JP3801389B2 - 栄養要求性を相補することによる、抗生物質によらない選抜に基づく新規の大腸菌/宿主ベクター系 - Google Patents
栄養要求性を相補することによる、抗生物質によらない選抜に基づく新規の大腸菌/宿主ベクター系 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3801389B2 JP3801389B2 JP20230399A JP20230399A JP3801389B2 JP 3801389 B2 JP3801389 B2 JP 3801389B2 JP 20230399 A JP20230399 A JP 20230399A JP 20230399 A JP20230399 A JP 20230399A JP 3801389 B2 JP3801389 B2 JP 3801389B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- gene
- plasmid
- expression
- coli
- oripbr
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/435—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
- C07K14/52—Cytokines; Lymphokines; Interferons
- C07K14/555—Interferons [IFN]
- C07K14/56—IFN-alpha
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/64—General methods for preparing the vector, for introducing it into the cell or for selecting the vector-containing host
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/65—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression using markers
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/70—Vectors or expression systems specially adapted for E. coli
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Zoology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Plant Pathology (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Toxicology (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
- Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
- Medical Treatment And Welfare Office Work (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗生物質によらない選抜を可能にする、新規の原核生物発現系、および組換えタンパク質の製造を目的とするそれらの使用に関する。
【0002】
【従来の技術】
原核生物の既知の発現プラスミドは、一つまたは数個の抗生物質耐性遺伝子以外に、不必要で、細胞の代謝にとって負担となる余計なDNA配列を含んでいる。これらには、クローニングの過程で生じるDNA配列である、例えば、インビトロでmRNAを合成するための特異的プロモーター、および一本鎖DNAを合成するための、ファージの特異的な複製開始点のような、多目的ベクターに由来する残存物や、望ましくないプラスミド再配列の原因となりうる不完全に複製したベクター配列までも含むDNAセグメントなどがある。
【0003】
プラスミドの存在、特に、発現ベクターの存在は、細胞にとって余計な代謝上の負担となる。その結果、選択圧はプラスミドをもたない細胞の形成に有利に働くが、その大部分は、抗生物質によって阻止できることになる。
【0004】
通常は、アンピシリン、テトラサイクリン、カナマイシンおよびクロラムフェニコールなどの抗生物質が選抜に用いられる。特に、アンピシリンのようなβ-ラクタム系抗生物質の使用が、治療用製品の製造(発酵)において問題となる。
【0005】
上述の理由で、β-ラクタム系抗生物質を用いる、抗生物質によるプラスミドの選抜は、最近では使用されていない。場合によっては、用いた宿主/ベクター系が非常に安定していることが明らかであるため、前培養と本格的な発酵の過程でのプラスミドの選抜を省くことが可能であった(Weir, A.N.C.およびMountain, A.欧州特許第0 651 1803号)。しかし、概してこれは、産物の収量低下を伴う。抗生物質による選抜が不可欠な場合には、アンピシリンに代わるものとしてテトラサイクリンがしばしば用いられる(Carter, P.ら、Biotechnology 10(1992)163-167)。β-ラクタム系抗生物質とは対照的に、テトラサイクリン系は、反応性の化合物ではないため、発酵過程における酵素的修飾によって失活する可能性はない。テトラサイクリン耐性遺伝子は、細菌の膜を修飾するタンパク質をコードしているため、抗生物質が細胞の中に入れなくなる。
【0006】
ストルール(Struhl, K.)と彼の共同研究者らは、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼ(HIS3)を実例に用いて、酵母DNAをもつプラスミドによって、適当な大腸菌変異株(hisB)が直接に相補されうることを示し、HIS3によってコードされている酵母の酵素が、大腸菌においても機能的に発現されることを明らかにしている(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 73(1976)1471-1475)。大腸菌の中でも変異を相補することのできる、遺伝子のこの能力は、例えば、別の酵母遺伝子(LEU2, URA3, TRP5およびARG4)をクローニングする(相補性クローニング)ための選抜基準としても用いられた。
【0007】
相補による選抜には、安定した変異をもつ大腸菌宿主菌株(復帰変異率 >10-10;好ましくは、非復帰欠失変異体)が必要であるが、既知の変異体の復帰率は桁数にして10-10よりも小さい(Schlegel,H.G.: Allgemeine Mikrobiologie. Georg Thieme Verlag Stuttgart, New York(1981))。
【0008】
大腸菌の既知の実験用菌株は、多くの場合、放射線照射(X線または紫外線照射)、化学的変異原(例えば、塩基類似体、亜硝酸、およびアルキル化化合物)、または生物学的手法(例えば、Muファージ、およびトランスポゾン変異誘発(Bachman, B.J.ら、Microbiol.Rev.47(〜983)180-230)による非特異的な突然変異誘発によって作出された各変異体で遺伝子型が異なっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、抗生物質によるプラスミド選抜を行わない、安定した原核生物(好ましくは、大腸菌)の宿主/ベクター系(発現系)を開発することにある。選抜の原理は、適当な酵母遺伝子による、原核生物の宿主細胞の安定した栄養要求性を相補することに基づいている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、原核生物のゲノムと相同組換えを起こすことができない、原核生物の最小発現ベクターにおいて、
a)複製開始点、
b)栄養要求性マーカー遺伝子、
c)原核生物において機能的活性を有するプロモーター、および
d)該プロモーターの調節下で発現される外来遺伝子(外来配列)
を含む発現ベクターに関する。
【0011】
これに関して、栄養要求性マーカー遺伝子の転写と、発現させようとする外来遺伝子の転写とは、好ましくは、反対方向になっている。また、マーカー遺伝子は、宿主として用いる原核生物にとって異種由来であることが好ましい。さらに、本発明で説明されている宿主/ベクター系における栄養要求性マーカー遺伝子の発現は、宿主細胞の中で栄養要求性が相補されるとき、宿主細胞において発現される全タンパク質の1%以下であることが好ましい。
【0012】
好ましい態様において、本発明に係る発現ベクターは、栄養要求性マーカー遺伝子のオープンリーディングフレームと、発現させようとする遺伝子のオープンリーディングフレームとが逆向きに配向し、同一の転写終結因子または連続して配置されたいくつかの転写終結因子によって終結するという特徴をもつ。
【0013】
栄養要求性マーカー遺伝子は、選抜培養条件下での栄養要求性宿主菌株の細胞増殖を可能にする遺伝子と理解されている。特に好ましいマーカー遺伝子は、宿主生物の必須の代謝経路における欠損(変異)を相補する異種性の真核生物の遺伝子であり、好ましくは、酵母の遺伝子である。宿主生物として大腸菌を用いるときには、マーカー遺伝子によって相補される、トリプトファン、ロイシン、またはウラシルの生合成経路における欠損をもつ変異体が好ましい。
【0014】
さらに本発明の主題は、本発明に係るベクターを含む原核生物の栄養要求的宿主細胞において、遺伝子の中に発現ベクターの選抜マーカー遺伝子によって相補される変異(欠失)または該宿主細胞遺伝子の機能的な産物を発現させないような効果を有する欠失もしくは変異を有する宿主細胞である。欠失は、好ましくは、発現ベクターの栄養要求性マーカー遺伝子に対応する、染色体の必須遺伝子の中に存在する。本発明のさらなる主題は、発現ベクターの栄養要求性マーカーに対応する遺伝子中の欠失で、この欠失または変異が、該宿主細胞遺伝子の機能的な産物を発現させないような効果を有する原核生物の栄養要求性細胞の中に、本発明に係る発現ベクターを導入することを含む、原核生物の発現系を製造するための方法である。
【0015】
本発明のさらなる主題は、本発明に係る宿主細胞において、本発明に係る発現ベクターを用いて、所望のタンパク質を異種的に発現させて、異種性のタンパク質を産生させ、また、この発現産物を、最少培地または合成完全培地中で発酵を行った細胞または上清から単離するための方法である。
【0016】
本発明のさらなる主題は、発現ベクターの栄養要求性マーカー遺伝子によって相補される変異を染色体の遺伝子にもつ原核生物の宿主細胞の中に、本発明に係る発現ベクターが導入されており、また、この染色体変異が、該宿主細胞の染色体遺伝子の機能的な産物を発現できないという効果をもつ点に特徴がある、原核生物の発現系を製造するための方法である。
【0017】
本発明において、大腸菌の染色体上の必須の栄養要求性(trpC、pyrF)を、適当な酵母遺伝子(TRP1、URA3)のプラスミドにコードされた発現によって相補することに基づく新規の大腸菌宿主/ベクター系が、抗生物質による一般的な選抜に代わるものとして開発された。さらに、
i)最少の機能因子(選抜マーカー、複製開始点および発現カセット)を用いて、大きさに関して最適化した(最小化された)新規の発現ベクターを構築し、
ii)大腸菌の所望の染色体遺伝子(trpC、pyrF)の相同組換え(欠失)によって、復帰変異することができない宿主菌株を単離し、また、
iii)新規の宿主/ベクター系の成分(発現プラスミドと宿主菌株)を、モデル遺伝子(インターフェロン-α-2b)の発現によって、機能と効率に関するチェックを行った。
