JP3829377B2 - 水性樹脂組成物及びそれを含有する水性硬化性樹脂組成物 - Google Patents

水性樹脂組成物及びそれを含有する水性硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規にして有用なる水性樹脂組成物と、該水性樹脂組成物を必須の成分として含有する、新規にして有用なる水性硬化性樹脂組成物とに関する。さらに詳細には、本発明は、ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで構成され、しかも、これらのセグメント(A)とセグメント(B)とが、次の構造式(S−I)
【0002】
【化8】
Figure 0003829377
【0003】
〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0004】
で示される結合を介して複合化している形の複合樹脂を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる、それぞれ、水性樹脂組成物;ならびに該水性樹脂組成物を必須の成分として含有する、水性硬化性樹脂組成物に関し、
【0005】
とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性をはじめとして、とりわけ、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れる塗膜を形成することが出来て、しかも、優れた硬化性と、優れた保存安定性とを兼備した水性樹脂組成物を提供するというものであるし、該水性樹脂組成物を含有する、硬化性にも優れるし、しかも、前述したような耐久性をはじめとする諸性能に優れる硬化塗膜を与える水性硬化性樹脂組成物をも提供するものである。
【0006】
【従来の技術】
これまでにも、塗料用の水性硬化性樹脂組成物としては、塩基性基ないしは酸基と、水酸基のような、いわゆる官能基とを併有するビニル系重合体を、酸性化合物あるいは塩基性化合物で以て中和せしめたのち、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂と、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂またはアミノ樹脂のような、種々の硬化剤とから成る水性硬化性樹脂組成物が、幅広く、使用されている。
【0007】
しかしながら、こうした、これまでに使用されて来たような水性樹脂をベースとする水性硬化性樹脂組成物から得られる硬化塗膜は、とりわけ、曝露時の光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性が不十分であり、したがって、高度の耐久性などが要求されるような用途には、全くと言ってよいほど、利用することが出来ない、という決定的なる問題がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の問題点を、悉く解決するべく、鋭意、研究を開始した。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性に優れた硬化物を与えることができ、しかも、硬化性や保存安定性などにも優れる、新規にして有用なる水性樹脂組成物を提供することにもあるし、
【0010】
併せて、かかる新規にして有用なる水性樹脂組成物を含有する、前述したような耐久性に加えて、とりわけ、耐溶剤性、耐薬品性ならびに耐水性などの諸性能にも優れるという、極めて実用性の高い水性硬化性樹脂組成物をも提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述したような発明が解決しようとする課題に照準を合わせて、鋭意、検討を重ねた結果、
【0012】
ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで以て構成され、しかも、(A)および(B)なる此等の両セグメントが、次の構造式(S−I)
【0013】
【化9】
Figure 0003829377
【0014】
〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0015】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂組成物が、とりわけ、硬化性ならびに保存安定性などに優れるということを見出して、
【0016】
該水性樹脂組成物を必須の成分として含有する水性硬化性樹脂組成物が、とりわけ、光沢保持性、耐酸性雨性ならびに耐曝露汚染性などの耐久性に優れるということをも見出し、ひいては、上述したような発明が解決しようとする課題を、見事に、解決することが出来るということを確信するに及んで、ここに、本発明を完成させるに到った。
【0017】
すなわち、本発明は、基本的には、それぞれ、ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで構成され、しかも、(A)および(B)なる此等の両セグメントが、次の構造式(S−I)
【0018】
【化10】
Figure 0003829377
【0019】
〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0020】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂組成物(D)を提供しようとするものであるし、
【0021】
併せて、該水性樹脂組成物(D)を必須の成分として含有する水性硬化性樹脂組成物をも提供しようとするものであるし、
【0022】
さらには、該水性樹脂組成物(D)と、該水性樹脂組成物(D)の水性樹脂中に含まれる官能基と反応する官能基とを併有する化合物(E)とを含有することから成る水性硬化性樹脂組成物をも提供しようとするものである。
【0023】
【発明の実施の形態】
このように、本願は、一つには、分子中にポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A;以下も同様)と、分子中に、珪素原子に結合した水酸基を有する、分岐したポリシロキサン・セグメント(B;以下も同様)とで以て構成され、しかも、(A)および(B)なる此等の両セグメントが、次の構造式(S−I)
【0024】
【化11】
Figure 0003829377
【0025】
〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0026】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる、極めて実用性の高い水性樹脂組成物(D)それ自体を請求しようとするものであるし、
【0031】
三つには、ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで以て構成され、しかも、前記(A)と(B)とが、次の構造式(S−I)
【0032】
【化13】
Figure 0003829377
【0033】
〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0034】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂(D)を必須の成分として含有することから成る、水性硬化性樹脂組成物を請求しようとするものであるし、
【0035】
四つには、前記水性樹脂(D)と、水性樹脂(D)中に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(E)とを含有することから成る、水性硬化性樹脂組成物をも請求しようとするものである。
【0036】
また、本願は、前記した複合樹脂(C)が、特に、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを併有する重合体(a−1)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめて得られるものでるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0037】
さらに、前記した複合樹脂(C)が、特に、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを有する重合体(a−2)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめて得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0038】
さらには、前記した複合樹脂(C)が、特に、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを併有する重合体(a−1)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記(a−1)と上記(b−2)とを複合化せしめることによりに得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0039】
さらにまた、前記した複合樹脂(C)が、特に、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを併有する重合体(a−2)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記(a−2)と上記(b−2)とを複合化せしめることによりに得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0040】
さらにはまた、前記した複合樹脂(C)が、特に、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを併有する重合体(a−1)を調製する過程で、上記(a−1)と上記(b−1)とを複合化せしめることによりに得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0041】
そして、前記した複合樹脂(C)が、特に、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを併有する重合体(a−2)を調製する過程で、上記(a−2)と上記(b−1)とを複合化せしめることによりに得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0042】
そしてまた、前記した複合樹脂(C)が、特に、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを併有する重合体(a−1)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、同一反応系において、並行して行なう過程で、上記(a−1)と上記(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0043】
そして更に、前記した複合樹脂(C)が、特に、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを併有する重合体(a−2)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、同一反応系において、並行して行なう過程で、上記(a−2)と上記(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0044】
そして更には、前記した重合体(a−2)が、特に、加水分解シリル基以外の官能基として、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および次の構造式(S−II)
【0045】
【化14】
Figure 0003829377
【0046】
で示される官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有するものである、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0047】
そして更に亦、前記した重合体セグメント(A)が、特に、ビニル系重合体セグメントであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0048】
そして更には亦、前記した重合体(a−1)が、特に、ビニル系重合体であるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0049】
あるいは、前記した重合体(a−2)が、特に、ビニル系重合体であるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0050】
あるいは亦、前記した重合体(a−1)が、特に、それぞれ、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物の存在下に、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体を必須成分とする単量体をラジカル重合せしめて調製されるものである、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0051】
また、前記した重合体(a−2)が、特に、それぞれ、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物の存在下に、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体と、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体とを必須成分とする単量体をラジカル重合せしめて調製されるものであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0052】
さらに、前記した重合体(a−1)中に含まれる加水分解性シリル基が、特に、アルコキシシリル基であるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0053】
さらには、前記した重合体(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基が、特に、アルコキシシリル基であるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0054】
さらには、前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)が、特に、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を必須成分とする珪素化合物類の加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物であるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0055】
さらにまた、前記した、ポリシロキサン(b−1)または(b−2)を調製する際に使用される、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物が、特に、それぞれ、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物および其の部分共加水分解縮合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種のアルコキシシランであるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものであるし、
【0056】
そして、前記した、ポリシロキサン(b−1)中に含まれる加水分解性基が、特に、アルコキシ基であるという、特定の水性樹脂をも請求しようとするものである。
【0099】
そして更には、前記した化合物(E)が、特に、それぞれ、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロック・ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物であるという、特定の水性硬化性樹脂組成物をも請求しようとするものである。
【0100】
以下に、本発明を、さらに一層、詳細に、説明することにする。
【0101】
本発明に係る水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂とは、水性化のための親水性を付与するためのポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、耐久性などを付与するための珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで構成されるものであり、しかも、(A)と(B)なる此等の両セグメントが、次の構造式(S−I)
【0102】
【化17】
Figure 0003829377
【0103】
〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0104】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる形の樹脂を指称するものである。
【0105】
当該水性樹脂を構成する、ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)とは、たとえば、それぞれ、各種のポリエーテル鎖が重合体の末端部分および/または重合体の側鎖部分にブロックの形で、あるいはグラフトの形で結合した構造を有する、ポリエーテル系重合体以外の重合体セグメントを指称するものである。
【0106】
かかる重合体セグメント(A)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、それぞれ、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体またはポリオレフィン系重合体の如き、各種のビニル系重合体に基づくセグメントなどであるし、さらには、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などのような、ビニル系重合体以外の重合体に基づくセグメントなどである。
【0107】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、ビニル系重合体セグメントまたはポリウレタン系重合体セグメントなどが挙げられるし、さらに、此のビニル重合体セグメントのうちでも特に望ましいものとしては、アクリル系重合体セグメントが挙げられる。
【0108】
また、かかる重合体セグメント(A)中に含まれる、ポリエーテル鎖として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖またはポリオキシブチレン鎖の如き、各種のポリオキシアルキレン鎖などであるし、さらには、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)鎖の如き、前記したオキシアルキレン部分がランダムに共重合された形のものなどであるとか、あるいはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン鎖の如き、相異なれるポリオキシアルキレン鎖がブロック状に結合した形のものなどである。
【0109】
そして、これらのうちでも、ポリエーテル鎖の親水性などの面からは、オキシエチレン単位またはオキシプロピレン単位を有する形のものの使用が、特に望ましい。
【0110】
そしてまた、こうしたポリエーテル鎖のうち、該ポリエーテル鎖の平均分子量としては、水溶性ないしは水分散性などの面からは、約200〜約10,000の範囲内が適切であるし、好ましくは、400〜8,000の範囲内が適切であるし、最も好ましくは、600〜6,000の範囲内が適切である。
【0111】
重合体セグメント(A)において、かかるポリエーテル鎖の量としては、重合体セグメント(A)の1,000グラム(g)当たりのポリエーテル鎖のグラム数として、約10〜約990gの範囲内が適切であるし、好ましくは、20〜900gの範囲内が適切であるし、最も好ましくは、40〜800gの範囲内が適切である。
【0112】
次いで、前記した水性樹脂を構成しているポリシロキサン・セグメント(B)は、その反応性の官能基として、珪素原子に結合した水酸基を有し、しかも、その原料成分の少なくとも一部分として、後掲するような、それぞれ、オルガノトリアルコキシシランや、テトラアルコキシシランなどのような、3官能または4官能シラン化合物を使用することによって、分岐構造を導入せしめた形のものである。
【0113】
また、前記した複合樹脂(C)における重合体セグメント(A)と、此のポリシロキサン・セグメント(B)との比率は、(A):(B)なる重量割合として、5:95〜99:1程度になるように、好ましくは、15:85〜95:5になるように、さらに好ましくは、20:80〜85:15になるように設定するのがよい。
【0114】
此の重合体セグメント(A)の重量割合が5%未満になるように設定すると、どうしても、ポリシロキサン・セグメント(B)が多すぎるために、とりわけ、耐アルカリ性などに乏しい硬化塗膜が得られるようになったり、水性樹脂組成物(D)の安定性が劣るようになってしまったりするし、一方、重合体セグメント(A)の重量割合が99%を超えて余りにも多くなるような場合には、どうしても、ポリシロキサン・セグメント(B)が少なすぎるために、高度の耐久性などを有する硬化塗膜が得られ難くなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0115】
