JP2007138187A - ポリ乳酸系樹脂組成物およびそれからなる成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐折強さが大きく、透明性に優れ、かつ柔軟性を併有した、ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供する。
【解決手段】乳酸単位(I)とポリエステル単位(II)を重量比で10:90〜90:10の範囲で有し、ガラス転移点が60℃以下である乳酸系ポリエステル100重量部に対して、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物、あるいはこの乳酸系ポリエステル及びポリ乳酸からなる高分子成分100重量部に対し、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸系樹脂組成物及びそれからなる成形品、シート及びフィルムに関する。さらに柔軟性、耐折強さ及び透明性に優れ、更には非石油系資源である植物を原料とする環境循環型のポリ乳酸系樹脂組成物及びそれからなる成形品、シート及びフィルムに関する。
従来、柔軟性、耐折強さに優れている樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が知られており、各種容器等の成形品やゴミ袋、包装袋等に使用されている。しかしながら、これらの樹脂は石油を原料としているため、使用後廃棄する際、焼却により地球上の二酸化炭素を増大させ、地球温暖化を助長させてしまう。また、焼却せずに埋設処理しても、自然環境下で殆ど分解されないために半永久的に地中に残留する。また投棄されたこれらのプラスチック類により、景観が損なわれ、海洋生物の生活環境が破壊されるなどの問題が起こっている。
近年、植物由来の原料や微生物により得られる熱可塑性樹脂が注目されている。これらの樹脂は、石油を原料としない、環境循環型の素材であり、焼却しても地球上の二酸化炭素を増大させず、また、焼却せずに埋設処理した場合は、微生物により分解されるため、環境破壊を招くことも少ない。このような樹脂としては、ポリ乳酸やポリヒドロキシ酪酸等があり、特にポリ乳酸はガラス転移点(Tg)が約60℃と最も高く、透明であることなどから、将来性のある素材として、各種成形材料への用途開発が進められている。
しかしながら、ポリ乳酸は脆く、JIS−P8115による未延伸シートの耐折強さも非常に低いため、例えばポリ乳酸のシートを裁断したり、折り曲げ加工するときにひび割れを生じたりするなど、加工性に問題がある。また剛性が高いため、化粧鋼板などの被覆材料や軟質シート、食品包装用袋、ゴミ袋等のフィルムや包装材等、特に柔軟性が要求される用途には適切な樹脂とは言い難い。
一般に、樹脂を軟質化する技術として、i)可塑剤の添加、ii)軟質ポリマーのブレンド、iii)コポリマー化等の方法が知られている。このi)可塑剤の添加については、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5などに記載されている。しかしながら、可塑剤の添加により、ポリ乳酸樹脂は柔らかくなるが、脆さ、特にJIS−P8115による未延伸シートの耐折強さの増加はわずかであり、折り曲げ加工などを行う際の加工性や、折り曲げた部分の強度は実用レベルにはほど遠い。
またii)軟質ポリマーを添加する方法は、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9などには、ポリ乳酸にポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステルをブレンドすることにより、ポリ乳酸の耐衝撃性を改善することが記載されている。しかしながら、これらの脂肪族ポリエステルとポリ乳酸の相溶性が低いため、透明性が低いものしか得られない。一方脂肪族ポリエステルとしてポリ乳酸と脂肪族ポリエステルの共重合ポリエステルをポリ乳酸にブレンドする方法も特許文献10、特許文献11に記載されている。この方法によれば、透明性を有し、かつ耐衝撃性を向上させることができるが、透明性を維持するためには、ポリ乳酸成分の多い共重合ポリエステルをブレンドしなければならず、その結果、ポリ乳酸とのブレンド物のガラス転移点は50℃以上となり、柔軟性を持たせることができない。
特開平4−335060号公報 特開平10−316846号公報 特開2002−59499号公報 特開2002−60604号公報 特開2002−80703号公報 特開平9−111107号公報 特開平9−272794号公報 特開平11−222528号公報 特開2001−151906号公報 特開平11−124495号公報 特開2001−335623号公報 米国特許第5686540号明細書
