸の如き、各種の不飽和ポリカルボン酸の無水物類;無水アクリル酸もしくは無水メタクリル酸の如き、各種の不飽和モノカルボン酸の無水物類;またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸と、酢酸、プロピオン酸もしくは安息香酸などのような、種々の飽和カルボン酸との混合酸無水物などである。
【0210】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0211】
2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4,5−カーボネートペンチル(メタ)アクリレート、6,7−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレートもしくは7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、ジ(2,3−カーボネートプロピル)マレートまたはジ(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートの如き、5員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類などをはじめ、
【0212】
さらには、〔5−N−(メタ)アクリロイルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−〔N−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エチルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−エチル−5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン−2−オンまたは4−(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシメチルスチレンの如き、6員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類である。
【0213】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、エポキシ基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き、種々の化合物などである。
【0214】
当該ビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、1級アミド基ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド 、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルフォルムアミド、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートとアセチルアセトンまたはアセト酢酸エステル類との付加反応物のような、種々の化合物などである。
【0215】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、カーバメート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0216】
N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸メチル、N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸エチル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルカルバミン酸エチル、2−カルバモイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(N−メチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレートもしくは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートと、2−ヒドロキシプロピルカーバメートとの付加反応物;
【0217】
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、フェノールとの付加反応物;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、エタノールとの付加反応物;または2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、メチルエチルケトオキシムとの付加反応物のような種々の化合物などである。
【0218】
当該ビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートもしくは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートの如き、各種のイソシアナート基含有ビニル系単量体と、ε−カプロラクタムもしくはγ−ブチロラクタムの如き、各種のアミド化合物との付加反応物のような種々の化合物などである。
【0219】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、前記したような種々の官能基のうちの2種以上の官能基を併有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、モノ−(2−ヒドロキシエチル)イタコネートまたはモノ−(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートなどのような種々の化合物などである。
【0220】
また、前述した(v)〜(vii)なる方法に従って、斯かるビニル系重合体(a−2)を調製するに当たって重合せしめるべきビニル系単量体としては、(v)と(vii)においては、塩基性基含有ビニル系単量体と、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、前記した塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の官能基を有するビニル系単量体の3成分系であってもよし、(vi)においては、塩基性基を有するビニル系単量体と、前記した塩基性基と加水分解性なる両官能基以外の官能基を有するビニル系単量体の2成分系であってもよいが、これらに加えて、これらの各ビニル系単量体と共重合可能なる其の他のビニル系単量体をも併用することが出来る。
【0221】
かかる共重合可能なビニル系単量体としては、ビニル系重合体(a−1)を調製するに当たり、塩基性基を有するビニル系単量体あるいは加水分解性シリル基を有する単量体と共重合可能なものとして例示した如きビニル系単量体類が挙げられる。
【0222】
さらに、此のビニル系重合体(a−2)を調製するには、前述したビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして既に例示したような、溶剤類および重合開始剤類を使用して、公知慣用の種々の方法に従って、溶液ラジカル重合せしめればよい。
【0223】
以上に掲げたような、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を適用することによって、目的とする塩基性基と加水分解性シリル基とこれら両官能基以外の官能基とを有するビニル系重合体(a−2)を調製することが出来る。
【0224】
以上に述べて来たような、ビニル系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべき加水分解性シリル基量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの加水分解性シリル基のモル数として、0.005〜3モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルなる範囲内が適切である。
【0225】
0.005モル未満の場合には、どうしても、本発明に係る水性硬化性組成物からの硬化物の、とりわけ、耐久性などを低下せしめるようになるし、一方、3モルを超えて余りにも多くなる場合には、複合樹脂(C)の調製の際に、反応溶液の粘度が上昇するようになり、ひいては、ゲル化が起きてしまうなどの不都合があるので、いずれの場合も好ましくない。
【0226】
したがって、上述したような好ましい量の加水分解性シリル基が導入されるように、それぞれ、加水分解性シリル基含有単量体、加水分解性シリル基含有連鎖移動剤あるいは加水分解性シリル基含有重合開始剤の使用量を、適切に設定する必要がある。
【0227】
また、ビニル系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべき塩基性基の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの塩基性基のモル数として、0.005〜10モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.01〜5モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.05〜3モルなる範囲内が適切である。
【0228】
したがって、上述したような好ましい量の塩基性基が導入されるように、塩基性基を有するビニル系単量体の使用量を、適切に設定する必要がある。
【0229】
さらに、ビニル系重合体(a−2)中に導入されるべき、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示される官能基などによって代表される、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を有するビニル系単量体のうちの少なくとも1種のビニル系単量体の共重合量としては、ビニル系重合体(a−2)の固形分の1,000グラム当たりの官能基のモル数として、0.1〜5モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲内が適切である。
【0230】
5モルを超えて余りにも多くなる場合には、どうしても、硬化物の耐水性ならびに耐薬品性などが低下するようになるので、好ましくない。
【0231】
また、これらのビニル系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量としては、500〜200,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜10,000なる範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜50,000なる範囲内が適切である。
【0232】
これらのビニル系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量が、500未満の場合には、どうしても、硬化性や、硬化物の機械的強度などが劣るようになるし、一方、200,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物の不揮発分が著しく低くなったり、塗装作業性などにも劣るようになったり、また、硬化塗膜の外観が低下したりするので、いずれの場合も好ましくない。
【0233】
ビニル系重合体(a−1)として、それぞれ、重合性不飽和二重結合を有する、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、塩基性基を有するビニル系単量体とを必須成分とする単量体類を、ラジカル重合せしめることによって得られる、加水分解性シリル基と塩基性基を併有するビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0234】
また、ビニル系重合体(a−2)として、それぞれ、重合性不飽和二重結合を有する、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、塩基性基を有するビニル系単量体と、これら塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を有するビニル系単量体とを必須成分とする単量体類を、ラジカル重合せしめることによって得られる、塩基性基と加水分解性シリル基と、これら塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基とを有するビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0235】
重合体(a−1)のうちのポリウレタン系重合体を調製するには、各種のジヒドロキシ化合物および各種のジイソシアネート化合物に加えて、加水分解性シリル基を導入するための原料成分として、加水分解性シリル基を有するジアミン化合物または加水分解性シリル基を有するモノアミン化合物を使用し、さらに、塩基性基を導入するための原料成分として、N−メチルジエタノールアミンもしくはN,N−ジメチルエタノールアミン如き塩基性基と水酸基とを併有する化合物を含有する化合物等の公知慣用の種々の原料成分を使用して、特開昭51−90391号公報、特開昭55−73729号公報または特開昭60−255817号公報に記述されているような方法を適用すればよい。
【0236】
重合体(a−2)のうちのポリウレタン系重合体を調製するには、前記したポリウレタン系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような公知慣用の各種の原料類に加えて、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の、前記したような各種の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有するような種々の化合物を原料成分として使用して、公知慣用の種々の方法を適用すればよい。
【0237】
ポリウレタン系重合体(a−2)を調製する際に使用される、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の、前記したような各種の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有する化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、グリシドール、2−ヒドロキシエチルカーバメートもしくは2−ヒドロキシプロピルカーバメートの如き、各種の官能基と水酸基とを併有する化合物などである。
【0238】
前述したような方法で以て調製されるポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべき加水分解性シリル基の量としては、それぞれの重合体の固形分1,000グラム当たり、0.005〜3モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルなる範囲内が適切である。
【0239】
0.005モル未満の場合には、どうしても、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)あるいは(b−2)との間の複合化反応が進行しずらくなり、ひいては、得られる硬化物の、とりわけ、耐久性などが低下するようになるし、一方、3モルを超えて余りにも多くなる場合には、前記した複合化反応時の溶液粘度が上昇し、ひいては、ゲル化を惹起してしまうようになるなどの不都合が認められるようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0240】
また、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべき塩基性基の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの塩基性基のモル数として、0.005〜10モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.01〜5モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.05〜3モルなる範囲内が適切である。
【0241】
さらに、ポリウレタン系重合体(a−2)中に導入されるべき、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基の少なくとも1種の量としては、ポリウレタン系重合体(a−2)の固形分の1,000グラム当たり、0.1〜5モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲内が適切である。
【0242】
また、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量としては、500〜100,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜50,000なる範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜30,000なる範囲内が適切である。
【0243】
ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量が、500未満の場合には、どうしても、硬化性や硬化物の機械的強度などが劣るようになるし、一方、100,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物の不揮発分が著しく低くなったり、塗装作業性などにも劣るようになったり、また、硬化塗膜の外観が低下したりするようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0244】