かかる水性樹脂の前駆体である複合樹脂(C)を調製するには、(1)予め調製した、セグメント(A)を形成するための前駆体である、それぞれ、重合体(a−1)または(a−2)と、セグメント(B)を形成するための前駆体であるポリシロキサン(b−1)とを、前掲した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように縮合反応せしめる方法、
【0116】
(2)(b−1)の存在下に、重合体(a−1)または(a−2)を調製する反応を行なう過程で、前掲した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、重合体(a−1)または(a−2)とポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめる方法、
【0117】
(3)重合体(a−1)または(a−2)の存在下に、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応を行なう過程で、前掲した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、重合体(a−1)または(a−2)とポリシロキサン(b−2)とを縮合反応せしめる方法などであるとか、
【0118】
さらには、(4)重合体(a−1)または(a−2)を調製する反応と、前記したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、同時並行的に行なう過程で、前掲した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化するように、重合体(a−1)または(a−2)とポリシロキサン(b−2)とを縮合反応せしめる方法などのような、種々の方法を適用することが出来る。
【0119】
そして、これらの、セグメント(A)とセグメント(B)とを、前掲した構造式(S−I)で示される結合を介して複合化せしめるには、前記した重合体(a−1)または(a−2)として、分子中に加水分解性シリル基を有している形のものを使用すればよい。
【0120】
次いで、前記した複合樹脂(C)の調製方法について、詳しく述べることにする。
【0121】
まず、当該複合樹脂(C)を調製する際に使用される重合体の一つである、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを併有する重合体(a−1)とは、たとえば、分子末端部分および/または側鎖部分に結合した、上述したようなポリエーテル鎖を有し、しかも、加水分解性シリル基をも有する、ポリエーテル系以外の重合体を指称するものである。
【0122】
そして、かかる重合体(a−1)中に含まれる加水分解性シリル基とは、次のような一般式(S−III)
【0123】
【化18】
Figure 0003829377
【0124】
〔ただし、式中のR1 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基なる1価の有機基を、R2 は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表わすものとし、
また、aは0あるいは1または2なる整数であるものとする。〕
【0125】
で示されるような、加水分解されてシラノール基を生成する基を指称するものであって、しかも、該加水分解性シリル基それ自体が、直接に、炭素原子と共有結合することにより、あるいはシロキサン結合を介して、炭素原子と共有結合することにより、此の重合体(a−1)に結合しているものであると規定される。
【0126】
そして、かかるポリエーテル鎖の末端部分には、水酸基やカルボキシル基などの反応性の官能基を存在しているものであってもよいし、メトキシ基またはエトキシ基の如き、各種のアルコキシ基などで以て封鎖された形で、反応性の官能基を有しないものであってもよい。
【0127】
斯かる重合体(a−1)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体または芳香族ビニル系重合体の如き、各種のビニル系重合体;あるいはポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などである。
【0128】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体などが挙げられるし、さらに、此のビニル重合体のうちでも特に望ましいものとしては、アクリル系重合体が挙げられる。
【0129】
斯かる重合体(a−1)のうちの、此のビニル系重合体を調製するには、たとえば、(i) 分子中に加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体を共重せしめたり、前記した両タイプの単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類とを共重合せしめる方法であるとか、
【0130】
(ii) 分子中に加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または分子中に加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体を重合せしめたり、あるいは該単量体と共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0131】
(iii) 分子中に加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または分子中に加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、分子中に加水分解性シリル基を有するビニル系単量体と、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体とを共重合せしめたり、分子中に加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または分子中に加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、前記した両タイプの単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0132】
(iv) 予め調製しておいた、水酸基とポリエーテル鎖とを併有するビニル系重合体に、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランのような、各種のイソシアナート基含有シラン化合物を反応せしめるという方法
【0133】
などのような、公知慣用の種々の方法を適用することが出来るが、これらのうちでも、上記(i)〜(iii)なる方法によるのが、特に簡便であるので推奨され得よう。
【0134】
当該重合体(a−1)を調製する際に使用される、斯かる加水分解性シリル基含有ビニル系単量体とは、前掲したような構造式(S−III)で示される加水分解性シリル基を有する単量体を指称するものであって、こうした単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルまたは3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、
【0135】
あるいは3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランまたは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランなどである。
【0136】
また、当該重合体(a−1)を調製する反応を行なうに当たって使用される、上記した、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤とは、上述したような加水分解性シリル基と、メルカプト基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のような、いわゆる遊離ラジカルによって活性化される基ないしは原子とを併有する化合物を指称するものである。
【0137】
かかる連鎖移動剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジクロロシラン、3−メルカプトプロピルジメチルクロロシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシランまたは3−ブロモプロピルトリエトキシシランなどである。
【0138】
さらにまた、当該重合体(a−1)を調製する際に使用される、上記した、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤とは、上述したような、いわゆる加水分解性シリル基を有する化合物を指称するものであって、これらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0139】
2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリメトキシシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−トリエトキシシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−ジメトキシメチルシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチル−4−ジエトキシメチルシリルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]または4,4’−アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)の如き、活性水素含有基を有する各種のアゾ系開始剤を、
【0140】
たとえば、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランまたは3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシシランの如き、イソシアナートシランとを反応せしめることによって得られる、アミド結合あるいはウレタン結合を介して、加水分解性シリル基が結合した形のアゾ系化合物の如き、各種のアゾ系化合物;
【0141】
あるいはtert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリメトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリエトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジメトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジエトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−3−メチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエートまたはtert−ブチルパーオキシ−4−エチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物などである。
【0142】
引き続いて、当該重合体(a−1)を調製する際に使用される、前記した、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体としては、前掲したような各種のポリエーテル鎖を有する、それぞれ、(メタ)アクリル酸エステル系、クロトン酸エステル系、イタコン酸エステル系、フマル酸エステル系あるいはビニルエーテル系などのような、種々の単量体などが挙げられる。
【0143】
かかるポリエーテル鎖を有するビニル系単量体(以下、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体ともいう。)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールもしくはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオールの如き、ポリエーテルジオール類のモノ(メタ)アクリル酸エステル類;前掲したポリエーテルジオール類のモノクロトン酸エステル類;前掲したポリエーテルジオール類のモノビニルエーテル類;
【0144】
モノメトキシ化ポリエチレングリコール、モノメトキシ化ポリプロピレングリコールもしくはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位とを併有するポリエーテルジオールのモノメトキシ化物の如き、各種のモノアルコキシ化ポリエーテルジオール類の(メタ)アクリル酸エステル;前掲した各種のモノアルコキシ化ポリエーテルジオール類のモノクロトン酸エステル類;さらには、前掲した各種のモノアルコキシ化ポリエーテルジオール類のビニルエーテル類などである。
【0145】
そして、かかる単量体中に含まれるポリエーテル鎖の平均分子量としては、水溶性あるいは水分散性の面からは、約200〜約10,000の範囲内が適切であるし、好ましくは、400〜8,000の範囲内が適切であるし、最も好ましくは、600〜6,000の範囲内が適切である。
【0146】
かかるポリエーテル鎖を有する単量体類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、「ブレンマーPE−90、PE−200もしくはPE−350またはPME−100、PME−200もしくはPME−400」[以上、日本油脂(株)製品];「RMA−564、RMA−568またはRMA−1114」[以上、日本乳化剤(株)製品];「NKエステルM−20G、M−40G、M−90GまたはM−230G」あるいは[以上、新中村化学工業(株)製品]などである。
【0147】
そしてまた、前述した(i)〜(iii)なる方法に従って、斯かるポリエーテル鎖含有ビニル系重合体(a−1)を調製するに当たって重合せしめるべきビニル系単量体としては、それぞれ、(i)と(iii)とにおいては、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体と加水分解性シリル基含有ビニル系単量体との併用系のみであってもよいし、
【0148】
前述した(ii)なる方法においては、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体のみであってもよいが、これらに加えて、さらに、これらの各ビニル系単量体と共重合可能なる其の他のビニル系単量体をも併用することも出来る。
【0149】
このような、共重合可能なる其の他のビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソ(i)−ブチル(メタ)アクリレート〔イソブチル(メタ)アクリレート〕、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートまたはラウリル(メタ)アクリレートの如き、C1 〜C22なる炭素数を有する、1級ないしは2級のアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類;
【0150】
ベンジル(メタ)アクリレートまたは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレートまたはイソボロニル(メタ)アクリレートの如き、各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートまたは4−メトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0151】
スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンまたはビニルトルエンの如き、各種の芳香族ビニル系単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルまたは安息香酸ビニルの如き、各種のカルボン酸ビニルエステル類;
【0152】
クロトン酸メチルまたはクロトン酸エチルの如き、各種のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジメチルイタコネートまたはジ−n−ブチルイタコネートの如き、各種の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;
【0153】
(メタ)アクリロニトリルまたはクロトノニトリルの如き、各種のシアノ基含有単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレンまたはヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニルまたは塩化ビニリデンの如き、各種のクロル化オレフィン類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンまたは1−ヘキセンの如き、各種のα−オレフィン類;
【0154】
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルまたはn−ヘキシルビニルエーテルの如き、各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルまたは4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類;
【0155】
あるいはN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジンまたはN−ビニルピロリドンの如き、各種の3級アミド基含有単量体類などである。
【0156】
以上に掲げられたような種々の単量体を用いて、当該ビニル系重合体(a−1)を調製するには、溶液重合法、非水分散重合法または塊状重合法などのような、公知慣用の種々の重合法を適用することが出来るが、それらのうちでも、特に、有機溶剤中での溶液ラジカル重合法によるのが、最も簡便であるので、推奨されよう。
【0157】
此の溶液ラジカル重合法を適用する際には、前述したような、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を必須成分として共存させ、ビニル系単量体のラジカル重合を行なうケースがある。
【0158】
かかる加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を使用しない場合には、加水分解性シリル基を有しない形のラジカル重合開始剤を使用しても、あるいは使用しなくてもよいが、ラジカル重合反応を円滑に進行せしめる上からは、ラジカル重合開始剤を使用するのが望ましい。
【0159】
そして、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を、必須の成分として使用して、ラジカル重合を行なうに当たっては、加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤を単独で用いることも出来るし、加水分解性シリル基を有しない形のラジカル重合開始剤を併用することも出来る。
【0160】
かかる加水分解性シリル基を有しない形のラジカル重合開始剤としては、勿論ながら、公知慣用の種々の化合物が使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0161】
2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)または2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の如き、各種のアゾ化合物類;
【0162】
あるいはtert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドもしくはアセチルパーオキサイド、
【0163】
またはジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネートの如き、各種の過酸化物類などである。
【0164】
また、溶液ラジカル重合法を適用するに際して使用できる有機溶剤としては、公知慣用の有機溶剤のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも2種類以上の併有でもよいことは、勿論である。
【0165】
それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンまたはシクロオクタンの如き、各種の脂肪族系ないしは脂環式系の炭化水素類;
【0166】
トルエン、キシレンまたはエチルベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルもしくは酢酸n−アミルまたはエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートもしくはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの如き、各種のエステル類;
【0167】
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、i−アミルアルコールまたはtert−アミルアルコール
【0168】
あるいはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルまたはエチレングリコールモノn−ブチルエーテルの如き、各種のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトンまたはシクロヘキサノンの如き、各種のケトン類;
