図1は、本発明の実施の一形態の制御装置1、誘導電動機2、レゾルバ3およびドライバ18の構成を示すブロック図である。制御装置1は、誘導電動機2の回転子に接続されるレゾルバ3から与えられる回転子の回転状態である回転角度φを表す第1アナログ回転情報、および制御装置1に与えられる角速度指令値ΩREF1に基づいて、誘導電動機2の回転子の回転状態を制御し、誘導電動機2を駆動する。制御装置1は、主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6およびプリント基板を含んで構成される。主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6は、プリント基板に実装される。プリント基板には、導電性のプリント配線が形成されており、主制御装置4と第1および第2副制御装置5,6とは、プリント配線によって電気的に接続される。主制御装置4と第1および第2副制御装置5,6とを電気的に接続するプリント配線を第1伝送路8と記載する。主制御装置4とレゾルバ3とは、プリント配線と導電性のケーブルとを含む第2伝送路9によって電気的に接続される。
主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6は、それぞれマイクロコンピュータによって実現される。
誘導電動機2は、本実施の形態では9相の誘導電動機であり、回転子と固定子とを含んで構成される。誘導電動機2の固定子には、第1〜第3U相巻線、第1〜第3V相巻線および第1〜第3W相巻線が巻回される。
主制御装置4は、第1U相巻線、第1V相巻線および第1W相巻線に電力を供給する。第1副制御装置5は、第2U相巻線、第2V相巻線および第2W相巻線に電力を供給する。第2副制御装置6は、第3U相巻線、第3V相巻線および第3W相巻線に電力を供給する。第1U相巻線に印加される電圧を、第1U相巻線電圧U1と記載し、第1V相巻線に印加される電圧を、第1V相巻線電圧V1と記載し、第1W相巻線に印加される電圧を、第1W相巻線電圧W1と記載する。また第2U相巻線に印加される電圧を、第2U相巻線電圧U2と記載し、第2V相巻線に印加される電圧を、第2V相巻線電圧V2と記載し、第2W相巻線に印加される電圧を、第2W相巻線電圧W2と記載する。また第3U相巻線に印加される電圧を、第3U相巻線電圧U3と記載し、第3V相巻線に印加される電圧を、第3V相巻線電圧V3と記載し、第3W相巻線に印加される電圧を、第3W相巻線電圧W3と記載する。
図2は、第1U相巻線電圧U1の位相が0(rad)のときの、各巻線に印加される電圧をフェーザ表示した図である。主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6は、各巻線に互いに予め定める位相関係を有する電圧を印加し、各巻線に電流を流すことによって回転磁界を発生させ、回転子の回転状態を制御する。具体的には、第1V相巻線電圧V1の位相は、第1U相巻線電圧U1の位相よりも第1の角度Θ1(rad)進み、第1W相巻線電圧W1の位相は、第1U相巻線電圧U1の位相よりも第2の角度Θ2(rad)進む。第1の角度Θ1は、2・π/3である。第2の角度Θ2は、4・π/3である。第2V相巻線電圧V2の位相は、第2U相巻線電圧U2の位相よりも第1の角度Θ1(rad)進み、第2W相巻線電圧W2の位相は、第2U相巻線電圧U2の位相よりも第2の角度Θ2(rad)進む。第3V相巻線電圧V3の位相は、第3U相巻線電圧U3の位相よりも第1の角度Θ1(rad)進み、第3W相巻線電圧W3の位相は、第3U相巻線電圧U3の位相よりも第2の角度Θ2(rad)進む。また、第2U相巻線電圧U2の位相は、第1U相巻線電圧U1よりも第3の角度Θ3(rad)進み、第3U相巻線電圧U3の位相は、第1U相巻線電圧U1の位相よりも第3の角度Θ3(rad)遅れる。第3の角度Θ3は、2・π/9である。「π」は、円周率であり、「・」は積の演算記号である。
このように主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6が、互いに同期して回転子に巻回される巻線に電圧を印加するために、主制御装置4は、第1および第2副制御装置5,6に、同期するための第2アナログ回転情報を第1伝送路8を介して与え、第1および第2副制御装置6は、主制御装置4から与えられる第2アナログ回転情報に基づいて、各巻線に電圧を印加する。
