JP3811217B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弁ケーシングと、該弁ケーシングの縦方向孔内に配置された弁座体と、該弁座体の下流側で前記縦方向孔内に配置されていて少なくとも１つの噴出穴を設けた噴出穴付きディスクとを有する内燃機関用の燃料噴射弁に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第４０２６７２１号明細書に基づいてすでに公知になっている燃料噴射弁では、燃料噴射弁の閉弁後に、弁閉鎖体と弁座体と噴出穴付きディスクとの間の所謂「無効空間容積」内に僅量の燃料残分が残留し、該燃料残分から原則として、低温で沸騰する燃料成分のみが気化し、他面において、比較的高い温度で始めて沸騰する燃料成分はそのまま残留し、従って燃料噴射弁の稼働時間中に不利なことには内燃機関の一連の運転期と停止期の後に少なくとも１つの噴出穴の領域内に沈積物が生成し、これによって、噴射された燃料量が不都合に減少し、ひいては内燃機関に供給される燃料−空気混合気が希薄になる。その結果、内燃機関の運転挙動が劣化する。それ故に、燃料噴射弁の噴出端部に保護キャップを配置し、かつ該保護キャップには少なくとも１つの噴出穴の直ぐ近くに少なくとも１つの凹設部を設けて、前記の少なくとも１つの噴出穴から流出する燃料に対して毛管作用を及ぼすことによって、燃料噴射弁の閉弁後に、場合によっては少なくとも１つの噴出穴に残留している燃料を前記の少なくとも１つの凹設部内へ引き込ませ、かつ気化によって残存する沈積物を、前記の少なくとも１つの凹設部内にだけ留まらせるようにした形式の、別の燃料噴射弁がドイツ連邦共和国特許出願公開第３９２７３９０号明細書に基づいて公知になっている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、内燃機関の停止後に噴出穴付きディスクの噴出穴に残留する燃料の気化に起因した沈積物の生成並びに、該沈積物に起因した噴出穴横断面積の減少化及び該横断面積減少に起因した燃料−空気混合気の不都合な希薄化を防止することである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の構成手段は、少なくとも１つの噴出穴の直ぐ近くで縦方向孔内には、中心穴を有するスペーサディスクが配置されており、かつ噴出穴付きディスクとスペーサディスクとの間に、前記の少なくとも１つの噴出穴から流出する燃料に対して毛管作用を外向き半径方向に及ぼす少なくとも１つの凹設部が設けられている点にある。
【０００５】
【作用】
本発明では噴出穴付きディスクの下流側で弁ケーシングの縦方向孔内に、僅かな軸方向間隔をおいてスペーサディスクが配置されており、該スペーサディスクは、噴出穴から流出する燃料に対して毛管作用を外向き半径方向に及ぼす凹設部を軸方向で制限しており、従って噴出穴付きディスクとスペーサディスクとの間に毛管作用ディスクを配置し、該毛管作用ディスクの輪郭を相応に形成することによって、毛管作用を最適化することが可能になる。
【０００６】
【発明の実施の形態】
特許請求の範囲の請求項２以降に記載した手段によって、本発明の燃料噴射弁の更なる有利な構成と改良が可能になる。また噴射穴付きディスクとスペーサディスクとの間に配置された毛管作用ディスク内に少なくとも１つの凹設部を形成するのが特に有利であり、これによって、凹設部の輪郭を一層簡便に製作することができ、かつ該凹設部の容積を、必要な大きさに制限することが可能である。
【０００７】
【実施例】
次に図面に基づいて本発明の実施例を詳説する。
【０００８】
