JP3972223B2 - 塗膜の形成方法及びその塗装物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規にして有用なる塗膜の形成方法ならび当該塗膜の形成方法により塗装された塗装物に関する。さらに詳細には、本発明は、ポリシロキサンと該ポリシロキサン以外の重合体とからなる複合樹脂を水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(A)を、必須成分として含有する、あるいは、該水性樹脂(A)に加えて、該水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物をも、必須成分として含有する、硬化性クリヤー塗料を、上塗り塗料として使用することからなる、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などのような、いわゆる耐久性などに優れる塗膜を形成することのできる、斬新にして実用性の高い、塗膜の形成方法に関するものであるし、さらに、かかる塗膜の形成方法により塗装された塗装物に関するものである。
【0002】
そして、本発明のこうした塗膜の形成方法は、特に、自動車のトップ・コートとして、あるいは自動車補修塗装用として、さらには、建築物の外壁塗装用あるいは建材の塗装等の各種の塗装用途に利用されるものであり、したがって、塗装物としては、自動車、建材あるいは建築物の外壁等各種の基材類に塗装されたものが対象となる。
【0003】
【従来の技術】
近年、地球規模の環境保護や作業環境の改善などの要求に基づいて、従来型の有機溶剤を含有する塗料から、大気中への有機溶剤の揮散量の少ない、水性硬化性樹脂組成物をベースとした水性塗料への置換が必要となってきている。
【0004】
これまでにも、水性硬化性樹脂組成物をベースとした水性塗料としては、塩基性基ないしは酸基と、炭素原子に結合した水酸基のような、いわゆる官能基とを併有するビニル系重合体を、酸性化合物あるいは塩基性化合物で以て中和せしめたのち、水に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂と、エポキシ樹脂、イソシアネート樹脂またはアミノ樹脂のような、種々の硬化剤とから成る水性硬化性樹脂(特開平4−359075号公報、特開平6−1948号公報、特表平8−51000号公報、欧州特許EP−661320−A1号公報)をベースとした水性塗料が、幅広く、使用されている。
【0005】
しかしながら、こうした、これまでに使用されて来たような水性硬化性樹脂組成物をベースとした水性塗料を、上塗り塗料として使用するという塗膜の形成方法においては、得られる硬化塗膜は、曝露時の光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの、いわゆる耐久性などに劣っており、高度の耐久性が必要とされるような用途には、適用できないというような問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、本発明者らは、上述したような従来型技術における種々の問題点を、悉く解決するべく、鋭意、研究を開始した。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性ならびに耐酸性雨性などの耐久性に優れる、硬化塗膜を形成することのできる、極めて実用性の高い、塗膜の形成方法を提供することにあるし、さらに、かかる塗装の形成方法により塗装された塗装物をも提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述したような発明が解決しようとする課題に照準を合わせて、鋭意研究を重ねた結果、特定のポリシロキサンと該ポリシロキサン以外の特定の重合体とが特定構造で結合している複合樹脂と、前記ポリシロキサンとは異なる特定のポリシロキサンを混合せしめ、更に必要に応じて、縮合せしめたのち、水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂を、必須成分として含有する、あるいは、該水性樹脂に加えて、該水性樹脂に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物をも、必須成分として含有する、硬化性クリヤー塗料が、
【0009】
これを上塗り塗料として使用すると、光沢保持性、耐酸性雨性ならびに耐曝露汚染性などの耐久性に優れるとともに、極めて高い鮮映性を有する硬塗膜を与えることを見いだし、さらには、かかる塗膜の形成方法により塗装された塗装物が極めて耐久性等の諸性能に優れるものであることを見いだし、ひいては、上述したような発明が解決しようとする課題を、見事に、解決することが出来るということを確信するに及んで、ここに、本発明を完成させるに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、基本的には、基材に、あるいは、予め、皮膜が形成された基材に、ポリシロキサンと該ポリシロキサン以外の重合体とからなる複合樹脂を水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(A)を、必須成分として含有する、硬化性クリヤー塗料(I)、
【0011】
あるいは、ポリシロキサンと該ポリシロキサン以外の重合体とからなる複合樹脂を水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(A)と、該水性樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物とを必須成分として含有する、硬化性クリヤー塗料(I)を塗装せしめ、次いで、硬化せしめる塗膜の形成方法であって、
前記した水性樹脂(A)が、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサンセグメント(A−2)と、アニオン性基、カチオン性基およびノニオン性基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の親水性基を有する重合体セグメント(B−1)が下記の構造式(S−I)
【化6】
(ただし、式中の炭素原子は、重合体セグメント(B−1)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(A−2)の一部分を構成するものとする。)で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C−3)と、メチル基を有する3官能性のシラン化合物を必須の原料成分として使用し調製された珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を有するポリシロキサン(p)を、混合せしめ、さらに必要に応じて、縮合せしめたのち、水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(W−3)、または、前記ポリシロキサンセグメント(A−2)と、アニオン性基、カチオン性基およびノニオン性基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の親水性基に加え、該親水性基と、珪素原子に結合した加水分解性基と、珪素原子に結合した水酸基との、都合、3種類の基以外の官能基をも併有する重合体セグメント(B−2)が下記の構造式(S−I)
【化7】
(ただし、式中の炭素原子は、重合体セグメント(B−2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(A−2)の一部分を構成するものとする。)で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C−4)と、メチル基を有する3官能性のシラン化合物を必須の原料成分として使用し調製された珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を有するポリシロキサン(p)を、混合せしめ、さらに必要に応じて、縮合せしめたのち、水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(W−4)であるか、あるいは、
基材に、あるいは、予め、皮膜が形成された基材上に、顔料を含むベース・コート用塗料(II)と、上記した硬化性クリヤー塗料(I)を、順次、塗装せしめたのち、これらの両塗料から形成される塗膜2層を、同時に、乾燥もしくは硬化せしめるという、とりわけ、耐久性などに優れた硬化塗膜を与えることのできる、極めて実用性の高い、塗膜の形成方法を提供しようとするものである。
【0012】
さらにまた、上述した如き、それぞれの塗装方法により、基材、あるいは、予め被膜が形成された基材を塗装せしめて得られる塗装物をも提供しようとするものである。
【0013】
ここにおいて、まず、本発明の塗膜形成方法を実施するにあたって用いられる、前記した硬化性クリヤー塗料(I)としては、前記ポリシロキサンと前記ポリシロキサン以外の重合体とが結合して複合化している複合樹脂を水性媒体中に分散ないしは溶解せしめて得られる水性樹脂(A)を、必須成分として含有するものがあるし、
【0014】
さらに、当該水性樹脂(A)と、水性樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物をも必須成分として含有するものもある。
【0015】
こうした硬化性クリヤー塗料(I)の必須成分である、水性樹脂(A)の、より具体的なものとしては、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサンセグメント(A−2)と、水性化のためのアニオン性基、カチオン性基およびノニオン性基よりなる群れから選ばれる、少なくとも1種の親水性基を有する重合体セグメント(B−1)が下記の構造式(S−I)
【化8】
(ただし、式中の炭素原子は、重合体セグメント(B−1)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(A−2)の一部分を構成するものとする。)で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C−3)と、常温硬化性を付与するためのメチル基を有する3官能性のシラン化合物を必須の原料成分として使用し調製された珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を有するポリシロキサン(p)を、混合せしめ、さらに必要に応じて、縮合せしめたのち、水に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(W−3)、
【0016】
さらには、前記したポリシロキサンセグメント(A−2)と、アニオン性基、カチオン性基およびノニオン性基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の親水性基に加え、該親水性基と、珪素原子に結合した加水分解性基と、珪素原子に結合した水酸基との、都合、3種類の基以外の官能基をも併有する重合体セグメント(B−2)が下記の構造式(S−I)
【化9】
(ただし、式中の炭素原子は、重合体セグメント(B−2)の一部分を構成し、酸素原子のみに結合した珪素原子は、ポリシロキサンセグメント(A−2)の一部分を構成するものとする。)で示される結合を介して複合化している複合樹脂(C−4)と、前記したポリシロキサン(p)を、混合せしめ、さらに必要に応じて、縮合せしめたのち、水に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(W−4)などが挙げられる。
【0017】
そして、水性樹脂(W−3)または(W−4)の前駆体である、複合樹脂(C−3)または(C−4)を構成する、ポリシロキサンセグメント(A−2)は、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するものであり、線状、分岐状あるいは環状の何れの構造を有するものであってもよい。
【0018】
上述したポリシロキサンセグメント(A−2)に含有される珪素原子に結合したアリール基とは、フェニル基、p−トリル基もしくはナフチル基等の芳香族残基を指称するが、これらのうち、実用性の点から、特にフェニル基であることが好ましい。
【0019】
複合樹脂(C−3)あるいは(C−4)のもう一方の構成成分である、重合体セグメント(B−1)または(B−2)としては、アクリル系重合体、フルオロオレフィン系重合体、ビニルエステル系重合体、芳香族ビニル系重合体またはポリオレフィン系重合体の如き、各種のビニル系重合体に由来するものがあるし、さらには、ポリエステル系重合体、アルキド系重合体またはポリウレタン系重合体などのビニル系重合体以外の重合体に由来するものがある。
【0020】
これらのうちでも特に好ましいものとしては、ビニル系重合体セグメントまたはポリウレタン系重合体セグメントが挙げられ、さらに、ビニル重合体セグメントのうちで特に望ましいものとしては、アクリル系重合体セグメントおよびフルオロオレフィン系重合体セグメントが挙げられる。
【0021】
そして、水性樹脂(W−3)または(W−4)を調製する際に、それらの前駆体である複合樹脂(C−3)または(C−4)を構成する、ポリシロキサンセグメント(A−2)と、重合体セグメント(B−1)または(B−2)との比率は、(A−2):(B−1)または(B−2)との重量割合として、1:99〜95:5程度となるように、好ましくは、5:95〜90:10になるように、さらに好ましくは、10:90〜80:20になるように設定すればよい。
【0022】
また、水性樹脂(W−3)または(W−4)において、ポリシロキサン(p)に由来するポリシロキサンとポリシロキサンセグメント(A−2)との合計量と、重合体セグメント(B−1)または(B−2)との比率は、[(A−2)+(p)に由来するポリシロキサン]:(B−1)または(B−2)なる重量割合として、5:95〜95:5程度になるように、好ましくは、10:90〜90:10になるように、さらに好ましくは、10:90〜80:20になるように設定するのがよい。
【0023】
重合体セグメント(B−1)または(B−2)の重量割合が約5%未満になるように設定すると、どうしても、ポリシロキサン成分が多すぎるために、本発明の方法により形成される硬化塗膜の耐アルカリ性が低くなったり、クラックが発生しやすくなったりするし、一方、重合体セグメント(B−1)または(B−2)の重量割合が約95%を超えて余りにも多くなるような場合には、どうしても、ポリシロキサン成分が少なすぎるために、本発明の方法により形成される硬化塗膜の耐曝露汚染性や光沢保持性等の耐久性が低くなったりするので、いずれの場合も好ましくない。
【0024】
そして更に、水性樹脂(W−3)または(W−4)において、ポリシロキサン(p)に由来するポリシロキサンとポリシロキサンセグメント(A−2)とからなる全ポリシロキサン成分のうち、ポリシロキサンセグメント(A−2)が占める割合を、該全ポリシロキサンを構成する珪素原子のモル%として、5〜90モル%に、好ましくは、10〜80モル%に、さらに好ましくは15〜75モル%に設定するのが、水性樹脂(W−3)または(W−4)の安定性および硬化性バランスの点から好適である。
【0025】
また、ポリシロキサンセグメント(A−2)に、または、ポリシロキサン(p)に、さらには後掲するポリシロキサン(a−2)に、さらに亦、後掲の重合体(b−3)あるいは(b−4)に、含有される珪素原子に結合した加水分解性基とは、容易に加水分解を受けて脱離して珪素原子に結合した水酸基、即ち、シラノール基、を生じさせる基を指称し、その代表的なものとしては、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子、アルケニルオキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基もしくは水素原子等がある。
【0026】
そして、これらの加水分解性基のうちで、特に好ましいものの一つとして、アルコキシ基が挙げられる。
【0027】
重合体セグメント(B−1)または(B−2)中に含まれる、アニオン性基しては公知慣用の各種のものが導入されるが、特に、好ましいものとしては、塩基性化合物で以て中和された各種の酸基が挙げられる。
【0028】
そして、かかる酸基の代表的なものとしては、カボキシル基、燐酸基、酸性燐酸エステル基、亜燐酸基、スルホン酸基もしくはスルフィン酸基などが挙げられる。
【0029】
そして、上述した如き酸基を中和してアニオン性基に変換する際に使用される塩基性化合物の代表的なものとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノールもしくは2−ジメチルアミノエタノールなどの各種の有機アミン類;アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどの各種の無機塩基性物質;
【0030】
テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイドもしくはトリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドの如き、各種の第四級アンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。
【0031】
また、重合体(B−1)または(B−2)中に含まれる、カチオン性基としては公知慣用の各種のものが導入されるが、特に好ましいものとしては、酸性化合物で以て中和された塩基性基が挙げられる。
【0032】
そして、かかる塩基性基の代表的なものとしては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基および4級アンモニウムヒドロオキシド基などが挙げられる。
【0033】
そして、かかる塩基性基を中和する際に使用される酸性化合物の代表的なものとしては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸または乳酸などの各種のカルボン酸類;燐酸モノメチルエステルまたは燐酸ジメチルエステルなどの燐酸の各種のモノ−ないしはジエステル類;
【0034】
メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸もしくはドデシルベンゼンスルホン酸の如き、各種の有機スルホン酸類;さらには、塩酸、硫酸、硝酸もしくは燐酸の如き種々の無機酸などが挙げられる。
【0035】
さらに亦、重合体セグメント(B−1)または(B−2)に含有される、ノニオン性基としての、ポリエーテル鎖としては、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖またはポリオキシブチレン鎖の如き各種のポリオキシアルキレン鎖があるし、さらには、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)鎖の如き、前記したオキシアルキレン部分がランダムに共重合された形のもの、あるいは、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン鎖の如き、相異なるポリオキシアルキレン鎖がブロック状に結合した形のもの、等各種のものが挙げられる。
【0036】
そして、重合体セグメント(B−1)または(B−2)に含有される親水性基としては、前記したアニオン性基、カチオン性基またはノニオン性基を単独で使用しても良いし、アニオン性基またはカチオン性基と、ノニオン性基とを併用して使用することも可能である。
【0037】
重合体セグメント(B−1)または(B−2)に、かかるアニオン性基またはカチオン性基を親水性基として導入する場合、その導入量としては、当該重合体セグメントの1,000グラム当たりのアニオン性基またはカチオン性基のモル数として、約0.1モル〜約10モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.2〜5モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.3〜3モルなる範囲内が適切である。
【0038】
また、重合体セグメント(B−1)または(B−2)に、かかるノニオン性基としてのポリエーテル鎖のみを親水性基として導入する場合、その導入量としては、当該重合体セグメントの1,000グラム当たりのポリエーテル鎖のグラム数として、約10〜約990グラムなる範囲内が適切であるし、好ましくは、20〜900グラムなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、40〜800グラムなる範囲内が適切である。
【0039】
さらに、重合体セグメント(B−1)または(B−2)に、かかるアニオン性基またはカチオン性基とノニオン性基としてのポリエーテル鎖との両者を親水性基として導入する場合、それぞれを単独で導入する場合の導入量として上述した如き範囲内で、それぞれを導入することが好ましい。
【0040】
上記した重合体セグメント(B−2)に導入される、親水性基と珪素原子に結合した加水分解性基と珪素原子に結合した水酸基なる、都合、3種類の基以外の官能基[以下、官能基(Fu)とも云う。]として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、炭素原子に結合した水酸基、炭素原子に結合し、且つ、ブロックされた水酸基(以下、ブロック水酸基とも云う)、カルボキシル基、ブロックされたカルボキシル基(以下、ブロックカルボキシル基とも云う)、カルボン酸無水基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、オキサゾリン基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基および、下記の構造式(S−III)
【0041】
【化10】
【0042】
で示される官能基などである。
【0043】
そして、上記した2級アミド基は、N−ヒドロキシメチルアミド基、炭素原子が1〜8なるアルコキシ基を有するN−アルコキシメチルアミド基または次のような構造式(S−V)
−C(O)−NH−CH(OR2)−COOR3 (S−V)
(ただし、式中のR2は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わし、また、R3は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)
で示される官能基をも包含するというものである。
【0044】
