JP3795390B2 - 車両用開閉体制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される開閉体、特にスライド式ドア等の開閉体を制御する車両用開閉体制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に搭載されるスライド式のドアを駆動モータにて駆動して自動開閉する車両用開閉体制御装置において、駆動モータの回転数を検出するパルスエンコーダ(回転数検出手段)を搭載し、該パルスエンコーダにて検出されたパルス幅が所定値以上である場合に、ドア本体による障害物の挟み込みを検知する方法が知られている。即ち、ドア本体が障害物を挟み込むと、該ドア本体の移動速度が低下するので、パルスエンコーダにて検出される信号のパルス幅が大きくなり、これが所定値以上となったときに、挟み込みを検知する。
【0003】
このような挟み込み検知方法を、ドア本体の実移動速度と目標ドア速度との偏差に基づいて一定の周期で駆動モータの駆動力を制御する装置に適用した場合、挟み込みが発生することにより、ドア速度が著しく低下、或いは停止した場合、パルス信号が所定制御周期時間内に発生しないことがあり、この場合には、ドア本体の移動速度を認識することができない。このため、以下に示す問題が発生する。
【0004】
即ち、図7は、パルスエンコーダより出力されるパルス信号を示すタイミングチャートであり、同図に示すように、50msec周期の制御系において、時刻T2の時点では、T1〜T2間の制御周期内にエンコーダパルスが入力されるので、該エンコーダパルスのパルス幅Pbより算出される正しいドア速度に基づいたフィードバック制御が可能となる。しかし、エンコーダパルスのパルス幅が図中Pcに示す程度に大きくなった場合には、次の周期の、時刻T3の時点では、未だエンコーダパルスが入力されておらず、パルス幅Pcを確定することができない。従って、時刻T2〜T3の間では、パルス幅に基づく制御ができなくなるという問題が発生する。
【0005】
ここで、ドア本体が全閉直前にあり、ウェザーストリップ等の抵抗を受けてドア速度が低下した局面の場合には、時刻T2〜T3の時間帯では、ドア速度低下の情報に基づく制御を行うことができない。即ち、ウェザーストリップ等の抵抗により、ドア速度が低下した場合には、本来であれば、この速度低下を検知して駆動モータの駆動力を増加させるように制御する必要があるが、ドア速度低下の情報が得られないことにより、モータの駆動力を増加させることができない。よって、ウェザーストリップの抵抗に打ち勝ち、ドア本体を全閉させることができない場合がある。
【0006】
その一方、時刻T3の時点でのドア速度低下が、障害物の挟み込みに起因して発生した場合には、時刻T3の時点でドア速度低下の情報を得ていないため、駆動モータの駆動力が増加せず、挟み込み加重の増加を防止することができる。
【0007】
つまり、ドア本体が、全閉状態の近傍で速度低下した場合には、駆動モータの駆動力をより増大することが望まれ、ドア本体が全閉状態の近傍でないところで速度低下した場合には、障害物を挟み込んでいる可能性があるので、駆動モータの駆動力を増大させないことが望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来における車両用開閉体制御装置では、所定の制御周期内(例えば、50msec)にエンコーダパルスが得られない場合には、この制御周期内にてドア速度を検知することができないので、ドア本体を全閉することができないという問題が発生していた。
【0009】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、確実にドア本体を全閉させることができ、且つ、障害物を挟み込んだ場合には、挟み込み荷重を増大させないように制御する車両用開閉体制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、開閉体を開閉作動させて、前記開閉体の開閉操作を行うと共に、障害物の挟み込みを検知する機能を具備した車両用開閉体制御装置において、前記開閉体を開閉作動させるための回転動力を出力する駆動モータと、前記駆動モータの回転速度に応じたパルス幅を有するパルス信号を出力するパルスエンコーダと、所定周期で前記パルスエンコーダより出力されるパルス信号を検出し、このパルス信号の1回目の立ち上がりまたは立ち下がりのエッジの時刻から、2回目の同一方向のエッジの時刻までの時間で定義されるパルス幅に基づいて、前記開閉体の速度を算出し、この開閉体速度が所定の目標値に達するように制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記開閉体が、全閉位置