JP3813813B2 - アーム式ウインドレギュレータ - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、車両用のアーム式ウインドレギュレータに関する。
【0002】
【従来技術及びその問題点】
アーム式ウインドレギュレータは、手動または電動で回転駆動されるピニオンを、リフトアームを一体に有するドリブンギヤ(セクタギヤ)に噛み合わせ、該リフトアームの先端部により、ウインドガラスを昇降させるという基本構成を有する。このアーム式ウインドレギュレータを装着する車両ドアは一般に、車外側のアウタパネル、車内側のインナパネル、及びこのインナパネルの部品装着穴に対応するモジュラーパネルを有している。従来のアーム式ウインドレギュレータは、その全ての構成要素がモジュラーパネルの車外側(インナパネルとアウタパネルの間)に配置されており、インナパネルとアウタパネルの間は、雨水の浸入が避けられないため、特に電動駆動ユニット(電動モータユニット)は完全防水化せざるを得なかった。
【0003】
そこで、この防水構造を簡略化するために、電動駆動ユニットをモジュラーパネルの車内側に配置し、その他の要素をモジュラーパネル(インナパネル)とアウタパネルの間に配置した構造が知られている。この構造では、レギュレータ部品の支持強度を保つため、モジュラーパネルの厚みを増す必要があり、重量が増えるという問題があった。
【0004】
さらに、モジュラーパネルより車内側にモータを配置する場合には、モジュラーパネルに穴を空けねばならず、この貫通穴を介して部品をつなぐ箇所は、防水加工をする必要があった。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、電動駆動ユニットとそのベースプレートをモジュラーパネルの車内側に配置するタイプのアーム式ウインドレギュレータにおいて、強度を損なうことなく、構成部品、特にモジュラーパネルとベースプレートの薄型化、軽量化を図ることを目的とする。
また本発明は、リフトアームの回動部分の防水構造を簡易化できるアーム式ウインドレギュレータを得ることを目的とする。
【0006】
【発明の概要】
本発明は、車外側から順に、アウタパネル、インナパネル及び該インナパネルのドア部品組付穴に対応するモジュラーパネルを有する車両ドア;上記モジュラーパネルの車内側に位置する、ピニオンを備えた電動駆動ユニット、この電動駆動ユニットを支持するベースプレート、及び上記ピニオンに噛み合うドリブンギヤ;上記モジュラーパネルに形成した貫通穴;上記モジュラーパネルの車外側に位置し、上記モジュラーパネルの貫通穴を介して上記ドリブンギヤに固定され、該貫通穴を中心とする回動運動により、アウタパネルとインナパネルの間に位置するウインドガラスを昇降させるリフトアーム;を備え、上記電動駆動ユニットは、上記ベースプレートとモジュラーパネルとの間に挟着され、かつ該ベースプレートとモジュラーパネルの間隔を定める間隔設定部材が予め一体に形成されており、該ベースプレート、電動駆動ユニット及びモジュラーパネルが共締め固定されていることを特徴としている。
このように、電動駆動ユニットを、ベースプレートとモジュラーパネルとの間に挟着し、該ベースプレート、電動駆動ユニット及びモジュラーパネルを共締め固定すると、この3部品で負荷を受け止めることができ、ベースプレートとモジュラーパネルの双方を薄肉化しても、容易に必要な強度が得られる。
【0007】
ベースプレート、電動駆動ユニット及びモジュラーパネルの共締め固定位置は、少なくとも、貫通穴と電動駆動ユニットのピニオンとの間と、該ピニオンに関し貫通穴の反対側とに設定することが好ましい。
【0008】