図3は、回転情報取得手段であるレゾルバ3の構成を模式的に示す図である。レゾルバ3は、誘導電動機2の回転子に接続され、回転子の回転角度φの正弦sinφおよび余弦cosφを含む第1アナログ回転情報を第2伝送路9を介して後述する主制御装置4の回転情報算出部7に与える。レゾルバ3は、1相励磁2相出力方式と呼ばれるレゾルバである。レゾルバ3は、R相巻線11、A相巻線12およびB相巻線13を含んで構成される。R相巻線11は、励磁巻線とも呼ばれ、回転子に巻回される。R相巻線11の磁気軸は、回転子が回転すると、回転子の回転軸に垂直な仮想一平面上を回転子の回転軸を中心に回転する。A相巻線12およびB相巻線13は、互いに磁気的な結合をしないように、各磁気軸に垂直な仮想一平面が互いに直交するようにして、固定子に巻回される。
R相巻線11に、角周波数がωで、振幅がVRの矩形波の励磁電圧f(t)を印加すると、R相巻線11のまわりに磁界が形成される。励磁電圧f(t)は、次式(1)で表される。
f(t)=VR・sgn(sinωt) …(1)
式(1)において、tは時間であり、「sin」は正弦関数である。また式(1)において、「sgn」は、符号関数であり、sinωtが0以上になるときには、+1の値を、sinωtが0未満になるときには−1の値をとる。
R相巻線11に励磁電圧f(t)を印加し、R相巻線11のまわりに磁界が形成されると、誘導起電力によってA相巻線12に電圧VAが誘起され、B相巻線13に電圧VBが誘起される。なお本実施の形態においてレゾルバ3のA相巻線12に誘起される電圧VAをA相巻線電圧VAと記載し、B相巻線13に誘起される電圧VBをB相巻線電圧VBと記載する。A相巻線電圧VAおよびB相巻線電圧VBは、次式(2)で表され、回転子の角度位置φの関数となる。
式(2)において、「cos」は余弦関数である。また式(2)において、Mは、R相巻線11の磁気軸がA相巻線12およびB相巻線13のいずれかの磁気軸と一致したときの変成比である。変成比Mは、正の値をとり、A相巻線12およびB相巻線13を含むレゾルバ3の構造によって決定される。
式(2)からM・f(t)を消去すると、回転子の回転角度φは、次式(3)で表される。
φ=tanー1(VA/VB) …(3)
式(3)において、「tan−1」は、逆正接関数である。A相巻線電圧VAおよびB相巻線電圧VBを測定すると、式(3)から回転子の回転角度φを求めることができる。
このようにレゾルバ3は、A相巻線12から、式(2)に表されるような、回転子の回転角度φを正弦で表すA相巻線電圧VA、および回転子の回転角度φを余弦で表すB相巻線電圧VBを含む第1アナログ回転情報を出力する。第1アナログ回転情報のうち、回転子の回転角度φを正弦で表すA相巻線電圧VAを含む情報を、第1アナログ正弦値データと記載する。第1アナログ回転情報のうち、回転子の回転角度φを余弦で表すB相巻線電圧VBを含む情報を、第1アナログ余弦値データと記載する。
主制御装置4は、ソフトウェアを実行することによって実現される第1インバータ駆動手段と、誘導電動機2に電力を供給する第1インバータ回路51Aとを含む。第1インバータ駆動手段は、第1アナログ回転情報を、デジタル値で表される第1デジタル回転情報に変換する第1アナログ/デジタル変換部に相当する回転情報算出部7と、回転子が予め設定された回転状態となるように第1インバータ回路51Aを駆動する第1インバータ駆動部と、第1デジタル回転情報に基づいて、第2アナログ回転情報を生成し、伝送路を介して第2アナログ回転情報を第2インバータ駆動手段に与えるデジタル/アナログ変換部とを含む。第1インバータ駆動部は、角度指令値算出器19、第1V/F演算器41A、第1PWM変調率生成器42A、第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45A、第1〜第3乗算器46A,47A,48Aおよび第1比較器54Aを含んで構成される。また伝送路を介して第2アナログ回転情報を第2インバータ駆動手段に与えるデジタル/アナログ変換部は、第4正弦値生成器52、第1余弦値生成器53、第1デジタル/アナログ変換器55および第2デジタル/アナログ変換器56を含んで構成される。前記角速度指令値ΩREF1は、主制御装置4の回転情報算出部7に与えられる。なお本実施の形態においてデジタル/アナログ変換器をD/A変換器と略して記載する場合がある。