近傍に設定された所定領域内に存在するときに、前記所定周期内に前記パルスエンコーダにより前記2回目の同一方向のエッジの時刻を検知できない場合には、前記所定周期よりも長い疑似パルス幅を設定し、前記パルス信号のパルス幅に基づいて算出される開閉体の速度に替えて、前記疑似パルス幅に基づいて決定される速度を前記開閉体の速度とし、この疑似パルス幅に基づいて決定される速度が、所定の目標値に達するように制御することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記擬似パルス幅は、前回検出されたパルス信号の立ち上がりまたは立ち下がりの時刻から、前回の制御周期が終了した時刻までの経過時間に、前記所定の制御周期の時間を加算した時間として設定されることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記擬似パルス幅は、前記パルスエンコーダにて前回検出されたパルス信号のパルス幅に、前記所定の制御周期の時間を加算した時間として設定されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記擬似パルス幅に基づいて算出される開閉体の速度に、所定の下限値を設定し、前記制御手段は、前記開閉体が、前記全閉位置近傍に設定された所定領域内にあるときに、前記開閉体の速度が前記下限値よりも小さくなった際には、前記開閉体の速度をこの下限値に制限することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記制御手段は、前記開閉体が、前記全閉位置近傍に設定された所定領域内に存在せず、且つ、所定の制御周期内に、前記パルスエンコーダにて有効なパルス信号が検出されない場合には、前回の制御周期に前記パルスエンコーダにて求められたパルス幅に基づいて、前記開閉体の速度を算出することを特徴とする。
【0017】
【発明の効果】
請求項1の発明では、ドア全閉直前の所定領域内において、所定の制御周期内にエンコーダパルスが入力されない場合には、制御周期より長く設定された擬似的なパルス幅を用いてドア速度を算出し、このドア速度に基づいてフィードバック制御を行う。これにより、ドア本体の駆動力を増大させることができ、ドア本体を確実に全閉させることができる。
【0018】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、擬似的に設定するパルス幅を、前回エンコーダパルスが検出された時刻から、前回制御出力を行った時刻までの経過時間に、制御周期を加算した時間として設定するので、好適なパルス幅を得ることができる。
【0019】
請求項3の発明では、請求項1記載の発明において、擬似的に設定するパルス幅を、前回求められたパルス幅に対し、制御周期を加算した時間として設定するので、好適なパルス幅を得ることができ、且つ、パルス幅を求める処理を簡素化することができる。
【0020】
請求項4の発明では、擬似的に設定するパルス幅より求められるドア速度に下限値を設定し、前記開閉体が、全閉位置近傍に設定された所定領域内にあるときに、請求項2または請求項3の処理で求められたパルス幅より算出されるドア速度がこの下限値を下回った場合には、この下限値に制限する。これにより、ドア全閉位置直前での過度なモータ駆動力の増大を防止することができる。
【0021】
請求項5の発明では、ドア本体がドア全閉直前の所定領域内に存在しない場合で、且つ所定の制御周期内にエンコーダパルスが得られなかった場合には、前回求めたパルス幅に基づいて、ドア速度を算出する。これにより、障害物を挟み込んだ際に、挟み込み荷重が増大するという問題を回避することができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両用開閉体制御装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、該車両用開閉体制御装置1は、ドア本体(開閉体)を車両の前後方向にスライド移動させる制御を行うものであり、制御手段2と、ドア駆動モータ3と、該ドア駆動モータ3の回転数を検知するパルスエンコーダ4と、を具備している。更に、ドア駆動モータ3を駆動制御する駆動回路5と、ドア駆動モータ3に流れる電流を検知するモータ電流検知回路6と、バッテリ電圧検知回路7と、を具備している。
【0025】
制御手段2は、ドア駆動モータ3の目標回転速度を生成する目標速度生成部11と、パルスエンコーダ4より出力されるパルス信号に基づいて、ドア本体の現在位置を求めるドア位置算出部12と、該パルス信号に基づいてドア本体の移動速度を求める速度算出部13と、を具備している。
【0026】