しかしながら、重合体セグメント(B−2)が親水性基としてカチオン性基を有する場合には、かかる官能基のうち1級アミノ基、2級アミノ基もしくは3級アミノ基の如きアミノ基は、官能基(Fu)として、当該重合体セグメント(B−2)に、ことさらに導入されることはない。
【0045】
また、重合体セグメント(B−2)が親水性基としてアニオン性基を有する場合には、かかる官能基のうちカルボキシル基、ブロックカルボキシル基、もしくはカルボン酸無水基の如きカルボキシル基あるいはカルボキシル基より誘導される官能基は、官能基(Fu)として、当該重合体セグメント(B−2)に、ことさらに導入されることはない。
【0046】
また、これらの官能基は、重合体セグメント(B−2)中に、1種のみを含有させてもよいし、2種以上を含有させることもできる。
【0047】
上述した、官能基(Fu)のうちでも特に望ましいものとしては、炭素原子に結合した水酸基、ブロック水酸基、3級アミノ基、カルボキシル基、ブロックカルボキシル基、カルボン酸無水基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−III)で示されるような官能基などである。
【0048】
かかる官能基(Fu)の重合体セグメント(B−2)中への導入量としては、当該重合体の固形分1,000グラムあたり、約0.1〜約5モルなる範囲が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲が適切であり、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲が適切である。
【0049】
次に、本発明の塗膜の形成方法を実施する際に使用される、硬化性クリヤー塗料(I)の必須成分である、水性樹脂(W−3)または(W−4)の調製方法について述べることにする。
【0050】
まず、かかる水性樹脂(W−3)または(W−4)の前駆体である複合樹脂(C−3)または(C−4)の調製方法について述べる。
【0051】
かかる複合樹脂(C−3)または(C−4)を調製する方法としては、例えば、(ホ)遊離の酸基、遊離の塩基性基およびノニオン性基から成る群より選ばれる少なくとも一種の極性基と珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を併有する重合体、あるいは該極性基と珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基に加え、上述した官能基(Fu)のうち酸基あるいは塩基性基以外の官能基をも含有する重合体と、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサン(a−2)とを反応せしめて、ポリシロキサン(a−2)および前記した各重合体に含有される珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基どうしの反応により構造式(S−I)の結合を介して複合化させたのち、含有される遊離の酸基あるいは遊離の塩基性基を塩基性化合物または酸性化合物で中和する方法、
【0052】
(ヘ)中和された酸基、中和された塩基性基およびノニオン性基から成る群より選ばれる少なくとも一種の親水性基と珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を併有する重合体、あるいは当該親水性基と珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基に加え、上述した官能基(Fu)をも含有する重合体と、前記したポリシロキサン(a−2)とを反応せしめて、ポリシロキサン(a−2)および前記した各重合体に含有される珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基どうしの反応により構造式(S−I)の結合を介して複合化させる方法、
【0053】
(ト)ラジカル重合性二重結合を有し、且つ、当該二重結合とポリシロキサンとが、下記構造式(S−VI)で示される結合様式で結合しているようなアリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサンを、共重合成分の一つとして使用して、これと、遊離の酸基を含有するビニル系単量体、遊離の塩基性基を有するビニル系単量体およびノニオン性基を含有するビニル系単量体から成る群より選ばれる少なくとも一種の極性基を含有するビニル系単量体を必須成分として含有するビニル系単量体類とを共重合せしめることにより、もしくは、前記二重結合を含有するポリシロキサンと極性基を有するビニル系単量体に加えて、上述した官能基(Fu)のうち遊離の酸基または塩基性基以外の官能基を含有する単量体を必須成分として含有するビニル系単量体類とを共重合させることにより、複合化せしめた後、含有される遊離の酸基あるいは遊離の塩基性基を塩基性化合物または酸性化合物で中和する方法、
【0054】
【化11】
(ただし、式中、炭素原子は二重結合を構成する一方の炭素原子であるか、もしくは二重結合に結合した置換基を構成する炭素原子であるものとし、酸素原子のみに結合した珪素原子は、ポリシロキサンの一部分を構成するものとする)
【0055】
(チ)ラジカル重合性二重結合を有し、且つ、当該二重結合とポリシロキサンとが、前記構造式(S−VI)で示される結合様式で結合しているようなアリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサンを、共重合成分の一つとして使用して、これと、中和された酸基を含有するビニル系単量体、中和された塩基性基を有するビニル系単量体およびノニオン性基を含有するビニル系単量体から成る群より選ばれる少なくとも一種の親水性基を含有するビニル系単量体を必須成分として含有するビニル系単量体類とを共重合せしめることにより、もしくは、前記二重結合を含有するポリシロキサンと親水性基を有するビニル系単量体に加えて、上述した官能基(Fu)を含有する単量体を必須成分として含有するビニル系単量体類とを共重合させることにより、複合化せしめる方法、等がある。
【0056】
上述した(ホ)および(ヘ)なる方法において、ポリシロキサン以外の重合体に、珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基が複合化のための官能基として導入されるが、これらの官能基のうち、上述した如き珪素原子に結合した加水分解性基を導入することが特に簡便である。
【0057】
そして、かかる珪素原子に結合した加水分解性基としては、下記の一般式(S−VII)
【0058】
【化12】
【0059】
(ただし、式中のR 4 はアルキル基、アリール基またはアラルキル基の如き1価の有機基を、R 5 は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基の如き加水分解性基を表わすものとし、また、aは0あるいは1または2なる整数であるものとする。)
【0060】
で示されるような、加水分解性シリル基の形で導入することが特に簡便である。
【0061】
かかる加水分解性シリル基は、該加水分解性シリル基それ自体が、直接に、炭素原子と共有結合することにより、あるいはシロキサン結合を介して、炭素原子と共有結合することにより、当該重合体に結合しているものであるとする。
【0062】
複合樹脂(C−3)または(C−4)のうち、アニオン性基のみを親水性基として有するタイプを上述した(ホ)の方法で調製する場合のいっそう具体的な方法の代表的なものとしては、
【0063】
(5)予め調製した、加水分解性シリル基と酸基なる両基を併有する重合体(b−3)または加水分解性シリル基および酸基なる両基に加えて、上述した官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基をも含有する重合体(b−4)と、前記したポリシロキサン(a−2)とを縮合反応せしめて得られる複合樹脂(c−9)または(c−10)に含まれる酸基を塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめる方法、
【0064】
(6)重合体(b−3)または重合体(b−4)の存在下に、ポリシロキサン(a−2)を調製する反応を行なう過程で、(b−3)あるいは(b−4)と(a−2)とを縮合反応せしめて得られる複合樹脂(c−11)または(c−12)に含まれる酸基を塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめる方法、
【0065】
(7)前記のポリシロキサン(a−2)の存在下に、重合体(b−3)または重合体(b−4)を調製する反応を行なう過程で、(b−3)または(b−4)と(a−2)とを縮合反応せしめて得られる複合樹脂(c−13)または(c−14)に含まれる酸基を塩基性化合物で部分中和ないしは完全中和せしめる方法、
【0066】
(8)重合体(b−3)または重合体(b−4)を調製する反応と、ポリシロキサン(a−2)を調製する反応とを、並行して行なう過程で、(b−3)または(b−4)と(a−2)とを縮合反応せしめて得られる複合樹脂(c−15)または(c−16)に含まれる酸基を塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめる方法等がある。
【0067】
また、上述した(5)〜(8)なる各種の方法では、塩基性化合物を使用して酸基を中和することにより、中和された酸基のを導入を行っているが、酸基を含有する原料類もしくは酸基を含有する重合体ならびに塩基性化合物の使用に替えて、中和された酸基を有する原料類もしくは中和された酸基を有する重合体を使用することによっても、アニオン性基を含有する複合樹脂(C−3)または(C−4)を調製することが出来る。
【0068】
上記の重合体(b−3)あるいは(b−4)に導入される酸基としては、前掲した各種の遊離の酸基類に加えて、カルボン酸無水基、燐酸無水基、スルホン酸無水基またはカルボン酸−スルホン酸混合酸無水基などで代表されるような酸無水基、さらには、たとえば、シリルエステル基、tert−ブチルエステル基または1−アルコキシエチルエステル基などのように、容易に、遊離の酸基に変換されるエステル基の形として、いわゆるブロックされた、それぞれ、カルボキシル基、リン酸基、酸性燐酸エステル基、亜リン酸基またはスルホン酸基などで代表されるようなブロックされた酸基など、各種の酸基などが挙げられるが、そのうちでも特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、カルボキシル基、ブロックカルボキシル基またはカルボン酸無水基などである。
【0069】
また、上記した重合体(b−4)に導入される、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基としては、重合体セグメント(B−2)に導入することが出来るものとして例示した各種のものが挙げられる。
【0070】
次に、複合樹脂(c−9)〜(c−16)の調製方法について、詳しく述べることにする。
【0071】
まず、複合樹脂(c−9)〜(c−16)を調製する際に、その前駆体として重合体(b−3)または(b−4)が、調製されるが、かかる各種の重合体の代表的なものとしては、重合体セグメント(B−1)および(B−2)について上述したものと同様に各種のものが挙げられるが、それらのうちでも特に好ましいものとしては、ビニル系重合体またはポリウレタン系重合体が挙げられ、さらに、ビニル重合体のうちで特に望ましいものとしては、アクリル系重合体およびフルオロオレフィン系重合体が挙げられる。
【0072】
まず、かかる、重合体(b−3)または(b−4)のうちの、ビニル系重合体の調製方法について、述べることとする。
【0073】
かかるビニル系重合体のうちの、複合樹脂(c−9)、(c−11)、(c−13)または(c−15)の前駆体である、重合体(b−3)を調製するには、たとえば、(i)加水分解性シリル基を有するビニル系単量体(m−1)と、親水性を付与するための酸基を有するビニル系単量体(m−2)と、を共重合せしめたり、前記した両タイプ(二タイプ)の単量体と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体類(m−3)と、を共重合せしめる方法であるとか、
【0074】
(ii)加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、ビニル系単量体(m−2)を重合せしめたり、または、該単量体(m−2)と、共重合可能なる其の他の単量体(m−3)と、を共重合せしめる方法であるとか、
【0075】
(iii)加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、ビニル系単量体(m−1)と(m−2)とを共重合せしめたり、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、(m−1)と(m−2)と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体(m−3)と、を共重合せしめる方法であるとか、
【0076】
(iv)予め調製しておいた、酸基と炭素原子に結合した水酸基とを併有するビニル系重合体に、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランのような、各種のイソシアナート基含有シラン化合物を反応せしめる方法、などの、公知慣用の種々の方法を適用することが出来るが、簡便さの点から、これらのうち、特に、(i)〜(iii)なる各方法を適用するのが好ましい。
【0077】
そして、かかるビニル系重合体のうち、複合樹脂(c−10)、(c−12)、(c−14)または(c−16)の前駆体である、重合体(b−4)を調製するには、たとえば、(v)上記した、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基を有するビニル系単量体(m−4)と、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体(m−1)と、酸基を有するビニル系単量体(m−2)と、を共重せしめたり、(m−1)と(m−2)と(m−4)と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体(m−3)と、を共重合せしめる方法であるとか、
【0078】
(vi)加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、ビニル系単量体(m−2)と(m−4)を共重合せしめたり、または、該両単量体と共重合可能なる其の他の単量体(m−3)と、を共重合せしめる方法であるとか、
【0079】
(vii)加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、ビニル系単量体(m−1)と(m−2)と(m−4)と、を共重合せしめたり、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤および/または加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤の存在下に、(m−1)と(m−2)と(m−4)と、これらの単量体と共重合可能なる其の他の単量体(m−3)と、を共重合せしめる方法であるとか、
【0080】
(viii)予め調製しておいた、酸基と、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基と、炭素原子に結合した水酸基なる3種類の官能基を有するビニル系重合体に、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランのような、各種のイソシアナート基含有シラン化合物を反応せしめる方法、などの、公知慣用の種々の方法を適用することが出来るが、簡便さの点から、これらのうち、特に、(v)〜(vii)なる各方法を適用するのが好ましい。
【0081】
前記した各重合体(b−3)または(b−4)を調製する際に使用される、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体(m−1)とは、前掲したような構造式(S−VII)で示される加水分解性シリル基を有する単量体を指称するものであって、斯かる単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、2−トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、2−トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、2−(メチルジメトキシシリル)エチルビニルエーテル、3−トリメトキシシリルプロピルビニルエーテルもしくは3−トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、
【0082】
または3−(メチルジメトキシシリル)プロピルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランもしくは3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシランなどである。
【0083】
また、当該重合体(b−3)または(b−4)を調製する反応において使用される、加水分解性シリル基を有する連鎖移動剤とは、上述したような加水分解性シリル基と、メルカプト基、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のような、いわゆる遊離ラジカルにより活性化される基ないしは原子とを併有する化合物を指称するものである。
【0084】
かかる連鎖移動剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジクロロシラン、3−メルカプトプロピルジメチルクロロシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシランまたは3−ブロモプロピルトリエトキシシランなどである。
【0085】
さらにまた、前記(b−3)または(b−4)を調製する際に使用される、前記したような加水分解性シリル基を有するラジカル重合開始剤とは、分子中に、上述したような加水分解性シリル基を有する化合物を指称するものであり、これらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0086】
2,2 ' −アゾビス−(2−メチル−4−トリメトキシシリルブチロニトリル)、2,2 ' −アゾビス−(2−メチル−4−トリエトキシシリルブチロニトリル)、2,2 ' −アゾビス−(2−メチル−4−ジメトキシメチルシリルブチロニトリル)もしくは2,2 ' −アゾビス−(2−メチル−4−ジエトキシメチルシリルブチロニトリル)の如き各種のものに加えて、2,2 ' −アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]または4,4 ' −アゾビス(4−シアノバレリックアシッド)の如き、活性水素含有基を有する各種のアゾ系開始剤と、たとえば、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランまたは3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシシランの如き、イソシアナートシランとを反応せしめて得られるような形の、アミド結合あるいはウレタン結合を介して、加水分解性シリル基が結合した形のアゾ系化合物などのような、各種のアゾ系化合物;
【0087】
あるいはtert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリメトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリエトキシシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジメトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−ジエトキシメチルシリルプロパノエート、tert−ブチルパーオキシ−3−メチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエートまたはtert−ブチルパーオキシ−4−エチル−5−トリメトキシシリルヘキサノエートの如き、各種の過酸化物などである。
【0088】
重合体(b−3)または(b−4)を調製する際に使用される、酸基含ビニル系単量体(m−1)のうち、遊離のカルボキシル基を含有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸類;
【0089】
イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチルの如き、飽和ジカルボン酸類と、飽和1価アルコール類との各種のモノエステル類(ハーフエステル類);アジピン酸モノビニルまたはコハク酸モノビニルの如き、各種の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;
【0090】
無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸または無水トリメリット酸の如き、各種の飽和ポリカルボン酸の無水物類と、後掲するような各種の炭素原子に結合した水酸基を含有するビニル系単量体類との付加反応生成物などであるし、さらには、前掲したような各種のカルボキシル基含有単量体類と、ラクトン類とを付加反応せしめて得られるような各種の単量体類などである。
【0091】
重合体(b−3)または(b−4)を調製する際に使用される、酸基含ビニル系単量体(m−1)のうち、ブロックカルボキシル基を有する単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−tert−ブチルシリル(メタ)アクリレートもしくはトリメチルシリルクロトネートの如き、特開昭62−254876号公報に開示されているような、各種のシリルエステル基含有ビニル系単量体類;
【0092】
1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1−n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンもしくは2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフランの如き、特開平5−222134号公報に開示されているような、各種の、ヘミアセタールエステル基ないしはヘミケタールエステル基含有単量体類;またはtert−ブチル(メタ)アクリレートもしくはtert−ブチルクロトネートの如き、各種のtert−ブチルエステル基含有単量体類などである。