このために、
i)染色体の遺伝子trpCおよびpyrFに安定した変異(欠失)を有する大腸菌の宿主菌株、および
ii)相補する酵母遺伝子TRP1(Tschumper, G.ら、Gene 10(1980)157-166)またはURA3(Rose, M.ら、Gene 29(1984)113-124)を有するベクターを構築した。
【0018】
二重変異体または欠失変異体は、好ましくは、安定した宿主菌株として構築される。
【0019】
本発明に係る最小ベクターは、好ましくは非常に小さく(2000 bpよりも小さい)、発現プラスミドに絶対に必須な因子、すなわち、複製開始点、異種性選抜マーカー遺伝子、および異種性発現カセットのみを、原核生物の宿主細胞のゲノムとの相同組換えを回避するために、できるだけ短いサイズで含む。本発明が意味するところの相同組換えとは、本発明に係るベクターと、宿主細胞のゲノムとの間でDNA配列を交換することと理解される。相同組換えは、ベクターとゲノムとの間に相当の配列親和性(少なくとも、50〜1000 bp)がある場合に生じうる。これよりも配列中の同一性が低い(50 bpより少ない)場合には、本発明にとって意味のある、検出可能な程度の相同組換えをもたらさない。
【0020】
適当な宿主細胞の例は、不活性なN-(5'-ホスホ-リボシル)-アントラニル酸イソメラーゼ(EC 5.3.1.24)を特徴とする大腸菌のTrpC変異体、および不活性なオロチジン-5'-リン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.23)を特徴とするpyrF変異体である。これらの変異体は、トリプトファンまたはウラシルを合成することができず、そのために、これらの成分を欠乏した栄養培地上では増殖することができない。それとは対照的に、トリプトファンとウラシルが適量含まれているために、完全培地上では正常な増殖を示す。
【0021】
栄養要求性trpC変異体とpyrF変異体は、それぞれを生合成するための欠失または欠損した遺伝子を変異せずに有する、本発明に係るプラスミドによって相補される。しかし、相補する遺伝子は、大腸菌に由来するものではなく、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に由来する。それらは、大腸菌の遺伝子に相当する同一の酵素をコードしている。酵母のプロモーターの機能が弱いために、それらの大腸菌における転写は、宿主である大腸菌に内在する相同遺伝子の転写よりも低い。このプラスミドコードによる、酵母のURA3遺伝子(pBR322プラスミドから派生したプラスミド)の発現は、例えば、相同な染色体遺伝子pyrF(Rose, M., 1984)の発現の3分の1しかない。これは、遺伝子用量効果にもかかわらず、マーカー遺伝子を過剰発現させる必要はなく、余計な代謝的ストレスを与えないという長所をもつ。
【0022】
プラスミドは、数千ヌクレオチド構成単位の長さをもつ、染色体外(エピソーム)の環状の二本鎖DNA分子で、細胞当り数コピーから数百コピー存在する。プラスミドは、染色体DNAの複製とは独立に、自律的なプラスミド複製/増幅を可能にする、いわゆる複製開始点と呼ばれるDNAセグメントを有している。
【0023】
抗生物質によるプラスミド選抜を回避する、安定した大腸菌の宿主/ベクター系が開発された。この選抜原理は、大腸菌の安定した栄養要求性を、適切な酵母遺伝子によって相補することに基づいている。
【0024】
この大腸菌宿主菌株は、好ましくは、染色体遺伝子のtrpCおよび/またはpyrFの中に、安定した、好ましくは、復帰変異できない変異(欠失)を含み、相補する酵母遺伝子のTRP1および/またはURA3を含む発現プラスミドを持っている。
【0025】
基本的な発現プラスミドは、以下の特徴をもつ:
i)抗生物質耐性遺伝子を持たない、
ii)非常に小さいサイズ(<2000 bp)である。
【0026】
それらは、大腸菌の中での複製と、望ましい遺伝子の発現にとって絶対に必須の以下の因子だけを含む:
i)複製開始点
ii)選抜マーカー遺伝子、および
iii)原核生物または真核生物の発現カセット(遺伝子治療)、また、これらのプラスミド因子のサイズはできるだけ小さい。
【0027】
本発明に係る発現ベクターにおいては、(1)a)複製開始点、
b)酵母由来の栄養要求性マーカー遺伝子、
c)原核生物において機能的活性を有するプロモーター、および
d)該プロモーターの調節下で発現される外来遺伝子
を含む、原核生物のゲノムと相同組換えを起こすことができない原核生物の最小の発現ベクター
であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る発現ベクターにおいては、(2)栄養要求性マーカー遺伝子、および発現される遺伝子が反対の方向を向いていて、同じターミネーターで終結する、上記(1)記載の発現ベクターであることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る発現ベクターにおいては、(3)栄養要求性マーカー遺伝子が、トリプトファン、ロイシンまたはウラシルの欠乏を補う、上記(1)または (2)記載の発現ベクターであることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る発現ベクターにおいては、(4)栄養要求性が宿主細胞で相補されるとき、栄養要求性マーカー遺伝子の発現収率が、宿主細胞の全タンパク質の1%以下である、上記(1)から(3) のいずれかに記載の発現ベクターであることを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る宿主細胞においては、(5)宿主細胞が、発現ベクターの栄養要求性マーカー遺伝子に対応する染色体遺伝子に変異をもち、その変異の結果、宿主細胞の該染色体遺伝子が機能的な産物を発現できなくなっている、上記(1)から(4) のいずれかに記載の発現ベクターをもつ原核生物宿主細胞であることを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る方法においては、(6)原核生物の発現系を構築するための方法において、発現ベクターの栄養要求性マーカー遺伝子によって相補される染色体遺伝子の変異を有する原核生物宿主細胞の中に (1) 記載の発現ベクターが導入され、かつ、染色体変異の結果、該染色体遺伝子が機能的な産物を発現できなくなっていることを特徴とする方法であることを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る方法においては、(7) (1) の発現ベクターの栄養要求性遺伝子に対応する染色体遺伝子の変異を含み、該変異の結果として該染色体遺伝子の機能的産物が発現されないような宿主細胞に含まれる、(1)記載の発現ベクター中の外来遺伝子を異種発現させることによって、異種性タンパク質を製造し、宿主細胞または上清から発現産物を単離するための方法において、宿主細胞の発酵を最少培地または合成完全培地で行うことを特徴とする方法であることを特徴とする。
【0035】
【発明の実施の形態】
複製開始点
細胞の中でプラスミドが自律複製するための複製開始点は、原核生物のプラスミドに由来し、好ましくは、天然の大腸菌のプラスミドに由来する。今日用いられている大腸菌プラスミドのほとんどは、その最小複製単位(DNA複製の開始点)が、プラスミドColE1と僅かにしか異ならないプラスミドpMB1(Sutcliffe, G.ら、Quant.Biol.43(1979)77-90)に基づいているクローニングベクターpBR322(Boliver, F.ら、Gene 2(1979)95-113)から派生したものである。また、プラスミドpBR322の複製は、ColE1型の複製とみなされている(Backman, K.ら、Cold Spring Harbor Symposia Qant.Biol.43(1978)69-76)。プラスミドpBR322の自律的複製に関与する最小DNA配列は、バックマン(Backman, K.)ら[1978]によって、580〜650 bpの長さにまで短縮された。細胞当りのこのプラスミドのコピー数は、複製開始点の種類によって決まる。到達することのできる細胞当りのコピー数によって、低コピー数(およそ10コピー、pACYCプラスミド)、中コピー数(およそ50コピー、pBRプラスミド)、および高コピー数(およそ500コピー数、pUCプラスミド)のプラスミドという。高コピー数のpUCプラスミドの複製開始点は、pBRの複製開始点の点突然変異によるにすぎない(Chambers, S.P.ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.29(1988)572-578)。遺伝子の発現収量は、一般的に、発現する遺伝子のコピー数と相関する。
【0036】
発現カセット
発現カセット(異種転写単位)は、以下のi)〜iv)を含む:
i)プロモーター、
ii)リボソーム結合部位、
iii)クローニング用の多数の切断部位、および
iv)転写終結因子(ρ因子非依存的ターミネーター)。
【0037】
クローニング用の多数の切断部位は、発現させようとする遺伝子(構造遺伝子)を挿入するために使用されるが、この目的のためには、ベクター中に一個だけ存在する、少なくとも2つの制限酵素切断部位からできている。切断部位は、好ましくは、例えば、NcoI、BspHI、SpHIおよびNdeIなどの制限酵素の認識部位のような認識部位配列中に、ATG開始コドンにあたる塩基配列を含むプロモーターに面した切断部位として用いられる。これによって、プロモーターと構造遺伝子との正確な結合が促される。
【0038】
プロモーターは、mRNAの合成を開始させ、このmRNA分子が形成される頻度を決めるための調節シグナルを含むDNA断片であり、発現カセットにおいて機能的に活性である。典型的な天然の大腸菌プロモーターは、80〜300塩基対の長さで、さまざまなプロモーターに共通で、配列比較によって決定されている(Rosenberg, MおよびCourt, D.ら、Ann.Rev.Genet.13(1979)319-353; Harley, C.B.およびReynolds, R.P.、Nucl.Acids.Res.15(1987)2343-2361)、いくつかの特徴的な(相同的)領域をもっている。
【0039】
高度に保存されている領域は、
i)mRNAの合成開始点から35塩基対前に存在する、5'-TTGACA-3'モチーフをもつ、RNAポリメラーゼの認識部位、
ii)mRNA合成開始点から10塩基対前に存在し、基本型配列として5'-TATAAT-3'をもつ、プリブナウ・シャラー(Pribnow Schaller)ボックス、またはいわゆるTATAボックス、および
iii)強力なプロモーターにおける、「-43」の位置付近にあるATに富む領域である。
【0040】