次いで、本発明の水性樹脂組成物(D)の水性樹脂の前駆体である、複合樹脂(C)を調製するに当たり、使用される他方の成分である、前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とは、一般的に、シラノール基と呼称される珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサンを指称するものである。
【0245】
ここにおいて、珪素原子に結合した加水分解性基とは、珪素原子に結合した、それぞれ、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基の如き、加水分解されて、シラノール基を生成する種々の基を指称するものである。
【0246】
こうしたポリシロキサン(b−1)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、一分子中に、少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめることによって調製される、当該珪素化合物の加水分解縮合物、あるいは斯かる珪素化合物を部分加水分解縮合せしめることによって調製される、当該珪素化合物の部分加水分解縮合物などである。
【0247】
前記した、一分子中に、少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の加水分解縮合ないしは部分加水分解縮合によって、当該ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用される、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物としては、公知慣用の種々の化合物が、いずれも、使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のような一般式(S−V)
【0248】
【化21】
5 bSiR6 4-b (S−V)
【0249】
(ただし、式中のR5 は、それぞれ、置換基を有していても有していなくてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基なる1価の有機基を、R6 は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表わすものとし、また、
bは0あるいは1または2なる整数であるものとする。)
【0250】
で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の混合物の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物;
【0251】
あるいは
【0252】
【化22】
(CH3 CH2O)3 SiCH2 CH2 Si(OCH2 CH3 3
【0253】
または
【0254】
【化23】
(CH3 CH2 O)3 SiCH2 CH2 CH2 Si(OCH2 CH3 3
【0255】
などのような、一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物などである。
【0256】
前掲したような一般式(S−V)で示される珪素化合物として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランもしくはテトラ−n−ブトキシシランの如き、各種のテトラアルコキシシラン類;
【0257】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシランもしくはn−ブチルトリエトキシシラン、
【0258】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランもしくはアリルトリメトキシシラン
【0259】
または2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの如き、各種のオルガノトリアルコキシシラン類;
【0260】
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシランもしくはジ−n−ブチルジエトキシシラン、
【0261】
あるいはジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランもしくは3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、の如き、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;
【0262】
テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ビニルメチルジクオロロシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランの如き、各種のクロロシラン類;
【0263】
またはテトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランもしくはジフェニルジアセトキシシランの如き、各種のアセトキシシラン類などである。
【0264】
これらの加水分解性基を有する珪素化合物のうちで、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用される化合物として特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシランまたはジオルガノジアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物または其れらの部分共加水分解縮合物などであるし、さらには、各種のクロルシラン類の部分加水分解縮合物などである。
【0265】
そして、かかるポリシロキサン(b−1)を調製するに当たり、珪素化合物の少なくとも一部分として、オルガノトリアルコキシシランの如き3官能の珪素化合物もしくはテトラアルコキシシランの如き4官能の珪素化合物などの分岐構造を導入するのに適した化合物を使用することにより、複合樹脂(C)を構成するポリシロキサンセグメントに分岐した構造を導入することが出来る。
【0266】
また、当該珪素化合物として、4官能の珪素化合物を使用する際には、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との間の複合化反応中のゲル化の防止のめにも、2官能ないしは3官能の珪素化合物を併用することが望ましい。
【0267】
斯かるポリシロキサン(b−1)を調製するに際して、前掲したような各種の珪素化合物に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシランまたはトリフェニルクロロシランのような、一分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を1個のみ有する、いわゆる1官能性の珪素化合物をも併用することが出来る。
【0268】
前記したような各種の珪素化合物を加水分解縮合ないしは部分加水分解縮合せしめることによって、ポリシロキサン(b−1)として使用される加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物を得ることが出来るが、その際に、触媒を使用してもよいし、使用しなくてもよく、これらの縮合反応を容易に進行せしめるという面からは、触媒を使用することが望ましい。
【0269】
ここにおいて、触媒を使用する場合には、公知慣用の種々の触媒のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは単独使用でも、2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0270】
斯かる触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、塩酸、硫酸または燐酸の如き、各種の無機酸類;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピルまたは酢酸の如き、各種の有機酸類;
【0271】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの如き、各種の無機塩基類;テトライソプロピルチタネートまたはテトラブチルチタネートの如き、各種のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレートまたはオクチル酸錫の如き、各種の錫カルボン酸塩類;
【0272】
鉄、コバルト、マンガンまたは亜鉛の如き、各種の金属のナフテン酸塩;あるいはオクチル酸塩の如き、各種の金属カルボン酸塩類;あるいは亦、アルミニウムトリスアセチルアセトネートの如き、各種のアルミニウム化合物;
【0273】
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミンまたはブチルアミンもしくはオクチルアミン、
【0274】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールもしくは1,4−ジエチルイミダゾールの如き、各種のアミン化合物類;
【0275】
テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩もしくはo−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、
【0276】
さらには、代表的なる対アニオンとして、それぞれ、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類などである。
【0277】
使用される斯かる触媒の量としては、加水分解ないしは部分加水分解に供される珪素化合物に対して、0.000001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.000005〜5重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.00001〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0278】
また、前記した反応に用いられる水の量としては、かかる珪素化合物の珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.2モル以上が適切である。
【0279】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなってしまい、実用上、好ましくないけれども、此の水の量が、5モルとか、10モルとか、珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、過剰となるように使用することは、一向に、支障が無い。
【0280】
そして、これらの触媒および水の添加は、一括添加でも、分割添加でもよく、また、触媒と水を混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいことは、勿論である。
【0281】
斯かる反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、これらの反応の圧力としては、常圧、加圧または減圧下の、いずれの条件においても行なうことが出来る。
【0282】
そして、こうした反応の副生成物である、それぞれ、アルコールや水などが、引き続いて行なわれる重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との複合化反応を妨げたり、得られる水性硬化性樹脂組成物の安定性などを低下させたりするようであれば、蒸留などの手段によって、系外に除くことが出来るし、そうした問題が無ければ、そのまま、系内に存在させておいて、一向に、支障は無い。
【0283】
また、かかる反応にあっては、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいけれども、攪拌などが、容易に、行なえるようにするためにも、有機溶剤を使用することが望ましい。
【0284】
ここにおいて、斯かる有機溶剤を使用する場合には、公知慣用の種々の有機溶剤のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0285】
その際に使用される有機溶剤としては、ビニル系重合体(a−1)または(a−2)を調製する際に使用できるものとして既に掲げたような種々のものを使用することが出来る。
【0286】
そして、斯かる有機溶剤を使用して、当該ポリシロキサン(b−1)を調製する際には、一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の、斯かる有機溶剤中における濃度としては、5重量%程度以上にすることが望ましい。
【0287】
また、当該ポリシロキサン(b−1)として、市販のポリシロキサンを使用することもできるが、そのようなポリシロキサンとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基あるいは珪素原子に結合したメトキシ基を有するポリシロキサンとして市販されているような、それぞれ、「TSR−160もしくは165」[東芝シリコーン(株)製の商品名]、「SH−6018」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の商品名]または「GR−100、908もしくは950」[昭和電工(株)製の商品名]などで以て代表されるような、線状、環状、分岐状(分枝状)あるいはラダー(型)構造を有する、加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物などである。
【0288】
前記した(5)、(6)、(7)あるいは(8)なる方法により、複合樹脂(C)を調製する際には、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)が調製されるが、その際に使用される一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物としては、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用されるものとして前掲した如き、各種の珪素化合物を使用することが出来る。
【0289】
そして、かかるポリシロキサン(b−2)を調製するに当たり、珪素化合物の少なくとも一部分として、オルガノトリアルコキシシランの如き3官能の珪素化合物もしくはテトラアルコキシシランの如き4官能の珪素化合物などの分岐構造を導入するのに適した化合物を使用することにより、複合樹脂(C)を構成するポリシロキサンセグメントに分岐した構造を導入することが出来る。
【0290】
また、水性樹脂の硬化性と、耐久性との面からは、ポリシロキサン(b−1)あるいは(b−2)を構成する全珪素原子のうち、10モル%以上、好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、30モル%以上が、メチルトリアルコキシシラン類、メチルトリクロロシラン、フェニルトリアルコキシラン類またはフェニルトリクロロシランのような、いわゆる3官能シラン化合物に由来するものを使用することが適切である。
【0291】
次いで、水性樹脂の前駆体である複合樹脂(C)の調製方法である、前記した(1)〜(8)なる方法について詳細に述べることにする。
【0292】
まず、はじめに、前記した(1)なる方法とは、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめることにより、複合化せしめる方法である。
【0293】
此処において、重合体(a−1)または(a−2)とポリシロキサン(b−1)の縮合反応をスムーズに進行させるために、触媒を添加することが出来るが、斯かる触媒としては、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような種々の触媒類を、そのまま、使用することが出来る。
【0294】
(1)なる方法で複合化せしめる場合に使用される触媒の量としては、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)の合計量に対して、0.0001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.0005〜3重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.0005〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0295】
そして、ポリシロキサン(b−1)を調製する過程で使用された触媒が(b−1)中に残留している場合には、殊更に、触媒を添加せずとも、(b−1)中に残留している触媒のみでも、当該縮合反応を促進せしめることが可能である。
【0296】
また、(1)なる方法において、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との間の縮合反応をスムーズに進行せしめるためには、重合体(a−1)または(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基の加水分解と、ポリシロキサン(b−1)中に、場合によっては含有される珪素原子に結合した加水分解性基の加水分解とを円滑に進行せしめることが望ましく、したがって、こうした縮合反応を、水の存在下で以て行なうことが、特に望ましい。