【0169】
あるいは亦、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルまたはジ−n−ブチルエーテルの如き、各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタンの如き、各種の塩素化炭化水素類などであるし、さらには、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネートなどである。
【0170】
以上に掲げたような、それぞれ、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を適用することによって、目的とする、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを併有するビニル系重合体(a−1)を調製することが出来る。
【0171】
本発明に係る水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂の前駆体である、前記した複合樹脂(C)を調製するに際して用いられる、もう一方の重合体である、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを併有する重合体(a−2)とは、前掲したような、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とに加えて、該加水分解性シリル基以外の、公知慣用の種々の官能基をも有する形の重合体を指称するものである。
【0172】
そして、当該重合体(a−2)中に導入せしめるべき、加水分解性シリル基以外の官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および次の構造式(S−II)
【0173】
【化19】
Figure 0003829377
【0174】
で示されるような官能基などである。
【0175】
ここにおいて、上記した2級アミド基は、N−ヒドロキシメチルアミド基、N−アルコキシメチルアミド基または次のような構造式(S−IV)
【0176】
【化20】
−C(O)−NH−CH(OR3 )−COOR4 (S−IV)
【0177】
〔ただし、式中のR3 は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとし、また、R4 は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)
【0178】
で示されるような官能基をも包含するというものである。
【0179】
また、これらの種々の官能基は、当該重合体(a−2)中に、1種のみを導入し含有せしめるようにしてもよいし、2種以上を導入し含有せしめるようにすることも出来る。
【0180】
加水分解性シリル基以外の、前掲したような各種の官能基のうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基などである。
【0181】
こうした各種の官能基を有する重合体(a−2)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体または芳香族ビニル系重合体のような、各種のビニル系重合体;あるいはポリエステル樹脂、アルキド樹脂またはポリウレタン系重合体などである。
【0182】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体などが挙げられるし、さらに、此のビニル重合体のうちでも特に望ましいものとしては、アクリル系重合体が挙げられる。
【0183】
また、当該重合体(a−2)のうちの、此のビニル系重合体を調製するには、公知慣用の種々の方法を利用し適用することができるが、それらのうちでも、(v) 水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基などで代表される、加水分解性シリル基以外の各種の官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、
【0184】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、ポリエーテル鎖を有するビニル系量体とを共重合せしめたり、前掲したような三タイプの単量体と、これらと共重合可能なる其の他のビニル系単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0185】
(vi) 加水分解性シリル基含有連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基含有ラジカル重合開始剤の存在下に、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基などで代表される、加水分解性シリル基以外の各種の官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体を共重合せしめたり、前掲したような二タイプの単量体類と、これらと共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法であるとか、
【0186】
(vii) 加水分解性シリル基含有連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基含有ラジカル重合開始剤の存在下に、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基などで代表される、加水分解性シリル基以外の各種の官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有する単量体と、
【0187】
加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体とを共重合せしめたり、前掲したような三タイプの単量体類と、これらと共重合可能なる其の他の単量体とを共重合せしめる方法などが挙げられるが、こうした諸々の方法によるのが、特に簡便である。
【0188】
こうした諸々の方法によって、特に、当該重合体(a−2)のうちの、此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、加水分解性シリル含有ビニル系単量体、加水分解性シリル基含有連鎖移動剤、加水分解性シリル基含有ラジカル重合開始剤、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体および此等と共重合可能なる其の他のビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前述したビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして、それぞれについて、すでに、例示して来たような、各種の単量体などである。
【0189】
また、此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、水酸基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0190】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテルまたは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の水酸基含有ビニルエーテル類;
【0191】
2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き、各種の水酸基含有アリルエーテル類;前掲したような各種の水酸基含有単量体類と、ε−カプロラクトンなどで以て代表されるような、種々のラクトン類との付加物;あるいはグリシジル(メタ)アクリレートなどで以て代表されるような、種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸などで以て代表されるような、種々の酸類との付加物などであるし、
【0192】
さらには、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)などで以て代表されるような、α−オレフィンのエポキサイド系化合物以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物などのような種々の水酸基含有単量体類などである。
【0193】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、ブロックされた水酸基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテルまたは4−トリメチルシロキシブチルビニルエーテルの如き、特開昭62−283163号公報に開示されているような、各種のシリルエーテル基含有ビニル系単量体類;
【0194】
2−(1−エトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(1−n−ブトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシテトラヒドロフランまたは2,2−ジメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソランの如き、特開平4−41515号公報に開示されているような、各種のアセタール基ないしはケタール基含有含有ビニル系単量体類;
【0195】
あるいは3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジン、2,2−ジメチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンまたは2−イソブチル−2−メチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンの如き、各種のオキサゾリジン基含有ビニル系単量体類などである。
【0196】
また、此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、酸基含有ビニル系単量体のうち、遊離のカルボキシル基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸類;
【0197】
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチルまたはフマル酸モノ−n−ブチルの如き、不飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類との、各種のモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニルまたはコハク酸モノビニルの如き、各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;
【0198】
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸または無水トリメリット酸の如き、各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、前掲したような各種の水酸基含有ビニル系単量体類との付加反応生成物などであるし、さらには、前掲したような各種のカルボキシル基含有単量体類と、ラクトン類とを付加反応せしめて得られるような各種の単量体類などである。
【0199】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、ブロックされたカルボキシル基を有する単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレートまたははトリメチルシリルクロトネートの如き、特開昭62−254876号公報に開示されているような、各種のシリルエステル基含有ビニル系単量体類;
【0200】
1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンまたは2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフランの如き、特開平5−222134号公報に開示されているような、各種の、ヘミアセタールエステル基ないしはヘミケタールエステル基含有単量体類;あるいはtert−ブチル(メタ)アクリレートまたはtert−ブチルクロトネートの如き、各種のtert−ブチルエステル基含有単量体類などである。
【0201】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、カルボン酸無水基含有単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸または無水イタコン酸の如き、各種の不飽和ポリカルボン酸の無水物類;無水アクリル酸または無水メタクリル酸の如き、各種の不飽和モノカルボン酸の無水物類;あるいはアクリル酸またはメタクリル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸と、酢酸、プロピオン酸または安息香酸などのような、種々の飽和カルボン酸との混合酸無水物などである。
【0202】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、3級アミノ基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0203】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートまたはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0204】
ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールまたはN−ビニルキノリンの如き、各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;
【0205】
N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;
【0206】
N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミドまたはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドの如き、各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;
【0207】
あるいは2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテルまたは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルの如き、各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類などである。
【0208】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0209】
2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4,5−カーボネートペンチル(メタ)アクリレート、6,7−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレートもしくは7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、ジ(2,3−カーボネートプロピル)マレートまたはジ(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートの如き、5員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類などをはじめ、
【0210】
さらには、〔5−N−(メタ)アクリロイルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−〔N−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エチルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−エチル−5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン−2−オンまたは4−(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシメチルスチレンの如き、6員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類である。
【0211】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、エポキシ基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き、種々の化合物などである。
【0212】
当該ビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、1級アミド基ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルフォルムアミド、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートとアセチルアセトンまたはアセト酢酸エステル類との付加反応物の如き、種々の化合物などである。
【0213】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、カーバメート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0214】
N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸メチル、N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸エチル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルカルバミン酸エチル、2−カルバモイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(N−メチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレートまたは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートと、2−ヒドロキシプロピルカーバメートとの付加反応物;
【0215】
2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、フェノールとの付加反応物;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、エタノールとの付加反応物;あるいは2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、メチルエチルケトオキシムとの付加反応物のような種々の化合物などである。
【0216】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、前掲した構造式(S−II)で示されるような官能基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートまたは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートの如き、各種のイソシアナート基含有ビニル系単量体と、ε−カプロラクタムまたはγ−ブチロラクタムの如き、各種のアミド化合物との付加反応物のような種々の化合物などである。
【0217】
此のビニル系重合体(a−2)を調製する際に使用される、前掲したような種々の官能基のうちの2種以上の官能基を併有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、モノ−(2−ヒドロキシエチル)イタコネートまたはモノ−(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートなどのような種々の化合物などである。
【0218】
また、前述した、それぞれ、(v)〜(vii)なる方法に従って、斯かるビニル系重合体(a−2)を調製するに当たって重合せしめるべきビニル系単量体としては、(v)と(vii)とにおいては、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体と、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、前掲したような、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体との3成分系であってもよいし、
【0219】
一方、(vi)においては、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体と、前掲したような、加水分解性以外の官能基を有するビニル系単量体との2成分系であってもよいが、これらに加えて、さらに、これらの各ビニル系単量体と共重合可能なる其の他のビニル系単量体をも併用することが出来る。
【0220】