本発明が解決しようとする課題は、耐折強さが大きく、透明性に優れ、かつ柔軟性を併有した、ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形品を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った結果、乳酸単位(I)とポリエステル単位(II)を重量比で10:90〜90:10の範囲で有し、ガラス転移点が60℃以下である乳酸系ポリエステル100重量部に対して、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物、あるいはこの乳酸系ポリエステル及びポリ乳酸からなる高分子成分100重量部に対し、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物が、優れた耐折強さと透明性を有し、かつ柔軟性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、乳酸単位(I)とポリエステル単位(II)を重量比で10:90〜90:10の範囲で有し、ガラス転移点が60℃以下である乳酸系ポリエステル100重量部に対して、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物、あるいはこの乳酸系ポリエステル及びポリ乳酸からなる高分子成分100重量部に対し、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物と、これら当該組成物よりなる成形品、シート及びフィルムである。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物およびそれからなる成形品は、耐折強さが大きく、透明性に優れ、かつ柔軟性を併有しており、化粧鋼板などの被覆材料や軟質シート、食品包装用袋、ゴミ袋等のフィルムや包装材等、特に柔軟性が要求される用途に好適である。
乳酸成分(I)としては、乳酸、ラクタイド、ポリ乳酸又はポリラクタイドが挙げられる。ラクタイドは、乳酸2分子が環状二量化した化合物で、立体異性体を有するモノマーであり、L−乳酸2分子からなるL−ラクタイド、D−乳酸2分子からなるD−ラクタイド、及びD−乳酸及びL−乳酸からなるmeso−ラクタイドが挙げられる。
L−ラクタイド又はD−ラクタイドのみを含む共重合体は結晶化し、高融点である。従って、用途に応じて3種類のラクタイドを種々の割合で組み合わせることにより、乳酸系ポリエステルの特性を調整することができる。例えば、L/D比又はD/L比を重量比で100/0〜90/10の範囲とすれば、乳酸系ポリエステルが結晶化しやすくなるため、加熱乾燥が容易となり、ポリ乳酸等との混合により本発明のポリ乳酸系組成物を製造する際の、水分による分子量低下をおさえることができる。
乳酸成分(I)としては、ポリ乳酸又はラクタイドを原料として用いることが好ましい。原料としてポリ乳酸又はラクタイドを用いた場合、得られる乳酸ポリエステルはブロック共重合体となり、透明性に優れ、かつ優れた耐折強さ付与することができる。
ポリエステル成分(II)は、ジカルボン酸(IIa)及びジオール(IIb)をエステル反応させて得られる。
ジカルボン酸(IIa)としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸の如き脂肪族ジカルボン酸;フマル酸の如き不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸などの炭素原子数4〜45のジカルボン酸が挙げられる。ジカルボン酸(IIa)は、これらに限定されるものではない。また、これらのジカルボン酸は2種類以上併用して用いることもできる。
これらのジカルボン酸(IIa)の中でも、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸又は水添ダイマー酸の如き不飽和結合を有していても良い炭素原子数4〜12のジカルボン酸又は不飽和結合を有していても良い炭素原子数20〜45のジカルボン酸が好ましい。
ジカルボン酸(IIa)として芳香族ジカルボン酸を用いたポリエステルは、ガラス転移点(Tg)が高くなる傾向にあるので、芳香族ジカルボン酸を用いる場合には、耐折強さと柔軟性を損なわない程度の量と材料を選択することが好ましい。ジカルボン酸(IIa)成分の合計量に対する脂肪族ジカルボン酸の割合は、30〜100重量%の範囲が好ましい。
ジオール(IIb)としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、n−ブトキシエチレングリコール、水添ビスフェノールA、ダイマージオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、キシリレングリコール、フェニルエチレングリコールなどの炭素原子数2〜45の脂肪族ジオール、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物などの芳香族ジオールが挙げられる。これらのジオールは、2種類以上併用して使用することもできる。
これらのジオールの中でも、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、プロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、ダイマージオール、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物が好ましい。
ジオール(IIb)成分の合計量に対する脂肪族ジオールの割合は、40〜100重量%の範囲が好ましい。
ポリエステル成分(II)は、液状のものから固体状のものまであるが、ダイマー酸、ダイマージオール、側鎖を有するプロピレングリコールや1,3−ブタンジオールなどの構成比が高いほど融点や流動点は低くなるため、これらからなるポリエステル成分(II)を原料とする乳酸系ポリエステルは、弾性率が低くなり、ポリ乳酸系樹脂組成物に、より優れた柔軟性を付与することができるので、好ましい。