プロモーターが読まれる頻度に応じて、弱いプロモーターおよび強いプロモーターと呼ばれる。また、定常的プロモーターと調節的(誘導的、抑制的)プロモーターとに区別される。タンパク質の工業的製造にとってよいプロモーターとは、普通、細胞が増殖している間は不活性で、例えば、発酵を終えるときに、要求に応じて特異的に活性化されうる、強力で、厳密な調節を受けているプロモーターである。このように、非常に強力で、かつ同時に厳密に調節可能なプロモーター活性が要求されるため、今日、好んで使用されているハイブリッドプロモーターが構築されるようになった。簡単に調節することができるtacハイブリッドプロモーターの場合、強力で定常的なtrpプロモーターの「-35」領域を、誘導可能なlacプロモーターの「-10」領域と融合した(DeBoer, H.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80(1983)21-25; Amann, E.ら、Gene 25(1983)167-178)。さらなる例は、強力で構成的なT5バクテリオファージプロモーターを基にしたT5-PN25/03/04ハイブリッドプロモーターで、このハイブリッドプロモーターは、2つのlacオペレーター(lacO)の組合せ/挿入によって再構築され、簡単に調節できる強力なプロモーターが形成された(Stuber, D.ら、Immunological Methods IV(1990) 121-152)。tacハイブリッドプロモーターも、T5-PN25/03/04ハイブリッドプロモーターも、lacオペレーターとの相互作用によってプロモーターからの転写を妨げるlacIリプレッサーによって負の制御を受ける。天然の誘導因子であるラクトース、または非常に強力な代謝されないラクトース類似化合物のイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えると、lacIリプレッサーの離脱と、それによって、所期のmRNAとタンパク質の合成が起こる。
【0041】
転写終結因子は、RNAポリメラーゼにmRNA合成を終結するためのシグナルを付与する長さ50〜100塩基対のDNA配列である。これらは、相補的な塩基の対合(ほとんどG/C)によって生じる、ヘアピン形の二次構造を形成するという構造的な特徴をもつ。これらは、機能的には、方向性に関係なく作用する。特に、強力なプロモーターを用いるときに、RNAポリメラーゼがリードスルーするのを防ぐために、発現カセットの3'末端に非常に効率のよい(強力な)終結因子を置くことが望ましい。効率の悪い転写終結因子は、プラスミドにコードされた遺伝子の望ましくない発現の原因となることがある、オペロン様mRNAの形成をもたらすことがある。さらに、終結因子によってもたらされる、mRNAの3'末端の二次構造は、3'エキソヌクレアーゼによる分解を阻害し(Higgins, C.F.; Causton H.C.; Dance, G.S.C.; Mudd, E.A.: The role of 3'end in mRNA stability and decay. In: Belasco, J.G. Brawerman (eds.). Control of Messenger RNA Stability. Academic Press, Inc., San Diego, CA, p.13-30(1993))、それによってmRNAの半減期が延びるため、結果的に、合成されるタンパク質の量が増加する。よく用いられる転写終結因子の例は、バクテリオファージλのT0終結因子(Schwarz, E.ら、Nature 272(1978)410-414)、fdバクテリオファージ終結因子(Beck, F.およびZink, B.ら、Gene 16(1981)35-58)、および大腸菌のrrnBオペロンのT1終結因子(Brosius, J.ら、J.Mol.Biol.148(1981)107-127)である。
【0042】
リボソーム結合部位(RBS)も、タンパク質の生合成を効率的に開始させるのに必要である。ATG開始コドンから、保存モチーフAGGAをもつ、いわゆるシャイン・ダルガルノ(Shine Dalgarno)配列までの配列を含む。ATG開始コドンとSD配列との距離は、5〜15塩基対までさまざまであり、A/Tに富んでいる。mRNA合成開始点とATG翻訳開始コドンとの距離は、原則として15〜80塩基対である。
【0043】
どのような配列も、本発明の意味する範囲の外来配列として適している。このような塩基配列は、好ましくは、人間の体における代謝に影響を与えるポリペプチドをコードしている。このようなタンパク質またはポリペプチドは、好ましくは、サイトカイン、タンパク質、またはタンパク質ホルモンなど、治療に関連したポリペプチドである。
【0044】
大腸宿主菌株を構築するのに適した大腸菌変異体を作出するために利用することができる技術が数多くある。細胞全体の変異誘発をして望ましい表現型を選抜するというものから、各塩基の特異的な変異誘発、または厳密に定められた遺伝子もしくはゲノム切片の変異誘発にまで及ぶ。これらの方法は、ミラー(Miller, J.H.: Experiments in Molocular Genetics. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Garbor, New York(1972))、ナイトハルトら(Neidhardt, F.C.; Ingraham, J.L.; Low, K.B.; Magasanik, B.; Schaechter, M.; Umbarger, H.E.: Escherichia coli and Salmonella typhimurium. Cellular and Molecular Biology. American Society for Microbiology, Washington D.C.(1987))、およびウィンナッカー(Winnacker, E.L.、Gene und Klone, VCH Weinheim, DE,1985)によって説明されている。
【0045】
ハミルトンら(Hamilton, C.M.ら、J.Bacteriol.171(1989)4617-4622)の方法による相同組換えを用いて、全長遺伝子、または遺伝子の大きな断片を、部位特異的欠失によって、安定した非復帰性栄養要求性マーカーを宿主菌株の中に導入した。この技術では、本来の遺伝子型が保存される。すなわち、余計な変異が、大腸菌のゲノムの中に導入されない。遺伝子交換技術の原理は、実施例として、tryC欠失変異体の構築を用いて、さらに詳しく説明することにする。
【0046】
例えば、大腸菌のトリプトファンオペロン(Yanofsky, C.ら、Nucl.Acids Res.(1981)6647-6668)からtrpC遺伝子全部(1355 bp)を欠失させることにする。このために、適当なプライマーを用い、鋳型として大腸菌の染色体DNAを用いたPCRによって、trpC遺伝子の近傍領域(各場合、700〜800 bp)を増幅する。プライマーの突出部には、trpDとtrpBの遺伝子を増幅したDNA断片を方向性を持たせてpMAK705ベクターにライゲーションするための制限酵素切断部位が一つ存在している。pMAK705ベクターには、44℃で不活性になる温度感受性の複製開始点(pSC101由来の複製開始点)を有し、クロラムフェニコール耐性遺伝子を有するという特徴がある。染色体のtrpC遺伝子を欠失させるために、pMAK705-trpD/Bプラスミドを望ましい大腸菌菌株に形質転換させた。プラスミドと、大腸菌の染色体との間で相同組換えが起きるためには、組換え受容能をもつ大腸菌株(recA+遺伝子型)が必要である。recA-遺伝子型をもつ菌株は、相同組換えを行うことができないので不適当である。形質転換された細胞を、クロラムフェニコール存在下44℃で培養する。このプラスミドは、温度感受性の複製開始点(orits)をもっていて、44℃では複製できないため、例えば、相同組換えによって、染色体の中にベクターが組み込まれた細胞だけが生き残る。共組込み菌株(co-integrates)を単離し、クロラムフェニコールによる選抜条件下で、30℃で数回継代培養する。染色体に局在し、この温度では活性のあるpMAK705-trpD/Bプラスミドの複製開始点は、共組込み菌株の増殖率を極端に低下させる。第二の組換えが起きて、染色体からプラスミドを除去した細胞は再び正常に増殖する。これらの細胞は、クロラムフェニコール存在下、30℃で複製する、染色体から離脱したプラスミドをもっている。この結果、プラスミドを含む細胞は共組込み菌株よりも盛んに増殖して、数回継代した後には、培養液の大部分を占めるようになる。図1から分かるように、組み込まれたプラスミドは、AとBという、2つの異なった方法で染色体から離脱できる。こうして、プラスミドは、相同組換えの起きる態様によって、欠失させようとしているtrpCを持つようになるか(B)、または、細胞の中に入って来たときの元の形に戻る(A)ことになる。染色体のtrpC遺伝子をもったプラスミドをもつ細胞が、所望のtrpC欠失を起こしている可能性は非常に高い。それらを、プラスミドの制限酵素切断解析によって同定してから、クロラムフェニコールを入れずに44℃で1回、30℃で数回培養してプラスミドを除去する。それから、各コロニーをトリプトファンを入れた培地と入れない培地に塗抹培養(レプリカ培養)して、trpC栄養要求性について、このクローンをテストする。
【0047】
特別な大腸菌宿主/ベクター系と宿主菌株
基底レベルでの遺伝子発現でも障害となりうるような発現を防止するために、大腸菌にとって毒性をもつタンパク質を発現させるための、極めて厳密に制御された宿主/ベクター系が特別に開発された。ストゥディアーら(Studier, F.ら、Methods Enzymol.185(1990)60-89)のT7ポリメラーゼ系は、バクテリオファージT7由来の特殊なRNAポリメラーゼによる、T7プロモーターに完全に選択的で特異的な系である。宿主である大腸菌のRNAポリメラーゼは、このT7プロモーターを認識しないため、次のようにして誘導をかける場合には、T7ポリメラーゼを供給する。
i)例えば、λバクテリオファージから派生したCE6など、適当なファージを培養菌に感染させる、または、
ii)lacUV5/lacIプロモーターの制御下に置かれた染色体に組み込まれたT7ポリメラーゼを誘導する。
【0048】
溶原性λバクテリオファージから派生したDE3を染色体の中に組み込んで、T7ポリメラーゼ遺伝子を含む、特別な大腸菌宿主菌株BL21(DE3)とHMS174(DE3)を構築した。研究用の実験室でよく使われるこの系は、工業的な目的で用いるにはあまり適していない。というのは、
i)限られた数の宿主菌株(2種類)しか利用できない、
ii)DE3溶原は、発酵槽の中で完全には安定的でない、また、
iii)誘導をかけると細胞増殖が停滞し、その後で、高密度になるように細胞を増殖させるのが困難であるためである。
【0049】
以下の実施例、刊行物、配列プロトコール、および図面によって、特許請求の結果、保護範囲が生じる本発明をさらに説明する。説明されている方法は、改変されたものであっても、依然として本発明の内容を説明するものであると解される。
【0050】
【実施例】
一般的な方法:
サムブルック(Sambrook, J.;Fritsch, E.F.; Maniatis, T.: Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York(1989))が分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning. A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー研究所出版(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor, New York)で説明しているような標準的な方法を用いてDNAを操作した。分子生物学用試薬は、製造業者の使用説明にしたがって使用した。
【0051】
pBR322ベクター(中コピー数)とpUC20ベクター(高コピー数)の複製開始点を複製開始点として用いた。これらのプラスミドの自律複製に必要な最小のDNA配列は、580〜650 bpである(Backman, K.ら、1978)。
【0052】
酵母遺伝子のTRP1とURA3を選抜用マーカー遺伝子として選択した。テトラサイクリン耐性遺伝子を用いて、同質遺伝子系の標準参照用プラスミドを構築した。
【0053】
実施例1.
