JP3797444B2 - 乳酸系ポリエステル組成物及びその成形物 - Google Patents

乳酸系ポリエステル組成物及びその成形物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、柔軟性、耐クレージング性、熱安定性、貯蔵安定性などに優れ、しかも、使用後に焼却されたときには、燃焼カロリーが少なく、又、埋め立てや散乱ゴミになったときには、自然環境下で分解される性質を有し、農業・園芸用資材、食品包装用材料、衛生用材料、日用雑貨品、産業用資材等の、特に柔軟性が要求される用途、即ち、農業用袋、マルチフィルム、トンネルフィルム、植生シート、種紐、養生シート、苗木用ポットなどの農業・園芸用資材、食品用容器、
【0002】
食品包装用フィルム、トレー、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、飲料用ボトルなどの食品包装用材料、紙おむつ、生理用品包装などの衛生用材料、シート、規格袋、レジ袋、ゴミ袋、テープ、ラベル、シャンプーボトル、リンスボトル、化粧品容器、封筒の宛名窓などの日用雑貨品、梱包材、緩衝材、結束テープ、紐などの産業用資材、骨修復材、人工皮膚などの生体材料、薬品、農薬や肥料の徐放性基材等に有用な乳酸系ポリマー組成物に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
プラスチックは軽く、強く、しかも耐久性、成形加工性に優れることから包装材をはじめ、弱電部品、自動車部品、建材、日用雑貨などの多岐の分野で多量に使用され、その大半を占めるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの汎用プラスチックは、使用後の処分方法として、焼却や埋立が行われている。
【0004】
しかし、焼却では、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどは、燃焼カロリーが高いため、炉を痛め易い。またポリ塩化ビニルは、燃焼カロリーは低いものの、焼却時に有害ガスを発生することが知られている。埋立においても、これらの汎用プラスチックは、化学的に安定であるため、原形をとどめたまま半永久的に残留し、埋立地不足が深刻化する原因の一つとなっている。
【0005】
また、自然環境下に廃棄された場合は、美観を損ねたり、海洋生物、鳥類などが誤って補食し、貴重な生物資源が減少するなど環境破壊の一因となっている。これらの問題を解決するため、最近、生分解性ポリマーの研究が盛んに行われており、注目されている生分解性ポリマーの一つに、ポリ乳酸及びその共重合体がある。
【0006】
このポリマーは生分解性を有し、燃焼カロリーが低いため、焼却した場合も炉を痛めることがなく、さらに焼却時に有害ガスを発生しない特徴を有する。また出発原料に再生可能な植物資源を利用できるため、枯渇する石油資源から脱却できる。これらのことから、汎用プラスチックの代替として期待されている。
【0007】
しかしながら、ポリ乳酸は柔軟性がないため、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが使用されるフィルムなどの用途、例えば、農業用袋、マルチフィルム、トンネルフィルム、植生シート、種紐、養生シートなどの農業・園芸用資材、食品包装用フィルム、ストレッチフィルムなどの食品包装用材料、紙おむつ、生理用品包装などの衛生用材料、袋類、レジ袋、ゴミ袋、テープ、などの日用雑貨品などの用途には適していない。またフィルムを曲げた際、応力によりクレージングが発生し易い欠点も有している。
【0008】
特開平4−335060号公報には、ポリ乳酸に可塑剤を添加した組成物が開示されており、その中で具体的な例として、ポリプロピレングリコールアジピン酸エステル、ポリプロピレングリコールセバシン酸エステルなどのポリエステル系可塑剤などが記載され、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジオクチル、フタル酸ジオクチルなどが効果の良好なものとして記されている。このポリプロピレングリコールアジピン酸エステルに代表されるポリエステル系可塑剤は、可塑化効果は高いものの、15℃以下の低温雰囲気下では応力によるクレージングが発生し、且つ耐水性も十分でない。
【0009】
特公平7−257660号公報には、ポリ乳酸やその共重合体と各種可塑剤との溶融ブレンドが記載されている。その可塑剤としては、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチル、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネート、トリエチレングリコールジカプレート、トリエチレングリコールジカプリレート、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、アゼライン酸ジヘキシル、アゼライン酸ジオクチルなどが挙げられている。
【0010】
しかしながら、これらの公開特許で使用されているポリ乳酸やその共重合体は、残留ラクタイドが多く、残留ラクタイドが空気中の水分と反応して有機酸となり、ポリマー鎖を切断するために、可塑剤との溶融ブレンドやブレンド品を成形加工する際に、熱分解と分子量低下を生じる結果、貯蔵安定性や熱安定性が悪く柔軟性に欠け、クレージングが発生し易い。更に、可塑剤とのブレンド量を増すに従い耐熱性は低くなる傾向がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、成形加工性、熱安定性、使用期間中の貯蔵安定性に優れ、使用後、自然界でも分解され、また焼却時の燃焼発熱量が少なく有害ガスの発生も生じない、特に、フィルム、シートなどの包装材用に有用な、柔軟性、耐クレージング性に優れた乳酸系ポリエステル組成物、及び該組成物を成形後、結晶化させてなる、耐熱性、耐溶剤性に優れた成形物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、キレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類などで重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)に、特定の可塑剤(B)を溶融混練することにより、ポリマーの分子量低下が殆どなく、15℃以下での応力によるクレージングの発生も無く、フィルムとしての使用に不可欠な十分な柔軟性を発現でき、しかも貯蔵安定性に優れ、また、該乳酸系ポリエステル(A)と特定の可塑剤(B)との溶融混練物を成形後、結晶化させることにより、耐熱性や耐溶剤性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明は、重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)と、可塑剤(B)を、その重量比(A)/(B)が99/1部〜40/60部となる範囲で含有して成ることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物である。
【0014】
本発明の乳酸系ポリエステル組成物は、重合触媒の失活処理に、特にキレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類を用いることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物や、可塑剤(B)が、特に二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成り、数平均分子量が500〜20,000の範囲であるポリエステル系可塑剤であることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物や、更に可塑剤(B)が、特に末端を一塩基酸及び/又は一価アルコールで封止されたものであることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物を含むものである。
【0015】
更に本発明の乳酸系ポリエステル組成物は、可塑剤(B)が、特に酸価3KOHmg/g以下のエステル系可塑剤であることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物や、用いる重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)の乳酸系ポリエステルが、特にポリ乳酸であることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物や、重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)の乳酸系ポリエステルが、乳酸成分とジカルボン酸成分とジオール成分から成る乳酸系ポリエステルであることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物を含むものである。
また、本発明は上記の乳酸系ポリエステル組成物を成形後、結晶化させることを特徴とする乳酸系ポリエステル成形物をも含むものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
本発明に用いられる乳酸系ポリエステル(A)は、乳酸系ポリエステルを重合する際に用いられる重合触媒が、失活剤によって失活処理されていることを特徴とするものである。重合触媒の失活処理は、乳酸系ポリエステルの成形加工での重合触媒による乳酸系ポリエステルの分解やラクタイドの生成を抑制し、熱安定性を大幅に向上させる。
【0017】
さらに、本発明に用いられる乳酸系ポリエステル(A)は、重合触媒の失活処理後、残留揮発成分、とりわけ残留ラクタイドを脱揮、除去することにより、得られた乳酸系ポリエステルの成形加工性、引張り強度、耐クレージング性などの機械的特性、貯蔵安定性などを向上せしめたものである。重合触媒の失活処理には種々の方法があるが、特にキレート剤や酸性リン酸エステル類による失活処理が効果的である。
【0018】