更に、制御手段2は、ドア本体の位置のデータ、ドア本体の速度データ、及びモータ電流検知回路6にて検知される電流値に基づいて、ドア本体が障害物を挟み込んだことを検知する挟み込み判断部15と、速度算出部13の出力信号、及び目標速度生成部11の出力信号に基づいて駆動回路5のフィードバック制御を行うフィードバック制御回路16と、バッテリ電圧及びドア本体の位置のデータに基づいてフィードバックゲインを求めるフィードバックゲイン算出部17と、を具備している。
【0027】
また、制御手段2は、車両に搭載されるドア操作スイッチ31、或いはメインスイッチ32の操作を検出するスイッチ操作判断部18と、ドア位置算出部12の出力信号、ハーフラッチスイッチ33の出力信号、及び挟み込み判断部15の出力信号に基づいてドア駆動モータ3の駆動・停止、及び駆動方向を設定する駆動判断部19と、駆動回路5に駆動方向の指令信号を出力する駆動方向決定部20と、を具備している。
【0028】
更に、ドア本体が駆動する際に、これを音や光で報知する報知部34を有している。
【0029】
目標速度生成部11には、図2に示す如くの速度テーブルが設定されている。即ち、同図に示す特性図の横軸は、パルスエンコーダ4より出力されるパルスカウント値を示しており、左端がドア本体が全開とされた位置(全開位置に対応するパルスカウント値)、右端がドア本体が全閉とされた位置(全閉位置に対応するパルスカウント値)とされている。また、縦軸は、ドア本体の移動速度を示している。
【0030】
そして、ドア本体の目標速度が曲線S1に示す如く設定されており、この目標速度に従ってドア駆動モータ3の駆動を制御する。また、ドア位置は、同図に示すように、全開位置から全閉位置に向けて、a1〜a5の、5つの領域に区分されている。なお、図2に示す曲線S2,S3については後に説明する。
【0031】
次に、本実施形態の動作を、図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、50msecの割り込み処理により行われる。まず、ドア本体の位置が図2に示した領域a4、或いはa5内であるかどうかが判断される(ステップST1)。
【0032】
そして、ドア位置が領域a4、a5内でなければ(ステップST1でNO)、カウンタ値(以下の処理で用いる値)を「0」にする(ステップST8)。他方、ドア位置が領域a4、或いはa5内にある場合には(ステップST1でYES)、この制御周期内、即ち、50msec以内に有効なエンコーダパルスが入力されたかどうかが判断される(ステップST2)。そして、有効なエンコーダパルスが入力された場合には(ステップST2でYES)、カウンタ値を「0」とし(ステップST8)、このエンコーダパルスより算出されるドア速度に基づいて、ドア駆動モータ3を制御する。
【0033】
また、制御周期内に有効なエンコーダパルスが得られない場合には(ステップST2でNO)、カウンタ値をインクリメントする。即ち、「1」加算する。
【0034】
次いで、カウンタ値が「3」以上であるかどうかが判断され(ステップST4)、「3」未満である場合には(ステップST4でNO)、カウンタ値が「1」であるかどうかが判断される(ステップST5)。
【0035】
そして、カウンタ値が「1」の場合には(ステップST5でYES)、パルス幅を、以下に示す(1)式により求める(ステップST6)。
【0036】
(パルス幅)=(最後に制御出力を行った時間)−(最後の有効パルスが入った時間)+50msec ・・・(1)
また、カウンタ値が「1」でない場合には(ステップST5でNO)、パルス幅を、以下に示す(2)式により求める(ステップST7)。
【0037】
(パルス幅)=(前回のパルス幅)+(サンプル時間) ・・・(2)
そして、(1)式、或いは(2)式にて求められたパルス幅に基づいて、ドア本体の速度を求め、該速度に基づいて、ドア駆動モータ3の制御を行う。なお、(2)式におけるサンプル時間とは、制御周期50msecのことである。
【0038】
次に、上記の処理を、図4に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。同図は、パルスエンコーダ4より出力されるパルス信号の変化を示しており、時刻T1,T2,T3,T4はそれぞれ、制御周期(50msec間隔)を示している。同図において、時刻T1〜T2間では、符号Pbに示す如くの有効なエンコーダパルスが入力されるので、図3に示したステップST2の処理でYESとなる。即ち、このエンコーダパルスよりドア速度を算出し、この算出結果に基づいてドア駆動モータ3の回転を制御する。
【0039】
また、時刻T2〜T3間では、符号Pcに示すパルス信号が完全に入力されていないので、有効なエンコーダパルスは得られない。従って、図3に示すカウンタ値が「1」となり、上述した(1)式に基づいて、パルス幅を求める。