【0093】
重合体(b−3)または(b−4)を調製する際に使用される、酸基含ビニル系単量体(m−1)のうち、カルボン酸無水基含有単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸もしくは無水イタコン酸の如き、各種の不飽和ポリカルボン酸の無水物類;無水アクリル酸もしくは無水メタクリル酸の如き、各種の不飽和モノカルボン酸の無水物類;またはアクリル酸もしくはメタクリル酸の如き、各種の不飽和カルボン酸と、酢酸、プロピオン酸もしくは安息香酸などのような、種々の飽和カルボン酸との混合酸無水物などである。
【0094】
また、ビニル系重合体(b−4)には、上述の如く、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基として、炭素原子に結合した水酸基、ブロック水酸基、3級アミノ基、シクロカ ーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド、カーバメート基、および、構造式(S−III)
R 6 b SiR 7 4−b (S−VIII)
(ただし、式中のR 6 は、それぞれ、置換基を有していても有していなくてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基またはアルケニル基なる1価の有機基を、R 7 はハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基もしくはアルケニルオキシ基の如き、加水分解性基を表わすものとし、bは0あるいは1なる整数であるものとする。)で示される官能基等の各種の官能基が導入される。
【0095】
前記した(v)〜(vii)なる各方法によりかかる官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基を導入する際に、かかる官能基を含有する各種のビニル系単量体(m−4)が使用されるが、それらのうち、炭素原子に結合した水酸基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0096】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートもしくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの如き、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテルもしくは4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの如き、各種の炭素原子に結合した水酸基含有ビニルエーテル類;
【0097】
2−ヒドロキシエチルアリルエーテルの如き、各種の炭素原子に結合した水酸基含有アリルエーテル類;前掲したような各種の炭素原子に結合した水酸基含有単量体類と、ε−カプロラクトンなどで以て代表されるような、種々のラクトン類との付加物;またはグリシジル(メタ)アクリレートなどで以て代表されるような、種々のエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸などで以て代表されるような、種々の酸類との付加物などであるし、
【0098】
さらには、(メタ)アクリル酸などで以て代表されるような、種々の不飽和カルボン酸類と、「カーデュラ E」(オランダ国シェル社製の商品名)などで以て代表されるような、α−オレフィンのエポキサイド系化合物以外の、種々のモノエポキシ化合物との付加物などのような炭素原子に結合した水酸基含有単量体類などである。
【0099】
ビニル系単量体(m−4)のうち、ブロック水酸基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−トリメチルシロキシブチル(メタ)アクリレート、2−トリメチルシロキシエチルビニルエーテルもしくは4−トリメチルシロキシブチルビニルエーテルの如き、特開昭62−283163号公報に開示されているような、各種のシリルエーテル基含有ビニル系単量体類;
【0100】
2−(1−エトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(1−n−ブトキシ)エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エトキシテトラヒドロフランもしくは2,2−ジメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシメチルジオキソランの如き、特開平4−41515号公報に開示されているような、各種のアセタール基ないしはケタール基含有含有ビニル系単量体類;
【0101】
または3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジン、2,2−ジメチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンもしくは2−イソブチル−2−メチル−3−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルオキサゾリジンの如き、各種のオキサゾリジン基含有ビニル系単量体類などである。
【0102】
ビニル系単量体(m−4)のうち、シクロカーボネート基含有ビニル系単量体として特 に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0103】
2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4−メチル−3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート、4,5−カーボネートペンチル(メタ)アクリレート、6,7−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレート、5−エチル−5,6−カーボネートヘキシル(メタ)アクリレートもしくは7,8−カーボネートオクチル(メタ)アクリレート、2,3−カーボネートプロピルビニルエーテル、ジ(2,3−カーボネートプロピル)マレートまたはジ(2,3−カーボネートプロピル)イタコネートの如き、5員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類などをはじめ、
【0104】
さらには、〔5−N−(メタ)アクリロイルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−〔N−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エチルカルバモイルオキシ〕メチル−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−エチル−5−(メタ)アクリロイルオキシメチル−1,3−ジオキサン−2−オンまたは4−(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキサン−5−イル)メトキシメチルスチレンの如き、6員環のシクロカーボネート基含有ビニル系単量体類である。
【0105】
ビニル系単量体(m−4)のうち、エポキシ基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテルまたはアリルグリシジルエーテルの如き、種々の化合物などである。
【0106】
ビニル系単量体(m−4)のうち、1級アミド基ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド 、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルフォルムアミド、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレート、メチル(メタ)アクリルアミドグリコレートメチルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートとアセチルアセトンまたはアセト酢酸エステル類との付加反応物の如き、種々の化合物などである。
【0107】
ビニル系単量体(m−4)のうち、カーバメート基含有ビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0108】
N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸メチル、N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸エチル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルカルバミン酸エチル、2−カルバモイルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−(N−メチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N−エチルカルバモイルオキシ)エチル(メタ)アクリレートもしくは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートと、2−ヒドロキシプロピルカーバメートとの付加反応物;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、フェノールとの付加反応物;2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、エタノールとの付加反応物;または2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートと、メチルエチルケトオキシムとの付加反応物のような種々の化合物などである。
【0109】
ビニル系単量体(m−4)のうち、前掲した構造式(S−III)で示される官能基を有するビニル系単量体として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレートもしくは3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベ ンジルイソシアネートの如き、各種のイソシアナート基含有ビニル系単量体と、ε−カプロラクタムもしくはγ−ブチロラクタムの如き、各種のアミド化合物との付加反応物のような種々の化合物などである。
【0110】
ビニル系単量体(m−4)のうち、3級アミノ基を含有する単量体の代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0111】
2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジ−n−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、4−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートまたはN−[2−(メタ)アクリロイルオキシ]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
【0112】
ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾールもしくは、N−ビニルキノリンの如き、各種の3級アミノ基含有芳香族ビニル系単量体類;
【0113】
N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(4−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリルアミドまたはN−[2−(メタ)アクリルアミド]エチルモルホリンの如き、各種の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;
【0114】
N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジ−n−プロピルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(3−ジメチルアミノ)プロピルクロトン酸アミドまたはN−(4−ジメチルアミノ)ブチルクロトン酸アミドの如き、各種の3級アミノ基含有クロトン酸アミド類;
【0115】
2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル、3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテルまたは4−ジメチルアミノブチルビニルエーテルの如き、各種の3級アミノ基含有ビニルエーテル類などである。
【0116】
そしてまた、前述した(i)〜(iii)あるいは(v)〜(vii)なる方法に従って、ビニル系重合体(b−3)または(b−4)を調製する際に使用することが出来る、ビニル系単量体(m−1)、ビニル系単量体(m−2)および(m−4)と共重合可能なる其の他のビニル系単量体(m−3)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0117】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレートの如き、C 1 〜C 22 なる炭素数の1級ないしは2級アルキルアルコールと、(メタ)アクリル酸との各種エステル類;
【0118】
ベンジル(メタ)アクリレートもしくは2−フェニルエチル(メタ)アクリレートの如き、各種のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレートもしくはイソボロニル(メタ)アクリレートの如き、各種のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−メトキシエチル(メタ)アクリレートもしくは4−メトキシブチル(メタ)アクリレートの如き、各種のω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0119】
スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンもしくはビニルトルエン の如き、各種の芳香族ビニル系単量体類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニルもしくは安息香酸ビニルの如き、各種のカルボン酸ビニルエステル類;
【0120】
クロトン酸メチルもしくはクロトン酸エチルの如き、各種のクロトン酸のアルキルエステル類;ジメチルマレート、ジ−n−ブチルマレート、ジメチルフマレート、ジ−n−ブチルフマレート、ジメチルイタコネートもしくはジ−n−ブチルイタコネートの如き、各種の不飽和二塩基酸のジアルキルエステル類;
【0121】
(メタ)アクリロニトリルもしくはクロトノニトリルの如き、各種のシアノ基含有単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチエレンもしくはヘキサフルオロプロピレンの如き、各種のフルオロオレフィン類;塩化ビニルもしくは塩化ビニリデンの如き、各種のクロル化オレフィン類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテンもしくは1−ヘキセンの如き、各種のα−オレフィン類;
【0122】
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルもしくはn−ヘキシルビニルエーテルの如き、各種のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルもしくは4−メチルシクロヘキシルビニルエーテルの如き、各種のシクロアルキルビニルエーテル類;
【0123】
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−ビニルピロリドンの如き、3級アミド基含有単量体類などである。
【0124】
以上に掲げられたような種々の単量体を用いて、当該ビニル系重合体(b−3)または(b−4)を調製するには、溶液重合法、非水分散重合法または塊状重合法などのような、公知慣用の種々の重合法を利用し適用することが出来るが、それらのうちでも、特に、有機溶剤中での溶液ラジカル重合法によるのが、最も簡便である。
【0125】
此の溶液ラジカル重合法を適用する際に使用できる重合開始剤としては、勿論ながら、公知慣用の種々の化合物が使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、
【0126】
2,2 ' −アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2 ' −アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)もしくは2,2 ' −アゾビス(2−メチルブチロニトリル)の如き、各種のアゾ化合物類;
【0127】
またはtert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、
【0128】
ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイドもしくはジイソプロピルパーオキシカーボネートの如き、各種の過酸化物類などである。
【0129】
また、溶液ラジカル重合法を適用する際に使用できる有機溶剤としては、公知慣用の有機溶剤のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは、単独使用でも2種類以上の併有でもよいことは、勿論であるが、引き続いて行われるポリシロキサン(a−2) との複合化反応をスムーズに進行させるために、前記した如き各種のアルコール性水酸基を有する有機溶剤を必須成分として含有することが望ましい。
【0130】
かかる有機溶剤のうち、アルコール性水酸基を有するもの以外で、特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタンもしくはシクロオクタンの如き、各種の脂肪族系ないしは脂環式系の炭化水素類;
【0131】
トルエン、キシレンもしくはエチルベンゼンの如き、各種の芳香族炭化水素類;ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチルもしくは酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートまたはエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートもしくはエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートの如き、各種のエステル類;
【0132】
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトンまたはシクロヘキサノンの如き、各種のケトン類;あるいはジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテルまたはジ−n−ブチルエーテルの如き、各種のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、トリクロロエタンまたはテトラクロロエタンの如き、各種の塩素化炭化水素類などであるし、さらには、N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはエチレンカーボネートなどである。
【0133】
ビニル系重合体(b−3)または(b−4)を調製する際に、酸基含有単量体の使用量が多くなると、重合時に、ゲル化が起こることが、屡々あるので、注意を要する。
【0134】
こうしたゲル化を防止するためには、エチルオルソアセテート、エチルオルソ−n−ブチレート、エチルオルソフォーメイト、エチルオルソプロピオネートまたはメチルオルソフォーメイトの如き、各種の加水分解性エステル類を、前掲したような溶剤類と併用すればよい。
【0135】
以上に掲げたような、それぞれ、単量体類、重合開始剤類および有機溶剤類を使用して、公知慣用の溶液ラジカル重合法を適用することによって、目的とする各種のビニル系重合体(b−3)または(b−4)を調製することが出来る。
【0136】
また、ビニル系重合体(b−3)または(b−4)中に導入されるべき加水分解性シリル基量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの加水分解性シリル基のモル数として、大約0.005〜大約3モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルなる範囲内が適切である。
【0137】
約0.005モル未満の場合には、どうしても、本発明の方法により形成される塗膜の耐久性などを低下せしめるようになるし、一方、約3モルを超えて余りにも多くなる場合には、複合樹脂(c−9)〜(c−16)の調製の際に、反応溶液の粘度が上昇するようになり、ひいては、ゲル化が起きてしまうなどの不都合があるので、いずれの場合も好ましくない。
【0138】
したがって、上述したような好ましい量の加水分解性シリル基が導入されるように、それぞれ、加水分解性シリル基含有単量体、加水分解性シリル基含有連鎖移動剤あるいは加水分解性シリル基含有重合開始剤の使用量を、適切に設定する必要がある。
【0139】
また、ビニル系重合体(b−3)または(b−4)中に導入されるべき酸基の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの酸基のモル数として、約0.1〜約10モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.2〜5モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.3〜3モルなる範囲内が適切である。
【0140】
したがって、上述したような好ましい量の酸基が導入されるように、酸基を含有するビニル系単量体の使用量を、適切に設定する必要がある。
【0141】
