JP3811346B2 - 車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、この種の集合体としては、合成樹脂製インストルメントパネルと、合成樹脂製空調用ダクトとを振動溶着したものが知られている。この場合、インストルメントパネルは、射出成形による裏側成形パネルと、その表面に接着剤を介して貼合された表皮とより構成される。また空調用ダクトは枝分れした複数のダクト部分を持つようにブロー成形され、それらダクト部分に連なるピンチオフ部が被溶着部として用いられている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来のインストルメントパネルにおいては、裏側成形パネルへの接着剤塗布作業および表皮貼合せのための発泡成形作業が必須であり、また接着剤の硬化時間も必要であることからインストルメントパネル、延いては集合体製造のための工数が多い、という問題があった。
【０００４】
また裏側成形パネルにおいて、その裏面側に、例えば部材取付用突出部等の肉厚部分を形成すると、その裏側成形パネルの表面側に肉厚部分に対応した引け、つまり凹部が形成され、その凹部に表皮が倣うためインストルメントパネル表面の一様性が低下して、集合体の商品価値が損われる、という問題もあった。
【０００５】
さらに従来の集合体は、空調用ダクトが、本来の機能からすれば余分である被溶着部を有する、ということに起因して重量が増す、という問題もあった。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本発明は、製造工数を削減され、またインストルメントパネル表面の一様性を確保され、その上、軽量化が図られた前記インストルメントパネル−空調用ダクト集合体を提供することを目的とする。
【０００７】
前記目的を達成するために、請求項１の発明は、空調用のダクトをインストルメントパネルに一体化した車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体であって、
前記インストルメントパネルが合成樹脂製表側成形パネルと、その合成樹脂製表側成形パネルの裏面略全体に及ぶ合成樹脂製裏側成形パネルとを有し、前記裏側成形パネルは、それの前記表側成形パネルとの対向面に在る複数の突出部を介し前記表側成形パネルと振動溶着されていて、それら両成形パネル間には断熱用間隙が存在し、前記裏側成形パネルの裏面には、前記ダクトの長手方向に各々延びていて相互に間隔をおいて並列する板状の一対の取付部が一体に突設され、その両取付部にそれぞれ形成した係合孔に、合成樹脂製の樋状ダクト本体の相対向する両側壁の端縁に設けた係合爪がそれぞれ係合されていて、その両取付部と、該裏側成形パネルの、該両取付部により挟まれた部分と、該ダクト本体とを用いて前記ダクトが構成され、前記係合爪と係合孔との係合は前記両側壁の弾性復元力によって保持され、前記裏側成形パネルの、前記両取付部に挟まれた部分は、該部分と対向する合成樹脂製表側成形パネルに沿う板状に形成されていて、該部分にも、該合成樹脂製表側成形パネルと振動溶着させる複数の前記突出部が存することを特徴とし、また請求項２の発明は、請求項１の前記特徴に加えて、前記係合爪と係合孔との間に設けられて前記ダクトから前記係合孔を通じた冷気および暖気の外部への漏出を防止するシール部材を備えることを特徴とする。
【０００８】
前記のようにインストルメントパネルは表側成形パネルと裏側成形パネルとを振動溶着したものであるから、その製造工数、延いては集合体の製造工数が削減される。
【０００９】
また裏側成形パネルに、その表面に引けが生じるような肉厚部を設けても、そのパネルは表側成形パネルと離間しているので表側成形パネルに前記引けの影響が現われることはなく、これによりインストルメントパネル表面の一様性が確保される。
【００１０】