【0040】
この場合、「最後に制御出力を行った時間」は、時刻T2であり、「最後の有効パルスが入った時間」は、時刻Trであるので、(1)式は、T2−Tr+50msecとなり、図4に示す時間prが求められるパルス幅となる。
【0041】
つまり、時刻T2〜T3の間では、有効なエンコーダパルスが得られないので、擬似的にパルス幅prを設定し、このパルス幅prに基づいて、ドア速度を算出する。そして、このドア速度が図2に示した目標ドア速度(S1)に達するように、ドア駆動モータ3の出力を制御する。
【0042】
他方、カウンタ値が「1」でないとき(即ち、図3のステップST5でNOの場合、実際にはカウンタ値が「2」のとき)には、(2)式により、前回のパルス幅prに、更に、サンプル時間50msecを加算する。
【0043】
ここで、上記の動作を要約すると、ドア本体が全閉位置に接近し(図2に示す領域a4,a5)、例えば、ドア本体がウェザーストリップに接触することによる抵抗により、ドア速度が低下した場合には、制御周期である50msec以内にエンコーダパルスを得ることができず、速度を求めることができなくなる。そこで、この場合には、パルス幅が50msecよりも長いことが明らかなので(もし、パルス幅が50msecよりも短ければ、制御周期内にエンコーダパルスを得ることができる)、この50msecに、所定の時間(T2−Tr)を加算した時間を擬似的なパルス幅として設定している。
【0044】
その結果、制御系では、T2〜T3の時間帯にて、ドア速度が低下したことを確実に検知することができ、ドア駆動モータ3の駆動力を増大させる方向に制御する。これにより、ドア本体が全閉状態となる近傍にてウェザーストリップ等の抵抗により、ドア速度が低下した場合でも、確実にドアを全閉させることができる。
【0045】
また、ドア本体が全閉状態となる近傍(領域a4,a5)に達していない場合、即ち、ステップST1でNOの場合には、上記のような制御は行われず、前回の制御周期で検出されたパルス幅を用いてドア速度を算出する。図4に示したタイミングチャートで説明すると、時刻T3の時点で、その1つ前となるパルス幅pbに基づいたドア速度を算出する。従って、ドア本体が障害物を挟み込んだ際に、挟み込み荷重を増大させるという問題は発生しない。
【0046】
なお、上述した(1)式、及び(2)式で算出されるパルス幅に基づいて演算されるドア速度に下限値を設定し、ドア速度をこの下限値に制限するように構成すれば、駆動力の過度な増大を防止することができる。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。装置構成は、図1に示したブロック図と同一であるので、その説明を省略する。
【0048】
以下、第2の実施形態に係る車両用開閉体制御装置の動作を、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、50msecの割り込み処理により行われる。
【0049】
まず、ドア本体の位置が図2に示した領域a4、或いはa5内であるかどうかが判断される(ステップST11)。そして、ドア位置が領域a4、a5内でなければ(ステップST11でNO)、カウンタ値を「0」にする(ステップST16)。他方、ドア位置が領域a4、或いはa5内にある場合には(ステップST11でYES)、この制御周期内、即ち、50msec以内に有効なエンコーダパルスが入力されたかどうかが判断される(ステップST12)。そして、有効なエンコーダパルスが入力された場合には(ステップST12でYES)、カウンタ値を「0」とし、このエンコーダパルスより得られるドア速度に基づいて、ドア駆動モータ3を制御する。
【0050】
また、制御周期内に有効なエンコーダパルスが得られない場合には(ステップST12でNO)、カウンタ値をインクリメントする。
【0051】
次いで、カウンタ値が「3」以上であるかどうかが判断され(ステップST14)、「3」未満である場合には(ステップST14でNO)、パルス幅を、上述した(2)式、即ち、以下に示す式により算出する(ステップST15)。
【0052】
(パルス幅)=(前回のパルス幅)+(サンプル時間) ・・・(2)
そして、この(2)式にて求められたパルス幅に基づいて、ドア本体の速度を求め、該速度に基づいて、ドア駆動モータ3の制御を行う。
【0053】
つまり、本実施形態では、制御周期以内に有効なエンコーダパルスが得られない場合には、前回の処理で求められたパルス幅に、制御周期時間(この場合は、50msec)を加算することにより、擬似的なパルス幅を求めている。
【0054】