その失活処理は、キレート剤や酸性リン酸エステル類を乳酸系ポリエステルの重合末期や終了後に添加或いは接触させることにより、該乳酸系ポリエステル中に含有される重合触媒の金属イオンと錯体を形成し、触媒活性を失わせるものである。本発明の重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)、特にキレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類で失活処理した乳酸系ポリエステルの製造方法について説明する。
【0019】
重合触媒の失活処理されたポリ乳酸の製造方法としては、Polymer,20巻,1459頁(1979年)に見られるように、乳酸の環状二量体のラクタイドを開環重合触媒の存在下で開環重合した後、或いは特開平6−172502号公報に開示されているように、溶剤の共存下で、乳酸を直接脱水縮重合した後、キレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類を反応させ、その後、残留揮発成分、とりわけ残留ラクタイドを除去して製造される。
【0020】
また、重合触媒の失活処理された、乳酸成分とジカルボン酸成分とジオール成分から成る乳酸系ポリエステルの製造方法としては、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルとラクタイドとを開環重合触媒の存在下で共重合やエステル交換反応させた後、或いは特開平7−172425号公報に開示されているように乳酸とジカルボン酸成分とジオール成分とを触媒や溶剤の共存在下で、脱水、脱グリコールによる縮重合させた後、キレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類を反応させ、その後、残留揮発成分、とりわけ残留ラクタイドを除去して製造される。
【0021】
さらに、ラクタイドを原料として得られたポリ乳酸や、乳酸を溶剤の共存或いは非存在下に縮重合して得られたポリ乳酸と、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルとをエステル交換触媒の共存下でエステル交換させた後、キレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類を反応させ、その後、残留揮発成分、とりわけ残留ラクタイドを除去して製造される。
【0022】
更に、前記の乳酸系ポリエステルを製造する時に使用されるジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分とをエステル化触媒の存在下、減圧条件下で脱水、脱グリコールを行い縮重合させる方法、特開平7−172425号公報に開示されているようなジカルボン酸成分とジオール成分とを触媒の存在下、脱水剤の使用条件下で脱水、脱グリコールを行い縮重合させる方法などにより製造することができる。
【0023】
次に、本発明の乳酸系ポリエステルの製造時に使用される乳酸成分、ジカルボン酸成分、ジオール成分、キレート剤、酸性リン酸エステル類、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルなどについて説明する。
【0024】
本発明に用いる乳酸成分としては、乳酸及び乳酸の脱水環状二量体のラクタイドが挙げられる。乳酸は、光学異性体を有するモノマーで、L−乳酸、D−乳酸が存在する。また、ラクタイドにはL−ラクタイド、D−ラクタイド、MESO−ラクタイドの異性体がある。そのため、乳酸系ポリエステルはこれら二種の乳酸或いは三種のラクタイドを組み合わせることによって好ましいポリマー特性を実現できる。
【0025】
特に、本発明の乳酸系ポリエステルでは、高い耐熱性を実現するためには、乳酸として、光学活性は高い方が好ましい。具体的には乳酸として、総乳酸中、L体或いはD体が70重量%以上含まれることが好ましい。更に優れた耐熱性を得るためには、乳酸としてL体或いはD体が85重量%以上含まれることが好ましい。
【0026】
また、ラクタイドについてもL−ラクタイド或いはD−ラクタイドを総ラクタイド中、70重量%以上含むことが好ましい。更に優れた耐熱性を得るためには、L−ラクタイド或いはD−ラクタイドの含量は、総ラクタイド中、85重量%以上である。商業的にはL−乳酸の方が発酵合成により安価で高純度のものが得られるため、乳酸系ポリエステルの乳酸としてはL−乳酸を、ラクタイドとしてはL−ラクタイドを使用することが有利である。
【0027】
また、ジカルボン酸成分としては、具体的には、芳香族ジカルボン酸成分である無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−カルボキシフェニル酢酸、p−フェニレンジ酢酸、m−フェニレンジグリコール酸、p−フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル−p,p’−ジカルボン酸、ジフェニル−m,m’−ジカルボン酸、ο,ο’−ジフェニル−p,p’−ジフェニルジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジ酢酸、
【0028】
ジフェニルメタン−p,p’−ジカルボン酸、ジフェニルエタン−m,m’−ジカルボン酸、スチルベンジカルボン酸、1,1’−ジフェニルエタン−p,p’−ジカルボン酸、ジフェニルブタン−p,p’−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボン酸、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、
【0029】
p−カルボキシフェノキシブチル酸、p−カルボキシフェノキシバレイン酸、p−カルボキシフェノキシカプロン酸、p−カルボキシフェノキシヘプタン酸、p−カルボキシフェノキシウンデカノン酸、1,2−ジフェノキシプロパン−p,p’−ジカルボン酸、1,3−ジフェノキシプロパン−p,p’−ジカルボン酸、1,4−ジフェノキシブタン−p,p’−ジカルボン酸、1,5−ジフェノキシペンタン−p,p’−ジカルボン酸、1,6−ジフェノキシペンタン−p,p’−ジカルボン酸、p−(p−カルボキシフェノキシ)安息香酸、
【0030】
p−(p−カルボキシベンジルオキシ)安息香酸、1,2−ビス(2−メトキシフェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸、1,3−ビス(2−メトキシフェノオキシ)プロパン−p,p’−ジカルボン酸、1,4−ビス(2−メトキシフェノオキシ)ブタン−p,p’−ジカルボン酸、1,5−ビス(2−メトキシフェノオキシ)−3−オキサペンタン−p,p’−ジカルボン酸等が、
【0031】
また、脂肪族ジカルボン酸成分であるマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、β−メチルアジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサ−3,5−ジエン−1,2−カルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、trans−ヘキサヒドロテレフタル酸、cis−ヘキサヒドロテレフタル酸、ダイマー酸等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
とりわけ、炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分を使用したときには生分解性や柔軟性に優れる。芳香族ジカルボン酸を使用したときには剛性や耐熱性が優れるが生分解性が悪くなるため、脂肪族ジカルボン酸との併用での芳香族ジカルボン酸の使用量は20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。また、二重結合を有する無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸などの使用では耐熱性に優れる。
【0033】
また、ジオール成分に関しては、特に種類を問わないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタン−1,2−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、trans−2−ブテン−1,4−ジオール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、
【0034】
ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ウンデカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、トリデカメチレングリコール、エイコサメチレングリコール、trans−1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、水添ビスフェノールA、p−キシリレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
更にジオール成分として、エーテル結合の酸素原子を多く有するポリオキシアルキレンを使用したときには柔軟性に優れる。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリペンタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体などが挙げられる。
【0036】
ジカルボン酸成分とジオール成分は、乳酸系ポリエステルの柔軟性や強度を高める目的で乳酸成分と共重合させるものであり、特に耐折強度や耐衝撃性を向上させる効果を有している。ジカルボン酸成分及びジオ−ル成分として、脂肪族ジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分を使用したときには、得られた乳酸系ポリエステルは生分解性や柔軟性に優れ、分岐鎖を有する成分を使用したときには、特に透明性に優れる傾向がある。
【0037】
重合触媒の失活剤として用いるキレート剤には、有機系キレート剤と無機系キレート剤がある。有機系キレート剤は、吸湿性が少なく、熱安定性に優れる。