また裏側成形パネルの裏面には、ダクトの長手方向に各々延びていて相互に間隔をおいて並列する板状の一対の取付部が一体に突設され、その両取付部にそれぞれ形成した係合孔に、合成樹脂製の樋状ダクト本体の相対向する両側壁の端縁に設けた係合爪がそれぞれ係合され、その係合が前記両側壁の弾性復元力によって保持されるので、ダクト本体の裏側成形パネルへの組付けを、ビス等の止め金具を用いることなく行うことが可能であり、この種の集合体のリサイクル性を向上させることができる。
【００１１】
さらに空調用ダクトは、その周壁の一部となる裏側成形パネルの一部（即ち裏側成形パネル裏面に相互に間隔をおいて一体に突設されダクトの長手方向に各々延びる前記一対の取付部と、裏側成形パネルの該両取付部により挟まれた部分）と、合成樹脂製の樋状ダクト本体とにより、本来の機能を果すに必要なパイプ状形態を持てばよいので、その軽量化、延いては集合体の軽量化が達成される。その上、裏側成形パネルの両取付部に挟まれた部分は、該部分と対向する合成樹脂製表側成形パネルに沿う板状に形成されていて、該部分にも、該合成樹脂製表側成形パネルと振動溶着させる複数の前記突出部が存する。
【００１２】
また冷房時に、ダクト内に冷気を流した場合、その冷気によって裏側成形パネルの一部およびその近傍が冷やされるが、その冷えの表側成形パネルへの伝達は断熱用間隙によって阻止されるので、表面側成形パネルに結露が生じるようなことはない。
【００１３】
【発明の実施の形態】
図１，２に示す車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体１において、インストルメントパネル２は合成樹脂製表側成形パネル３と、そのパネル３の裏面略全体に及ぶ合成樹脂製裏側成形パネル４とを有する。裏側成形パネル４は、それの表側成形パネル３との対向面、つまり表面に在る複数の突出部、実施例では車両の左右方向に延びる凸条５を介して表側成形パネル３と振動溶着されており、それら両成形パネル３，４間には断熱用間隙６が存在する。
【００１４】
表側成形パネル３は、単層構造のシートまたは二層以上の層を持つシート、実施例では三層構造のシートを用いて真空成形されたもので、ＰＰ（ポリプロピレン）よりなる基層７と、その基層７と一体で、且つＰＰ発泡体よりなるクッション層８と、そのクッション層８と一体で、且つＴＰＯ（サーモプラスチックオレフィン）よりなる表層９とより構成され、その基層７が裏側形成パネル４と振動溶着される。
【００１５】
裏側成形パネル４は単層構造であって、ＰＰを用いて射出成形されたものである。このパネル４はインストルメントパネル２の強度メンバであるから、その厚さは表側成形パネル３の基層７の厚さを上回るように設定される。基層７は、集合体１の軽量化の要請から、例えば振動溶着に支障を来たさない最小厚さに設定される。
【００１６】
前記のようにインストルメントパネル２は表側成形パネル３と裏側成形パネル４とを振動溶着したものであるから、その製造工数、延いては集合体１の製造工数を削減することができる。
【００１７】
空調用ダクト１０は、本発明のダクトとしての第１ダクト１１と、その第１ダクト１１に連通する第２ダクト１２とを有する。第１ダクト１１は、インストルメントパネル２の車両前後方向略中央部において車両左右方向に延びている。一方、第２ダクト１２は、インストルメントパネル２の車両前後方向前部に存するデフロスタの空気吹出し口１３に沿って車両左右方向に延びている。その空気吹出し口１３は表側および裏側成形パネル３，４にそれぞれ形成された孔部１４，１５よりなり、それら１４，１５の口縁は相互に密着している。
【００１８】
第１ダクト１１を構成すべく、裏側成形パネル４は、その裏面の車両前後方向略中央部に、該ダクト１１の長手方向に各々延びていて所定の間隔を存して相対向した並列状態で各々突出する一対の板状取付部１６を有する。一方、第１ダクト１１は合成樹脂製樋状ダクト本体１７を有し、その相対向する両側壁１８が両取付部１６にそれぞれ取付けられる。実施例では、両側壁１８端縁から、それら側壁１８外面と鋭角をなすように折曲がる係合爪１９が、両取付部１６の係合孔２０に、それら取付部１６の内側から係合する。両係合爪１９は両側壁１８間を強制的に狭めて両取付部１６間に挿入されているので、両係合爪１９と両係合孔２０との係合は両側壁１８の弾性復元力によって保持される。