ベースプレートはモジュラーパネルの貫通穴周辺に延長して、モジュラーパネルの貫通穴に対応する貫通穴を設け、このベースプレートとモジュラーパネルをその貫通穴周縁で重ねて二枚重ね部分を形成し、この二枚重ね部分に、リフトアームに形成した環状突起を摺接させると、リフトアームの回動中心部分の支持強度を高めることができる。さらに、リフトアームは、ベースプレートとモジュラーパネルのそれぞれの貫通穴に、回動自在に摺接させるのがよい。そして、ベースプレートの貫通穴の径をモジュラーパネルの貫通穴の径より小径とし、リフトアームには、このベースプレートとモジュラーパネルの貫通穴にそれぞれ摺接する摺接部を形成すると、リフトアームをより安定した状態で回動自在に保持できるとともに、回動軸回りの防水化を容易に図ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図示実施形態は、本発明をXアーム式ウインドレギュレータに適用した例である。図1に示すように、車両ドア10は、車外側から順に、アウタパネル11、インナパネル12及びモジュラーパネル13を有する。インナパネル12にはドア部品組付穴14が穿設されており、このドア部品組付穴に対応するモジュラーパネル13は、このドア部品組付穴14の少なくとも一部を閉塞する。
【0012】
モジュラーパネル13の車内側には、Xアーム式ウインドレギュレータ20の駆動源である電動駆動ユニット(電動モータユニット)21、ベースプレート22、及びこの電動駆動ユニット21のピニオン21aと噛み合うドリブンギヤ(セクタギヤ)23が位置している。電動駆動ユニット21は、図3に示すように、モータ本体21b、このモータ本体21bによって回転駆動されるウォーム21c、及びこのウォーム21cと噛み合うウォームホイル21dを有し、ピニオン21aは、このウォームホイル21dに同軸に一体化されている。また、電動駆動ユニット21には一体に、ピニオン21aを中心とする放射方向に複数(この例では3個)間隔設定柱(間隔設定部材)21eが設けられている。
【0013】
ベースプレート22は、ドリブンギヤ23の回動中心となる貫通穴22aと、電動駆動ユニット21のピニオン21aを回転自在に支持するピニオン支持穴22bとを有している。貫通穴22aとピニオン支持穴22bはともに、例えばバーリング加工によって、円筒状部22a’と円筒状部22b’(図4、図5)を形成してなっている。またこのベースプレート22には、電動駆動ユニット21の3個の間隔設定柱21eに対応させて、ナット22cが溶接固定されている。この3個のナット22c(間隔設定柱21e)は、ピニオン21aに関し、そのうちの1つが貫通穴22aの反対側に位置し、2つがピニオン21aと貫通穴22aの中間に位置している。ナット22cは、ベースプレート22とは別体であってもよい。また、ベースプレート22には、ピニオン21aと貫通穴22aの中間に位置するナット22cの位置に対応させて、モジュラーパネル13側に突出する凹部22dが形成されていて、ナット22cとドリブンギヤ23の干渉を防いでいる。
【0014】
ドリブンギヤ23は、内歯ギヤ23aを有し、この内歯ギヤ23aがピニオン21aと噛み合う。ドリブンギヤ23は、内歯ギヤ23aを形成するための円弧状の穴部23bを有しており、この円弧状穴部23bに、ベースプレート22の先端部が挿通されている。この結果、ベースプレート22とドリブンギヤ23の内外の関係は、内歯ギヤ23a部分と、貫通穴22a部分とで逆転している。勿論、ドリブンギヤ23に形成するギヤを外歯とする態様も可能であり、例えばこの態様では、ベースプレート22の全体をドリブンギヤ23の車内側に位置させることも可能である。
【0015】
モジュラーパネル13の車外側(アウタパネル11とインナパネル12の間)には、リフトアーム24及び該リフトアーム24に結合される要素(ドリブンギヤ23を除く)が位置している。モジュラーパネル13には、リフトアーム24の回動中心となる、ベースプレート22の貫通穴22aと同心の貫通穴13aが穿設されている。この貫通穴13aは、貫通穴22aと同様に、例えばバーリング加工によって、円筒状部13a’を形成してなっている。貫通穴13aの径は、貫通穴22aの径より大きい。
【0016】
また、モジュラーパネル13とベースプレート22は、この貫通穴13a(貫通穴22a)の周縁部において互いに接触し、環状二枚重ね部分1322を形成しており、リフトアーム24にはこの二枚重ね部分1322部分に対応させて、これに摺接する環状突起24aが形成されている。
【0017】