図4は、回転情報算出部7の構成を示すブロック図である。回転情報算出部7は、レゾルバ3から与えられるアナログ値の第1アナログ正弦値データおよび第1アナログ余弦値データに基づいて、回転子の回転角度φの推定値である第1推定角度値θ1、および回転子の回転角速度Ψの推定値である第1推定角速度値Ω1を算出する。回転情報算出部7によって算出される第1推定角度θ1および第1推定角速度Ω1は、デジタル値である。
回転情報算出部7は、第1アナログ/デジタル変換器14A、第2アナログ/デジタル変換器15A、カウンタ・タイミング回路17、第1同期整流器21、第2同期整流器22、第4乗算器23A、第5乗算器24A、第1減算器25A、第1積分器26A、第2積分器27A、第1位相補償器31A、第1加算器32A、第5正弦値生成器33A、および第2余弦値生成器34Aを含んで構成される。なお本実施の形態においてアナログ/デジタル変換器を、A/D変換器と略して記載する場合がある。
カウンタ・タイミング回路17は、ドライバ18に励磁電圧f(t)の波形を表すR相駆動信号を与える。またカウンタ・タイミング回路17は、第1同期整流器21および第2同期整流器22にR相駆動信号に同期した符号関数sgnを表す符合信号を与える。またカウンタ・タイミング回路17は、第1A/D変換器14Aおよび第2A/D変換器15AにR相駆動信号に同期したタイミング信号を与える。
ドライバ18は、バッファ集積回路などの増幅回路で実現される。ドライバ18は、カウンタ・タイミング回路17から与えられる励磁電圧f(t)の波形を表すR相駆動信号に基づいて、R相巻線11に式(1)で表される矩形波となる励磁電圧f(t)を印加可能にするように所定の電圧に増幅して、R相巻線11に与える。ドライバ18の利得は、たとえば1でもよい。本実施の形態において、励磁電圧f(t)は、正弦波ではなく矩形波であるので、レゾルバ3を駆動させるためのリニアアンプおよび正弦波発振回路を必要としない。
第1A/D変換器14Aは、カウンタ・タイミング回路17から与えられるタイミング信号に基づいて、A相巻線12から与えられる第1アナログ正弦値データをサンプリングして、第1デジタル正弦値データに変換し、変換した第1デジタル正弦値データを第1同期整流器21に与える。第1デジタル正弦値データおよび第1アナログ正弦値データには、式(2)で表されるレゾルバ3のA相巻線電圧VAが含まれる。
第2A/D変換器15Aは、カウンタ・タイミング回路17から与えられるタイミング信号に基づいて、B相巻線13から与えられる第1アナログ余弦値データをサンプリングして、第1デジタル余弦値データに変換し、変換した第1デジタル余弦値データを第2同期整流器22に与える。第1デジタル余弦値データおよび第1アナログ余弦値データには、式(2)で表されるレゾルバ3のB相巻線電圧VBが含まれる。
一般にA/D変換器は、その伝達関数のゲインおよびオフセットがドリフトすることがある。このようなドリフトによって、A/D変換器から出力されるデータには、直流分誤差ΔVが含まれる。したがって、第1および第2A/D変換器14A,15Aから第1および第2同期整流器21,22にそれぞれ与えられる第1デジタル正弦値データおよび第1デジタル余弦値データには、直流分誤差ΔVが含まれる。
第1および第2同期整流器21,22は、高域通過フィルタおよび同期整流器の機能を有する。第1同期整流器21は、カウンタ・タイミング回路17から与えられる符号信号に基づいて、第1A/D変換器14Aから与えられる第1デジタル正弦値データに含まれる搬送波成分および直流成分を除去し、このような処理を施した第1同期整流器データを、第4乗算器23Aに与える。第2同期整流器22は、カウンタ・タイミング回路17から与えられる符号信号に基づいて、第2A/D変換器15Aから与えられる第1デジタル余弦値データに含まれる搬送波成分および直流成分を除去し、このような処理を施した第2同期整流器データを、第5乗算器24Aに与える。搬送波成分とは、式(1)に示す励磁電圧f(t)のことである。第1および第2同期整流器21,22は、直流成分を除去するので、第1デジタル正弦値データおよび第1デジタル余弦値データに含まれる直流分誤差ΔVは、第1および第2同期整流器21,22を通過することによって除去される。
第1デジタル正弦値データに含まれる搬送波成分、すなわち励磁電圧f(t)を除去するために、第1同期整流器21は、現在のサンプリング時刻kよりも1サンプリング前のサンプリング時刻(k−1)の第1デジタル正弦値データAk−1から、現在のサンプリング時刻kの第1デジタル正弦値データAkを減算し、この差分(Ak−1−Ak)に現在のサンプリング時刻kの符号関数sgnを乗算した値(Ak−1−Ak)・sgnを算出し、このようにして算出した値(Ak−1−Ak)・sgnを含む第1同期整流器データを第4乗算器23Aに与える。サンプリングは、励磁電圧f(t)の1周期のうちに2回行われる。1回は、励磁電圧f(t)が正の値をとる半周期内の時刻にサンプリングし、もう1回は、励磁電圧f(t)が負の値をとる半周期内の時刻にサンプリングする。サンプリングの時間間隔は、およそ励磁電圧f(t)の半周期である。サンプリング時刻kの符号関数sgnは、カウンタ・タイミング回路17から与えられる。これによって、第1デジタル正弦値データに含まれる搬送波成分、すなわち励磁電圧f(t)を除去することができる。第1同期整流器21によって算出される値(Ak−1−Ak)・sgnは、回転角度φの正弦sinφを表す。
また、現在のサンプリング時刻kの第1デジタル正弦値データAk、およびサンプリング時刻(k−1)の第1デジタル正弦値データAk−1には、直流分誤差ΔVが含まれるが、差分(Ak−1−Ak)には、それぞれに含まれる直流分誤差ΔVが打ち消し合うので、直流分誤差ΔVは含まれない。これによって、第2同期整流器22は、第1デジタル正弦値データに含まれる直流分誤差ΔVを除去することができる。第2同期整流器22によって算出される値は、回転子の回転角度φの余弦cosφを表す。
第2同期整流器22は、第2A/D変換器15Aから与えられる第1デジタル余弦値データに対して、第1同期整流器21と同様の処理を行う。これによって、B相巻線電圧ABから励磁電圧f(t)を除き、また第2A/D変換器15Aによって第1アナログ余弦値データから第1デジタル余弦値データに変換するときに生じる直流分誤差ΔVの影響を除去することができる。
第4乗算器23Aは、第1同期整流器21から与えられる回転子の回転角度φの正弦sinφと、後述する第2余弦値生成器34Aから与えられる回転子の第1推定角度値θ1の余弦cosθ1とを乗算して、このようにして求められた値sinφ・cosθ1を含む第4乗算器データを第1減算器25Aに与える。第5乗算器24Aは、第2同期整流器22から与えられる回転子の回転角度φの余弦cosφと、後述する第5正弦値生成器33Aから与えられる回転子の推定角度位置の正弦sinθ1とを乗算して、このようにして求められた値cosφ・sinθ1を含む第5乗算器データを第1減算器25Aに与える。
第1減算器25Aは、第4乗算器23Aから与えられる第4乗算器データに含まれる値sinφ・cosθ1から、第5乗算器24Aから与えられる第5乗算器データに含まれる値cosφ・sinθ1を減算して、このようにして求められた値を含む減算器データを、第1積分器26Aおよび第1位相補償器31Aに与える。第1減算器25Aによって求められる値は、次式(4)で表される。
sinφ・cosθ1−cosφ・sinθ1=sin(φ−θ1) …(4)
式(4)において、回転子の第1推定角度値θ1が、回転子の実際の回転角度φに十分近い場合には、回転角度φから第1推定角度値θ1を減算した値(φ−θ1)は、十分小さいので、式(4)は、次式(5)のように近似することができる。
sin(φ−θ1)≒φ−θ1 …(5)
なお本実施の形態において式(5)の右辺の(φ−θ1)を偏差と記載することがある。本実施の形態において、回転子の第1推定角度値θ1は、実際の回転角度φに十分近く、式(5)の近似が成立するとし、第1減算器25Aから第1積分器26Aおよび第1位相補償器31Aに与えられる減算器データには、偏差(φ−θ1)が含まれる。
第1積分器26Aは、第1減算器25Aから与えられる減算器データに含まれる偏差(φ−θ1)を時間に関して積分して、積分ゲイン値KIを乗算し、このようにして求めた値である第1推定角速度値Ω1を含む第1積分器データを、第1加算器32Aに与える。実際には第1積分器26Aは、偏差(φ−θ1)に積分ゲイン値KIを乗算した値KI・(φ−θ1)と、前回求めた第1推定角速度値とを加算した値を、第1推定角速度値Ω1として算出する。第1位相補償器31Aは、第1減算器25Aから与えられる減算器データに含まれる偏差(φ−θ1)に比例ゲイン値KPを乗算し、このようにして求めた値を含む補償器データを、第1加算器32Aに与える。このように、第1積分器26Aと第1位相補償器31Aとは、並列になるように構成される。
第1加算器32Aは、第1積分器26Aから与えられる第1積分器データに含まれる第1推定角速度値Ω1に、第1位相補償器31Aから与えられる補償器データを加算して、このようにして求めた値を含む第1加算器データを、第2積分器27Aに与える。第2積分器27Aは、第1加算器32Aから与えられる第1加算器データに含まれる値を時間に関して積分し、このようにして求めた値である第1推定角度値θ1を含む第2積分器データを、第5正弦値生成器33A、第2余弦値生成器34A、第4正弦値生成器52および第1余弦値生成器53に与える。
第5正弦値生成器33Aは、各角度に対応する正弦値を記憶しており、第2積分器27Aから与えられる第2積分器データに含まれる第1推定角度値θ1に対応する正弦sinθ1を含む第5正弦値データを第5乗算器24Aに与える。第2余弦値生成器34Aは、各角度に対応する余弦値を記憶しており、第2積分器27Aから与えられる第2積分器データに含まれる第1推定角度値θ1に対応する余弦cosθ1を含む第2余弦値データを第4乗算器23Aに与える。
図5は、図4における第1積分器26A、第1位相補償器31A、第1加算器32Aおよび第2積分器27Aを含み、第1推定角速度値Ω1を求める系と等価な等価制御系35を示すブロック図である。等価制御系35は、等価減算器36、第1積分器26A、第1位相補償器31A、第1加算器32Aおよび第2積分器27Aを含む。第1積分器26A、第1位相補償器31A、第1加算器32Aおよび第2積分器27Aは、図4に示す第1積分器26A、第1位相補償器31A、第1加算器32Aおよび第2積分器27Aとそれぞれ同様である。
等価減算器36は、等価制御系35の外部から与えられる回転子の回転角度φから、第2積分器27Aから与えられる第1推定角度値θ1を減算し、このようにして求めた値、すなわち偏差(φ−θ1)を、第1積分器26Aおよび第1位相補償器31Aに与える。
回転角度φを入力とし、第1推定角速度値Ω1を出力とする等価制御系35の伝達関数Ω(s)/φ(s)は、図5において表される伝達関数を整理すると次式(6)で表される。
式(6)において、sはラプラス(Laplace)演算子であり、ωnは自然角周波数であり、ζは減衰定数である。ここでωn 2=KIとし、2・ζ・ωn=KPとすれば、自然角周波数ωnおよび減衰定数ζを適切に選ぶことによって、第1積分器26Aの積分ゲイン値KIと、第1位相補償器31Aの比例ゲイン値KPとを決定することができる。積分ゲイン値KIと、比例ゲイン値KPとは、第1推定角度値θ1と、回転子の回転角度φとの偏差が早くゼロに収束し、かつ第1推定角速度値Ω1と回転子の回転角速度Ψとの偏差が早くゼロに収束するように選ばれる。
本実施の形態において、自然角周波数ωnは、たとえば回転子が接続される誘導電動機2の周波数応答と同程度の値としてもよい。この周波数応答と同程度の値とは、誘導電動機の周波数応答特性をボード線図(bode diagram)に描いたときに、ゲインがマイナス3デシベル(−3db)になるときの周波数である。減衰定数ζは、主制御装置4の演算結果が収束するような値とし、たとえば1としてもよい。
等価制御系35の伝達関数は、式(6)で表されるように、2次遅れ要素となる。つまり、回転情報算出部7の伝達関数は、2次遅れ要素となる。2次遅れ要素は、1次遅れ要素に比べて、高周波数の入力に対して過剰に反応しない。したがって、回転情報算出部7は、低域通過フィルタを構成する。これによって、第1アナログ回転情報が、第2伝送路9を介して主制御装置4に伝わる間に、高周波数のノイズが重畳したとしても、回転情報算出部7は、重畳した高周波数のノイズを除去することができる。第1アナログ回転情報に重畳する高周波数のノイズは、主に、第1〜第3インバータ回路51A,51B,51Cを構成するトランジスタが、オンからオフまたはオフからオンに切替わるときに生じる。トランジスタがオンからオフ、またはオフからオンに切替わる周期は、誘導電動機2の回転子が回転する周期よりも早いので、主に第1アナログ回転情報に重畳するノイズの周波数は、第1推定角度値θ1および第1推定角速度値Ω1の周波数よりも高い。回転情報算出部7は、高周波数のノイズを除去するので、回転情報算出部7から出力される第1推定角度値θ1は、回転子の回転角度φに十分近い値であり、第1推定角速度値Ω1は、回転子の回転角速度Ψに十分近い値である。
回転情報算出部7は、レゾルバ3から与えられる第1アナログ回転情報から、回転子の第1推定角度値θ1を算出して、第4正弦値生成器52および第1余弦値生成器53に与える。
本実施の形態では、誘導電動機2に印加する1次電圧の振幅を1次電圧の周波数で除した値V/Fが、予め定められた値となるように誘導電動機2に電力を供給し、回転子の回転状態を制御する。図6は、誘導電動機2に与える1次電圧の振幅と、1次電圧の周波数との関係を表すグラフである。第1V/F演算器41Aは、主制御装置4の外部から与えられる角速度指令値ΩREF1に基づいて、第1インバータ回路51Aから誘導電動機2に印加すべき1次電圧の周波数を算出する。次に、第1V/F演算器41は、算出した1次電圧の周波数から、1次電圧の振幅を1次電圧の周波数で除した値V/Fが予め定められた値となる1次電圧の振幅の値を算出し、算出した値である第1V/Fデータを、第1PWM変調率生成器42Aに与える。1次電圧の振幅とは、誘導電動機2に印加される1次電圧の波形が正弦波と仮定したときの、1次電圧の振幅である。また1次電圧の周波数とは、1次電圧の波形が正弦波と仮定したときの、1次電圧の周波数である。
角度指令値算出器19は、主制御装置4の外部から与えられる角速度指令値ΩREF1を時間に関して積分することによって角度指令値θREF1を算出し、算出した角度指令値θREF1を第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45Aに与える。
第1正弦値生成器43Aは、角度指令値算出器19から与えられる角度指令値θREF1の正弦sinθ1を求め、このようにして求められた値sinθ1を含む第1正弦値データを第1乗算器46Aに与える。第2正弦値生成器44Aは、角度指令値算出器19から与えられる角度指令値θREF1から(2・π/3)を減算した値の正弦sin(θ1−2・π/3)を求め、このようにして求めた値sin(θ1−2・π/3)を含む第2正弦値データを第2乗算器47Aに与える。第3正弦値生成器45Aは、角度指令値算出器19から与えられる角度指令値θREF1から(4・π/3)を減算した値の正弦sin(θ1−4・π/3)を求め、このようにして求められた値sin(θ1−4・π/3)を含む第3正弦値データを第3乗算器48Aに与える。
第1PWM変調率生成器42Aは、第1V/F演算器41Aから与えられる第1V/Fデータに基づいて、誘導電動機2に印加する電圧の変調率ηを求め、このようにして求めた変調率ηを第1〜第3乗算器46A,47A,48Aに与える。
第1乗算器46Aは、第1PWM変調率生成器42Aから与えられる変調率ηと第1正弦値生成器43Aから与えられる第1正弦値データに含まれる値sinθ1とを乗算して、このようにして求められた値η・sinθ1を含む第1信号波データを第1比較器54Aに与える。第2乗算器47Aは、第1PWM変調率生成器42Aから与えられる変調率ηと第2正弦値生成器44Aから与えられる第2正弦値データに含まれる値sin(θ1−2・π/3)とを乗算して、このようにして求められた値η・sin(θ1−2・π/3)を含む第2信号波データを第1比較器54Aに与える。第3乗算器48Aは、第1PWM変調率生成器42Aから与えられる変調率ηと第3正弦値生成器45Aから与えられる第3正弦値データに含まれる値sin(θ1−4・π/3)とを乗算して、このようにして求められた値η・sin(θ1−4・π/3)を含む第3信号波データを第1比較器54Aに与える。
第1比較器54Aは、第1信号波データに含まれる値η・sinθ1、第2信号波データに含まれる値η・sin(θ1−2・π/3)および第3信号波データに含まれる値η・sin(θ1−4・π/3)と、主制御装置4のタイマによって生成される搬送波データとを比較して、第1インバータ回路51Aを駆動する6つのPWMパルスを生成し、第1インバータ回路51Aに与える。
図7は、第1インバータ回路51Aの構成を模式的に示す図である。第1インバータ回路51Aは、電源部57とインバータ部58とを含んで構成される。
電源部57は、3相ダイオードブリッジによって実現される。電源部57は、主制御装置4の外部から供給される交流電圧を整流し、インバータ部58に直流電圧を与える。インバータ部58は、第1〜第6絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate
Bipolar Transistor;略称IGBT)61,62,63,64,65,66と、第1〜第6還流ダイオード71,72,73,74,75,76とを含んで構成される。
第1〜第6IGBT61,62,63,64,65,66の各ゲートGには、第1比較器54Aから与えられる6つのPWMパルスがそれぞれ入力される。
電源部57の陽極と、第1IGBT61のコレクタCと、第1還流ダイオード71のカソードKと、第3IGBT63のコレクタCと、第3還流ダイオード73のカソードKと、第5IGBT65のコレクタCと、第5還流ダイオード75のカソードKとは、電気的に接続される。電源部57の陰極と、第2IGBT62のエミッタEと、第2還流ダイオード72のアノードAと、第4IGBT64のエミッタEと、第4還流ダイオード74のアノードAと、第6IGBT66のエミッタEと、第2還流ダイオード72のアノードAとは、電気的に接続される。第1IGBT61のエミッタEと、第1還流ダイオード71のアノードAと、第2IGBT62のコレクタCと、第2還流ダイオード72のカソードKとは、電気的に接続され、第1U相巻線に接続される。第3IGBT63のエミッタEと、第3還流ダイオード73のアノードAと、第4IGBT64のコレクタCと、第4還流ダイオード74のカソードKとは、電気的に接続され、第1V相巻線に接続される。第5IGBT65のエミッタEと、第5還流ダイオード75のアノードAと、第6IGBT66のコレクタCと、第6還流ダイオード76のカソードKとは、電気的に接続され、第1W相巻線に接続される。第1IGBT61のエミッタEから第1U相巻線に第1U相巻線電圧U1を与え、第3IGBT63のエミッタEから第1V相巻線に第1V相巻線電圧V1を与え、第5IGBT65のエミッタEから第1W相巻線に第1W相巻線電圧W1を与える。
このように、第1インバータ回路51Aは、第1比較器54Aから与えられるPWMパルスに基づいて、第1U相巻線に第1U相巻線電圧U1を与え、第1V相巻線に第1V相巻線電圧V1を与え、第3W相巻線に第3W相巻線電圧W1を与える。前述したように、第1U相巻線電圧U1の位相、第1V相巻線V1の位相、および第1W層巻線電圧W1の位相は、互いにそれぞれ第1の角度Θ1(rad)異なる。
第4正弦値生成器52は、回転情報算出部7から与えられる第1推定角度値θ1の正弦sinθ1を含む第4正弦値データを第1D/A変換器55に与える。第1余弦値生成器53は、回転情報算出部7から与えられる第1推定角度値θ1の余弦cosθ1を含む第1余弦値データを第2D/A変換器56に与える。
第1D/A変換器55は、後述する第4および第6A/D変換器14B,14Cと第1伝送路8を介して電気的に接続される。第1D/A変換器55は、第4正弦値生成器52から与えられる第1推定角度値θ1の正弦sinθ1を含む第4正弦値データを、デジタル値からアナログ値に変換し、このように変換した値sinθ1を含む第2アナログ正弦値データを、第1伝送路8を介して第4および第6A/D変換器14B,14Cに与える。第2D/A変換器56は、後述する第3および第5A/D変換器15B,15Cと第1伝送路8を介して電気的に接続される。第2D/A変換器56は、第1余弦値生成器53から与えられる第1推定角度値θ1の余弦cosθ1を含む第1余弦値データを、デジタル値からアナログ値に変換し、このように変換した値cosθ1を含む第2アナログ余弦値データを、第1伝送路8を介して第3および第5A/D変換器15B,15Cに与える。このように主制御装置4は、第1伝送路8を介して第1副制御装置5および第2副制御装置6に回転子の回転状態を表す第2アナログ回転情報が与えられる。第2アナログ回転情報は、第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データを含む。