【００１９】
各係合孔２０の上側内面と、それと対向する各係合爪１９の外面との間にはそれぞれシール部材２１が設けられ、これにより両孔部２０を通じた冷気および暖気の外部への漏出が防止される。
【００２０】
このように第１ダクト１１は、それの周壁の一部として用いられる、裏側成形パネル４の一部２２（つまり両取付部１６および裏側成形パネル４の、両取付部１６によって挟まれた部分２３）と、前記合成樹脂製樋状ダクト本体１７とで構成されている。また裏側成形パネル４の、前記両取付部１６に挟まれた前記部分２３は、該部分２３と対向する合成樹脂製表側成形パネル３に沿う板状に形成されており、該部分２３にも、該合成樹脂製表側成形パネル３と振動溶着させる複数の前記突出部（突条５）が相互に間隔をおいて存す る。
【００２１】
図３にも示すように、第２ダクト１２を構成すべく、裏側成形パネル４において、その空気吹出し口用孔部１５両側の平坦な部分がそれぞれ取付部２４として用いられる。一方、第２ダクト１２は合成樹脂製樋状ダクト本体２５を有し、その相対向する両側壁２６が両取付部２４にそれぞれ取付けられる。実施例では、両側壁１８端縁にそれぞれ係合部２７が連設され、各係合部２７において、側壁２６端縁から外側へ略直角に折曲がる平坦部分２８が各取付部２４裏面と対向し、また各平坦部分２８外縁から立上がる第１係合部分２９が、各取付部２４の係合孔３０の外側内面に係合し、さらに各第１係合部分２９から外側へ、且つ平坦部分２８と略平行するように折曲がる第２係合部分３１が各取付部２４の表面側で係合孔３０口縁に係合する。両第２係合部分３１は両側壁２６間を強制的に狭めて両係合孔３０をそれぞれ通されているので、両第１、第２係合部分２９，３１と、両係合孔３０およびそれらの口縁との係合は両側壁２６の復元力によって保持される。
【００２２】
両取付部２４の裏面と、それらと対向する両平坦部分２８の上面との間にはそれぞれシール部材２１が設けられ、これにより両者２４，２８間の隙間を通じた冷気および暖気の外部への漏出が防止される。
【００２３】
このように第２ダクト１２は、それの周壁の一部として、裏側成形パネル４の一部２２、つまり空気吹出し口用孔部１５を有する部分を用いて構成されている。両樋状ダクト本体１７，２５は、例えばＰＰを用いて射出成形されたものである。
【００２４】
前記のように空調用ダクト１０は、その周壁の一部が裏側成形パネル４の一部２２であり、且つ本来の機能を果すに必要なパイプ状形態を持てばよいので、その軽量化、延いては集合体１の軽量化を達成することができる。
【００２５】
また冷房時に、空調用ダクト１０内に冷気を流した場合、その冷気によって裏側成形パネル４の一部２２およびその近傍が冷やされるが、その冷えの表側成形パネル３への伝達は断熱用間隙６によって阻止されるので表面側成形パネル３に結露が生じることはない。 裏側成形パネル４は各種部材の支持部材としても機能することができ、例えばそのパネル４の裏面にワイヤハーネス取付部３２、メータインナパネル取付部３３等が突出される。このように裏側成形パネル４に、その表面に引けが生じるような肉厚部を設けても、そのパネル４は表側成形パネル３と離間しているので表側成形パネル３に前記引けの影響が現われることはなく、これによりインストルメントパネル２表面の一様性が確保される。
前記集合体１においては、表側および裏側成形パネル３，４ならびに両樋状ダクト本体１７，２５を同一材料を用いて構成することが可能であり、また両パネル３，４の接合および両ダクト本体１７，２５の裏側成形パネル４への組付けを、ビス等の止め金具を用いることなく行うことが可能であるから、この種の集合体１のリサイクル性を向上させることができる。
【００２６】
【発明の効果】
本発明によれば、前記のように構成することによって、製造工数を削減され、またインストルメントパネル表面の一様性を確保され、その上、冷房時に表側成形パネルに結露が生じるようなことがなく、更に軽量化が図られたインストルメントパネル−空調用ダクト集合体を提供することができる。