基礎ベクターOripBR-TRP1、OripBR-URA3、およびOripBR-TETの構築
1.1 基礎ベクターOripBR-TRP1の構築
プラスミドOripBR-TRP1は、ミュリスおよびファルーナ(Mullis, K.B.およびFaloona, F. A.ら、Methods Enzymol. 155(1987)350-355)の方法にしたがったポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られた2つのDNA断片を含んでいた。最初のPCR反応で、サトクリフ(Sutcliffe J.G., 1979)の発表したところにしたがえば、2517〜3160位塩基に相当するプラスミドpBR322の複製開始点を、下記のプライマーN1(配列番号:1)およびN2(配列番号:2)を用い、また鋳型DNAとしてpBR322を用いて増幅した。
PCRプライマーN1の5'側突出末端によって、唯一のSfiI制限酵素部位を導入し、PCRプライマーN2の5'側突出末端によって、唯一のXhoI制限酵素部位を導入した。
【0054】
チャンパーおよびカーボン(Tschumper, G., and Carbon, J., 1980)の発表したところに依れば、22〜777位の塩基にある酵母遺伝子TRP1(5'側近傍領域とTRP1構造遺伝子)を、下記のプライマーN3(配列番号:3)およびN4(配列番号:4)を用い、また鋳型DNAとしてYRP7(Kopetzki, E.ら、Mol.Gen.Genet.216(1989)149-155;Kopetzki, E.ら、Yeast 5(1989)11-24)を用いて第2のPCR反応にて増幅した。
PCRプライマーN3の5'側突出末端と2番目の翻訳終止コドンによって、唯一のSfiI切断部位とNotI切断部位を導入し、塩基番号1522〜1570の位置にあるバクテリオファージのfd転写ターミネーター(Beck, E.とZink, B., 1981)と、2つの唯一の制限酵素切断部位(MAKHIとXhoI)を、PCRプライマーN4の5'側突出末端によって、TRP1構造遺伝子のコード領域の3'末端に導入した。
【0055】
SfiIとXhoIで消化したこの2つのPCR断片を、アガロースゲル電気泳動によって精製した後連結した。この後、大腸菌K12菌株JA300(thr、leuB6、thi、thyA、trpC1117、hsrK、HsmK、strR;DSMZ 4776)(供給源:Deutshe Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)を、ハナハン(Hanahan, D.、J.Mol.Biol.166(1983)557-580)の方法にしたがった塩化カルシウム法によるか、フィードラーとワース(Fiedler, S.およびWirth, R.ら、Anal.Biochem. 170(1988)38-44)のプロトコールにしたがったエレクトロポレーション法によって形質転換した。この形質転換体は、M9最少培地(調製についてはSambrook, Jら、1989を参照のこと)と、ディフコ社(Difco Company)から購入したカザミノ酸(トリプトファンを含まない酸加水分解したカゼイン)が0.5%(w/v)入った寒天培地上で選抜してから、液体培地で増殖させた。制限酵素地図によって、所期のプラスミドOripBR-TRP1 (1497 bp) を同定した。
【0056】
1.2 基礎ベクターOripBR-URA3の構築
プラスミドOripBR-URA3は、プラスミドOripBR-TRP1と同じように、2つのPCR断片からできていた。しかし、選抜用マーカー遺伝子TRP1の代わりに酵母遺伝子URA3を用いた。最初のPCR反応については、実施例1.1を参照のこと。
【0057】
ローズ(Rose M., 1984)の発表したところにしたがえば、塩基対75〜1030位にあるURA3酵母遺伝子(5'側近傍配列とURA3構造遺伝子)を、2回目のPCR反応において、プライマーN5(配列番号:5)およびN6(配列番号:6)を用い、また鋳型DNAとしてYEp24(Botstein, D.ら、Gene 8(1979)17-24)を用いて増幅した。
PCRプライマーN5の5'側突出末端と2番目の翻訳終止コドンによって、唯一のSfiI切断部位およびNotI切断部位を導入し、1522〜1570位の塩基にあるバクテリオファージfdのfd転写ターミネーター(Beck, E.とZink, B., 1981)(本来の方向とは逆方向)と、2つの唯一の制限酵素切断部位(BamHIとXhoI)を、PCRプライマーN6の5'側突出末端によって、TRP1構造遺伝子のコード領域の3'末端に導入した。
【0058】
SfiIとXhoIで消化したこの2つのPCR断片を、アガロースゲル電気泳動によって精製した後連結した。この後、大腸菌K12菌株CSH28(△lacpro、supF、trp、pyrF、his、strA、thi)(供給源:コールドスプリングハーバー研究所、ニューヨーク(Cold Spring Harbor Laboratory, New York);Miller, J.H., 1972)を、ハナハン(Hanahan, D., 1983)の方法にしたがった塩化カルシウム法によるか、フィードラーとワース(Fiedler, S. and Wirth, R., 1988)のプロトコールにしたがったエレクトロポレーション法によって形質転換した。この形質転換体は、M9最少培地(調製についてはSambrook, Jら,1989を参照のこと)、ディフコ社(Difco Company)から購入したカザミノ酸0.5%(w/v)、および5 mg/mlのトリプトファンを含む寒天培地上で選抜してから、液体培地で増殖させた。制限酵素地図によって、所期のプラスミドOripBR-URA3 (1697 bp) を同定した。
【0059】
1.3 抗生物質耐性をもつ参照用ベクターOripBR-TETの構築
プラスミドOripBR-TETは、プラスミドOripBR-TRP1およびOripBR-URA3と同様に、2つのPCR断片を有していた。しかし、選抜用マーカー遺伝子は、TRP1もしくはURA3ではなく、プラスミドpBR322由来のテトラサイクリン耐性遺伝子(TET)を用いた。最初のPCR反応については、実施例1.1を参照のこと。
【0060】
サトクリフ(Sutcliffe J.G., 1979)の発表したところにしたがえば、塩基対3〜1275位にあるTET耐性遺伝子(プロモーターとTET構造遺伝子)を、2回目のPCR反応において、下記のプライマーN7(配列番号:7)およびN8(配列番号:8)を用い、鋳型DNAとしてpBR322(Sutcliffe J.G., 1979)を用いて増幅した。
PCRプライマーN7の5'側突出末端によって、唯一のSfiI切断部位およびNotI切断部位を導入し、塩基1522〜1570位にあるバクテリオファージfdのfd転写ターミネーター(Beck, E.とZink, B., 1981)(本来の方向とは逆方向)と、2つの唯一の制限酵素切断部位(XhoIとXbaI)を、PCRプライマーN8の5'側突出末端によって、TET構造遺伝子のコード領域の3'末端に導入した。
【0061】
SfiIとXhoIで消化したこの2つのPCR断片を、アガロースゲル電気泳動によって精製してから連結した。この後、大腸菌K12菌株JA300(thr、leuB6、thi、thyA、trpC1117、hsrK、HsmK、strR;DSMZ 4776)(供給源:Deutshe Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)を、ハナハン(Hanahan, D., 1983)の方法にしたがった塩化カルシウム法によるか、フィードラーとワース(Fiedler, S. and Wirth, R., 1988)のプロトコールにしたがったエレクトロポレーション法によって形質転換した。この形質転換体を、12.5μg/mlのテトラサイクリンを含むLB完全培地(調製についてはSambrook, Jら、1989を参照のこと)(寒天培地)上で選抜してから、液体培地で増殖させた。制限酵素地図によって、所期のプラスミドOripBR-TET (2012 bp) を同定した。
【0062】
1.4 プラスミドOripBR-TRP1、OripBR-URA3、およびOripBR-TETのNdeI切断部位の除去
その後、基礎ベクターOripBR-TRP1、OripBR-URA3、およびOripBR-TETのライゲーション過程で、2つのPCR断片から切断部位NotIとSfiIとの間に生じた、望ましくないNdeI切断部位を、NotI/SfiIヌクレオチドアダプターによって除去した。
【0063】
そのために、プラスミドOripBR-TRP1、OripBR-URA3、およびOripBR-TETをNotIとSfiIで消化して、ベクターの断片をアガロースゲル電気泳動によって精製し、NotI/SfiIヌクレオチドアダプターとライゲーションさせた。制限酵素地図によって(NdeI切断部位が失われる)、所期のプラスミドを同定した。
【0064】
NotI/SfiIアダプターは、互いに相補的なオリゴヌクレオチドN9(配列番号:9)とN10(配列番号:10)をハイブリダイゼーションさせて調製した。このために、それぞれ10 nmolのオリゴヌクレオチドN9とN10を、100μlのTris-HCl, pH 7.0、12.5 mmol/lとMgCl2、12.5 mmol/lの中で混合し、95℃で5分間加熱してから、ゆっくりと室温になるまで冷却した。
【0065】
実施例2.
原核生物発現カセットの構築
用いた発現カセット(異種転写ユニット)には、以下の因子が含まれていた:
i)制御されたT5-PN25/03/04ハイブリッドプロモーター(Bujard, H.ら、Methods in Enzymology 155(1987)416-433; Stueber, D.ら、1990)、
ii)合成されたリボソーム結合部位RBSII(Stueber, D.ら、1990)、
iii)唯一のNdeI、SalI、XmaI、EcoRV、およびCelII切断部位をもつ、複数のクローニング用切断部位、ならびに
iv)λ-T0バクテリオファージ転写ターミネーター(Schwarz, E.ら、1978)。
【0066】
T5-PN25/03/04ハイブリッドプロモーター(図3:塩基位置:1〜87位)とλ-T0ターミネーター(図3:塩基位置:146〜241位)を、EcoRI-RBSII-NdeI/SalI/XmaI/EcoRV/CelIIリンカーによって連結させた。
【0067】
pDS56/RBSIIプラスミド(Stueber, D.ら、1990)を再構築して、発現カセットを得た。このために、pDS56/RBSIIプラスミドから派生したプラスミドをEcoRIとCelIIで消化して、アガロースゲル電気泳動によって精製したEcoRI/CelII-pDS56ベクターの断片をEcoRI-RBSII-NdeI/SalI/XmaI/EcoRV/CelIIリンカーとライゲーションした。
【0068】
EcoRI-RBSII-NdeI/SalI/XmaI/EcoRV/CelIIリンカーは、互いに相補的なオリゴヌクレオチドN11(配列番号:11)とN12(配列番号:12)をハイブリダイゼーションさせて調製した。このために、それぞれ10 nmolのオリゴヌクレオチドN11とN12を、100μlのTris-HCl, pH 7.0(12.5 mmol/l)+MgCl2(12.5 mmol/l)の中で混合し、95℃で5分間加熱してから、ゆっくりと室温になるまで冷却した。
制限酵素地図によって所期のプラスミドp16074aを同定し、DNA配列決定によって発現カセットをチェックした。
【0069】
実施例3.