ジカルボン酸(IIa)及びジオール(IIb)をエステル反応させて得られるポリエステル成分(II)の重量平均分子量には、特に制限がないが、耐折強さが高いポリ乳酸系樹脂組成物を得るためには、分子量を高くする必要があり、2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることが更に好ましく、10,000〜200,000の範囲にあることがより好ましく、20,000〜150,000の範囲にあることが更に好ましく、20,000〜100,000の範囲にあることが特に好ましい。
分子量100,000以上の高分子量ポリエステル成分(II)は、ジカルボン酸(IIa)及びジオール(IIb)をエステル反応させて得られるポリエステルに、さらに、鎖伸長剤として酸無水物あるいはポリイソシアネートを反応させることにより、製造することができる。本発明で使用するポリエステル成分(II)は、このようにポリイソシアネートを鎖伸長剤として用いて得られるポリイソシアネート変性ポリエステルをも包含する。
次に、乳酸系ポリエステルについて説明する。本発明の乳酸系ポリエステルは、乳酸成分(I)と、ジカルボン酸(IIa)及びジオール(IIb)からなるポリエステル成分(II)とを重量比で(I):(II)=90:10〜10:90、好ましくは60:40〜10:90、より好ましくは50:50〜10:90、特に好ましくは50:50〜15:85で反応させて得られる乳酸系ポリエステルである。乳酸成分(I)の割合がこの範囲より小さくなると、ポリ乳酸との相溶性が低下するため、ポリ乳酸系樹脂組成物の透明性が低下する、逆に(I)の割合がこの範囲より大きくなると得られるポリ乳酸系樹脂組成物の耐折回数が低下する。
乳酸系ポリエステルは、その重量平均分子量が10,000以上のものが好ましい。さらに、ポリ乳酸系樹脂組成物の耐折性向上のためには、重量平均分子量が20,000〜200,000の範囲のものが好ましく、30,000〜200,000の範囲のものがより好ましい。一方、分子量の上限は特にないが、一般的に20万以下であり、使用しやすさから150,000以下である。
本発明に用いる乳酸系ポリエステルは、ガラス転移点が60℃以下である必要がある。ガラス転移点が60℃を超えると、乳酸系ポリエステルの柔軟性が低下するため、可塑剤の添加量を多くしなければならず、可塑剤のブリードアウトが起こりやすくなる。またポリ乳酸との相溶性も低下するため、乳酸系ポリエステルとポリ乳酸とのブレンドにおける透明性も低下する。
本発明の乳酸系ポリエステルの製造方法としては、例えば、(1)ラクタイドとポリエステル成分(II)とを、重合触媒の存在下で反応させる方法、(2)乳酸を重縮合してポリ乳酸を得、該ポリ乳酸をポリエステル成分(II)存在下で更に脱水、重縮合することによってポリ乳酸−ポリエステルブロック共重合体を得る方法、(3)乳酸又はラクタイドから得られたポリ乳酸とポリエステル成分(II)とをエステル交換触媒の存在下、溶融混練することによりポリ乳酸−ポリエステルブロック共重合体を得る方法などが挙げられる。
また、乳酸成分(I)とポリエステル成分(II)を単に混合あるいは混練しただけではこれらの成分が十分に相溶しにくいため、得られるポリ乳酸系樹脂組成物の透明性が悪化する傾向がある。このため、上記のように乳酸成分(I)とポリエステル成分(II)を意図的に反応させることが好ましい。
次に可塑剤について説明する。本発明では、ポリ乳酸系樹脂組成物に柔軟性を付与する目的で、可塑剤を添加する必要がある。本発明において用いられる可塑剤は、乳酸系ポリエステルとの相溶性が良好である必要がある。この様な可塑剤としては、脂肪族多価カルボン酸エステル、脂肪族多価アルコールエステル、オキシ酸エステル、ロジン系誘導体等が挙げられる。
脂肪族多塩基酸エステルとしては、例えば、ジメチルアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソブチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート、ジ(2−エチルヘキシル)アジペート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート等が挙げられる。
脂肪族多価アルコールエステルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノフロピオネート、ジエチレングリコールジプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチレート、ジエチレングリコールジブチレート、ジエチレングリコールモノバレレート、ジエチレングリコールジバレレート、トリエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールモノプロピオネート、トリエチレングリコールジプロピオネート、トリエチレングリコールモノブチレート、トリエチレングリコールジブチレート、トリエチレングリコールモノバレレート、トリエチレングリコールジバレレート、トリアセチン、グリセリントリプロピオネート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、テトラグリセリンカプリレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンオレート等が挙げられる。
