JP3835522B2 - 開閉制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の窓などの開閉体を制御する開閉制御装置に係り、特に、閉動中の開閉体に人の指などが挟まれたことを検知して開閉体の閉動を強制的に停止させる挟み込み防止機能を備えた開閉制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、挟み込み防止機能を備えた開閉制御装置としては、全閉位置よりも手前の領域において、例えば開閉体を駆動するモータの電流が一定のしきい値を越えたときに挟み込みが起こったと判定するものや、或いは、前記モータの作動速度を検知するためのパルス発生器が出力するパルス信号の周期がしきい値以上になったときに挟み込みと判定するもの(いわゆる絶対値判定方式)がある。
また、比較的敏感に挟み込みを判定するものとしては、例えばモータの作動速度などの変化量(例えば、差分値)がしきい値を越えたときに挟み込みが生じていると判定するいわゆる微分判定を採用したものも知られている。
【0003】
しかし、上述したように、例えばモータ電流を一定のしきい値と比較することにより挟み込み判定を行う方式では、例えば車載バッテリーなどの電源の電圧変動による影響を特に大きく受け易く、このような電源電圧の変動による誤動作を防止するため、大きな余裕を設けて上記しきい値を設定する必要があり、小さな挟み込み荷重を達成するような敏感な挟み込み検知は不可能である。
また、パルス周期(モータ速度データ)がしきい値以上になったときに挟み込みと判定する方式は、開閉体が挟み込みによって停止したことを実質的に検知して挟み込み判定を行うものであるために、挟み込み判定が実際に行われるのは、既に挟み込み状態が相当進行した状態(ある程度大きな荷重で挟み込まれた状態)であり、やはり、挟み込み荷重を小さくすることができない。
【0004】
また、モータの作動速度などの変化量がしきい値を越えたときに挟み込みが生じていると判定するいわゆる微分判定方式でも、やはり電源電圧の変動に対応すべく、ある程度大きな余裕を設けてしきい値を設定する必要があり、やはり挟み込み荷重を十分小さくすることが困難であるという問題があった。
なお、ここでいう挟み込み荷重とは、挟み込みが解除されるまでの間に、開閉体が挟まれた物に加えている力のことであり、自動車市場等において要求される安全性のレベルがより高度になっていることを反映して、より小さな値にすることが求められている。
【0005】
そこで近年では、例えば特開平8−165842号に記載されているように、PWM(パルス幅変調)方式等でモータを駆動してモータへの印加電圧を調整することにより、電源電圧そのものを直接印加してモータを駆動する場合よりも小さな目標速度にモータ速度を制御する速度制御を行う構成が提案されている。
この構成によれば、上記速度制御を行わない場合に比較して、電源電圧の変動の影響を受け難く、また挟み込み荷重が低減できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような速度制御を行うものでも、従来では、常にモータ速度を目標速度に制御する構成であるため、挟み込み荷重の低減に限界があり、特に柔らかい物を挟んだときに挟み込み判定が遅れて開閉体のオーバーランも大きくなる問題が十分に解消できない。図4(a)は、このような速度制御を行った場合の挟み込み発生時の各種パラメータの変化例を示す図であるが、挟み込み開始後もモータ速度を目標値に制御しようとして、電圧操作量が上昇し、それに応じて挟み込み荷重が上昇しているのが分かる。
そこで本発明は、より挟み込み荷重の低い挟み込み防止機能が実現可能な開閉制御装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明による開閉制御装置は、開閉体を駆動するモータを制御して、開閉体の開閉動作を制御するとともに、閉動中の開閉体への異物の挟み込みが生じたと判定した場合には、少なくとも開閉体の閉動を強制的に停止させる挟み込み防止動作を実行する開閉制御装置であって、
前記モータの通電状態及び通電方向を制御するための駆動手段と、