さらには、ビニル系重合体(b−4)中に導入されるべき、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基を有するビニル系単量体(m−4)のうちの少なくとも1種のビニル系単量体の共重合量としては、ビニル系重合体(b−4)の固形分の1,000グラム当たりの当該官能基のモル数として、約0.1〜約5モルなる範囲内となるような量が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲内が適切である。
【0142】
さらに、これらビニル系重合体(b−3)または(b−4)の数平均分子量としては、大約500〜大約200,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜50,000なる範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜20,000なる範囲内が適切である。
【0143】
これらのビニル系重合体(b−3)または(b−4)の数平均分子量が、約500未満の場合には、どうしても、本発明の方法により形成される硬化塗膜の機械的強度などが劣るようになるし、一方、約200,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明の方法により形成される硬化塗膜の外観が低下したりするので、いずれの場合も好ましくない。
【0144】
ビニル系重合体(b−3)として、重合性不飽和二重結合を有する、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、前記した各種の方法(i)〜(iii)で重合を行うことにより得られる、ビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0145】
ビニル系重合体(b−4)として、重合性不飽和二重結合を有する、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などのような、ビニル系重合体以外の重合体の存在下に、前記した各種の方法(v)〜(vii)で重合を行うことにより得られる、ビニル系重合体セグメントをグラフト化せしめた形の、ポリエステル樹脂またはアルキド樹脂などを使用することも出来る。
【0146】
重合体(b−3)または(b−4)のうちのポリウレタン系重合体を調製するには、各種のジヒドロキシ化合物および各種のジイソシアネート化合物に加えて、加水分解性シリル基を導入するための原料成分として、加水分解性シリル基を有するジアミン化合物または加水分解性シリル基を有するモノアミン化合物を使用し、さらに、酸基を導入するための原料成分としての、ジメチロールプロピオン酸もしくはジメチロールブタン酸の如き酸基と炭素原子に結合した水酸基を併有する化合物等の公知慣用の種々の原料成分を使用して、特開昭51−90391号公報、特開昭55−73729号公報または特開昭60−255817号公報に記述されている方法を適用すればよい。
【0147】
さらに、重合体(b−4)のうちのポリウレタン系重合体を調製するには、前記したポリウレタン系重合体(b−3)を調製する際に使用されるものとして既に掲げたような公知慣用の各種の原料類に加えて、前記した官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基を有 し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有するような種々の化合物を原料成分として使用して、公知慣用の種々の方法を適用すればよい。
【0148】
ポリウレタン系重合体(b−4)を調製する際に使用される、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基を有し、しかも、イソシアネート基と反応する活性水素を有する基を、1個または2個、有する化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、グリシドール、2−ヒドロキシエチルカーバメートもしくは2−ヒドロキシプロピルカーバメートの如き、各種の官能基と炭素原子に結合した水酸基とを併有する化合物などである。
【0149】
前述したような方法で以て調製されるポリウレタン系重合体(b−3)または(b−4)中に導入されるべき加水分解性シリル基の量としては、それぞれの重合体の固形分1,000グラム当たり、大約0.005〜大約3モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.01〜2モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.05〜1モルなる範囲内が適切である。
【0150】
約0.005モル未満の場合には、どうしても、ポリウレタン系重合体(b−3)または(b−4)と、ポリシロキサン(a−2)との間の複合化反応が進行しずらくなり、ひいては、本発明の方法により形成される硬化塗膜の耐久性などが低下するようになるし、一方、約3モルを超えて余りにも多くなる場合には、前記した複合化反応時の溶液粘度が上昇し、ひいては、ゲル化を惹起してしまうようになるなどの不都合が認められるようにもなるので、いずれの場合も好ましくない。
【0151】
また、ポリウレタン系重合体(b−3)または(b−4)中に導入されるべき酸基の量としては、それぞれの重合体の固形分の1,000グラム当たりの酸基のモル数として、約0.1〜約10モルなる範囲内が適切であるし、好ましくは、0.2〜5モルなる範囲内が適切であるし、最も好ましくは、0.3〜3モルなる範囲内が適切である。
【0152】
さらには、ポリウレタン系重合体(b−4)中に導入されるべき、それぞれ、炭素原子に結合した水酸基、ブロック水酸基、3級アミノ基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または前掲した構造式(S−III)で示される官能基などによって代表される、官能基(Fu)のうちの酸基以外の官能基の導入量としては、ポリウレタン系重合体(b−4)の固形分の1,000グラム当たりの官能基のモル数として、約0.1〜約5モルなる範囲内が適切であり、好ましくは、0.2〜3モルなる範囲内が適切であるし、さらに一層好ましくは、0.3〜2モルなる範囲内が適切である。
【0153】
また、ポリウレタン系重合体(b−3)または(b−4)の数平均分子量としては、大約500〜大約100,000なる範囲内が、好ましくは、1,000〜50,000なる範囲内が適切であるし、一層好ましくは、1,500〜30,000なる範囲内が適切である。
【0154】
ポリウレタン系重合体(b−3)または(b−4)の数平均分子量が、約500未満の場合には、どうしても、本発明の方法により形成される硬化塗膜の機械的強度などが劣るようになるし、一方、約100,000を超えて余りにも高くなる場合には、どうしても、本発明の方法により形成される硬化塗膜の外観が低下したりするようになるので、いずれの場合も好ましくない。
【0155】
次いで、複合樹脂(c−9)〜(c−16)のもう一方の構成成分である、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサン(a−2)について述べる。
【0156】
こうしたポリシロキサン(a−2)として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、アリール基もしくはシクロアルキル基の少なくとも1個と、加水分解性基の少なくとも2個とが共に結合した珪素原子を、一分子に少なくとも1個、有するような珪素化合物を加水分解縮合せしめることによって調製される、当該珪素化合物の加水分解縮合物、あるいは斯かる珪素化合物を部分加水分解縮合せしめることによって調製される、当該珪素化合物の部分加水分解縮合物などである。
【0157】
前記した如き、ポリシロキサン(a−2)を調製する際に使用される、アリール基もしくはシクロアルキル基の少なくとも1個と、加水分解性基の少なくとも2個とが共に結合した珪素原子を、一分子に少なくとも1個、有する珪素化合物としては、公知慣用の種々の化合物が、いずれも、使用できるけれども、それらのうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、次のような一般式(S−IX)
R8R9SiR10 3−c (S−IX)
(ただし、式中のR8は、アリール基もしくはシクロアルキル基を、R9は、置換基を有していてもいなくもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基お よびアルケニル基よりなる群から選ばれる、少なくとも一種の一価の有機基を、R10は水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、置換アルコキシ基、アシロキシ基、フェノキシ基、メルカプト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、イミノオキシ基またはアルケニルオキシ基の如き加水分解性基を表わすものとし、また、cは0または1なる整数であるものとする。)
【0158】
で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の混合物の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物;
【0159】
あるいは
【0160】
【化13】
【0161】
または
【0162】
【化14】
【0163】
などのような、アリール基の少なくとも1個と、加水分解性基の少なくとも2個とが共に結合した珪素原子を、一分子中に2個以上、有する珪素化合物などである。
【0164】
前掲したような一般式(S−IX)で示される珪素化合物として特に代表的なるもののみを例示するにとどめれば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランもしくはフェニルトリブトキシシランの如き、各種のフェニルトリアルコキシシラン類;メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシランもしくはエチルフェニルジエトキシシランの如き、各種のアルキルフェニルジアルコキシシシラン類;ジフェニルジメトキシシランもしくはジフェニルジエトキシシランの如き、各種のジフェニルジアルコキシシラン類;
【0165】
シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシランもしくはシクロヘキシルトリエトキシシランの如き、各種のシクロアルキルトリアルコキシシラン類;シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシランもしくはシクロヘキシルエチルジエトキシシランの如き、各種のアルキルシクロアルキルジアルコキシシラン類;ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシランもしくはジシクロヘキシルジエトキシシランの如き、各種のジシクロアルキルジアルコキシシラン類;
【0166】
フェニルトリクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、エチルフェニルジクロロシランもしくはジフェニルジクロロシランの如き、各種のモノフェニル−ないしはジフェニルクロロシラン類;シクロペンチルトリクロロシシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロペンチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ジシクロペンチルジクロロシランもしくはジシクロヘキシルジクロロシランの如き、各種のモノシクロアルキル−ないしはジシクロアルキルクロロシラン類;
【0167】
フェニルトリアセトキシシラン、メチルフェニルジアセトキシシラン、エチルフェニルジアセトキシシランもしくはジフェニルジアセトキシシランの如き、各種のモノフェニル−ないしはジフェニルアセトキシシラン類;またはシクロペンチルトリアセトキシシラン、シクロヘキシルトリアセトキシシラン、シクロペンチルメチルジアセトキシシラン、シクロヘキシルメチルジアセトキシシラン、ジシクロペンチルジアセトキシシランもしくはジシクロヘキシルジアセトキシシランの如き、各種のモノシクロアルキル−ないしはジシクロアルキルアセトキシシラン類などである。
【0168】
これらのアリール基と加水分解性基を有する珪素化合物のうちで、ポリシロキサン(a−2)を調製する際に使用される化合物として特に望ましいもののみを例示するにとどめれば、フェニルトリアルコキシシラン、アルキルフェニルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシラン、シクロヘキシルトリアルコキシシラン、アルキルシクロヘキシルジアルコキシシラン、ジシクロヘキシルジアルコキシシラン、フェニルトリクロロシラン、アルキルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、アルキルシクロヘキシルジクロロシランもしくはジシクロヘキシルジクロロシラン、それらの部分加水分解縮合物または其れらの部分共加水分解縮合物などである。
【0169】
斯かるポリシロキサン(a−2)を調製するに際して、前掲したような各種の珪素化合物に加えて、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシランまたはトリフェニルクロロシランのような、一分子中に珪素原子に結合した加水分解性基を1個のみ有する、いわゆる1官能性の珪素化合物、あるいはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランもしくはメチルトリ−n−ブトキシシランの如きアリール基もしくはシクロアルキル基を有しない3官能性の珪素化合物、さらには、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランもしくはジメチルジ−n−ブトキシシランの如きアリール基もしくはシクロアルキル基を有しない2官能性の珪素化合物、をも併用することが出来る。
【0170】
前記したような各種の珪素化合物を加水分解縮合ないしは部分加水分解縮合せしめることによって、ポリシロキサン(a−2)として使用される加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物を得ることが出来るが、その際に、触媒を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、これらの縮合反応を容易に進行させる上からは、触媒を使用することが望ましい。
【0171】
ここにおいて、触媒を使用する場合には、公知慣用の触媒のいずれをも使用することが出来るし、しかも、それらは単独使用でも、2種類以上の併用でもよいことは、勿論である。
【0172】
かかる触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、塩酸、硫酸または燐酸の如き、各種の無機酸類;p−トルエンスルホン酸、燐酸モノイソプロピルまたは酢酸の如き、各種の有機酸類;
【0173】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの如き、各種の無機塩基類;テトライソプロピルチタネートまたはテトラブチルチタネートの如き、各種のチタン酸エステル類;ジブチル錫ジラウレートまたはオクチル酸錫の如き、各種の錫カルボン酸塩類;
【0174】
鉄、コバルト、マンガンまたは亜鉛の如き、各種の金属のナフテン酸塩あるいはオクチル酸塩の如き金属カルボン酸塩類;アルミニウムトリスアセチルアセトネートの如き、各種のアルミニウム化合物;
【0175】
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリ−n−ブチルアミンもしくはジメチルベンジルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、
【0176】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾールもしくは1,4−ジエチルイミダゾールの如き、各種のアミン化合物類;
【0177】
テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)アンモニウム塩、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム塩、テトラキス(ヒドロキシルメチル)アンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩もしくはo−トリフルオロメチルフェニルトリメチルアンモニウム塩の如き、各種の4級アンモニウム塩類であって、
【0178】
さらには、代表的なる対アニオンとして、それぞれ、クロライド、ブロマイド、カルボキシレートもしくはハイドロオキサイドなどを有する4級アンモニウム塩類などである。
【0179】
使用される触媒量としては、加水分解もしくは部分加水分解に供される珪素化合物に対して、約0.0001〜約10重量%なる範囲内が、好ましくは、0.0005〜3重量%なる範囲内が、特に好ましくは、0.0005〜1重量%なる範囲内が適切である。
【0180】
また、前記反応に用いられる水の量としては、かかる珪素化合物の珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、約0.05モル以上が、好ましくは、0.1モル以上が適切であるし、さらに好ましくは、0.2モル以上が適切である。
【0181】
0.05モル未満の場合には、どうしても、加水分解の速度が著しく遅くなってしまい、実用上、好ましくないけれども、此の水の量が、5モルとか、10モルとか、珪素原子に結合している加水分解性基の1モルに対して、大過剰となるように使用することは、一向に、支障が無い。
【0182】
そして、これらの触媒および水の添加は、一括添加でも、分割添加でもよく、また、触媒と水を混合した形で以て添加しても、あるいは別々に、添加してもよいことは、勿論である。
【0183】
かかる反応の反応温度としては、0℃〜150℃程度が適切であり、好ましくは、20℃〜100℃が適切であるし、一方、これらの反応の圧力としては、常圧、加圧または減圧下の、いずれの条件においても行うことが出来る。
【0184】
そして、かかる反応の副生成物である、それぞれ、アルコールや水などが、引き続いて行われる、ポリシロキサン(a−2)と重合体(b−3)または(b−4)の複合化工程や、得られる水性樹脂の安定性などに対して問題を起こすようであれば、蒸留などの手段によって、系外に除くことが出来るし、問題が無ければ、そのまま、系内に存在させておいて、一向に、支障は無い。
【0185】
また、かかる反応に際しては、公知慣用の種々の有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいけれども、引き続いて行われる重合体(b−3)または(b−4)との複合化工程をスムーズに進行させるために、前掲した如き各種のアルコール性水酸基を有する有機溶剤を必須成分として含有する媒体を使用することが望ましい。
【0186】
そして、かかるアルコール性水酸基を有する有機溶剤を必須成分として含有する媒体を使用して、ポリシロキサン(a−2)を調製する際には、珪素原子に結合した加水分解性基を、一分子中に少なくとも3個、有する珪素化合物の、前記有機溶剤中における濃度としては、5重量%程度以上にすることが望ましい。
【0187】
また、当該ポリシロキサン(a−2)としては、上述した如く調製したものを使用してもよいし、市販のポリシロキサンを使用することもできる。
【0188】
かかる市販のポリシロキサンとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、水酸基もしくはメトキシ基に加えてフェニル基が結合した珪素原子を有するポリシロキサンとして市販されている、「TSR−160もしくは165」[東芝シリコーン(株)製の商品名]もしくは「SH−6018」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の商品名]などで以て代表されるような、線状、環状あるいは分岐状の構造を有する、加水分解縮合物ないしは部分加水分解縮合物などである。
【0189】
次いで、複合樹脂(C−3)または(C−4)のうち、アニオン性基を有するタイプの調製方法である、前記した(5)〜(8)なる方法について詳細に述べることにする。
【0190】
まず、はじめに、(5)なる方法で複合樹脂(C−3)または(C−4)を調製するには、重合体(b−3)または重合体(b−4)と、ポリシロキサン(a−2)とを縮合反応せしめて複合樹脂(c−9)または(c−10)を調製し、ついで、該複合樹脂中に含まれる酸基を、塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめればよい。
【0191】
前記した(6)なる方法によって、複合樹脂(C−3)または(C−4)を調製するには、重合体(b−3)または(b−4)の存在下、前記したポリシロキサン(a−2)を調製する過程で、重合体(b−3)または(b−4)とポリシロキサン(a−2)を複合 化せしめて複合樹脂(c−11)または(c−12)を調製し、ついで、該複合樹脂中に含まれる酸基を、塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめればよい。
【0192】
前記した(7)なる方法で、複合樹脂(C−3)または(C−4)を調製するには、前記したポリシロキサン(a−2)の存在下に、前記した重合体(b−3)または(b−4)を調製する反応を行なう過程で、ポリシロキサン(a−2)と重合体(b−3)または(b−4)を複合化せしめて複合樹脂(c−13)または(c−14)を調製し、ついで、該複合樹脂中に含まれる酸基を、塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめればよい。
【0193】
前記した(8)なる方法で、複合樹脂(C−3)または(C−4)を調製するには、前記した重合体(b−3)または(b−4)を調製する反応と、前記したポリシロキサン(a−2)を調製する反応を並行した行う過程で、重合体(b−3)または(b−4)とポリシロキサン(a−2)を複合化せしめて複合樹脂(c−15)または(c−16)を調製し、ついで、該複合樹脂中に含まれる酸基を、塩基性化合物で以て部分中和ないしは完全中和せしめればよい。
【0194】
