JP3809135B2 - シラン変性されたポリビニルアセタール、その製造方法及びその使用 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシラン変性されたポリビニルアセタール、その製造方法並びにその使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
相応のポリビニルアルコールから相応のアルデヒドとのポリマー類似反応によって得られるポリビニルアセタールの製造は既に1924年から公知であり、その際、後に多数のアルデヒドが相応のポリビニルアセタールの製造のために使用されている。ポリビニルアセタールは3段階法(ポリビニルアセテート→ポリビニルアルコール→ポリビニルアセタール)で製造され、その際ビニルアセタール基の他にビニルアルコール単位及びビニルアセテート単位を更に有する生成物が得られる。とりわけポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール及びポリビニルブチラール(PVB)は商業的に重要とされている。以下では変性されたポリビニルアセタールとは前記の3種の単位ビニルアセテート、ビニルアルコール及びビニルアセタールの他になおも他のモノマー単位を有するポリビニルアセタールを意味する。
【0003】
ポリビニルアセタールのための最も大きな応用範囲は自動車構造及び建築物における安全ガラスの製造であり、その際、軟化されたポリビニルブチラールシートを中間層としてガラス板中で使用する。この使用目的のために、改善された遮断性及び塑性に優れたEP−A−368832号に記載されるスルホネート官能性、カルボキシレート官能性及びホスフェート官能性のアセタール単位で変性されたポリビニルブチラールとの混合物が提案されている。EP−A−634447号から、ポリマー主鎖中にスルホネート基含有のモノマー単位を有し、かつスルホネート官能性のポリビニルアルコールのアセタール化によって得られる変性されたポリビニルブチラールが公知である。
【0004】
アミノ基で変性されたポリビニルブチラールに関してはEP−A−461399号から公知である。これらは沈殿剤として使用される。ポリビニルブチラールに関する他の使用分野は腐蝕保護する被覆における使用であり、これは例えばEP−A−1055686号から引用され、そこでは第3級アルカノールアミンで変性されたポリビニルアセタールが使用される。
【0005】
なかでも、その良好な顔料結合力に基づいてポリビニルブチラールは塗料及び、特に印刷インキにおけるバインダーとしても使用される。この使用において、ポリビニルブチラールの有機溶剤は、できるだけ高いバインダー割合の場合に高い固体含量でインキを製造しうるためには、できるだけ低い溶液粘度を有するべきことが要求される。このための例は、DE−A−19641064号からの低い溶液粘度を有する変性されたポリビニルブチラールであり、これらはビニルアルコール単位及び1−アルキルビニルアルコール単位とのコポリマーのアセタール化によって得られる。
【0006】
先行技術に記載される全てのポリビニルアセタールが有する欠点は特定の基体への不十分な付着である。それに基づいて、接着促進剤の添加が多くの場合に必ず必要とされる。EP−B−0346768号において、結合を他のポリマー、特にポリビニルブチラールで改善するためにフィルム又はシートをアミノ官能性シラン、例えばN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランで被覆することが記載されている。ポリエチレンシート及びポリエステルシートの場合の結合の改善のために、ポリエステルシート及びポリエチレンシートをビニルトリメトキシシラン又はクロロプロピルトリメトキシシランのいずれかで被覆し、これはエチレン/ビニルアセテート−コポリマーベースのホットメルト接着剤での効果的な積層をもたらす(E. Pleuddemann, "Bonding through Coupling Agents", Plenum Press, New York, 1985)。更にN−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを、イオン性樹脂(エチレン/メタクリル酸ベースのポリマーの塩)のガラス又はポリカーボネートシート上での付着を改善するために(US−A−4663228号)プライマー被覆として使用する。EP−B−0636471号においては、複合ガラスの製造方法の特許の保護を請求しており、その際、ガラス及び樹脂フィルム(とりわけポリビニルブチラール)の間の付着の改善を2種以上のシランの混合物で達成している。一方でシランはガラス及び樹脂フィルムの間の結合力の強化をもたらし、他方ではシラン付着剤はガラス及び樹脂フィルムの間の結合を保証するためには不適である。
【0007】
先行技術に記載されるポリビニルアセタールと臨界の基体との間の付着を公知の接着促進剤によって改善するための方法は顕著な欠点を有する。従って、例えば付着促進作用はしばしば十分に長く留まらないか、又は結合が時と共に弱くなる。他の欠点はアミノシランの黄変、その不快な臭い及びその皮膚刺激作用である;これらはアミノ官能性化合物の使用における公知の問題である。別の問題は接着促進剤の添加自体である。これは常に配合において付加的な時間を費やす工程を意味する。更に適当な接着促進剤の選択及び添加は多くのノウハウを必要とする。それというのも、例えば有機溶剤中のポリビニルアセタールに接着促進剤を添加する際に相分離に至ることがある非相容性及び非均質性が生じるからである。その上、接着促進剤として後に添加される反応性シランの二次反応は排除できない(加水分解反応、縮合反応)。他の欠点は、臨界の基体へのポリビニルアセタールの極めて良好な付着を達成するために大概は添加せねばならない大量の接着促進剤であり、この方法はシランの高値に基づいて非常に高価なことがある。
【0008】