前記モータに加わる負荷を検出する負荷検出手段と、
少なくとも開閉体の閉動時には、前記駆動手段を制御して前記モータの速度(或いは、開閉体の速度でもよい)を所定の目標値に制御する速度制御を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、開閉体の閉動時に、前記負荷検出手段により検出されている負荷又はその時間微分値が第1しきい値を越えると、前記速度制御を停止するか、或いは前記速度制御のゲインを下げ、前記負荷又はその時間微分値が第1しきい値よりも大きな第2しきい値を越えると、前記挟み込みが生じたと判定して前記挟み込み防止動作の制御を実行するものである。
なお、ここでいう「時間微分値」には時系列データの差分値も含まれる。
【0008】
また、この発明の好ましい態様は、前記モータの印加電圧を検出する電圧検出手段、或いは前記モータの電流を検出する電流検出手段を備え、
前記制御手段が、開閉体の閉動時に、前記負荷検出手段により検出されている負荷又はその時間微分値が第1しきい値を越えると、前記速度制御を停止し、前記速度制御を停止する直前において検出されている前記印加電圧又は電流がそのまま維持されるように、前記駆動手段を制御するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態として、本発明を車両のパワーウインドに適用した一形態例を、図面に基づいて説明する。図1は、本例のパワーウインド装置の構成(主に制御ユニットの構成)を示す図である。また、図2(a)又は(b)は、本例のパワーウインド装置の主に要部構成を示す機能ブロック図である。
(パワーウインドの本体構成)
まず、パワーウインドの本体構成例の概略について、図1により説明する。
図1に示すように、例えば車両のドア1の内部には、モータ2が設けられ、このモータ2の出力軸の回転は、図示省略した伝達手段によってウインドガラス3(開閉体)を支持するキャリアプレート(図示省略)の上下動作に変換されて伝達され、モータ2が一方向に作動するとウインドガラス3が例えば閉動し(即ち、上昇方向に作動し)、モータ2が他方向に作動するとウインドガラス3が例えば開動する(即ち、下降方向に作動する)構成となっている。
ここでモータ2は、直流モータであり、供給される電圧とその回転数(回転速度)は比例関係にある。また、モータ2には、その作動速度に反比例した周期でパルス信号を出力するパルス発生器4が付設されている。
【0010】
(開閉制御装置の構成)
次に、上記パワーウインドを制御する開閉制御装置である制御ユニット10の一例について、図1及び図2(a)により説明する。
A.ハード構成
本例の制御ユニット10は、図1に示すように、制御回路11と、電圧検出回路12と、電流検出回路13と、モータ駆動回路14などを備える。
ここで、制御回路11は、各種センサ類及び操作スイッチからの入力信号に応じて、ウインドウ駆動用のモータ2を制御するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)を含む回路であり、本発明の制御手段に相当する。
この制御回路11は、図示省略したCPUを有し、また、動作プログラムや各種設定値等を記憶又は一時記憶するROM或いはRAMなどのメモリを備えている。
【0011】
また、電圧検出回路12は、モータ駆動回路14に供給される電源電圧を検出するための回路であり、制御回路11は、この電圧検出回路12の出力(電源電圧の検出値V)に後述するPWM駆動のデューティ比を乗算することによって、モータ2への印加電圧Vmを検知する。この場合、制御回路11においてこのようにモータ印加電圧を算出する機能と、電圧検出回路12とが、本発明の電圧検出手段を構成している。
また、電流検出回路13は、モータ駆動回路14のグランド側通電ラインに直列に接続されたシャント抵抗13aの電圧降下に応じた信号を、モータ電流の検出値として制御回路に入力するものであり、本発明の電流検出手段を構成している。
【0012】
次に、モータ駆動回路14は、モータ2の各端子をグランド側又は高電位電源側(いわゆる+B電位の電源ライン)に接続するリレー15,16と、これらリレー15,16のコイル15a,16aを駆動するためのトランジスタ17,18と、グランド側通電ライン(シャント抵抗13aの上流)を開閉するFET(電界効果トランジスタ)などのスイッチング素子19とを有する。
