JP3794690B2 - レゾルバデジタル変換装置およびレゾルバデジタル変換方法 - Google Patents

レゾルバデジタル変換装置およびレゾルバデジタル変換方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機および内燃機関の回転軸などの回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータを、デジタルレゾルバデータに変換して、回転角度位置および回転角速度の推定値を求めるレゾルバデジタル変換装置およびレゾルバデジタル変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転機器の回転軸などの回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータを、デジタルレゾルバデータに変換して、回転角度位置および回転角速度の推定値を求めるレゾルバデジタル変換装置がある。
【0003】
このような従来技術として、アナログデジタル変換時に生じる直流誤差を除去できるとともに、マイクロコンピュータに過大な負荷をかけることなく、検出対象の回転角度位置および回転角速度の推定値を、実際の回転角度位置および回転角速度にほぼ等しくすることができるレゾルバデジタル変換装置がある(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−162255号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来技術のレゾルバデジタル変換装置において、回転機器の回転軸の回転角度位置および回転角速度の推定値を求めるための推定器は、2つの積分器を含んで実現される。このようなレゾルバデジタル変換装置は、トラッキング方式のレゾルバデジタル変換装置と呼ばれる。
【0006】
前述のようなレゾルバデジタル変換装置を、たとえば電気エネルギで走行する鉄道車両に搭載され、車室内圧力および温度を調節する排気ファンを回転する電動機を制御する制御装置に組み込む場合を想定する。鉄道車両では、走行中に瞬停と呼ばれる、電力の供給の一時的な停止が起こることがある。このような一時的な電力の供給の停止によって、前記制御装置への電力の供給も停止するので、電力の供給が再開されたときに、レゾルバデジタル変換装置の2つの積分器における、電動機の回転軸の回転角度位置および回転角速度の推定値がともに0にリセットされた状態になる。
【0007】
しかし前記電動機の回転軸は、電力の供給が停止されている間も、慣性で回転し続けており、電力の供給が再開されたときの回転軸の回転角度位置および回転角速度は、0でない場合がある。電動機の回転軸の回転角度位置および回転角速度の推定を再開するときの、回転角度位置の推定角度初期値が、実際の回転角度位置とは大きく異なると、回転角度位置の推定値が真値に収束しなくなる。このような状態で電動機の制御を再開すると、電動機が予期しない動作に陥ることがある。
【0008】
このようなことを回避するために、電力の供給が再開されたときに、電動機への電力の供給を停止して、電動機の回転軸の回転が完全に止まってから、電動機の制御を再開する方法が考えられる。しかし電動機の回転軸の回転が完全に止まるまでに、ある程度の時間を要するだけでなく、電動機の制御を再開してから、電動機の回転軸が所定の回転角速度で回転するまでに、さらに時間を要する。
【0009】
このように前述のレゾルバデジタル変換装置において、電力の供給が再開された後に、回転機器の回転軸の少なくとも推定角度初期値を、可及的に速く、かつ実際の回転角度位置に近い値で求める技術が要求されている。
【0010】
したがって本発明の目的は、回転する検出対象の推定角度位置初期値を可及的に速く、かつ実際の回転角度位置に近い値で求めることができるレゾルバデジタル変換装置およびレゾルバデジタル変換方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータをサンプリングして、デジタルレゾルバデータに変換する変換手段と
電力の供給が再開されたとき、前記変換手段によって変換されたデジタルレゾルバデータに基づいて、回転角度位置が360度を8等分した角度範囲のいずれに含まれるか判定して回転角度位置を粗推定し、粗推定された回転角度位置を推定角度初期値に設定し、回転角度位置の粗推定を制御周期毎に行ない、所定の時刻において粗推定された回転角度位置から、その直前に粗推定された回転角度位置を減算した値を制御周期時間で除算して求められる値を、所定の時刻における回転角速度として粗推定し、粗推定された回転角速度を推定角速度初期値設定して、設定された推定角度初期値および推定角速度初期値と、変換手段によって得られたレゾルバデジタルデータとを用いて、検出対象の回転角度位置の推定値を表す推定角度位置および検出対象の回転角速度の推定値を表す推定角速度を求める推定手段とを備えることを特徴とするレゾルバデジタル変換装置である。
【0014】
本発明に従えば、変換手段は、回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータをサンプリングして、デジタルレゾルバデータに変換する。推定手段は、電力の供給が再開されたとき、デジタルレゾルバデータに基づいて、回転角度位置が360度を8等分した角度範囲のいずれに含まれるか判定して、回転角度位置を粗推定し、粗推定された回転角度位置を推定角度初期値に設定し、回転角度位置の粗推定を制御周期毎に行ない、所定の時刻において粗推定された回転角度位置から、その直前に粗推定された回転角度位置を減算した値を制御周期時間で除算して求められる値を、所定の時刻における回転角速度として粗推定し、粗推定された回転角速度を推定角速度初期値に設定する。推定手段は、このようにして設定した推定角度初期値および推定角速度初期値ならびに変換手段からのデジタルレゾルバデータに基づき、検出対象の回転角度位置の推定値を表す推定角度位置および検出対象の回転角速度の推定値を表す推定角速度を求めることができる。たとえば、ある角度範囲に含まれると判定された回転角度位置を、当該角度範囲の中間値に設定することによって、判定された回転角度位置の実際の回転角度位置に対する誤差を、±22.5度(=360度÷8÷2)以下に抑えて、実際の回転角度位置に可及的に近い値とすることができる。このように回転角度位置を判定して推定角度位置および推定角速度初期値を設定することによって、実際の回転角度位置からの誤差の小さい推定角度初期値および実際の回転角速度からの誤差の小さい推定角速度初期値を得ることができる。このような推定角度初期値および推定角速度初期値に基づくことによって、検出対象の推定角度位置および推定角速度を可及的に正確に求めることができる。
【0015】
請求項記載の本発明は、前記レゾルバは、検出対象の回転角度位置を余弦で表す第1アナログレゾルバデータおよび検出対象の回転角度位置を正弦で表す第2アナログレゾルバデータを出力する2相出力形のレゾルバであって、
変換手段は、第1アナログレゾルバデータを第1デジタルレゾルバデータに変換するとともに、第2アナログレゾルバデータを第2デジタルレゾルバデータに変換し、
推定手段は、第1デジタルレゾルバデータおよび第2デジタルレゾルバデータが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、第1デジタルレゾルバデータの絶対値と第2デジタルレゾルバデータの絶対値との大小関係を判定することによって、回転角度位置が、8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定することを特徴とする。
【0016】
本発明に従えば、変換手段は、2相出力形のレゾルバから出力される検出対象の回転角度位置を余弦で表す第1アナログレゾルバデータを第1デジタルレゾルバデータに変換するとともに、検出対象の回転角度位置を正弦で表す第2アナログレゾルバデータを第2デジタルレゾルバデータに変換する。推定手段は、第1デジタルレゾルバデータおよび第2デジタルレゾルバデータが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、第1デジタルレゾルバデータの絶対値と第2デジタルレゾルバデータの絶対値との大小関係を判定することによって、回転角度位置が、8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定する。このような第1および第2デジタルレゾルバデータに関する簡単な判定によって、推定角度初期値が8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定するので、推定角度初期値を極めて高速に設定することができる。
【0019】
請求項3記載の本発明は、回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータをサンプリングして、デジタルレゾルバデータに変換する変換手段からのデジタルレゾルバデータに基づいて電力の供給が開始されたとき回転角度位置が360度を8等分した角度範囲のいずれに含まれるか判定して回転角度位置を粗推定し、粗推定された回転角度位置を推定角度初期値に設定し、回転角度位置の粗推定を制御周期毎に行ない、所定の時刻において粗推定された回転角度位置から、その直前に粗推定された回転角度位置を減算した値を制御周期時間で除算して求められる値を、所定の時刻における回転角速度として粗推定し、粗推定された回転角速度を推定角速度初期値設定して、設定された推定角度初期値および推定角速度初期値と、変換手段によって得られたレゾルバデジタルデータとを用いて検出対象の回転角度位置の推定値を表す推定角度位置および検出対象の回転角速度の推定値を表す推定角速度を求める推定工程を含むことを特徴とするレゾルバデジタル変換方法である。
【0020】