オキシ酸エステル類としては、例えば、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、アセチルトリブチルクエン酸等が挙げられる。
また、ロジン系誘導体は、生松脂から揮発性の油を除去するか、またはトール油からその脂肪酸を除去して得られる天然樹脂であるロジンから、水添反応、あるいは不均化反応等により生成した誘導体であり、代表的な市販品としては、パインクリスタルGP−2001(荒川化学工業(株))等が挙げられる。
これらは一種又は二種以上の混合物として用いることもできる。特に、トリアセチン、アセチルトリブチルクエン酸、ジブチルセバケート、トリエチレングリコールジアセテート、グリセリンジアセトモノカプリレート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノオレート、テトラグリセリンカプリレート、デカグリセリンラウレート、デカグリセリンオレート、ロジン系誘導体は、ポリ乳酸系ポリエステルとの相溶性に優れ好適に用いられる。また、乾燥、成形時を含めて、可塑剤が樹脂組成物の外にブリードアウトしにくくするためには、可塑剤の、熱重量測定による減量開始温度が、200℃以上であることが好ましく、ロジン系誘導体(市販品例:パインクリスタルGP−2001)が特に好ましい。
また、上記の乳酸系ポリエステルとポリ乳酸とからなる高分子成分と、上記の可塑剤によっても本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を得ることができる。ポリ乳酸は乳酸の重縮合物である。乳酸にはL体とD体が存在するが、その比率は、目的に応じて任意の比率を選択することができる。
高分子成分中のポリ乳酸の含有率は高々99重量%、好ましくは30重量%〜97重量%、更に好ましくは50重量%〜95重量%、特に好ましくは60重量%〜95重量%であるである。ポリ乳酸の含有率が99%を超えると得られるポリ乳酸系樹脂組成物の耐折強さが低下する。
これまで述べた乳酸系ポリエステルと可塑剤、あるいは、乳酸系ポリエステルとポリ乳酸からなる高分子成分と可塑剤から本発明のポリ乳酸系組成物がつくられる。可塑剤の添加量は、乳酸系ポリエステルあるいは高分子成分100重量部に対し、5〜50重量部、好ましくは7〜40重量部、より好ましくは10〜30重量部である。可塑剤量が5重量部より少ないと、可塑化効果が不十分となり目的の柔軟性を付与できなくなり、逆に50重量部より多いと、可塑剤のブリードアウトが生じる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物のガラス転移点は50℃未満が好ましく、より好ましくは45℃未満、さらに好ましくは35℃未満、特に好ましくは30℃未満である。ガラス転移点が50℃以上であると、ポリ乳酸系樹脂組成物の、室温で柔軟性が不十分である。一方ガラス転移点が30℃未満では、室温での柔軟性は十分であり、軟質塩化ビニル製のシートなどの代替用途に使用することができる。尚、ガラス転移点については、JIS K−7121に基づいて測定される補外ガラス転移開始温度である。
[添加剤]
本発明に係るポリ乳酸系樹脂組成物には、目的(例えば、引張強度、耐熱性、耐候性等の向上)に応じて各種添加剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、内部離型剤、無機添加剤、帯電防止剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料等滑剤)などを添加することができる。例えば、Tダイ成形、インフレーション成形等、フィルムやシートの成形では、フィルム、シートのブロッキング防止やすべり性を改良するために、無機添加剤や滑剤(脂肪族カルボン酸アミド)を添加することが推奨される。
本発明の乳酸系樹脂組成物は、乳酸系ポリエステルと可塑剤、あるいは乳酸系ポリエステルとポリ乳酸からなる高分子成分と可塑剤を、場合によっては他の添加剤とともに、高速攪拌機または低速撹拌機などを用いて均一に混合した後、十分な混練能力のある一軸あるいは多軸の押出機で溶融混練する方法により製造することができる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物の形状は、通常、ペレット、棒状、粉末等が好ましい。
本発明のポリ乳酸組成物のヘイズは、厚さ250μmのシートで測定した値で、20%以下であることが好ましい。より好ましくは15%以下、更に好ましくは12%以下、特に好ましくは10%以下である。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物は、成形品、フィルムやシートの製造に好適な材料である。成形品、フィルムやシートの製造装置は通常のもので何ら差し支えなく使用することができる。本発明のポリ乳酸系樹脂組成物を、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、Tダイ成形、カレンダー成形、バルーン成形、溶媒キャスティング成形、熱ブレス成形等の成形方法により、成形品、フィルムやシートの成形に供することができる。