発現プラスミドOripBR-TRP1-EK、OripBR-URA3-EK、およびOripBR-TET-EKの構築制御されたT5-PN25/03/04ハイブリッドプロモーター、合成されたリボソーム結合部位RBSII、唯一のNdeI、SalI、XmaI、EcoRV、およびCelII切断部位をもつ複数のクローニング用切断部位、ならびにλ-T0ターミネーターからなるプラスミドp16074aの発現カセット(図3)をPCRによって増幅して、プラスミドOripBR-TRP1、OripBR-URA3、およびOripBR-TETの中に挿入した。
【0070】
3.1 発現プラスミドOripBR-TRP1-EKの構築
プライマーN13(配列番号:13)およびN14(配列番号:14)を用い、またDNA鋳型としてプラスミドp16074aを用いたPCRによって、発現カセット(図3)を増幅した。
PCRプライマーN14によって、発現カセットの3'末端(λ-T0ターミネーター)に、唯一のBamHI切断部位を導入した。
【0071】
PCR産物を制限酵素XhoIとBamHIで消化して、およそ255 bpの長さのXhoI/BamHI断片をアガロースゲル電気泳動によって精製した後、およそ1490 bpの長さのXhoI/BamHI-OripBR-TRP1ベクターの断片の中にライゲーションした(実施例2)。制限酵素地図によって、所期のプラスミドOripBR-TRP1-EK(1728 bp)を同定し、PCRによって増幅した発現カセットの配列をDNA配列決定によって確認した。
【0072】
3.2 発現プラスミドOripBR-URA3-EKの構築
発現プラスミドOripBR-URA3-EK(1928 bp)を、プラスミドOripBR-TRP1-EKと同様に調製した。なお、基礎ベクターOripBR-TRP1の代わりにOripBR-URA3を用いた。
【0073】
3.3基準プラスミドOripBR-TET-EKの構築
プライマーN13(配列番号:13)およびN15(配列番号:15)、ならびにDNA鋳型としてプラスミドp16074aを用いたPCRによって、発現カセット(図3)を増幅した。
PCRプライマーN15によって、発現カセットの3'末端(λ-T0ターミネーター)に、唯一のXbaI切断部位を導入した。
【0074】
PCR産物を制限酵素XhoIとXbaIで消化して、およそ255 bpの長さのXhoI/XbaI断片をアガロースゲル電気泳動によって精製した後、およそ2000 bpの長さのXhoI/XbaI-OripBR-TETベクターの断片の中にライゲーションした(実施例2)。制限酵素地図によって、所期のプラスミドOripBR-TET-EK(2243 bp)を同定し、PCRによって増幅した発現カセットの配列をDNA配列決定によって確認した。
【0075】
実施例4.
発現プラスミドOripUC-TRP1-EK、OripUC-URA3-EK、およびOripUC-TET-EKの構築プラスミドOripUC-TRP1-EK、OripUC-URA3-EK、およびOripUC-TET-EKでは、プラスミドpBR322の中コピー数の複製開始点が、pUCプラスミドの高コピー数の複製開始点で置換されていた。
【0076】
このために、プライマーN1(配列番号:1)およびN2(配列番号:2)(実施例1)、また鋳型DNAとしてプラスミドpUC20を用いたPCRによって、pUCの複製開始点を増幅した。SfiIとNotIで消化した、およそ650 bpの長さのSfiI/NotI-pUCの複製開始点をアガロースゲル電気泳動によって精製した後、関連するベクター断片、SfiI/NotI-OriBR-TRP1-EK、SfiI/NotI-OripBR-URA3-EK、およびSfiI/NotI-OripBR-TET-EKの中にライゲーションした。プラスミドコピー数の増加(標準的な調製をして、3〜5倍プラスミド収量が増加する)によって、所期のプラスミドOripUC-TRP1-EK、OripUC-URA3-EK、およびOripUC-TET-EKを同定した。
【0077】
実施例5.
IFN-α2b発現プラスミドの構築
5.1 インターフェロン-α2bモデル遺伝子の合成
インターフェロン-α2b遺伝子(シグナル配列なしのMet-IFN-α2b構造遺伝子)を、異種的に発現させるべきモデル遺伝子として、プラスミドの安定性とIFN-α2bの合成に関して、発現ベクターをテストした。
【0078】
化学的に調製されたMet-IFN-α2b構造遺伝子は、インデックス・ノミナム・インターナショナル・ドラッグ・ディレクトリ1992/1993(Index Nominum. International Drug Directory 1992/1993, Medpharm Scientific Publishers & Wissenschaftliche Verlagsgemeinschaft Stuttgart, Govi-Verlag Frankfurt, 615-616(1992))に成熟IFN-α2bとして既述されているアミノ酸配列に基づいている。Met-IFN-α2b構造遺伝子は、さらに、ATG開始コドンを持っている。合成されたリボソームRBSII結合部位と、唯一のEcoRI切断部位は、Met-IFN-α2b構造遺伝子の上流の5'末端側に存在している(Stueber, D.ら、1990)。Met-IFN-α2b構造遺伝子の設計においては、大腸菌で用いられる好ましいコドン(大腸菌コドン使用)を考慮した。さらに、変異遺伝子を構築し、Met-IFN-α2bのDNAセグメントを再クローニングすることに関して、適当な唯一の制限酵素切断部位を、コード領域の中とMet-IFN-α2b構造遺伝子の両末端(EcoRIとHindIII)とに導入した。
【0079】
IFN-α2b遺伝子(RBSII-Met-IFN-α2b遺伝子)は、化学合成によって作製されたオリゴヌクレオチドから、ジェノシス社(Genosys Company)(Genosys Biotechnologies Inc., Cambridge, England)が調製した。オリゴヌクレオチドをアニールしてライゲーションした後、ストラタジーン社(Stratagene GmbH, Heiderberg, Germany)から購入した、大腸菌の標準的なベクターpBluescriptSK(+)のEcoRIとHindIIIの切断部位にクローニングして、二本鎖のRBSII-Met-IFN-α2b遺伝子を組み立てた。クローニングしたRBSII-Met-IFN-α2b構造遺伝子の予め決定されたDNA配列を、DNA配列の配列決定によって確認した。その後、およそ535 bpの長さのEcoRI/HindIII-RBSII-Met-IFN-α2bセグメントを、EcoRIとHindIIIで消化したpDS56/RBSIIプラスミドの中に再クローニングした(pDS-IFN)。これにより、RBSII-Met-IFN-α2b遺伝子を、およそ540 bpのEcoRI/CelII-RBSII-Met-IFN-α2b断片の形で導入することが可能である。
【0080】
5.2 IFN-α2b発現プラスミドの構築
RBSII-Met-IFN-α2b遺伝子を、プラスミドpDS-IFNから、およそ540 bpのEcoRI/CelII-RBSII-Met-IFN-α2b断片の形で単離した後、EcoRIとCelIIで消化したプラスミドOripBR-TRP1-EK、OripBR-URA3-EK、OripBR-TET-EK、OripUC-TRP1-EK、OripUC-URA3-EK、およびOripUC-TET-EKのそれぞれの中にライゲーションした。制限酵素地図によって、所期のOripBR-TRP1-EK-IFN、OripBR-URA3-EK-IFN、OripBR-TET-EK-IFN、OripUC-TRP1-EK-IFN、OripUC-URA3-EK-IFN、およびOripUC-TET-EK-IFNが確認された。
【0081】
実施例6.
復帰変異しないtrpCおよびpyrFの大腸菌宿主菌株の構築
望ましい栄養要求性マーカーであるtrpCとpyrFを、ハミルトン(Hamilton, C.M.)ら、1989、の方法による相同組換えを用いて、全長遺伝子または遺伝子の比較的大きな断片を、部位特異的に欠失させることによって、既に利用することができる実験菌株の中に導入した。
【0082】
6.1 欠失プラスミドの構築
6.1.1 欠失プラスミドpMAK705-trpD/Bの構築
染色体のtrpCの全長遺伝子(1355 bp)を欠失させるために、5'側近傍領域(trpD)と3'側近傍領域(trpB)の700〜800 bpをそれぞれ、PCRによってクローニングし、これらを、PCRプライマーによって導入した共通の切断部位(NotI)を用いて、直接融合によって(trpD/B)ベクターpMAK705(Hamilton, C.M.ら、1981)の中にライゲーションした。大腸菌のトリプトファンオペロンのDNA配列は、ヤノフスキー(Yanofsky, C.)ら[1981]により記載されている。
【0083】
プライマーN16(配列番号:16)とN17(配列番号:17)を用い、
鋳型として大腸菌の染色体DNAを用いて、trpC遺伝子の5'側近傍領域(trpD)を増幅した。プライマーN16を用いて、唯一のBamHI切断部位を5'末端に導入し、プライマーN17を用いて、唯一のNotI切断部位を、増幅されたtrpDの3'末端に導入した。
【0084】
プライマーN18(配列番号:18)とN19(配列番号:19)を用い、
鋳型として大腸菌の染色体DNAを用いて、trpC遺伝子の3'側近傍領域(trpB)を増幅した。プライマーN18を用いて、唯一のNotI切断部位を5'末端に導入し、プライマーN19を用いて、唯一のSpHI切断部位を、増幅されたtrpBの3'末端に導入した。
【0085】
trpDのPCR断片は、BamHIとNotIで消化し(およそ710 bp)、trpBのPCR断片は、NotIとSpHIで消化した(およそ820 bp)。DNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製した後、共通のNotI切断部位を介した、3種類の断片の直接融合によるライゲーションによって、約5650 bpの長さのBamHI/SpHI-pMAK705ベクターの断片へのライゲーションを行った。制限酵素地図によって、所期のプラスミドpMAK705-trpD/B(7104 bp)を同定し、PCRによって増幅したtrpD/Bの配列をDNA配列決定により確認した。
【0086】
6.1.2 欠失プラスミドpMAK705-△pyrFの構築
染色体のpyrF遺伝子のコード領域から約260 bpを欠失させるために、pyrFの近傍領域の700〜800 bpを、それぞれPCRによってクローニングし、PCRプライマーによって導入された共通の切断部位(XbaI)を用いて、pMAK705ベクターの中に直接融合して(△pyrF)ライゲーションした。大腸菌のpyrFオペロンのDNA配列は、ターンボー(Turnbough, C.L. Jr.ら、J.Biol.Chem.262(1987)10239-10245)ら、1987によって公開されていた。プライマーN20(配列番号:20)とN21(配列番号:21)を用い、