なお、リレー15のコイル15aが励磁されると、リレー15の接点15bが、モータ2の一方の端子をグランド側に接続する状態から高電位電源側に接続する状態に切り替わり、モータ2が一方向に作動する(この場合、ウインドガラス3が閉動する)。また、リレー16のコイル16aが励磁されると、リレー16の接点16bが、モータ2の他方の端子をグランド側に接続する状態から高電位電源側に接続する状態に切り替わり、モータ2が他方向に作動する(この場合、ウインドガラス3が開動する)構成となっている。
また、スイッチング素子19は、上述したようにモータ2が何れかの方向に駆動制御されているときに、制御回路11から出力されるPWM駆動信号により所定のデューティ比で駆動され、モータ2への印加電圧をPWM駆動方式で調整するためのものである。
【0013】
また、制御回路11には、インターフェース回路11aを介して前述のパルス発生器4の出力信号が入力されており、これによりモータ2の回転量(ウインドガラス3の作動量)や作動速度が判定できるようになっている。なお、パルス発生器4の出力信号としては、位相の異なる二つのパルス信号PLSAとPLSBが出力され、これらのパルス信号の位相関係から、制御回路11がモータ2の回転方向を検知可能となっている。なお、このようにモータ速度の大きさと方向などを検知する制御回路11の機能を、図2では、速度検出部31と表現している。
また、制御回路11には、インターフェース回路11bを介して、操作スイッチであるアップスイッチ21、ダウンスイッチ22、オートスイッチ23の操作信号が入力される。これら操作スイッチは、図示省略した操作部の操作に応じて接点が作動するものであり、この場合、いわゆるマニュアルアップの操作がなされると、アップスイッチ21のみが作動し、マニュアルダウンの操作がなされると、ダウンスイッチ22のみが作動する。また、いわゆるオートアップの操作がなされると、アップスイッチ21とオートスイッチ23が作動し、オートダウンの操作がなされると、ダウンスイッチ22とオートスイッチ23が作動する。
【0014】
そして、制御回路11は、アップスイッチ21或いはダウンスイッチ22の操作信号のみが入力されたときには、トランジスタ17,18の何れか一方を作動させることによりモータ2を所定方向に作動させて、ウインドガラス3のマニュアル操作による開閉動作を実現する。また制御回路11は、上記操作信号に加えてオートスイッチ23の操作信号が入力されたときには、ウインドガラス3が全閉又は全開になるまで自動的にモータ2を所定方向に作動させるオートアップ或いはオートダウンを実現する処理機能を有する。
そして本例では、少なくともこのオートアップの動作において、PWM駆動による速度制御と、例えば微分判定による挟み込み防止機能が実現されるが、この挟み込み防止機能を含む制御回路11の処理内容については、後述する。
【0015】
また図示省略しているが、制御回路に接続されたセンサ類又スイッチ類としては、イグニションスイッチやリミットスイッチなどがあり得る。このうち、イグニションスイッチは、その操作により本制御ユニット10に電源が供給される電源投入スイッチとして機能する。また、リミットスイッチは、ウインドウ3が全閉位置近くまで作動したことを検出して接点が作動するいわゆる全閉スイッチである。
【0016】
B.制御処理内容
次に、本例の制御ユニット10(開閉制御装置)の動作(主に制御回路11の制御処理内容)を説明する。
イグニションスイッチの操作により電源が供給されると、制御回路11は起動して、以下のような処理により、マニュアル操作を実現する。すなわち、まず、ダウンスイッチ22のみが作動しているか否か判定し、作動していれば、ウインドガラス3が開動する方向にモータ2を作動させる。次いで、アップスイッチ21のみが作動しているか否か判定し、作動していれば、ウインドガラス3が閉動する方向にモータ2を作動させる。なお、このマニュアル操作によりウインドガラス3の開動又は閉動を開始した後は、ダウンスイッチ22又はアップスイッチ21が非作動状態に復帰した時点でウインドガラス3(モータ2)を停止させる。また、このマニュアル操作による開動又は閉動時におけるスイッチング素子19のPWM駆動信号(ディーティ比)は、一定値(例えば、100%)に維持する態様でもよいが、例えば作動速度が所定の目標値になるように随時変化させる態様(即ち、速度制御を実行する態様)でもよい。