本発明に従えば、変換手段は、回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータをサンプリングして、デジタルレゾルバデータに変換する。推定工程では、電力の供給が開始されたとき、デジタルレゾルバデータに基づいて、回転角度位置が360度を8等分した角度範囲のいずれに含まれるか判定して、回転角度位置を粗推定し、粗推定された回転角度位置を推定角度初期値に設定し、回転角度位置の粗推定を制御周期毎に行ない、所定の時刻において粗推定された回転角度位置から、その直前に粗推定された回転角度位置を減算した値を制御周期時間で除算して求められる値を、所定の時刻における回転角速度として粗推定し、粗推定された回転角速度を推定角速度初期値に設定する。推定工程では、このようにして設定した推定角度初期値および推定角速度初期値ならびに変換手段からのデジタルレゾルバデータに基づき、検出対象の回転角度位置の推定値を表す推定角度位置および検出対象の回転角速度の推定値を表す推定角速度を求めることができる。たとえば、ある角度範囲に含まれると判定された回転角度位置を、当該角度範囲の中間値に設定することによって、判定された回転角度位置の実際の回転角度位置に対する誤差を、±22.5度(=360度÷8÷2)以下に抑えて、実際の回転角度位置に可及的に近い値とすることができる。このように回転角度位置を判定して推定角度位置および推定角速度初期値を設定することによって、実際の回転角度位置からの誤差の小さい推定角度初期値および実際の回転角速度からの誤差の小さい推定角速度初期値を得ることができる。このような推定角度初期値および推定角速度初期値に基づくことによって、検出対象の推定角度位置および推定角速度を可及的に正確に求めることができる。
【0021】
請求項記載の本発明は、前記レゾルバは、検出対象の回転角度位置を余弦で表す第1アナログレゾルバデータおよび検出対象の回転角度位置を正弦で表す第2アナログレゾルバデータを出力する2相出力形のレゾルバであって、
変換手段は、第1アナログレゾルバデータを第1デジタルレゾルバデータに変換するとともに、第2アナログレゾルバデータを第2デジタルレゾルバデータに変換し、
推定工程では、第1デジタルレゾルバデータおよび第2デジタルレゾルバデータが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、第1デジタルレゾルバデータの絶対値と第2デジタルレゾルバデータの絶対値との大小関係を判定することによって、回転角度位置が、8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定することを特徴とする。
【0022】
本発明に従えば、変換手段は、2相出力形のレゾルバから出力される検出対象の回転角度位置を余弦で表す第1アナログレゾルバデータを第1デジタルレゾルバデータに変換するとともに、検出対象の回転角度位置を正弦で表す第2アナログレゾルバデータを第2デジタルレゾルバデータに変換する。推定工程では、第1デジタルレゾルバデータがおよび第2デジタルレゾルバデータが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、第1デジタルレゾルバデータの絶対値と第2デジタルレゾルバデータの絶対値との大小関係を判定することによって、回転角度位置が、8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定する。このような第1および第2デジタルレゾルバデータに関する簡単な判定によって、推定角度初期値が8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定するので、推定角度初期値を極めて高速に設定することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態のレゾルバデジタル変換装置1の構成を示すブロック図である。レゾルバデジタル変換装置1は、電動機および内燃機関などの回転機器の回転軸などの、回転する検出対象に接続されるレゾルバ30から出力されるアナログレゾルバデータを、デジタルレゾルバデータに変換して、レゾルバ30の回転子、すなわち検出対象の回転角度位置φおよび回転角速度Ψの推定値である推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める。レゾルバデジタル変換装置1は、さらに推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求めるための推定角度初期値θおよび推定角速度初期値Ωがともに0でない状態でも、適切な推定角度初期値θおよび推定角速度初期値Ωを自動的に設定して、推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求めることができる。
【0024】
レゾルバデジタル変換装置1は、第1アナログデジタル変換器2、第2アナログデジタル変換器3、マイクロコンピュータ4、カウンタ・タイミング回路40およびドライバ45を含んで構成される。以後、第1アナログデジタル変換器2および第2アナログデジタル変換器3を、第1A/D変換器2および第2A/D変換器3と略して表記することがある。またマイクロコンピュータ4を、マイコン4を略して表記することがある。本実施の形態において、変換手段は、第1A/D変換器2および第2A/D変換器3であり、推定手段は、マイコン4である。またレゾルバデジタル変換装置1は、レゾルバデジタル変換方法を行う。
【0025】
図2は、レゾルバ30の構成を模式的に示す図である。レゾルバ30は、1相励磁2相出力方式と呼ばれるレゾルバである。レゾルバ30は、R相巻線31、A相巻線32およびB相巻線33を含んで構成される。R相巻線31は、励磁巻線とも呼ばれ、回転機器の回転軸に接続される回転子(図示せず)に巻回される。したがってR相巻線31は、回転機器の回転軸が回転すると、前記回転軸とともに回転する。A相巻線32およびB相巻線33は、互いに磁気的な結合をしないように、幾何的に互いに直角になるようにして、固定子(図示せず)に巻回される。
【0026】
レゾルバデジタル変換装置1が、アナログ回路素子で構成される場合は、回路の構成上の理由から、R相巻線31には、励磁電圧として、一定の振幅で一定の角周波数の正弦波交流電圧が印加される。これによってR相巻線31が巻回される回転子は、この角周波数で励磁される。印加される正弦波交流電圧の振幅をVR0とし、角周波数をωとすると、R相巻線31に印加される励磁電圧f(t)は、次式(1)で表される。
f(t)=VR0・sinωt …(1)
【0027】
式(1)において、tは時間であり、「sin」は正弦関数であり、「・」は積の演算記号である。
【0028】
R相巻線31と、A相巻線32およびB相巻線33との間の磁気的な結合は、R相巻線31が巻回される回転子の回転角度位置φによって変化する。前述のようにA相巻線32とB相巻線33とは、幾何的に直角になるようにして固定子に巻回されているので、R相巻線31とA相巻線32との間の磁気的な結合係数MARおよびR相巻線31とB相巻線33との間の磁気的な結合係数MBRは、次式(2)で表されるような、回転子の回転角度位置φの関数となる。
【0029】
【数1】
Figure 0003794690
【0030】
式(2)において、Mは、R相巻線31の磁気軸がA相巻線32およびB相巻線33のいずれかの磁気軸と一致したときの変成比であり、正の値をとり、各巻線31,32,33を含むレゾルバ30の構造によって決定される。また式(2)において、「cos」は余弦関数である。レゾルバ30の回転子の回転角度位置φは、R相巻線31とA相巻線32との間の磁気的な結合係数MARが変成比Mに等しく、かつR相巻線31とB相巻線33との間の磁気的な結合係数MBRが0となる角度位置を基準角度位置とし、この基準角度位置において回転角度位置φが0であるとする。
【0031】
レゾルバ30の回転子の回転角度位置φが0および180度(πラジアン)となるとき、R相巻線31の磁気軸とA相巻線32の磁気軸とが一致し、R相巻線31の磁気軸とB相巻線33の磁気軸とが直交する。またレゾルバ30の回転子の回転角度位置φが90度(π/2ラジアン)および270度(3π/2ラジアン)となるとき、R相巻線31の磁気軸とA相巻線32の磁気軸とが直交し、R相巻線31の磁気軸とB相巻線33の磁気軸とが一致する。
【0032】
レゾルバ30のR相巻線31に、式(1)で表される励磁電圧f(t)を印加すると、R相巻線31まわりに磁界が形成される。このような磁界によってレゾルバ30のA相巻線32に発生する誘導起電力による電圧VおよびB相巻線33に発生する誘導起電力による電圧Vは、次式(3)で表される。
【0033】
【数2】
Figure 0003794690
【0034】
以後、レゾルバ30のA相巻線32に発生する誘導起電力による電圧Vを、A相巻線電圧Vと表記し、B相巻線33に発生する誘導起電力による電圧Vを、B相巻線電圧Vと表記することがある。
【0035】
このとき、レゾルバ30のR相巻線31が巻回される回転子の回転角度位置φは、次式(4)で表される。
φ=tan−1(V/V) …(4)
式(4)において、「tan−1」は、逆正接関数である。
【0036】
図3は、レゾルバ30のR相巻線31に式(1)で表す励磁電圧f(t)を印加したときの、A相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vの波形の一例を示すグラフである。ここで、レゾルバ30のR相巻線31に印加する式(1)で表される励磁電圧f(t)の振幅VR0は1ボルトであり、角周波数ωは62.8ラジアン毎秒である。図3において、縦軸は電圧を表し、単位はボルトであり、横軸は時間を表し、単位は秒である。
【0037】
図3において、第1曲線C1は、R相巻線31に印加する励磁電圧f(t)の波形を表す。ただし第曲線C1は、理解を容易にするために、励磁電圧f(t)に3ボルトを加算することで平行移動して、他の曲線C2,C3に重ならないようにしている。第2曲線C2は、A相巻線電圧Vの波形を表す。ただし第2曲線C2は、理解を容易にするために、A相巻線電圧Vに1ボルトを減算することで平行移動して、他の曲線C1,C3に重ならないようにしている。第3曲線C3は、B相巻線電圧Vの波形を表す。ただし第3曲線C3は、理解を容易にするために、B相巻線電圧Vに1ボルトを加算することで平行移動して、他の曲線C1,C2に重ならないようにしている。また第1直線L1は、回転子の回転角度位置φを表す。
【0038】
本実施の形態のレゾルバデジタル変換装置1においては、後述するレゾルバ30から出力される第1および第2アナログレゾルバデータが、第1および第2A/D変換器2,3によって第1および第2デジタルレゾルバデータに変換されて、マイコン4によってソフトウェア処理されるように構成されている。このようなレゾルバデジタル変換装置1のマイコン4の回路の構成を単純化するために、R相巻線31に印加する励磁電圧の波形を矩形波とする。このとき印加される矩形波の振幅をVRRとし、角周波数をωとすると、R相巻線31に印加される励磁電圧f(t)は、次式(5)で表される。
f(t)=VRR・sgn(sinωt) …(5)
【0039】
式(5)において、「sgn」は符号関数であり、sinωtが0以上になるときには+1の値を、0未満になるときには−1の値をとる。この場合も、R相巻線31とA相巻線32との間の磁気的な結合係数MARおよびR相巻線31とB相巻線33との間の磁気的な結合係数MBRは、式(2)で表される。またレゾルバ30のR相巻線31に、式(5)で表される励磁電圧f(t)を印加して、R相巻線31まわりに形成される磁界によってレゾルバ30のA相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vは、式(3)で表される。またレゾルバ30のR相巻線31が巻回される回転子の回転角度位置φは、式(4)で表される。
【0040】
図4は、レゾルバ30のR相巻線31に式(5)で表す励磁電圧f(t)を印加したときの、A相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vの波形の一例を示すグラフである。ここで、レゾルバ30のR相巻線31に印加する式(5)で表される励磁電圧f(t)の振幅VRRは1ボルトであり、角周波数ωは62.8ラジアン毎秒である。図4において、縦軸は電圧を表し、単位はボルトであり、横軸は時間を表し、単位は秒である。
【0041】
図4において、第4曲線C4は、R相巻線31に印加する励磁電圧f(t)の波形を表す。ただし第4曲線C4は、理解を容易にするために、励磁電圧f(t)に3ボルトを加算することで平行移動して、他の曲線C5,C6に重ならないようにしている。第5曲線C5は、A相巻線電圧Vの波形を表す。ただし第5曲線C5は、理解を容易にするために、A相巻線電圧Vに1ボルトを減算することで平行移動して、他の曲線C4,C6に重ならないようにしている。第6曲線C6は、B相巻線電圧Vの波形を表す。ただし第6曲線C6は、理解を容易にするために、B相巻線電圧Vに1ボルトを加算することで平行移動して、他の曲線C4,C5に重ならないようにしている。また第2直線L2は、回転子の回転角度位置φを表す。
【0042】
このようにレゾルバ30は、A相巻線32から、式(3)に表されるような、回転子の回転角度位置φを余弦で表すA相巻線電圧Vを含む第1アナログレゾルバデータを出力し、B相巻線33から、式(3)に表されるような、回転子の回転角度位置φを正弦で表すB相巻線電圧Vを含む第2アナログレゾルバデータを出力する。
【0043】
図5は、カウンタ・タイミング回路40の構成を示すブロック図である。図1も併せて参照する。カウンタ・タイミング回路40は、バイナリカウンタ41、符号生成器42、第1比較器43および第2比較器44を含んで構成されるデジタル回路である。バイナリカウンタ41は、2進カウンタとも呼ばれ、パルス発生器(図示せず)からのパルスクロック信号CLKが入力されると、そのパルス数を計数して、2進数で表されるパルス数を出力可能であり、詳細には、各桁に対応するトグル・フリップフロップ(略称:T−FF)から、桁毎に出力可能である。バイナリカウンタ41は、パルス発生器からのパルスクロック信号CLKが入力されると、最上位桁MSBに対応するT−FFから励磁電圧f(t)の波形を表すR相駆動信号を出力して、ドライバ45に与える。またバイナリカウンタ41は、パルス発生器からのパルスクロック信号CLKが入力されると、最上位桁MSBを除く桁に対応するT−FFからの信号を出力して、符号生成器42ならびに第1比較器43および第2比較器44に与える。
【0044】
符号生成器42は、バイナリカウンタ41から与えられる最上位桁MSBを除く桁に対応するT−FFからの信号、換言すればバイナリカウンタ41の下位n−1ビットの信号に基づいて、マイコン4に符号関数sgnを与える。nは、バイナリカウンタ41のビット数である。
【0045】
第1比較器43は、バイナリカウンタ41の最上位桁MSBを除く桁に対応するT−FFからの信号、換言すればバイナリカウンタ41の下位n−1ビットの信号が入力されると、入力された信号に含まれる値と、後述する予め設定される変換開始時刻を示す値Stとを比較して、入力された信号に含まれる値と変換開始時刻を示す値Stとが等しいと判断すると、変換開始信号を生成して、第1および第2A/D変換器2,3に与える。
【0046】
第2比較器44は、バイナリカウンタ41の最上位桁MSBを除く桁に対応するT−FFからの信号、換言すればバイナリカウンタ41の下位n−1ビットの信号が入力されると、入力された信号に含まれる値と、後述する予め設定される変換終了時刻を示す値Edとを比較して、入力された信号に含まれる値と変換終了時刻を示す値Edとが等しいと判断すると、変換終了信号を生成して、マイコン4に与える。
【0047】
再び図1を参照して、ドライバ45は、バッファ集積回路などの増幅回路で実現される。ドライバ45は、カウンタ・タイミング回路40のバイナリカウンタ41からの励磁電圧f(t)の波形を表すR相駆動信号によって、レゾルバ30のR相巻線31に式(5)で表される矩形波となる励磁電圧f(t)を印加可能にするように、所定の電圧に増幅して、R相巻線31に与える。ドライバ45の利得は、たとえば1でもよく、この場合、ドライバ45として、一般的に用いられるデジタル回路用素子を用いてもよい。本実施の形態において、励磁電圧f(t)は、式(1)で表されるような正弦波を扱わないので、レゾルバ30を駆動させるためのリニアアンプおよび正弦波発振回路を必要としない。
【0048】
第1A/D変換器2は、カウンタ・タイミング回路40から出力される信号に基づいて、レゾルバ30のA相巻線32から出力される第1アナログレゾルバデータをサンプリングして、第1デジタルレゾルバデータに変換して、後述するマイコン4の第1差分符号補正器5に与える。第1アナログレゾルバデータおよび第1デジタルレゾルバデータには、式(3)で表されるレゾルバ30のA相巻線電圧Vが含まれる。
【0049】
第2A/D変換器3は、カウンタ・タイミング回路40から出力される信号に基づいて、第1A/D変換器2の第1アナログレゾルバデータから第1デジタルレゾルバデータへの変換に同期して、レゾルバ30のB相巻線33から出力される第2アナログレゾルバデータをサンプリングして、第2デジタルレゾルバデータに変換して、後述するマイコン4の第2差分符号補正器6に与える。第2アナログレゾルバデータおよび第2デジタルレゾルバデータには、式(3)で表されるレゾルバ30のB相巻線電圧Vが含まれる。
【0050】
マイコン4は、第1および第2A/D変換器2,3からの第1および第2デジタルレゾルバデータに基づいて、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φの推定値である推定角度位置θを、推定角度初期値θに基づいて求めるとともに、レゾルバ30の回転子の回転角速度Ψの推定値である推定角速度Ωを、推定角速度初期値Ωに基づいて求める。マイコン4は、ソフトウェアを実行することによって実現される第1差分符号補正器5、第2差分符号補正器6、第1乗算器7、第2乗算器8、減算器9、第1積分器10、位相補償器11、加算器12、第2積分器13およびサインコサインテーブル器14を含んで構成される。
【0051】
第1差分符号補正器5および第2差分符号補正器6は、高域通過フィルタおよび同期整流器の機能を有する。第1差分符号補正器5は、カウンタ・タイミング回路40の符号生成器42から出力される信号に基づいて、第1A/D変換器2からの第1デジタルレゾルバデータに含まれる搬送波成分および直流成分を除去して、このような処理を施した第1デジタルレゾルバデータを、第1乗算器7に与える。第2差分符号補正器6は、カウンタ・タイミング回路40の符号生成器42から出力される信号に基づいて、第2A/D変換器3からの第2デジタルレゾルバデータに含まれる搬送波成分および直流成分を除去して、このような処理を施した第2デジタルレゾルバデータを、第2乗算器8に与える。
【0052】
図6は、第2差分符号補正器6における処理を説明するための図である。図6において、線L3は、レゾルバ30のB相巻線33から出力される第2アナログレゾルバデータである、式(3)に示されるB相巻線電圧Vを示す。また参照符号B,B,B,…,B,…,B14,B15に示す点は、サンプリング時刻kにおいて、前記第2アナログレゾルバデータが、第2A/D変換器3によってサンプリングされたときの、第2デジタルレゾルバデータを示す。ここでkは0以上の整数である。
【0053】
前記第2デジタルレゾルバデータに含まれる周波数成分、すなわち式(5)に示す励磁電圧f(t)を除去するために、以下に示すように、現在のサンプリング時刻kよりも1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第2デジタルレゾルバデータBk−1から、現在のサンプリング時刻kの第2デジタルレゾルバデータBを減算して、差分(Bk−1−B)を算出する。図6の破線L4は、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φが180度となることを示す。回転角度位置φが180度を超えたとき、前記差分(Bk−1−B)の符号を正から負に変える必要がある。したがって、以下に示すように、前記差分(Bk−1−B)に、現在のサンプリング時刻kの符号関数sgnを乗算して、符号を補正する。
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn >0
(B−B)・sgn =0
(B−B)・sgn <0
(B−B10)・sgn <0
(B10−B11)・sgn <0
(B11−B12)・sgn <0
(B12−B13)・sgn <0
(B13−B14)・sgn <0
(B14−B15)・sgn <0
【0054】
符号関数sgnは、カウンタ・タイミング回路40の符号生成器42から与えられ、各サンプリング時刻kにおいて、+1および−1のいずれかの値をとる。本実施の形態では、図6に示すように、サンプリング時刻kが0、2、4、6、8、10、12および14の時には、sgn=−1となり、サンプリング時刻kが1、3、5、7、9、11、13および15の時には、sgn=+1となる。このようにして、回転角度位置φが0度以上、180度未満のときに、(Bk−1−B)・sgnを0以上の値にできるとともに、回転角度位置φが180度以上、360度未満のときに、(Bk−1−B)・sgnを0未満の値にすることができる。これによって式(3)に示すB相巻線電圧Vの符号変化を、回転角度位置φの正弦sinφと同じようにすることができる。すなわちB相巻線電圧Vの符号変化への励磁電圧f(t)の影響を無くすことができる。
【0055】
これと同様の処理を、第1差分符号補正器5において、レゾルバ30のA相巻線32から出力される第1アナログレゾルバデータを第1A/D変換器2によってサンプリングしたときの、第1デジタルレゾルバデータに対して行うことができる。これによってA相巻線電圧Vの符号変化への励磁電圧f(t)の影響を無くすことができる。
【0056】
一般的にA/D変換器は、その伝達関数のゲインおよびオフセットがドリフトすることがある。このようなドリフトによって、A/D変換器から出力されるデータには、直流分誤差ΔVが含まれる。このような直流分誤差ΔVが含まれるとき、現在のサンプリング時刻kの第2デジタルレゾルバデータは、(B+ΔV)となり、現在のサンプリング時刻kから1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第2デジタルレゾルバデータは、(Bk−1+ΔV)となる。したがって現在のサンプリング時刻kから1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第2デジタルレゾルバデータBk−1から、現在のサンプリング時刻kの第2デジタルレゾルバデータBを減算して、差分(Bk−1−B)を算出することによって、A/D変換器2,3によって生じる直流分誤差ΔVを除去することができる。
【0057】
このように第1差分符号補正器5および第2差分符号補正器6は、第1および第2A/D変換器2,3から出力される第1および第2デジタルレゾルバデータに含まれる直流分誤差の除去と、高域通過フィルタリングとを同時に行うことができる。
【0058】
再び図1を参照して、第1乗算器7は、第1差分符号補正器5からの第1デジタルレゾルバデータに含まれるA相巻線電圧Vと、後述するサインコサインテーブル器14からのサインデータに含まれる推定角度位置θの正弦sinθとを乗算して、このようにして求められた値V・sinθを含む第1乗算データを減算器9に与える。第2乗算器8は、第2差分符号補正器6からの第2デジタルレゾルバデータに含まれるB相巻線電圧Vと、後述するサインコサインテーブル器14からのコサインデータに含まれる推定角度位置θの余弦cosθとを乗算して、このようにして求められた値V・cosθを含む第2乗算データを減算器9に与える。
【0059】
減算器9は、第2乗算器8からの第2乗算データに含まれる値V・cosθから第1乗算器7からの第1乗算データに含まれる値V・sinθを減算して、このようにして求められた値を含む減算器データを、第1積分器10と位相補償器11とに与える。減算器9によって求められる値は、次式(6)で表される。
【0060】
【数3】
Figure 0003794690
【0061】
式(6)において、レゾルバ30の回転子の推定角度位置θが実際の回転角度位置φに充分に近い場合には、減算器9によって求められる値は、次式(7)のように近似することができる。
・cosθ−V・sinθ≒M・f(t)・(φ−θ) …(7)
【0062】
以後、式(7)の右辺の(φ−θ)を偏差と呼ぶことがある。偏差(φ−θ)は、レゾルバ30の回転子の実際の回転角度位置φから推定角度位置θを減算した値である。本実施の形態において、レゾルバ30の回転子の推定角度位置θは実際の回転角度位置φに充分に近い、すなわち式(7)が成立するとし、減算器9から第1積分器10と位相補償器11とに与えられる減算器データには、偏差(φ−θ)が含まれるものとする。
【0063】
第1積分器10は、減算器9からの減算器データに含まれる偏差(φ−θ)を、時間に関して積分するとともに、積分ゲイン値Kを乗算し、このようにして求めた値である推定角速度Ωを含む第1積分器データを、加算器12に与えるとともに、レゾルバデジタル変換装置1の外部に出力する。位相補償器11は、減算器9からの減算器データに含まれる偏差(φ−θ)に比例ゲイン値Kを乗算し、このようにして求めた値を含む補償器データを、加算器12に与える。このように第1積分器10と位相補償器11とは、並列になっている。
【0064】
加算器12は、第1積分器10からの第1積分器データに含まれる推定角速度Ωに、位相補償器11からの補償器データに含まれる値を加算して、このようにして求めた値を含む加算器データを、第2積分器13に与える。第2積分器13は、加算器12からの加算器データに含まれる値を、時間に関して積分し、このようにして求めた値である推定角度位置θを含む第2積分器データを、サインコサインテーブル器14に与えるとともに、レゾルバデジタル変換装置1の外部に出力する。第2積分器13は、たとえば電圧制御発振器(Voltage Controlled
Oscillator ;略称:VCO)と、前記VCOによって駆動されるアップダウンカウンタとを組合わせて実現してもよい。
【0065】
サインコサインテーブル器14は、各角度に対応する正弦および余弦を記憶しており、第2積分器13からの第2積分器データに含まれる推定角度位置θに対応する正弦sinθを含むサインデータを、第1乗算器7に与えるとともに、推定角度位置θに対応する余弦cosθを含むコサインデータを、第2乗算器8に与える。
【0066】
図7は、図1における第1積分器10、位相補償器11、加算器12および積分器13を含み、推定角速度Ωを求める系と等価な等価制御系15を示すブロック図である。等価制御系15は、等価減算器16、第1積分器10、位相補償器11、加算器12および第2積分器13を含む。第1積分器10、位相補償器11、加算器12および第2積分器13は、図1に示すマイコン4における第1積分器10、位相補償器11、加算器12および第2積分器13と同様である。
【0067】
等価減算器16は、等価制御系15の外部からの回転角度位置φから、第2積分器13からの推定角度位置θを減算し、このようにして求めた値、すなわち偏差(φ−θ)を、第1積分器10と位相補償器11とに与える。第1積分器10は、減算器9からの偏差(φ−θ)を、時間に関して積分するとともに、積分ゲイン値Kを乗算して推定角速度Ωを求め、推定角速度Ωを加算器12に与えるとともに、等価制御系15の外部に出力する。位相補償器11は、減算器9からの偏差(φ−θ)に比例ゲイン値Kを乗算して得られた値K・(φ−θ)を加算器12に与える。
【0068】
加算器12は、第1積分器10からの推定角速度Ωに、位相補償器11からの値K・(φ−θ)を加算して得られた値を、第2積分器13に与える。第2積分器13は、加算器12からの値を、時間に関して積分して得られる推定角度位置θを、等価減算器16に与える。
【0069】
今、たとえば、偏差(φ−θ)を第2積分器13に与えるように等価制御系15を構成すれば、等価制御系15は、第2積分器13によって、偏差(φ−θ)を零にしよう、換言すれば推定角度位置θを実際の回転角度位置θに近づけようとする。したがって第2積分器13を適切に設定することによって、推定角度位置θを実際の回転角度位置φに追従させることができる。推定角度位置θが実際の回転角度位置φに追従すれば、第2積分器13に入力される値を、推定角速度Ωとして利用できる。
【0070】
このような構成において、推定角度位置θが実際の回転角度位置φに完全に追従する、換言すれば、偏差(φ−θ)が零になると、第2積分器13からは零の値が推定角度位置θとして出力される。通常、レゾルバ30の回転子は回転しており、回転角度位置φは常に変化しているので、偏差(φ−θ)が零になったときに、推定角度位置θが零になることを回避しなければならない。したがって第2積分器13に、零の値をとる偏差(φ−θ)が与えられることを防ぐために、第1積分器10に偏差(φ−θ)を入力させて、第1積分器10からの出力を第2積分器13に入力させる構成にする必要がある。
【0071】
このように第1積分器10と第2積分器13とが直列に接続される制御系は、ばね−質点系に等価な発振的な制御系となって、安定しない。したがって、図6に示すように、比例ゲイン器である位相補償器11を、第1積分器10に並列に接続することによって、制御系が発振しないようなダンピングを設けて、制御系を安定化することができる。図7に示す回転角度位置φを入力とし、推定角速度Ωを出力とする等価制御系15の伝達関数Ω(s)/φ(s)は、次式(8)で表される。
【0072】
【数4】
Figure 0003794690
【0073】
式(8)において、sはラプラス(Laplace)演算子であり、ωは自然角周波数であり、ζは減衰定数である。ここで、ω=K,2・ζ・ωn=Kとすれば、自然角周波数ωおよび減衰定数ζを適切に選ぶことによって、第1積分器10の積分ゲイン値Kと、位相補償器11の比例ゲイン値Kとを決定することができる。
【0074】
本実施の形態において、自然角周波数ωは、たとえばレゾルバ30の回転子が接続される回転機器の周波数応答と同程度の値としてもよい。この周波数応答と同程度の値とは、回転機器の周波数応答特性をボード線図(Bode diagram)に描いたときに、ゲインがマイナス3デシベルになるときの周波数である。ここでは自然角周波数ωは、たとえば2π・200ラジアン毎秒としてもよい。減衰定数ζは、マイコン4の演算結果が収束するような値とし、たとえば1としてもよい。
【0075】
図8は、カウンタ・タイミング回路40からR相駆動信号、変換開始信号および変換終了信号の出力タイミングを示すタイミングチャートである。ここでレゾルバ30の回転子の回転角度位置φは45度であるとする。カウンタ・タイミング回路40からドライバ45に、図8(1)の線L81に示すような矩形波のR相駆動信号が与えられると、ドライバ45は、図8(2)の線L82に示すような矩形波の励磁電圧f(t)をレゾルバ30に与える。詳細には、R相駆動信号に含まれる値が1のとき、ドライバ45は、+VRRの値の励磁電圧f(t)を出力し、R相駆動信号に含まれる値が0のとき、ドライバ45は、−VRRの値の励磁電圧f(t)を出力する。
【0076】
このように励磁電圧f(t)は、線L81,L82に示すように矩形波であり、安定した一定の電圧値+VRRおよび−VRRを半周期毎にとるので、A相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vは、図8(3)のL83および図8(4)のL84に示すように、励磁電圧f(t)が変化してからしばらく経って、安定した一定電圧値となる。したがってA相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vが、このような安定した部分で、第1および第2A/D変換器2,3によってサンプリングされるように、変換開始時刻を示す値Stを設定する。
【0077】
また第1および第2A/D変換器2,3が、カウンタ・タイミング回路40から変換開始信号を与えられてから実際にサンプリングするまでには、第1および第2A/D変換器2,3の特性によって定まる変換時間を要する。これによって変換開始時刻と変換終了時刻との時間差は、前記変換時間よりも大きくしなければならない。したがって前記変換時間に基づいて、変換終了時刻を示す値Edを設定する。
【0078】
A相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vが、安定した一定電圧値となるのは、図8(3)のL83および図8(4)のL84に示すように、励磁電圧f(t)の1周期において2回ある。したがって第1および第2A/D変換器2,3によるサンプリングも、励磁電圧f(t)の1周期において2回行われる。励磁電圧f(t)の1周期における2回のサンプリングのうちの1回は、励磁電圧f(t)が+VRRの値をとる、励磁電圧f(t)の半周期における1つの時刻において行われ、残余の1回は、1回目のサンプリングした時刻より励磁電圧f(t)の半周期後の時刻において行われる。
【0079】
このようにA相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vが、安定した一定電圧値となる、励磁電圧f(t)の1周期において等時間間隔に2回、第1および第2アナルグレゾルバデータをサンプリングすることによって、安定した第1および第2デジタルレゾルバデータを得ることができる。さらにカウンタ・タイミング回路40と第1および第2A/D変換器3,4を接続する伝送線路の特性などによってサンプリングの時間遅れが発生したとしても、一定の値をサンプリングすることができ、変換誤差を低減させることができる。
【0080】
図9は、マイコン4によるレゾルバ30の回転子の推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める手順を示すフローチャートである。図1も適宜参照する。ステップs0で、マイコン4によるレゾルバ30の回転子の推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める手順が開始されて、ステップs1に進む。
【0081】
ステップs1では、マイコン4の第1差分符号補正器5は、レゾルバ30のA相巻線32から出力される第1アナログレゾルバデータを第1A/D変換器2によって、サンプリング時刻kにおいてサンプリングしたときの、第1デジタルレゾルバデータをAとする。このときマイコン4の第2差分符号補正器6は、レゾルバ30のB相巻線33から出力される第2アナログレゾルバデータを第2A/D変換器3によって、サンプリング時刻kにおいてサンプリングしたときの、第2デジタルレゾルバデータをBとして、ステップs2に進む。
【0082】
ステップs2では、カウンタ・タイミング回路40の符号生成器42が出力するsgnが+1である場合にはステップs3に進み、前記符号生成器42が出力するsgnが−1である場合にはステップs4に進む。
【0083】
ステップs3では、第1差分符号補正器5は、現在のサンプリング時刻kの第1デジタルレゾルバデータAから、現在のサンプリング時刻kから1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第1デジタルレゾルバデータAk−1を減算した値(A−Ak−1)をレゾルバ30の回転子の回転角度位置φの余弦cosφとして、ステップs5に進む。またステップs3では、第2差分符号補正器6は、現在のサンプリング時刻kの第2デジタルレゾルバデータBから、現在のサンプリング時刻kから1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第2デジタルレゾルバデータBk−1を減算した値(B−Bk−1)をレゾルバ30の回転子の回転角度位置φの正弦sinφとして、ステップs5に進む。
【0084】
ステップs4では、第1差分符号補正器5は、現在のサンプリング時刻kから1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第1デジタルレゾルバデータAk−1から、現在のサンプリング時刻kの第1デジタルレゾルバデータAを減算した値(Ak−1−A)をレゾルバ30の回転子の回転角度位置φの余弦cosφとして、ステップs5に進む。またステップs3では、第2差分符号補正器6は、現在のサンプリング時刻kから1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第2デジタルレゾルバデータBk−1から、現在のサンプリング時刻kの第2デジタルレゾルバデータBを減算した値(Bk−1−B)をレゾルバ30の回転子の回転角度位置φの正弦sinφとして、ステップs5に進む。
【0085】
このようなステップs1〜ステップs4の手順の詳細は、前述の図6の第1および第2差分符号補正器5,6における処理の説明のとおりである。
【0086】
ステップs5では、サインコサインテーブル器14は、第2積分器13からの推定角度位置θに基づいて、推定角度位置θの正弦sinθの値を第1乗算器7に与え、推定角度位置θの余弦cosθの値を第2乗算器8に与えて、ステップs6に進む。サインコサインテーブル器14は、詳細に述べると、各推定角度位置θに対応する余弦cosθの値を表すコサインテーブルと、各推定角度位置θに対応する正弦sinθの値を表すサインテーブルとを記憶している。サインコサインテーブル器14は、第2積分器13からの推定角度位置θに基づいて、コサインテーブルのメモリアドレスθ番地を読込んで、推定角度位置θの余弦cosθを出力する。またサインコサインテーブル器14は、第2積分器13からの推定角度位置θに基づいて、サインテーブルのメモリアドレスθ番地を読込んで、推定角度位置θの正弦sinθを出力する。
【0087】
ステップs6では、第1乗算器7は、第1差分符号補正器5からの回転角度位置φの余弦cosφにサインコサインテーブル器14からの推定角度位置θの正弦sinθを乗算した値cosφ・sinθを減算器9に与える。またステップs6では、第2乗算器8は、第2差分符号補正器6からの回転角度位置φの正弦sinφにサインコサインテーブル器14からの推定角度位置θの余弦cosθを乗算した値sinφ・cosθを減算器9に与える。さらにステップsでは、第2乗算器8からの値sinφ・cosθから第1乗算器7からの値cosφ・sinθを減算した値(sinφ・cosθ−cosφ・sinθ)を、回転角度位置φと推定角度位置θとの偏差(φ−θ)として、第1積分器10と位相補償器11とに与えて、ステップs7に進む。
【0088】
ステップs7では、第1積分器10は、減算器9からの偏差(φ−θ)を時間に関して積分して、ステップs8に進む。
【0089】
ステップs8では、第1積分器10は、偏差(φ−θ)を積分した値に、定数K・τを乗算して推定角速度Ωを算出し、加算器12に与えるとともに、マイコン4の外部に出力して、ステップs9に進む。ここでτはマイコン4の制御周期を表す。
【0090】
ステップs9では、第2積分器13は、加算器12によって求められる、第1積分器10からの推定角速度Ωに、位相補償器11からの値K・(φ−θ)を加算した値を積分して、推定角度位置θを求めて、サインコサインテーブル器14に与えるとともに、マイコン4の外部に出力して、ステップs10に進む。
【0091】
ステップs10では、マイコン4は、ステップs1で設定したサンプリング時刻kにおける第1デジタルレゾルバデータAおよび第2デジタルレゾルバデータをBを、次回の処理のためにkの値を1つ減らして、Ak−1およびBk−1として、ステップs11に進み、全ての手順を終了する。
【0092】
このように図9に示す手順を表すプログラムをマイコン4に実行させることによって、マイコン4は、図1に示すような構成を実現することができる。このような手順を、マイコン14の制御周期τ毎に実行する。
【0093】
図10は、レゾルバデジタル変換装置1への電源の供給が停止してから電源の供給が再開されたときの処理手順を示すフローチャートである。レゾルバデジタル変換装置1への電源の供給が停止してから電源の供給が再開されると、ステップt0で処理手順が開始されて、ステップt1に進む。
【0094】
ステップt1では、マイコン4は、第1積分器10および第2積分器13の初期化を行って、ステップt2に進む。
【0095】
推定工程であるステップt2では、マイコン4は、第1および第2差分符号補正器5,6からの第1および第2デジタルレゾルバデータに基づいて、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φの粗推定を行って、ステップt3に進む。
【0096】
図11は、図10に示すフローチャートのステップt2における回転角度位置φの粗推定の方法を説明するための図である。まずマイコン4は、第1差分補正器5からの第1デジタルレゾルバデータに含まれる、レゾルバ30のA相巻線電圧Vに基づいて、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φの余弦cosφを抽出する。またマイコン4は、第2差分補正器6からの第2デジタルレゾルバデータに含まれる、レゾルバ30のB相巻線電圧Vに基づいて、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φの正弦sinφを抽出する。
【0097】