(5)〜(8)なる方法により、複合樹脂(c−9)〜(c−16)のそれぞれを調製する場合の重合体(b−3)または(b−4)と、ポリシロキサン(a−2)との使用割合は、得られる複合樹脂(C−3)または(C−4)における重合体セグメント(B−1)もしくは(B−2)とポリシロキサンセグメント(A−2)との比率が、上述した如き好ましい範囲内となるように設定すればよい。
【0195】
さらに亦、(7)または(8)なる方法のうち、重合体(b−3)または(b−4)を調製するための条件、あるいは(b−3)または(b−4)の目標性状としては、(b−3)または(b−4)の調製方法として、既に記載した条件あるいは性状と合致するものでなければならない。
【0196】
さらに、(5)〜(8)なる方法のうち、複合樹脂(c−9)〜(c−16)の調製に際しては、有機溶剤を使用してもよいし、使用しなくてもよいが、撹拌などが容易に行なえるようにするためには、ビニル系重合体(b−3)を調製する際に使用できるものとして既に掲げたような、種々の有機溶剤類を使用することが望ましい。
【0197】
(5)〜(8)なる方法のうち、複合樹脂(c−9)〜(c−16)の調製に際しては、各成分の合計濃度を、該反応により生成する複合樹脂(c−9)〜(c−16)のそれぞれの、複合化反応終了時点での、濃度として、5重量%程度以上に、好ましくは、10重量%以上に、さらに好ましくは、20重量%以上になるように設定することが望ましい。そして、この濃度の調整は、前掲したような各種の有機溶剤類で以て行なうことが出来る。
【0198】
上述のようにして、複合樹脂(C−3)または(C−4)のうち、アニオン性基を有するタイプを調製することが出来るが、かかる複合樹脂中に含まれる有機溶剤類は、除去せずとも、そのままで、前記した、メチル基を有する3官能性のシラン化合物を必須の原料成分として使用し調製された珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を有するポリシロキサン(p)と混合せしめることができるし、また、ポリシロキサン(p)との混合に先立ち、蒸留操作などによって除去することも出来る。
【0199】
このようにして得られる複合樹脂(C−3)または(C−4)と、メチル基を有する3官能性のシラン化合物を必須の原料成分として使用し調製された珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基を有するポリシロキサン(p)と混合せしめ、さらに必要に応じて縮合せしめたのち、水に分散ないしは溶解せしめることによって、水性樹脂(W−3)または(W−4)が調製される。
【0200】
そして、その際に使用されるポリシロキサン(p)として、メチルトリアルコキシシラン、メチルトリクロロシランあるいはメチルトリアセトキシシランの如き有機基としてメチル基を有する3官能性のシラン化合物を必須の原料成分として使用し調製されたものを用いるため、本発明の塗膜の形成方法を実施する際に使用される、硬化性クリヤー塗料(I)の硬化性とか、本発明の方法による形成される硬化塗膜の耐久性等に特に優れるという効果を奏することができる。
【0201】
そして、かかるポリシロキサン(p)において、全珪素原子に占める、メチル基が結合した3官能性のシランに由来する珪素原子の割合としては、20モル%以上が好ましく、そして30モル%以上がより好ましく、さらには50モル%以上が特に好ましい。
【0202】
上述したようなポリシロキサン(p)と、前記した複合樹脂(C−3)または(C−4)との混合物を、あるいは、さらに必要に応じて(p)と、(C−3)または(C−4)とを縮合せしめることにより得られる、(p)中の珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基の一部分と(C−3)または(C−4)中の珪素原子に結合した加水分解性基および/または珪素原子に結合した水酸基の一部分が脱水縮合した形の縮合反応生成物を、水に分散ないしは溶解せしめることにより、水性樹脂(W−3)または(W−4)が得られる。
【0203】
複合樹脂(C−3)または(C−4)とポリシロキサン(p)との混合物もしくは縮合反応生成物から、水性樹脂(W−3)または(W−4)を調製するには、公知慣用の種々の方法を適用することが出来る。たとえば、該混合物もしくは該縮合反応生成物に、水あるいは水と水溶性有機溶剤の混合物を添加せしめるか、あるいは該混合物もしくは該縮合反応生成物を、水あるいは水と水溶性有機溶剤の混合物に加えて水性媒体中に分散せしめるか、あるいは溶解せしめることによって、目的とする水性樹脂(W−3)または(W−4)を製造することが出来る。
【0204】
また、必要に応じて、このようにして調製される水性樹脂(W−3)または(W−4)に含まれる有機溶剤を、加熱および/または減圧によって、部分的に、あるいは完全に除去せしめることによって、有機溶剤の含有率が低い、あるいは有機溶剤を含有しない水性樹脂(W−3)または(W−4)を調製することが出来る。
【0205】
上述のようにして、アニオン性基を含有する水性樹脂(W−3)〜(W−4)を調製することが出来るが、上述した(5)〜(8)なる各種の方法において、重合体(b−2)〜(b−4)に酸基に代えて、塩基性基を導入し、且つ、中和剤として、塩基性化合物に代えて酸性化合物を使用することにより、カチオン性基を含有する水性樹脂(W−3)〜(W−4)を調製することが出来る。
【0206】
さらに、上述した(5)〜(8)なる各種の方法において、親水性基として、中和された酸基に代えて、ノニオン性基であるポリエーテル鎖を導入することにより、ノニオン性基を含有する水性樹脂(W−3)〜(W−4)を調製することが出来る。
【0207】
さらに、上記したアニオン性基またはカチオン性基を含有する水性樹脂を調製する方法とノニオン性基を導入する方法を組み合わせることにより、アニオン性基またはカチオン性基とノニオン性基とを併有する重合体を調製することが出来る。
【0208】
上述のようにして調製される水性樹脂(W−3)中に含まれる官能基としては、複合樹脂(C−3)と、ポリシロキサン(p)との両方に由来する、珪素原子に結合した水酸基ならびに場合により含有される珪素原子に結合した加水分解性基があり、加えて、(C−3)に由来する、塩基性化合物により中和された酸基または酸性化合物により中和された塩基性基ならびに場合によっては含有される遊離の酸基または遊離の塩基性基である。
【0209】
水性樹脂(W−4)中に含まれる官能基としては、複合樹脂(C−4)と、ポリシロキサン(p)との両方に由来する、珪素原子に結合した水酸基ならびに場合によっては含有される珪素原子に結合した加水分解性基があり、(C−4)に由来する塩基性基により中和された酸基または酸性化合物により中和された塩基性基ならびに場合によっては含有される遊離の酸基または遊離の塩基性基があり、さらに、これら以外の官能基として、複合樹脂(C−4)に由来する、炭素原子に結合した水酸基、ブロック水酸基、シクロカーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基または構造式(S−III)で示されるような官能基(Fu)の、少なくとも1種のものである。
【0210】
水性樹脂(W−3)〜(W−4)を調製する際に、重合体(b−3)〜(b−4)のそれぞれにアニオン性基の前駆官能基として、ブロックした酸基あるいは酸無水基を導入した場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)を調製する過程で、それらのうちの、少なくとも一部分を、アニオン性基である中和された酸基に変換する必要がある。
【0211】
また、水性樹脂(W−4)を調製する際に、官能基(Fu)として、ブロックした酸基あるいは酸無水基を重合体セグメント(B−2)に導入しようとする場合には、斯かるブロックした酸基あるいは酸無水基のうちの少なくとも一部分は、複合樹脂(C−4)の合成段階で以て、さらには、これらを水に分散ないしは溶解する段階で以て、加水分解、熱分解あるいはアルコリシスなどによって、遊離の酸基に変換される可能性がある。
【0212】
さらに、水性樹脂(W−4)を調製する際に、官能基(Fu)として、ブロック水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基を重合体セグメント(B−2)に導入しようとする場合には、複合樹脂(C−4)の合成段階で以て、さらには、これらを水に分散ないしは溶解する段階で以て、これらの官能基の少なくとも一部分は、加水分解あるいはアルコリシスなどによって、遊離の水酸基に変換されることもある。
【0213】
そして、斯かるブロック水酸基、エポキシ基またはシクロカーボネート基の種類とか、あるいは前述した複合化反応の条件、後述する(D)との混合の条件、あるいは、引き続き行われる、水への分散ないしは溶解の条件などによっては、斯かる各種の官能基は、完全に、遊離の水酸基に変換されることもある。
【0214】
このようにして調製される水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれから、本発明の塗膜の形成方法を実施する際に使用される、硬化性クリヤー塗料(I)を調製するには、一つには、(W−3)〜(W−4)のそれぞれは、それ自体で、自己硬化性を有する処から、(W−3)〜(W−4)のそれぞれを必須の成分として含有する自己硬化性のクリヤー塗料とすればよいし、
【0215】
二つには、(W−3)〜(W−4)のそれぞれに対して、さらに、前記した水性樹脂(W−3)〜(W−4)に含有される官能基と反応する官能基を有する化合物(D)を配合せしめることによって、(W−3)〜(W−4)のそれぞれに含まれる官能基と、化合物(D)中に含まれる官能基との間の、架橋反応をも利用する硬化性のクリヤー塗料とすればよい。
【0216】
後者の形の硬化性クリヤー塗料(I)の調製に際して使用されるこの化合物(D)とは、前述した水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれる、前述のような各種の官能基と反応する官能基を少なくとも1種有する、公知慣用の種々の化合物を指称するものであり、こうした官能基として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、イソシアネート基、ブロックされたイソシアネート基、炭素原子に結合した水酸基、ブロック水酸基、カルボキシル基、ブロックカルボキシル基、カルボン酸無水基、アミノ基、シクロカーボネート基、鎖状カーボネート基、エポキシ基、1級アミド基、2級アミド基、カーバメート基、オキサゾリン基、N−ヒドロキシメチルアミノ基、N−アルコキシメチルアミノ基、カルボニル基、アセトアセチル基、シラノール基、珪素原子に結合した加水分解性基または次の構造式(S−V)
−C(O)−NH−CH(OR2)−COOR3 (S−V)
(ただし、式中のR2は水素原子、炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとし、また、R3は炭素数が1〜8なるアルキル基またはアリール基を表わすものとする。)で示されるような官能基などである。
【0217】
そして、当該化合物(D)中に含まれる官能基は、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれる官能基の種類に応じて、適宜、選択される。そうした組み合わせとして特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シラノール基−シラノール基、シラノール基−アルコキシシリル基、アルコキシシリル基−アルコキシシリル基、カルボキシル基−エポキシ基、カルボキシル基−シクロカーボネート基、3級アミノ基−エポキシ基、炭素原子に結合した水酸基−N−ヒドロキシメチルアミノ基、炭素原子に結合した水酸基−イソシアネート基または炭素原子に結合した水酸基−ブロックイソシアネート基などである。
【0218】
当該化合物(D)としては、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれる官能基によっては、前述したような種々の官能基のうちの2種以上を有するものであってもよい。また、当該化合物(D)としては、比較的、分子量の低い化合物に加えて、各種の樹脂類を使用することも出来るが、このような樹脂類として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、アクリル樹脂またはフッ素樹脂の如き、各種のビニル系重合体などをはじめ、さらには、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などである。そして、当該化合物(D)として、特に、前記した官能基を2種以上有するような化合物を使用する際には、当該化合物(D)としては、特に、ビニル系重合体を使用するのが簡便である。
【0219】
かかる化合物(D)として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にアミノ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリアジリジン化合物、ポリアクリレート化合物、ポリカーボジイミド化合物、ブロック水酸基を有する化合物、ポリアミン化合物、少なくとも2個のカルボン酸無水基を有する化合物またはポリオキサゾリン化合物などであり、これらの諸々の化合物類は、単独使用であってもよいし、2種以上の併用であってもよいことは、勿論、可能である。
【0220】
これらのうちでも特に望ましいものとしては、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物などが挙げられる。
【0221】
前記した、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する珪素化合物のうちでも特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような一般式(S−VIII)とか一般式(S−IX)で以て示される珪素化合物;これらの珪素化合物の加水分解物あるいは加水分解縮合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;または此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物などである。
【0222】
これらのうちでも、当該珪素化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、テトラメトキシシランおよびテトラエトキシシラン、それらの部分加水分解縮合物、それらの部分共加水分解縮合物または珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する、線状、分岐状ないしは環状の、あるいはラダー状のシリコーン樹脂などである。
【0223】
前記した、一分子中に、それぞれ、イソシアネート基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめることにするならば、
【0224】
3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシランまたは3−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;
【0225】
あるいは前掲したような、加水分解性シリル基含有ビニル系単量体と、後掲するような、イソシアネート基含有ビニル系単量体とからなる種々の共重合体または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系のような種々のビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、イソシアネート基と加水分解性シリル基とを併有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような種々のビニル系共重合体類などである。
【0226】
前記した、一分子中に、それぞれ、エポキシ基と、珪素原子に結合した加水分解性基とを併せ有する化合物として特に代表的なる化合物のみを例示するにとどめれば、
【0227】
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランまたは3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランの如き、珪素化合物;これらの珪素化合物の1種の部分加水分解縮合によって得られる部分加水分解縮合物;あるいは此等の珪素化合物の2種以上の部分加水分解縮合によって得られる部分共加水分解縮合物;
【0228】
「EGM−202」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、珪素原子に結合したメトキシ基と、3−グリシドキシプロピルとを併有する、環状のポリシロキサンの商品名];「KP−392」[信越化学(株)製の、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物の商品名];
【0229】
あるいは亦、前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体と、同じく、前掲したような各種の加水分解性シリル基含有ビニル系単量体とからなる種々の共重合体または此等の両単量体を、該両単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系ないしはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、エポキシ基と加水分解性シリル基とを併有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体の如き、種々のビニル系共重合体類などである。
【0230】
前記したポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、トリレンジイソシアネートまたはジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートの如き、各種の芳香族ジイソシアネート類;
【0231】
メタ−キシリレンジイソシアネートまたはα、α,α′,α′−テトラメチル−メタ−キシリレンジイソシアネートの如き、各種のアラルキルジイソシアネート類;
【0232】
ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、1,3−ビスイソシアナートメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナートシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナートシクロヘキサンまたはイソホロンジイソシアネートの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ジイソシアネート類;
【0233】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を、多価アルコール類と付加反応せしめることによって得られる、イソシアネート基を有する各種のプレポリマー類であるとか、
【0234】
前掲したような各種のポリイソシアネート類を環化三量化せしめることによって得られる、イソシアヌレート環を有する各種のプレポリマー類;
【0235】
前掲したような各種のポリイソシアネート類と、水とを反応せしめることによって得られる、ビウレット構造を有する各種のポリイソシアネート類;
【0236】
さらには、2−イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートまたは(メタ)アクリロイルイソシアネートの如き、各種の、イソシアネート基を有するビニル単量体の単独重合体;
【0237】
または此等のイソシアネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族、ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、
【0238】
それぞれ、イソシアネート基含有アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0239】
そして、かかるポリイソシアネートのうちにあって、特に、耐候性などの面からは、脂肪族、アラルキル系ないしは脂環式ジイソシアネート化合物、それらの各種のジイソシアネート化合物から誘導される、種々のタイプのプレポリマーあるいはイソシアネート基含有ビニル系重合体などの使用が、特に望ましい。
【0240】
前記したブロック・ポリイソシアネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリイソシアネート化合物を、後掲するような種々のブロック剤で以てブロック化せしめることによって得られる種々のブロックポリイソシアネート化合物や、
【0241】
イソシアネート基を環化二量化せしめることによって得られる種々のウレトジオン構造を含む化合物のように、熱によって、イソシアネート基が再生するという部類の化合物などである。
【0242】
そして、ブロック・ポリイソシアネート化合物を調製する際に使用されるブロック剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、メタノール、エタノール、ベンジルアルコールまたは乳酸エステルの如き、各種のアルコール類;
【0243】
フェノール、サリチル酸エステルまたはクレゾールの如き、各種のフェノール性水酸基含有化合物類;またはε−カプロラクタム、2−ピロリドンまたはアセトアニリドの如き、各種のアマイド類;
【0244】
あるいはアセトンオキシムまたはメチルエチルケトオキシムの如き、各種のオキシム類などであるし、さらには、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチルまたはアセチルアセトンの如き、各種の活性メチレン化合物類などである。
【0245】
前記したポリエポキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたは水添ビスフェノールAの如き、各種の脂肪族ないしは脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル類;
【0246】
ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールSまたはビスフェノールFの如き、各種の芳香族系ジオールのポリグリシジルエーテル類;上掲したような芳香族系ジオール類のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加体の如き、該芳香族系ジオール誘導体類のジグリシジルエーテル類;