【0017】
また制御回路11は、上記マニュアル操作のための処理とは別個に、所定のタイミングで図3に示す一連の処理を繰り返し実行し、オートアップ或いはオートダウンの動作を実行するとともに、オートアップにおける挟み込み防止機能を実現する。
まずステップS1で、オートスイッチ23がオンしているか否か判定し、オンしていればステップS2に進み、オンしていなければ一連の処理を終了する。なお、一連の処理を終了した場合には、次回のタイミングでこのステップS1から処理を繰り返す(以下、同様)。
【0018】
次いでステップS2では、オートアップ或いはオートダウンのいずれが指令されているのか(即ち、アップスイッチ21又はダウンスイッチ22のいずれがオンしているのか)を判定し、次のステップS3で、この指令に応じた方向にモータ2を作動させる制御信号を出力する。即ち、ステップS3では、トランジスタ17,18の何れか一方と、スイッチング素子19とを駆動する信号を出力する。この際、少なくともオートアップの場合(トランジスタ17を駆動する場合)には、スイッチング素子19を所定のデューティ比でPWM駆動することによって、モータ作動速度を目標速度に維持する速度制御を実行する。なお、この速度制御のデューティ比は、例えば、パルス発生器4により検知されるモータ2の実際の作動速度のデータ(フィードバック値)と目標速度(指令値)との差(偏差)に、所定の係数(ゲイン)を乗算した結果に基づいて随時求める。但しこの速度制御は、このような比例動作によるフィードバック制御に限られず、例えば積分動作や微分動作を比例動作に組み合わせてもよいことはいうまでもない。また、このようにデューティ比を生成し、駆動回路14を介してモータ2の速度制御を実行する制御回路11の機能を、図2では、速度制御部32及びPWM発生部33と表現している。
【0019】
その後、制御回路11は、ステップS4で適当な起動期間(モータ2が起動し定常状態になるまでの期間)だけ処理の進行を停滞させた後、ステップS5で、後の処理(ステップS8,S10)に必要な各種検出信号を読み取り、時系列データとして記憶する。この場合、電流検出回路13の出力信号(モータ電流I)、パルス発生器4の出力より検知されるパルス信号の周期T、電圧検出回路12により検知されるモータ印加電圧Vmの最新値を読み込んで、これら電流I又は周期T、及び電圧Vmを時系列データとして記憶する。
次に、制御回路11は、ステップS6の分岐処理を実行し、オートアップの場合にはステップS7に進み、オートダウンの場合にはステップS8に進む。
そしてステップS7では、前述したリミットスイッチ(全閉スイッチ)がオンしているか否か判定し、オンしていればステップS8に進み、オンしていなければステップS10に進む。
【0020】
そしてステップS8では、パルス発生器4の出力信号から読み取った最新の周期Tの値が、全閉又は全開による停止を判定するためのしきい値を越えたか否か判定する。そして、越えていればステップS9に進み、越えていなければステップS5に戻りそこから処理を繰り返す。
次にステップS9では、モータ2の駆動出力を停止し、ウインドガラス3の駆動(開動又は閉動)を停止させて、一連の処理を終了する。
【0021】
そして、次のステップS10では、挟み込み判定のための判定対象値(モータ負荷又はその微分値)を算出する。この場合には、モータへの印加電圧Vmの変動を考慮した微分判定のために、電圧補正後のモータ電流Iの差分値ΔIを求める。具体的な算出方法は、後述する。
なおこのステップS10では、後述するように、モータ電流の差分値ΔIを求める過程で、モータ電流Iの電圧補正値Ihを求めて時系列に記憶してゆくが、このステップS10で記憶した現在及び過去の複数の電流Ihのうち、最新のものを電流Ih(0)といい、一つ前のタイミングで演算され記憶されたものを、電流Ih(1)とし、さらにその一つ前のものを電流Ih(2)といったように表現する。