【0297】
そして、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用された水が(b−1)中に残留している場合には、殊更に水を添加せずとも、(b−1)中に残留している水のみでも、当該縮合反応を行なうことも可能である。
【0298】
該縮合反応を行なうに際して使用される水の量としては、重合体(a−1)または(a−2)に結合した加水分解性シリル基中に含まれる加水分解性基と、ポリシロキサン(b−1)中に存在する、珪素原子に結合している加水分解性基との合計量の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.5モル以上が適切である。
【0299】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなり易いので、好ましくない。
【0300】
また、水の使用量を大過剰に設定しても、反応中に不溶物が析出して来るなどの不都合が生じない限り、支障なく、複合化反応を行なうことが出来るが、ポリシロキサン(b−1)中に珪素原子に結合している加水分解性基が存在する場合には、(b−1)中に含まれる加水分解性基の1モルに対して、水の使用量を、概ね、10モル以下に、好ましくは、5モル以下に、より好ましくは、3.5モル以下に設定するのが適切であるし、
【0301】
(b−1)中に珪素原子に結合している加水分解性基が存在しない場合においては、重合体(a−1)もしくは(a−2)に結合した加水分解性シリル基中に含まれる加水分解性基の1モルに対して、500モル以下に、好ましくは、300モル以下に、より好ましくは、200モル以下に設定するのが適切である。
【0302】
(1)なる方法において、該縮合反応を行なう際の反応温度としては、0〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃程度が適切である。
【0303】
さらに、(1)なる方法で、該縮合反応に引き続いて行なわれる、縮合反応生成物中の塩基性基の部分ないしは完全中和反応に際しては、各種の酸性化合物を使用することができるけれども、その中で、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−メチル酪酸、イソ吉草酸、トリメチル酢酸、グリコール酸または乳酸などによって代表されるような、炭素数が1〜10なる、各種のカルボン酸類;
【0304】
燐酸モノメチルエステル、燐酸ジメチルエステル、燐酸モノ−iso−プロピルエステル、燐酸ジ−iso−プロピルエステル、燐酸モノ−2−エチルヘキシルエステルもしくは燐酸ジ−2−エチルヘキシルエステルの如き、燐酸の各種のモノ−ないしはジアルキルエステル類;
【0305】
メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸もしくはドデシルベンゼンスルホン酸の如き、各種の有機スルホン酸類;または塩酸、硫酸、硝酸もしくは燐酸などによって代表されるような、種々の無機酸などが挙げられる。
【0306】
このような各種の酸性化合物の中でも、カルボン酸類の使用が、特に望ましい。
【0307】
そして、かかる酸性化合物の添加量としては、少なくとも、前記重合体(a−1)または(a−2)と、前記ポリシロキサン(b−1)の縮合反応生成物に対し、水分散性を付与することが可能な量であり、前記重合体(a−1)または(a−2)と(b−1)の縮合反応生成物中に含まれる塩基性基の当量数に対する、当該酸性化合物の当量数の比率、
【0308】
つまり、当該酸性化合物/「前記重合体(a−1)または(a−2)と(b−1)との縮合反応生成物中の塩基性基」なる当量比が0.1以上となるのが適切ではあるが、塗膜性能を損なわない範囲の量として、好ましくは、概ね、0.1〜3なる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.3〜2なる範囲内が適切である。
【0309】
こうした中和反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、これらの反応の圧力としては、常圧、加圧または減圧下の、いずれの条件においても行なうことが出来る。
【0310】
次いで、前記した(2)なる方法とは、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との間の縮合反応を、該縮合反応生成物が含有する塩基性基を中和する目的で、予め、酸性化合物を反応系内に添加した系内で行なう方法である。
【0311】
此処において使用される酸性化合物としては、前記した(1)なる方法で使用されるものとして既に揚げたような種々の酸性化合物を、そのまま、(1)において塩基性基を中和せしめる場合と同様の添加量で使用することが出来る。
【0312】
また、(2)なる方法においても、(a−1)または(a−2)と、(b−1)とを縮合反応せしめるに当たり、該反応をスムーズに進行させるために、触媒を添加することが出来るが、斯かる触媒としては、前記した(1)なる方法において使用されるものとして既に掲げたような種々の触媒類を、そのまま、(1)と同様の添加量で使用することが出来る。
【0313】
そして、前記した(1)と同様に、ポリシロキサン(b−1)を調製する過程で使用された触媒が(b−1)中に残留している場合には、殊更に、触媒を添加せずとも、(b−1)中に残留している触媒のみでも、当該縮合反応を促進せしめることが可能であるし、
【0314】
反応系内に、予め、添加した、前記したような酸性化合物が、触媒として当該縮合反応を促進する可能性もある。
【0315】
また、(2)なる方法においても、(a−1)または(a−2)と、(b−1)との間の縮合反応をスムーズに進行せしめるためには、(a−1)または(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基の加水分解と、(b−1)中に、場合によっては含有される珪素原子に結合した加水分解性基の加水分解とを円滑に進行せしめることが望ましく、したがって、こうした縮合反応を、水の存在下で以て行なうことが、特に望ましい。
【0316】
そして、(b−1)を調製する際に使用された水が(b−1)中に残留している場合には、殊更に水を添加せずとも、(b−1)中に残留している水のみでも、当該縮合反応を行なうことも可能である。
【0317】
さらに、(2)において、該縮合反応を行なう際の反応温度および水の使用量については、前記した(1)なる方法に準ずるものとする。
【0318】
次いで、前記した(3)なる方法とは、前記したポリシロキサン(b−1)の存在下に前記した重合体(a−1)または(a−2)を調製する反応を行なう過程で、(b−1)と(a−1)あるいは(a−2)を縮合反応せしめ、次いで、得られた縮合反応生成物中に含まれる塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめる方法である。
【0319】
此処において、(a−1)あるいは(a−2)を調製する過程で縮合反応を行なって、(b−1)との複合化を行なうに当たり、(a−1)あるいは(a−2)に含まれる加水分解性シリル基の加水分解反応を促進し、さらに、ポリシロキサン(b−1)と、生成した重合体(a−1)あるいは(a−2)との縮合反応をスムーズに進行させるために、触媒を添加することが出来るが、斯かる触媒としては、前記した(1)と同様に、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような種々の触媒類を、そのまま、使用することが出来る。
【0320】
(3)なる方法で、複合化せしめる場合に使用される触媒の量としては、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)の合計量に対して、0.0001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.0005〜3重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.0005〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0321】
そして、前記した(1)と同様に、ポリシロキサン(b−1)を調製する過程で使用された触媒が(b−1)中に残留している場合には、殊更に、触媒を添加せずとも、(b−1)中に残留している触媒のみでも、当該縮合反応を促進せしめることが可能である。
【0322】
また、(3)なる方法においても、(a−1)または(a−2)と(b−1)との間の縮合反応を円滑に進行せしめる観点から、前記した(1)なる方法と同様に、反応系に水を添加すること望ましい。そして、かかる水の量としては、
(1)なる方法の場合に準じる。
【0323】
そして、これらの触媒および水の添加は、一括添加でも、分割添加でもよく、また、触媒と水を混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいことは、勿論である。
【0324】
また、(3)なる方法において、重合体(a−1)あるいは(a−2)を調製する際の反応温度としては、0〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜120℃程度が適切である。
【0325】
さらに、(3)なる方法で、該縮合反応に引き続いて行なわれる、縮合反応生成物中の塩基性基の部分ないしは完全中和反応に際しては、前記した(1)なる方法において記載した各種の酸性化合物を、そのまま、使用することができるけれども、その中でも特に、カルボン酸類の使用が望ましい。
【0326】
そして、かかる中和反応における、酸性化合物の添加量および該中和反応の反応条件に関しては、前記した(1)なる方法に準ずるものである。
【0327】
次いで、前記した(4)なる方法とは、(b−1)の存在下に(a−1)または(a−2)を調製する反応を行なう過程で、(b−1)と(a−1)あるいは(a−2)を縮合せしめる反応を、該縮合反応の生成物が含有する塩基性基を中和する目的で、予め、酸性化合物を反応系内に添加した形で行なう方法である。
【0328】
此処において、予め、系内に添加される酸性化合物としては、前記した(1)なる方法において、中和反応の際に使用する、各種の酸性化合物を、そのまま、使用することができ、その使用量は、(1)の場合に準じる。
【0329】
さらに、この方法においも、反応系に水を共存させることが好ましく、その量は、(1)なる方法の場合に準じる。
【0330】
次いで、前記した(5)なる方法とは、前記した重合体(a−1)または(a−2)の存在下に、一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解せしめて珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を行なう過程で、(b−2)と(a−1)あるいは(a−2)を縮合反応せしめ、次いで、得られた縮合反応性生物中に含まれる塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめる方法であり、
【0331】
また、前記した(6)なる方法とは、(a−1)または(a−2)の存在下に(b−2)を調製する過程で、(b−2)と(a−1)あるいは(a−2)を縮合せしめる反応を、該縮合反応の生成物が含有する塩基性基を中和する目的で、予め、酸性化合物を反応系内に添加して行なう方法であり、
【0332】
さらに、前記した(7)なる方法とは、(a−1)または(a−2)を調製する反応と、(b−2)を調製する反応を、同一の反応系において、並行して行なう過程で、(b−2)と(a−1)あるいは(a−2)を縮合せしめ、次いで、得られた縮合反応性生物中に含まれる塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめる方法であり、
【0333】
さらにまた、前記した(8)なる方法とは、(a−1)または(a−2)を調製する反応と、(b−2)を調製する反応を、同一の反応系において、並行して行なう過程で、(b−2)と(a−1)あるいは(a−2)を縮合せしめる反応を、該縮合反応の生成物が含有する塩基性基を中和する目的で、予め、酸性化合物を反応系内に添加して行なう方法である。
【0334】
前記した(5)〜(8)なる方法により複合樹脂(C)を調製するに当たり、一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の加水分解縮合を促進するための触媒を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、当該珪素化合物の加水分解反応を速やかに進行させると同時に、生成する(b−2)と(a−1)もしくは(a−2)との間の縮合反応をスムーズに進行させるうえから、触媒を使用することが望ましい。
【0335】
かかる触媒としては、前記した(b−1)の調製に際し使用できるものとして例示した如きものを、使用することができる。
【0336】
使用される触媒の量としては、(b−2)の原料である珪素化合物に対して、0.000001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.000005〜5重量%なる範囲が、特に好ましくは、0.0001〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0337】
また、(5)〜(8)なる方法で複合樹脂を調製するに当たり、(b−2)の原料である珪素化合物の加水分解反応を円滑に進行せしめ、さらに、生成した(b−2)と(a−1)もしくは(a−2)との間の縮合反応をスムーズに進行させるために、通常、水を添加した形で反応が行なわれる。その際の水の添加量は、重合体(a−1)または(a−2)に結合した加水分解性シリル基中に含まれる加水分解性基と、当該珪素化合物中に存在する、珪素原子に結合している加水分解性基との合計量の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.5モル以上が適切である。
【0338】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなり易いので、好ましくない。
【0339】
さらに、水の使用量を大過剰に設定しても、反応中に不溶物が析出するなどの不都合が生じない限り、支障なく、複合化反応を行なうことが出来るが、前記した加水分解性基の合計量の1モルに対して、水の使用量を、概ね、10モル以下に、好ましくは、5モル以下に、より好ましくは、3.5モル以下に設定するのが適切であるし、
【0340】
さらに亦、(5)〜(8)なる方法で複合樹脂を調製するに際しての反応条件、ならびに、触媒および水の添加方法は、前記(a−1)もしくは(a−2)および(b−1)の調製に当たって採用されるものに準じればよい。
【0341】
そして、前記した(5)〜(8)なる方法において、中和用の酸性化合物としては、前記した(1)なる方法において使用できるものとして例示した如き各種の化合物を、使用することができる。
【0342】
また、かかる方法における、酸性化合物の使用量などのような、いわゆる中和反応の反応条件は、前出の(1)〜(4)なる方法におけるものに準ずるものとする。
【0343】
(1)〜(8)なる方法により、複合樹脂(C)を調製するに当たり、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)または(b−2)との使用割合は、複合樹脂(C)における重合体セグメント(A)と、ポリシロキサンセグメント(B)との比率が、(A):(B)なる重量割合として、5:95〜99:1程度になるように、好ましくは、15:85〜95:5になるように、さらに好ましくは、20:80〜85:15になるように設定するのがよい。
【0344】
さらに亦、(3)、(4)、(7)または(8)なる方法において、(a−1)または(a−2)を調製するための条件、あるいは(a−1)または(a−2)の目標性状としては、(a−1)または(a−2)の調製方法として、既に記載した条件あるいは性状と合致するものでなければならない。
【0345】
さらに、(1)〜(8)なる方法で複合樹脂(C)を調製する際には、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、攪拌などが容易に行なえるようにするためには、ビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用できるものとして既に掲げたような、種々の有機溶剤類を使用することが望ましい。
【0346】
とくに、重合体(a−1)または(a−2)の調製とポリシロキサン(b−2)の調製を並行して行なう(7)または(8)なる方法においては、不溶解物質の析出を防止して反応中のゲル化を防ぎ、円滑に反応を進行せしめる観点から、反応系を均一に保つことが望ましく、そのためにも、有機溶剤を使用することが必要不可欠である。
【0347】
ここにおいて、有機溶剤を使用する場合には、それらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0348】
(1)〜(8)なる方法で、複合化樹脂(C)の調製を行なうに際しての、各成分の合計濃度は、該反応により生成する複合樹脂(C)の、複合化反応終了時点での、濃度として、5重量%程度以上に、好ましくは、10重量%以上に、さらに好ましくは、20重量%以上になるように設定することが望ましい。そして、この濃度の調整は、前掲したような各種の有機溶剤類で以て行なうことが出来る。
【0349】