本発明に使用できる有機系キレート剤は、特に、限定されないが、アミノ酸、フェノール類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチオ化合物、配位原子としてN含有フェノール、配位原子としてN含有カルボン酸、ジアゾ化合物、チオール類、ポルフィリン類などが挙げられる。
【0038】
具体的には、アミノ酸としてはグリシン、ロイシン、アラニン、セリン、α−アミノ酪酸、アセチルアミノ酢酸、グリシルグリシン、グルタミン酸など、フェノール類としてはアリザリン、t−ブチルカテコール、4−イソプロピルトロポロン、クロモトロープ酸、タイロン、オキシン、没食子酸プロピルなど、ヒドロキシカルボン酸としては酒石酸、蓚酸、クエン酸、クエン酸モノオクチル、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジパラトルオイル−D−酒石酸など、
【0039】
ジケトン類としてはアセチルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、トリフルオルアセチルアセトンなど、アミン類としてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、チオジエチルアミン、トリエチレンテトラミン、トリエタノールアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど、オキシムとしてはジメチルグリオキシム、α,α−フリルジオキシム、サリチルアルドキシムなど、
【0040】
フェナントロリン類としてはネオクプロイン、1,10−フェナントロリンなど、ピリジン化合物としては2,2−ビピリジン、2,2’,2”−テルピリジルなど、ジチオ化合物としてはキサントゲン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、トルエン−3,4−ジチオールなど、配位原子N含有フェノールとしてはο−アミノフェノール、オキシン、ニトロソR塩、2−ニトロソ−5−ジメチルアミノフェノール、1−ニトロソ−2−ナフトール、8−セレノキノリンなど、
【0041】
配位原子N含有カルボン酸としてはキナルジン酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、trans−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、アニリン二酢酸、2−スルホアニリン二酢酸、3−スルホアニリン二酢酸、4−スルホアニリン二酢酸、2−アミノ安息香酸−N,N−二酢酸、3−アミノ安息香酸−N,N−二酢酸、4−アミノ安息香酸−N,N−二酢酸、メチルアミン二酢酸、β−アラニン−N,N−二酢酸、
【0042】
β−アミノエチルスルホン酸−N,N−二酢酸、β−アミノエチルホスホン酸−N,N−二酢酸など、ジアゾ化合物としてはジフェニルカルバゾン、マグネソン、ジチゾン、エリオクロムブラックT、4−(2−チアゾリルアゾ)レゾルシン、1−(2−ピリジルアゾ)−2−ナフトールなど、チオール類としてはチオオキシン、チオナリド、1,1,1−トリフルオロ−4−(2−チエニル)−4−メルカプト−3−ブテン−2−オン、3−メルカプト−p−クレゾールなど、
【0043】
ポルフィリン類としてはテトラフェニルポルフィン、テトラキス(4−N−メチルピリジル)ポルフィンなど、その他としてクペロン、ムレキシド、ポリエチレンイミン、ポリメチルアクリロイルアセトン、ポリアクリル酸など及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0044】
なかでも、効率よく乳酸系ポリエステル中に含まれる触媒の金属イオンと配位結合し、ポリマー末端の切断を抑制する有機系キレート剤としては、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン二酢酸、テトラエチレンペンタミン、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、trans−シクロヘキサンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸などの配位原子N含有カルボン酸、
【0045】
酒石酸、ジベンゾイル−D−酒石酸、ジパラトルオイル−D−酒石酸、クエン酸、クエン酸モノオクチルなどのヒドロキシカルボン酸が挙げられる。特に、上記の配位原子N含有カルボン酸は熱安定性や貯蔵安定性に優れ、ヒドロキシカルボン酸は着色が少ない特徴を有している。
【0046】
無機系キレート剤は、吸湿性が高く、吸湿すると、効果がなくなるため、取り扱いに注意を要する。具体的には、リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸類を挙げることができる。
【0047】
また、本発明で使用される酸性リン酸エステル類は、乳酸系ポリエステル中に含有される触媒の金属イオンと錯体を形成し、触媒活性を失わせ、ポリマー鎖の切断を抑制する効果を示す。酸性リン酸エステル類としては、酸性リン酸エステル、ホスホン酸エステル、アルキルホスホン酸など及びその混合物を指すもので、次にその一般式を示す。
【0048】
Figure 0003797444
(式中、R1はアルキル基又はアルコキシル基、R2はアルキル基又はアルコキシル基又はヒドロキシル基を示す。)
【0049】
具体的には、酸性リン酸エステルとしては、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノエチル、リン酸ジエチル、リン酸モノプロピル、リン酸ジプロピル、リン酸モノイソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸モノペンチル、リン酸ジペンチル、リン酸モノヘキシル、リン酸ジヘキシル、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸モノ2−エチルヘキシル、リン酸ジ2−エチルヘキシル、リン酸モノデシル、
【0050】
リン酸ジデシル、リン酸モノイソデシル、リン酸ジイソデシル、リン酸モノウンデシル、リン酸ジウンデシル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸モノテトラデシル、リン酸ジテトラデシル、リン酸モノヘキサデシル、リン酸ジヘキサデシル、リン酸モノオクタデシル、リン酸ジオクタデシル、リン酸モノフェニル、リン酸ジフェニル、リン酸モノベンジル、リン酸ジベンジルなど、
【0051】
ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸モノメチル、ホスホン酸モノエチル、ホスホン酸モノプロピル、ホスホン酸モノイソプロピル、ホスホン酸モノブチル、ホスホン酸モノペンチル、ホスホン酸モノヘキシル、ホスホン酸モノオクチル、ホスホン酸モノエチルヘキシル、ホスホン酸モノデシル、ホスホン酸モノイソデシル、ホスホン酸モノウンデシル、ホスホン酸モノドデシル、ホスホン酸モノテトラデシル、ホスホン酸モノヘキサデシル、ホスホン酸モノオクタデシル、ホスホン酸モノフェニル、ホスホン酸モノベンジルなど、
【0052】
アルキルホスホン酸としては、モノメチルホスホン酸、ジメチルホスホン酸、モノエチルホスホン酸、ジエチルホスホン酸、モノプロピルホスホン酸、ジプロピルホスホン酸、モノイソプロピルホスホン酸、ジイソプロピルホスホン酸、モノブチルホスホン酸、ジブチルホスホン酸、モノペンチルホスホン酸、ジペンチルホスホン酸、モノヘキシルホスホン酸、ジヘキシルホスホン酸、イソオクチルホスホン酸、ジオクチルホスホン酸、モノエチルヘキシルホスホン酸、ジエチルヘキシルホスホン酸、モノデシルホスホン酸、ジデシルホスホン酸、
【0053】
モノイソデシルホスホン酸、ジイソデシルホスホン酸、モノウンデシルホスホン酸、ジウンデシルホスホン酸、モノドデシルホスホン酸、ジドデシルホスホン酸、モノテトラデシルホスホン酸、ジテトラデシルホスホン酸、モノヘキサデシルホスホン酸、ジヘキサデシルホスホン酸、モノオクタデシルホスホン酸、ジオクタデシルホスホン酸などや、モノフェニルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、モノベンジルホスホン酸、ジベンジルホスホン酸など、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0054】
酸性リン酸エステル類成分は有機溶剤との溶解性がよいため作業性に優れ、乳酸系ポリエステルとの反応性に優れる。なかでも酸性リン酸エステルは触媒の失活に大きな効果を示す。
【0055】
また、乳酸系ポリエステルの製造に使用されるジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルは、重量平均分子量が1万〜40万、好ましくは2万〜30万であることが好ましい。1万未満では、それから得られる乳酸系ポリエステルの機械的強度が不十分で、40万を越えるとその生産性や成形性が劣り好ましくない。更に、このポリエステルとして常温で固形のものを使用した時には、得られた乳酸系ポリエステルからのブリーディングが少なくなる傾向があり、好ましい。
【0056】
次に、本発明に用いる乳酸系ポリエステルの構成成分の組成について順に説明する。本発明に用いる乳酸系ポリエステルの乳酸或いは乳酸成分(a)と、ジカルボン酸成分とジオール成分(b)との比率については、特に限定されないが、好ましくは、(a)/(b)が99/1〜10/90重量部であり、用途に応じて、例えば、高い融点を得るためには、(a)/(b)が99/1〜40/60重量部であることが好ましく、高い剛性を得るためには、(a)/(b)が99/1〜70/30重量部であり、また優れた柔軟性を得るためには、(a)/(b)が70/30〜40/60重量部であることが好ましい。
【0057】
更に、重合触媒の失活処理に用いるキレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類の添加量は、その種類、乳酸系ポリエステル中に含まれる触媒の種類、量によって異なるが、乳酸系ポリエステル100重量部に対して、0.001〜5重量部を添加することが好ましい。いずれのキレート剤、酸性リン酸エステル類もポリマー鎖の切断を最小に抑えることができ、また、有機系キレート剤、無機系キレート剤、酸性リン酸エステル類を混合して使用しても差し支えない。