次にステップS11では、ステップS10で求めた判定対象値のデータ(この場合、後述するΔI)が、予め設定された微分判定の第1しきい値を越えたか否か判定する。そして越えていれば、挟み込みが開始している恐れがあると判断してステップS12に進み、越えていなければ、ステップS5に戻る。なお、ここでの第1しきい値は、後述する第2しきい値よりも若干小さい値に設定し、従来では僅かな差で挟み込み発生と判定されなかったような微妙な負荷の変化にも敏感に反応するようにする。
【0022】
次いでステップS12では、モータ2の速度制御を停止する。即ち、モータ2の閉動方向への作動速度を所定の目標速度に維持すべくスイッチング素子19のPWM駆動のデューティ比を調整する動作を停止する。なお、速度制御を停止した後には、例えば、予め設定された一定のデューティ比でスイッチング素子19を駆動するようにしてもよいし、予め設定された一定のモータ印加電圧を実現すべく、電源電圧の値に応じて上記デューティ比を調整するようにしてもよいが、いずれにしろ、上記デューティ比が増加して挟み込み荷重が増大しないような制御内容とすべきである。好ましい態様としては、ステップS11の判定が肯定的になった時点のモータ印加電圧をそのまま維持するように、電源電圧の値に応じて上記デューティ比を調整する構成があり得る。また、より好ましい態様としては、ステップS11の判定が肯定的になった時点のモータ電流をそのまま維持するように、モータ電流の検出値Iに応じて上記デューティ比をフィードバック制御する構成があり得る。
【0023】
次にステップS13では、ステップS10で求めた判定対象値のデータが、予め設定された微分判定の第2しきい値を越えたか否か判定する。そして越えていれば、挟み込みが発生したと判断してステップS14に進み、越えていなければ、ステップS5に戻る。なお、ここでの第2しきい値は、実験等に基づいて、誤検出が起きない範囲内で最小値に設定する。
なお、主に以上のステップS10〜S13の処理によって達成される機能(モータ負荷に基づいて速度制御を停止したり、挟み込み判定を行う機能)を、図2(a),(b)においては、挟み込み判定部34及び電圧制御部35或いは電流制御部36で示している。ここで、電圧制御部35は、速度制御を停止した後、モータ電圧をそのまま維持する機能であり、電流制御部36は、速度制御を停止した後、モータ電流をそのまま維持する機能である。
【0024】
そしてステップS14では、挟み込み防止のための制御動作を実行する。即ち、まずモータ2の閉動方向への作動を強制停止し、モータ2を逆転させる(ウインドウガラス3を開動させる)制御信号を一定時間出力した後にモータ2の駆動出力を停止して、ウインドガラス3を一定距離だけ反転(開動)させて停止させ、そして一連の処理を終了する。
【0025】
C.判定対象値の算出
次に、前述のステップS10における判定対象値(モータ負荷又はその微分値)の算出処理等について説明する。モータ負荷のデータとしては、具体的には、モータの作動速度(例えば、パルス周期T)、モータ電流、モータのトルクなどのデータを使用することができる。但し、モータへの印加電圧Vmの変動を考慮して、上記データの検出値を補正して使用することが好ましい。また、挟み込み判定の指標(即ち、判定対象値)として使用するには、上記データの絶対値を用いてもよいが(即ち、絶対値判定を行ってもよいが)、好ましくは上記データの微分値(差分値含む)を用いて微分判定を行う構成(或いは、微分判定と絶対値判定の両者を行う構成)が優れている。以下では、電圧補正したモータ電流の差分値を、上記判定対象値として求める例について、詳細を説明する。
【0026】
電圧補正したモータ電流Iの差分値ΔIを求めるには、まず、モータ印加電圧Vmから印加電圧による電流補正値Ieを求める。具体的には、与えられた印加電圧Vmの値に対して、モータのモデル演算を行い、その時点の印加電圧による電流推定値を求め、これを電流補正値Ieとして記憶する。