図１には、混合気圧縮・火花点火式の内燃機関の燃料噴射装置用の燃料噴射弁の１例が図示されており、この場合、本発明により１実施例として構成されている点を除いた構成はすでに公知である。燃料噴射弁は管状の弁ケーシング１を有し、該弁ケーシング内には弁縦軸線２に対して同心的に縦方向孔３が形成されている。該縦方向孔３内には、例えば管状の弁ニードル５が配置されており、該弁ニードルはその下流側端部６で球状の弁閉鎖体７と接合されており、該弁閉鎖体の外周面には、例えば５つの扁平面取り部８が設けられている。
【０００９】
燃料噴射弁の作動は公知のように電磁式に行われる。弁ニードル５を軸方向に運動させ、ひいては燃料噴射弁を戻しばね（図示せず）のばね力に抗して開弁させるため又は前記ばね力の作用方向に閉弁させるためには、図示は省いたが電磁コイル、可動磁極子及びコアを有する電磁回路が使用される。前記可動磁極子は、弁閉鎖体７から離反した方の弁ニードル５の端部に結合されておりかつコアに整合されている。
【００１０】
弁閉鎖体７を軸方向運動時にガイドするためには円筒形の弁座体１６のガイド孔１５が使用される。該円筒形の弁座体１６は、弁縦軸線２に対して同心的に延びる縦方向孔３内に、弁ケーシング３の噴射側端部から押込まれている。弁座体１６の外周は、弁ケーシング１の縦方向孔３よりも僅かに小さな直径を有している。弁閉鎖体７から離間した、弁座体１６の下端面１７には、例えばカップ状に構成された噴出穴付きディスク２１の底部部分２０の上端面１９が接しており、かつ該底部部分２０は弁座体１６に同心的に固着接合されている。噴出穴付きディスク２１の底部部分２０はその中央域２４に、少なくとも１つの噴出穴２５、例えば腐食加工又は打抜き加工によって成形された４つの噴出穴２５を有している。
【００１１】
カップ状の噴出穴付きディスク２１の底部部分２０には環状の保持縁部２６が続き、該保持縁部は、弁座体１６から離反する軸方向に延びており、かつ端部２７まで円錐形状に外向きに曲げ成形されている。弁座体１６の外周直径が弁ケーシング１の縦方向孔３の直径よりも小さいので、縦方向孔３と、やや円錐形状に外向きに曲げ成形された保持縁部２６との間でだけ半径方向の押圧作用が生じるにすぎない。
【００１２】
弁座体１６とカップ状の噴出穴付きディスク２１とから成る弁座部品の、縦方向孔３内への押込み深さが、弁ニードル５の軸方向ストロークを決定する。それというのは、電磁コイルの非励磁時には弁ニードル５の一方の終端位置が、弁座体１６の弁座面２９に対する弁閉鎖体７の当接によって確定されているからである。電磁コイルの励磁時における弁ニードル５の他方の終端位置は、例えば弁ニードル５と結合された可動磁極子が電磁回路のコアに接触することによって確定される。従って弁ニードル５の両終端位置間の距離が前記の軸方向ストロークになる訳である。
【００１３】
噴出穴付きディスク２１の保持縁部２６はその端部２７で縦方向孔３の周壁と液密に固着結合されている。このために保持縁部２６の端部２７と縦方向孔３の周壁との間には円環状の溶接継手３０が設けられている。中央域２４の外側領域では別の円環状の溶接継手３１によって底部部分２０は弁座体１６と液密に結合されている。
【００１４】
球状の弁閉鎖体７は、流動方向に截頭円錐形状にテーパを成している、弁座体１６の弁座面２９と協働し、該弁座面は軸方向で見てガイド孔１５と弁座体１６の下端面１７に穿設された流出口３２との間に構成されている。軸方向運動時に弁閉鎖体７並びに弁ニードル５を正確にガイドするためにガイド孔１５の直径は、球状の弁閉鎖体７がその扁平面取り部８以外では、僅かな半径方向距離分だけガイド孔１５に侵入するように構成されている。
【００１５】
噴出穴付きディスク２１の中央域内に位置している噴出穴２５は流出口３２によってカバーされる。弁閉鎖体７と底部部分２０の上端面１９と弁座面２９の周壁と流出口３２との間には集合室３７が形成され、弁座面２９からの弁閉鎖体７の離間時に燃料は、噴出穴２５によって調量して内燃機関の空気吸込み導管内へ噴出する以前に先ず前記集合室３７内へ到達する。該集合室３７内には、燃料噴射弁が閉弁した後にも或る程度の少量の燃料が残留する。それ故に該集合室によって形成されるこの所謂「無効空間容積」をできるだけ小さく構成して、燃料噴射弁の閉弁後に該集合室内に残留する燃料の量を可能な限り僅かにしようとする対策が種々講ぜられている。燃料噴射弁の閉弁後に燃料が集合室内に収容されたままになることによる欠点は、内燃機関の停止後にエンジンルーム側からの加熱に基づいて燃料が少なくとも部分的に気化する点にある。しかしながら通例、比較的低温度で気化する燃料成分の蒸発だけが生じ、これに対して比較的高温度で気化する燃料成分は残留し噴出穴２５に沈積する結果になる。しかも該噴出穴２５に沈積物が生じると、燃料噴射弁の開弁時間が一定であっても、空気吸込み導管内へ噴出される燃料量は、より僅少になり、これによって燃料と空気の混合気が希薄になり、内燃機関の運転挙動が不都合に変動することになる。
【００１６】
噴出穴付きディスク２１の下流側で弁ケーシング１の縦方向孔３内にはスペーサディスク４０が配置されており、該スペーサディスクは、弁縦軸線２に対して同心的に延びる中心穴４１を有し、該中心穴の直径は、流出口３２の直径よりも大である。スペーサディスク４０は噴出穴付きディスク２１と同様に例えばカップ状に成形されており、かつ円錐形状に外向きに延びるスペーサディスク保持縁部４２を有し、該スペーサディスク保持縁部は、噴出穴付きディスク２１から離反する方へ向かって延びている。スペーサディスク保持縁部４２はその自由端部４３では、縦方向孔３よりも大きな直径を有しているので、スペーサディスク４０は縦方向孔３内に圧入されておりかつ前記自由端部４３は半径方向張力をもって縦方向孔３の周壁に当接している。また縦方向孔３内にスペーサディスク４０を固定する付加的な態様は、自由端部４３を溶接継手４４によって縦方向孔３内に固着する点にあり、溶接継手４４はこの場合、円環状に構成されていても、或いは個々の溶接点として構成されていてもよい。スペーサディスク４０のスペーサディスク底部４５と、噴出穴付きディスク２１の底部部分２０との間には、弁縦軸線２に対して平行に約０．５〜１ｍｍの軸方向間隔が設けられているので、底部部分２０とスペーサディスク底部４５との間には凹設部４７が形成され、該凹設部は、軸方向で見れば、約０．５〜１ｍｍの極く僅かな拡がりを有しているにすぎない。ところで内燃機関を停止した後に集合室３７内で燃料が気化しかつ燃料が該集合室３７から噴出穴２５内へ移流するようなことが生じると、前記凹設部４７は、噴出穴２５の部位に存在している燃料に対して恰も毛管のように作用して、該燃料を噴出穴２５から外向き半径方向に凹設部４７内へ引き込む。このように凹設部４７を、噴出穴付きディスク２１とスペーサディスク４０との間に形成される環状の毛管作用ギャップとして構成することが、本発明の第１実施例に他ならない。本発明の第２実施例は同じく図１に、また付加的に図２に図示されている。本発明のこの第２実施例では、縦方向孔３内に、しかも噴出穴付きディスク２１とスペーサディスク４０との間に毛管作用ディスク４８が嵌装されており、該毛管作用ディスクの上面は噴出穴付きディスク２１の底部部分２０に接し、また下面はスペーサディスク４０のスペーサディスク底部４５に接している。毛管作用ディスク４８は例えばプラスチック又はゴムから製作されている。図２では毛管作用ディスク４８は平面図で図示されている。特に図２から判るように、毛管作用ディスク４８は星形貫通口４９を有し、該星形貫通口自体は、半径方向に放射状に延びる複数のスリット５０を有している。