【0247】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールの如き、各種のポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トのポリグリシジルエーテル類;アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、プロパントリカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸またはトリメリット酸の如き、各種の脂肪族ないしは芳香族ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル類;
【0248】
ブタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン、ドデカジエン、シクロオクタジエン、α−ピネンまたはビニルシクロヘキセンの如き、各種の炭化水素系ジエン類のビスエポキシド類;ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートまたは3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートの如き、各種の脂環式ポリエポキシ化合物;あるいはポリブタジエンまたはポリイソプレンの如き、各種のジエンポリマーのエポキシ化物;
【0249】
「デナコールEX−612」[ナガセ化成工業(株)製の、ソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名];「EGM−400」[東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、3−グリシドキシプロピルを有する、環状のポリシロキサンの商品名];
【0250】
あるいは亦、前掲したような各種のエポキシ基含有ビニル単量体の種々の単独重合体または此等のエポキシ基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系もしくはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られるような、それぞれ、エポキシ基を有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、ビニル系共重合体類などである。
【0251】
ポリシクロカーボネート化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような各種のポリエポキシ化合物を、たとえば、触媒の存在下に、二酸化炭素と反応せしめて、このエポキシ基を、シクロカーボネート基に変換することによって得られる5員環シクロカーボネート基含有ポリシクロカーボネート化合物;あるいは前掲したような各種のシクロカーボネート基含有ビニル単量体の単独重合体
【0252】
または此等のシクロカーボネート基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、それぞれ、シクロカーボネート基を有する、アクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、ビニル系共重合体類などである。
【0253】
続いて、前記したアミノ樹脂として特に代表的なるもののみを例示するにとどめるならば、
【0254】
メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、尿素またはグリコウリルの如き、各種のアミノ基含有化合物を、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドの如き、各種のアルデヒド化合物(ないしはアルデヒド供給物質)と反応せしめることによって得られるアルキロール基を有する種々のアミノ樹脂;
【0255】
あるいは斯かるアルキロール基を有するアミノ樹脂を、メタノール、エタノール、n−ブタノールまたはi−ブタノール(イソブタノール)の如き、各種の低級アルコールと反応せしめることによって得られる、種々のアルコキシアルキル基含有アミノ樹脂などである。
【0256】
また、1級ないしは2級アミド基含有化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前述したビニル系重合体(b−4)を調製する際に使用される、官能基(Fu)を含有するビニル系単量体(m−4)の一部として、すでに、例示しているような、1級ないしは2級アミド基を有する、種々のビニル系単量体の単独重合体
【0257】
または此等の1級ないしは2級アミド基含有ビニル系単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、1級ないしは2級アミド基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0258】
さらに、ポリカルボキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、タルトロン酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸などのような低分子量の化合物などであるし、さらには、
【0259】
ビニル系重合体(b−3)の調製の際に使用される、酸基含有ビニル系単量体の一部として、既に例示しているような、カルボキシル基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体
【0260】
または此等のカルボキシル基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、カルボキシル基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0261】
前記したポリヒドロキシ化合物として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールまたはグリセリンなどのような種々の低分子化合物などであり、また、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールなどをはじめ、さらには、ビニル系重合体(b−4)を調製する際に使用される、官能基(Fu)を有するビニル系単量体(m−4)の一部として、すでに、例示しているような、炭素原子に結合した水酸基を有する、種々のビニル単量体の単独重合体
【0262】
または此等の炭素原子に結合した水酸基含有ビニル単量体を、該単量体と共重合可能なる、それぞれ、(メタ)アクリル系、ビニルエステル系、ビニルエーテル系、芳香族ビニル系またはフルオロオレフィン系ビニル単量体類などと共重合せしめることによって得られる、炭素原子に結合した水酸基を有する、各種のアクリル系共重合体、ビニルエステル系共重合体またはフルオロオレフィン系共重合体のような、種々のビニル系共重合体類などである。
【0263】
化合物(D)を、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれに配合せしめる際、この化合物(D)が、それ自体、水溶性のものであったり、水分散体であったり、或る程度の親水性を有するようなものであったりする場合には、当該化合物(D)が、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に、均一に溶解ないしは均一に分散した形の組成物を得ることが出来る。
【0264】
しかしながら、当該化合物(D)の親水性が低い場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれと混合せしめようとしても、均一に溶解ないしは分散した形の組成物を得ることは出来ないようになるが、このような場合には、公知慣用の種々の方法によって、当該化合物(D)中に、いわゆる親水性基などを導入せしめることによって、当該化合物(D)それ自体の親水性を向上せしめ、均一なる形の組成物を得ることが出来る。
【0265】
当該化合物(D)が重合体である場合には、当該化合物(D)としては、無溶剤液状物、有機溶剤溶液、水溶液または水分散体のいずれの形態であっても使用することができる。そして、当該化合物(D)それ自体がビニル重合体である場合には、エマルジョン重合体として使用するのも好適である。
【0266】
前記した水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれと、当該化合物(D)とから成る水性硬化性樹脂組成物を調製するには、当該化合物(D)それ自体が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの固形分の100重量部に対して、当該化合物(D)の固形分量が、約0.1〜約200重量部の範囲内、好ましくは、0.5〜150重量部の範囲内、一層好ましくは、1〜100重量部の範囲内となるように配合すればよい。
【0267】
また、当該化合物(D)が、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物またはブロックポリイソシアネート化合物である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれる、それぞれ、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0268】
当該化合物(D)中に含まれる、それぞれ、イソシアネート基またはブロックイソシアネート基の量が約0.1〜約10当量の範囲内、好ましくは、0.3〜5当量の範囲内、一層好ましくは、0.5〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(D)を配合すればよい。
【0269】
また、当該化合物(D)が、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリエポキシ化合物あるいはポリシクロカーボネート化合物である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれる、それぞれ、エポキシ基またはシクロカーボネート基と反応する官能基の1当量に対して、
【0270】
当該化合物(D)中に含まれるエポキシ基量および/またはシクロカーボネート基量の合計量が、約0.2〜約5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(D)を配合すればよい。
【0271】
続いて、当該化合物(D)が、特に、アミノ樹脂である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの固形分の100重量部に対して、化合物(D)の固形分量が、約5〜約200重量部の範囲内、好ましくは、10〜150重量部の範囲内、一層好ましくは、15〜100重量部の範囲内となるように配合すればよい。
【0272】
また、当該化合物(D)が、特に、1級ないしは2級アミド基を有する化合物である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれる1級ないしは2級アミド基と反応する官能基の1当量に対して、
【0273】
当該化合物(D)中に含まれる1級ないしは2級アミド基量が、約0.2〜約5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、化合物(D)を配合すればよい。
【0274】
さらに、当該化合物(D)が、特に、ポリカルボキシ化合物である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれの中に含まれるカルボキシル基と反応する官能基の1当量に対して、
【0275】
当該化合物(D)中に含まれるカルボキシル基量が、約0.2〜約5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、当該化合物(D)を配合すればよい。
【0276】
また、当該化合物(D)が、特に、ポリヒドロキシ化合物である場合には、水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれに含まれる、ヒドロキシ基と反応する官能基の1当量に対して、
【0277】
当該化合物(D)中に含まれる水酸基量が、約0.2〜約5.0当量の範囲内、好ましくは、0.5〜3.0当量の範囲内、一層好ましくは、0.7〜2当量の範囲内となるように、化合物(D)を配合すればよい。
【0278】
硬化性クリヤー塗料(I)には、さらに、硬化触媒、流動調整剤、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤または可塑剤などのような、公知慣用の種々の添加剤類などをも配合せしめた形で以て、使用することが出来る。
【0279】
前記した添加剤類のうち、硬化触媒として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前記したようなポリシロキサン(a−2)の調製に使用されるものとして、すでに、前掲しているような各種の触媒類を使用することも出来るし、これらの諸化合物に加えて、テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩、トリメチル(2−ヒドロキシルプロピル)ホスホニウム塩、トリフェニルホスホニウム塩またはベンジルホスホニウム塩類などであって、対アニオンとして、たとえば、フルオライド、クロライド、ブロマイドまたはカルボキシレートの如き、各種のアニオンを有するような種々の化合物を使用することも出来る。
【0280】
水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれが、親水性基としてアニオン性基またはカチオン性基を有する場合には、かかるアニオン性基またはカチオン性基が珪素原子に結合した水酸基、即ちシラノール基の縮合触媒として機能することから、ことさらに硬化触媒を添加せずとも、室温においてシラノール基の縮合による架橋が達成できる。さらに硬化性の向上を図るには、前記した如き硬化触媒を添加すればよい。
【0281】
水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれが、親水性基としてノニオン性基のみを有する場合には、シラノール基の縮合による架橋は室温では非常に遅い。したがって、かかる樹脂をシラノール基の縮合により室温に於いて架橋せしめるには、前記した如き硬化触媒を添加することが好ましい。
【0282】
水性樹脂(W−3)〜(W−4)のそれぞれを必須の成分として含有する、本発明の塗膜の形成方法を実施する際に用いられる、硬化性クリヤー塗料(I)に硬化触媒を添加する場合には、かかる硬化触媒の添加量を、含有される樹脂固形分の合計量の100重量部に対して、0.01〜15重量部の範囲に、好ましくは0.05〜10重量部の範囲に、特に好ましくは0.1〜5重量部の範囲に、設定するのが適切である。
【0283】
また、斯かる添加剤類のうちでも、紫外線吸収剤および/または酸化防止剤の添加は、とりわけ、硬化塗膜の光沢保持性などの耐久性を、一層、向上化せしめるという上で以て、極めて有効なことである。
【0284】
そうした、上記の紫外線吸収剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物または蓚酸アニリド系化合物などのような、公知慣用の種々の化合物のうちの、いずれの化合物をも使用することが出来きる。
【0285】
そして、該紫外線吸収剤の添加量としては、硬化性クリヤー塗料(I)中に含まれる皮膜形成成分の総固形分重量の約0.1〜約3%程度でよい。つまり、各クリヤー塗料中に含まれる皮膜形成成分の総固形分重量を基準として、約0.1〜約3%程度でよい、ということである。
【0286】
また、上記した酸化防止剤として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン環を有する、各種のヒンダード・アミン系化合物や、ヒンダード・フェノール化合物などのような、公知慣用の種々の化合物であり、これらのうちの、いずれの化合物をも使用するということが出来る。
【0287】
そして、該酸化防止剤の添加量としては、硬化性クリヤー塗料(I)中に含まれる皮膜形成成分の総固形分重量の約0.1〜約3%程度でよい。つまり、各硬化性クリヤー塗料中に含まれる皮膜形成成分の総固形分重量を基準として、約0.1〜約3%程度でよい、ということである。
【0288】
また、硬化性クリヤー塗料(I)は、顔料を全く含有しないものか、塗膜のクリアー性を損なわない範囲で必要に応じて、さらに、皮膜形成成分の総固形分重量の約3%未満の顔料を配合せしめた形の、いわゆる、カラー・クリヤー塗料と為した形のものであってもよい。
【0289】
斯かるカラー・クリヤー塗料を調製するに際して使用される、当該顔料として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、カーボン・ブラックなどをはじめ、さらには、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーンまたはキナクリドン・レッドの如き、公知慣用の種々の有機系顔料などである。
【0290】
かくして得られる、本発明に係る塗膜の形成方法を実施するに際して使用される、硬化性クリヤー塗料(I)は、(D)成分の有無あるいはその種類とか、硬化触媒の有無あるいはその種類によって硬化条件は異なるが、室温で1〜14日間乾燥したり、大約60℃〜大約250℃程度の温度範囲で以て、大約30秒間〜約3時間程度の、好ましくは、30秒間〜1時間程度の焼き付けを行なうことによって、極めて実用性の高い硬化塗膜を得ることが出来る。
【0291】
本発明において、被塗物として使用される基材としては、公知慣用の各種のものがあり、かかる基材として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、鉄、ステンレス・スチールもしくはアルミニウムなどのような、種々の金属類;ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂もしくはポリスチレンなどのような、種々のプラスチック類;さらには、ガラス、スレート板もしくはコンクリート、珪酸カルシウム等の珪酸塩系、石膏系、石綿系もしくはセラミックス系などのような、種々の無機系のものなどである。
【0292】
こうした種々の基材は、それぞれ、板状、球状、フィルム状、シート状ないしは大型の構築物または複雑なる形状の組立物あるいは成形物などのような、種々の用途に応じて、各種の形で以て使用されるというものであって、特に、制限はない。
【0293】
ここにおいて、被塗物の一つとして使用される、予め、皮膜が形成された基材とは、架橋型ないしは非架橋型の有機系塗料あるいは無機系塗料のうちの、少なくとも1種の塗料が塗装されて、此の架橋皮膜ないしは熱可塑性の皮膜が形成されたような、種々の基材類を指称するものである。
【0294】
こうした、予め、皮膜が形成された基材を調製する際に使用される、有機系塗料として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、本発明の方法において用いられる、水性樹脂(W−3)〜(W−4)を必須成分として含有する、あるいはこれらのそれぞれと、化合物(D)とを必須成分として含有する形の塗料をはじめ、
【0295】
アクリル−ウレタン系、塩素化ポリオレフィン変性アクリル−ウレタン系、アクリル−メラミン系、アクリル−エポキシ系、アルキド−メラミン系、アルキド−ウレタン系、ポリエステル−メラミン系、ポリエステル−ウレタン系、エポキシ−メラミン系、エポキシ−ポリアミド系、エポキシ−ウレタン系あるいはポリウレタン−メラミン系などのような、種々の架橋型の塗料;
【0296】
さらには、アクリル・ラッカー、塩素化ポリオレフィン系ラッカーあるいはニトロセルロースをベースとするラッカーであるとか、ポリウレタン・ラッカーなどのような、種々の非架橋型塗料などである。
【0297】
こうした、各種の塗料の形態としては、有機溶剤溶液型、有機溶剤分散型、水溶液型、水分散型あるいは粉体型などのような、種々の形態のもののうちの、いずれの形態のものであってもよい。
【0298】
また、無機系の塗料の代表的なものとしては、シリケート縮合物、水ガラス、コロイダルシリカあるいは燐酸塩類等の無機系のバインダーを使用して調製された各種のものが挙げられる。
【0299】
斯かる各種の塗料類は、クリヤー塗料であっても、顔料を含む形の着色塗料のうちの、いずれの形のものであってもよい。
【0300】
本発明に係る塗膜の形成方法を実施するに際して使用される、前記したベース・コート用塗料(II)とは、着色顔料を含む形の、種々の塗料を指称するというものであって、当該ベース・コート用塗料として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前述したような、予め、皮膜が形成された基材を調製する際に使用されるような、種々の有機系塗料を使用することが出来る。
【0301】
また、斯かるベース・コート用塗料(II)の形態としては、有機溶剤溶液型、有機溶剤分散型、水溶液型、水分散型あるいは粉体型などのような、種々の形態のもののうちの、いずれの形態のものであってもよい。
【0302】
こうした各種のベース・コート用塗料(II)を調製する際に使用される、顔料として特に代表的なもののみを例示するにとどめれば、前掲したような、種々の有機系顔料のほかにも、酸化チタン、酸化鉄、アルミニウム・フレークまたはチタン・コート・マイカなどのような、種々の無機系顔料が挙げられる。
【0303】
前述したような、上記したような各種の基材、あるいは予め、皮膜が形成された形の種々の基材に、硬化性クリヤー塗料(I)を塗装して、硬化塗膜を形成せしめるには、各種の基材に、エアー・スプレー法、エアレス・スプレー法、刷毛塗りもしくはロール・コート法などのような、公知慣用の種々の塗装方法で以て、
【0304】
各クリヤー塗料を塗装して、各塗料の硬化性あるいは基材の耐熱性などに応じて、さらには、用途などに応じて、常温で、1日(一昼夜)から約2週間程度、乾燥し硬化せしめるか、あるいは約60℃〜約250℃程度の温度範囲で以て、大約30秒間〜約3時間程度の焼き付け硬化を行なえばよい。
【0305】
次に、基材に、あるいは、予め皮膜が形成された基材に、顔料を含むベース・コート用塗料(II)ならびに硬化性クリヤー塗料(I)を、順次、塗装して硬化塗膜を形成せしめるという方法について説明をすることにする。