次に、電流検出回路13から読み取った実測のモータ電流値Iから対応する電流補正値Ieの値を減算することにより、モータ電流値Iを電圧補正し、この補正演算の結果得られた値(I−Ie)を、電圧補正後のモータ電流値Ihとして時系列に記憶する(例えば前述のステップS5,S10が繰り返される度に以上の演算を行って記憶しておく)。なお、得られた電圧補正後のモータ電流値Ihは、外乱トルクによる電流値である。
そして、例えば下記式(1)により、差分値ΔIを求める。
ΔI=Ih(0)−Ih(N) …(1)
即ち、モータ電流値の最新のデータIh(0)からN個前のデータIh(N)を減算して差分値ΔIを求める。なお、このNの値は、予め所定値(例えば、N=8)に設定しておく。
【0027】
以上の制御動作によれば、オートアップ及びオートダウンの通常の動作が実現されるとともに、オートアップの際に、ステップS3で速度制御が実行され、さらにステップS7以降の処理が実行されることによって、リミットスイッチがオフしている領域において、的確でより低荷重な挟み込み防止機能が実現される。即ち、閉動時におけるリミットスイッチがオンするまでの期間は、ステップS7の分岐処理において処理がステップS10以降に進むため、ステップS10で判定対象値が算出され、この判定対象値が第1しきい値を越えていると、ステップS3で開始された速度制御が停止され、例えばモータ印加電圧をそのまま維持する電圧一定制御(或いは、モータ電流をそのまま維持する電流一定制御など)が実行される(ステップS11,S12)。そして、挟み込みによって判定対象値がさらに上昇し、第2しきい値を越えると、挟み込みが生じたと判定して挟み込み防止動作の制御(ステップS14)を実行する。つまり、挟み込みを確定的に判定できる程度まで判定対象値が上昇する前に、モータ速度を目標速度に維持しようとする速度制御を止める。このため、速度制御による挟み込み荷重の増加を回避して、その分だけ挟み込み荷重を従来よりも低減することができる。
【0028】
図4は、上記作用効果を従来例と比較して示したものである。
即ち、例えば図2(c)に示すように、挟み込みを判定して単純にモータ駆動を停止する挟み込み判定部34aを備える従来構成(モータ駆動を強制停止する時点まで速度制御を継続する構成)では、挟み込みがあると、図4(a)に示す如く電圧操作量が上昇して挟み込み荷重が比較的大きく増加してしまう。
これに対して、例えば電圧一定制御を行う本形態例の構成(図2(a)の構成)の場合には、挟み込みがあると、挟み込み判定がなされる前に速度制御が停止され、その後はモータ印加電圧が増加しないように制御されるため、図4(b)に示す如く挟み込み荷重の増加が従来よりも抑制される。
また、電流一定制御を行う本形態例の構成(図2(b)の構成)の場合には、挟み込みがあると、挟み込み判定がなされる前に速度制御が停止され、その後はモータ電流が増加しないように制御される(モータ印加電圧がかえって抑制される)ため、図4(c)に示す如く挟み込み荷重の増加がさらに抑制される。というのは、挟み込みによりモータ速度が低下すると、モータの特性である速度低下時の出力トルク増(即ち、電流増)によって、印加電圧を一定に維持したとしても、相当の挟み込み荷重の増加が生じるが、電流を一定に維持することで、このような挟み込み荷重の増加をも抑制できる。
【0029】
また、特に上記電圧一定制御を行う本形態例の構成(図2(a)の構成)の場合には、上述したように挟み込み荷重を従来よりも低減できる効果に加えて、以下のような利点がある。即ち、気温の変化等によってウインドウガラス3の摺動抵抗が増加することによって、挟み込みが生じていないのに判定対象値が前述の第1しきい値を越えた場合でも、その時点のモータ印加電圧(或いは、少なくともモータ電流)が維持されるので、そのままウインドウガラス3の閉動を継続して、ウインドウガラス3の閉動を完了することが確実に可能となる。
また前述したように、挟み込み判定のための判定対象値のデータとして、電圧補正した差分値を使用し、電圧変動を考慮した微分判定により挟み込み判定を実現する構成の場合には、電源電圧の変動の影響をより受け難く、より的確にかつ応答性よく挟み込みを検知できる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態の態様に限られない。