鋳型として大腸菌の染色体DNAを用いて、△pyrF遺伝子の5'側近傍領域を増幅した。プライマーN20を用いて、唯一のBamHI切断部位を5'末端に導入し、プライマーN21を用いて、唯一のXbaI切断部位を、増幅されたDNA断片の3'末端に導入した。
【0087】
プライマーN22(配列番号:22)とN23(配列番号:23)を用い、
鋳型として大腸菌の染色体DNAを用いて、△pyrF遺伝子の3'側近傍領域を増幅した。プライマーN22を用いて、唯一のXbaI切断部位を5'末端に導入し、プライマーN23を用いて、唯一のSpHI切断部位を、増幅されたDNA断片の3'末端に導入した。
【0088】
△pyrFの5'側近傍領域断片をBamHIとXbaIで消化し(およそ600 bp)、△pyrFの3'側近傍領域断片をXbaIとSpHIで消化した(およそ690 bp)。DNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製した後、共通のXbaI切断部位を介した、3種類の断片の直接融合によるライゲーションによって、約5650 bpの長さのBamHI/SpHI-pMAK705ベクターの断片へのライゲーションを行った。制限酵素地図によって、所期のプラスミドpMAK705-△pyrF(6788 bp)を同定し、PCRによって増幅したpyrFの配列をDNA配列決定により確認した。
【0089】
6.2 大腸菌の欠失変異株の単離
ベクターpMAK705は、44℃で不活性になるという熱感受性の複製開始点(pSC101由来の複製開始点)とクロラムフェニコール耐性遺伝子を持つという特徴がある。染色体の遺伝子を欠失させるために、適当なpMAK705プラスミドの誘導体を、望ましい大腸菌株に形質転換する。プラスミドと大腸菌の染色体との間で相同組換えが起こるのに必要な要件は、組換え受容能がある大腸菌株(recA+遺伝子型)である。recA-遺伝子型をもつ菌株は、相同組換えを行うことができないので不適当である。
【0090】
大腸菌K12菌株UT5600(ara、proC-14、leuB16、azi-6、lacY1、tsx-67、entA403、trpE38+、rpsL109、xyl-5、mtl-1、thi-1、△ompT)(Grodberg, J.およびDunn, J.J.ら、J.Bacteriol.170(1988)1245-1253, 1988)を、プラスミドpMAK705-trpD/BおよびプラスミドpMAK705-△pyrFで形質転換した。プラスミドDNAを加えた後、形質転換用調製液を30分間氷上で、5分間37℃(ヒートショック)で、さらに30℃で30分間インキュベートした。この、形質転換用調製液を、20μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB培地3 mlに移して、細胞を一晩培養した。
【0091】
プラスミドの共組込み株を選抜するため、すなわち、相同組換えによってプラスミドを染色体の中に組み込んだ細胞を選抜するため、一晩培養液の10-5希釈液300μlを、20μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹培養した。寒天培地は、インキュベーターで予め50〜60℃に暖めておき、細胞を塗抹した後すぐに、きっちり44℃でインキュベートした。pMAK705プラスミドは、この温度では複製できないため、プラスミドを染色体に組み込んだ細胞だけが増殖してコロニーを形成する。この後、共組込み株の候補株を精製するために、20μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天培地の上で44℃で2回から3回継代した(希釈塗抹培養)。
【0092】
共組込み体を崩壊させ、染色体から離脱したプラスミドを除去するために、精製した共組込み株のクローンを、クロラムフェニコールを含まないLB培地中、30℃で数回(2回〜6回)継代培養した。このあと、細胞をLB培地で希釈することにより分離し、所期の遺伝子型についてテストした。
【0093】
6.2.1 欠失変異体UT5600(△trpC)の特徴分析
LB培地上で希釈して分離した細胞/クローンを、トリプトファン含有(50 mg/ml)、またはトリプトファン非含有の培地(0.5%カザミノ酸を含むM9最少培地)上に塗抹培養して、望ましいtrp栄養要求性に関する解析を行った(レプリカ培養)。さらに、クロラムフェニコール(20μg/ml)含有LB培地と非含有LB培地の上に塗抹培養して、クローンのクロラムフェニコール感受性をチェックした。さらに、PCRプライマーN1およびN4を用い、また対応する染色体DNAを鋳型として用いる、最初の菌株と欠失変異株との比較PCR解析によって、染色体のtrpC欠失を確認した。理論的に計算すると、最初の菌株のPCR産物は約2900 bpの長さであり、trpC欠失変異菌株のPCR産物は約1430 bpの長さであった。
【0094】
6.2.1 欠失変異体UT5600(△pyrF)の特徴分析
LB培地上で希釈して分離した細胞/クローンを、ウラシル含有(50 mg/ml)、またはウラシル非含有の培地(0.5%カザミノ酸を含むM9最少培地)上に塗抹培養して、望ましいpyrF栄養要求性に関する解析を行った。さらに、クロラムフェニコール(20μg/ml)含有LB培地と非含有LB培地の上に塗抹培養して、クローンのクロラムフェニコール感受性をチェックした。さらに、PCRプライマーN5およびN8を用い、また対応する染色体DNAを鋳型として用いる、最初の菌株と欠失変異株との比較PCR解析によって、染色体のpyrF欠失を確認した。理論的に計算すると、最初の菌株のPCR産物は約1550 bpの長さであり、pyrF欠失変異菌株のPCR産物は約1290 bpの長さであった。
【0095】
実施例7.
異種性モデル遺伝子の発現(IFN-α2b)
栄養要求性の相補による、抗生物質なしの選抜に基づく新規の宿主/ベクター系を、異種発現させるモデル遺伝子にインターフェロン-α2bを用いて、その機能と効率に関する評価を行った。
【0096】
7.1 trpC栄養要求性の相補による選抜
IFN-α2b遺伝子を発現させるために、大腸菌K12菌株UT5600(△trpC)(実施例6)をそれぞれ、実施例5で説明されている発現プラスミドOripBR-TRP1-EK-IFN、OripUC-TRP1-EK-IFN、OripBR-TET-EK-IFN、およびOripUC-TET-EK-IFNのいずれかで形質転換した。形質転換されたUT5600(△trpC)/OripBR-TRP1-EK-IFNとUT5600(△trpC)/OripUC-TRP1-EK-IFNの細胞を、0.5%カザミノ酸(ディフコ社(Difco))を含むM9最少培地中で37℃にて振盪培養して増殖させ、また、参照用細胞UT5600(△trpC)/OripBR-TET-EK-IFNとOripUC-TET-EK-IFNを、0.5%カザミノ酸(ディフコ社(Difco))と50 mg/mlのトリプトファンと12.5μg/mlのテトラサイクリンを含むM9最少培地の中で、550 nm(OD550)での吸光度が0.6〜0.9になるまで37℃で増殖させてから、IPTG(最終濃度1〜5 mmol/l)で誘導をかけた。誘導期間を37℃で4〜8時間置いた後、遠心分離(ソーバル(Sorvall)RC-5B遠心分離機、GS3ローター、6000 rpm、15分間)によって細胞を回収し、50 mmol/lのトリス塩酸緩衝液、pH 7.2で洗浄して、さらに処理を行う時まで-20℃で保存した。
【0097】
7.2 pyrF栄養要求性の相補による選抜
IFN-α2b遺伝子を発現させるために、大腸菌K12菌株UT5600(△pyrF)(実施例6)をそれぞれ、実施例5で説明されている発現プラスミドOripBR-URA3-EK-IFN、OripUC-URA3-EK-IFN、OripBR-TET-EK-IFN、およびOripUC-TET-EK-IFNのいずれかで形質転換した。形質転換したUT5600(△trpC)/OripBR-URA3-EK-IFNとUT5600(△trpC)/OripUC-URA3-EK-IFNの細胞を、0.5%カザミノ酸(ディフコ社(Difco))を含むM9最少培地の中で37℃にて振盪培養して増殖させ、また、参照用細胞UT5600(△trpC)/OripBR-TET-EK-IFNとOripUC-TET-EK-IFNを、0.5%カザミノ酸(ディフコ社(Difco))と20 mg/mlのウラシルと12.5μg/mlのテトラサイクリンを含むM9最少培地の中で、550 nm(OD550)での吸光度が0.6〜0.9になるまで37℃で増殖させてから、IPTG(最終濃度1〜5 mmol/l)で誘導をかけた。誘導期間を37℃で4〜8時間置いた後、遠心分離(ソーバル(Sorvall)RC-5B遠心分離機、GS3ローター、6000 rpm、15分間)によって細胞を回収し、50 mmol/lのトリス塩酸緩衝液、pH 7.2で洗浄して、さらに処理を行う時まで-20℃で保存した。
【0098】
7.3 標準的な系における発現解析
発現プラスミドOripBR-TRP1-EK-IFN、OripUC-TRP1-EK-IFN、OripBR-URA3-EK-IFN、OripUC-URA3-EK-IFN、OripBR-TET-EK-IFN、およびOripUC-TET-EK-IFNで形質転換したUT5600(△trpC)細胞またはUT5600(△pyrF)細胞におけるIFN-α2bの合成を解析した。このために、遠心分離した培養液の3OD550ユニット(1OD550=OD550が1の細胞懸濁液1 ml)の細胞沈殿物を、10 mmol/lのトリス塩酸緩衝液、pH 7.2、0.25 mlに再懸濁してから、ブランソン社(Branson Company)(ドイツのホイゼンシュタム(Heusenstamm, Germany))の[商標登録]ソニファー細胞破砕装置(Sonifier Cell Disruptor)B15で超音波処理(50%強度で、30秒間のパルスを2回)によって細胞を溶菌した。不溶性の細胞成分を沈降させて(エッペンドルフ(Eppendorf)5415遠心分離機、14000 rpm、5分間)、上清を5分の1量の5×SDSサンプルバッファー(1×SDSサンプルバッファー:50 mmol/lのトリス塩酸、pH 6.8、1% SDS、1%メルカプトエタノール、10%グリセロール、0.001% ブロモフェノールブルー)と混合した。不溶性の細胞残渣画分(ペレット)は、6〜8Mの尿素を含む、0.3 mlの1×SDSサンプルバッファーに再懸濁し、このサンプルを95℃で5分間インキュベートしてから再び遠心分離した。その後、このタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離して(Laemmli, U.K.ら、Nature 227(1970)680-685)、クーマシーブリリアントブルーR染色液で染色した。
【0099】
合成されたIFN-α2bタンパク質は均質で、すべて、不溶性タンパク質の集塊物、いわゆる封入体(IBs)の形状で不溶性細胞画分に存在することが分かった。この発現物の収量は、すべてのクローン/細胞において、測定精度の範囲では等量で、全大腸菌タンパク質に対して30〜50%であった。
【0100】
実施例8.