かかる共重合可能なる其の他のビニル系単量体としては、前述したビニル系重合体(a−1)を調製するに当たり、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体あるいは加水分解性シリル基を含有する単量体と共重合可能なる其の他の単量体として、すでに、例示して来たような種々のビニル系単量体類などが挙げられる。
【0221】
さらに、此のビニル系重合体(a−2)を調製するには、前述したビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして、すでに、例示して来たような、それぞれ、溶剤類および重合開始剤類を使用して、公知慣用の種々の方法に従って、溶液ラジカル重合せしめれようにすればよい。
【0222】
以上に掲げたような、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を適用することによって、目的とするポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを併有するビニル系重合体(a−2)を調製することが出来る。
【0223】
以上に述べて来たような、それぞれ、ビニル系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべき加水分解性シリル基量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの加水分解性シリル基のモル数として、0.005〜3モルの範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルの範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルの範囲内が適切である。
【0224】
0.005モル未満の場合には、どうしても、本発明に係る水性硬化性組成物からの硬化物の、とりわけ、耐久性などが低下するようにもなるし、一方、3モルを超えて余りにも多くなる場合には、複合樹脂(C)の調製の際に、どうしても、反応溶液の粘度が上昇するようになり、ひいては、ゲル化が起きてしまうなどの不都合があるので、いずれの場合も好ましくない。
【0225】
したがって、上述したような好ましい量の加水分解性シリル基が導入されるように、それぞれ、加水分解性シリル基含有単量体、加水分解性シリル基含有連鎖移動剤あるいは加水分解性シリル基含有重合開始剤の使用量を、適切に設定する必要がある。
【0226】
また、ビニル系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべきポリエーテル鎖の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりのポリエーテル鎖のグラム数として、約10〜約990gの範囲内が適切であるし、好ましくは、20〜900gの範囲内が適切であるし、最も好ましくは、40〜800gの範囲内が適切である。
【0227】
したがって、上述したような好ましい量のポリエーテル鎖が導入されるように、分子中にポリエーテル鎖を有するビニル系単量体の使用量を、適切に設定する必要がある。
【0228】
さらに、ビニル系重合体(a−2)中に導入されるべき、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−II)で示される官能基などによって代表される、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体のうちの少なくとも1種のビニル系単量体の共重合量としては、ビニル系重合体(a−2)の固形分の1,000グラム当たりの官能基のモル数として、0.1〜5モルの範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルの範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルの範囲内が適切である。
【0229】
勿論、0.1モル未満の場合には、此のビニル系重合体(a−2)の効果が発現され得なくなり、ひいては、本発明に係る水性樹脂などにも、大きく作用して来るようになるし、一方、5モルを超えて余りに多くなる場合には、どうしても、とりわけ、硬化物の耐水性ならびに耐薬品性などが低下するようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0230】
また、これらのビニル系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量としては、500〜200,000の範囲内が、好ましくは、1,000〜10,000の範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜50,000の範囲内が適切である。
【0231】
これらのビニル系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量が、500未満の場合には、どうしても、とりわけ、硬化性や、硬化物の機械的強度などが劣るようになるし、一方、200,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物の不揮発分が著しく低くなったり、塗装作業性なども劣るようになったり、さらには、とりわけ、硬化塗膜の外観が低下したりするので、いずれの場合も好ましくない。
【0232】
ビニル系重合体(a−1)として、それぞれ、重合性不飽和二重結合を有する、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体とを必須成分とする単量体類を、ラジカル重合せしめることによって得られる、加水分解性シリル基とポリエーテル鎖とを併有するビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0233】
また、ビニル系重合体(a−2)として、それぞれ、重合性不飽和二重結合を有する、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、ポリエーテル鎖含有ビニル系単量体と、該加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体とを必須成分とする単量体類を、ラジカル重合せしめることによって得られる、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と、該シリル基以外の官能基とを併有するビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0234】
重合体(a−1)のうちのポリウレタン系重合体を調製するには、各種のジヒドロキシ化合物および各種のジイソシアネート化合物に加えて、加水分解性シリル基を導入するための原料成分として、加水分解性シリル基を有するジアミン化合物または加水分解性シリル基を有するモノアミン化合物を使用し、さらに、ポリエーテル鎖を導入するための原料成分として、メトキシポリエチレングリコールまたはメトキシポリプロピレングリコールの如き、片末端に1個の活性水素含有基を有するポリエーテル化合物などのような、公知慣用の種々の原料成分を使用して、特開昭51−90391号公報、特開昭55−73729号公報または特開昭60−255817号公報に開示されているような種々の方法を適用するようにすればよい。
【0235】
重合体(a−2)のうちのポリウレタン系重合体を調製するには、前記したポリウレタン系重合体(a−1)を調製する際に使用されるものとして、すでに、掲げたような、公知慣用の種々の原料類に加えて、加水分解性シリル基以外の、前掲したような各種の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有するような種々の化合物を原料成分として使用して、公知慣用の種々の方法を適用するようにすればよい。
【0236】
ポリウレタン系重合体(a−2)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基以外の、前掲したような各種の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有する化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、グリシドール、N−メチルジエタノールアミン、2−ヒドロキシエチルカーバメートまたは2−ヒドロキシプロピルカーバメートの如き、官能基と水酸基とを併有する、各種の化合物などである。
【0237】
前述したような方法で以て調製されるポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべき加水分解性シリル基の量としては、それぞれの重合体の固形分1,000グラム当たり、0.005〜3モルの範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルの範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルの範囲内が適切である。
【0238】
0.005モル未満の場合には、どうしても、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との間の複合化反応が進行しずらくなり、ひいては、得られる硬化物の、とりわけ、耐久性などが低下するようになるし、一方、3モルを超えて余りにも多くなる場合には、前述したような複合化反応時の溶液粘度が上昇し、ひいては、ゲル化を惹起してしまうようになるなどの不都合が認められるようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0239】
また、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)中に導入されるべきポリエーテル鎖の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりのポリエーテル鎖のグラム数として、10〜990gの範囲内が適切であるし、好ましくは、20〜900gの範囲内が適切であるし、最も好ましくは、40〜800gの範囲内が適切である。
【0240】
さらに、ポリウレタン系重合体(a−2)中に導入されるべき、加水分解性シリル基以外の官能基の少なくとも1種の存在量としては、ポリウレタン系重合体(a−2)の固形分の1,000グラム当たり、0.1〜5モルの範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルの範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルの範囲内が適切である。
【0241】
また、ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量としては、500〜100,000の範囲内が、好ましくは、1,000〜50,000の範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜30,000の範囲内が適切である。
【0242】
ポリウレタン系重合体(a−1)または(a−2)の数平均分子量が、500未満の場合には、どうしても、硬化性や硬化物の機械的強度などが劣るようになるし、一方、100,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物の不揮発分が著しく低くなったり、塗装作業性などにも劣るようになったり、さらには、硬化塗膜の外観が低下したりするようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0243】
次いで、本発明において用いられる水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂の前駆体である、複合樹脂(C)を調製するに当たって使用される、他方の成分である、前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とは、たとえば、一般的に、シラノール基と呼称されるような、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する形のポリシロキサンを指称するものである。
【0244】
ここにおいて、珪素原子に結合した加水分解性基とは、たとえば、珪素原子に結合した、それぞれ、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基の如き、加水分解されて、シラノール基を生成する形の種々の基を指称するものである。
【0245】
こうしたポリシロキサン(b−1)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、一分子中に、少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめることによって調製される、該珪素化合物の加水分解縮合物、あるいは斯かる珪素化合物を部分加水分解縮合せしめることによって調製される部類の、該珪素化合物の部分加水分解縮合物などである。
【0246】
前記した、一分子中に、少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の加水分解縮合ないしは部分加水分解縮合によって、当該ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用される、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物としては、公知慣用の種々の化合物が、いずれも、使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のような一般式(S−V)
【0247】
【化21】
R5bSiR64−b (S−V)
【0248】
〔ただし、式中のR5 は、それぞれ、置換基を有していても有していなくてもよい、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基なる1価の有機基を、R6 は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基を表わすものとし、ま
た、bは0あるいは1または2なる整数であるものとする。〕
【0249】
で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の混合物の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物;
【0250】
あるいは
【0251】
【化22】
(CH3 CH2 O)3 SiCH2 CH2 Si(OCH2 CH3 )3
【0252】
または
【0253】
【化23】
(CH3 CH2 O)3 SiCH2 CH2 CH2 Si(OCH2 CH3 )3
【0254】
などのような、一分子中に2個以上の加水分解性シリル基を有する珪素化合物などである。
【0255】
前掲したような一般式(S−V)で示される珪素化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランまたはテトラ−n−ブトキシシランの如き、各種のテトラアルコキシシラン類;
【0256】
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシランもしくはn−ブチルトリエトキシシラン、
【0257】
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランもしくはアリルトリメトキシシラン、
【0258】
または2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシランもしくは3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの如き、各種のオルガノトリアルコキシシラン類;
【0259】
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシランもしくはジ−n−ブチルジエトキシシラン、
【0260】
またはジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランもしくは3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、の如き、各種のジオルガノジアルコキシシラン類;
【0261】
テトラクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ビニルメチルジクオロロシランまたは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランの如き、各種のクロロシラン類;
【0262】
あるいはテトラアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランまたはジフェニルジアセトキシシランの如き、各種のアセトキシシラン類などである。
【0263】
これらの加水分解性基含有珪素化合物のうちでも、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用される化合物として特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシランまたはジオルガノジアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物または其れらの部分共加水分解縮合物などであるし、さらには、各種のクロルシラン類の部分加水分解縮合物などである。
【0264】
そして、かかるポリシロキサン(b−1)を調製するに当たり、珪素化合物の少なくとも一部分として、オルガノトリアルコキシシランの如き、各種の3官能の珪素化合物またはテトラアルコキシシランの如き、各種の4官能の珪素化合物などのような、いわゆる分岐構造を導入するのに適した化合物を使用することによって、複合樹脂(C)を構成するポリシロキサン・セグメントに、分岐した構造を導入せしめることが出来る。
【0265】
また、当該珪素化合物として、特に、4官能の珪素化合物を使用する際には、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との間の複合化反応中のゲル化の防止のめにも、2官能ないしは3官能の珪素化合物を併用することが望ましい。
【0266】
斯かるポリシロキサン(b−1)を調製するに際して、前掲したような各種の珪素化合物に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシランまたはトリフェニルクロロシランのような、一分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を1個のみ有する、いわゆる1官能性の珪素化合物をも併用することが出来る。
【0267】
前掲したような各種の珪素化合物を加水分解縮合ないしは部分加水分解縮合せしめることによって、ポリシロキサン(b−1)として使用される加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物を得ることが出来るが、その際に、触媒を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、これらの縮合反応を容易に進行せしめるという面からは、触媒を使用することが望ましい。
【0268】
ここにおいて、触媒を使用する場合には、公知慣用の種々の触媒のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも、2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0269】
斯かる触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、塩酸、硫酸または燐酸の如き、各種の無機酸類;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピルまたは酢酸の如き、各種の有機酸類;
【0270】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの如き、各種の無機塩基類;テトライソプロピルチタネートまたはテトラブチルチタネートの如き、各種のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレートまたはオクチル酸錫の如き、各種の錫カルボン酸塩類;
【0271】
鉄、コバルト、マンガンまたは亜鉛の如き、各種の金属のナフテン酸塩;あるいはオクチル酸塩の如き、各種の金属カルボン酸塩類;あるいは亦、アルミニウムトリスアセチルアセトネートの如き、各種のアルミニウム化合物;
【0272】
さらには、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミンまたはブチルアミンもしくはオクチルアミン、
【0273】
またはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールもしくは1,4−ジエチルイミダゾールの如き、各種のアミン化合物類;
【0274】
テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩もしくはo−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、
【0275】
さらには亦、代表的なる対アニオンとして、それぞれ、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートまたはハイドロオキサイドなどを有する、種々の4級アンモニウム塩類などである。
【0276】