そして、このような構成においても、上述した第1の実施形態と同様に、ドア本体が全閉状態の近傍である場合には、確実にこれを全閉させることができ、且つ、全閉状態の近傍でない場合には、挟み込み荷重の増大を防止することができるという効果を得ることができる。
【0055】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。装置構成は、図1に示したブロック図と同一であるので、その説明を省略する。また、第3の実施形態では、ドア本体の位置に応じて、ドア速度の上限値、及び下限値を設定している。即ち、図2の特性図の曲線S2に示すように、ドア本体が全開位置に近い領域a1では、下限値Bが設定され、領域a2では、下限値Bよりも大きい下限値Aが設定され、領域a3,a4では、下限値Bよりも小さい下限値Cが設定されている。また、領域a5ではドア速度の下限値は設定されていない。他方、曲線S3に示す領域a4,a5では、ドア速度の上限値が設定されている。
【0056】
以下、第3の実施形態に係る車両用開閉体制御装置の動作を、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、50msecの割り込み処理により実行される。
【0057】
まず、パルスエンコーダ3より得られるパルス信号に基づいて、ドア速度を求める。具体的には、以下に示す(3)式によりドア速度を求める(ステップST31)。
【0058】
(ドア速度)=1000×2.7/(計測パルス幅) ・・・(3)
ここで、計測パルス幅には、実際に計測されるものの他に、上述した第1、第2の実施形態に示した処理により求められる擬似的なパルス幅を含む。
【0059】
次いで、ドア位置が領域a4,またはa5内であるかどうかが判断され(ステップST32)、領域a4,a5のいずれかである場合には(ステップST32でYES)、上述の(3)式にて求められたドア速度が図2に示した上限値以下であるかどうかが判断される(ステップST33)。
【0060】
そして、上限値よりも大きい場合には(ステップST33でNO)、ドア速度を上限値に設定する(ステップST34)。即ち、領域a4,a5では、ドア速度が上限値よりも大きくならないように制限を加えている。
【0061】
次いで、ドア位置が領域a3,またはa4内であるかどうかが判断され(ステップST35)、領域a3,a4のいずれかである場合には(ステップST35でYES)、(3)式にて求められたドア速度が下限値C以上であるかどうかが判断される(ステップST36)。そして、下限値Cよりも小さい場合には(ステップST36でNO)、ドア速度を下限値Cに設定する(ステップST37)。つまり、領域a3,a4では、ドア速度が下限値Cよりも小さくならないように制限を加える。
【0062】
また、ドア位置が領域a2内である場合には(ステップST38でYES)、ドア速度が下限値A以上であるかどうかが判断され(ステップST39)、下限値Aよりも小さい場合には(ステップST39でNO)、ドア速度を下限値Aに設定する(ステップST40)。つまり領域a2では、ドア速度が下限値Aよりも小さくならないように制限を加える。
【0063】
更に、ドア位置が領域a1内である場合には(ステップST41でYES)、ドア速度が下限値B以上であるかどうかが判断され(ステップST42)、下限値Bよりも小さい場合には(ステップST42でNO)、ドア速度を下限値Bに設定する(ステップST43)。つまり、領域a1では、ドア速度が下限値Bよりも小さくならないように制限を加える。
【0064】
このようにして、本実施形態では、ドア本体が全閉位置近傍に達したときにはドア速度が速い場合でも、該ドア速度は所定の上限値に制限されるので、ノイズ等に起因してパルス幅の短いパルス信号(高速のパルス信号)が得られた場合でも、ドア駆動モータ3に出力するデューティーサイクルの低下を防止することができ、確実にドア本体を全閉状態とすることができる。
【0065】
また、ドア位置に応じて、ドア速度の下限値を設定することにより、ドア速度が必要以上に小さくなることを防止することができ、障害物の挟み込みが発生した際には、必要以上に挟み込み荷重が大きくなることを回避することができる。
【0066】
以上、本発明の車両用開閉体制御装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。例えば、上記した実施形態では、制御周期として50msecを例に示したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