【0058】
しかしキレート剤や酸性リン酸エステル類を過剰に添加すると、貯蔵中に乳酸系ポリエステル鎖が切断され、低分子量化、低粘度化して、本発明の性能が得られないことがあるため、上述の適正量を添加する必要がある。
【0059】
本発明の乳酸系ポリエステルの製造時に使用される重合触媒としては、公知慣用の開環重合触媒、エステル化触媒、エステル交換触媒などの重合触媒であり、錫、亜鉛、鉛、チタン、ビスマス、ジルコニウム、ゲルマニウム、コバルトなどの金属及びその化合物が挙げられ、金属化合物については、特に、金属有機化合物、炭酸塩、ハロゲン化物が好ましい。
【0060】
具体的にはオクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化鉛、炭酸鉛、塩化チタン、ジアセトアセトキシオキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、酸化ゲルマニウム、酸化ジルコニウムなどが適している。その添加量は反応成分100重量部に対して0.001〜2重量部が好ましい。反応速度、着色などから、その添加量は、0.002重量%〜0.5重量部が更に好ましい。
【0061】
また、ジカルボン酸成分とジオール成分から成るポリエステルの製造時に使用されるエステル化触媒としては、錫、亜鉛、チタン、ジルコニウムなどの金属及びその化合物が好ましく、具体的には、オクタン酸錫、塩化錫、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ジアセトアセトキシオキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、酸化ジルコニウムなどを得られるポリエステルに対して0.001〜2重量部、好ましくは0.002〜0.5重量部をエステル化の最初から、或いは脱グリコール反応の直前に加えることが好ましい。
【0062】
本発明に用いる乳酸系ポリエステルを製造するときの反応温度は、乳酸成分、ジカルボン酸成分やジオール成分などの種類、量、組合せなどにより異なるが、通常125℃〜250℃、好ましくは140℃〜230℃、更に好ましくは150℃〜200℃である。
【0063】
また、重合工程での粘度を下げ、攪拌効率を高め、良好な品質を得るため、溶剤を使用することができる。使用できる溶剤としては、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、シクロヘキサノン、イソプロピルエーテル、ジフェニールエーテルなどが好ましい。その添加量は製造方法、製造条件、反応成分の種類、組成などにより異なるが、反応成分100重量部に対して通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下が工業上好ましい。
【0064】
乳酸系ポリエステルの分解、着色を抑制するため、反応は窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、外部大気と触れることなく、しかも使用原料は反応前に水分を除去し、乾燥させておくことが好ましい。
【0065】
このようにして得られた乳酸系ポリエステル(A)は、ある程度高い分子量であることが好ましく、具体的に重量平均分子量で3万〜40万であり、好ましくは4万〜40万、更に好ましくは5万〜35万である。3万未満では機械的強度が不十分であり、40万を越えると成形加工上、生産効率上問題があり好ましくない。
【0066】
また、本発明で使用されるポリエステルや、乳酸とジカルボン酸成分とジオール成分とを構造単位として含む乳酸系ポリエステルの分子量を高めるために、高分子量化剤を反応させることができる。この高分子量化剤は成形加工工程での熱による分子量低下を抑制する効果もある。高分子量化剤の添加時期は重合の前、中、後の工程、重合後の脱揮工程、押出工程、加工工程などいずれの工程でも良く、特に限定されるものではない。
【0067】
この高分子量化剤としては、多価カルボン酸、金属錯体、エポキシ化合物、イソシアネートなど或いはそれらの混合物を挙げることができる。多価カルボン酸としては、(無水)フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、(無水)マレイン酸、トリメチルアジピン酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、大日本インキ化学工業株式会社製のエピクロン4400等、及びそれらの混合物が挙げられる。特に、3官能以上のカルボン酸は高分子量化に有効である。
【0068】
金属錯体としては、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシド、プロピオン酸カルシウム、マンガンアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトネート、鉄アセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド、テトラブトキシチタンなど及びそれらの混合物が挙げられ、とりわけ、2価以上の金属錯体が大きな効果を示す。
【0069】
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ο−フタル酸ジグリシジルエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4エポキシシクロヘキシル)アジペート、テトラデカン−1,14−ジカルボン酸グリシジルエステルなどを用いることができる。
【0070】
イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ジイソシアネート修飾したポリエーテル、ジイソシアネート修飾したポリエステル、多価アルコールに2官能性イソシアネートで修飾した化合物、多価イソシアネートで修飾したポリエーテル、多価イソシアネートで修飾したポリエステルなど及びそれらの混合物が挙げられる。
【0071】
これらの高分子量化剤の中では、安全性、着色などから多価カルボン酸、金属錯体が好ましく、生分解性からは脂肪族系化合物が好ましい。また、高分子量化剤の添加量は、その種類によって異なるが、乳酸系ポリエステル100重量部に対して0.001〜5重量部、更に好ましくは0.01〜2重量部を添加することが好ましい。5重量部を越えるときには乳酸系ポリエステルが、ゲル化したり、着色したり、粘度低下を起こすことから好ましくない。
【0072】
多価カルボン酸のような酸性物質が、未反応の状態で残留すると貯蔵時に乳酸系ポリエステル鎖が切断されるため、その過剰の添加は好ましくないが、0.001重量部未満では高分子量化に十分の効果が認められない。
【0073】
本発明に用いる乳酸系ポリエステル(A)の製造時には、軟質化、機械的強度、耐熱性など目的に応じて、更に乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分、ラクタイド以外の環状エステルなどを、乳酸系ポリエステル100重量部に対して1〜50重量部、好ましくは1〜25重量部を加えることができる。その添加時期は特に限定されないが、乳酸やラクタイドを構造単位として含む乳酸系ポリエステルの製造時に添加することが好ましい。
【0074】
具体的には、乳酸以外のヒドロキシカルボン酸成分としてはグリコール酸、ジメチルグリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、2−ヒドロキシカプロン酸、3−ヒドロキシカプロン酸、4−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシカプロン酸、6−ヒドロキシメチルカプロン酸など、
【0075】
ラクタイド以外の環状エステルとしてはグリコリド、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ウンデカラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。また、その他に酢酸ビニル、エチレンとポリビニルアルコールとの共重合体などが挙げられる。
【0076】
本発明の乳酸系ポリエステル(A)は、通常の反応装置を使用して製造できるが、一般に、重合液粘度が1,000ポイズを越える高粘度領域では、重合熱はもとより、攪拌剪断力による著しい発熱のため、剪断力が小さく、均一に作用するスタティックミキサーの使用が好ましい。
【0077】
スタティックミキサーは通常管状であり、複数のスタティックミキサーを線状に連結し、不活性ガス雰囲気下で原料仕込み口から原料を連続的に供給し、反応物がスタティックミキサー内を連続的に移動することにより、反応を連続的に、しかも外部大気に全く触れることなく、原料仕込みから、反応、ポリマー化まで行うことができる。
【0078】
このほかに、連続攪拌槽式反応機、いわゆるCSTRによる連続重合、CSTRとスタティックミキサーとの組合せによる連続重合、二軸押出機などによる連続反応も有効である。これらの反応も外部の大気に全く触れることなく、原料仕込みから、反応、ポリマー化まで行うことができる。
【0079】
得られた乳酸系ポリエステル中の未反応成分、溶剤、臭気成分などの揮発成分は、脱揮槽、フィルムエバポレーター、ベント付押出機などの反応工程後に取付けられた脱揮装置を用いて除去するとか、良溶剤に溶解後、貧溶剤中に析出させることによって除去するとか、アルコール、ケトン、炭化水素などの溶剤を用いて、溶解させずに、浸漬或いは分散後抽出させて除去することが、乳酸系ポリエステルの成形加工性、耐熱性、貯蔵安定性などを向上させることから好ましい。
【0080】
これらの脱揮方法により、乳酸系ポリエステル中の未反応成分、溶剤、臭気成分などの揮発成分を大幅に低減できる。乳酸系ポリエステル中に通常2〜6重量%程度残留しているラクタイドを1.0重量%以下に、必要に応じて0.5重量%以下にすることができる。
【0081】
次に本発明に使用される可塑剤(B)について説明する。