使用されるべき斯かる触媒の量としては、加水分解ないしは部分加水分解に供される珪素化合物に対して、0.000001〜10重量%の範囲内が、好ましくは、0.000005〜5重量%の範囲内が、特に好ましくは、0.00001〜1重量%の範囲内が適切である。
【0277】
また、前述したような反応に用いられる水の量としては、かかる珪素化合物の珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.2モル以上が適切である。
【0278】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなってしまい、実用上、好ましくないけれども、此の水の量が、5モルとか、10モルとか、珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、過剰となるように使用することは、一向に、支障が無い。
【0279】
そして、これらの触媒および水の添加は、一括添加でも、分割添加でもよく、また、触媒と水を混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいことは、勿論である。
【0280】
斯かる反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、これらの反応の圧力としては、常圧、加圧または減圧下の、いずれの条件においても行なうことが出来る。
【0281】
そして、こうした反応の副生成物である、それぞれ、アルコールや水などが、引き続いて行なわれる、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との複合化反応を妨げたり、得られる水性硬化性樹脂組成物の安定性などを低下させたりするようであれば、蒸留などの手段によって、系外に除くことが出来るし、そうした問題が無いような場合には、そのまま、系内に存在させておいても、一向に、支障は無い。
【0282】
また、かかる反応にあっては、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいけれども、攪拌などが、容易に、行なえるようにするためにも、有機溶剤を使用することが望ましい。
【0283】
ここにおいて、斯かる有機溶剤を使用する場合には、公知慣用の種々の有機溶剤の、いずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0284】
その際に使用される有機溶剤としては、ビニル系重合体(a−1)または(a−2)を調製する際に使用できるものとして、すでに、掲げて来たような種々のものを使用することが出来る。
【0285】
そして、斯かる有機溶剤を使用して、当該ポリシロキサン(b−1)を調製するに際しては、一分子中に少なくとも2個の珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物の、斯かる有機溶剤中における濃度としては、5重量%程度以上にすることが望ましい。
【0286】
また、当該ポリシロキサン(b−1)として、市販のポリシロキサンを使用することも出来るが、そのようなポリシロキサンとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基あるいは珪素原子に結合したメトキシ基を有するポリシロキサンとして市販されているような、それぞれ、「TSR−160または165」[東芝シリコーン(株)製の商品名]、「SH−6018」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の商品名]あるいは「GR−100、908または950」[昭和電工(株)製の商品名]などで以て代表されるような、線状、環状または分岐状(分枝状)あるいはラダー(型)構造を有する、加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物などである。
【0287】
前記した(3)あるいは(4)なる方法により、複合樹脂(C)を調製する際には、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)が調製されるが、その際に使用される、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物としては、
【0288】
ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用されるものとして前掲したような、各種の珪素化合物を使用することが出来る。
【0289】
そして、かかるポリシロキサン(b−2)を調製するに当たり、珪素化合物の少なくとも一部分として、オルガノトリアルコキシシランの如き、各種の3官能の珪素化合物またはテトラアルコキシシランの如き、各種の4官能の珪素化合物などの分岐構造を導入するのに適した化合物を使用せしめることによって、複合樹脂(C)を構成するポリシロキサン・セグメントに分岐した構造を導入せしめることが出来る。
【0290】
また、水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂の硬化性と、耐久性などとの面からは、ポリシロキサン(b−1)または(b−2)を構成する全珪素原子のうちの、10モル%以上が、好ましくは、20モル%以上が、さらに好ましくは、30モル%以上が、メチルトリアルコキシシラン類、メチルトリクロロシラン、フェニルトリアルコキシラン類またはフェニルトリクロロシランのような、いわゆる3官能シラン化合物に由来するものを使用することが適切である。
【0291】
次いで、前記した重合体(a−1)または(a−2)と、前記したポリシロキサン(b−1)とを、前述したような、それぞれ、(1)あるいは(2)なる方法で以て複合化せしめることによって、複合樹脂(C)を調製する方法について述べることにする。
【0292】
これらの、(1)あるいは(2)なる方法によって、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)とを複合化せしめるに当たり、重合体(a−1)または(a−2)とポリシロキサン(b−1)の複合化反応をスムーズに進行させるために、触媒を添加することが出来るが、斯かる触媒としては、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用されるものとして、すでに、掲げて来たような種々の触媒類を、そのまま、使用することが出来る。
【0293】
そして、ポリシロキサン(b−1)を調製する過程で使用された触媒が、該ポリシロキサン(b−1)中に残留している場合には、殊更に、触媒を添加せずとも、こうした、該ポリシロキサン(b−1)中に残留している触媒のみでも、当該複合化反応を促進せしめることが可能である。
【0294】
これらの、(1)あるいは(2)なる方法によって複合化せしめる場合に使用される触媒の量としては、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との合計量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内が、好ましくは、0.0005〜3重量%の範囲内が、特に好ましくは、0.0005〜1重量%の範囲内が適切である。
【0295】
また、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)との間の複合化反応をスムーズに進行せしめるためには、重合体(a−1)または(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基の加水分解と、ポリシロキサン(b−1)中に、場合によっては含まれる、珪素原子に結合した加水分解性基の加水分解とを円滑に進行せしめることが望ましく、したがって、こうした複合化反応を、水の存在下で以て行なうことが、特に望ましい。
【0296】
つまり、(2)なる方法で以て複合樹脂(C)を調製する場合には、ポリシロキサン(b−1)に加えて、さらに、水が共存する系で以て、重合体(a−1)または(a−2)を調製する反応を行なうことになる。
【0297】
そして、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用された水が、此のポリシロキサン(b−1)中に残留している場合には、殊更に、水を添加せずとも、こうした、該ポリシロキサン(b−1)中に残留している水のみでも、当該複合化反応を行なうことも可能である。
【0298】
これらの、(1)あるいは(2)なる方法によって複合化反応を行なうに際して使用される水の量としては、重合体(a−1)または(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基に結合している加水分解性基と、ポリシロキサン(b−1)中に存在している、珪素原子に結合している加水分解性基との合計量の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.5モル以上が適切である。
【0299】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなり易いので、好ましくない。
【0300】
また、水の使用量を大過剰に設定しても、反応中に、不溶物が析出して来るなどの不都合が生じない限り、支障なく、複合化反応を行なうことが出来るが、ポリシロキサン(b−1)中に珪素原子に結合している加水分解性基が存在する場合には、このような加水分解性基の1モルに対して、水の使用量を、概ね、10モル以下に、好ましくは、5モル以下に、より好ましくは、3.5モル以下に設定するのが適切であるし、
【0301】
ポリシロキサン(b−1)中に珪素原子に結合している加水分解性基が存在しないような場合においては、重合体(a−1)または(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基に結合している加水分解性基の1モルに対して、500モル以下に、好ましくは、300モル以下に、より好ましくは、200モル以下に設定するのが適切である。
【0302】
(1)なる方法によって複合樹脂(C)を調製する際の反応温度としては、0〜150℃程度が適切であるし、好ましくは、20℃〜100℃程度が適切である。
【0303】
また、(2)なる方法によって複合樹脂(C)を調製する際の反応温度としては、40〜150℃程度が適切であるし、好ましくは、60℃〜120℃程度が適切である。
【0304】
次いで、前述した重合体(a−1)または(a−2)と、前述したポリシロキサン(b−2)とを、前述した、それぞれ、(3)あるいは(4)なる方法で以て複合化せしめることによって、複合樹脂(C)を調製する方法について述べることにする。
【0305】
これらの方法に従えば、上述したように、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめることによって、ポリシロキサン(b−2)を調製する過程で以て、目的とする複合樹脂(C)が調製される。
【0306】
かかる処方で以て複合樹脂(C)を調製するに当たり、反応系に、水が添加されるが、かかる水の量としては、前述したポリシロキサン(b−2)の調製のために使用される、珪素化合物の珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.5モル以上が適切である。
【0307】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなってしまい、実用上、好ましくない。水の使用量を大過剰に設定しても、反応中に不溶物が析出して来るなどの不都合が生じない限り、支障なく、複合化反応を行なうことが出来るが、加水分解性基の1モルに対して、水の使用量を、概ね、10モル以下に、好ましくは、5モル以下に、より好ましくは、3.5モル以下に設定するのが適切である。
【0308】
また、ポリシロキサン(b−2)を調製する過程で複合化反応を行なって、当該複合樹脂(C)を調製するに当たり、珪素化合物の加水分解反応を促進し、さらに、かくして生成したポリシロキサン(b−2)と、重合体(a−1)または(a−2)との複合化反応をスムーズに進行させるために、触媒を添加することが出来るが、斯かる触媒としては、ポリシロキサン(b−1)を調製する際に使用されるものとして、すでに、掲げて来たような種々の触媒類を、そのまま、使用することが出来る。
【0309】
次いで、前述した、それぞれ、(3)または(4)なる方法に従って複合化せしめる場合に使用される触媒の量としては、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−2)との合計量に対して、0.0001〜10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.0005〜3重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.0005〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0310】
そして、これらの触媒および水の添加は、一括添加でも、分割添加でもよく、また、触媒と水を混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいことは、勿論である。
【0311】
まず、(3)なる方法によって複合樹脂(C)を調製する際の反応温度としては、0〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜120℃程度が適切である。
【0312】
また、(4)なる方法によって複合樹脂(C)を調製する際の反応温度としては、40〜150℃程度が適切であり、好ましくは、60℃〜100℃程度が適切である。
【0313】
こうした、(1)〜(4)なる諸々の方法により、目的とする複合樹脂(C)を調製するに当たり、重合体(a−1)または(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)または(b−2)との使用割合は、当該複合樹脂(C)における重合体セグメント(A)と、ポリシロキサン・セグメント(B)との比率が、(A):(B)なる重量割合として、5:95〜99:1程度になるように、好ましくは、15:85〜95:5になるように、さらに好ましくは、20:80〜85:15になるように設定するのがよい。
【0314】
重合体(a−1)または(a−2)を調製する過程で、当該複合樹脂(C)を調製するべき、これらの、それぞれ、(2)あるいは(4)なる方法において、重合体(a−1)または(a−2)を調製するための条件、あるいは重合体(a−1)または(a−2)の目標性状値としては、重合体(a−1)または(a−2)の調製方法として、すでに、記述して来たような条件あるいは性状値と合致するようなものでなければならない。
【0315】
さらに、こうした複合化反応にあっては、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、攪拌などが容易に行なえるようにするためには、ビニル系重合体(a−1)を調製する際に使用できるものとして、すでに、掲げたような、種々の有機溶剤類を使用することが望ましい。
【0316】
とくに、重合体(a−1)または(a−2)の調製と、ポリシロキサン(b−2)の調製とを並行して行なう、前述した(4)なる方法においては、不溶解物質の析出を防止して、反応中のゲル化を防ぎ、円滑に反応を進行せしめる観点からも、反応系を均一に保つことが望ましく、そのためにも、有機溶剤を使用することが必要不可欠である。
【0317】
ここにおいて、有機溶剤を使用する場合には、それらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0318】
(1)〜(4)なる方法に従って複合化反応を行なうに際しての、各成分の合計濃度は、該反応により生成する複合樹脂(C)の、複合化反応終了時点での濃度として、5重量%程度以上に、好ましくは、10重量%以上に、さらに好ましくは、20重量%以上になるように設定することが望ましい。そして、この濃度の調整は、前掲したような各種の有機溶剤類で以て行なうことが出来る。
【0319】
上述のようにして、当該複合樹脂(C)を調製することが出来るが、かかる複合樹脂中に含まれる水;ビニル系重合体(a−1)または(a−2)中に含有されていた有機溶剤;複合化反応時に添加した有機溶剤;あるいは複合化反応に伴って生成するアルコールなどの溶剤類は、除去せずとも、そのままで、水に分散ないしは溶解せしめることも出来るし、必要に応じて、蒸留操作などによって除去することも出来る。
【0320】
上述のようにして得られる複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめることによって、前記した水性樹脂組成物(D)が調製される。
【0321】
複合樹脂(C)から、当該水性樹脂組成物(D)を調製するには、公知慣用の種々の方法を適用することが出来る。たとえば、複合樹脂(C)に対して、単に、水を添加せしめるか、あるいは複合樹脂(C)を、水に対して加えることによって水中に分散せしるか、あるいは溶解せしめることによって、目的とする水性樹脂組成物(D)を製造することが出来る。
【0322】
また、必要に応じて、このようにして調製される水性樹脂組成物(D)中に含まれる有機溶剤を、加熱および/または減圧下に、部分的に、あるいは完全に除去せしめることによって、有機溶剤の含有率が低い、あるいは有機溶剤を含有しない水性樹脂組成物(D)を調製することが出来る。
【0323】
このようにして調製される水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂に含まれる官能基は、重合体(a−1)と、ポリシロキサン(b−1)または(b−2)とに由来する、シラノール基のみであるか、さらに、場合によっては含有されるようになる、珪素原子に結合した加水分解性基とであり、
【0324】
あるいは重合体(a−2)と、ポリシロキサン(b−1)または(b−2)とに由来する、シラノール基のみであるか、さらに、場合によっては含有されるようになる、珪素原子に結合した加水分解性基とであり、
【0325】
さらには、重合体(a−2)に由来する、それぞれ、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または構造式(S−II)で示されるような官能基などの、加水分解性シリル基以外の官能基の、少なくとも1種のものである。
【0326】
こうした水性樹脂組成物(D)を調製する過程で、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体として、特に、酸基として、それぞれ、ブロックした酸基あるいは酸無水基を有するビニル系単量体を使用して合成されたビニル系重合体(a−2)を使用した場合には、
【0327】
斯かるブロックした酸基あるいは酸無水基のうちの少なくとも一部分は、前述したような複合化反応を行なう過程で以て、加水分解、酸触媒分解、熱分解あるいはアルコリシスなどによって、遊離の酸基に変換される可能性がある。
【0328】
また、当該水性樹脂組成物(D)を調製する際に、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体として、それぞれ、ブロックされた水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基含有単量体を使用して合成されたビニル系重合体(a−2)を使用した場合には、前述した複合化反応の段階で以て、
【0329】
さらには、複合化樹脂(C)を水に分散するか、あるいいは水に溶解する段階で以て、これらの官能基の少なくとも一部分は、加水分解、酸触媒分解あるいはアルコリシスなどによって、遊離の水酸基に変換されることもある。
【0330】
そして、斯かるブロックされた水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基の種類とか、あるいは前述した複合化反応の条件であるとか、引き続いて行なう、水に対する分散ないしは溶解の条件などによっては、こうした、各種の官能基は、完全に、遊離の水酸基に変換されることもある。
【0331】
このようにして調製される当該水性樹脂組成物(D)から、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を調製するには、一つには、当該水性樹脂組成物(D)中の水性樹脂は、それ自体で、自己硬化性を有するという処から、当該樹脂組成物(D)を必須の成分として含有する形の、いわゆる自己硬化性の樹脂組成物とするようにすればよいし、
【0332】
二つには、当該水性樹脂組成物(D)に対して、さらに、前記した化合物(E)を配合せしめることによって、当該樹脂中に含まれる官能基と、化合物(B)中に含まれる官能基との間の、いわゆる架橋反応をも利用する形の硬化性樹脂組成物とするようにすればよい。
【0333】
後者の形の硬化性樹脂組成物の調製、つまり、上記した、二つ目の態様に従う水性硬化性樹脂組成物の調製に際して使用される此の化合物(E)とは、前述した水性樹脂組成物(D)の水性樹脂中に含まれる、前述したような各種の官能基と反応する官能基を少なくとも1種有する、公知慣用の種々の化合物を指称するものであり、こうした官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0334】
イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、アミノ基、シクロカーボネート基、鎖状カーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシメチルアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基、カルボニル基、アセトアセチル基、シラノール基、珪素原子に結合した加水分解性基または次の構造式(S−IV)