また、車両に搭載される開閉体の例としてスライド式のドアを例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、パルスエンコーダ出力により位置決めされる構成の開閉体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用開閉体制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ドア本体の位置と、目標ドア速度との関係、及びドア速度の上限値、及び下限値を示す特性図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車両用開閉体制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】パルスエンコーダより出力されるパルス信号を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車両用開閉体制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る車両用開閉体制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】パルスエンコーダより出力されるパルス信号を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 車両用開閉体制御装置
2 制御手段
3 ドア駆動モータ
4 パルスエンコーダ
5 駆動回路
6 モータ電流検知回路
7 バッテリ電圧検知回路
11 目標速度生成部
12 ドア位置算出部
13 速度算出部
15 挟み込み判断部
16 フィードバック制御回路
17 フィードバックゲイン算出部
18 スイッチ操作判断部
19 駆動判断部
20 駆動方向決定部
31 ドア操作スイッチ
32 メインスイッチ
33 ハーフラッチスイッチ
34 報知部

Claims (5)

  1. 開閉体を開閉作動させて、前記開閉体の開閉操作を行うと共に、障害物の挟み込みを検知する機能を具備した車両用開閉体制御装置において、
    前記開閉体を開閉作動させるための回転動力を出力する駆動モータと、
    前記駆動モータの回転速度に応じたパルス幅を有するパルス信号を出力するパルスエンコーダと、
    所定周期で前記パルスエンコーダより出力されるパルス信号を検出し、このパルス信号の1回目の立ち上がりまたは立ち下がりのエッジの時刻から、2回目の同一方向のエッジの時刻までの時間で定義されるパルス幅に基づいて、前記開閉体の速度を算出し、この開閉体速度が所定の目標値に達するように制御する制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、前記開閉体が、全閉位置近傍に設定された所定領域内に存在するときに、前記所定周期内に前記パルスエンコーダにより前記2回目の同一方向のエッジの時刻を検知できない場合には、前記所定周期よりも長い疑似パルス幅を設定し、前記パルス信号のパルス幅に基づいて算出される開閉体の速度に替えて、前記疑似パルス幅に基づいて決定される速度を前記開閉体の速度とし、この疑似パルス幅に基づいて決定される速度が、所定の目標値に達するように制御することを特徴とする車両用開閉体制御装置。
  2. 前記擬似パルス幅は、前回検出されたパルス信号の立ち上がりまたは立ち下がりの時刻から、前回の制御周期が終了した時刻までの経過時間に、前記所定の制御周期の時間を加算した時間として設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用開閉体制御装置。
  3. 前記擬似パルス幅は、前記パルスエンコーダにて前回検出されたパルス信号のパルス幅に、前記所定の制御周期の時間を加算した時間として設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両用開閉体制御装置。
  4. 前記擬似パルス幅に基づいて算出される開閉体の速度に、所定の下限値を設定し、前記制御手段は、
    前記開閉体が、前記全閉位置近傍に設定された所定領域内にあるときに、前記開閉体の速度が前記下限値よりも小さくなった際には、前記開閉体の速度をこの下限値に制限することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車両用開閉体制御装置。
  5. 前記制御手段は、前記開閉体が、前記全閉位置近傍に設定された所定領域内に存在せず、且つ、所定の制御周期内に、前記パルスエンコーダにて有効なパルス信号が検出されない場合には、前回の制御周期に前記パルスエンコーダにて求められたパルス幅に基づいて、前記開閉体の速度を算出することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両用開閉体制御装置。
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