可塑剤(B)としては、特に限定されるものではないが、本発明の乳酸系ポリエステルとの相溶性の観点からエステル系可塑剤が好ましい。例えばリン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸エステル、カルボン酸エステル、多価アルコールエステル、ポリエステル系可塑剤などが挙げられ、更にその酸価が3KOHmg/g以下のものが好ましい。
【0082】
具体的には、リン酸エステルとしては、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシルなどが、ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ベンジル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、グリコール酸ベンジル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレートなどのヒドロキシモノカルボン酸エステルや、アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステルが、
【0083】
カルボン酸エステルとしては、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステルなどのモノカルボン酸エステルや、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸エステル、アジピン酸イソブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアジピン酸エステル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸エステル、アゼライン酸ジヘキシル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのアゼライン酸エステル、ブチルカルビトールアジペート、トリメリット酸トリオクチルなどの多価カルボン酸エステルが、
【0084】
多価アルコールエステルとしては、グリセリントリアセテート、グリセリントリプロピオネートなどのグリセリンエステル、トリエチレングリコールジカプレート、トリエチレングリコールジカプリレートなどのトリエチレングリコールエステルが挙げられる。
【0085】
また、エステル系可塑剤としては、特に、末端が一塩基酸及び/又は一価のアルコールで封止されており、酸価と水酸基価の合計が40以下であることが好ましい。更に好ましくは30以下である。酸価と水酸基価の合計が40を越えると透明性や熱安定性が損なわれる。
【0086】
また、ポリエステル系可塑剤としては、二塩基酸と二価アルコールの繰り返し単位から成るもので、さらに、該二塩基酸は炭素原子数4〜10の二塩基酸、また該二価アルコールは炭素原子数2〜8の脂肪族二価アルコールであるポリエステルであり、またポリマーとの相溶性、耐水性向上のため、末端停止剤により末端を封止し、酸価と水酸基価を低下させた、酸価と水酸基価の合計が40以下であることが好ましい。
【0087】
更に詳しくは、炭素数4〜10の二塩基酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。特にアジピン酸が技術的、経済的に好ましい。
【0088】
二価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。特に分子量が200以下のものが好ましく用いられる。
【0089】
末端停止剤には、一塩基酸及び/又は一価アルコールを通常使用する。末端停止剤として用いられる一塩基酸は、特に制約なく用いることができ、一価の脂肪族カルボン酸である酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、イソデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、リノール酸、リノレイン酸等が挙げられる。
【0090】
また、一価のアルコールも特に制約はなく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、イソヘキサノール、n−ヘプタノール、イソヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、n−ノナノール、イソノナノール、n−デカノール、イソデカノール、イソウンデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の直鎖又は分岐アルコールが挙げられる。
【0091】
ここでポリエステル系可塑剤の酸価と水酸基価の合計を40以下に抑えることにより、乳酸系ポリエステル(A)との相溶性向上や、ポリエステル系可塑剤自体の析出を起こりにくくすることができる。即ち、本発明のポリエステル系可塑剤の酸価と水酸基価の合計は40以下のものが好ましく、就中20以下が効果的である。
【0092】
この可塑剤の具体例としては、例えば、アジピン酸と1,3−ブチレングリコールとを主成分とし、n−オクタノールを末端停止剤として用いたポリエステル、セバシン酸とブチレングリコールとを主成分とし、末端停止剤として2−エチルヘキサノールを用いたポリエステル、アジピン酸と1,6−ヘキサンジオール、ブチレングリコールとを必須成分とし、末端停止剤としてn−ヘキサノールとn−ノナノールを用いたポリエステル等が挙げられる。
【0093】
また、ポリエステル系可塑剤として、ポリ乳酸のエチルエステル、ポリ乳酸ブチルエステル、ポリ乳酸ベンジルエステル、ポリグリコール酸のエチルエステル、ポリグリコール酸のブチルエステル、ポリグリコール酸のベンジルエステルなどを使用しても良い。特に、ポリ乳酸のアルキル或いはベンジルエステルは乳酸系ポリエステルとの相溶性に優れ、ブリードアウトがなく、柔軟性や透明性などにも優れる。これらのポリエステル系可塑剤も、熱安定性や透明性から、末端が一塩基酸及び/又は一価のアルコールで封止されており、酸価と水酸基価の合計が40以下であることが好ましい。更に好ましくは30以下である。
【0094】
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量については、特に限定されないが、可塑剤効果が高く、ブリードアウトが発生しにくい観点から、500〜20,000のものが好ましく、更に好ましくは500〜5,000である。更に、ポリエステル系可塑剤としては、常温で固形、更に、それより融点が高い方がブリードアウトが起こり難くく好ましい傾向が見られる。
【0095】
これらの可塑剤の内、乳酸系ポリエステル(A)との相溶性、乳酸系ポリエステル組成物の柔軟性、耐クレージング性、その他の接触物質への移行性などからは、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、多価カルボン酸エステル、多価アルコールエステル、ポリエステル系可塑剤が好ましい。生分解性からは、脂肪族化合物が好ましい。
【0096】
本発明の乳酸系ポリエステル組成物中の乳酸系ポリエステル(A)と、可塑剤(B)の重量比(A)/(B)は、通常99/1〜40/60の範囲であり、なかでも可塑化効果が高く、ブリードアウトがない点で、97/3〜60/40の範囲が特に好ましい。また本発明の実施に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の必須の構成成分である乳酸系ポリエステル(A)と、可塑剤(B)の他に、(A)以外のポリマーとして、ポリビニールアルコール、ポリ(ヒドロキシブチレート・ヒドロキシバリレート)、澱粉系ポリマー等を加えても良い。
【0097】
次に、本発明の乳酸系ポリエステル組成物の製造装置について説明する。本発明の乳酸系ポリエステル組成物の製造装置としては、特に、限定されないが、乳酸系ポリエステル(A)と可塑剤(B)などの混練には、押出機、リアクター、ニーダー、ロールやそれらの組合せなどを使用することができる。
【0098】
押出機としては、単軸押出機或いは二軸押出機を使用できるが、混練状態から二軸押出機が好ましい。更に、混練後、引き続いて残留揮発成分などを減圧下で除去するためにはベント口が付いているものが好ましい。リアクターとしては、通常の反応釜を使用できるが、混練物質は粘度が高く、攪拌剪断応力により生ずる攪拌熱による分子量低下や着色などから、剪断応力が小さく、しかも均一に混合できるスタテック・ミキサーの使用が好ましい。
【0099】
具体的な混練条件としては、温度130〜250℃、好ましくは150〜200℃で混練する。また、乳酸系ポリエステル組成物中の残留揮発成分、とりわけ、残留ラクタイドを除去するため混練しながら、或いは混練後、減圧度0.01〜50torrで行うことが好ましい。さらに混練機内は、不活性ガス雰囲気下で大気に触れることなく混練することが好ましい。
【0100】
更に、粘度調節剤としてステアリルアルコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリンなどのアルコール成分を本発明の作用効果を損なわない範囲で添加することができる。また、公知慣用の酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などを、重合の前、中、後の工程、重合後の脱揮工程、押出工程などに添加しても良い。
【0101】
それらの添加量は乳酸系ポリエステル100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。具体的には、酸化防止剤としては2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネートなどを、熱安定剤としてはトリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどを、
【0102】
また、紫外線吸収剤としてはp−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノンなどを、帯電防止剤としてはN,N−ビス(ヒドリキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルフォネート、アルキルスルフォネートなどを、難燃剤としてはヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンタブロモフェニルアリルエーテルなどが挙げられる。
【0103】
また、公知慣用の滑剤、ワックス類を乳酸系ポリエステル100重量部に対して0.01〜5重量部を添加することができる。滑剤、ワックス類としては、例えば、パラフィン油、固形パラフィンなどのパラフィン、ステアリン酸、パルミチン酸などの高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩、ステアリン酸ブチル、グリセリンモノステアレート、ジエチレングリコールモノステアレートなどの脂肪酸エステル、
【0104】
ステアロアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オキシステアリン酸のエチレンジアミド、メチロールアミド、オレイルアミド、エルシルアミドなどの脂肪酸アミドなど、カルナウバワックス、モンタンワックスなどのワックス類及びそれらの混合物が挙げられる。
【0105】
更に、安定剤、結晶化促進剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、着色剤などを添加することもできる。安定剤としては、エポキシ化大豆油、カルボジイミドなどを、結晶化促進剤としては、タルク、窒化ホウ素、カオリン、結晶性ポリマーなどを、ブロッキング防止剤としては、シリカ、タルクなどを、防曇剤としてはグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステリアルなどを、着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、群青などを乳酸系ポリエステル組成物100重量部に対して0.01〜5重量部添加することができる。
【0106】
本発明の乳酸系ポリエステル組成物は、ティーダイ押出機やインフレーション成形機よるシート・フィルム化、他素材とのラミネート化、発泡化、繊維化、射出成形機による各種成形、プレス機による各種成形、ブロー成形機や延伸ブロー成形機によるボトル成形など様々な成形加工機により成形加工できる。更に真空成形、圧空成形、製袋、印刷などの二次加工性にも優れる。
【0107】
乳酸系ポリエステル組成物は吸湿性が高く、加水分解性も強いため、その製造には水分管理が必要であり、一般的には、真空乾燥器等により除湿乾燥後、各種方法で成形する必要がある。例えば、ベント式二軸押出機による成膜の場合には、脱水効果が高いため、効果的な成膜が可能である。
【0108】
また、本発明の乳酸系ポリエステル組成物をシートなどに成形後、延伸により配向させたものは、引張り強度、剛性、耐折強度、衝撃強度などの機械的特性を改良することができる。このときの延伸倍率は高い方が良好な傾向が見られ、好ましい延伸倍率は、一般に1.5〜8倍程度、更に好ましくは2〜5倍である。
【0109】
延伸は一軸、もしくは二軸で行うことができるが、二軸延伸されたものの方が、機械的特性の他、耐熱性や耐溶剤性などに対して優れており好ましい。乳酸系ポリエステル組成物の二軸延伸方法については、乳酸系ポリエステル組成物は、押出機に通され、ティーダイ、或いはサーキュラーダイで吐出され、次いで、テンター機により二軸延伸したり、インフレーション機で延伸される。温度条件は乳酸系ポリエステル組成物のガラス転移点以上、融点以下の範囲で行う。このようにして得られたものは延伸工程中に若干結晶化されるが、下記の強制的に結晶化させたもの程、耐熱性、耐溶剤性は向上されない。
【0110】
次に、本発明の乳酸系ポリエステル組成物を成形後、結晶化させることを特徴とする乳酸系ポリエステル成形物について説明する。
本発明の乳酸系ポリエステル組成物を成形後、結晶化させた乳酸系ポリエステル成形物は、非晶性のものに比較して耐熱性、耐溶剤性などの性能に優れる。
高い耐熱性、耐溶剤性を得るためには、乳酸系ポリエステル成形物の結晶化度を5%以上、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上に調製する必要がある。
【0111】
結晶化度は、乳酸系ポリエステル組成物の構成成分、残留揮発成分、添加剤、乳酸系ポリエステル成形物の結晶化方法などにより異なるが、その結晶化方法は、一般的には押出機で押し出された乳酸系ポリエステル組成物を、加熱オーブン内で熱風による加熱、赤外線照射による加熱によりアニーリングすることにより行われる。その条件は、通常40℃〜150℃で10秒〜30分であり、中には常温で結晶化するものもある。
【0112】
これらの方法により成形加工された成形物の引張弾性率は、例えば包装材料用フィルムとして使用する場合は、折り曲がり性や風合いの観点から、通常1000〜15000kg/cm2 であることが好ましい。
【0113】
1000kg/cm2 以下であると、過度に柔軟となり、内容物の保持ができなくなり実用的ではない。一方、15000kg/cm2 以上では剛直になりすぎて、フィルムとしての風合いがなくなる。透明性も包装材用途には、内容物を美麗に見せるため、商品価値を高める上で重要なファクターである。
【0114】
本発明の乳酸系ポリエステル組成物及びその成形物は、優れた透明性を有しており、透明性の指標として、特にヘイズ値20%以下のものが好ましく用いられる。また本発明に用いられるエステル系可塑剤及び乳酸系ポリエステルは共に生分解する利点を備えており、かつ安全性の高いものであるために、食品包装用にも優れている。
【0115】
本発明の乳酸系ポリエステル組成物及びその成形物の具体的な用途を以下に述べる。本発明の乳酸系ポリエステル組成物及びその成形物は、優れた柔軟性、耐水性、耐クレージング性など有するため、農業用袋、マルチフィルム、トンネルフィルム、植生シート、植生ネット、種紐、養生シート、苗木用ポットなどの農業・園芸用資材をはじめ、
【0116】
食品用容器、食品包装用フィルム、トレー、ストレッチフィルム、シュリンクフィルム、飲料用ボトルなどの食品包装用材料、紙おむつ、生理用品包装などの衛生用材料、食品袋、レジ袋、ゴミ袋、一般規格袋、シート、テープ、ラベル、シャンプーボトル、リンスボトル、化粧品容器、封筒の宛名窓などの日用雑貨品、梱包材、緩衝材、結束テープ、紐などの産業用資材などである。
【0117】
【実施例】
以下に、本発明を実施例及び比較例によって、更に具体的に説明するが、もとより本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の部は特に記載のない限り全て重量基準である。また、分子量、残留ラクタイド、融点及び熱安定性は次の方法により測定した。
【0118】
分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定し、ポリスチレン換算値として示した。残留ラクタイドは高速液体クロマトグラフにより測定した。融点はセイコー社製示差走査型熱量計DSC−200型を用い、昇温速度10℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線から求めた。熱安定性は220℃、5torrの減圧下で10分間放置後の重量及び分子量の減少率を測定した。
【0119】
(参考例1)
0.5モル%のテレフタル酸、0.5モル%のイソフタル酸、0.7モル%のエチレングリコール、0.6モル%のネオペンチルグリコールを仕込み、窒素雰囲気中で150℃から1時間に10℃ずつ昇温した。生成する水を留去しながら220℃まで昇温し、水の留出が止まってからチタンテトライソプロポキシドを70ppm添加し、0.5torrまで減圧しながら4時間脱グリコールによる縮重合反応を行った。更に、グリコールの留出が止まってから230℃で1時間反応させ重量平均分子量55,400のポリエステルを得た。
【0120】
(参考例2)
1モル%のアゼライン酸と1.3モル%のエチレングリコールを仕込み、窒素雰囲気中で150℃から1時間に10℃ずつ昇温した。生成する水を留去しながら220℃まで昇温し、水の留出が止まってからチタンテトライソプロポキシドを70ppm添加し、0.5torrまで減圧しながら4時間脱グリコールによる縮重合反応を行った。更に、グリコールの留出が止まってから230℃で1時間反応後、180℃降温し、次いでヘキサメチレンジイソシアネートを2000ppm添加し、1時間反応させ重量平均分子量116,000のポリエステルを得た。
【0121】
(参考例3)
L−ラクタイド96部と、D−ラクタイド2部と、グリコリド2部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応させた後、アルミニウムイソプロポキシド0.8部、酒石酸0.1部を加え、さらに30分間反応させ、次いで200℃に昇温後、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0122】
得られたペレットの重量平均分子量は184,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%であった。また、融点は155℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ1%、1%で、かなり安定性に優れていた。
【0123】
(参考例4)
参考例1の製造方法で得られた重量平均分子量55,400のポリエステル20部と、L−ラクタイド78部と、D−ラクタイド2部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.04部加え、同温度で6時間反応させた後、ピロリン酸を0.1部加え、さらに30分間反応させ、次いで200℃に昇温後、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0124】
得られたペレットの重量平均分子量は162,000であった。その外観は透明で、臭がなく、残留ラクタイドは0.1%であった。また、融点は159℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ1%、1%であり、かなり安定性に優れていた。
【0125】
(参考例5)