プラスミドの安定性試験
細胞に誘導をかける(実施例7)前にサンプルを取り出して、プラスミドの安定性試験を行った。このために、0.5%カザミノ酸を含むM9最少培地で直接にサンプルを希釈し、各希釈段階毎に300μlを非選抜用寒天培地(0.5%カザミノ酸、50 mg/mlトリプトファン、および20 mg/lウラシルを添加したM9最少培地)上に塗抹培養した。このあと、各クローンからそれぞれ400個のコロニーを爪楊枝で、まず、適当な選抜用寒天培地(0.5%カザミノ酸を含むM9最少培地、または0.5%カザミノ酸、50 mg/lトリプトファン、20 mg/mlウラシル、および12.5μg/mlテトラサイクリンを添加したM9最少培地)上に塗抹してから、その後、非選抜用寒天培地(0.5%カザミノ酸、50 mg/lトリプトファン、および20 mg/lウラシルを添加したM9最少培地)に塗抹した。
【0101】
両方の寒天培地でコロニーを形成した細胞の数から、プラスミドを含む細胞の数を測定した。選抜用寒天培地上で増殖しない細胞は、栄養要求性を相補するプラスミド、または抗生物質耐性を生じるプラスミド(TET参照用プラスミド)を失った細胞である。細胞に誘導をかける前は、プラスミドの安定性は、選抜方法とは無関係に、また、プラスミドの種類とも無関係に、すべての培養について100%であった。
【0102】
【発明の効果】
本発明により、抗生物質によるプラスミド選抜を行わない、安定的な原核生物の宿主/ベクター系(発現系)が提供された。選抜の原理は、適当な酵母遺伝子による、原核生物の宿主細胞の安定した栄養要求性を相補することに基づく。e)複製開始点、f)栄養要求性マーカー遺伝子、g)原核生物において機能的活性を有するプロモーター、およびh)該プロモーターの調節下で発現される外来遺伝子を含み、原核生物のゲノムと相同組換えを起こすことができない、原核生物の最小の発現ベクターが特に適している。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 遺伝子組換え技術による、trpC欠失大腸菌変異株の構築を示す図である。欠失させるtrpC遺伝子に隣接する配列をベクターpMAK705の中に組み込む。プラスミドは44℃では複製(共組込み体を形成)できないため、相同組換えと染色体へのプラスミドの組込みによって形質転換された大腸菌菌株だけが、クロラムフェニコールを添加した培地で44℃で培養した後に生き残る。その後、30℃で培養してクロラムフェニコール選抜を行うと、染色体からプラスミドが切り出されるという第二の相同組換えが生じる。このように共組込み体が崩壊すると、最初のプラスミドpMAK705-trpD/B(A)に戻るか、または、さらにtrpC遺伝子を含むpMAK705-trpD/C/B派生プラスミド(B)になる。大腸菌の染色体上のtrpC遺伝子は、Bの場合にだけ欠失している。
【図2】 基礎ベクターOripBR-TRP1、OripBR-URA3、およびOripBR-TETの構築を示す図である。SfiIおよびXhoI切断部位を利用して、プラスミドpBR322、yEP24およびyRP7から単離したマーカー遺伝子TET、URA3、およびTRP1を、プラスミドpBR322由来の複製開始点を含むDNAセグメントとライゲーションして、プラスミドOripBR-TRP1 (1497 bp)、OripBR-URA3 (1697 bp)、およびOripBR-TET (2012
bp)を作製する。
【図3】 T5-PN25/03/04ハイブリッドプロモーター、リボソーム結合部位RBSII、複数のクローニング用切断部位(NdeI/SalI/XmaI/EcoRV/CelII)、およびλ-T0ターミネーターを含む発現カセットの塩基配列を示す図である。
Claims (1)
- (a)複製開始点
(b)酵母由来のプロモーターの調節下で発現される酵母由来の栄養要求性マーカー遺伝子
(c)原核生物において機能的活性を有するプロモーター、および
(d)(c) に記載のプロモーターの調節下で発現される外来遺伝子
からなる発現ベクターであって、該発現ベクターの該栄養要求性マーカー遺伝子に対応する染色体遺伝子の変異の結果、該染色体宿主細胞遺伝子の機能的産物が発現されず、該宿主細胞において栄養要求性を相補したときに、宿主細胞における該栄養要求性マーカー遺伝子の発現が該宿主細胞で発現される全タンパク質の1%以下となり、該発現ベクターの栄養要求性マーカー遺伝子と該染色体宿主細胞遺伝子の配列の間で、検出可能な程度の相同組換えを生じない、原核生物宿主細胞に含まれる該発現ベクターを用いて外来遺伝子を異種発現させることによって、異種性タンパク質を製造し、抗生物質を含まない最少培地または合成完全培地の中で宿主細胞の発酵を行なう、宿主細胞または上清から発現産物を単離する方法。
Applications Claiming Priority (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
EP98113156 | 1998-07-15 | ||
EP98113156.8 | 1998-07-15 | ||
EP98119078 | 1998-10-09 | ||
EP98119078.8 | 1998-10-09 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000050888A JP2000050888A (ja) | 2000-02-22 |
JP3801389B2 true JP3801389B2 (ja) | 2006-07-26 |
Family
ID=26149433
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP20230399A Expired - Lifetime JP3801389B2 (ja) | 1998-07-15 | 1999-07-15 | 栄養要求性を相補することによる、抗生物質によらない選抜に基づく新規の大腸菌/宿主ベクター系 |
Country Status (9)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US6291245B1 (ja) |
JP (1) | JP3801389B2 (ja) |
KR (1) | KR100355963B1 (ja) |
CN (1) | CN1196792C (ja) |
AT (1) | ATE276371T1 (ja) |
AU (1) | AU720627B2 (ja) |
CA (1) | CA2274982C (ja) |
DE (1) | DE69920113T2 (ja) |
ES (1) | ES2227938T3 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020501609A (ja) * | 2016-12-20 | 2020-01-23 | ウニヴェルズィテート・バーゼルUniversitat Basel | 弱毒化細菌に基づくタンパク質送達 |
Families Citing this family (49)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN1322138C (zh) * | 2000-06-23 | 2007-06-20 | 诺维信公司 | 用于基因的稳定的染色体多拷贝整合的方法 |
JP2002136288A (ja) * | 2000-11-06 | 2002-05-14 | National Cancer Center-Japan | 酵母を用いた真核生物遺伝子の機能推定方法 |
SE0102204D0 (sv) * | 2001-06-21 | 2001-06-21 | Leif Isaksson | New method |
AU2002365223A1 (en) * | 2001-10-26 | 2003-09-02 | Id Biomedical Corporation Of Washington | Multivalent streptococcal vaccine compositions and methods for use |
DE10214406A1 (de) * | 2002-03-30 | 2003-10-09 | Nutrinova Gmbh | Verfahren und Marker zur einfachen Transformation und Selektion von rekombinanten Protisten |
CA2443365C (en) * | 2002-11-19 | 2010-01-12 | F. Hoffmann-La Roche Ag | Methods for the recombinant production of antifusogenic peptides |
EP1466974A1 (en) * | 2003-04-11 | 2004-10-13 | Max-Delbrück-Centrum Für Molekulare Medizin | Inducible site-directed mutagenesis through conditional gene rescue |
EP1486571B1 (en) * | 2003-06-12 | 2005-12-14 | F. Hoffmann-La Roche Ag | Method for the recombinant production of polypeptides |
CN100480848C (zh) * | 2003-07-11 | 2009-04-22 | 株式会社可乐丽 | 叠层片和其设计方法以及背面投影型屏幕及其制造方法 |
FI116068B (fi) * | 2003-09-15 | 2005-09-15 | Fit Biotech Oyj Plc | Uusi selektiojärjestelmä, siinä käyttökelpoinen vektori, bakteerisolukantoja sekä menetelmä solujen valikoimiseksi |
CN1906294B (zh) * | 2003-11-19 | 2013-09-11 | 陶氏环球技术公司 | 改良的蛋白表达系统 |
DE10360483B4 (de) * | 2003-12-22 | 2007-11-15 | Scil Proteins Gmbh | Expressionsvektor und dessen Verwendung |
WO2006125821A2 (en) * | 2005-05-26 | 2006-11-30 | Cytos Biotechnology Ag | Scalable fermentation process |
RU2415935C2 (ru) * | 2005-10-06 | 2011-04-10 | ДОМПЕ ФА.Р.МА С.п.А. | Новая система селекции |
WO2008017073A2 (en) | 2006-08-03 | 2008-02-07 | Wisconsin Alumni Research Foundation | Vector systems |
WO2010132341A2 (en) | 2009-05-11 | 2010-11-18 | Pfenex, Inc. | Production of recombinant proteins utilizing non-antibiotic selection methods and the incorporation of non-natural amino acids therein |
EP2576801B1 (en) | 2010-06-01 | 2019-10-02 | DSM IP Assets B.V. | Extraction of lipid from cells and products therefrom |
EP2611419A2 (en) | 2010-08-30 | 2013-07-10 | F.Hoffmann-La Roche Ag | Method for producing a tetranectin-apolipoprotein a-1 lipid particle, the lipid particle itself and its use |
RU2013111676A (ru) | 2010-08-30 | 2014-10-10 | Ф. Хоффманн-Ля Рош Аг | Способ получения тетранектин-аполипопротеин а-i частицы, полученная таким образом липидная частица и ее применение |
BR112013004395A2 (pt) | 2010-08-30 | 2019-09-24 | Hoffmann La Roche | tetranectina-apolipoproteína a-i, partículas de lipídio que a contém a sua utilização |
CN103025875A (zh) | 2010-08-30 | 2013-04-03 | 霍夫曼-拉罗奇有限公司 | 原核表达构建体 |
KR101584414B1 (ko) * | 2010-08-30 | 2016-01-13 | 에프. 호프만-라 로슈 아게 | 알칼리 공급원 |
ES2535704T3 (es) | 2010-09-14 | 2015-05-14 | F. Hoffmann-La Roche Ag | Polipéptido de fusión serpina-dedo |
WO2012146630A1 (en) | 2011-04-29 | 2012-11-01 | F. Hoffmann-La Roche Ag | N-terminal acylated polypeptides, methods for their production and uses thereof |
MX2014001920A (es) | 2011-08-25 | 2014-04-14 | Hoffmann La Roche | Proteina de fusion acortada de tetranectina-apolipoproteina a-i, una particula lipidica que la contiene, y usos de la misma. |
KR20140135716A (ko) | 2012-02-29 | 2014-11-26 | 에프. 호프만-라 로슈 아게 | 1→2 해독 프레임 이동의 감소 방법 |
RU2014138583A (ru) | 2012-02-29 | 2016-04-20 | Ф. Хоффманн-Ля Рош Аг | Способ уменьшения 1- сдвига рамки считывания |
CA2862820A1 (en) | 2012-02-29 | 2013-09-06 | F. Hoffmann-La Roche Ag | On-column enzymatic cleavage |
CA2868469A1 (en) | 2012-03-26 | 2013-10-03 | Pronutria, Inc. | Nutritive fragments, proteins and methods |
EP3715365A1 (en) | 2012-03-26 | 2020-09-30 | Axcella Health Inc. | Nutritive fragments, proteins and methods |
US9605040B2 (en) | 2012-03-26 | 2017-03-28 | Axcella Health Inc. | Nutritive proteins and methods |
SG10201604464SA (en) | 2012-03-26 | 2016-07-28 | Axcella Health Inc | Charged nutritive proteins and methods |
WO2013156443A1 (en) | 2012-04-17 | 2013-10-24 | F. Hoffmann-La Roche Ag | Method for the expression of polypeptides using modified nucleic acids |
SG11201502538TA (en) | 2012-11-08 | 2015-05-28 | Hoffmann La Roche | Her3 antigen binding proteins binding to the beta-hairpin of her3 |
EP2959006B1 (en) * | 2013-02-22 | 2018-07-18 | F.Hoffmann-La Roche Ag | Use of an amino acid auxotrophy cured prokaryotic strain for the recombinant production of a polypeptide |
KR20160058940A (ko) | 2013-09-25 | 2016-05-25 | 프로뉴트리아 바이오사이언시스, 인코퍼레이티드 | 근육량, 강도 및 성능을 유지하기 위한 조성물 및 제형, 그리고 이의 생산방법 및 용도 |
AU2014329437B2 (en) | 2013-10-06 | 2018-10-18 | F. Hoffmann-La Roche Ag | Modified Pseudomonas exotoxin A |
US10316322B2 (en) | 2014-07-02 | 2019-06-11 | Sutro Biopharma, Inc. | High growth capacity auxotrophic Escherichia coli and methods of use |