共押出法と組み合わせることにより、性質の異なる複数の本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなる多層フィルムや本発明のポリ乳酸系樹脂組成物と他種のポリマーからなる多層フィルムを、高い生産性で製造することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなるフィルム又はシートは、目的に応じて工程条件を設定することにより、ロール状、テープ状、カットシート状、板状、袋状(シームレス状)に製造することができる。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなるフィルム又はシートは、さらに、延伸加工、真空成形等の二次元的又は三次元的な形状を賦与する二次的な加工にも好適な材料である。
本発明のポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品、フィルム及びシートは、各種トレイ、成形部品、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポストバッグ、食品・菓子包装用フィルム、食品用ラップフィルム、化粧品・香粧品用ラップフィルム、医薬品用ラップフィルム、生薬用ラップフィルム肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用ラップフィルム、農業用・園芸用フィルム、農薬品用ラップフィルム、温室用フィルム、肥料用袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装用フィルム、フレキシブルディスク包装用フィルム、製版用フィルム、粘着テープ、テープ、防水シート、土嚢用袋、ブリスターパック、化粧箱等として好適に使用することができる。
以下、実施例及び比較例を用いて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例で行った測定は以下の通りである。
(分子量測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置(以下、GPCと省略する。東ソー株式会社製HLC8120、カラム温度40℃、テトラヒドロフラン溶媒)によりポリスチレン標準サンプルとの比較で測定した。
(透明性測定;以下、「ヘイズ」と省略する。)
厚さ約250μmのシートについて、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製NDH−2000)にて測定した。
(耐折回数)
厚さ約250μmのシートを用い、MIT耐揉疲労試験機((株)東洋精機製作所)により、JIS P−8115に基づいて測定した。尚、耐折強さは耐折回数の対数(底10)である。
(ガラス転移点)
パーキンエルマー社製示差走査熱量計(DSC−7)に、樹脂組成物を約10mg入れ、昇温速度10℃/分以上で200℃まで昇温し、5分間保持する。その後300℃/分で0℃まで降温し、5分間保持後、昇温速度10℃/分で昇温したときに観測される、ベースラインの変化から、JIS K−7121に基づいて求められる補外ガラス転移開始温度である。
(可塑剤のブリードアウト)
厚さ250μmのシートを温度80℃、湿度70%の恒温恒湿槽内に1時間入れた後の可塑剤のブリードアウトを目視にて観察した。
○:ブリードなし
×:ブリードあり
製造例1(乳酸系ポリエステルP−1の作製)
撹拌器、精留器、ガス導入管を付した50L反応槽に、ダイマー酸1モル当量とプロピレングリコール1.4モル当量を仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温させながら加熱撹拌した。生成する水を留去しながら220℃まで昇温し、2時間後、エステル交換触媒としてチタンテトライソプロポキシド70ppmを添加し、0.1KPaまで減圧して3時間撹拌して、GPCを用いたポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)が18,000、重量平均分子量(Mw)が30,000の脂肪族ポリエステルを得た。この脂肪族ポリエステル50重量部及びL−ラクタイド50重量部をセパラブルフラスコに入れ、180℃で溶融した。溶液が均一になってからオクタン酸スズ200ppmを添加し、180℃で3.5時間撹拌した。重合終了後にエチルヘキサン酸ホスフェート500ppmを添加して、GPCを用いたポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)が25,000、重量平均分子量(Mw)が50,000、ガラス転移点(Tg)が53℃の乳酸系ポリエステル(P−1)を得た。
製造例2〜11(乳酸系ポリエステルP−2〜P−11の作製)
ジカルボン酸、ジオール、ラクタイドの種類、添加量を表1のように変えた以外は、参考例1と同様にして、乳酸系ポリエステル(P−2〜P−11)を合成した。
各ポリマーの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点(Tg)についても表1〜3に示す。
製造例12(乳酸系ポリエステル組成物P−12の作製)