該スリット５０は例えば周方向で等しい相互間隔を有し、かつ、噴出穴２５とスペーサディスク４０の中心穴４１とに向かって開いている。その場合前記スリット５０は例えば、弁縦軸線２に対して直角な横方向に測定した内法幅が毛管作用ディスク４８の円周へ向かって先細又は末広がりになるように構成されている。その場合、スリット５０の周方向内法幅は、スペーサディスク４０の中心穴４１の直径に対比して小さい。毛管作用ディスク４８の配置によって、噴出穴付きディスク２１とスペーサディスク４０との間に毛管作用を得るのに所望される毛管容積を簡単に最適化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の１実施例による燃料噴射弁の部分的な断面図である。
【図２】毛管作用ディスクの平面図である。
【符号の説明】
１ 弁ケーシング、 ２ 弁縦軸線、 ３ 縦方向孔、 ５ 弁ニードル、 ６ 下流側端部、 ７ 弁閉鎖体、 ８ 扁平面取り部、 １５ガイド孔、 １６ 弁座体、 １７ 下端面、 ２０ 底部部分、 ２１ 噴出穴付きディスク、 ２４ 中央域、 ２５ 噴出穴、 ２６ 保持縁部、 ２７ 端部、 ２９ 弁座面、 ３０，３１ 溶接継手、３２ 流出口、 ３７ 集合室、 ４０ スペーサディスク、 ４１ 中心穴、 ４２ スペーサディスク保持縁部、 ４３ 自由端部、 ４４溶接継手、 ４５ スペーサディスク底部、 ４７ 凹設部、 ４８ 毛管作用ディスク、 ４９ 星形貫通口、 ５０ スリット

Claims (10)

1. 弁ケーシングと、該弁ケーシングの縦方向孔内に配置された弁座体と、該弁座体の下流側で前記縦方向孔内に配置されていて少なくとも１つの噴出穴を設けた噴出穴付きディスクとを有する内燃機関用の燃料噴射弁において、少なくとも１つの噴出穴（２５）の直ぐ近くで縦方向孔（３）内には、中心穴（４１）を有するスペーサディスク（４０）が配置されており、かつ噴出穴付きディスク（２１）とスペーサディスク（４０）との間に、前記の少なくとも１つの噴出穴（２５）から流出する燃料に対して毛管作用を外向き半径方向に及ぼす少なくとも１つの凹設部（４７，５０）が設けられていることを特徴とする、燃料噴射弁。
2. 少なくとも１つの凹設部（４７，５０）が中心穴（４１）の方に向かって開いておりかつ外向き半径方向に延びてスペーサディスク（４０）によってカバーされている、請求項１記載の燃料噴射弁。
3. 凹設部（４７）が環状に構成されている、請求項２記載の燃料噴射弁。
4. 噴出穴付きディスク（２１）には毛管作用ディスク（４８）が接し、該毛管作用ディスクにはスペーサディスク（４０）が接しており、かつ前記毛管作用ディスク（４８）内には、中心穴（４１）の方へ向かって開いた少なくとも１つの凹設部（４７，５０）が形成されている、請求項１記載の燃料噴射弁。
5. 毛管作用ディスク（４８）がプラスチックから成る、請求項４記載の燃料噴射弁。
6. 少なくとも１つの凹設部（４７，５０）がスリット状に形成されている、請求項４記載の燃料噴射弁。
7. 少なくとも１つの凹設部（４７，５０）が、半径方向に延在するにつれて、周方向で拡張又は縮小している、請求項６記載の燃料噴射弁。
8. 少なくとも１つの凹設部（４７，５０）の周方向内法幅が、スペーサディスク（４０）の中心穴（４１）の直径に対比して小さい、請求項６記載の燃料噴射弁。
9. 複数の凹設部（４７，５０）が周方向で相互に間隔をおいて設けられており、全体として１つの星形の開口輪郭を毛管作用ディスク（４８）内に形成している、請求項４記載の燃料噴射弁。
10. スペーサディスク（４０）がカップ状に形成されている、請求項１記載の燃料噴射弁。

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