ジカルボン酸として1モル%セバシン酸を、ジオールとして0.5モル%分子量1000のポリプロピレングリコール2.8モル%プロピレングリコールを使用する以外は、参考例1と同様の製造方法で得られた重量平均分子量41,000のポリエステル15部と、L−ラクタイド85部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下で、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、同温度で6時間反応させた後、無水ピロメリット酸0.2部、リン酸モノドデシルとリン酸ジドデシルとの混合物0.1部を加え、さらに30分間反応させ、次いで200℃に昇温後、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0126】
得られたペレットの重量平均分子量は173,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は168℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0127】
(参考例6)
0.03モル%セバシン酸と、0.04モル%プロピレングリコールと、0.94モル%L−乳酸94モル%を反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下で150℃から1時間に7℃ずつ昇温させながら加熱攪拌した。生成する水を留去しながら200℃まで昇温し、水の留出が止まってから、テトライソプロポキチタンを70ppm添加し、0.5torrまで減圧しながら攪拌した。
【0128】
グリコールの留出が止まってから210℃で1時間反応を継続した。その後170℃に降温し、得られたポリエステル100部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネート0.2部と、リン酸モノ2−エチルヘキシルとリン酸ジ2−エチルヘキシルとの混合物0.1部を順次添加し、30分間反応させた後、200℃に昇温し、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0129】
得られたペレットの重量平均分子量は108,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は147℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0130】
(参考例7)
L−ラクタイド95部と、DL−ラクタイド5部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応させた後、脱揮し、ペレット化した。
【0131】
得られたポリ乳酸のペレット80部と、ジカルボン酸として1モル%セバシン酸を、ジオールとして1.3モル%のエチレングリコールを使用する以外は、参考例1と同様の製造方法で得られた重量平均分子量46,000のポリエステル20部と、リン酸モノヘキサデシルとリン酸ジヘキサデシルとの混合物0.1部をブレンド後、180℃に設定のベント付二軸押出機に供給、溶融混練し、減圧度5torrで脱揮しながら押出し、ペレット化した。
【0132】
得られたペレットの重量平均分子量は135,000であった。その外観は半透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は160℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0133】
(参考例8)
L−ラクタイド95部と、D−ラクタイド5部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応させた後、脱揮し、ペレット化した。
【0134】
得られたポリ乳酸のペレット85部と、ジカルボン酸として1モル%アゼライン酸を、ジオールとして1.3モル%エチレングリコールを使用する以外は参考例1と同様の製造方法で得られた重量平均分子量42,000のポリエステル15部と、リン酸モノドデシルとリン酸ジドデシルとの混合物0.1部をブレンド後、180℃に設定のベント付二軸押出機に供給、溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットをクロロホルムに溶解し、メタノール中に析出、ろ過後、200℃、5torrの減圧下で脱揮した。
【0135】
更に、得られた乳酸系ポリエステルを180℃に設定のベント付押出機に供給、溶融し、減圧度5torrで脱揮しながら押出し、ペレット化した。得られたペレットの重量平均分子量は138,000であった。その外観は半透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は151℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0136】
(参考例9)
L−ラクタイド98部と、D−ラクタイド2部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応させた後、ジデシルホスホン酸を0.1部を加え、さらに30分間反応させ、次いで200℃に昇温後、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0137】
得られたペレットの重量平均分子量は189,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は161℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ1%、1%であり、かなり安定性に優れていた。
【0138】
(参考例10)
参考例2の製造方法で得られた重量平均分子量116,000のポリエステル30部と、L−ラクタイド70部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下で、170℃で1時間、それらを溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、同温度で6時間反応させた後、エチレンジアミン四酢酸0.2部を加え、さらに30分間反応させ、次いで200℃に昇温後、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0139】
得られたペレットの重量平均分子量は172,000であった。その外観は透明で、臭がなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は170℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0140】
(参考例11)
L−ラクタイド98部と、D−ラクタイド2部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応させた後、脱揮し、ペレット化した。
【0141】
得られたポリ乳酸のペレット70部と、0.8モル%ドデカンジカルボン酸、0.2モル%アジピン酸を、ジオールとして1.3モル%ヘキサンメチレングリコールを使用する以外は、参考例1と同様の製造方法で得られた重量平均分子量45,000のポリエステル30部と、アルミニウムイソプロポキシド0.5部と、クエン酸0.1部とをブレンド後、180℃に設定のベント付二軸押出機に供給、溶融混練し、減圧度5torrで脱揮しながら押出し、ペレット化した。
【0142】
得られたペレットの重量平均分子量は121,000であった。その外観は半透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%であった。また、融点は163℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ1%、1%であり、かなり安定性に優れていた。
【0143】
(参考例12)
L−ラクタイド95部と、DL−ラクタイド5部と、溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下、170℃で1時間、溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、175℃で6時間反応させた後、リン酸モノヘキサデシルとリン酸ジヘキサデシルとの混合物0.1部を加え、さらに30分間反応させ、次いで200℃に昇温後、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0144】
得られたペレットの重量平均分子量は189,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は161℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0145】
(参考例13)
90%のL−乳酸100部を反応釜に仕込み、150℃、50torrの減圧下で、3時間脱水後、錫粉末0.2部を加え、同温度、30torrの減圧下で2時間脱水した。次いで、溶剤として、ジフェニールエーテル350部、錫粉末1部を加え、更にモレキュラーシーブを100部充填した塔に、還流により留出する溶剤が通って系内に戻るように組み立て、130℃、12torrで、55時間脱水縮合した。
【0146】
反応終了後、trans−シクロヘキサンジアミン四酢酸1.5部を加え、30分間攪拌後、得られたポリ乳酸をクロロホルムに溶解し、メタノール中に析出、ろ過後、200℃、5torrの減圧下で脱揮した。その後、180℃に設定のベント付押出機に供給、溶融し、減圧度5torrで脱揮しながら押出し、ペレット化した。
【0147】
得られたペレットの重量平均分子量は112,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは0.1%以下であった。また、融点は170℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はいずれも1%以下であり、極めて安定性に優れていた。
【0148】
(比較参考例1)