上述のようにして、複合樹脂(C)を調製することが出来るが、かかる複合樹脂中に含まれる水;ビニル系重合体(a−1)または(a−2)に含有されていた有機溶剤;複合化反応時に添加した有機溶剤;あるいは複合化反応に伴って生成するアルコールなどの溶剤類は、除去せずとも、そのままで、水に分散ないしは溶解せしめることも出来るし、必要に応じて、蒸留操作などによって除去することも出来る。
【0350】
このようにして得られる複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめることによって、水性樹脂組成物(D)が調製される。
【0351】
複合樹脂(C)から、水性樹脂組成物(D)を調製するには、公知慣用の種々の方法を適用することが出来る。たとえば、複合樹脂(C)に対して、単に、水を添加せしめるか、あるいは複合樹脂(C)を、水に対して加えることによって水中に分散せしめるか、あるいは溶解せしめることによって、目的とする水性樹脂組成物(D)を製造することが出来る。
【0352】
また、必要に応じて、このようにして調製される水性樹脂組成物(D)中に含まれる有機溶剤を、加熱および/または減圧によって、部分的に、あるいは完全に除去せしめることによって、有機溶剤の含有率が低い、あるいは有機溶剤を含有しない水性樹脂組成物(D)を調製することが出来る。
【0353】
このようにして調製される水性樹脂組成物(D)の水性樹脂中に含まれる官能基は、重合体(a−1)と、ポリシロキサン(b−1)あるいは(b−2)とに由来する、シラノール基および場合によっては含有されるようになる、珪素原子に結合した加水分解性基、ならびに重合体(a−1)に由来する塩基性基および酸性化合物により中和された塩基性基であり、
【0354】
さらには、重合体(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)あるいは(b−2)とに由来する、シラノール基および場合によっては含有されるようになる、珪素原子に結合した加水分解性基、ならびに重合体(a−2)に由来する、塩基性基と酸性化合物により中和された塩基性基、さらには、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または構造式(S−II)で示されるような官能基などの、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基の、少なくとも1種のものである。
【0355】
水性樹脂組成物(D)を調製する過程で、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を有するビニル系単量体として、ブロックした酸基あるいは酸無水基を有するビニル系単量体を使用して合成されたビニル系重合体(a−2)を使用した場合には、斯かるブロックした酸基あるいは酸無水基のうちの少なくとも一部分は、前述したような複合化反応を行なう過程で以て、加水分解、酸触媒分解、熱分解あるいはアルコリシスなどによって、遊離の酸基に変換される可能性がある。
【0356】
また、水性樹脂組成物(D)を調製する際に、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基含有ビニル系単量体として、ブロックされた水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基含有単量体を使用して合成されたビニル系重合体(a−2)を使用した場合には、前述した複合化反応の段階で以て、
【0357】
さらには、複合化樹脂(C)を水に分散するか、ないしは、水に溶解する段階で以て、これらの官能基の少なくとも一部分は、加水分解、酸触媒分解あるいはアルコリシスなどによって、遊離の水酸基に変換されることもある。
【0358】
そして、斯かるブロックされた水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基の種類とか、あるいは前述した複合化反応の条件であるとか、引き続いて行なう水への分散ないしは溶解の条件などによっては、斯かる各種の官能基は、完全に、遊離の水酸基に変換されることもある。
【0359】
このようにして調製される水性樹脂組成物(D)から、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を調製するには、一つには、(D)は、それ自体で、自己硬化性を有する処から、(D)を必須の成分として含有する自己硬化性の樹脂組成物とすればよいし、
【0360】
二つには、(D)に対して、さらに、前記した化合物(E)を配合せしめることによって、水性樹脂中に含まれる官能基と、化合物(E)中に含まれる官能基との間の、いわゆる架橋反応をも利用する硬化性樹脂組成物とすればよい。
【0361】
後者の形の硬化性樹脂組成物の調製に際して使用されるこの化合物(E)とは、前述した水性樹脂中に含まれる、前述のような各種の官能基と反応する官能基を少なくとも1種有する、公知慣用の種々の化合物を指称するものであり、こうした官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、アミノ基、シクロカーボネート基、鎖状カーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシメチルアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基、カルボニル基、アセトアセチル基、シラノール基、珪素原子に結合した加水分解性基または次の構造式(S−IV)
【0362】
【化24】
−C(O)−NH−CH(OR3)−COOR4 (S−IV)
【0363】
(ただし、式中のR3 は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとし、また、R4 は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)
【0364】
で示されるような官能基などである。
【0365】
そして、当該化合物(E)中に含まれる官能基は、水性樹脂中に含まれる官能基の種類に応じて、適宜、選択される。そうした組み合わせとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基−シラノール基、シラノール基−アルコキシシリル基、アルコキシシリル基−アルコキシシリル基、カルボキシル基−エポキシ基、カルボキシル基−シクロカーボネート基、3級アミノ基−エポキシ基、水酸基−N−ヒドロキシメチルアミノ基、水酸基−イソシアネート基または水酸基−ブロックイソシアネート基などである。
【0366】
当該化合物(E)としては、水性樹脂中に含まれる官能基によっては、前述したような種々の官能基のうちの2種以上を有するものであってもよい。また、当該化合物(E)としては、比較的、分子量の低い化合物に加えて、各種の樹脂類を使用することも出来るが、このような樹脂類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル樹脂またはフッ素樹脂の如き、各種のビニル系重合体などをはじめ、さらには、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などである。そして、当該化合物(E)として、特に、前記した官能基を2種以上有するような化合物を使用する際には、当該化合物(E)としては、特に、ビニル系重合体を使用するのが簡便である。
【0367】
かかる化合物(E)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にアミノ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリアジリジン化合物、ポリアクリレート化合物、ポリカーボジイミド化合物、ブロックされた水酸基を有する化合物、ポリアミン化合物、少なくとも2個のカルボン酸無水基を有する化合物またはポリオキサゾリン化合物などであり、これらの諸々の化合物類は、単独使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよいことは、勿論、可能である。
【0368】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0369】
前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物のうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような一般式(S−V)で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の加水分解物あるいは加水分解縮合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物などである。
【0370】
これらのうちでも、当該珪素化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、それらの部分加水分解縮合物、それらの部分共加水分解縮合物または珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する、線状、分岐状ないしは環状の、あるいはラダー状のシリコーン樹脂などである。
【0371】
前記した、一分子中に、それぞれ、イソシアネート基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめることにするならば、
【0372】
3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランまたは3−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;
【0373】
あるいは前掲したような、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、後掲するような、イソシアネート基含有ビニル系単量体とからなる種々の共重合体または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系のような種々のビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、イソシアネート基と加水分解性シリル基とを併有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような種々のビニル系共重合体類などである。
【0374】
前記した、一分子中に、それぞれ、エポキシ基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめれば、
【0375】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;あるいは此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物;
【0376】
「EGM−202」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、珪素原子に結合したメトキシ基と、3−グリシドキシプロピルとを併有する、環状のポリシロキサンの商品名];「KP−392」[信越化学(株)製の、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物の商品名];
【0377】
あるいは亦、前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体と、同じく、前掲したような各種の加水分解性シリル基含有ビニル系単量体とからなる種々の共重合体または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系ないしはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、エポキシ基と加水分解性シリル基とを併有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0378】
前記したポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;
【0379】
メタ−キシリレンジイソシアネートまたはα,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;
【0380】
ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサンまたはイソホロンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート類;
【0381】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を、多価アルコール類と付加反応せしめることによって得られる、イソシアネート基を有する各種のプレポリマー類であるとか、
【0382】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を環化三量化せしめることによって得られる、イソシアヌレート環を有する各種のプレポリマー類;
【0383】
前掲したような各種のポリイソシアネート類と、水とを反応せしめることによって得られる、ビウレット構造を有する各種のポリイソシアネート類;
【0384】
さらには、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、各種の、イソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体;
【0385】
または此等のイソシアネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族、ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、
【0386】
それぞれ、イソシアネート基含有アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0387】
そして、かかるポリイソシアネートのうちにあって、特に、耐候性などの面からは、脂肪族、アラルキル系ないしは脂環式ジイソシアネート化合物、それらの各種のジイソシアネート化合物から誘導される、種々のタイプのプレポリマーあるいはイソシアネート基含有ビニル系重合体などの使用が、特に望ましい。
【0388】
前記したブロック・ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリイソシアネート化合物を、後掲するような種々のブロック剤で以てブロック化せしめることによって得られる種々のブロックポリイソシアネート化合物や、
【0389】
イソシアネート基を環化二量化せしめることによって得られる種々のウレトジオン構造を含む化合物のように、熱によって、イソシアネート基が再生するという部類の化合物などである。
【0390】
そして、ブロック・ポリイソシアネート化合物を調製する際に使用されるブロック剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコールまたは乳酸エステルの如き、各種のアルコール類;
【0391】
フェノール、サリチル酸エステルまたはクレゾールの如き、各種のフェノール性水酸基含有化合物類;またはε−カプロラクタム、2−ピロリドンまたはアセトアニリドの如き、各種のアマイド類;
【0392】
あるいはアセトンオキシムまたはメチルエチルケトオキシムの如き、各種のオキシム類などであるし、さらには、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルまたはアセチルアセトンの如き、各種の活性メチレン化合物類などである。
【0393】
前記したポリエポキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたは水添ビスフェノールAの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0394】
ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールSまたはビスフェノールFの如き、各種の芳香族系ジオールのポリグリシジルエーテル類;上掲したような芳香族系ジオール類のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加体の如き、該芳香族系ジオール誘導体類のジグリシジルエーテル類;
【0395】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸またはトリメリット酸の如き、各種の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;
【0396】
ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネンまたはビニルシクロヘキセンの如き、各種の炭化水素系ジエンの種々のビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートまたは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートの如き、各種の脂環式ポリエポキシ化合物;あるいはポリブタジエンまたはポリイソプレンの如き、各種のジエンポリマーの種々のエ
ポキシ化物;
【0397】
「デナコールEX−612」[ナガセ化成工業(株)製の、ソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名];「EGM−400」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、3−グリシドキシプロピルを有する、環状のポリシロキサンの商品名];
【0398】