【0335】
【化24】
−C(O)−NH−CH(OR3 )−COOR4 (S−IV)
【0336】
〔ただし、式中のR3 は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとし、また、R4 は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。〕
【0337】
で示されるような官能基などである。
【0338】
そして、此の化合物(E)中に含まれる官能基は、水性樹脂中に含まれる官能基の種類に応じて、適宜、選択される。
【0339】
そのような組み合わせとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基−シラノール基、シラノール基−アルコキシシリル基、アルコキシシリル基−アルコキシシリル基、カルボキシル基−エポキシ基、カルボキシル基−シクロカーボネート基、3級アミノ基−エポキシ基、水酸基−N−ヒドロキシメチルアミノ基、水酸基−イソシアネート基または水酸基−ブロック・イソシアネート基などである。
【0340】
当該化合物(E)としては、水性樹脂中に含まれる官能基によっては、前述したような種々の官能基のうちの2種以上を有するものであってもよい。
【0341】
また、当該化合物(E)としては、比較的、分子量の低い化合物に加えて、各種の樹脂類を使用することも出来るが、このような樹脂類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル樹脂またはフッ素樹脂の如き、各種のビニル系重合体などをはじめ、さらには、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などである。
【0342】
そして、当該化合物(E)として、特に、前記した官能基を2種以上有するような化合物を使用する場合には、当該化合物(E)としては、特に、ビニル系重合体を使用するのが簡便である。
【0343】
当該化合物(E)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にアミノ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロック・ポリイソシアネート化合物、
【0344】
ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリアジリジン化合物、ポリアクリレート化合物、ポリカーボジイミド化合物、ブロックされた水酸基を有する化合物、ポリアミン化合物、少なくとも2個のカルボン酸無水基を有する化合物またはポリオキサゾリン化合物などであり、これらの諸々の化合物類は、単独使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよいことは、勿論、可能である。
【0345】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロック・ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物またはポリヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0346】
前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物のうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような一般式(S−V)で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の加水分解物あるいは加水分解縮合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物などである。
【0347】
これらのうちでも、此の珪素化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、それらの部分加水分解縮合物、それらの部分共加水分解縮合物または珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する、線状、分岐状ないしは環状の、あるいはラダー状のシリコーン樹脂などである。
【0348】
前記した、一分子中に、それぞれ、イソシアネート基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめることにするならば、
【0349】
3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランまたは3−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;
【0350】
あるいは前掲したような、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、後掲するようなイソシアネート基含有ビニル系単量体とからなる種々の共重合体または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系のような種々のビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、エポキシ基と加水分解性シリル基とを併有する、それぞれ、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような種々のビニル系共重合体類などである。
【0351】
前記した、一分子中に、それぞれ、エポキシ基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめるならば、
【0352】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;あるいは此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物;
【0353】
「EGM−202」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、珪素原子に結合したメトキシ基と、3−グリシドキシプロピルとを併有する、環状のポリシロキサンの商品名];「KP−392」[信越化学(株)製の、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物の商品名];
【0354】
あるいは亦、前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体と、同じく、前掲したような各種の加水分解性シリル基含有ビニル系単量体とからなる種々の共重合体または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系ないしはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、エポキシ基と加水分解性シリル基とを併有するアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0355】
ここにおいて、上記したポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;
【0356】
メタ−キシリレンジイソシアネートまたはα,α,α’,α’−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;
【0357】
ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサンまたはイソホロンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート類;
【0358】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を、多価アルコール類と付加反応せしめることによって得られる、イソシアネート基を有する各種のプレポリマー類などをはじめ、
【0359】
さらには、前掲したような各種のポリイソシアネート類を環化三量化せしめることによって得られる、イソシアヌレート環を有する各種のプレポリマー類;
【0360】
あるいは前掲したような各種のポリイソシアネート類と、水とを反応せしめることによって得られる、ビウレット構造を有する各種のポリイソシアネート類;
【0361】
さらには亦、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、各種の、イソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体;
【0362】
あるいは此等のイソシアネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族、ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、
【0363】
それぞれ、イソシアネート基含有アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0364】
そして、かかるポリイソシアネート化合物のうちにあって、特に、耐候性などの面からは、脂肪族、アラルキル系ないしは脂環式ジイソシアネート化合物、それらの各種のジイソシアネート化合物から誘導される、種々のタイプのプレポリマーあるいはイソシアネート基含有ビニル系重合体などの使用が、特に望ましいということである。
【0365】
また、上記したブロック・ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリイソシアネート化合物を、後掲するような種々のブロック剤で以てブロック化せしめることによって得られる種々のブロック・ポリイソシアネート化合物や、
【0366】
イソシアネート基を環化二量化せしめることによって得られる種々のウレトジオン構造を含む化合物のように、熱によって、イソシアネート基が再生するという部類の化合物などである。
【0367】
そして、かかるブロック・ポリイソシアネート化合物を調製する際に使用されるブロック剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコールまたは乳酸エステルの如き、各種のアルコール類;
【0368】
フェノール、サリチル酸エステルまたはクレゾールの如き、各種のフェノール性水酸基含有化合物類;またはε−カプロラクタム、2−ピロリドンまたはアセトアニリドの如き、各種のアマイド類;
【0369】
あるいはアセトンオキシムまたはメチルエチルケトオキシムの如き、各種のオキシム類などであるし、さらには、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルまたはアセチルアセトンの如き、各種の活性メチレン化合物類などである。
【0370】
また、上記したポリエポキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたは水添ビスフェノールAの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0371】
ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールSまたはビスフェノールFの如き、各種の芳香族系ジオールのポリグリシジルエーテル類;上掲したような芳香族系ジオール類のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加体の如き、該芳香族系ジオール誘導体類のジグリシジルエーテル類;
【0372】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸またはトリメリット酸の如き、各種の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;
【0373】
ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネンまたはビニルシクロヘキセンの如き、各種の炭化水素系ジエンの種々のビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートまたは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートの如き、各種の脂環式ポリエポキシ化合物;あるいはポリブタジエンまたはポリイソプレンの如き、各種のジエンポリマーの種々のエポキシ化物;
【0374】
あるいは「EX−612」[ナガセ化成工業(株)製の、ソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名];「EGM−400」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、3−グリシドキシプロピルを有する、環状のポリシロキサンの商品名];
【0375】
あるいは亦、前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体の種々の単独重合体;または此等のエポキシ基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られるような、それぞれ、エポキシ基含有アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0376】
さらに、上記したポリシクロカーボネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリエポキシ化合物を、たとえば、触媒の存在下に、二酸化炭素と反応せしめて、このエポキシ基を、シクロカーボネート基に変換することによって得られる5員環シクロカーボネート基含有ポリシクロカーボネート化合物;あるいは前掲したような各種のシクロカーボネート基含有ビニル単量体の種々の単独重合体、
【0377】
または此等のシクロカーボネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、シクロカーボネート基含有アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0378】
引き続いて、上記したアミノ樹脂として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、尿素またはグリコウリルの如き、各種のアミノ基含有化合物を、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの如き、各種のアルデヒド化合物(ないしはアルデヒド供給物質)と反応せしめることによって得られるような部類の、アルキロール基を有する種々のアミノ樹脂;
【0379】
あるいは斯かるアルキロール基を有するアミノ樹脂を、メタノール、エタノール、n−ブタノールまたはi−ブタノール(イソブタノール)の如き、各種の低級アルコールと反応せしめることによって得られる形の、種々のアルコキシアルキル基含有アミノ樹脂などである。
【0380】
また、上記した、1級ないしは2級アミド基含有化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前述したビニル系重合体(a−2)の調製の際に、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体の一部として、すでに、例示して来ているような、1級ないしは2級アミド基を有する、種々のビニル系単量体の単独重合体、
【0381】
または此等の1級ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、1級ないしは2級アミド基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0382】
さらに、上記したポリカルボキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸などのような種々の低分子量の化合物などであるし、さらには、
【0383】
ビニル系重合体(a−2)の調製の際に、酸基含有ビニル系単量体の一部として、すでに、例示して来ているような、カルボキシル基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体、
【0384】
または此等のカルボキシル基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、カルボキシル基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0385】
さらにまた、上記したポリヒドロキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはグリセリンなどのような種々の低分子化合物などであるし、あるいは、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどをはじめ、さらには、ビニル系重合体(a−2)の調製の際に、加水分解性シリル基以外の官能基含有ビニル系単量体の一部として、すでに、例示しているような、水酸基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体、
【0386】
または此等の水酸基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、水酸基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0387】
こうした化合物(E)を、水性樹脂組成物(D)に配合せしめる際、この化合物(E)が、それ自体、水溶性のものであったり、水分散体であったり、あるいは或る程度の親水性を有するようなものであったりする場合には、当該化合物(E)が、水性樹脂組成物(D)中に、均一に溶解ないしは均一に分散した形の組成物を得ることが出来る。
【0388】
しかしながら、当該化合物(E)の親水性が低い場合には、水性樹脂組成物(D)と混合せしめようとしても、均一に溶解ないしは分散した形の組成物を得ることは出来ないようになるが、このような場合には、公知慣用の種々の方法によって、当該化合物(E)中に、いわゆる親水性基などを導入せしめることによって、当該化合物(E)それ自体の親水性を向上せしめ、均一なる形の組成物を得ることが出来る。
【0389】
当該化合物(E)が重合体である場合には、当該化合物(E)としては、無溶剤液状物、有機溶剤溶液、水溶液または水分散体のいずれの形態であっても使用することができる。そして、当該化合物(E)それ自体がビニル重合体である場合には、エマルジョン重合体として使用するのも好適である。
【0390】
前記した水性樹脂組成物(D)と、当該化合物(E)とから成る水性硬化性樹脂組成物を調製するには、当該化合物(E)それ自体が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物である場合には、水性樹脂組成物(D)の固形分の100重量部に対して、当該化合物(E)の固形分量が、0.1〜200重量部の範囲内、好ましくは、0.5〜150重量部の範囲内、一層好ましくは、1〜100重量部の範囲内となるように配合するようにすればよい。
【0391】
また、当該化合物(E)が、一分子中にイソシアネート基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物またはブロック・ポリイソシアネート化合物である場合には、水性樹脂中に含まれる、それぞれ、イソシアネート基またはブロック・イソシアネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0392】
当該化合物(E)中に含まれる、それぞれ、イソシアネート基またはブロック・イソシアネート基の量が0.1〜10当量の範囲内、好ましくは、0.3〜5当量の範囲内、一層好ましくは、0.5〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(E)を配合するようにすればよい。
【0393】
また、当該化合物(E)が、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリエポキシ化合物あるいはポリシクロカーボネート化合物である場合には、水性樹脂中に含まれる、それぞれ、エポキシ基またはシクロカーボネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0394】
当該化合物(E)中に含まれるエポキシ基量および/またはシクロカーボネート基量の合計量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(E)を配合するようにすればよい。
【0395】
続いて、当該化合物(E)が、特に、アミノ樹脂である場合には、水性樹脂組成物(D)の固形分の100重量部に対して、当該化合物(E)の固形分量が、5〜200重量部の範囲内、好ましくは、10〜150重量部の範囲内、一層好ましくは、15〜100重量部の範囲内となるように配合するようにすればよい。
【0396】
また、当該化合物(E)が、特に、1級ないしは2級アミド基を有する化合物である場合には、水性樹脂中に含まれる1級ないしは2級アミド基と反応する官能基の1当量に対して、
【0397】
当該化合物(E)中に含まれる1級ないしは2級アミド基量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、化合物(E)を配合するようにすればよい。
【0398】