ジカルボン酸として1モル%セバシン酸を、ジオールとして1.3モル%エチレングリコールを使用する以外は、参考例1と同様の製造方法で得られた重量平均分子量46,000のポリエステル10部と、L−ラクタイド85部と、DL−ラクタイド5部と溶媒としてトルエン15部とを反応釜に仕込み、不活性ガス雰囲気下で、175℃で1時間、それらを溶融混合し、オクタン酸錫を0.03部加えて、同温度で6時間反応させた後、200℃に昇温し、5torrの減圧下で脱揮し、ペレット化した。
【0149】
得られたペレットの重量平均分子量は148,000であった。その外観は透明で、臭いがなく、残留ラクタイドは2.7%であった。また、融点は167℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ9%、8%であり、安定性に劣っていた。
【0150】
(比較参考例2)
エチレンジアミン四酢酸を添加しない以外は、参考例10と同様の方法で乳酸系ポリエステルのペレットを得た。その重量平均分子量は151,000であった。その外観は透明な黄色で、臭いがあり、残留ラクタイドは3.8%であった。また、融点は151℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ10%、8%でかなり安定性に劣っていた。
【0151】
(比較参考例3)
アルミニウムイソプロポキシドとクエン酸とを添加しない以外は、参考例11と同様の方法で乳酸系ポリエステルのペレットを得た。そのペレットの重量平均分子量は108,000であった。その外観は半透明黄色で、臭いがあり、残留ラクタイドは3.7%であった。また、融点は160℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ11%、9%でかなり安定性に劣っていた。
【0152】
(比較参考例4)
リン酸モノヘキサデシルとリン酸ジヘキサデシルの混合物とをブレンドしない以外は、参考例12と同様の方法で乳酸系ポリエステルのペレットを得た。その重量平均分子量は166,000であった。その外観は透明黄色で、臭いがあり、残留ラクタイドは3.9%であった。また、融点は160℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ12%、11%でかなり安定性に劣っていた。
【0153】
(比較参考例5)
trans−シクロヘキサンジアミン四酢酸を添加しない以外は、参考例13と同様の方法で乳酸系ポリエステルのペレットを得た。その重量平均分子量は74,000であった。その外観は透明な黄色で、臭いがあり、残留ラクタイドは3.6%であった。また、融点は151℃、熱安定性試験での重量及び分子量の減少率はそれぞれ14%、12%でかなり安定性に劣っていた。
【0154】
(実施例1)
180℃に制御された2本ロールに、絶乾状態の参考例3で得られた乳酸系ポリエステル40gを仕込み、次に可塑剤のアセチルクエン酸トリブチルを10g(20重量%)添加し、5分間混練を行った。
【0155】
続いて、熱プレスにより温度180℃、圧力200kgf/cm2 の条件で2分間プレスした後、急冷し、250μmのフィルムを作製した。得られたフィルムの分子量測定を行うと共に、JIS−K−7127に基づき、幅25mm、長さ200mmの短冊形試験片を作製し、引張試験として、引張弾性率、引張強度、引張伸びの測定を行った。
【0156】
更に、透明性、耐クレージング性、耐水性、ブリード性、貯蔵安定性、生分解性について、次の方法により試験を行い、その結果を表1に示した。
【0157】
透明性については、目視により、次の4段階で評価した。
◎:透明性が良好なもの。
○:透明性が僅かに劣るもの。
△:半透明のもの。
×:不透明のもの。
【0158】
耐クレージング性については、15℃で、180度折り曲げ試験によるクレージングの発生状態を、次の4段階で評価した。
◎:クレージングが全く発生しなかったもの。
○:クレージングが痕跡程度発生したもの。
△:クレージングが相当程度発生したもの。
×:クレージングが著しく発生したもの。
【0159】
耐水性については、20℃の恒温水槽中における48時間後の表面状態の変化により、次の4段階で評価した。
◎:全く変化しなかったもの。
○:痕跡程度変化したもの。
△:相当程度変化したもの。
×:著しく変化したもの。
【0160】
ブリード性については、35℃、80%湿度の恒温恒湿機中に1カ月放置後のブリードアウト状態により、次の4段階で評価した。
◎:ブリードアウトが全く発生しなかったもの。
○:ブリードアウトが痕跡程度発生したもの。
△:ブリードアウトが相当程度発生したもの。
×:ブリードアウトが著しく発生したもの。
【0161】
貯蔵安定性については、250μmのシートを23℃、50%湿度で、3カ月間放置したときの分子量の減少率で示した。
【0162】
生分解性については、容量100リットルの新輝合成社製コンポスト化容器トンボミラクルコンポ100型を使用し、これに生ごみ50kgを入れ、250μm×50mm×50mmの試験片を置き、更に生ごみを約5cm程度の厚さに入れた。その上にアロン化成社製発酵促進剤ニュークサミノン500gをふりかけ評価した。装置は屋外に設置した。試験開始から1カ月後に試験片を取り出し、次の4段階で評価した。
【0163】
◎:原形をとどめない状態までぼろぼろになったもの。
○:原形はとどめているが外観は白く、脆くなったもの。
△:外観に変化はなく、強度低下も少ないもの。
×:全く変化がないもの。
【0164】
(実施例2,4,8,9,10,12)実施例2,4,8,9,10及び12では、可塑剤を使用し、実施例1と同様の方法で、各組成物のフィルムを作製し、同様の試験を行った。その結果を表1〜4に示す。
【0166】
耐熱性については、乳酸系ポリエステル組成物の250μmのフィルムを100℃の乾燥機中に5分間放置し、変形状態により、次の4段階で評価した。
◎:全く変形しなかったもの。
○:痕跡程度変形したもの。
△:相当程度変形したもの。
×:著しく変形したもの。
【0167】
耐溶剤性については、乳酸系ポリエステル組成物の250μmのフィルムを常温で、トルエン中に5分間浸漬し、変形状態により、次の4段階で評価した。
◎:全く変形しなかったもの。
○:痕跡程度変形したもの。
△:相当程度変形したもの。
×:著しく変形したもの。
【0170】
(比較例1)
比較例1では、比較参考例1で得られた乳酸系ポリエステル90部に対し、可塑剤としてアセチルクエン酸トリブチル10部を添加し、実施例1と同様の方法で得た組成物からフィルムを作製し、同様の試験を行った。その結果を表6に示す。
【0171】
(比較例2)
比較例2では、比較参考例2で得られた乳酸系ポリエステル80部に対し、可塑剤としてアジピン酸/1,3−ブタンジオール20部を添加し、実施例1と同様の方法で得た組成物からフィルムを作製し、同様の試験を行った。その結果を表6に示す。
【0172】
(比較例3)
比較例3では、比較参考例2で得られた乳酸系ポリエステルを実施例1と同様の方法で、ロール練りした組成物からフィルムを作製し、同様の試験を行った。その結果を表6に示す。
【0173】
(比較例4〜7)
比較例4〜7では、比較参考例2〜5で得られた乳酸系ポリエステル、及び可塑剤を使用し、実施例1と同様の方法で、各々の組成物のフィルムを作製し、同様の試験を行った。その結果を表7及び8に示す。
【0174】
(比較例8)
比較例8では、比較参考例1で得られた乳酸系ポリエステル40gと、可塑剤としてアセチルクエン酸トリブチル10gを使用する以外は、実施例1と同様の方法で、その組成物のフィルムを作製し、実施例13と同様の方法で評価試験を行った。その結果を表8に示す。
【0175】
Figure 0003797444
【0176】
Figure 0003797444
【0177】
Figure 0003797444
【0178】
Figure 0003797444
【0180】
【表6】
比較例
Figure 0003797444
【0181】
【表7】
Figure 0003797444
【0182】
【表8】
Figure 0003797444
【0183】
【発明の効果】
本発明は、成形加工性、熱安定性、使用期間中の貯蔵安定性に優れ、使用後、自然界でも分解され、また焼却時の燃焼発熱量が少なく有害ガスの発生も生じない、特に、フィルム、シートなどの包装材用に有用な、柔軟性、耐クレージング性に優れた乳酸系ポリエステル組成物、及び該組成物を成形後、結晶化させてなる、耐熱性、耐溶剤性に優れた成形物を提供できる。

Claims (5)

  1. 重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)と、可塑剤(B)とを、重量比(A)/(B)が99/1部〜40/60部となる範囲で含有してなり、前記可塑剤(B)が、二塩基酸と二価アルコールとを反応させて得られる、数平均分子量が500〜20,000の範囲であり、かつその末端を一塩基酸及び/または一価アルコールで封止したポリエステル系可塑剤(但し、フタル酸エステルを除く。)であることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物。
  2. 重合触媒の失活処理にキレート剤及び/又は酸性リン酸エステル類を用いることを特徴とする請求項1に記載の乳酸系ポリエステル組成物。
  3. 重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)の乳酸系ポリエステルが、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の乳酸系ポリエステル組成物。
  4. 重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)の乳酸系ポリエステルが、乳酸成分とジカルボン酸成分とジオール成分から成る乳酸系ポリエステルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の乳酸系ポリエステル組成物。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載の乳酸系ポリエステル組成物を成形後、結晶化させることを特徴とする乳酸系ポリエステル成形物。
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