あるいは亦、前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体の種々の単独重合体または此等のエポキシ基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られるような、それぞれ、エポキシ基を有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0399】
ポリシクロカーボネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリエポキシ化合物を、たとえば、触媒の存在下に、二酸化炭素と反応せしめて、このエポキシ基を、シクロカーボネート基に変換することによって得られる5員環シクロカーボネート基含有ポリシクロカーボネート化合物;あるいは前掲したような各種のシクロカーボネート基含有ビニル単量体の種々の単独重合体
【0400】
または此等のシクロカーボネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、シクロカーボネート基を有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0401】
続いて、前記したアミノ樹脂として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、
【0402】
メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、尿素またはグリコウリルの如き、各種のアミノ基含有化合物を、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの如き、各種のアルデヒド化合物(ないしはアルデヒド供給物質)と反応せしめることによって得られるアルキロール基を有する種々のアミノ樹脂;
【0403】
あるいは斯かるアルキロール基を有するアミノ樹脂を、メタノール、エタノール、n−ブタノールまたはi−ブタノール(イソブタノール)の如き、各種の低級アルコールと反応せしめることによって得られる、種々のアルコキシアルキル基含有アミノ樹脂などである。
【0404】
また、1級ないしは2級アミド基含有化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前述したビニル系重合体(a−2)の調製の際に、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の官能基を有するビニル系単量体の一部として、すでに、例示しているような、1級ないしは2級アミド基を有する、種々のビニル系単量体の単独重合体
【0405】
または此等の1級ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、1級ないしは2級アミド基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0406】
さらに、ポリカルボキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸などのような低分子量の化合物などであるし、さらには、
【0407】
ビニル系重合体(a−2)の調製の際に、酸基含有ビニル系単量体の一部として、既に例示しているような、カルボキシル基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体
【0408】
または此等のカルボキシル基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、カルボキシル基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0409】
前記したポリヒドロキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはグリセリンなどのような種々の低分子化合物などであり、また、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどをはじめ、さらには、ビニル系重合体(a−2)の調製の際に、塩基性基と加水分解性シリル基なる両官能基以外の官能基含有ビニル系単量体の一部として、すでに、例示しているような、水酸基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体
【0410】
または此等の水酸基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、水酸基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0411】
化合物(E)を、水性樹脂組成物(D)に配合せしめる際、この化合物(E)が、それ自体、水溶性のものであったり、水分散体であったり、或る程度の親水性を有するようなものであったりする場合には、当該化合物(E)が、水性樹脂組成物(D)中に、均一に溶解ないしは均一に分散した形の組成物を得ることが出来る。
【0412】
しかしながら、当該化合物(E)の親水性が低い場合には、水性樹脂組成物(D)と混合せしめようとしても、均一に溶解ないしは分散した形の組成物を得ることは出来ないようになるが、このような場合には、公知慣用の種々の方法によって、当該化合物(E)中に、いわゆる親水性基などを導入せしめることによって、当該化合物(E)それ自体の親水性を向上せしめ、均一なる形の組成物を得ることが出来る。
【0413】
当該化合物(E)が重合体である場合には、当該化合物(E)としては、無溶剤液状物、有機溶剤溶液、水溶液または水分散体のいずれの形態であっても使用することができる。そして、当該化合物(E)それ自体がビニル重合体である場合には、エマルジョン重合体として使用するのも好適である。
【0414】
前記した水性樹脂組成物(D)と、当該化合物(E)とから成る水性硬化性樹脂組成物を調製するには、当該化合物(E)それ自体が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物である場合には、水性樹脂組成物(D)の固形分の100重量部に対して、当該化合物(E)の固形分量が、0.1〜200重量部の範囲内、好ましくは、0.5〜150重量部の範囲内、一層好ましくは、1〜100重量部の範囲内となるように配合すればよい。
【0415】
また、当該化合物(E)が、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物またはブロックポリイソシアネート化合物である場合には、水性樹脂中に含まれる、それぞれ、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0416】
当該化合物(E)中に含まれる、それぞれ、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基の量が0.1〜10当量の範囲内、好ましくは、0.3〜5当量の範囲内、一層好ましくは、0.5〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(E)を配合すればよい。
【0417】
また、当該化合物(E)が、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリエポキシ化合物あるいはポリシクロカーボネート化合物である場合には、水性樹脂中に含まれる、それぞれ、エポキシ基またはシクロカーボネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0418】
当該化合物(E)中に含まれるエポキシ基量および/またはシクロカーボネート基量の合計量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(E)を配合すればよい。
【0419】
続いて、当該化合物(E)が、特に、アミノ樹脂である場合には、水性樹脂組成物(D)の固形分の100重量部に対して、化合物(E)の固形分量が、5〜200重量部の範囲内、好ましくは、10〜150重量部の範囲内、一層好ましくは、15〜100重量部の範囲内となるように配合すればよい。
【0420】
また、当該化合物(E)が、特に、1級ないしは2級アミド基を有する化合物である場合には、水性樹脂中に含まれる1級ないしは2級アミド基と反応する官能基の1当量に対して、
【0421】
当該化合物(E)中に含まれる1級ないしは2級アミド基量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、化合物(E)を配合すればよい。
【0422】
さらに、当該化合物(E)が、特に、ポリカルボキシ化合物である場合には、水性樹脂中に含まれるカルボキシル基と反応する官能基の1当量に対して、
【0423】
当該化合物(E)中に含まれるカルボキシル基量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(E)を配合すればよい。
【0424】
また、当該化合物(E)が、特に、ポリヒドロキシ化合物である場合には、水性樹脂に含まれる、ヒドロキシ基と反応する官能基の1当量に対して、
【0425】
当該化合物(E)中に含まれる水酸基量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、化合物(E)を配合すればよい。
【0426】
上述のようにして調製される、水性樹脂組成物(D)に、さらに、化合物(E)をも配合せしめてなる、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、着色顔料を含まないクリヤーな組成物として使用することも出来るし、また、公知慣用の種々の有機系あるいは無機系の顔料を含有する着色組成物として、使用することも出来る。
【0427】
また、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物には、さらに、硬化触媒、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または可塑剤などのような、公知慣用の種々の添加剤類などをも配合せしめた形で以て、種々の用途に利用することが出来る。
【0428】
前記した添加剤類のうち、硬化触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前記したようなポリシロキサン(b−1)の調製に使用されるものとして、すでに、前掲しているような各種の触媒類を使用することも出来るし、これらの諸化合物に加えて、テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩またはベンジルホスホニウム塩類などであって、対アニオンとして、たとえば、フルオライド、クロライド、ブロマイドまたはカルボキシレートの如き、各種のアニオンを有するような種々の化合物を使用することも出来る。
【0429】
かくして得られる、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、該水性硬化性樹脂組成物を構成している、それぞれ、水性樹脂の種類によって、(E)成分の有無によって、(E)成分を添加した場合には、その種類と使用量とによって、硬化触媒の有無によって、硬化触媒を添加した場合にはその種類と量によって、最適なる硬化条件は異なるけれども、室温で、3〜10日間程度のあいだ乾燥せしめるか、
【0430】
あるいは80〜250℃程度の温度範囲で、30秒間〜2時間程度のあいだ、焼き付けを行なうことによって、実用性の高い硬化物を得ることが出来る。
【0431】
本発明に係る水性樹脂組成物は、とりわけ、耐久性などに極めて優れる硬化物を与えるものであるという処から、該水性樹脂組成物を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、主として、自動車上塗り用塗料、建築外装用塗料、あるいは建材用塗料などの、種々の塗料用に利用することが出来るし、さらには、接着剤用、インク用、繊維・紙の含浸剤用ならびに表面処理剤用などとして、広範囲なる用途にも、利用することが出来る。
【0432】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明をすることにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0433】
参考例1〔重合体(a−1)の調製例〕
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロパノール(IPA)の470部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0434】
次いで、同温度で、スチレン(ST)の100部、メチルメタアクリレート(MMA)の300部、n−ブチルメタクリレート(BMA)の264部、n−ブチルアクリレート(BA)の186部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)の30部および2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の120部からなる混合物と、IPAの350部と、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)(ABMBN)の50部とからなる混合物とを、別々に、4時間かけて滴下した。
【0435】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌することによって、不揮発分が57.3%で、かつ、数平均分子量が10,100なる、ジメチルアミノ基およびトリメトキシシリル基を併有する目的重合体の溶液を得た。以下、これを(a−1−1)と略記する。
【0436】
参考例2(同上)
参考例1と同様の反応容器に、IPAの470部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0437】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの264部、BAの186部およびDMAEMAの120部からなる混合物と、IPAの350部とABMBNの50部とからなる混合物と、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの24部とを、それぞれ、別々に、4時間かけて滴下した。
【0438】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌することによって、不揮発分が55.1%で、かつ、数平均分子量が7,300なる、ジメチルアミノ基およびトリメトキシシリル基を併有する目的重合体の溶液を得た。以下、これを(a−1−2)と略記する。
【0439】
参考例3および4〔重合体(a−2)の調製例〕
単量体の種類および使用量と、重合開始剤の使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する、各種の目的重合体(a−2)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記をする。
【0440】
【表1】
Figure 0003814743
【0441】
《第1表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0442】
「AA」………………………アクリル酸の略記
【0443】
「2−HEMA」……………2−ヒドロキシエチルメタクリレートの略記
【0444】
【表2】
Figure 0003814743
【0445】
《第1表の脚注》
数平均分子量を示す各数値は、いずれも、百分の一となっているので、百倍(つまり、「×100」)をした値が、真のものである。
【0446】
参考例5および6〔重合体(R−1)および(R−2)の調製例〕
単量体の種類および使用量と、重合開始剤の使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する目的重合体(R−1)および(R−2)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記する。
【0447】
【表3】
Figure 0003814743
【0448】
【表4】
Figure 0003814743
【0449】
《第1表の脚注》
参考例5で得られた「R−1」は、対照用樹脂1を調製する際に使用するための重合体である。
【0450】
参考例6で得られた「R−2」は、対照用樹脂2を調製する際に使用するための重合体である。
【0451】
参考例7(対照用樹脂1の調製例)
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、重合体(R−1)の911部を仕込んだ。次いで、室温で、攪拌下に、酢酸の14部とイオン交換水の750部との混合物を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が34.5%なる、対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂1と略記する。
【0452】
参考例8(対照用樹脂2の調製例)
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、重合体(R−2)の909部を仕込んだ。次いで、室温で、攪拌下に、酢酸の21部とイオン交換水の750部との混合物を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が35.0%なる、対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂2と略記する。
【0453】