さらに、当該化合物(E)が、特に、ポリカルボキシ化合物である場合には、水性樹脂中に含まれるカルボキシル基と反応する官能基の1当量に対して、
【0399】
当該化合物(E)中に含まれるカルボキシル基量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(E)を配合するようにすればよい。
【0400】
また、当該化合物(E)が、特に、ポリヒドロキシ化合物である場合には、水性樹脂に含まれる、ヒドロキシ基と反応する官能基の1当量に対して、
【0401】
当該化合物(E)中に含まれる水酸基量が、0.2〜5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、化合物(E)を配合するようにすればよい。
【0402】
上述のようにして調製される、それぞれ、水性樹脂組成物(D)を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物;あるいは水性樹脂組成物(D)に、さらに、化合物(E)をも配合せしめてなる、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、着色顔料を含まないクリヤーな組成物として使用することも出来るし、また、公知慣用の種々の有機系あるいは無機系の顔料を含有する形の着色組成物として、使用することも出来る。
【0403】
また、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物には、さらに、硬化触媒、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または可塑剤などのような、公知慣用の種々の添加剤類などをも配合せしめた形で以て、種々の用途に利用することが出来る。
【0404】
前掲したような種々の添加剤類のうちでも、上記した硬化触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前述したようなポリシロキサン(b−1)の調製に使用されるものとして、すでに、例示して来ているような各種の触媒類などであるが、
【0405】
さらに、これらの諸々の化合物に加えて、テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩またはベンジルホスホニウム塩類などであって、
【0406】
対アニオンとして、たとえば、それぞれ、フルオライド、クロライド、ブロマイドまたはカルボキシレートの如き、各種のアニオンを有するような、種々の化合物をも使用することが出来る。
【0407】
そして、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物に、常温での充分なる硬化性を付与する上からは、硬化触媒を添加することが望ましい。
【0408】
硬化触媒の添加量としては、前記した水性硬化性樹脂組成物中に含まれる固形分の全量に対して、0.0001〜5重量%の範囲内が適切であるし、好ましくは、0.001〜3重量%の範囲内が適切であるし、さらに好ましくは、0.002〜2重量%の範囲内が適切である。
【0409】
かくして得られる、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、該水性硬化性樹脂組成物を構成している、それぞれ、水性樹脂組成物(D)の種類によって、(E)成分の有無によって、(E)成分を添加した場合には、その種類と使用量とによって、硬化触媒の有無によって、硬化触媒を添加した場合には、その種類と使用量とによって、最適なる硬化条件は異なるけれども、室温で、3〜10日間程度のあいだ乾燥せしめるか、
【0410】
あるいは80〜250℃程度の温度範囲で、30秒間〜2時間程度のあいだ、焼き付けを行なうことによって、実用性の高い、目的とする硬化物を得ることが出来る。
【0411】
本発明に係る水性樹脂は、とりわけ、耐久性などに極めて優れる硬化物を与えるものであるという処から、該水性樹脂を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、主として、自動車上塗り用塗料、建築外装用塗料、あるいは建材用塗料などの、種々の塗料用に利用することが出来るし、さらには、接着剤用、インク用、繊維・紙の含浸剤用ならびに表面処理剤用などとして、広範囲なる用途にも、利用することが出来る。
【0412】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明をすることにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0413】
参考例1〔重合体(a−1)の調製例〕
温度計、還流冷却器、攪拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応容器に、イソプロパノール(IPA)の470部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0414】
次いで、同温度で、スチレン(ST)の100部、メチルメタアクリレート(MMA)の300部、n−ブチルメタクリレート(BMA)の184部、n−ブチルアクリレート(BA)の86部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)の30部および数平均分子量が約1,000なるメトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)の300部からなる混合物と、IPAの350部と、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)の50部とからなる混合物とを、別々に、4時間かけて滴下した。
【0415】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌することによって、不揮発分が54.6%で、かつ、数平均分子量が12,800なる、ポリエーテル鎖およびトリメトキシシリル基を併有する目的重合体の溶液を得た。以下、これを(a−1−1)と略記する。
【0416】
参考例2(同上)
参考例1と同様の反応容器に、IPAの470部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0417】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの214部、BAの86部およびPEGMAの300部からなる混合物と、IPAの450部とTBPOの50部とからなる混合物と、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランの24部とを、それぞれ、別々に、4時間かけて滴下した。
【0418】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌することによって、不揮発分が54.6%で、かつ、数平均分子量が7,000なる、ポリエーテル鎖およびトリメトキシシリル基を併有する目的重合体の溶液を得た。以下、これを(a−1−2)と略記する。
【0419】
参考例3および4〔重合体(a−2)の調製例〕
単量体の種類および使用量と、重合開始剤の使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する、各種の目的重合体(a−2)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記をする。
【0420】
【表1】
Figure 0003829377
【0421】
《第1表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0422】
「AA」………………………アクリル酸の略記
【0423】
「2−HEMA」……………2−ヒドロキシエチルメタクリレートの略記
【0424】
【表2】
Figure 0003829377
【0425】
《第1表の脚注》
数平均分子量を示す各数値は、いずれも、百分の一となっているので、百倍(つまり、「×100」)をした値が、真のものである。
【0426】
参考例5および6〔重合体(R−1)および(R−2)の調製例〕
単量体の種類および使用量と、重合開始剤の使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する目的重合体(R−1)および(R−2)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記する。
【0427】
【表3】
Figure 0003829377
【0428】
【表4】
Figure 0003829377
【0429】
《第1表の脚注》
参考例5で得られた「R−1」は、対照用樹脂1を調製する際に使用するための重合体である。
【0430】
参考例6で得られた「R−2」は、対照用樹脂2を調製する際に使用するための重合体である。
【0431】
参考例7〔対照用樹脂1の調製例〕
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、重合体(R−1)の903部を仕込んだ。次いで、室温で、攪拌下に、イオン交換水の750部を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が35.1%なる、対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂1と略記する。
【0432】
参考例8〔対照用樹脂2の調製例〕
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、重合体(R−2)の907部を仕込んだ。次いで、室温で、攪拌下に、イオン交換水の750部を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が35.8%なる、対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂2と略記する。
【0433】
実施例1
【0434】
本例は、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製についての一実施態様を、あるいは本発明に係る、それぞれ製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)のそれ自体の調製についての一実施態様を示すためのものである。
【0435】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の一実施態様を示すためのものである。
【0436】
温度計、還流冷却器、攪拌機および滴下漏斗を備えた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)の354部およびIPAの355部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0437】
次いで、同温度で、「AP−3」[大八化学工業所(株)製の、イソプロピルアシッドホスフェートの商品名]の2.9部と、イオン交換水の96部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なった。核磁気共鳴分析( 1H−NMR)で以て反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0438】
しかるのち、参考例1で得られた重合体(a−1−1)の1,422部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なって、ポリシロキサンと、重合体(a−1−1)との縮合物を調製した。
【0439】
次いで、この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−1−1)中に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0440】
引き続いて、同温度で、イオン交換水の1,404部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が37.6%なる目的水性樹脂組成物(以下これを水性樹脂と略記する。)を得た。以下、これを(D−1)と略記する。
【0441】
しかるのち、此の水性樹脂(D−1)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−1)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0442】
実施例2
【0443】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製についての、更なる一実施態様を示、あるいは本発明に係る、それぞれ製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)のそれ自体の調製についての、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0444】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0445】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの356部およびIPAの355部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0446】
次いで、同温度で、「AP−3」の2.9部と、イオン交換水の96部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0447】
しかるのち、参考例3で得られた重合体(a−2−1)の1,422部を添加し、同温度で、4時間のあいだ攪拌を行なって、ポリシロキサンと、重合体(a−2−1)との縮合物を調製した。
【0448】
次いで、この縮合物を、1H−NMRで分析した処、此の重合体(a−2−1)に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0449】
引き続いて、同温度で、イオン交換水の1,404部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が37.6%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−2)と略記する。
【0450】
しかるのち、此の水性樹脂(D−2)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−2)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0451】
実施例3
【0452】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製についての、更なる一実施態様を、あるいは本発明に係る、それぞれ製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)のそれ自体の調製についての、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0453】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0454】
実施例1と同様の反応容器に、参考例2で得られた重合体(a−1−2)の538部、PTMSの354部、メチルトリエトキシシラン(MTES)の1,271部およびIPAの756部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0455】
次いで、同温度で、「AP−3」の14.4部と、イオン交換水の482部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、重合体(a−1−2)に含有されていたトリメトキシシリル基、PTMSおよびMTESの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0456】
しかるのち、同温度で、イオン交換水の1,018部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類を除くことによって、不揮発分が35.2%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−3)と略記する。
【0457】
しかるのち、此の水性樹脂(D−3)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−3)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0458】
実施例4
【0459】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製についての、更なる一実施態様を、あるいは本発明に係る、それぞれ製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)のそれ自体の調製についての、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0460】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0461】
実施例1と同様の反応容器に、参考例4で得られた重合体(a−2−2)の1,083部、PTMSの354部、MTESの318部、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)の86部およびIPAの417部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0462】
次いで、同温度で、「AP−3」の6.9部と、イオン交換水の231部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。核磁気共鳴分析( 1H−NMR)で以て反応混合物の分析を行ない、重合体(a−1−2)に含有されていたトリメトキシシリル基、PTMS、MTESおよびDMDMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0463】
引き続いて、同温度で、イオン交換水の1,269部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が35.2%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−4)と略記する。
【0464】
しかるのち、此の水性樹脂(D−4)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−4)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0465】
実施例5
【0466】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製についての、更なる一実施態様を、あるいは本発明に係る、それぞれ製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)のそれ自体の調製についての、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0467】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0468】
実施例1と同様の反応容器に、PTMSの354部およびIPAの835部を仕込んで、80℃にまで昇温した。
【0469】
次いで、同温度で、「AP−3」の2.9部と、イオン交換水の96部とを、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。1H−NMRで以て反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0470】
さらに、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの184部、BAの221部、PEGMAの300部およびMPTMSの30部からなる混合物と、IPAの350部と、TBPOの50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0471】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌を行なって複合樹脂を得た。この複合樹脂を1H−NMRで分析した処、MPTMSに含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0472】
しかるのち、同温度で、イオン交換水の1,404部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が36.3%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−5)と略記する。
【0473】
しかるのち、此の水性樹脂(D−5)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−5)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0474】
実施例6
【0475】