続いて、マイコン4は、抽出したレゾルバ30の回転子の回転角度位置φの正弦sinφおよび余弦cosφが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定する。さらにマイコン4は、抽出したレゾルバ30の回転子の回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|と余弦cosφの絶対値|cosφ|との大小関係を判定する。演算記号「| |」は絶対値を示す。
【0098】
回転角度位置φの正弦sinφが0以上であって余弦cosφが0よりも大きく、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|未満である、すなわち次の3つの不等式
sinφ≧0,cosφ>0,|sinφ|<|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、0度以上、45度未満の角度領域である第1角度領域P1に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第1角度領域P1に含まれる所定の角度位置、たとえば22.5度とする。
【0099】
回転角度位置φの正弦sinφが0以上であって余弦cosφが0よりも大きく、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|以上である、すなわち次の3つの不等式
sinφ≧0,cosφ>0,|sinφ|≧|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、45度以上、90度未満の角度領域である第2角度領域P2に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第2角度領域P2に含まれる所定の角度位置、たとえば67.5度とする。
【0100】
回転角度位置φの正弦sinφが0よりも大きく余弦cosφが0以下であり、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|よりも大きい、すなわち次の3つの不等式
sinφ>0,cosφ≦0,|sinφ|>|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、90度以上、135度未満の角度領域である第3角度領域P3に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第3角度領域P3に含まれる所定の角度位置、たとえば112.5度とする。
【0101】
回転角度位置φの正弦sinφが0よりも大きく余弦cosφが0以下であり、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|以下である、すなわち次の3つの不等式
sinφ>0,cosφ≦0,|sinφ|≦|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、135度以上、180度未満の角度領域である第4角度領域P4に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第4角度領域P4に含まれる所定の角度位置、たとえば157.5度とする。
【0102】
回転角度位置φの正弦sinφが0以下であって余弦cosφが0未満であり、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|未満である、すなわち次の3つの不等式
sinφ≦0,cosφ<0,|sinφ|<|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、180度以上、225度未満の角度領域である第5角度領域P5に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第5角度領域P5に含まれる所定の角度位置、たとえば202.5度とする。
【0103】
回転角度位置φの正弦sinφが0以下であって余弦cosφが0未満であり、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|以上である、すなわち次の3つの不等式
sinφ≦0,cosφ<0,|sinφ|≧|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、225度以上、270度未満の角度領域である第6角度領域P6に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第6角度領域P6に含まれる所定の角度位置、たとえば247.5度とする。
【0104】
回転角度位置φの正弦sinφが0未満であって余弦cosφが0以上であり、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|よりも大きい、すなわち次の3つの不等式
sinφ<0,cosφ≧0,|sinφ|>|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、270度以上、315度未満の角度領域である第7角度領域P7に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第7角度領域P7に含まれる所定の角度位置、たとえば292.5度とする。
【0105】
回転角度位置φの正弦sinφが0未満であって余弦cosφが0以上であり、かつ回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|が余弦cosφの絶対値|cosφ|以下である、すなわち次の3つの不等式
sinφ<0,cosφ≧0,|sinφ|≦|cosφ|
を全て満たすと判定された場合、回転角度位置φは、図11に示すような、315度以上、360度未満の角度領域である第8角度領域P8に含まれる。このとき、マイコン4は、回転角度位置φを、第8角度領域P8に含まれる所定の角度位置、たとえば337.5度とする。
【0106】
このように図10に示すフローチャートのステップt2では、マイコン4は、第1および第2デジタルレゾルバデータに含まれる回転角度位置φの余弦cosφおよび正弦sinφに基づいて、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φが、360度を8等分した第1〜第8角度範囲P1〜P8のいずれに含まれるかを判定して、回転角度位置φを粗推定する。このような回転角度位置φの粗推定は、制御周期τ毎に、複数回行う。
【0107】
ステップt2において、回転角度位置φが含まれる角度範囲P1〜P8の中間の値を、回転角度位置φとして粗推定することによって、粗推定した回転角度位置φの実際の回転角度位置φからの誤差を、±22.5度(=45度÷2)以下にすることができる。また回転角度位置φが含まれる角度範囲P1〜P8の中間の値に限ることなく、たとえば各角度範囲P1〜P8の最小の角度位置の値を、回転角度位置φとして粗推定してもよい。
【0108】
ステップt3では、マイコン4は、レゾルバ30の回転子の回転角速度Ψの粗推定を行って、ステップt4に進む。レゾルバ30の回転子の回転角速度Ψの粗推定は、ステップt2において粗推定された、制御周期τ毎の複数の回転角度位置φを用いて行う。たとえば、ある時刻において粗推定された回転角度位置φから、その直前に粗推定された回転角度位置φm−1を減算した値を、制御周期τで除算して求められる値を、ある時刻における回転角速度Ψとして粗推定する。
【0109】
ステップt4では、マイコン4は、ステップt2で粗推定された回転角度位置φを、推定角度位置θを求めるための推定角度初期値θとして、第2積分器13に設定するとともに、ステップt3で粗推定された回転角速度Ψを、推定角速度Ωを求めるための推定角速度初期値Ωとして、第1積分器10に設定して、ステップt5に進む。
【0110】
ステップt5では、マイコン4は、第1積分器10に設定される推定角速度初期値Ω0および第2積分器13に設定される推定角度初期値θ、ならびに第1および第2差分符号補正器5,6からの第1および第2デジタルレゾルバデータに基づいて、推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める処理を開始して、ステップt6に進む。
【0111】
ステップt6では、マイコン4は、推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める処理が開始されてから予め定める収束時間が経過したか否かを判断し、経過したと判断するとステップt7に進む。ステップt6は、初期化されてから予め定める収束時間が経過したと判断されるまで繰返される。このように推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める処理を開始してから前記収束時間が経過するまでに、マイコン4は、レゾルバ30の回転子の推定角度位置θおよび推定角速度Ωを、実際の回転角度位置θおよび回転角速度Ψに追従させることができる。
【0112】
ステップt7では、マイコン4は、デジタルで表される推定角度位置φおよび推定角速度Ωを、レゾルバデジタル変換装置1の外部に出力して、ステップt8に進み、全ての手順を終了する。
【0113】
図12は、種々の値の推定角度位置初期値θを設定したときの、マイコン4によって求められた推定角度位置θの時間変化を示すグラフである。図12において、縦軸は推定角度位置θを表し、単位はラジアン[rad]であり、横軸は時間を表し、単位は秒である。曲線121は、推定角度初期値θ=−0.5[rad]に設定したときの推定角度位置θの時間変化を表す。曲線122は、推定角度初期値θ=−3.0[rad]に設定したときの推定角度位置θの時間変化を表す。曲線123は、推定角度初期値θ=−5.0[rad]に設定したときの推定角度位置θの時間変化を表す。曲線124は、推定角度初期値θ=−4.0[rad]に設定したときの推定角度位置θの時間変化を表す。
【0114】
適切な推定角度初期値θを設定すれば、曲線121に示すように、推定角度位置θは時間が進むにつれて真値、すなわち実際の回転角度位置φに収束する。しかし、不適切な推定角度初期値θを設定すれば、曲線122,123,124に示すように、推定角度位置θは時間が進むにつれて真値に収束しない。
【0115】