実施例1
【0454】
本例は、本発明に係る水性樹脂組成物(以下水性樹脂と略記する)それ自体、そして、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を構成する一必須成分としての水性樹脂についての一実施態様を示すためのものである。
【0455】
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)の354部およびIPAの422部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0456】
次いで、同温度で、「AP−3」[大八化学工業所(株)製の、イソプロピルアシッドホスフェートの商品名]の2.9部と、イオン交換水の96部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なった。
【0457】
しかるのち、核磁気共鳴分析(1H−NMR)で以て、反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0458】
引き続いて、此処へ、参考例1で得られた重合体(a−1−1)の1,355部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なって、ポリシロキサンと、重合体(a−1−1)との縮合物を調製した。
【0459】
次いで、この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−1−1)中に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0460】
引き続いて、同温度で、酢酸の32.1部とイオン交換水の1,452部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.1%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−1)と略記する。
【0461】
しかるのち、此の水性樹脂(D−1)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−1)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0462】
実施例2
【0463】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体、そして、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を構成する一必須成分としての水性樹脂(D)の調製についての、更なる一実施態様を、あるいは本発明に係る、それぞれ、製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)それ自体の調製についての、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0464】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0465】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの354部およびIPAの392部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0466】
次いで、同温度で、「AP−3」の2.9部と、イオン交換水の96部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0467】
しかるのち、参考例3で得られた重合体(a−2−1)の1,379部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なって、ポリシロキサンと、重合体(a−2−1)との縮合物を調製した。
【0468】
次いで、この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−2−1)に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0469】
引き続いて、同温度で、酢酸の21部とイオン交換水の1,436部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が41.1%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−2)と略記する。
【0470】
しかるのち、此の水性樹脂(D−2)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−2)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0471】
実施例3
【0472】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体、そして、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を構成する一必須成分としての水性樹脂(D)の調製法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0473】
実施例1と同様の反応容器に、酢酸の26部、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)の354部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)の214部およびIPAの480部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0474】
次いで、同温度で、「AP−3」の5.7部と、イオン交換水の193部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なった。核磁気共鳴分析(1H−NMR)で以て反応混合物の分析を行ない、PTMSおよびDMDMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0475】
しかるのち、参考例2で得られた重合体(a−1−2)の1,159部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なって、ポリシロキサンと、重合体(a−1−2)との縮合物を調製した。
【0476】
次いで、この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−1−2)中に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0477】
引き続いて、同温度で、イオン交換水の1,346部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が41.5%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−3)と略記する。
【0478】
しかるのち、此の水性樹脂(D−3)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−3)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0479】
実施例4
【0480】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体、そして、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を構成する一必須成分としての水性樹脂(D)の調製法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0481】
実施例1と同様の反応容器に、酢酸の25部、PTMSの566部、メチルトリエトキシシラン(MTES)の64部およびIPAの518部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0482】
次いで、同温度で、「AP−3」の5.2部と、イオン交換水の174部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSおよびMTESの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0483】
しかるのち、参考例4で得られた重合体(a−2−2)の1,090部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なって、ポリシロキサンと、重合体(a−2−2)との縮合物を調製した。
【0484】
次いで、この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−2−2)に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0485】
引き続いて、同温度で、イオン交換水の1,364部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が42.2%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−4)と略記する。
【0486】
しかるのち、此の水性樹脂(D−4)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−4)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0487】
実施例5
【0488】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0489】
参考例1で得られた重合体(a−1−1)の1,180部、PTMSの424部、MTESの127部およびIPAの496部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0490】
次いで、同温度で、「AP−3」の4.6部と、イオン交換水の154部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、重合体(a−1−1)に含有されていたトリメトキシシリル基、PTMSおよびMTESの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0491】
しかるのち、同温度で、酢酸の28部とイオン交換水の1,388部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が39.9%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−5)と略記する。
【0492】
しかるのち、此の水性樹脂(D−5)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−5)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0493】
実施例6
【0494】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0495】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0496】
参考例3で得られた重合体(a−2−1)の882部、PTMSの495部、DMDMSの300部およびIPAの611部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0497】
次いで、同温度で、「AP−3」の8.0部と、イオン交換水の270部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、重合体(a−2−1)に含有されていたトリメトキシシリル基、PTMSおよびDMDMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0498】
しかるのち、同温度で、酢酸の14部とイオン交換水の1,250部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が40.9%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−6)と略記する。
【0499】
しかるのち、此の水性樹脂(D−6)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−6)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0500】
実施例7
【0501】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0502】
参考例2で得られた重合体(a−1−2)の905部、酢酸の21部、PTMSの771部およびIPAの594部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0503】
次いで、同温度で、「AP−3」の6.3部と、イオン交換水の210部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、重合体(a−1−2)に含有されていたトリメトキシシリル基、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0504】
しかるのち、同温度で、イオン交換水の1,385部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が42.1%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−7)と略記する。
【0505】
しかるのち、此の水性樹脂(D−7)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−7)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0506】
実施例8
【0507】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0508】
参考例4で得られた重合体(a−2−2)の893部、酢酸の21部、PTMSの771部およびIPAの395部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0509】
次いで、同温度で、「AP−3」の6.3部と、イオン交換水の210部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、重合体(a−2−2)に含有されていたトリメトキシシリル基、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0510】
しかるのち、同温度で、イオン交換水の1,385部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が40.2%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−8)と略記する。
【0511】
しかるのち、此の水性樹脂(D−8)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−8)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0512】
実施例9
【0513】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0514】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの769部およびIPAの1150部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0515】
次いで、同温度で、「AP−3」の6.3部と、イオン交換水の210部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0516】
さらに、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの264部、BAの186部、DMAEMAの120部およびMPTMSの30部からなる混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0517】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌を行なって複合樹脂を得た。この複合樹脂を1H−NMRで分析した処、MPTMSに含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0518】
しかるのち、同温度で、酢酸の41部とイオン交換水の2,102部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が43.3%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−9)と略記する。
【0519】
しかるのち、此の水性樹脂(D−9)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−9)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0520】
実施例10