本例もまた、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製についての、更なる一実施態様を、あるいは本発明に係る、それぞれ製造法ならびに水性硬化性の水性樹脂(D)のそれ自体の調製についての、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0476】
したがって、本例は、一つには、本発明に係る水性樹脂それ自体の調製例と、二つには、本発明に係る、当該水性樹脂の製造法の、更なる一実施態様を示すためのものである。
【0477】
参考例1と同様の反応容器に、PTMSの552部と、IPAの940部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0478】
次いで、同温度で、「AP−3」の3.7部およびイオン交換水の124部の混合物と、STの100部、MMAの300部、BMAの134部、BAの86部、PEGMAの300部、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートの50部およびMPTMSの30部の混合物と、IPAの350部と、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)の50部とからなる混合物とを、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0479】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ攪拌して複合樹脂を得た。この複合樹脂を、 1H−NMRで以て分析した処、PTMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0480】
次いで、同温度で、イオン交換水の1,396部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が38.4%なる目的水性樹脂を得た。以下、これを(D−6)と略記する。
【0481】
しかるのち、此の水性樹脂(D−6)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したが、保存後の水性樹脂において、ゲル化や、沈澱物の析出などの異状は、全く、認められずに、此の水性樹脂(D−6)は、極めて、保存安定性に優れるものであることが判明した。
【0482】
実施例7〜14
【0483】
これらの一連の実施例は、いずれも、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物の調製の一実施態様を、ならびに更なる一実施態様を示すためのものである。
【0484】
まず、水性樹脂(D)の一部と、顔料と、エチレングリコールモノブチルエーテルとの混合物を、サンドミルを使用して分散せしめ、顔料重量濃度(PWC)が60%なる、各種のミルベースを調製せしめ、次いで、それぞれのミルベースに、水性樹脂(D)の残りの全量を添加して、混合せしめることによって、各種の白色ベースを調製した。
【0485】
そして、それぞれの白色ベースに対して、必要に応じて、化合物(E)および硬化触媒を配合せしめることによって、PWCが35%なる、各種の白色塗料を調製した。
【0486】
このように調製される、それぞれの白色塗料に使用した、水性樹脂(D)、顔料、エチレングリコールモノブチルエーテル、化合物(E)および硬化触媒の使用比率は、第2表に示す通りである。
【0487】
かくして得られた、それぞれの白色塗料を、予め、ポリエステル/メラミン系の塗料が塗装され、焼き付けされた塗装鋼板であって、しかも、水研ぎされた此の鋼板上に、乾燥膜厚が約40マイクロ・メーター(μm)となるように、アプリケーターで塗布せしめ、次いで、第2表に示すような硬化条件で以て、各種の硬化塗膜を得た。
【0488】
此処において得られた、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、とりわけ、外観に優れるものであることが明らかとなった。それぞれの塗膜についての諸性能の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、第2表に示す。
【0489】
比較例1および2
まず、それぞれ、参考例7または8で得られた、対照用樹脂1または2の一部と、顔料と、エチレングリコールモノブチルエーテルとの混合物を、サンドミルを使用して分散せしめ、PWCが60%なる、各種のミルベースを調製し、次いで、それぞれのミルベースに、対照用樹脂1または2の残りの全量を添加して、混合せしめることによって、各種の白色ベースを調製した。
【0490】
そして、それぞれの白色ベースに対して、必要に応じて、化合物(E)および硬化触媒を配合せしめるということによって、PWCが35%なる、各種の白色塗料を調製した。
【0491】
上記のように調製される、それぞれの白色塗料に使用した、対照用樹脂1または2、顔料、エチレングリコールモノブチルエーテル、化合物(E)および硬化触媒の使用比率は、第2表に示す通りである。
【0492】
かくして得られた、それぞれの白色塗料を、実施例7と同様にして、塗布せしめ、同表に示すような硬化条件で以て硬化せしめることによって、各種の硬化塗膜を得た。
【0493】
此処において得られた、対照用樹脂1または2を含有することから成る、対照用の水性硬化性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、外観に優れるものであった。それぞれの塗膜についての諸性能の評価判定を行なった。それらの結果は、まとめて、第2表に示す。
【0494】
【表5】
Figure 0003829377
【0495】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0496】
「DBTDO」…………ジブチル錫ジオクトエートの略記
【0497】
「EGMBE」…………エチレングリコールモノブチルエーテルの略記
【0498】
「CR−97」は、「タイペーク CR−97」の略記であって、石原産業(株)製の、ルチル型酸化チタンの商品名である。
【0499】
【表6】
Figure 0003829377
【0500】
《第2表の脚注》
「耐候性」は、サンシャイン・ウエザオメーターによる、2,000時間に及ぶ曝露を行なったのちの、塗膜の60度鏡面反射率(%)なる光沢値を、未曝露時における、塗膜の同上の光沢値で以て除して、それを、100倍した値(光沢保持率:%)を表示したものである。
【0501】
その値が大きいほど、耐候性が良好であることを示している。
【0502】
「耐汚染性」は、屋外において、2ヵ月間に及ぶ曝露を行なったのちの塗膜と、未曝露時の塗膜との色差△Eを表示したものである。その値が、0に近いほど、耐汚染性が良好であるということを示している。
【0503】
「耐酸性」は、「耐酸性雨性」の代用試験として行なうものであり、それぞれの硬化塗膜の表面上に、10%硫酸水溶液の0.1ミリ・リットルを載せた試験板を、60℃の熱風乾燥器中に、30分間のあいだ保持したのち、塗膜表面を水洗乾燥してから、その表面の状態を、目視により評価判定した。その際の評価判定の基準は、次の通りである。
【0504】
◎…エッチングなし
○…若干ながら、エッチングあり
△…光沢が低下している
×…エッチングが著しい
【0505】
「耐アルカリ性」は、それぞれの試験板を、5%水酸化ナトリウム水溶液中に、室温下において、24時間のあいだ浸漬せしめたのちに、塗膜表面を、各別に、水洗し乾燥してから、その表面状態を、目視により評価判定したものである。
【0506】
【表7】
Figure 0003829377
【0507】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0508】
「GPTMS」……………3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの略記
【0509】
「S−695」は、「ウォーターゾル S−695」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、メチルエーテル化メチロールメラミン樹脂水溶液;不揮発分=66%の商品名である。
【0510】
「TOMAAc」…………トリオクトルメチルアンモニウムアセテートの略記
【0511】
【表8】
Figure 0003829377
【0512】
【表9】
Figure 0003829377
【0513】
《第2表の脚注》
原料類の使用割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする。
【0514】
「エチルシリケート40」は、コルコート(株)製の、テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物の商品名である。
【0515】
【表10】
Figure 0003829377
【0516】
実施例15
【0517】
本例は、各種の水性樹脂についての、とりわけ、保存安定性の評価判定を行なっているものである。
【0518】
実施例1〜6において得られた、各種の水性樹脂(D)を、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存せしめたのち、実施例7〜14と同様の方法で以て、各種の白色ベースを調製し、さらに必要に応じて、化合物(E)および硬化触媒をも配合せしめることによって、PWCが35%なる各種の白色塗料を調製した。
【0519】
かくして得られた、それぞれの白色塗料に使用した、水性樹脂(D)、顔料、エチレングリコールモノブチルエーテル、化合物(E)および硬化触媒の使用比率は、第2表に示す通りである。
【0520】
次いで、実施例7〜14と同様の方法で以て、それぞれの白色塗料を試験塗板上に塗布せしめ、しかるのち、第2表に示すような硬化条件で以て硬化せしめることによって、各種の硬化塗膜を得た。
【0521】
此処において得られた、40℃に、1ヵ月間のあいだ保存したのちの水性樹脂より調製された白色ベースを含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物を用いた、それぞれの塗膜は、いずれもが、とりわけ、外観に優れるものであると共に、それぞれの塗膜の諸性能が、第2表に示すような結果と、殆ど、差異が認められなかった。
【0522】
此等の各事実から、水性樹脂(D)は、とりわけ、保存安定性に優れるものであると判断されよう。
【0523】
以上に詳説した通り、本発明に係る水性樹脂は、ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサンセグメント(B)で構成され、且つ、前記(A)と(B)とが、下記の構造式(S−I)
【0524】
【化25】
Figure 0003829377
【0525】
〔ただし、式中、炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕
【0526】
で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめるという、斬新なる製造方法により得られるものであり、優れた硬化性ならびに優れた保存安定性を兼備するという、極めて実用性の高いものである。
【0527】
また、こうした水性樹脂を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性などに優れる塗膜を形成することの出来る、極めて実用性の高いものである。
【0528】
【発明の効果】
本発明に係る水性樹脂は、とりわけ、優れた硬化性と、優れた保存安定性とを兼備するというものであり、こうした水性樹脂を必須の成分として含有する、本発明に係る水性硬化性樹脂組成物は、とりわけ、曝露時の光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの、いわゆる耐久性に優れる硬化塗膜を形成することの出来る、特に、被覆用組成物として、極めて実用性の高いものである。

Claims (22)

  1. ポリエーテル鎖を有する重合体セグメント(A)と、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン・セグメント(B)とで構成され、かつ、前記(A)と(B)とが、次の構造式(S−I)
    Figure 0003829377
    〔ただし、式中の炭素原子および炭素原子に結合した珪素原子は、重合体セグメント(A)の一部分を構成し、酸素原子に結合した珪素原子は、ポリシロキサン・セグメント(B)の一部分を構成するものとする。〕で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C)を、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂組成物
  2. 前記した複合樹脂(C)が、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを有する重合体(a−1)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  3. 前記した複合樹脂(C)が、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と此の加水分解性シリル基以外の官能基とを有する重合体(a−2)と、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)とを縮合反応せしめて得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  4. 前記した複合樹脂(C)が、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを有する重合体(a−1)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記した、それぞれ、重合体(a−1)とポリシロキサン(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  5. 前記した複合樹脂(C)が、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と此の加水分解性シリル基以外の官能基とを有する重合体(a−2)の存在下において、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する過程で、上記した、それぞれ、重合体(a−2)とポリシロキサン(b−2)とを複合化せしめることによりに得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  6. 前記した複合樹脂(C)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを有する重合体(a−1)を調製する過程で、上記した、それぞれ、重合体(a−1)とポリシロキサン(b−1)とを複合化せしめることによりに得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  7. 前記した複合樹脂(C)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)の存在下において、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と此の加水分解性シリル基以外の官能基とを有する重合体(a−2)を調製する過程で、上記した、それぞれ、(a−2)と(b−1)とを複合化せしめることによりに得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  8. 前記した複合樹脂(C)が、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基とを有する重合体(a−1)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、同一反応系において、並行して行なう過程で、上記した、(a−1)とポリシロキサン(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  9. 前記した複合樹脂(C)が、ポリエーテル鎖と加水分解性シリル基と此の加水分解性シリル基以外の官能基とを有する重合体(a−2)を調製する反応と、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解縮合せしめて、珪素原子に結合した水酸基を有する分岐したポリシロキサン(b−2)を調製する反応とを、同一反応系において、並行して行なう過程で、上記した、それぞれ、重合体(a−2)とポリシロキサン(b−2)とを複合化せしめることにより得られるものである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  10. 前記した重合体(a−2)が、加水分解シリル基以外の官能基として、水酸基、ブロックされた水酸基、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基、カルボン酸無水基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および次の構造式(S−II)
    Figure 0003829377
    で示される官能基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の官能基を有するものである、請求項3、5、7または9に記載の水性樹脂組成物
  11. 前記した重合体セグメント(A)が、ビニル系重合体セグメントである、請求項1に記載の水性樹脂組成物
  12. 前記した重合体(a−1)がビニル系重合体である、請求項2、4、6または8のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  13. 前記した重合体(a−2)がビニル系重合体である、請求項3、5、7または9のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  14. 前記した重合体(a−1)が、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物の存在下に、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体を必須成分とする単量体をラジカル重合せしめて調製されるものである、請求項2、4、6または8のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  15. 前記した重合体(a−2)が、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物の存在下に、ポリエーテル鎖を有するビニル系単量体と、加水分解性シリル基以外の官能基を有するビニル系単量体とを必須成分とする単量体をラジカル重合せしめて調製されるものである、請求項3、5、7または9のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  16. 前記した重合体(a−1)中に含まれる加水分解性シリル基が、アルコキシシリル基である、請求項2、4、6または8のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  17. 前記した重合体(a−2)中に含まれる加水分解性シリル基が、アルコキシシリル基である、請求項3、5、7または9のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  18. 前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有するポリシロキサン(b−1)が、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物を必須成分とする珪素化合物類の加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物である、請求項2、3、6または7のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  19. 前記した、一分子中に少なくとも2個の、珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物が、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン、それらの部分加水分解縮合物および其の部分共加水分解縮合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種のアルコキシシランである、請求項4、5、8、9または18のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  20. 前記したポリシロキサン(b−1)中に含まれる加水分解性基がアルコキシ基である、請求項2、3、6、7または18のいずれかに記載の水性樹脂組成物
  21. 請求項1〜20のいずれかに記載の水性樹脂組成物と、該水性樹脂組成 物の水性樹脂中に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物(E)とを、必須成分として、含有することを特徴とする、水性硬化性樹脂組成物。
  22. 前記した化合物(E)が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロック・ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の化合物である、請求項21に記載の組成物。
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