図13は、種々の値の推定角度位置初期値θを設定したときの、マイコン4によって求められた推定角度位置θに関する位相面解析結果を示すグラフである。図14は、図13のセクションXIV付近を拡大して示す図である。図13および図14において、縦軸は推定角速度Ωを表し、単位は回転毎分[rpm]であり、横軸は推定角度位置θを表し、単位はラジアン[rad]である。曲線131は、推定角度初期値θ=−1.5[rad]に設定したときの位相面軌道を表す。曲線132は、推定角度初期値θ=−2.0[rad]に設定したときの位相面軌道を表す。曲線133は、推定角度初期値θ=−2.5[rad]に設定したときの位相面軌道を表す。曲線134は、推定角度初期値θ=−3.0[rad]に設定したときの位相面軌道を表す。曲線135は、推定角度初期値θ=−5.0[rad]に設定したときの位相面軌道を表す。曲線136は、推定角度初期値θ=−4.5[rad]に設定したときの位相面軌道を表す。
【0116】
適切な推定角度初期値θを設定すれば、曲線131,132,133に示すように、推定角度位置θおよび推定角速度Ωは時間が進むにつれて真値、すなわち実際の回転角度位置φおよび回転角速度Ψに収束する。しかし、不適切な推定角度初期値θを設定すれば、曲線134,135,136に示すように、推定角度位置θおよび推定角速度Ωは時間が進むにつれて真値に収束しない。
【0117】
レゾルバデジタル変換装置1のマイコン4は、前述の図10に示すフローチャートの手順を実行することによって、図12における曲線121および図13における曲線131,132,133に示すような、推定角度位置θおよび推定角速度Ωが実際の回転角度位置φおよび回転角速度Ψに収束可能な推定角度初期値θおよび推定角速度初期値Ωを、自動的に設定することができる。
【0118】
以上のように本実施の形態のレゾルバデジタル変換装置1およびレゾルバデジタル変換方法によれば、実際の回転角度位置φからの誤差の小さい推定角度初期値θに基づいて、レゾルバ30の回転子の推定角度位置θおよび推定角速度Ωを可及的に正確かつ高速に求めることができる。
【0119】
レゾルバ30からの第1および第2アナログレゾルバデータに含まれる、式(3)で示されるA相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vに基づいて、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φは、式(4)を用いて算出することは可能ではある。しかし式(4)の右辺にある(V/V)のような除算は、数値計算学上、非常に計算量が多くなり、マイコン4への負荷の増大だけでなく、計算速度の低下を引き起こす。これによって推定角度位置初期値θおよび推定角速度初期値Ωを求めるのに時間がかかってしまう。
【0120】
本実施の形態では、レゾルバ30の回転子の回転角度位置φを、図11に示すように、式(3)に含まれる回転角度位置φの正弦sinφおよび余弦cosφが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、回転角度位置φの正弦sinφの絶対値|sinφ|と余弦cosφの絶対値|cosφ|との大小関係を判定するという、単純な比較計算だけで、回転角度位置φを粗推定することができる。これによって前述の式(4)を用いる場合とは比較にならないくらいに、極めて高速に回転角度位置φを推定できる。
【0121】
図15は、レゾルバデジタル変換装置1を備える電動機制御装置50を示す制御ブロック図である。電動機制御装置50は、本実施の形態のレゾルバデジタル変換装置1によって求められるモータ70のロータに接続されるレゾルバ30からのデータに基づく推定角度位置θおよび推定角速度Ωを用いて、モータ70を制御する。モータ70は、たとえば3相同期モータなどの交流(AC)サーボモータである。
【0122】
電動機制御装置50は、レゾルバデジタル変換装置1、レゾルバ30、位置減算器51、位置ループ補償器52、速度減算器53、速度ループ補償器54、電流減算器55、電流ループ補償器56、パルス幅変調回路57、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ58、電流センサ59およびA/Dコンバータ60を含んで構成される。レゾルバデジタル変換装置1およびレゾルバ30に関しては、前述したとおりであるので、ここで再度詳細には説明しない。レゾルバ30の回転子は、モータ70のロータに接続される。レゾルバデジタル変換装置1のマイコン4は、電動機制御装置50に搭載されるマイコンであってもよい。電動機制御装置50に搭載されるマイコンは、たとえば32ビットのRISC(Reduced
Instruction Set Computer)型のマイクロプロセッサであってもよい。
【0123】
位置減算器51は、外部からの角度位置指令値から、レゾルバデジタル変換装置1からの推定角度位置θを減算して角度位置偏差を求め、角度位置偏差を位置ループ補償器52に与える。ここでレゾルバデジタル変換装置1からの推定角度位置θは、モータ70のロータの推定角度位置θである。位置ループ補償器52は、位置減算器51からの角度位置偏差を零にするような角速度指令値を速度減算器53に与える。
【0124】
速度減算器53は、位置ループ補償器52からの角速度指令値から、レゾルバデジタル変換装置1からの推定角速度Ωを減算して角速度偏差を求め、角速度偏差を速度ループ補償器54に与える。ここでレゾルバデジタル変換装置1からの推定角速度Ωは、モータ70のロータの推定角速度Ωである。速度ループ補償器54は、速度減算器53からの角速度偏差を零にするような電流指令値を電流減算器55に与える。
【0125】
電流減算器55は、速度ループ補償器54からの電流指令値から、A/Dコンバータ60からの電気子電流値を減算して電流偏差を求め、電流偏差を電流ループ補償器56に与える。電流ループ補償器56は、電流減算器55からの電流偏差を零にするような変調信号およびキャリア信号を含む電流制御信号パルス幅変調回路57に与える。
【0126】
パルス幅変調(Pulse Width Modulation;略称:PWM)回路57は、電流ループ補償器56からの電流制御信号に基づいて、PWMパルスを発生し、PWMパルスを絶縁ゲートバイポーラトランジスタ58に与える。レゾルバデジタル変換装置1のマイコン4の制御周期τは、PWM回路57がPWMパルスを発生する周期と同程度とする。絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate
Bipolar Transistor ;略称:IGBT)58は、PWM回路57からのPWMパルスに基づいて、図示しない交流電源からの電流を、互いに120度の位相差となる3相の電流に変換して、モータ70に与える。
【0127】
電流センサ59は、IGBT58からモータ70に与えられる3相の電流のうち、いずれか2相の電流の値を含む検出電流データを検出して、A/Dコンバータ60に与える。A/Dコンバータ60は、電流センサ59からの検出電流データに対して、アナログ−デジタル変換をして、デジタルの電気子電流値を電流減算器55に与える。
【0128】
このように電動機制御装置50では、モータ70のロータの推定角度位置θおよび推定角速度Ω、ならびにモータ70に与える電流をフィードバックすることによって、モータ70の制御を行う。
【0129】
図16は、モータ70のロータの回転角度位置φ=45度として、レゾルバ30のR相巻線31に振幅VRRが2.5ボルト、周波数が5.7キロヘルツの矩形波の励磁電圧f(t)を印加したときの、レゾルバ30のA相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vの波形を示す図である。図16において、縦軸は電圧を表し、単位はボルト[V]であり、横軸は時間tを表し、単位はマイクロ秒[μsec]である。曲線161は、レゾルバ30のR相巻線31に印加する励磁電圧f(t)を表す。曲線162は、レゾルバ30のA相巻線電圧Vを表す。曲線163は、レゾルバ30のB相巻線電圧Vを表す。
【0130】
図17は、モータ70のロータの回転角速度Ψを1500[rpm]として、モータ70のロータの推定角度位置θの波形と、第2差分符号補正器6からのB相巻線電圧Vを含む第2デジタルレゾルバデータをデジタル−アナログ変換したときの波形とを示す図である。図17において、曲線171に対応する縦軸は推定角度位置θを表し、単位は度であり、曲線172に対応する縦軸は電圧を表し、単位はボルトであり、横軸は時間tを表し、単位はミリ秒[msec]である。曲線171は、モータ70のロータの推定角度位置θを表す。曲線172は、レゾルバ30のB相巻線電圧Vを表す。レゾルバデジタル変換装置1は、図17に示すように、モータ70のロータを高速回転させたときでも、レゾルバ30からのレゾルバデータを安定して取得できるとともに、ロータの推定角度位置θを安定して出力することができる。
【0131】
図18は、電動機制御装置50における制御手順を示すタイミングチャートである。電動機制御装置50への電力の供給が停止したとき、レゾルバ30はアナログレゾルバデータを出力できない異常状態となり、電動機制御装置50のモータ70の制御は停止する。このときモータ70のロータは、回転していたときの惰性で回りつづけている。
【0132】
電動機制御装置50への電力の供給が再開されると、レゾルバ30はアナログレゾルバデータの出力を再開して正常状態となり、レゾルバデジタル変換装置1は、レゾルバ30から出力されるアナログレゾルバデータに基づいて、モータ70のロータの回転角度位置φおよび回転角速度Ψの粗推定を開始する。このとき電動機制御装置50によるモータ70の制御は行われない。
【0133】
レゾルバデジタル変換装置1は、モータ70のロータの回転角度位置φおよび回転角速度Ψの粗推定が終了すると、粗推定によって設定された推定角度位置初期値θおよび推定角速度初期値Ωならびにレゾルバ30からのアナログレゾルバデータに基づいて、モータ70のロータの推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める。
【0134】