リフトアーム24には、モジュラーパネル13の貫通穴13aに嵌まり込む有底円筒状部24bが形成されている。この有底円筒状部24bは、貫通穴13aの周縁に形成された突部に対応してこれと摺接する大径筒状部(摺接部)24b1と、貫通穴22a(円筒状部22a’)に対応してこれと摺接する小径筒状部(摺接部)24b2と、底部24b3とを有している。リフトアーム24の底部24b3は、ドリブンギヤ23と当接し、複数のかしめピン24dで固定されている。かしめピン24dの代わりに、溶接その他の固定手段を用いてもよい。リフトアーム24の方向とドリブンギヤ23の回転位相とは両者の固定前に定められる。ドリブンギヤ23に固定されたリフトアーム24は、ドリブンギヤ23が電動駆動ユニット21によって回転駆動されると、有底円筒状部24b(貫通穴13a、22a)を中心に回転駆動されることとなる。
【0018】
リフトアーム24の中間部には、図2に示すように、イコライザアーム26が軸25で枢着されている。リフトアーム24の先端部には、スライダ(ローラ)27が枢着され、このスライダ27は、ウインドガラス19の下端部に沿わせて固定するリフトアームブラケット29内に摺動自在に位置している。イコライザアーム26の上端部には、リフトアームブラケット29に嵌まるスライダ(ローラ)30が枢着され、下端部には、別にスライダ(ローラ)31が枢着されている。このスライダ31は、モジュラーパネル13に固定される姿勢維持レール32に転動自在に嵌まる。
【0019】
上記構成の本Xアーム式ウインドレギュレータ20は、ベースプレート22とモジュラーパネル13の間に電動駆動ユニット21を挟着し、モジュラーパネル13の車外側から、モジュラーパネル13のボルト挿入穴13cと間隔設定柱21eのボルト挿入穴21fに固定ボルト40を挿入し、ベースプレート22のナット22cに螺合固定する。このようにモジュラーパネル13、電動駆動ユニット21、ベースプレート22を共締め固定することにより、モジュラーパネル13とベースプレート22の支持強度が高められる。従って、モジュラーパネル13とベースプレート22を薄肉化しても、リフトアーム24から入力される荷重を支持するに必要な強度が得られる。また、この実施形態では、間隔設定柱21e(共締め固定部)がピニオン21aに関し、貫通穴22aの反対側と、貫通穴22aとピニオン21aの中間とに位置しているため、電動駆動ユニット21の支持強度が向上する。従来は、ピニオン21aに関し、貫通穴22aとは反対側においてのみ、電動駆動ユニット21がベースプレート22に固定されていたため、十分な支持強度を得ることが難しかった。
【0020】
上記構成のXアーム式ウインドレギュレータ20は、組立状態で電動駆動ユニット22を駆動してピニオン21aを正逆に駆動すると、ドリブンギヤ23を介してリフトアーム24が貫通穴22a(有底円筒状部24b)を中心に揺動し、その結果、リフトアームブラケット29(ウインドガラス19)が、イコライザアーム26、スライダ27、30、31、姿勢維持レール32により略水平状態に保持されながら昇降運動する。この昇降動作自体は、通常のXアーム式ウインドレギュレータのそれと実質的に相違がない。
【0021】
そして、本実施形態では、モジュラーパネル13とベースプレート22の二枚重ね部分1322において、リフトアーム24の環状突起24aが摺接しているため、モジュラーパネル13とベースプレート22を薄肉化しても必要な強度が得られ、あるいはリフトアーム24を安定した状態で回動自在に支持することができる。さらに、リフトアーム24の有底円筒状部24bは、大径筒状部24b1と小径筒状部24b2を有する二段筒状構造に形成され、大径筒状部24b1がモジュラーパネル13の円筒状部13a’に、小径筒状部24b2がベースプレート22の貫通穴22aにそれぞれ回動自在に摺接しているため、二重の回転支持機構及び二重の防水機構が得られる。円筒状部13a’は、リフトアーム24とドリブンギヤ23を固定する際に、二枚重ね部分1322を支点としてリフトアームに押されて撓むので、環状突起24aと二枚重ね部分1322との間の防水効果がさらに向上する。
【0022】