例えば、判定対象値が第1しきい値を越えたときに、速度制御を止めるのではなく、速度制御を弱くする(速度制御のゲインを下げる)態様でもよい。このような態様でも、速度制御による挟み込み荷重の増加を抑制できる。また、マニュアル操作による開閉体の閉動時においても、本発明の挟み込み防止機能が働くような構成とすることも可能である。また、上記形態例では、電源電圧を検出する電圧検出回路12の出力値からモータ印加電圧を求めているが、モータ印加電圧(モータ端子間電圧)を直接検出する回路を設けてよい。
【0031】
【発明の効果】
この発明によれば、開閉体の閉動時においてモータ負荷が上昇すると、挟み込みを確定的に判定できる程度までモータ負荷が上昇する前に、モータ速度を目標速度に維持しようとする速度制御を止めるか、或いはこの速度制御のゲインを下げる。このため、速度制御による挟み込み荷重の増加を回避して、その分だけ挟み込み荷重を従来よりも低減することができる。特に、開閉体の閉動時において速度制御を停止した後、モータ電流をそのまま維持する制御を行う場合には、モータ速度低下による荷重増加をも抑制して、挟み込み荷重を大きく低減できる。
また、開閉体の閉動時において速度制御を停止した後、特にモータ印加電圧をそのまま維持する制御を行う場合には、開閉体の閉動を確実に完了することができ、動作信頼性を高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】パワーウインド装置の構成を示す図である。
【図2】パワーウインド装置の構成を示すブロック図である。
【図3】パワーウインド装置の制御処理を示すフローチャートである。
【図4】挟み込み荷重の低減効果を説明する図である。
【符号の説明】
2 モータ
3 ウインドウガラス(開閉体)
4 パルス発生器
10 制御ユニット(開閉制御装置)
11 制御回路(制御手段)
12 電圧検出回路(電圧検出手段、負荷検出手段)
13 電流検出回路(電流検出手段、負荷検出手段)
14 駆動回路(駆動手段)
Claims (3)
- 開閉体を駆動するモータを制御して、開閉体の開閉動作を制御するとともに、閉動中の開閉体への異物の挟み込みが生じたと判定した場合には、少なくとも開閉体の閉動を強制的に停止させる挟み込み防止動作を実行する開閉制御装置であって、
前記モータの通電状態及び通電方向を制御するための駆動手段と、
前記モータに加わる負荷を検出する負荷検出手段と、
少なくとも開閉体の閉動時には、前記駆動手段を制御して前記モータの速度を所定の目標値に制御する速度制御を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、開閉体の閉動時に、前記負荷検出手段により検出されている負荷又はその時間微分値が第1しきい値を越えると、前記速度制御を停止するか、或いは前記速度制御のゲインを下げ、前記負荷又はその時間微分値が第1しきい値よりも大きな第2しきい値を越えると、前記挟み込みが生じたと判定して前記挟み込み防止動作の制御を実行することを特徴とする開閉制御装置。 - 前記モータの印加電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記制御手段は、開閉体の閉動時に、前記負荷検出手段により検出されている負荷又はその時間微分値が第1しきい値を越えると、前記速度制御を停止し、前記速度制御を停止する直前において前記電圧検出手段によって検出されている印加電圧がそのまま維持されるように、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の開閉制御装置。 - 前記モータの電流を検出する電流検出手段を備え、
前記制御手段は、開閉体の閉動時に、前記負荷検出手段により検出されている負荷又はその時間微分値が第1しきい値を越えると、前記速度制御を停止し、前記速度制御を停止する直前において前記電流検出手段によって検出されている電流がそのまま維持されるように、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1記載の開閉制御装置。
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