レゾルバデジタル変換装置1がモータ70のロータの推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求めることを開始してから、収束時間が経過すると、電動機制御装置50は、モータ70の制御を再開する。電動機制御装置50への電力の供給が再開されてから、電動機制御装置50がモータ70の制御を再開するまでのレゾルバデジタル変換装置1は、図10のフローチャートに示す手順に従う。
【0135】
図19は、モータ70のロータの回転角速度Ψが3000[rpm]のときに、電動機制御装置50への電力の供給が停止したときの、レゾルバデジタル変換装置1によって求められるロータの推定角度位置θおよび推定角速度Ωを示す図である。図19において、曲線191に対応する縦軸は推定角度位置θを表し、単位はラジアン[rad]であり、曲線192に対応する縦軸は推定角速度Ωを表し、単位は回転毎分[rpm]であり、横軸は時間を表し、単位はミリ秒[msec]である。曲線191は、レゾルバデジタル変換装置1によって求められるロータの推定角度位置θを表す。曲線192は、レゾルバデジタル変換装置1によって求められるロータの推定角速度Ωを表す。
【0136】
レゾルバデジタル変換装置1が、モータ70のロータの回転角度位置φの粗推定をしている間、図11に示すように、回転角度位置φが8つの領域P1〜P8のいずれに含まれるかを判定して、8つの値に設定するので、図19の曲線193に示すように、推定角度位置θが階段状に変化する。
【0137】
以上のように図15に示す電動機制御装置50は、レゾルバデジタル変換装置1からの高精度の推定角度位置θおよび推定角速度Ωをフィードバックするので、電力の供給が一時的に停止してから供給が再開したときに、モータ70の回転を止めたり、モータ70の回転が止まるまで待ったりすることなく、モータ70の制御を極めて迅速に再開できるとともに、高精度に行うことができる。
【0138】
本実施の形態においてレゾルバ30は、1相励磁2相出力方式のレゾルバであるとしたけれども、これに限ることはない。たとえばレゾルバの回転子の巻線に電流を流すためスリップリングおよびブラシを、回転変圧器に置き換えたブラシレスタイプのレゾルバであってもよい。また回転子に巻線が巻回されない構成のリラクタンス型レゾルバと呼ばれるレゾルバでもよい。すなわちレゾルバ30は、電気的には見かけ上、1相励磁2相出力方式と同等の電気的特性を有するレゾルバであればよい。
【0140】
【発明の効果】
請求項記載の本発明によれば、実際の回転角度位置からの誤差の小さい推定角度初期値および実際の回転角速度からの誤差の小さい推定角速度初期値に基づいて、検出対象の推定角度位置および推定角速度を可及的に正確に求めることができる。
【0141】
請求項記載の本発明によれば、推定角度初期値を極めて高速に設定することができる。
【0143】
請求項記載の本発明によれば、実際の回転角度位置からの誤差の小さい推定角度初期値および実際の回転角速度からの誤差の小さい推定角速度初期値に基づいて、検出対象の推定角度位置および推定角速度を可及的に正確に求めることができる。
【0144】
請求項記載の本発明によれば、推定角度初期値を極めて高速に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施の一形態のレゾルバデジタル変換装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】レゾルバ30の構成を模式的に示す図である。
【図3】レゾルバ30のR相巻線31に式(1)で表す励磁電圧f(t)を印加したときの、A相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vの波形の一例を示すグラフである。
【図4】レゾルバ30のR相巻線31に式(5)で表す励磁電圧f(t)を印加したときの、A相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vの波形の一例を示すグラフである。
【図5】カウンタ・タイミング回路40の構成を示すブロック図である。
【図6】第2差分符号補正器6における処理を説明するための図である。
【図7】図1における第1積分器10、位相補償器11、加算器12および積分器13を含み、推定角速度Ωを求める系と等価な等価制御系15を示すブロック図である。
【図8】カウンタ・タイミング回路40からR相駆動信号、変換開始信号および変換終了信号の出力タイミングを示すタイミングチャートである。
【図9】マイコン4によるレゾルバ30の回転子の推定角度位置θおよび推定角速度Ωを求める手順を示すフローチャートである。
【図10】レゾルバデジタル変換装置1への電源の供給が停止してから電源の供給が再開されたときの処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図10に示すフローチャートのステップt2における回転角度位置φの粗推定の方法を説明するための図である。
【図12】種々の値の推定角度位置初期値θを設定したときの、マイコン4によって求められた推定角度位置θの時間変化を示すグラフである。
【図13】種々の値の推定角度位置初期値θを設定したときの、マイコン4によって求められた推定角度位置θに関する位相面解析結果を示すグラフである。
【図14】図13のセクションXIV付近を拡大して示す図である。
【図15】レゾルバデジタル変換装置1を備える電動機制御装置50を示す制御ブロック図である。
【図16】モータ70のロータの回転角度位置φ=45度として、レゾルバ30のR相巻線31に振幅VRRが2.5ボルト、周波数が5.7キロヘルツの矩形波の励磁電圧f(t)を印加したときの、レゾルバ30のA相巻線電圧VおよびB相巻線電圧Vの波形を示す図である。
【図17】モータ70のロータの回転角速度Ψを1500[rpm]として、モータ70のロータの推定角度位置θの波形と、第2差分符号補正器6からのB相巻線電圧Vを含む第2デジタルレゾルバデータをデジタル−アナログ変換したときの波形とを示す図である。
【図18】電動機制御装置50における制御手順を示すタイミングチャートである。
【図19】モータ70のロータの回転角速度Ψが3000[rpm]のときに、電動機制御装置50への電力の供給が停止したときの、レゾルバデジタル変換装置1によって求められるロータの推定角度位置θおよび推定角速度Ωを示す図である。
【符号の説明】
1 レゾルバデジタル変換装置
2 第1A/D変換器
3 第2A/D変換器
4 マイコン
30 レゾルバ

Claims (4)

  1. 回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータをサンプリングして、デジタルレゾルバデータに変換する変換手段と
    電力の供給が再開されたとき、前記変換手段によって変換されたデジタルレゾルバデータに基づいて、回転角度位置が360度を8等分した角度範囲のいずれに含まれるか判定して回転角度位置を粗推定し、粗推定された回転角度位置を推定角度初期値に設定し、回転角度位置の粗推定を制御周期毎に行ない、所定の時刻において粗推定された回転角度位置から、その直前に粗推定された回転角度位置を減算した値を制御周期時間で除算して求められる値を、所定の時刻における回転角速度として粗推定し、粗推定された回転角速度を推定角速度初期値設定して、設定された推定角度初期値および推定角速度初期値と、変換手段によって得られたレゾルバデジタルデータとを用いて、検出対象の回転角度位置の推定値を表す推定角度位置および検出対象の回転角速度の推定値を表す推定角速度を求める推定手段とを備えることを特徴とするレゾルバデジタル変換装置。
  2. 前記レゾルバは、検出対象の回転角度位置を余弦で表す第1アナログレゾルバデータおよび検出対象の回転角度位置を正弦で表す第2アナログレゾルバデータを出力する2相出力形のレゾルバであって、
    変換手段は、第1アナログレゾルバデータを第1デジタルレゾルバデータに変換するとともに、第2アナログレゾルバデータを第2デジタルレゾルバデータに変換し、
    推定手段は、第1デジタルレゾルバデータおよび第2デジタルレゾルバデータが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、第1デジタルレゾルバデータの絶対値と第2デジタルレゾルバデータの絶対値との大小関係を判定することによって、回転角度位置が、8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定することを特徴とする請求項1記載のレゾルバデジタル変換装置。
  3. 回転する検出対象に接続されるレゾルバから出力されるアナログレゾルバデータをサンプリングして、デジタルレゾルバデータに変換する変換手段からのデジタルレゾルバデータに基づいて電力の供給が開始されたとき回転角度位置が360度を8等分した角度範囲のいずれに含まれるか判定して回転角度位置を粗推定し、粗推定された回転角度位置を推定角度初期値に設定し、回転角度位置の粗推定を制御周期毎に行ない、所定の時刻において粗推定された回転角度位置から、その直前に粗推定された回転角度位置を減算した値を制御周期時間で除算して求められる値を、所定の時刻における回転角速度として粗推定し、粗推定された回転角速度を推定角速度初期値設定して、設定された推定角度初期値および推定角速度初期値と、変換手段によって得られたレゾルバデジタルデータとを用いて検出対象の回転角度位置の推定値を表す推定角度位置および検出対象の回転角速度の推定値を表す推定角速度を求める推定工程を含むことを特徴とするレゾルバデジタル変換方法。
  4. 前記レゾルバは、検出対象の回転角度位置を余弦で表す第1アナログレゾルバデータおよび検出対象の回転角度位置を正弦で表す第2アナログレゾルバデータを出力する2相出力形のレゾルバであって、
    変換手段は、第1アナログレゾルバデータを第1デジタルレゾルバデータに変換するとともに、第2アナログレゾルバデータを第2デジタルレゾルバデータに変換し、
    推定工程では、第1デジタルレゾルバデータおよび第2デジタルレゾルバデータが、正の値、負の値および0のいずれであるかを判定するとともに、第1デジタルレゾルバデータの絶対値と第2デジタルレゾルバデータの絶対値との大小関係を判定することによって、回転角度位置が、8つの角度範囲のいずれに含まれるかを判定することを特徴とする請求項3記載のレゾルバデジタル変換方法。
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