【００２７】
また特に裏側成形パネルの裏面には、ダクトの長手方向に各々延びていて相互に間隔をおいて並列する板状の一対の取付部が一体に突設され、その両取付部にそれぞれ形成した係合孔に、合成樹脂製の樋状ダクト本体の相対向する両側壁の端縁に設けた係合爪がそれぞれ係合され、その係合が前記両側壁の弾性復元力によって保持されるので、ダクト本体の裏側成形パネルへの組付けを、ビス等の止め金具を用いることなく行うことが可能であり、この種の集合体のリサイクル性を向上させることができる。
【００２８】
さらに前記ダクトは、その周壁の一部となる裏側成形パネルの一部（即ち裏側成形パネル裏面に相互に間隔をおいて一体に突設されダクトの長手方向に各々延びる一対の取付部と、裏側成形パネルの、該両取付部により挟まれた部分）と、合成樹脂製の樋状ダクト本体とにより、本来の機能を果すに必要なパイプ状形態を持てばよいので、その軽量化、延いては集合体の軽量化が達成される。その上、裏側成形パネルの、両取付部に挟まれた部分は、該部分と対向する合成樹脂製表側成形パネルに沿う板状に形成されていて、該部分にも、該合成樹脂製表側成形パネルと振動溶着させる複数の前記突出部が存する。
【００２９】
また特に請求項２の発明によれば、前記ダクトから前記係合孔を通じた冷気および暖気の外部への漏出を防止するシール部材が備えられる。
【図面の簡単な説明】
【図１】 インストルメントパネル−空調用ダクト集合体の概略平面図である。
【図２】 図１の２−２線拡大断面図である。
【図３】 図２，３矢示部の拡大図である。
【符号の説明】
１………インストルメントパネル−空調用ダクト集合体
２………インストルメントパネル
３………表側成形パネル
４………裏側成形パネル
５………凸条（突出部）
６………断熱用間隙
１１……第１ダクト（空調用のダクト）
１６……取付部
１７……樋状ダクト本体
１８……側壁
１９……係合爪
２０……係合孔
２１……シール部材
２３……裏側成形パネルの、両取付部により挟まれた部分

Claims (2)

1. 空調用のダクト（１１）をインストルメントパネル（２）に一体化した車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体であって、
   前記インストルメントパネル（２）が合成樹脂製表側成形パネル（３）と、その合成樹脂製表側成形パネル（３）の裏面略全体に及ぶ合成樹脂製裏側成形パネル（４）とを有し、前記裏側成形パネル（４）は、それの前記表側成形パネル（３）との対向面に在る複数の突出部（５）を介し前記表側成形パネル（３）と振動溶着されていて、それら両成形パネル（３，４）間には断熱用間隙（６）が存在し、前記裏側成形パネル（４）の裏面には、前記ダクト（１１）の長手方向に各々延びていて相互に間隔をおいて並列する板状の一対の取付部（１６）が一体に突設され、その両取付部（１６）にそれぞれ形成した係合孔（２０）に、合成樹脂製の樋状ダクト本体（１７）の相対向する両側壁（１８）の端縁に設けた係合爪（１９）がそれぞれ係合されていて、その両取付部（１６）と、該裏側成形パネル（４）の、該両取付部（１６）により挟まれた部分（２３）と、該ダクト本体（１７）とを用いて前記ダクト（１１）が構成され、前記係合爪（１９）と係合孔（２０）との係合は前記両側壁（１８）の弾性復元力によって保持され、前記裏側成形パネル（４）の、前記両取付部（１６）に挟まれた部分（２３）は、該部分（２３）と対向する合成樹脂製表側成形パネル（３）に沿う板状に形成されていて、該部分（２３）にも、該合成樹脂製表側成形パネル（３）と振動溶着させる複数の前記突出部（５）が存することを特徴とする、車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体。
2. 前記係合爪（１９）と係合孔（２０）との間に設けられて前記ダクト（１１）から前記係合孔（２０）を通じた冷気および暖気の外部への漏出を防止するシール部材（２１）を備えることを特徴とする、請求項１記載の車両用インストルメントパネル−空調用ダクト集合体。

Images