【0306】
すなわち、まず、基材に、あるいは、予め皮膜が形成された基材に、前掲したような、種々の塗装方法によって、ベース・コート用塗料(II)を塗布せしめるというものである。そして、その塗布操作の直後に、あるいは約5分間から1時間程度のセッティングを行なったのちに、次いで、かくして得られるベース・コートの上に、クリヤー塗料(I)を、前掲したような、種々の塗装方法によって塗装せしめるというものである。
【0307】
引き続いて、各硬化性クリヤー塗料の硬化性、ベース・コート用塗料の硬化性、あるいは基材の耐熱性などに応じて、さらには、それぞれの用途などに応じて、常温で以て、1日(1昼夜)から2週間程度、乾燥し硬化を行なったり、あるいは約60℃〜約250℃程度の温度範囲で以て、大約30秒間〜約3時間程度の焼き付け硬化を行なったりするなどの、幅広い硬化条件の設定が可能である。
【0308】
すなわち、ベース・コート用塗料(II)が非架橋型であって、しかも、トップ・コート用のクリヤー塗料が常温硬化性を有する場合には、クリヤー塗料を塗装せしめたのちに、室温で乾燥するか、あるいは焼き付けることによって、ベース・コート層を乾燥せしめると同時に、クリヤー層を硬化せしめればよい。
【0309】
ベース・コート用塗料(II)が非架橋型であって、しかも、クリヤー塗料が熱硬化性であるというような形のものの場合には、クリヤー用塗料を塗装せしめたのちに、焼き付けを行なって、ベース・コート層を乾燥せしめると同時に、クリヤー層を硬化せしめればよい。
【0310】
ベース・コート用塗料(II)およびクリヤー塗料が、共に、常温硬化性を有する場合には、クリヤー塗料を塗装せしめたのちに、室温で乾燥せしめるか、あるいは焼き付けを行なって、ベース・コート層と、クリヤー層とを、同時に、硬化せしめるればよい。
【0311】
ベース・コート用の塗料(II)またはクリヤー用塗料のうちのどちらか一方が熱硬化性である場合には、クリヤー塗料を塗装せしめたのちに、焼き付けを行なって、ベース・コート層と、クリヤー層を、同時に、硬化せしめればよい。
【0312】
本発明に係る塗膜の形成方法によって得られる硬化塗膜は、とりわけ、光沢保持性、曝露汚染性ならびに耐酸性などの、いわゆる耐久性に優れると共に、極めて高い鮮映性などをも有するというものであるという処から、本発明に係る塗膜形成方法は、特に、自動車のトップ・コート、自動車補修用、更には建築物の外壁塗装用あるいは建材の塗装用などとして、極めて実用性の高いものである。
【0313】
また、前述したような用途以外の用途への、たとえば、建築外装用、建材用あるいは重防食用などのような方面への塗膜形成方法としても、極めて有効裡に利用することが出来るというものである。
【0314】
上述した如き本発明の塗膜の形成方法により各種の基材類を塗装することにより、本発明に係る塗装物が調製されるが、かかる塗装物の、より具体的なものとしては、それぞれ、基材として金属基材が使用された自動車、自動二輪車、電車、自転車、船舶または飛行機あるいは其の他の輸送関連機器類と、それらに使用される金属基材あるいはプラスチック基材等が使用された諸々の部品;基材として、金属基材あるいはプラスチック基材等が使用された、テレビ、ラジオ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、クーラー室外機またはコンピュータあるいは其の他の家電製品類と、それらの諸々の部品;
【0315】
各種の無機質系の瓦、金属製の屋根材、無機質系外壁材、金属製の壁材、金属製の窓枠、金属製あるいは木製のドアまたは内壁材の如き、種々の建材類;道路、道路標識、ガードレール、橋梁、タンク、煙突またはビルディングの如き、各種の屋外構築物;さらには、ポリエステル樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルムあるいはフッ素樹脂フィルム等の各種の有機フィルムに塗装した各種の被覆フィルムなどが挙げられるが、本発明に係る塗装物は、こうした用途に、有効に利用することができるものである。
【0316】
【実施例】
次に、本発明を、参考例、実施例および比較例により、一層、具体的に説明をすることにするが、本発明は、決して、これらの例示例のみに限定されるものではない。なお、以下において、部および%は、特に断りの無い限り、すべて、重量基準であるものとする。
【0317】
参考例1〔水性樹脂(W−3)の調製例〕
【0318】
本例は水性樹脂(W−3)を調製するための一つの例示例を示すものである。
【0319】
先ず、複合樹脂(C−3−1)の調製を行った。
温度計、還流冷却器、撹拌機、滴下漏斗および窒素導入管を備えた反応容器に、プロピレングリコール−n−プロピルエーテル(PNP)の124部と、イソプロパノール(IPA)の186部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0320】
次いで、同温度で、スチレン(ST)の100部、メチルメタアクリレート(MMA)の300部、n−ブチルメタクリレート(BMA)の274部、n−ブチルアクリレート(BA)の186部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)の30部およびアクリル酸(AA)の110部からなる混合物と、PNPの310部およびtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(TBPO)の50部の混合物とを、別々に、4時間かけて滴下した。
【0321】
滴下終了後も、同温度で、16時間のあいだ撹拌することによって、不揮発分が55.9%で、かつ、数平均分子量が12,300なる、カルボキシル基およびトリメトキシシリル基を併有する目的重合体の溶液を得た。以下、これを(b−3−1)と略記する。
【0322】
引き続いて、前記と同様の反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(PTMS)の354部およびIPAの310部を仕込んで、80℃にまで昇温し、次いで、同温度で、「AP−3」[大八化学工業所(株)製の、イソプロピルアシッドホスフェートの商品名]の2.9部と、イオン交換水の96部との混合物を、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。
【0323】
しかるのち、核磁気共鳴分析( 1 H−NMR)で以て、反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0324】
さらに、此処へ、重合体(b−3−1)の660部を添加し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なうことによって、PTMSより得られたポリシロキサンと、重合体(b−3−1)との縮合反応を行ない、次いで、同温度で、撹拌下に、トリエチルアミン(TEA)の62部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−3−1)を調製した。
【0325】
ここにおいて、かくして得られた複合樹脂を、1H−NMRで分析した処、重合体(b−3−1)中に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0326】
続いて、ポリシロキサン(p−1)の調製を行った。前記と同様の反応容器に、メチルトリメトキシシラン(MTMS)の2,428部を仕込んで、80℃まで昇温し、次いで、同温で、「AP−3」の0.3部と、イオン交換水の354部との混合物を、約1時間を要して滴下した。
【0327】
滴下終了後も、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なったのち、減圧蒸留で、メタノール(MEOH)を除くことによって、メトキシ基の含有率が約35%で、数平均分子量が1,000なる、目的とするポリシロキサン(MTMSの部分加水分解縮合物)を得た。以下、これを(p−1)と略記する。
【0328】
最後に、複合樹脂(C−3−1)の1,189部と、ポリシロキサン(p−1)の505部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」[スイス国チバ・ガイギー社製の、紫外線吸収剤の商品名]の10部と「チヌビン−123」[スイス国チバ・ガイギー社製の、酸化防止剤の商品名]の10部とIPAの10部との混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処に、イオン交換水の1,317部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.2%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−3−1)と略記する。
【0329】
参考例2(同上)
【0330】
先ず、内部が窒素ガスで置換された、内容積が3リットルなるステンレス製のオートクレーブに、IPAの920部と、マレイン酸モノブチルの68部、酢酸ビニルの120部、エチルビニルエーテルの352部、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シランの60部と、重合開始剤たるtert−ブチルパーオキシピバレートの50部とを仕込んだ。
【0331】
次いで、ここへ、液化採取したクロロトリフルオロエチレンの400部を圧入せしめた。撹拌しながら、60℃で、15時間の間反応を続行せしめることによって、不揮発分が51.3%で、かつ、数平均分子量が10,100なる、カルボキシル基およびトリメトキシシリル基を併有する、目的のフッ素共重合体の溶液を得た。以下、これを(b−1−2)と略記する。
【0332】
次に、参考例1と同様の反応容器に、PTMSの354部およびPNPの310部を仕込んで、80℃にまで昇温し、次いで、同温度で、「AP−3」の2.9部と、イオン交換水の96部との混合物を、5分間を要して滴下し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なった。
【0333】
しかるのち、1H−NMRで以て、反応混合物の分析を行ない、PTMSの加水分解が、100%進行していることを確認した。
【0334】
引き続いて、此処へ、重合体(b−1−2)の784部を添加し、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なうことによって、PTMSより得られるポリシロキサンと、重合体(b−1−2)との縮合反応を行ない、次いで、同温度で、撹拌下に、TEAの15部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−3−2)を調製した。
【0335】
ここにおいて、かくして得られた複合樹脂を、1H−NMRで分析した処、重合体(b−1−2)中に含まれていたトリメトキシシリル基の加水分解が、100%進行していることが判明した。
【0336】
最後に、複合樹脂(C−3−2)の1,562部と、参考例1において調製したポリシロキサン(p−1)の505部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処に、イオン交換水の1,500部を、30分間かけて滴下したのち、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.1%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−3−2)と略記する。
【0337】
参考例3(同上)
先ず、参考例1と同様の反応容器に、メチルフェニルジメトキシシラン(MPDMS)の766部、PNPの124部およびIPAの186部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0338】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの274部、BAの186部、MPTMSの30部およびAAの110部の混合物と、PNPの310部およびTBPOの50部の混合物とを、それぞれ、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0339】
滴下終了後も、同温度で、2時間のあいだ撹拌を行ったのち、さらに同温度にて、「AP−3」の6.8部およびイオン交換水の227部との混合物を5分をかけて滴下し、引き続き同温度で、18時間のあいだ撹拌を行なった。
【0340】
次いで、同温度で、TEAの154部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−3−3)を得た。
【0341】
ここにおいて、此の複合樹脂を、1H−NMRで以て分析した処、MPDMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0342】
最後に、複合樹脂(C−3−3)の1,130部と、参考例1において調製したポリシロキサン(p−1)の505部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,317部を、30分間かけて滴下したのちに、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.1%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−3−3)と略記する。
【0343】
参考例4(同上)
先ず、複合樹脂(C−3−4)の調製を行った。
参考例1と同様の反応容器に、シクロヘキシルトリメトキシシラン(CHTMS)の1,467部、PNPの124部およびIPAの186部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0344】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの279部、BAの186部およびAAの135部の混合物と、PNPの310部およびtert−ブチルパーオキシ−2,2−ジメチル−3−トリメトキシシリルプロパノエート(TBPOTMS)の50部の混合物とを、それぞれ別々に、4時間に亘って滴下した。
【0345】
滴下終了後も、同温度で、2時間のあいだ撹拌を行ったのち、さらに同温度にて、「AP−3」の11.6部およびイオン交換水の388部との混合物を5分をかけて滴下し、引き続き同温度で、18時間のあいだ撹拌を行なった。
【0346】
次いで、同温度で、TEAの140部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−3−4)を得た。
【0347】
ここにおいて、此の複合樹脂を、1H−NMRで以て分析した処、CHTMSおよびアクリル樹脂に結合したTBPOTMSに由来するトリメトキシシリル基の加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0348】
続いて、ポリシロキサン(p−2)の調製を行った。参考例1と同様の反応容器に、MTMSの2,201部と、PTMSの475部とを仕込んで、80℃まで昇温し、次いで、同温で、「AP−3」の0.3部と、イオン交換水の368部との混合物を、約1時間を要して滴下した。
【0349】
滴下終了後も、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なったのち、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類を除くことによって、メトキシ基の含有率が約35%で、かつ、数平均分子量が1,200なる、目的とするポリシロキサン(MTMSとPTMSとの部分共加水分解縮合物)を得た。以下、これを(p−2)と略記する。
【0350】
最後に、複合樹脂(C−3−4)の842部と、ポリシロキサン(p−2)の586部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,211部を、30分間かけて滴下したのちに、減圧蒸留で、メタノールと、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.2%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−3−4)と略記する。
【0351】
参考例5(同上)
先ず、複合樹脂(C−3−5)の調製を行った。
参考例1と同様の反応容器にシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMDMS)の1,074部、PTMSの1,131部、PNPの124部およびIPAの186部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0352】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの184部、BAの186部、AAの200部およびMPTMSの30部の混合物と、PNPの310部およびTBPOの50部の混合物とを、それぞれ、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0353】
滴下終了後も、同温度で、2時間のあいだ撹拌を行ったのち、さらに同温度にて、「AP−3」の18.4部およびイオン交換水の617部との混合物を5分をかけて滴下し、引き続き同温度で、18時間のあいだ撹拌を行なった。
【0354】
次いで、同温度で、TEAの280部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−3−5)を得た。
【0355】
ここにおいて、此の複合樹脂を、1H−NMRで以て分析した処、CHMDMS、PTMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0356】
続いて、ポリシロキサン(p−3)の調製を行った。参考例1と同様の反応容器に、MTMSの3643部と、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)の1065部とを仕込んで、80℃まで昇温し、次いで、同温で、「AP−3」の0.6部と、イオン交換水の706部との混合物を、約1時間を要して滴下した。
【0357】
滴下終了後も、同温度で、4時間のあいだ撹拌を行なったのち、減圧蒸留で、MEOHを除くことによって、メトキシ基の含有率が約35%で、かつ、数平均分子量が900なる、目的とするポリシロキサン(MTMSとDMDMSの部分共加水分解縮合物)を得た。以下、これを(p−3)と略記する。
【0358】
最後に、複合樹脂(c−3−5)の1,186部と、ポリシロキサン(p−3)の852部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,317部を、30分間かけて滴下したのちに、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が39.9%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−3−5)と略記する。
【0359】
参考例6〔水性樹脂(W−4)の調製〕
【0360】
本例は水性樹脂(W−4)を調製するための一つの例示例を示すものである。
【0361】
先ず、参考例1と同様の反応容器に、PTMSの884部、PNPの124部およびIPAの186部を仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0362】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの300部、BMAの224部、BAの186部、AAの110部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の50部およびMPTMSの30部の混合物と、PNPの310部およびTBPOの50部の混合物とを、それぞれ、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0363】
滴下終了後も、同温度で、2時間のあいだ撹拌を行ったのち、さらに同温度にて、「AP−3」の7.2部およびイオン交換水の241部との混合物を5分間かけて滴下し、引き続き同温度で、18時間のあいだ撹拌を行なった。
【0364】
次いで、同温度で、TEAの154部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−4−1)を得た。
【0365】
ここにおいて、此の複合樹脂を、1H−NMRで以て分析した処、PTMSおよびMPTMSに由来するトリメトキシシリル基の加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0366】
最後に、複合樹脂(C−4−1)の1,182部と、参考例1において調製したポリシロキサン(p−1)の505部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,317部を、30分間かけて滴下したのちに、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.2%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−4−1)と略記する。
【0367】
参考例7(同上)
先ず、参考例1と同様の反応容器に、MPDMSの377部、CHMDMSの388部、PNPの124部、IPAの186部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0368】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの200部、BMAの194部、BAの186部、2−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)の240部、HEMAの50部およびMPTMSの30部の混合物と、PNPの310部およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)の50部の混合物とを、それぞれ、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0369】
滴下終了後も、同温度で、2時間のあいだ撹拌を行ったのち、さらに同温度にて、「AP−3」の6.7部およびイオン交換水の223部との混合物を5分をかけて滴下し、引き続き同温度で、18時間のあいだ撹拌を行なった。
【0370】