シラン変性されたポリビニルアセタールは4種の日本国公開公報から公知である。JP−A−06−247760号及びJP−A−06−248247号から、シラン官能性のモノマー単位で変性されたポリビニルアセタールが公知であり、これらはセメント配合物又は無機繊維材料のためのバインダーとして使用される。これらのSi−変性されたポリビニルアセタールはビニルアセテートとビニルアルコキシシランとの共重合、引き続いてのビニルエステル−ビニルシラン−コポリマーの鹸化及び最終的なアルデヒドによるアセタール化によって得られる。JP−A−10−237259号はインクジェットプリンターによる印刷のための材料の被覆のための変性されていないポリビニルアセタールとのシラン変性されたポリビニルアセタールからなる混合物に関し、その際、ビニルエステル−ビニルシラン−混合重合体をまず鹸化し、かつ引き続き変性されていないポリビニルアルコールと混合し、アルデヒドでアセタール化する。該文献から引用される方法における欠点は、常に純粋なポリビニルアセタール鎖がシラノール基で変性されたポリビニルアセタール鎖の他に同時に存在する不均一な重合体が得られることである。これは、非相容性に導く。更にシラン変性されたポリビニルアセタール鎖におけるシラノール基の濃縮は強められて(不所望な)縮合をもたらし、かつ更にゲル体の形成をもたらす。これらのゲル体は強アルカリ系、例えばセメントコンパウンドにおいてのみ部分的に溶解されうる。中性の有機溶剤においては、これに反して不均一性及びゲル体が存在したままであり、これはこの場合顕著な相分離において不利に現れる。
【0009】
JP−A−62−181305号から、最後にトリエトキシイソシアナトプロピルシランで変性されたポリビニルブチラールが公知である。アルコキシシラン基はこの場合、ウレタン結合(シランのイソシアネート基及びポリビニルブチラールにおけるヒドロキシル基の反応による)を介してポリマー類似反応によってポリマー骨格に結合される。これは、かかる反応がヒドロキシル基含有の溶剤、例えば水及びアルコールにおいて不可能であるという欠点をもたらす。それというのもイソシアネート基はこの場合、二酸化炭素分解下に相応の(未反応の)アミノシランに定量的に加水分解されるからである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の課題は、単独で既に種々の基体、特に公知の臨界の基体上に非常に良好な付着を示すので、接着促進剤の添加を完全に省くことができるポリビニルアセタールを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
意想外にも、ポリビニルアルコールからアルデヒド(ヘミアセタール(Halbacetal)又は完全アセタール(Vollacetal)としても存在してよい少なくとも1種のアルデヒド)でのポリマー類似反応によって明らかに改善された臨界の基体への付着を有し、更に接着促進剤を省くことができるポリビニルアセタールが見いだされた。更にまたガラス又は金属への付着は強力に改善される。付着改善作用はこの場合、変性されたポリビニルアセタールの場合には非常に低いアルコキシシラン基もしくはアルコキシシロキサン基及び/又はシラノール基の含量においても現れる。
【0012】
本発明の対象は、部分的又は完全に鹸化された≧50モル%のビニルアルコール単位を有するビニルエステル重合体の1種以上のアルデヒド、場合により少なくとも1種のアルデヒドが加水分解可能なシラン基を有するそのヘミアセタール又は完全アセタールの形のアルデヒドによるアセタール化によって得られるシラン変性ポリビニルアセタールである。
【0013】
適当な部分的又は完全に鹸化されたビニルエステル重合体は50〜100モル%のビニルエステル単位を含有する重合体から導かれる。適当なビニルエステルは1〜15個のC原子を有する非分枝鎖状又は分枝鎖状のカルボン酸のビニルエステルである。有利なビニルエステルはビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル−2−エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1−メチルビニルアセテート、ビニルピバレート及び5〜11個のC原子を有するα−分枝したモノカルボン酸のビニルエステル、例えばVeoVa9R又はVeoVa10R(シェル社の販売名)である。ビニルアセテートが特に有利である。
【0014】
ビニルエステル単位の他に、場合により1〜15個のC原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル、オレフィン、ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニルハロゲン化物を含む群からの1種以上のモノマーが更に共重合されていてよい。アクリル酸又はメタクリル酸のエステルの群からの適当なモノマーは1〜15個のC原子を有する非分枝鎖状又は分枝鎖状のアルコールのエステルである。有利なメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、メタクリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート及びt−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノルボルニルアクリレートである。メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート及びt−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート及びノルボルニルアクリレートが特に有利である。適当なジエンは、1,3−ブタジエン及びイソプレンである。重合可能なオレフィンのための例はエテン及びプロペンである。ビニル芳香族化合物としては、スチレン及びビニルトルエンを重合導入してよい。ビニルハロゲン化物の群からは、通常は塩化ビニル、塩化ビニリデン又はフッ化ビニル、有利には塩化ビニルが使用される。これらのコモノマーの割合は、ビニルエステル重合体中のビニルエステルモノマーの割合が≧50モル%であるように見積もられる。
【0015】
場合により、なおも更なるコモノマーを、ビニルエステル重合体の全質量に対して有利には0.02〜20質量%の割合で含んでいてよい。このための例は、エチレン性不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、有利にはアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸;エチレン性不飽和カルボン酸アミド及びカルボン酸ニトリル、有利にはN−ビニルホルムアミド、アクリルアミド及びアクリルニトリル;フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、例えばジエチルエステル及びジイソプロピルエステル並びにマレイン酸無水物、エチレン性不飽和スルホン酸もしくはその塩、有利にはビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。更なる例は、前架橋されたコモノマー、例えば多エチレン性不飽和のコモノマー、例えばジビニルアジペート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート又はトリアリルシアヌレート、又は後架橋されるコモノマー、例えばアクリルアミドグリコール酸(AGA)、メチルアクリルアミドグリコール酸メチルエステル(MAGME)、N−メチロールアクリルアミド(NMA)、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチロールアリルカルバメート、アルキルエーテル、例えばイソブトキシエーテル又はN−メチロールアクリルアミドの、N−メチロールメタクリルアミドの及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルである。
【0016】
これらのビニルエステル重合体は市販されており、又は公知のように重合を用いて;有利には塊状重合、懸濁重合又は有機溶剤、特に有利にはアルコール溶液中での重合によって製造できる。適当な溶剤及び調整剤は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールである。重合は還流下に55℃〜100℃の温度において実施し、かつ通常の開始剤の添加によってラジカル的に開始される。通常の開始剤のための例は、ペルカーボネート、例えばシクロヘキシルペルオキシ−ジカーボネート又はペルエステル、例えばt−ブチルペルネオデカノエート又はt−ブチルペルピバレートである。分子量の調整は公知のように調整剤の添加によって、溶剤含有量によって、開始剤濃度の変更によって、かつ温度の変更によって行われる。重合の完了後に、溶剤並びに過剰のモノマー及び調整剤を留去する。
【0017】
ビニルエステル重合体の鹸化は公知のように、例えばベルト法(Bandverfahren)又はニーダー法(Kneterverfahren)に従って酸又は塩基の添加下にアルカリ性又は酸性において行われる。有利にはビニルエステル固体樹脂をアルコール、例えばメタノール中に15〜70質量%の固体含量に調節して取る。有利には加水分解は、例えばNaOH、KOH又はNaOCH3の添加によって塩基性で行われる。塩基は一般にエステル単位のモル数あたり1〜5モル%の量で使用される。加水分解は30℃〜70℃の温度で実施する。加水分解の完了後に溶剤を留去し、かつポリビニルアルコールを粉末として得る。しかしながらポリビニルアルコールは水溶液として水の連続的添加によって、他方で溶剤を留去して得ることができる。
【0018】
完全に鹸化されたビニルエステル重合体として、ここでは加水分解度≧96モル%の重合体が示される。部分的に鹸化されたポリビニルエステルとしては、加水分解度≧50モル%及び<96モル%を有するポリビニルエステルを意味する。部分的又は完全に鹸化されたビニルエステル重合体は、有利には50モル%〜99.9モル%、特に有利には70モル%〜99.9モル%、最も有利には90モル%〜99.9モル%の加水分解度を有する。ポリビニルアルコールの粘度(DIN53015、ヘップラー(Hoeppler)による方法;水中4%の溶液)は1〜30mPas、有利には1〜6mPasであり、かつ部分的又は完全に鹸化されたシラン化されたビニルエステル重合体の分子量及び重合度のための尺度として役に立つ。使用されるポリビニルアルコールの重合度は少なくとも130である。
【0019】
適当なシラン含有のアルデヒド(又はその水素化物、ヘミアセタール又は完全アセタール)は以下の構造式I及びII:
I) (R2)3Si−[OSi(R2)2]Y−(CH2)X−CH(OR1)2、完全アセタール、ヘミアセタール又はアルデヒド−水素化物、
II) (R2)3Si−[OSi(R2)2]Y−(CH2)X−CH=O、遊離アルデヒド
[式中、
それぞれのR1は同一又は異なり、かつH原子、及び非分枝鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、置換されていてよい1〜12個のC原子を有するアルキル基を表し、これらは場合によりN、O、Sの型のヘテロ原子によって中断されていてよい。R2は同一又は異なり、かつハロゲン(有利にはCl又はBr)、非分枝鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、置換されていてよい1〜12個のC原子を有する、1〜3個のC原子を有するアルキル基又はアルコキシ基及び2〜12個のC原子を有するアシル基を表し、その際、R2は場合により更にN、O、Sの型のヘテロ原子によって中断されていてよい。少なくとも1つの基R2は加水分解されて、1つの遊離シラノール基Si−OHを形成することがある。Xは2〜40の数を表す。Yは0〜100、有利には0〜10の数を表す]によって示すことができる。
【0020】
構造式I及びIIによる有利なシラン含有のアルデヒド又はそのヘミアセタールもしくは完全アセタールは3,3−ジエトキシプロピルトリエトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリエトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルトリメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリメトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルメチルジエトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルジメチルエトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリプロポキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3−ジプロポキシプロピルトリエトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルジメチルメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルジメチルメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)−プロピオンアルデヒド、3−(トリエトキシシリル)−プロピオンアルデヒド又は4−(トリメトキシシリル)ブチルアルデヒドである。
【0021】
構造式I及びIIによるシラン含有のアルデヒド又はそのヘミアセタールもしくは完全アセタールは単独で又は別のアルデヒドとの混合物で使用して、アルコキシシラン基もしくはアルコキシシロキサン基及び/又は遊離シラノール基を有する変性されたポリビニルアセタールを得ることができる。適当なシラン不含のアルデヒドは、1〜15個のC原子を有する脂肪族及び芳香族のアルデヒド並びにそのヘミアセタール及び完全アセタールを含む群からのアルデヒドである。ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド及びベンズアルデヒドが有利である。ブチルアルデヒド及びブチルアルデヒド及びアセトアルデヒドからなる混合物が特に有利である。
【0022】
シラン変性されたポリビニルアセタールはシラン変性されたポリビニルアセタールの全質量に対して0.002〜10質量%、有利には0.005〜5質量%、特に有利には0.01〜3質量%、最も有利には0.02〜1質量%のケイ素含量を有する。0.1質量%〜10質量%のケイ素含量を有するシラン変性されたポリビニルアセタールは遊離シラノール基又は加水分解可能なアルコキシシラン基もしくはアルコキシシロキサン基の高い含量に基づいてシラノール基、アルコキシシラン基又はアルコキシシロキサン基のために慣用の架橋触媒で架橋できる。
【0023】
シラン変性されたポリビニルアセタールのアセタール化度は1〜80モル%、有利には1〜20モル%、45〜80モル%の範囲にある。変性されたポリビニルアセタールの粘度(DIN53015;ヘップラーによる方法、エタノール中10%溶液)は4mPas〜1200mPas、有利には4mPasから80mPasである。但し本発明によるポリビニルアセタールの10%エタノール溶液はシラノール基の架橋によって(シラン含量に応じて多かれ少なかれ顕著な)ゲル状態(1200mPasより明らかに高い粘度)に変化することがある。
【0024】
シラン変性されたポリビニルアセタールの水性懸濁液は、アニオン性、両性イオン性、カチオン性及び非イオン性の乳化剤並びに保護コロイドによって安定化できる。有利には両性イオン性又はアニオン性の乳化剤が、場合により混合物でも使用される。非イオン性乳化剤としては、有利にはエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの、8〜18個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルコール、アルキルフェノール又は8〜18個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のカルボン酸との縮合生成物並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーが使用される。適当なアニオン性乳化剤は、例えばアルキルスルフェート、アルキルスルホネート、アルキルアリールスルフェート、並びにエチレンオキシドと直鎖状又は分枝鎖状のアルキルアルコール、アルキルフェノール、及びスルホコハク酸のモノエステル又はジエステルとの2〜25のEO単位を有する縮合生成物のスルフェート又はホスフェートである。適当な両性イオン性の乳化剤は、例えばアルキルジメチルアミンオキシドであり、その際、アルキル鎖は6〜16個のC原子を有する。カチオン性乳化剤としては、例えばテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、例えばC6〜C16−アルキルトリメチルアンモニウムブロミドを使用してよい。同様により長い炭化水素基(≧5個のC原子)及び2つのより短い炭化水素基(<5個のC原子)を有するトリアルキルアミンを使用してよく、これらは強酸性条件下に進むアセタール化の進行中にプロトン化された形で存在し、かつ乳化剤として作用しうる。乳化剤量は母液中の変性されたポリビニルアセタールの全質量に対して0.01〜20質量%である。0.01〜2質量%の乳化剤が有利であり、シラン変性されたポリビニルアセタールに対して0.01〜1質量%の量の乳化剤が特に有利である。
【0025】
アセタール化のために、部分的又は全体的に鹸化されたポリビニルエステルを、有利には水性媒体中に取る。通常は、水溶液の固体含量は5〜30%に調整される。アセタール化は、酸性触媒、例えば塩酸、硫酸、硝酸又はリン酸の存在下に行われる。有利には20%の塩酸の添加によって、溶液のpH値は<1の値に調整される。
【0026】
触媒の添加後に、溶液を有利には−10℃〜+30℃に冷却する。この場合:使用される変性されたポリビニルアルコールの分子量が低下すればするほど、沈殿温度はより低く選択される。アセタール化反応は、少なくとも1種のシラン含有アルデヒド又はそのヘミアセタール又は完全アセタールを使用するアルデヒドの添加によって開始する。添加量は望まれるアセタール化度に応じて調節される。アセタール化はほぼ完全な変換で進行するので、添加量は簡単な化学量論的な計算によって規定できる。シラン含有アルデヒド及びシラン不含のアルデヒドからなる混合物で作業する場合には、その比は変性されたポリビニルアセタール中で達成されるべきケイ素含量、望まれるアセタール化度及びアルデヒドの分子量、特にシラン含有アルデヒドの分子量から得られる。アセタール化はアルデヒドの添加の完了後にバッチの20℃〜60℃までの加熱及び複数の時間の、有利には1〜6時間の撹拌によって完全にし、かつ粉末状の反応生成物を濾過及び後続の洗浄工程によって単離する。安定化のために、更にアルカリを添加してよい。沈殿及び後処理の間に、乳化剤で処理して、シラン含有ポリビニルアセタールの水性懸濁液を安定化することができる。
【0027】
特に有利な方法においては、まずポリビニルアルコールの水溶液に1種以上のシラン含有のアルデヒドもしくはそのヘミアセタール又は完全アセタールを、有利には沈殿温度より高い温度で添加する。僅かな触媒、例えば塩酸を使用して、pH値を2〜5、有利にはpH値を4〜5に調整するので、シラン含有のアルデヒドはポリビニルアルコールと前反応することがあり、引き続き場合により1種以上のシラン不含のアルデヒドの添加により沈殿温度を調整する。変性されたポリビニルアセタールの沈殿を、引き続き残りの触媒の添加によって行う。引き続き前記の後処理法を行う。
【0028】
本発明による方法によって、従来公知のポリビニルアセタールに対して明らかに良好な臨界の基体への付着を示すので、接着促進剤の添加を省くことができる変性されたポリビニルアセタールが得られる。
【0029】
冒頭で述べたように、とりわけ印刷インキ工業においては種々のポリマーの可撓性のシート上にできるだけ良好な付着を有し、それによって適用後に基体と非常に強固に結合し、かつ印刷された基体から引き離すのが非常に困難な印刷インキを提供できるバインダーが要求されている。シラン変性されたポリビニルアセタール、特にポリビニルブチラール又は混合されたポリビニルアセタールの優れた付着に基づいて、これらは特に印刷インキ組成物における使用のために適当である。
【0030】
適当な印刷インキ配合物は当業者に公知であり、かつ一般に5〜20質量%の顔料、例えばジスアゾ顔料又はフタロシアニン顔料の割合、5〜15質量%のポリビニルアセタールバインダー及び溶剤、例えばアルコール、例えばエタノール又はエチルアセテートのようなエステルを含有する。場合により更なる添加剤、例えば抑制剤、可塑剤及び別の添加剤、例えば充填剤又は蝋を含有していてよい。付着補助剤はもはや全く必要ではない。
【0031】
複合安全ガラス及びガラス複合体、高安全ガラス又はガラスシート(Scheibenfolie)のためにも、シラン変性されたポリビニルアセタールは非常に良好に適当である。それというのも再び改善されたガラスへの付着の他により高い引裂強度を達成できる。前記の使用における他のポリマーシート、例えばPETシートの使用も同様に推奨される。それというのもシラン変性されたポリビニルアセタール及びそれから製造されるシートはガラス表面の他に前記の別のポリマーシートの表面にも非常に良好に付着するので、接着促進剤の添加は不必要である。その他に、また所望の表面粗さはシラン含有量の選択肢及び、場合によりシラン基の架橋によって調整できる。
【0032】
更にイオン性基、例えばカルボキシレート基又はスルホネート基を有してよい水溶性の部分的にアセタール化されたシラン含有のポリビニルアセタールは、保護コロイドとして、例えば水性分散液のため及び水性媒体中での重合において、かつ水に再分散可能な分散粉末の製造において用いられる。1〜20モル%、特に3〜16モル%のアセタール化度を有するシラン含有の及び水溶液の(標準状態下に水中に10g/lより高い溶解度)ポリビニルアセタールが有利である。シラン変性されたポリビニルアセタールで安定化されたポリマー分散液をベースとする塗料分散液の場合には、それによって湿性摩耗耐性を商慣習上の保護コロイドを有するポリマー分散液に対して明らかに改善できる。それというのもシラン変性されたポリビニルアセタールによって顔料の結合もカーボネート豊富な配合かシリケート豊富な配合のいずれかで改善できるからである。
【0033】
シラン変性されたポリビニルアセタールは更に水系の塗料においても使用できる。より高いシラン含量はシラン変性されたポリビニルアセタールにおいて、例えばこれらが水分又は触媒の添加によって架橋しうるように導く。それによって、他の使用分野、例えば粉末塗料の分野が生じる。シラン変性されたポリビニルアセタールの更なる使用分野は腐蝕保護剤におけるバインダーとしての使用であり、その際、より良好な付着が利点として挙げられる。更に、変性されたポリビニルアセタールはセラミック工業におけるバインダーとしても、特にセラミック成形体のためのバインダーとして適当である。またセラミック粉末及び金属粉末のための射出成形(粉末射出成形)におけるバインダーとして、かつ缶(Dose)の内部被覆のためのバインダーとしての使用も挙げられる。全ての場合において、シラン変性されたポリビニルアセタールは従来の技術において公知のポリビニルアセタールよりもはるかに良好な付着を示す。
【0034】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これは本発明を制限するものではない。
【0035】
【実施例】
例1:
6リットルのガラス反応器中に2683mlの蒸留水、1114mlの20%のHCl及び1190mlの19.7%の、タイプ03/20、粘度3.68mPas(DIN53015;ヘップラーによる方法;4%水溶液)のポリビニルアルコールの水溶液を装入した。装入物を撹拌しながら1時間以内で−2℃に冷却し、かつ引き続き5分の時間内で180mlのブチルアルデヒド及び10.6ml(10.0g)の3,3−ジエトキシプロピルトリエトキシシランの混合物を−4℃に前冷却して添加した。反応器内部温度はその際、−0.7℃にまで上昇した。非常に短時間で、更に−2℃に冷却した。ブチルアルデヒド及びシラン含有のアルデヒドのジエチルアセタールの添加の3分後にまず澄明なバッチが乳白色に混濁し、かつ既に5分後に生成物が沈殿した。−2℃での40分間の反応時間後に、この温度を更に2時間保持した。更に、生成物を吸引分離し、濾液が中性に反応するまで蒸留水で洗浄した。引き続き少なくとも98%の固体含量にまで、まず22℃で、次いで35℃で真空中において乾燥を実施した。
【0036】
18.3質量%のビニルアルコール単位を有する変性されたポリビニルアセタールが得られた。ビニルアセテート含量は1.5質量%であった。粘度(DIN53015;ヘップラーによる方法;10%のエタノール溶液)は59.5mPasであった。Si含量:0.23質量%。
【0037】
例2:
6リットルのガラス反応器中に、2700mlの蒸留水及び1178mlの19.9%の、タイプ03/20、粘度3.68mPas(DIN53015:ヘップラーによる方法;4%の水溶液)のポリビニルアルコールの水溶液を装入した。装入物を撹拌しながら1時間以内で5℃に冷却した。引き続き10分の時間内に5.3ml(5.0g)の3,3−ジエトキシプロピルトリエトキシシランを添加した。約10mlの20%の塩酸を使用してpH値を4.5に調整し、かつ20分間撹拌した。次いで185ml(149.6g)のブチルアルデヒドを5分以内で添加した。変性されたポリビニルアセタールの沈殿を、45分の時間で供給される1104mlの20%塩酸の添加によって−2℃で行った。−2℃での40分間の反応時間後に、温度を3.5時間の時間にわたって25℃に高め、かつこの温度を更に2時間保持した。更に、該生成物を吸引分離し、かつ濾液が中性に反応するまで蒸留水で洗浄した。引き続き少なくとも98%の固体含量にまで、まず22℃で、次いで35℃で真空中において乾燥を実施した。
【0038】
18.8質量%のビニルアルコール単位を有する変性されたポリビニルブチラールが得られた。ビニルアセテート含量は2質量%未満であった。粘度(DIN53015:ヘップラーによる方法;10%のエタノール溶液)は36.7mPasであった。Si含量は0.11質量%に算出された。
【0039】
例3:
6リットルのガラス反応器中に2683mlの蒸留水、1114mlの20%のHCl及び1190mlの19.7%の完全に鹸化されたポリビニルアルコール(粘度3.68mPas(DIN53015:ヘップラーによる方法;4%の水溶液))の水溶液を装入した。装入物を撹拌しながら−2℃に1時間以内で冷却した。5分間の時間以内で、2.5gの3,3−ジエトキシプロピルトリエトキシシラン及び188ml(151.6g)のブチルアルデヒドからなる混合物を−4℃に前冷却して添加した。反応器内部温度はその際、−0.7℃に上昇した。混合物の添加の3分後に、その時まで澄明なバッチの混濁が確認でき、かつ既に5分後に生成物が沈殿した。−2℃での40分間の反応時間後に、3.5時間の時間にわたり25℃に高め、かつこの温度を更に2時間保持した。更に該生成物を吸引分離し、かつ濾液が中性に反応するまで蒸留水で洗浄した。引き続き少なくとも98%の固体含量にまで、まず22℃において、次いで35℃において真空中で乾燥を実施した。
【0040】
17.8質量%のビニルアルコール単位、1.5質量%のビニルアセテート単位及び80.7質量%のビニルブチラール単位を有する変性されたポリビニルブチラールが得られた。粘度(DIN53015:ヘップラーによる方法;10%のエタノール溶液)は25.1mPasであった。Si含量は0.05質量%に算出された。
【0041】
例4:
6リットルのガラス反応器中に2698mlの蒸留水及び1332mlの20.4%の、77.2mgKOH/gの鹸化数及び1.87mPas(DIN53015:ヘップラーによる方法;4%水溶液)の粘度を有するポリビニルアルコールの水溶液を装入した。装入物を撹拌しながら10℃で1時間以内で冷却した。引き続き、10分間の時間以内で21mlの3,3−ジメトキシプロピルトリイソプロポキシシランを添加した。約5mlの20%塩酸を使用して、pH値を5に調整し、かつ20分間撹拌した。次いで74mlのアセトアルデヒド及び97mlのブチルアルデヒドを、−4℃に前冷却して、5分以内に添加した。変性されたポリビニルアセタールの沈殿を、50分の時間で供給される820mlの20%塩酸の添加によって5℃で行った。5℃での40分間の反応時間後に温度を3.5時間の時間にわたり25℃に高め、かつこの温度を更に2時間保持した。更に該生成物を吸引分離し、かつ濾液が中性に反応するまで蒸留水で洗浄した。引き続き少なくとも98%の固体含量にまで、まず22℃で、次いで35℃で真空中において乾燥を実施した。
【0042】
17.7質量%のビニルアルコール単位を有する変性されたポリビニルアセタールが得られた。ビニルアセテート含量は6.5質量%であった。粘度(DIN53015:ヘップラーによる方法;10%のエタノール溶液)は51.9mPasであった。Si含量は0.41質量%に算出された。
【0043】
比較例5:
例4と同様に実施するが、100mlのアセトアルデヒド及び128mlのブチルアルデヒドでアセタール化を実施した。この場合、例4で使用されるポリビニルアルコールに酸及び水を装入した。沈殿を5℃で、両者のアルデヒドを5分以内に添加することによって実施した。
【0044】
15.8質量%のビニルアルコール単位を有するポリビニルブチラールが得られた。粘度(DIN53015:ヘップラーによる方法;10%のエタノール溶液)は16.8mPasであった。
【0045】
比較例6:
例1と同様に実施するが、190mlのブチルアルデヒドでアセタール化を実施した。
【0046】
17.9質量%のビニルアルコール単位、1.5質量%のビニルアセテート単位を有するポリビニルブチラールが得られた。粘度(DIN53015:ヘップラーによる方法;10%のエタノール溶液)は26.4mPasであった。
【0047】
測定法:
1.ポリビニルアセタールの溶液の動的粘度の測定(溶液粘度):
90.00±0.01gのエタノール及び10.00±0.01gのポリビニルアセタールをすり合わせ栓を有する250mlのエルレンマイヤーフラスコ中に計量供給し、かつ50℃で振盪器中で完全に溶解させた。引き続き20℃に冷却し、かつ動的粘度(DIN53015:ヘップラーによる方法)を20℃で適当なボール、例えばボール3を用いて測定した。
【0048】
2.ビニルアルコール含量の測定
ポリビニルアセタール中のビニルアルコール基の含量を、ピリジン及び4−ジメチルアミノピリジンの存在下に無水酢酸でヒドロキシル基をアセチル化することによって測定した。
【0049】
このために1g±0.001gのポリビニルアセタールを24mlのピリジン及び0.04gの4−ジメチルアミノピリジン中に50℃で2時間以内に溶解させた。25℃に冷却された溶液を10mlのピリジン及び無水酢酸(87/13の容量部)からなる混合物と混合し、かつ1時間激しく混合した。更に30mlのピリジン/水(5/1の容量部)からなる混合物を添加し、かつ更に1時間振盪した。引き続き0.5NのKOHを用いてpH7に定量した。
【0050】
計算:
ビニルアルコール(質量%)=[(100×Mw)/2000]×(空試験値)(ml)−試料(ml))。Mwに関してはポリマーの反復単位あたりの平均分子量である。
【0051】
3.ポリビニルアルコール溶液の粘度の測定:
出発材料として使用される部分的又は完全に鹸化されたシラン化された固体樹脂の粘度の測定をポリビニルアセタールの動的粘度の測定と同様に実施した;4%の水溶液だけを使用した。
【0052】
4.付着の測定:
a)Tesa試験:
調査されるべき試料(例えばポリビニルアセタール)によって、(場合により事前にイソプロパノールで浄化した)シート(場合により事前にコロナ処理した)上に気泡のないフィルムを延展し、かつ乾燥させた。ポリビニルアセタールをこのためにエタノール中に溶解させ、その際、濃度をそれぞれ溶液の粘度に応じて調整した。試験のためにバイエルスドルフ(Beiersdorf)社の幅15mmを有するテサフィルム4150(Tesafilm)を使用した。付着強度を試験するために、乾燥され、かつ少なくとも16時間室温で貯蔵されたシートに13cmの長さのテープを貼り付けた。爪で上から一様に強くさすることによって、その際、テサフィルムの片方の端部を固定して引き離しのための折り返しを維持し、接触圧を固定した。試験されるべきシートはその際、硬い台の上にあるべきである。テサフィルムを45゜の角度の折り返しで急激に引き離す。試験された部位を更に、フィルムが印刷素材から離れ、かつテサフィルムに付着するかどうか、並びに幾つのフィルムが印刷素材から離れ、かつテサフィルムに付着するかを調査した。試験を同一条件下に異なる部位で行った。評点は1〜4の評価段階で行い、その際、1は最良、4は最悪の評価である。
【0053】
評点の詳細:
1=非常に良好な付着(剥離部分無し)
2=引き離された部分で被覆が剥離した
3=複数の部位で被覆が剥離した
4=被覆の付着無し(完全な剥離)
b)複合付着の測定:
積層における複合強度(Verbundfestigkeit)の機器測定によって塗料又は印刷インキの下塗り上への付着を数値で表現できた。この調査のために、各シート型をそれ自体に張り合わせた。これらのシートを塗料の適用前に予めコロナ処理するのであれば、積層シートにも同じ前処理を施した。積層の製造のために、5kgの質量を有する張り合わせローラーを用いて、接着剤としてヘンケル(Henkel)社の2K−PUR系(Liofol UK 3640/Haerter UK 6800)を使用した。この系はPE、PP、PET、PA及びh−PVCからなる複合シートの製造のために適当である。使用できる接着剤を製造するために、第1成分の接着剤を35%に希釈し、かつ引き続き50:1の比で硬化剤と混合した。この接着剤をシート上に適用し、室温で30秒間乾燥させ、かつもう一方のシートの塗料で被覆された側(例えばTesa試験における被覆)に対して、複合体上を押圧せずに6回ロールを進めて張り合わせた。接着剤を60℃の温度で24時間硬化させた。複合体を15mmの幅のストリップに切断し、付着強度をインストロン(Instron)社の引っ張り試験装置において測定した。測定値が高いほど、複合付着は良好である。非常に良好な複合付着において、シート亀裂までもが生じた。この場合、定量的な値は示されない。
【0054】
応用技術的結果:
付着の調査のためにTesa試験及び複合付着の測定を以下の商慣習上のシートで実施した:
DuPont PET Melinex 800; 400Wでの事前のコロナ処理
DuPont PET Melinex 813; 未処理
OPP Mobil MB 400; 未処理;(ポリプロピレンシート)
OPP Mobil MB 400; 600Wでの事前のコロナ処理(ポリプロピレンシート)
例もしくは比較例からの生成物の付着の測定結果(第1表):
【0055】
【表1】
【0056】
本発明による変性されたポリビニルアセタールに関してはTesa試験において全ての試験されるシートによって付着の明らかな改善が得られる。これを例1〜3と比較例6との比較並びに例4と比較例5との比較が証明している。この場合、シラン含有ポリビニルアセタールの場合のTesa試験におけるより良好な付着は既に比較的低いケイ素含量(もしくはアルコキシシラン基及び/又は遊離シラノール基)でさえも生じ、これは例3に具体的に示されている。
【0057】
ポリエステルシートDuPont PET Melinexの場合にはTesa試験は説得力のあるものではない。それというのも比較型(標準製品)も既に最初から非常に良好な付着を示すからである。
【0058】
差異は複合付着の測定によってより明確になる。これを第2表に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
F=シート亀裂、tF=部分的なシート亀裂
本発明によるシラン含有のポリビニルアセタールに関しては複合付着は極めて高められた。例1〜3と比較例6との比較は、ポリエステルシート(DuPont PET Melinex 800 及び813)及び時としてポリプロピレンシート(事前にコロナ処理されたOPP Mobil MB 400)における複合付着が完全な又は部分的なシート亀裂を生じるほど強く高められることを示している。従って本発明によるポリビニルアセタールの基体への付着は使用されるシートの粘着よりも強く現れている。例3における良好な結果は、ケイ素(もしくはアルコキシシラン基及び/又は遊離シラノール基)の比較的低い含量に関してさえも優れた付着を、複合での付着の場合に達成できることを改めて証明している。
【0061】
例4と比較例5との比較は、より高いケイ素含量に関しては確かに依然として商慣習上のポリビニルアセタールにおけるよりも良好な付着が見られるが、より低いケイ素含量を有する本発明によるポリビニルアセタールの付着よりも悪い結果となることを示している。
Claims (9)
- ビニルアルコール単位≧50モル%を有する部分的又は完全に鹸化されたビニルエステル重合体の、少なくとも1種のアルデヒドが加水分解可能なシラン基を有する1種以上のアルデヒド又はそのヘミアセタールもしくは完全アセタールによるアセタール化によって得られ、かつそのシラン含有アルデヒド、ヘミアセタール及び完全アセタールが脂肪族及び芳香族の1〜15個のC原子を有するアルデヒドからなる群からのシラン不含のアルデヒド並びにそのヘミアセタール及び完全アセタールとの混合物において使用されるシラン変性されたポリビニルアセタール。
- シラン基を有するアルデヒド又はそのヘミアセタールもしくは完全アセタールが構造式:
I) (R2)3Si−[OSi(R2)2]Y−(CH2)X−CH(OR1)2
又は
II) (R2)3Si−[OSi(R2)2]Y−(CH2)X−CH=O
[式中、それぞれのR1は同一又は異なり、かつ1つのH原子及び1つの非分枝鎖状又は分枝鎖状の、飽和又は不飽和の、1〜12個のC原子を有する置換されていてよい、N、O、Sのヘテロ原子によって中断されていてよいアルキル基を表し、かつR2は同一又は異なり、かつハロゲン、非分枝鎖状及び分枝鎖状の、飽和及び不飽和の、1〜12個のC原子を有する置換されていてよいアルキル基及びアルコキシ基並びに2〜12個のC原子を有するアシル基からなる群からの1つの基を表し、その際、R2はなおもN、O、Sのヘテロ原子によって中断されていてよく、かつXは2〜40の数を表し、かつYは0〜100の数を表す]を有する、請求項1記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。 - シラン含有アルデヒド又はそのヘミアセタール及び完全アセタールとして3,3−ジエトキシプロピルトリエトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリエトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルトリメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリメトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルメチルジエトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルジメチルエトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリプロポキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルトリイソプロポキシシラン、3,3−ジプロポキシプロピルトリエトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,3−ジエトキシプロピルジメチルメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルメチルジメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルジメチルメトキシシラン、3,3−ジメトキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)−プロピオンアルデヒド、3−(トリエトキシシリル)−プロピオンアルデヒド又は4−(トリメトキシシリル)−ブチルアルデヒドからなる群からの1種以上の化合物を使用する、請求項2記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。
- ケイ素含量がシラン変性されたポリビニルアセタールの全質量に対して0.002〜10質量%である、請求項1から3までのいずれか1項記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。
- シラン変性されたポリビニルアセタールのアセタール化度が1〜80モル%である、請求項1から4までのいずれか1項記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。
- 部分的に又は完全に鹸化されたビニルエステル重合体が、非分枝鎖状又は分枝鎖状の1〜15個のC原子を有するカルボン酸のビニルエステルからなる群からの1種以上のビニルエステルの50〜100モル%のビニルエステル単位を有する重合体から誘導される、請求項1から5までのいずれか1項記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。
- ビニルエステル単位の他に、1〜15個のC原子を有するアルコールのメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステルからなる群からの1種以上のモノマー、オレフィン、ジエン、ビニル芳香族化合物及びビニルハロゲン化物がなおも共重合されており、かつ該コモノマーの割合はビニルエステルモノマーの割合がビニルエステル重合体中で≧50モル%になるようにされている、請求項1から6までのいずれか1項記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。
- ビニルエステル単位の他にエチレン性不飽和のモノカルボン酸及びジカルボン酸、エチレン性不飽和のカルボン酸アミド及び−ニトリル、フマル酸及びマレイン酸のモノエステル及びジエステル、エチレン性不飽和のスルホン酸もしくはその塩、多エチレン性不飽和のコモノマー、後架橋するコモノマー、アルキルエーテル又はN−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド及びN−メチロールアリルカルバメートのエステルからなる群から選択される1種以上のモノマーがビニルエステル重合体の全質量に対して0.02〜20質量%の割合で共重合されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のシラン変性されたポリビニルアセタール。
- 部分的に又は完全に鹸化された≧50モル%のビニルアルコール単位を有するビニルエステル重合体の水溶液に酸触媒の存在下に、少なくとも1種のアルデヒドが加水分解可能なシラン基を有する1種以上のアルデヒド又はそのヘミアセタールもしくは完全アセタールを沈殿温度より高い温度で添加し、その際、そのシラン含有アルデヒド、ヘミアセタール及び完全アセタールが脂肪族及び芳香族の1〜15個のC原子を有するアルデヒドからなる群からのシラン不含のアルデヒド並びにそのヘミアセタール及び完全アセタールとの混合物において使用され、かつ引き続き沈殿温度を調整し、かつ更なる触媒の添加下に沈殿を行う、請求項1から8までのいずれか1項記載のシラン変性されたポリビニルアセタールの製造方法。
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