撹拌器、精留器、ガス導入管を付した50L反応槽に、ダイマー酸1モル当量とプロピレングリコール1.4モル当量を仕込み、窒素気流下で150℃から1時間に10℃ずつ昇温させながら加熱撹拌した。生成する水を留去しながら220℃まで昇温し、2時間後、エステル交換触媒としてチタンテトライソプロポキシド70ppmを添加し、0.1kPaまで減圧して3時間撹拌して、GPCを用いたポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)が18,000、重量平均分子量(Mw)が30,000の脂肪族ポリエステルを得た。この脂肪族ポリエステル20重量部とL体とD体の重量比(L/D)が100/0のポリ乳酸80重量部を二軸混練機(日本製鋼所、TEX30α)を用い、230℃で混練し、乳酸系ポリエステル組成物(P−12)を得た。このポリエステル樹脂組成物の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、ガラス転移点(Tg)を表4に示す。
実施例1
ポリ乳酸90重量部、乳酸系ポリエステル(P−1)10重量部、及び可塑剤(荒川化学工業製、パインクリスタルGP−2001)10重量部を二軸混練機(日本製鋼所、TEX30α)を用い、230℃で混練し、ポリ乳酸系組成物を得た。この組成物を東洋精機社製ラボプラストミルに供給し、Tダイより押し出して、厚さ約250μmのシートを作製した。このシートのガラス転移点(Tg)は37℃、ヘイズは6.4%、耐折性は500回であった。
実施例2〜14 、比較例1〜10
ポリ乳酸、乳酸系ポリエステル、可塑剤の種類、添加量を表5〜表9のように変えた以外は実施例1と同様に実施した。評価結果を表5〜表9に示す。
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実施例のポリ乳酸系樹脂組成物は、ガラス転移点が50℃未満であり、化粧鋼板などの被覆材料や軟質シート、食品包装用袋、ゴミ袋等のフィルムや包装材等に要求される柔軟を有し、また、ヘイズ20%以下と透明であり、かつ当該組成物から得られるシートの耐折回数も100回以上で割れにくい。さらに可塑剤のブリードアウトもなく、実用上の問題もない。
一方、比較例においては、乳酸系ポリエステル及び可塑剤を添加しない場合はガラス転移が55℃と高く、さらに耐折回数は0回と堅くて脆い樹脂となる(比較例1)。また、可塑剤を添加し、乳酸系ポリエステルを添加しない場合は、ガラス転移点は50℃未満であり、柔軟化されているものの、耐折回数は11回と、樹脂の脆さは改善されていない(比較例2)。さらに、乳酸系ポリエステルを添加し、可塑剤を添加しない場合は、耐折回数は1000回以上と脆さは改善されているが、ガラス転移点は低下しておらず、柔軟な樹脂とは言い難い(比較例3)。
さらに、乳酸系ポリエステルにおいて、ポリエステル/ラクタイドの比率が10/90未満の場合は、得られるポリ乳酸系樹脂組成物の耐折回数が低下する(比較例4)。一方、90/10を超える場合は、ポリ乳酸との相溶性が低下するため、ポリ乳酸系樹脂組成物ヘイズが高くなってしまう(比較例5)。
また、可塑剤の添加量が5重量%未満の場合は柔軟なポリ乳酸系樹脂組成物とならず(比較例6)、50重量%を超える場合は、可塑剤がブリードアウトする(比較例7)。

Claims (11)

  1. 乳酸成分(I)とポリエステル成分(II)の重量比が10:90〜90:10の範囲であり、ガラス転移点が60℃以下である乳酸系ポリエステル100重量部に対して、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の乳酸系ポリエステル及びポリ乳酸からなる高分子成分100重量部に対し、可塑剤を5〜50重量部含むことを特徴とするポリ乳酸系樹脂組成物。
  3. 請求項2記載の高分子成分において、ポリ乳酸の含有率が高々99重量%である、請求項2記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  4. 乳酸系ポリエステルが乳酸成分(I)と、ジカルボン酸(IIa)、ジオール(IIb)からなるポリエステル成分(II)とを重量比で10:90〜90:10の範囲で反応させた反応生成物である請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  5. ジカルボン酸(IIa)の合計量に対する脂肪族ジカルボン酸の割合が30〜100重量%の範囲にあり、かつ、ジオール(IIb)の合計量に対する脂肪族ジオールの割合が40〜100重量%の範囲にある請求項4に記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  6. 可塑剤が脂肪族多塩基酸エステル、脂肪族多価アルコールエステル、オキシ酸エステル及びロジン系誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜5いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  7. ガラス転移点が50℃未満である請求項1〜6いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  8. 厚さ250μmのシートを作製したときのヘイズが20%以下である請求項1〜7いずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなる成形品。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなるシート。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリ乳酸系樹脂組成物からなるフィルム。
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