なお、リフトアームブラケット29(ウインドガラス19)を昇降させるアーム式ウインドレギュレータは、Xアーム式の他、イコライザアーム26を省略した形のシングルアーム式も知られており、以上の実施形態は、Xアーム式、シングルアーム式を問わず適用できる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、電動駆動ユニットとそのベースプレートをモジュラーパネルの車内側に配置するタイプのアーム式ウインドレギュレータにおいて、強度を損なうことなく、構成部品、特にモジュラーパネルとベースプレートの薄型化、軽量化を図ることができる。また、リフトアームの回動部分の支持強度を高めるとともに、その防水構造を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるアーム式ウインドレギュレータを有する車両ドアの側面図である。
【図2】同アーム式ウインドレギュレータの要部の側面図である。
【図3】同分解状態の斜視図である。
【図4】図2のIV‐IV線に沿う断面図である。
【図5】リフトアームの回動中心部分の断面斜視図である。
【符号の説明】
10 車両ドア
11 アウタパネル
12 インナパネル
13 モジュラーパネル
13a 貫通穴
13a’ 円筒状部
13c ボルト挿入穴
14 ドア部品組付穴
19 ウインドガラス
20 Xアーム式ウインドレギュレータ
21 電動駆動ユニット
21a ピニオン
21e 間隔設定柱
21f ボルト挿入穴
22 ベースプレート
22a 貫通穴
22a’ 22b’ 円筒状部
22b ピニオン支持穴
22c ナット
1322 二枚重ね部分
23 ドリブンギヤ
23a 内歯ギヤ
23b 円弧状穴部
24 リフトアーム
24a 環状突起
24b 有底円筒状部
24b1 大径筒状部(摺接部)
24b2 小径筒状部(摺接部)
24b3 底部
24d かしめピン
26 イコライザアーム
27 30 31 スライダ
29 リフトアームブラケット
32 姿勢維持レール
40 固定ボルト
Claims (5)
- 車外側から順に、アウタパネル、インナパネル及び該インナパネルのドア部品組付穴に対応するモジュラーパネルを有する車両ドア;
上記モジュラーパネルの車内側に位置する、ピニオンを備えた電動駆動ユニット、この電動駆動ユニットを支持するベースプレート、及び上記ピニオンに噛み合うドリブンギヤ;
上記モジュラーパネルに形成した貫通穴;
上記モジュラーパネルの車外側に位置し、上記モジュラーパネルの貫通穴を介して上記ドリブンギヤに固定され、該貫通穴を中心とする回動運動により、アウタパネルとインナパネルの間に位置するウインドガラスを昇降させるリフトアーム;
を備え、
上記電動駆動ユニットは、上記ベースプレートとモジュラーパネルとの間に挟着され、かつ該ベースプレートとモジュラーパネルの間隔を定める間隔設定部材が予め一体に形成されており、
該ベースプレート、電動駆動ユニット及びモジュラーパネルが共締め固定されていることを特徴とするアーム式ウインドレギュレータ。 - 請求項1記載のウインドレギュレータにおいて、上記ベースプレート、電動駆動ユニット及びモジュラーパネルの共締め固定位置は、少なくとも、上記貫通穴と電動駆動ユニットのピニオンとの間と、該ピニオンに関し上記貫通穴の反対側とに設定されているアーム式ウインドレギュレータ。
- 請求項1または2記載のウインドレギュレータにおいて、上記ベースプレートは、モジュラーパネルの貫通穴周辺まで延長されていて、該ベースプレートにモジュラーパネルの貫通穴に対応する貫通穴が形成されており、かつ、ベースプレートとモジュラーパネルは、それぞれの貫通穴周縁で重ねられていて、この二枚重ね部分に、上記リフトアームに形成した環状突起が摺接するアーム式ウインドレギュレータ。
- 請求項3記載のウインドレギュレータにおいて、上記リフトアームは、上記ベースプレートとモジュラーパネルのそれぞれの貫通穴またはその周縁に、回動自在に摺接しているアーム式ウインドレギュレータ。
- 請求項3または4記載のウインドレギュレータにおいて、上記ベースプレートの貫通穴の径はモジュラーパネルの貫通穴の径より小径であり、リフトアームには、このベースプレートとモジュラーパネルの貫通穴またはその周縁にそれぞれ摺接する摺接部が形成されているアーム式ウインドレギュレータ。
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