EP3184547A1 (en) | 2015-10-29 | 2017-06-28 | F. Hoffmann-La Roche AG | Anti-tpbg antibodies and methods of use |
ES2855992T3 (es) * | 2015-12-11 | 2021-09-27 | Wacker Chemie Ag | Cepa de microorganismos y procedimiento para la producción fermentativa exenta de antibióticos de sustancias y proteínas de bajo peso molecular |
CN111201314A (zh) * | 2017-07-21 | 2020-05-26 | 科纳根公司 | 驱动所需基因表达的质粒成瘾系统 |
DE18305781T1 (de) | 2018-06-20 | 2020-09-17 | Eligo Bioscience | Bakterielles freisetzungsvehikel, verfahren zur herstellung und verwendungen davon |
JP6583759B1 (ja) * | 2018-11-22 | 2019-10-02 | 勝 枦 | Dnaを改変したり、新たに核酸を導入した細胞を抗生物質を利用せずに確認、選抜する方法 |
CN111635879B (zh) * | 2019-03-01 | 2022-04-22 | 中国科学院天津工业生物技术研究所 | L-赖氨酸高产菌株及其构建方法和应用 |
WO2021123173A1 (en) | 2019-12-20 | 2021-06-24 | F. Hoffmann-La Roche Ag | Il-37 fusion proteins and uses thereof |
US11746352B2 (en) | 2019-12-30 | 2023-09-05 | Eligo Bioscience | Microbiome modulation of a host by delivery of DNA payloads with minimized spread |
US12098372B2 (en) | 2019-12-30 | 2024-09-24 | Eligo Bioscience | Microbiome modulation of a host by delivery of DNA payloads with minimized spread |
WO2022144382A1 (en) | 2020-12-30 | 2022-07-07 | Eligo Bioscience | Chimeric receptor binding proteins resistant to proteolytic degradation |
JP2024520940A (ja) | 2021-05-12 | 2024-05-27 | エリゴ・バイオサイエンス | 産生細菌細胞及び産生方法におけるその使用 |
Family Cites Families (12)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
FR2511032B1 (fr) | 1981-08-07 | 1985-08-09 | Centre Nat Rech Scient | Nouveaux plasmides et souches bacteriennes transformees et leur application a la synthese de lysine |
US4689406A (en) * | 1983-08-10 | 1987-08-25 | Amgen | Enhancement of microbial expression of polypeptides |
NL8400687A (nl) | 1984-03-02 | 1985-10-01 | Unilever Nv | Recombinant plasmiden; recombinant plasmiden bevattende bacterien; werkwijze voor het bereiden of vervaardigen van een zuivelproduct; werkwijze voor het bereiden van een eiwit. |
EP0178764A1 (en) | 1984-08-28 | 1986-04-23 | Genex Corporation | Method of stabilizing a host microorganism/expression vector system for large scale production of proteins |
DK594084A (da) | 1984-12-12 | 1986-06-13 | Novo Industri As | Fremgangsmaade til stabilisering af extra-chromosomale elementer i bakterier under dyrkning |
US5198343A (en) | 1986-08-05 | 1993-03-30 | Transgene, S.A. | Method for expressing a heterologous protein in a dapD- mutant of E. coli and the strain obtained |
DK408687A (da) | 1986-08-05 | 1988-02-06 | Transgene Sa | Fremgangsmaade til stabilisering af et plasmid |
WO1989003427A1 (en) | 1987-10-07 | 1989-04-20 | Washington University | A method of maintaining a desired recombinant gene in a genetic population of cells |
JPH05504063A (ja) | 1990-01-31 | 1993-07-01 | ジ・アップジョン・カンパニー | 小蛋白およびペプチドの産生に有用なral―4 |
JPH05505308A (ja) | 1990-03-13 | 1993-08-12 | ハワイ・バイオテクノロジー・グループ・インコーポレイテツド | アオパンカビ発現システム |
GB9215541D0 (en) | 1992-07-22 | 1992-09-02 | Celltech Ltd | Protein expression system |
US5677170A (en) * | 1994-03-02 | 1997-10-14 | The Johns Hopkins University | In vitro transposition of artificial transposons |
-
1999
- 1999-06-25 US US09/344,888 patent/US6291245B1/en not_active Expired - Lifetime
- 1999-07-08 DE DE69920113T patent/DE69920113T2/de not_active Expired - Lifetime
- 1999-07-08 ES ES99113182T patent/ES2227938T3/es not_active Expired - Lifetime
- 1999-07-08 AT AT99113182T patent/ATE276371T1/de not_active IP Right Cessation
- 1999-07-13 CA CA002274982A patent/CA2274982C/en not_active Expired - Lifetime
- 1999-07-14 AU AU40115/99A patent/AU720627B2/en not_active Expired
- 1999-07-14 KR KR1019990028382A patent/KR100355963B1/ko not_active IP Right Cessation
- 1999-07-15 JP JP20230399A patent/JP3801389B2/ja not_active Expired - Lifetime
- 1999-07-15 CN CNB991103718A patent/CN1196792C/zh not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020501609A (ja) * | 2016-12-20 | 2020-01-23 | ウニヴェルズィテート・バーゼルUniversitat Basel | 弱毒化細菌に基づくタンパク質送達 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
US6291245B1 (en) | 2001-09-18 |
CN1196792C (zh) | 2005-04-13 |
ATE276371T1 (de) | 2004-10-15 |
DE69920113T2 (de) | 2005-12-15 |
ES2227938T3 (es) | 2005-04-01 |
AU720627B2 (en) | 2000-06-08 |
AU4011599A (en) | 2000-02-10 |
DE69920113D1 (de) | 2004-10-21 |
CA2274982C (en) | 2005-01-04 |
JP2000050888A (ja) | 2000-02-22 |
CN1241635A (zh) | 2000-01-19 |
CA2274982A1 (en) | 2000-01-15 |
KR100355963B1 (ko) | 2002-10-19 |
KR20000011710A (ko) | 2000-02-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP3801389B2 (ja) | 栄養要求性を相補することによる、抗生物質によらない選抜に基づく新規の大腸菌/宿主ベクター系 | |
EP0972838B1 (en) | Escherichia coli host/vector system based on antibiotic-free selection by complementation of an auxotrophy | |
Rygus et al. | Inducible high-level expression of heterologous genes in Bacillus megaterium using the regulatory elements of the xylose-utilization operon | |
CA1318867C (en) | Plasmid expression vector for use in escherichia coli | |
Byström et al. | Chromosomal location and cloning of the gene (trmD) responsible for the synthesis of tRNA (m1G) methyltransferase in Escherichia coli K-12 | |
Plumbridge et al. | Physical localisation and cloning of the structural gene for E. coli initiation factor IF3 from a group of genes concerned with translation | |
Cranenburgh et al. | Effect of plasmid copy number and lac operator sequence on antibiotic-free plasmid selection by operator-repressor titration in Escherichia coli | |
Chou et al. | Genetic manipulation to identify limiting steps and develop strategies for high‐level expression of penicillin acylase in Escherichia coli | |
EP0111814A2 (en) | The cloning and expression of nucleotide sequences encoding bovine growth hormone | |
JP2544602B2 (ja) | 新規プラスミドベクタ− | |
Ishiguro et al. | Nucleotide sequence of insertion sequence IS3411, which flanks the citrate utilization determinant of transposon Tn3411 | |
JP2001526531A (ja) | クロレラウイルス・プロモーター | |
Rogers et al. | Cloning of the exonuclease III gene of Escherichia coli | |
CA2622710C (en) | Hybrid portable origin of replication plasmids | |
JP3522292B2 (ja) | ベクター、非相同ポリペプチドを発現することのできる宿主、その製法及びポリペプチドの製法 | |
Kurihara et al. | Cloning of the nusA gene of Escherichia coli | |
JP2905921B2 (ja) | 細菌中に含まれるプラスミドの安定化方法 | |
Cossart et al. | Construction and expression of a hybrid plasmid containing the Escherichia coli thrA and thrB genes | |
US20030153049A1 (en) | Escherichia coli strain secreting human granulocyte colony stimulating factor (g-csf) | |
JP3549210B2 (ja) | プラスミド | |
Xia et al. | A copy‐number mutant of plasmid pSC101 | |
US20110212508A1 (en) | Novel Synthetic Expression Vehicle | |
Gulevich et al. | A new method for the construction of translationally coupled operons in a bacterial chromosome | |
US4845031A (en) | Recombinant DNA process for producing useful polypeptides | |
Gramajo et al. | Expression of cloned genes by in vivo insertion of tac promoter using a mini-Mu bacteriophage |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD04 | Notification of resignation of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424 Effective date: 20050607 |
|
A601 | Written request for extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601 Effective date: 20051011 |
|
A602 | Written permission of extension of time |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602 Effective date: 20051014 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060323 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060425 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 3801389 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100512 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110512 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120512 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130512 Year of fee payment: 7 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130512 Year of fee payment: 7 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
S531 | Written request for registration of change of domicile |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |