JP3802766B2 - 光デバイス製造方法と光デバイス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、図5に示すようにフェルール4に挿通・固定されたファイバ素線1の端面2がフェルール4の端面5から突出し、突出したファイバ素線1の端面2に反射防止膜その他の膜3が成膜されている光デバイス(通称「レンズドファイバ」)の製造方法に関するものである。この種の光デバイス6は例えば図6に示すように、通信光源や光増幅器の励起光源として用いられるレーザモジュール7において、レーザダイオード8から出射された光を低反射でファイバ素線1内に導くために使用される。この場合、ファイバ素線1の端面2にはレンズ加工がされた上で、膜3として反射防止膜が成膜されている。
【0002】
【従来の技術】
従来、図5に示す光デバイス6を製造するには、長手方向一端側の側面12に金属膜を成膜し(メタライズ加工を施し)、同加工部分よりさらに端部側にくさび加工(図7a)、鏡面加工(図7b)又は曲面加工(図7c)を施して該端部を同図に示す形状に成形したファイバ素線1を図5に示すようにフェルール4に挿通して該ファイバ素線1の端面2をフェルール4の端面5から突出させ、そのファイバ素線1を前記金属膜が成膜された側面12の部分で半田9によってフェルール4に固定する。その後、該フェルール付きのファイバ素線1を成膜装置の真空チャンバにセットして、各種PVD法(イオンアシスト法、イオンプレーティング法、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッタ法、MBE法)や各種CVD法(ECRプラズマCVD法、MOCVD法)によってフェルール4の端面5から突出しているファイバ素線1の端面2に成膜原料の蒸発原子又は分子を蒸着させて反射防止膜その他の膜3を成膜する。尚、前記PVDはPhysical Vapor Depositionの略であり、以下同様にCVDはChemical Vapor Deposition、MBEはMolecular Beam Epitaxy、ECRはElectron Cyclotron Resonance、MOCVDはMetal Organic Chemical Vapor Depositionの略である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の光デバイス製造方法及びそれによって製造された従来の光デバイスには次のような課題があった。
(1)図5に示すフェルール4の端面5とそこから突出しているファイバ素線1の端面2までの距離L(突出長L)を例えば0.5mm未満と短くすると、両端面2、5が極めて近接するため、成膜装置の真空チャンバ内において成膜対象であるファイバ素線1の端面2に向かう蒸発原子又は分子がフェルール4の端面5に衝突して跳ね返ってきた蒸発原子又は分子と衝突して、ファイバ素線1の端面2に十分に蒸着されない。従って、形成された膜3の膜厚が設計値よりも薄くなってしまい、所期の光学特性(反射率や透過率等)を備えた光デバイスを得ることができない。
(2)図5に示すファイバ素線1の突出長Lを例えば1.0mm以上と長くすれば前記課題は解決されるが、突出長Lが長過ぎると、フェルール4の端面5から突出したファイバ素線1の中心とフェルール4の中心とのズレ量が大きくなり、図6に示すモジュールの組立が困難となる。特にファイバ素線1とLD8との光軸合せが困難となる。例えば、前記光軸合せはフェルール6の中心とLD8の中心を合わせることによって行われるので、フェルール4の端面5から突出したファイバ素線1の中心とフェルールの中心とがLD8の発光面に平行な方向へ±0.3μmズレていると、結合効率が±5%変動する。尚、許容される変動量は±2%程度である。
(3)図5に示す光デバイス6を用いて図6に示すモジュールを組立てるためには、筐体30と一体化されている固定部材32にYAGレーザーを使用して光デバイス6(詳しくはフェルール4)を溶着させる必要がある。しかし、従来の製造方法によって製造された光デバイス6では、フェルール4の側面に成膜原料の蒸発原子又は分子が付着しているため、その付着物によって溶着が阻害され、十分な固定強度が得られない。この場合、モジュール組立の後工程において固定部34に割れ等の不良が発生する虞がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、ファイバ素線の端面に設計値通りの膜厚の膜が成膜され、モジュール化も容易な光デバイスを製造可能な光デバイス製造方法及び光デバイスを提供することにある。
【0005】
本件出願の第1の光デバイス製造方法は、ファイバ素線の側面に金属膜を成膜すると共に、該ファイバ素線の端面に膜を成膜し、その後、このファイバ素線をフェルールに挿通して、前記膜を成膜済みの端面をフェルールの端面から突出させ、そのファイバ素線をフェルールに固定するものである。
【0006】
本件出願の第2の光デバイス製造方法は、フェルールの端面とそこから突出するファイバ素線の端面との距離LがL<4・d(dは側面に金属膜が成膜されたファイバ素線の外径)となるように、ファイバ素線をフェルールに挿通・固定するものである。
【0007】
本件出願の光デバイスは、金属製フェルール4に挿通する前に側面12に金属膜が成膜され、端面2に膜3が成膜されたファイバ素線1が金属製フェルール4に挿通されて、ファイバ素線1の前記成膜済み端面2がフェルール4の端面5から外側まで突設し、前記成膜済み端面2とフェルール4の端面5間の距離LをL<4・d(dは側面に金属膜が成膜されたファイバ素線1の外径)にして前記ファイバ素線1が金属製フェルール4に固定され、金属製フェルール4の側面に成膜原料の蒸発原子又は分子が付着していないものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本発明の光デバイス製造方法の第1の実施形態を説明する。この製造方法は、前記図5に示す光デバイス6を製造するための方法であって、ファイバ素線1の端面2に予め反射防止膜(AR膜)3を成膜してから、そのファイバ素線1をフェルール4に挿通・固定するものであり、具体的には次の通りである。
【0009】
図1に示すように光ファイバ10の軸方向一端側の樹脂被覆(外部被覆)11を除去してファイバ素線(裸ファイバ)1を露出させる。露出したファイバ素線1の端部の側面12にメッキ、蒸着、スパッタリング等によって金属膜を成膜する。金属膜の成膜が終了したらファイバ素線1の先端に前記くさび加工(図7a)、鏡面加工(図7b)、曲面加工(図7c)の何れかを施して同図に示すような端部形状とする。
【0010】
次に、図2に示すようにファイバ素線1の端面2が成膜装置の真空チャンバ15内に露出するように該ファイバ素線1を該真空チャンバ15にセットして、同端面2にシリカ(SiO2)とタンタルオキサイド(Ta2O5)が交互に積層された反射防止膜3(図3)を成膜する。このときファイバ素線1はフェルール4に挿通されていないため、真空チャンバ15内においてファイバ素線1の端面2に蒸着されるべきSiO2やTa2O5の蒸発原子又は分子がフェルール4の端面5に衝突して跳ね返ってくる同原子又は分子と衝突してファイバ素線1の端面2に十分に蒸着されないといった不都合が発生する虞はなく、所定量のSiO2及びTa2O5が確実に蒸着される。これによって、設計値通りの膜厚の反射防止膜3が成膜され、所期の光学特性を備えた光デバイス6が製造される。ちなみに、反射減衰量の設計値が−40dBである場合、本発明の製造方法によって製造された光デバイス6の980nm帯の光に対する反射率及び反射減衰量を測定した結果、反射率は0.015%以下、反射減衰量は38dBであった。一方、前記従来の製造方法によって製造された光デバイスについて同様の測定を行った結果、反射減衰量は30dBであった。尚、前記反射減衰量は反射率0%を基準としている。
【0011】
前記成膜装置は従来からこの種の成膜に使用されているものと同一のものである。具体的には図2に示すように2つの電子銃16、2つのシャッター17、回転するドーム18、イオンアシスト装置19が設けられた真空チャンバ15を備え、前記ドーム18に設置されたホルダ20に蒸着対象(本実施形態では前記ファイバ素線1の端部)をセットし、ドーム18を回転させながら一方の電子銃16から出射される電子ビームを成膜原料(本実施形態ではSiO2又はTa2O5)21の表面に照射して同成膜原料21を溶融し、その原子又は分子を蒸発させ、ファイバ素線1の端面2にSiO2膜又はTa2O5膜を所定の膜厚だけ成膜後にシャッター17で成膜原料21を覆う(シャッター17を閉じる)。その後、他方の電子銃16から出射される電子ビームを成膜原料(本実施形態ではTa2O5又はSiO2)22の表面に照射して同成膜原料22を溶融し、その原子又は分子を蒸発させ、ファイバ素線1の端面2にTa2O5膜又はSiO2膜を所定の膜厚だけ成膜後に他方のシャッター17で成膜原料22を覆う(シャッター17を閉じる)。即ち、蒸着対象に2種類の成膜原料を交互に蒸着させるものである。尚、前記イオンアスト装置19はより緻密な膜を形成するために、蒸着対象に向けてO2活性分子を照射又は加速して成膜原料の原子又は分子にエネルギーを付与するものである。もっとも、照射又は加速される活性分子は、Ar活性分子、He活性分子、H2活性分子、CO2活性分子、H2O活性分子、N2活性分子等であってもよい。
【0012】
以上のようにして、端面2に反射防止膜3が成膜されたファイバ素線1を得たら、図3(a)に示すようにそのファイバ素線1を金属製のフェルール4に挿通し、図3(b)に示すように前記成膜済みの端面2をフェルール4の端面5から突出させ、その状態で同フェルール4に半田付けする。このとき、ファイバ素線1の端面2には既に反射防止膜3が成膜されているので、ファイバ素線1の端面2に蒸着されるべきSiO2やTa2O5の蒸発原子又は分子がフェルール4の端面5に衝突して跳ね返ってきた同原子又は分子と衝突して、ファイバ素線1の端面2に十分に蒸着されないといった不都合が発生する可能性はなく、ファイバ素線1の端面2とフェルール4の端面5との距離L(突出長L)を大きくする必要もない。ここで、本件発明者らの検討によれば、突出長Lと側面に金属膜が成膜されたファイバ素線1の外径dとが、L<4・d(ファイバ素線1の外径の4倍未満)の関係を満たしていれば、前記LD8とファイバ素線1との光軸合わせを容易に行うことが可能となる。そこで、本実施形態では外径dが0.125mmのファイバ素線1に対し、突出長Lを0.5mm未満(ここでは0.4mm)とし、この突出長Lが維持されるようにしてファイバ素線1を前記金属膜が成膜された側面12の部分でフェルール4に半田付けして図5に示す光デバイス6を製造した。これによって、前記の通り所期の光学特性を備え、さらにモジュール化し易い本発明の光デバイス6が製造される。
【0013】
以上のようにして製造された光デバイス6を用いて図6に示すモジュールを組立てる場合、YAGレーザーによって当該光デバイス6(詳しくはフェルール4)と筐体30に一体化された固定部材32との溶着させる場合がある。しかし、この時に前記半田9が再溶融し、ファイバ素線1が位置ずれを生じる虞がある、従って、かかる不都合を防止する観点からは、図4に示すように、フェルール4の先端部を他の部分よりも太くして、熱容積の拡大を図ることが望ましい。
【0014】
(実施形態2)
前記実施形態ではファイバ素線の端面に反射防止膜を成膜したが、本発明の光デバイス製造方法によればファイバ素線の端面にSWPF(Short Wavelength Pass Filter)、LWPF(Long Wavelength Pass Filter)、バンドパスフィルタといった膜が成膜された光デバイスを製造することもでき、何れの場合にもこれら膜の膜厚を設計値通りにすることができる。尚、前記SWPF(Short Wavelength Pass Filter)、LWPF(Long Wavelength Pass Filter)、バンドパスフィルタといった膜が成膜された光デバイスも本発明の光デバイスに含まれる。
【0015】
ファイバ素線の端面への成膜方法は前記各種PVD法や各種CVD法の何れであってもよく、何れの成膜方法の場合も設計値通りの膜厚の膜が成膜され、所期の光学特性を備えた光デバイスを製造することができる。
【0016】
【発明の効果】
本件出願の第1の光デバイス製造方法は次のような効果を有する。
(1)ファイバ素線の端面に膜を成膜してから、そのファイバ素線をフェルールに挿通・固定するので、ファイバ素線の端面への成膜に際し、成膜原料の蒸発原子又は分子がフェルールの端面に衝突して跳ね返ってきた蒸発原子又は分子と衝突して、ファイバ素線の端面に十分に積層されないといった不都合が発生する可能性がない。従って、設計値通りの膜厚の膜が確実に成膜され、設計値通りの光学特性を備えた光デバイスが容易且つ確実に製造される。
(2)ファイバ素線の端面に膜を成膜してから、そのファイバ素線をフェルールに挿通・固定するので、フェルールの側面に成膜原料の蒸発原子又は分子が付着することがない。従って、本発明の光デバイス製造方法によって製造された光デバイス6を用いて図5に示すモジュールを組立てれば、YAGレーザーによる光デバイス6(フェルール4)と固定部材32との溶着がフェルール4の側面に付着した成膜原料の蒸発原子又は分子によって阻害されることがなく、十分な固定強度を得られる。この結果、光デバイス6と固定部材32とを固定してから、固定部34を支点として当該光デバイス6をてこ調心しても、固定部34に割れ等の不良が発生する虞がない。尚、実際のモジュール化にあたっては、てこ調心された光デバイスを図示されていない別の固定部材にも固定して位置決めを行う。(3)ファイバ素線の端面に向かう蒸発原子又は分子がフェルールの端面に衝突して跳ね返ってきた蒸発原子又は分子と衝突する虞がないので、フェルール端面とそこから突出するファイバ素線の端面との距離を可及的に小さくすることが可能となる。従って、モジュール化の際の組立が容易で、長期信頼性も高い光デバイスを製造することができる。
【0017】
本件出願の第2の光デバイス製造方法は、次のような効果を有する。
(1)フェルール端面とそこから突出するファイバ素線の端面との距離LがL<4・d(dは側面に金属膜が成膜されたファイバ素線の外径)となるように、ファイバ素線をフェルールに挿通・固定するので、モジュールの組立がより一層容易な光デバイスを製造することができる。特に、フェルールから突出したファイバ素線先端の中心とフェルールの中心とのズレ量を小さくできるので、図6に示すようなモジュールの組立に際して、ファイバ素線1とLD8との光軸合わせの精度が向上し、結合効率の変動を許容値内に抑えることができる。また、長期信頼性もより一層向上し、特に高温放置又は低温放置時の光軸ズレに強い光デバイスを製造することができる。
【0018】
本件出願の光デバイスは、次のような効果を有する。
フェルールの端面とそこから突出したファイバ素線の端面との間の距離LがL<4・d(dは側面に金属膜が成膜されたファイバ素線の外径)の関係を満たすので、フェルールから突出したファイバ素線先端の中心とフェルールの中心とのズレ量が小さい。従って、例えば、本発明の光デバイスを使用して図6に示すモジュールを組立てる際、ファイバ素線1とLD8との光軸合わせの精度が向上し、結合効率の変動を許容値内に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】成膜前のファイバ素線を示す説明図。
【図2】成膜装置の真空チャンバの一例を示す説明図。
【図3】(a)は成膜済みのファイバ素線をフェルールに挿通する工程を示す説明断面図、(b)は成膜済みのファイバ素線をフェルールに挿通した後の状態を示す説明断面図。
【図4】光デバイスの一例を示す説明断面図。
【図5】光デバイスの他例を示す説明断面図。
【図6】光デバイスの使用例の一例を示す説明図。
【図7】(a)はくさび加工されたファイバ素線の端面を示す説明図、(b)は鏡面加工されたファイバ素線の端面を示す説明図、(c)曲面加工されたファイバ素線の端面を示す説明図。
【符号の説明】
1 ファイバ素線
2 ファイバ素線の端面
3 膜
4 フェルール
5 フェルールの端面
Claims (3)
- ファイバ素線(1)の側面に金属膜を成膜すると共に、該ファイバ素線(1)の端面(2)に膜(3)を成膜し、その後、このファイバ素線(1)をフェルール(4)に挿通して、前記膜(3)を成膜済みの端面(2)をフェルール(4)の端面(5)から突出させ、そのファイバ素線(1)をフェルール(4)に固定することを特徴とする光デバイス製造方法。
- フェルール(4)の端面(5)とそこから突出するファイバ素線(1)の端面(2)との距離(L)がL<4・d(dは側面に金属膜が成膜されたファイバ素線1の外径)となるように、ファイバ素線(1)をフェルール(4)に挿通・固定することを特徴とする請求項1記載の光デバイス製造方法。
- 金属製フェルール(4)に挿通する前に側面(12)に金属膜が成膜され、端面(2)に膜(3)が成膜されたファイバ素線(1)が金属製フェルール(4)に挿通されて、ファイバ素線(1)の前記成膜済み端面(2)がフェルール(4)の端面(5)から外側まで突設し、前記成膜済み端面(2)とフェルール(4)の端面(5)間の距離(L)をL<4・d(dは側面に金属膜が成膜されたファイバ素線1の外径)にして前記ファイバ素線(1)が金属製フェルール(4)に固定され、金属製フェルール(4)の側面に成膜原料の蒸発原子又は分子が付着していないことを特徴とする光デバイス。
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