【0521】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0522】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの255部、DMDMSの51部およびIPAの860部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0523】
次いで、同温度で、「AP−3」の2.8部と、イオン交換水の93部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSおよびDMDMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0524】
さらに、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの214部、BAの186部、DMAEMAの120部、MPTMSの30部および2−HEMAの50部からなる混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0525】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌を行なって複合樹脂を得た。この複合樹脂を1H−NMRで分析した処、MPTMSに含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0526】
しかるのち、同温度で、酢酸の41部とイオン交換水の1,769部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が41.5%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−10)と略記する。
【0527】
しかるのち、此の水性樹脂(D−10)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−10)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0528】
実施例11
【0529】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0530】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの255部、MTESの76部およびIPAの860部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0531】
次いで、同温度で、「AP−3」の2.8部と、イオン交換水の93部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSおよびMTESの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0532】
さらに、同温度で、酢酸の41部を5分間を要して適下したのち、STの100部、MMAの300部、BMAの264部、BAの186部、DMAEMAの120部およびMPTMSの30部からなる混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0533】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌を行なって複合樹脂を得た。この複合樹脂を1H−NMRで分析した処、MPTMSに含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0534】
しかるのち、同温度で、イオン交換水の1,769部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が42.7%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−11)と略記する。
【0535】
しかるのち、此の水性樹脂(D−11)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−11)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0536】
実施例12
【0537】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0538】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの170部、DMDMSの167部およびIPAの860部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0539】
次いで、同温度で、「AP−3」の3.3部と、イオン交換水の112部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSおよびDMDMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0540】
さらに、同温度で、酢酸の28部を5分間を要して滴下したのち、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)の100部、MMAの300部、BMAの264部、BAの186部、DMAEMAの80部、MPTMSの30部およびAAの40部からなる混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0541】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌を行なって複合樹脂を得た。この複合樹脂を1H−NMRで分析した処、MPTMSに含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0542】
しかるのち、同温度で、イオン交換水の1,730部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が41.9%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−12)と略記する。
【0543】
しかるのち、此の水性樹脂(D−12)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−12)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0544】
実施例13
【0545】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0546】
参考例1と同様の反応容器に、PTMSの769部と、IPAの1,150部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0547】
次いで、同温度で、「AP−3」の6.3部およびイオン交換水の210部の混合物と、STの100部、MMAの300部、BMAの284部、BAの186部、DMAEMAの120部、MPTMSの10部の混合物と、IPAの350部と、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリメトキシシリルブチロニトリル)の50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0548】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌して複合樹脂を得た。この複合樹脂を、 1H−NMRで以て分析した処、PTMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0549】
次いで、同温度で、酢酸の41部とイオン交換水の2,102部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が41.4%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−13)と略記する。
【0550】
しかるのち、此の水性樹脂(D−13)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−13)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0551】
実施例14
【0552】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0553】
参考例1と同様の反応容器に、PTMSの530部、DMDMSの251部と、IPAの1150部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0554】
次いで、同温度で、「AP−3」の7.7部およびイオン交換水の258部の混合物と、STの100部、MMAの300部、BMAの214部、BAの186部、DMAEMAの120部、2−HEMAの50部、MPTMSの30部の混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0555】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌して複合樹脂を得た。この複合樹脂を、 1H−NMRで以て分析した処、PTMS、DMDMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0556】
次いで、同温度で、酢酸の41部とイオン交換水の2,054部との混合物を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.3%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−14)と略記する。
【0557】
しかるのち、此の水性樹脂(D−14)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−14)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0558】
実施例15
【0559】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0560】
参考例1と同様の反応容器に、酢酸の41部、PTMSの385部と、IPAの900部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0561】
次いで、同温度で、「AP−3」の3.1部およびイオン交換水の105部との混合物と、STの100部、MMAの300部、BMAの284部、BAの186部、DMAEMAの120部、MPTMSの30部の混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0562】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌して複合樹脂を得た。この複合樹脂を、 1H−NMRで以て分析した処、PTMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0563】
次いで、同温度で、イオン交換水の1,509部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.4%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−13)と略記する。
【0564】
しかるのち、此の水性樹脂(D−15)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−15)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0565】
実施例16
【0566】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体についての更なる一実施態様を示し、さらに、当該水性樹脂(D)の製造法についての更なる一実施態様を示すためのものである。
【0567】
参考例1と同様の反応容器に、酢酸の41部、PTMSの1,151部、IPAの1,400部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0568】
次いで、同温度で、「AP−3」の9.4部およびイオン交換水の314部との混合物と、STの100部、MMAの300部、BMAの214部、BAの186部、DMAEMAの120部、2−HEMAの50部、PTMSの30部の混合物と、IPAの350部と、ABMBNの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0569】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌して複合樹脂を得た。この複合樹脂を、 1H−NMRで以て分析した処、PTMS、DMDMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0570】
次いで、同温度で、イオン交換水の2,373部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.8%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−16)と略記する。
【0571】
しかるのち、此の水性樹脂(D−16)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−16)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0572】
実施例17〜32
【0573】
これらの一連の実施例は、いずれも、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物の調製の一実施態様を示すためのものであるし、加えて、更なる種々の実施態様を示すためのものである。
【0574】
まず、水性樹脂(D)の一部と、顔料と、エチレングリコールモノブチルエーテル(EGMBE)との混合物を、サンドミルを使用して分散せしめ、顔料重量濃度(PWC)が60%なる、各種のミルベースを調製せしめ、次いで、それぞれのミルベースに、水性樹脂(D)の残りの全量を添加して、混合せしめることによって、各種の白色ベースを調製した。
【0575】
そして、それぞれの白色ベースに対して、必要に応じて、化合物(E)を配合せしめることによって、PWCが35%なる、各種の白色塗料を調製した。
【0576】
このように調製される、それぞれの白色塗料に使用した、水性樹脂(D)、顔料、EGMBEおよび化合物(E)の使用比率は、第2表に示す通りである。
【0577】
かくして得られた、それぞれの白色塗料を、予め、ポリエステル/メラミン系の塗料が塗装され、焼き付けされた塗装鋼板であって、しかも、水研ぎされた此の鋼板上に、乾燥膜厚が約40マイクロ・メーターないしはミクロン(μm)となるように、アプリケーターで塗布せしめ、次いで、第2表に示すような硬化条件で以て、各種の硬化塗膜を得た。
【0578】
此処において得られた、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、とりわけ、外観に優れるものであることが明らかとなった。それぞれの塗膜についての諸性能の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、第2表に示す。
【0579】
比較例1および2
まず、それぞれ、参考例7または8で得られた、対照用樹脂1または2の一部と、顔料と、EGMBEとの混合物を、サンドミルを使用して分散せしめ、PWCが60%なる、各種のミルベースを調製し、次いで、それぞれのミルベースに、対照用樹脂1または2の残りの全量を添加して、混合せしめることによって、各種の白色ベースを調製した。
【0580】
そして、それぞれの白色ベースに対して、必要に応じて、化合物(E)を配合せしめることによって、PWCが35%なる、各種の白色塗料を調製した。
【0581】
上記のように調製される、それぞれの白色塗料に使用した、対照用樹脂1または2と、顔料、EGMBEおよび化合物(E)との使用比率は、第2表に示す通りである。
【0582】
かくして得られた、それぞれの白色塗料を、実施例17と同様にして、塗布せしめ、同表に示すような硬化条件で以て硬化せしめることによって、各種の硬化塗膜を得た。
【0583】
此処において得られた、対照用樹脂1または2を含有することから成る、対照用の水性硬化性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、外観に優れるものであった。それぞれの塗膜についての諸性能の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、第2表に示す。
【0584】
【表5】
Figure 0003814743
【0585】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0586】
「CR−97」は、「タイペーク CR−97」の略記であって、石原産業(株)製の、ルチル型酸化チタンの商品名である。
【0587】
【表6】
Figure 0003814743
【0588】
《第2表の脚注》
「耐候性」は、サンシャイン・ウエザオメーターによる、2,000時間に及ぶ曝露を行なったのちの、塗膜の60度鏡面反射率(%)なる光沢値を、未曝露時における、塗膜の同上の光沢値で以て除して、それを、100倍した値(光沢保持率:%)を表示したものである。
【0589】
その値が大きいほど、耐候性が良好であることを示している。
【0590】