次いで、同温度で、酢酸の83部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−4−2)を得た。
【0371】
ここにおいて、此の複合樹脂を、1H−NMRで以て分析した処、MPDMS、CHMDMSおよびMPTMSに由来するトリメトキシシリル基の加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0372】
最後に、複合樹脂(C−4−2)の1,106部と、参考例1において調製したポリシロキサン(p−1)の505部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,324部を、30分間かけて滴下したのちに、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.4%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−4−2)と略記する。
【0373】
参考例8(同上)
先ず、参考例1と同様の反応容器に、PTMSの884部、PNPの124部およびIPAの186部とを仕込んで、窒素ガスの通気下に、80℃にまで昇温した。
【0374】
次いで、同温度で、STの100部、MMAの200部、BMAの204部、BAの186部、AAの80部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)の150部、HEMAの50部およびMPTMSの30部の混合物と、PNPの310部およびTBPOの50部の混合物とを、それぞれ、別々に、4時間に亘って滴下した。
【0375】
滴下終了後も、同温度で、2時間のあいだ撹拌を行ったのち、さらに同温度にて、「AP−3」の7.2部およびイオン交換水の241部との混合物を5分をかけて滴下司し、引き続き同温度で、18時間のあいだ撹拌を行なった。
【0376】
次いで、同温度で、TEAの112部を、5分間かけて滴下することによって、複合樹脂(C−4−3)を得た。
【0377】
ここにおいて、此の複合樹脂を、1H−NMRで以て分析した処、PTMSおよびMPTMSの加水分解反応は、100%進行していることが確認できた。
【0378】
最後に、複合樹脂(C−4−3)の1,166部と、参考例1において調製したポリシロキサン(p−1)の505部とを、室温下で混合せしめ、次いで、同温度で、「チヌビン−384」の10部と「チヌビン−123」の10部とIPAの10部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,317部を、30分間かけて滴下したのちに、減圧蒸留で、MEOH、IPAなどのアルコール類とを除くことによって、不揮発分が40.1%なる、目的水性樹脂を得た。以下、これを(W−4−3)と略記する。
【0379】
参考例9〜12〔重合体(R−1)〜(R−4)の調製例〕
【0380】
単量体の種類および其の使用量と、重合開始剤の使用量とを、第1表に示すように変更した以外は、参考例1と同様に重合を行なって、同表に示すような性状値を有する各種の目的重合体(R−1)〜(R−4)を得た。それらの重合体は、同表に示すように略記する。
【0381】
【表1】
【0382】
【表2】
【0383】
《第1表の脚注》
参考例9で得られた「R−1」は、対照用樹脂1を調製する際に使用するための重合体である。
【0384】
参考例10で得られた「R−2」は、対照用樹脂2を調製する際に使用するための重合体である。
【0385】
参考例11で得られた「R−3」は、対照用樹脂3を調製する際に使用するための重合体である。
【0386】
参考例12で得られた「R−4」は、対照用樹脂4を調製する際に使用するための重合体である。
【0387】
参考例13〔対照用樹脂1の調製例〕
参考例1と同様の反応容器に、重合体(R−1)の1,273部を仕込んだ。次いで、室温で、撹拌下、「チヌビン−384」の7部と「チヌビン−123」の7部とIPAの7部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、TEAの49部と、イオン交換水の1,000部との混合物を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が34.5%なる対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂1と略記する。
【0388】
参考例14〔対照用樹脂2の調製例〕
参考例1と同様の反応容器に、重合体(R−2)の1,289部を仕込んだ。次いで、室温で、撹拌下に、「チヌビン−384」の7部と「チヌビン−123」の7部とIPAの7部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、酢酸の29部とイオン交換水の1,000部との混合物を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が36.1%なる対照用の水性樹脂を得た。以下これを対照用樹脂2と略記する。
【0389】
参考例15〔対照用樹脂3の調製例〕
参考例1と同様の反応容器に、重合体(R−3)の1,252部を仕込んだ。次いで、室温で、撹拌下に、「チヌビン−384」の7部と「チヌビン−123」の7部とIPAの7部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、イオン交換水の1,000部との混合物を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が35.7%なる、対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂3と略記する。
【0390】
参考例16〔対照用樹脂4の調製例〕
参考例1と同様の反応容器に、重合体(R−4)の1,266部を仕込んだ。次いで、室温で、撹拌下に、「チヌビン−384」の7部と「チヌビン−123」の7部とIPAの7部の混合物を、5分間をかけて添加し、さらに此処へ、TEAの49部と、イオン交換水の1,000部を、30分間を要して滴下したのち、減圧蒸留で、溶剤であるIPAを除くことによって、不揮発分が35.3%なる、対照用の水性樹脂を得た。以下、これを対照用樹脂4と略記する。
【0391】
参考例17〜26〔クリヤー塗料(I)の調製〕
【0392】
水性樹脂(W−3)または(W−4)のそれぞれの一部と、必要に応じて、水、PNPまたは化合物(D)をも配合せしめることによって、各種のクリヤー塗料を調製した。
【0393】
水性樹脂(W−3)または(W−4)のそれぞれと、PNPと、化合物(D)との使用比率は、第2表に示す通りである。
【0394】
参考例27〜30〔対照用樹脂を使用したクリヤー塗料の調製〕
【0395】
対照用樹脂1〜4のそれぞれに対して、必要に応じて、水、PNPまたは化合物(D)をも配合せしめることによって、各種の対照用のクリヤー塗料を調製した。
【0396】
対照用樹脂1〜4のそれぞれと、PNPと、化合物(D)との使用比率は、第2表に示す通りである。
【0397】
【表3】
【0398】
《第2表の脚注》
原料類の使用
割合を示す各数値は、いずれも、重量部数であるものとする(以下同様。)。
【0399】
「GPTMS」は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの略記である。
【0400】
「EGM−400」は、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製の、3−グリシドキシプロピル基を有する、環状のポリシロキサンの商品名である。
【0401】
【表4】
【0402】
【表5】
【0403】
《第2表の脚注》
「S−695」は、「ウォーターゾル S−695」の略記であって、大日本インキ化学工業(株)製の、メチルエーテル化メチロールメラミン樹脂水溶液の商品名;不揮発分=66%。
【0404】
【表6】
【0405】
「EX−612」は、「デナコール EX−612」の略記であって、ナガセ化成工業(株)製の、ソルビトールポリグリシジルエーテルの商品名である。
【0406】
【表7】
【0407】
実施例1〜2ならびに比較例1
予め、ポリエステル−メラミン系のグレー塗料が塗装され、焼き付けされた鋼板上に、まず、下記のようにして調製したベースコート用塗料(II−1)を、乾燥膜厚が約20μmとなるように、エアースプレー塗装せしめてから、10分間のあいだ、25℃に放置した。
【0408】
次いで、上述のようにして調製した、それぞれのクリヤー塗料ならびに対照用の塗料を、乾燥膜厚が約30μmとなるように、エアースプレー塗装せしめた。
【0409】
しかるのち、第3表に示す通りの条件で以て焼き付けを行なって、各種の硬化塗膜を得た。此処に得られた、本発明の方法を実施するに際して用いられる、各種のクリヤー塗料を用いた、それぞれの塗膜は、いずれも、とりわけ、外観に優れるというものであった。
【0410】
乾燥後の塗膜についての諸性能の評価判定の項目としては、サンシャイン・ウェザオメータ−による促進の耐候性、2ヶ月にわたる屋外曝露を行ったのちの耐汚染性、耐酸性ならびに耐アルカリ性である。それらの結果は、まとめて、第3表に示す。
【0411】
ベースコート用塗料(II−1)の調製
【0412】
下記するような三成分からなる混合物を、トルエン/2−エトキシエチルアセテート=90/10(重量部比)なる組成の混合溶剤で以て、フォード・カップ#4による粘度が13秒となるように希釈せしめることによって、メタリック・ベースコート用塗料(II−1)を調製した。
【0413】
「アルペースト 1700NL」 10部
「アクリディック 47−712」 100部
「スーパーベッカミン L−117−60」 23.8部
【0414】
註)「アルペースト1700NL」・・・東洋アルミニウム(株)製の、アルミニウム・ペースト;有効成分含有率=65%
【0415】
「アクリディック 47−712」・・・大日本インキ化学工業(株)製の、水酸基含有アクリル樹脂溶液;不揮発分=50%
【0416】
【表8】
【0417】
《第3表の脚注》
「耐候性」は、サンシャイン・ウエザオメーターによる、2,000時間に及ぶ曝露を行なったのちの、塗膜の60度鏡面反射率(%)なる光沢値を、未曝露時における、塗膜の同上の光沢値で以て除して、それを、100倍した値(光沢保持率:%)を表示したものである。
【0418】
その値が大きいほど、耐候性が良好であるということを示している。
【0419】
「耐汚染性」は、屋外において、2ヵ月間に及ぶ曝露を行なったのちの未洗浄の塗膜と、未曝露時の塗膜との色差(ΔE)を表示したものである。その値が、ゼロに近いほど、耐汚染性が良好であるということを示している。
【0420】
「耐酸性」は、「耐酸性雨性」の代用試験として行なっているというものであり、それぞれの硬化塗膜の表面上に、10%硫酸水溶液の0.1ミリ・リットルを載せた試験板を、60℃の熱風乾燥器中に、30分間のあいだ保持したのち、塗膜表面を水洗乾燥してから、その表面の状態を、目視により評価判定したものである。
【0421】
その際の評価判定の基準は次の通りである。
【0422】
◎・・・エッチングなし
○・・・若干ながら、エッチングあり
△・・・光沢が低下している
×・・・エッチングが著しい
【0423】
「耐アルカリ性」は、それぞれの試験板を、5%水酸化ナトリウム水溶液中に、室温下、24時間のあいだ浸漬せしめたのち、塗膜表面を、各別に、水洗し乾燥してから、その表面状態を、目視により、評価判定したものである。
【0424】
その際の評価判定の基準は次の通りである。
【0425】
◎・・・エッチングなし
○・・・若干ながら、エッチングあり
△・・・光沢が低下している
×・・・エッチングが著しい
【0426】
実施例3〜6ならびに比較例2
スレート板上に、下記するようにして調製したアクリル−ウレタン系の白色塗料(下−2)を、乾燥膜厚が約40μmとなるように、エアースプレー塗装せしめ、室温で、一週間のあいだ、硬化せしめるということによって、予め、皮膜が形成された鋼板を作製した。
【0427】
次いで、先に調製した、それぞれのクリヤー塗料ならびに対照用の塗料を、乾燥膜厚が約30μmとなるように、エアースプレー塗装せしめた。
【0428】
しかるのち、第3表に示す通りの条件で以て、クリヤー塗料を硬化せしめることによって、各種の硬化塗膜を得た。此処に得られた、本発明の方法を実施するに際して用いられる、各種のクリヤー塗料を用いた、それぞれの塗膜は、いずれも、とりわけ、外観に優れるというものであった。
【0429】
乾燥後の塗膜についての諸性能の評価判定の項目としては、サンシャイン・ウェザオメータ−による促進の耐候性、2ヶ月にわたる屋外曝露を行ったのちの耐汚染性、耐酸性ならびに耐アルカリ性である。それらの結果は、まとめて、第3表に示す。
【0430】
白色塗料(下−2)の調製
「アクリディック A−801P」[大日本インキ化学工業(株)製の、水酸基含有アクリル樹脂の商品名;溶剤=トルエン/酢酸n−ブチル混合溶剤、不揮発分=50%、溶液の水酸基価=50]の91部と、「CR−97]の35部とからなる混合物に、ガラス・ビーズを加えて、サンドミルで、1時間のあいだ分散を行なった。
【0431】
次いで、「バーノック DN−990S」[大日本インキ化学工業(株)製の、無黄変タイプのポリイソシアネート樹脂の商品名;イソシアネート基含有率=17.3重量%、不揮発分=100%]の19.7部を加えた。
【0432】
しかるのち、キシレン/トルエン/酢酸n−ブチル/2−エトキシエチルアセテート=40/30/20/10(重量部比)なる混合溶剤で以て、フォード・カップ#4による粘度が20秒となるように希釈せしめるということによって、PWCが3%なる白色塗料(下−2)を調製した。
【0433】
【表9】
【0434】
実施例7〜10ならびに比較例3
予め、ポリエステル−メラミン系のグレー塗料が塗装され、焼き付けされた鋼板上に、まず、下記するようにして調製したアクリル−ウレタン系のベースコート用塗料(II−2)を、乾燥膜厚が約20μmとなるように、エアースプレー塗装せしめてから、20分間のあいだ、25℃に放置した。
【0435】
次いで、上述のようにして調製した、それぞれのクリヤー塗料ならびに対照用の塗料を、乾燥膜厚が約30μmとなるように、エアースプレー塗装せしめた。
【0436】
しかるのち、第3表に示す通りの条件で以て焼き付けることによって、各種の硬化塗膜を得た。此処に得られた、本発明の方法を実施するに際して用いられる、各種のクリヤー塗料を用いた、それぞれの塗膜は、いずれも、とりわけ、外観に優れるというものであった。
【0437】
乾燥後の塗膜についての諸性能の評価判定の項目としては、サンシャイン・ウェザオメータ−による促進の耐候性、2ヶ月にわたる屋外曝露を行ったのちの耐汚染性、耐酸性ならびに耐アルカリ性である。それらの結果は、まとめて、第3表に示す。
【0438】
ベースコート用塗料(II−2)の調製
下記するような三つの成分からなる混合物を、トルエン/酢酸エチル/2−エトキシエチルアセテート=70/20/10(重量部比)なる組成の混合溶剤で以て、フォード・カップ#4による粘度が13秒となるように希釈せしめることによって、メタリック・ベースコート用塗料(II−2)を調製した。
【0439】
「アルペースト 1700NL」 11部
「アクリディック 44−127」 100部
「バーノック DN−950」 19.5部
【0440】
註) 「アクリディック 44−127」・・・大日本インキ化学工業(株)製の、水酸基含有アクリル樹脂の商品名;不揮発分=50%、溶液の水酸基価=32.5
【0441】
「バーノック DN−950」・・・大日本インキ化学工業(株)製の、無黄変ポリイソシアネート樹脂の商品名;不揮発分=75%、溶液のイソシアネート基含有率=12.5重量%
【0442】
【表10】
【0443】
また、基材上に直接塗装するという場合には、各別に、上塗り塗料を、スプレーにより、乾燥膜厚が40〜80μmとなるように塗装せしめ、所定の乾燥条件で以て乾燥硬化せしめるようにした。
【0444】
実施例10〜11ならびに比較例4
燐酸亜鉛処理鋼板に直接に、まず、前掲のようにして調製したベースコート用塗料(II−1)を、乾燥膜厚が約20μmとなるように、エアースプレー塗装せしめてから、10分間のあいだ、25℃に放置した。
【0445】
次いで、上述のようにして調製した、それぞれのクリヤー塗料ならびに対照用の塗料を、乾燥膜厚が約30μmとなるように、エアースプレー塗装せしめた。
【0446】
しかるのち、第3表に示す通りの条件で以て焼き付けを行なって、各種の硬化塗膜を得た。此処に得られた、本発明の方法を実施するに際して用いられる、各種のクリヤー塗料を用いた、それぞれの塗膜は、いずれも、とりわけ、外観に優れるというものであった。
【0447】
乾燥後の塗膜についての諸性能の評価判定の項目としては、サンシャイン・ウェザオメータ−による促進の耐候性、2ヶ月にわたる屋外曝露を行ったのちの耐汚染性、耐酸性ならびに耐アルカリ性である。それらの結果は、まとめて、第3表に示す。
【0448】
実施例12ならびに比較例5
スレート板に直接に、上述のようにして調製した、それぞれのクリヤー塗料ならびに対照用の塗料を、乾燥膜厚が約30μmとなるように、エアースプレー塗装せしめた。
【0449】
しかるのち、第3表に示す通りの条件で以て焼き付けを行なって、各種の硬化塗膜を得た。此処に得られた、本発明の方法を実施するに際して用いられる、各種のクリヤー塗料を用いた、それぞれの塗膜は、いずれも、とりわけ、外観に優れるというものであった。
【0450】
乾燥後の塗膜についての諸性能の評価判定の項目としては、サンシャイン・ウェザオメータ−による促進の耐候性、2ヶ月にわたる屋外曝露を行ったのちの耐汚染性、耐酸性ならびに耐アルカリ性である。それらの結果は、まとめて、第3表に示す。
【0451】
【表11】
【0452】
【発明の効果】
本発明に係る塗膜の形成方法は、とりわけ、光沢保持性、耐曝露汚染性、耐酸性ならびに耐アルカリ性などの、いわゆる総合的な耐久性に優れると共に、極めて高い鮮映性を有する硬化塗膜を与えるものであり、極めて実用性の高いものである。そして、かかる本発明の塗膜の形成方法により各種の基材を塗装して得られる塗装物においても、また、上塗り塗膜が優れた耐久性を有しており、高度の耐久性が必要とされる多方面の用途に有効に利用できるものである。
Claims (10)
- 基材に、あるいは、予め、皮膜が形成された基材に、ポリシロキサンと該ポリシロキサン以外の重合体とからなる複合樹脂を水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(A)を必須成分として含有する、硬化性クリヤー塗料(I)を塗装せしめ、次いで、硬化せしめる塗膜の形成方法であって、
前記した水性樹脂(A)が、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサンセグメント(A−2)と、アニオン性基、カチオン性基およびノニオン性基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の親水性基を有する重合体セグメント(B−1)が下記の構造式(S−I)
- 基材に、あるいは、予め、皮膜が形成された基材上に、顔料を含むベース・コート用塗料(II)、ならびにポリシロキサンと該ポリシロキサン以外の重合体とからなる複合樹脂を水性媒体中に分散もしくは溶解せしめて得られる水性樹脂(A)を必須成分として含有する硬化性クリヤー塗料(I)を、順次、塗装せしめ、次いで、両塗料から形成される2層を、同時に、乾燥もしくは硬化せしめる塗膜の形成方法であって、
前記した水性樹脂(A)が、アリール基もしくはシクロアルキル基と加水分解性基が共に結合した珪素原子および/またはアリール基もしくはシクロアルキル基と水酸基が共に結合した珪素原子を有するポリシロキサンセグメント(A−2)と、アニオン性基、カチオ ン性基およびノニオン性基よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の親水性基を有する重合体セグメント(B−1)が下記の構造式(S−I)
- ポリシロキサン(p)が、全珪素原子に占める、メチル基が結合した3官能性のシランに由来する珪素原子の割合が20モル%以上のポリシロキサンであることを特徴とする請求項1または2記載の塗膜の形成方法。
- 硬化性クリヤー塗料(I)が、更に、水性樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物を必須成分として含有することを特徴とする請求項1または2記載の塗膜の形成方法。
- 皮膜が形成された基材が、下塗り塗料の塗布されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の塗膜の形成方法。
- 前記した重合体セグメント(B−1)が、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、アルキド系重合体およびポリウレタン系重合体よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の重合体に由来するセグメントであり、かつ、前記した重合体セグメント(B−2)が、ビニル系重合体、ポリエステル系重合体、アルキド系重合体およびポリウレタン系重合体よりなる群から選ばれる、少なくとも1種の重合体に由来するセグメントであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗膜の形成方法。
- 前記した加水分解性基が、アルコキシ基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗膜の形成方法。
- 前記した水性樹脂(A)に含まれる官能基と反応する官能基を有する化合物が、珪素原子に結合した水酸基および/または珪素原子に結合した加水分解性基を有する化合物、一分子中にイソシアネート基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、一分子中にエポキシ基と珪素原子に結合した加水分解性基とを併有する化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、1級ないしは2級アミド基含有化合物、ポリカルボキシ化合物およびポリヒドロキシ化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物(D)であることを特徴とする請求項4に記載の塗膜の形成方法。
- 請求項1〜9に記載のいずれかの塗膜の形成方法によって塗装されたことを特徴とする塗装物。
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