「耐汚染性」は、屋外において、2ヵ月間に及ぶ曝露を行なったのちの塗膜と、未曝露時の塗膜との色差△Eを表示したものである。その値が、0に近いほど、耐汚染性が良好であるということを示している。
【0591】
「耐酸性」は、「耐酸性雨性」の代用試験として行なうものであり、それぞれの硬化塗膜の表面上に、10%硫酸水溶液の0.1ミリ・リットルを載せた試験板を、50℃の熱風乾燥器中に、30分間のあいだ保持したのち、塗膜表面を水洗乾燥してから、その表面の状態を、目視により評価判定した。その際の評価判定の基準は、次の通りである。
【0592】
◎…エッチングなし
○…若干ながら、エッチングあり
△…光沢が低下している
×…エッチングが著しい
【0593】
「耐アルカリ性」は、それぞれの試験板を、5%水酸化ナトリウム水溶液中に、室温下において、24時間のあいだ浸漬せしめたのちに、塗膜表面を、各別に、水洗し乾燥してから、その表面状態を、目視により評価判定したものである。
【0594】
【表7】
Figure 0003814743
【0595】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0596】
【表8】
Figure 0003814743
【0597】
【表9】
Figure 0003814743
【0598】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0599】
「S−695」は、「ウォーターゾル S−695」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、メチルエーテル化メチロールメラミン樹脂水溶液;不揮発分=66%の商品名である。
【0600】
【表10】
Figure 0003814743
【0601】
【表11】
Figure 0003814743
【0602】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0603】
【表12】
Figure 0003814743
【0604】
【表13】
Figure 0003814743
【0605】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0606】
「GPTMS」……………3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの略記
【0607】
【表14】
Figure 0003814743
【0608】
【表15】
Figure 0003814743
【0609】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0610】
「EX−612」は、「デナコール EX−612」の略記であって、ナガセ化成工業(株)製のソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名である。
【0611】
【表16】
Figure 0003814743
【0612】
実施例33
【0613】
本例は、各種の水性樹脂についての、とりわけ、保存安定性の評価判定を行なうことを目的としたものである。
【0614】
実施例1〜16において得られた、各種の水性樹脂(D)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存せしめたのち、実施例17〜32と同様の方法で以て、各種の白色ベースを調製し、さらに必要に応じて、化合物(E)をも配合せしめることによって、PWCが35%なる各種の白色塗料を調製した。
【0615】
かくして得られた、それぞれの白色塗料に使用した、水性樹脂(D)、顔料、EGMBEおよび化合物(E)の使用比率は、第2表に示す通りである。
【0616】
次いで、実施例17〜32と同様の方法で以て、それぞれの白色塗料を試験塗板上に塗布せしめ、しかるのち、第2表に示すような硬化条件で以て硬化せしめることによって、各種の硬化塗膜を得た。
【0617】
此処において得られた、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したのちの水性樹脂より調製された白色ベースを含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、とりわけ、外観に優れるものであると共に、それぞれの塗膜の諸性能が、第2表に示すような結果と、殆ど、差異が認められなかった。
【0618】
此等の各事実から、水性樹脂(D)は、とりわけ、保存安定性に優れるものであると判断されよう。
【0619】
以上に詳説した通り、本発明に係る水性樹脂は、酸性化合物で以て中和された、塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)とで以て構成され、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、共に、次のような構造式(S−I)
【0620】
【化25】
Figure 0003814743
【0621】
(ただし、式中、炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。)
【0622】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめるという、斬新なる製造方法により得られるものであり、とりわけ、優れた硬化性ならびに優れた保存安定性を兼備するという、極めて実用性の高いものである。
【0623】
また、こうした水性樹脂を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性などに優れる塗膜を形成することの出来る、極めて実用性の高いものである。
【0624】
【発明の効果】
本発明に係る水性樹脂は、とりわけ、優れた硬化性と、優れた保存安定性とを兼備するというものであり、こうした水性樹脂を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物も亦、とりわけ、曝露時の光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの、いわゆる耐久性に優れる硬化塗膜を形成することの出来る、特に、被覆用組成物として、極めて実用性の高いものである。

Claims (27)

  1. 酸性化合物で以て中和された塩基性基を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)で構成され、しかも、これらの(A)成分と(B)成分とが、下記の構造式(S−I)
    Figure 0003814743
    (ただし、式中、炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した他方の珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。)で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂組成物
  2. 前記した複合樹脂(C)が、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基を併有する重合体(a−1)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめたのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  3. 前記した複合樹脂(C)が、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめたのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  4. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基を併有する重合体(a−1)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  5. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  6. 前記した複合樹脂(C)が、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基を併有する重合体(a−1)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記した(a−1)と上記した(b−2)とを複合化せしめたしめたのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  7. 前記した複合樹脂(C)が、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記した(a−2)と上記した(b−2)とを複合化せしめたしめたのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  8. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物と、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基を併有する重合体(a−1)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記した(a−1)と上記した(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  9. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物と、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記した(a−2)と上記した(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  10. 前記した複合樹脂(C)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基を併有する重合体(a−1)を調製する過程で、上記した(a−1)と上記した(b−1)とを複合化せしめたのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  11. 前記した複合樹脂(C)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)を調製する過程で、上記した(a−2)と上記した(b−1)とを複合化せしめたのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  12. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、塩基性基と加水分解性シリル基を併有する重合体(a−1)を調製する過程で、上記した(a−1)と上記した(b−1)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  13. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)を調製する過程で、上記した(a−2)と上記した(b−1)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  14. 前記した複合樹脂(C)が、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基を併有する重合体(a−1)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を並行して行なったのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  15. 前記した複合樹脂(C)が、塩基性基と加水分解性シリル基なる両基と、これらの塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を並行して行なったのち、塩基性基を酸性化合物で以て部分中和ないしは完全に中和せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  16. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基を有する重合体(a−1)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を並行して行なう過程で、上記した(a−1)と上記した(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  17. 前記した複合樹脂(C)が、酸性化合物の存在下において、塩基性基および加水分解性シリル基なる両基と、これら塩基性基および加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を併有する重合体(a−2)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を並行して行なう過程で、上記した(a−2)と上記した(b−2)と複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  18. 前記した重合体(a−2)が、塩基性基および加水分解シリル基以外の官能基として、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド、カーバメート基および下記の構造式(S−II)
    Figure 0003814743
    で示される官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有するものである、請求項3、5、7、9、11、13、15または17のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  19. 前記した重合体セグメント(A)が、ビニル系重合体セグメントである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  20. 前記した重合体(a−1)が、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤より選ばれる、少なくとも1種の化合物の存在下に、塩基性基を有するビニル系単量体を必須成分とする単量体をラジカル重合せしめて調製されるビニル系重合体である、請求項2、4、6、8、10、12、14または16のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  21. 前記した重合体(a−2)が、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤より選ばれる、少なくとも1種の化合物の存在下に、塩基性基と、これらの塩基性基と加水分解性シリル基なる両基以外の官能基を有するビニル系単量体とを必須成分とする単量体をラジカル重合せしめて調製されるビニル系重合体である、請求項3、5、7、9、11、13、15または17のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  22. 前記した、重合体(a−1)中に含まれる加水分解性シリル基が、アルコキシシリル基である、請求項2、4、6、8、10、12、14または16のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  23. 前記した、重合体(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基が、アルコキシシリル基である、請求項3、5、7、9、11、13、15または17のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  24. 前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)が、一分子に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を必須の成分として含有する珪素化合物類の加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物である、請求項2〜5または10〜13のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  25. 前記した、一分子に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物が、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物およびその部分共加水分解縮合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種のアルコキシシランである、請求項6〜9、14〜17または24のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  26. 請求項1〜25のいずれかに記載の水性樹脂組成物(D)と、該水性樹脂組成物(D)の水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(E)とを、必須の成分として含有することを特徴とする、水性硬化性樹脂組成物。
  27. 前記した化合物(E)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物である、請求項26に記載の組成物。
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