第1副制御装置5は、主制御装置4と同様の構成であるので、対応する部分については、主制御装置4と同一の数字に添字Bを付して記載する。第1副制御装置5は、ソフトウェアを実行することによって実現される第1θ復元器83B、第2加算器84B、第2V/F演算器41B、第2PWM変調率生成器42B、第6正弦値生成器43B、第7正弦値生成器44B、第8正弦値生成器45B、第6乗算器46B、第7乗算器47B、第8乗算器48Bおよび第2比較器54Bと、第2インバータ回路51B、第3A/D変換器15B、および第4A/D変換器14Bとを含んで構成される。第1副制御装置5は、主制御装置4から与えられる第1推定角度値θ1の正弦sinθ1を含む第2アナログ正弦値データと、第1推定角度値θ1の余弦cosθ1を含む第2アナログ余弦値データとに基づいて、第2U相巻線に第2U相巻線電圧U2を与え、第2V相巻線に第2V相巻線電圧V2を与え、第2W相巻線に第2W相巻線電圧W2を与える。
第3A/D変換器15Bは、第2D/A変換器56から与えられる第2アナログ余弦値データに含まれる第1推定角度値θ1の余弦cosθ1を、アナログ値からデジタル値に変換し、このように変換した値cosθ1を含む第2デジタル余弦値データを、第1θ復元器83Bに与える。第4A/D変換器14Bは、第1D/A変換器55から与えられる第2アナログ正弦値データに含まれる第1推定角度値θ1の正弦sinθ1を、アナログ値からデジタル値に変換し、このように変換した値sinθ1を含む第2デジタル正弦値データを、第1θ復元器83Bに与える。
第1θ復元器83Bは、第3および第4A/D変換器14B,15Bから与えられる第1推定角度値θ1の正弦sinθ1と第1推定角度値θ1の余弦cosθ1とに基づいて、第2推定角速度値Ω2を角速度指令値ΩREF2として算出するとともに、第2推定角度値θ2を角度指令値θREF2として算出する。第1θ復元器83Bは、算出した第2推定角速度値Ω2を第2V/F演算器41Bに与え、第2推定角度値θ2を第2加算器84Bに与える。
図8は、第1θ復元器83Bの構成を示すブロック図である。第1θ復元器83Bは、回転情報算出部7と同様の構成であるので、対応する部分については、同一の数字に添字Bを付して記載し、重複する説明は、省略する。第1θ復元器83Bは、第9乗算器23Bと、第10乗算器24Bと、第2減算器25Bと、第3積分器26Bと、第4積分器27Bと、第2位相補償器31Bと、第3加算器32Bと、第9正弦値生成器33Bと、第3余弦値生成器34Bとを含んで構成される。図8に示す第9乗算器23B、第10乗算器24B、第2減算器25B、第3積分器26B、第4積分器27B、第2位相補償器31B、第3加算器32B、第9正弦値生成器33Bおよび第3余弦値生成器34Bは、図4に示す第4乗算器23A、第5乗算器24A、第1減算器25A、第1積分器26A、第2積分器27A、第1位相補償器31A、第1加算器32A、第5正弦値生成器33Aおよび第2余弦値生成器34Aにそれぞれ対応する。第1θ復元器83Bは、回転情報算出部7の構成から、第1A/D変換器14A、第2A/D変換器15A、カウンタ・タイミング回路17、第1同期整流器21および第2同期整流器22を除いた構成である。
第1θ復元器83Bの第9乗算器23Bに第1推定角度値θ1の正弦sinθ1が与えられ、第1θ復元器83Bの第10乗算器24Bに第1推定角度値θ1の余弦cosθ1が与えられると、第3積分器26Bは、第2V/F演算器41Bに回転子の回転速度の推定値である第2推定角速度値Ω2を角速度指令値ΩREF2として与え、第4積分器27Bは、第2加算器84Bに回転子の推定角度である第2推定角度値θ2を角度指令値θREF2として与える。
第1θ復元器83Bによって生成される回転子の回転角度Ψの推定値である第2推定角度値θ2は、主制御装置4から第1伝送路8を介して与えられる第1推定角度値θ1に基づいて生成されるので、第1推定角度値θ1から遅れるが、その差はごく僅かであり、誘導電動機2の制御にほとんど影響を与えない程度である。
第1θ復元器83Bは、前述した回転情報算出部7と同様の構成であるので、低域通過フィルタの機能を有し、高周波数のノイズを除去することができる。したがって、第1θ復元器83Bは、第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データが主制御装置4から第1伝送路8を介して第1副制御装置5に伝達されるときに重畳される高周波数のノイズを除去することができる。第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データに重畳される高周波数のノイズは、主に、第1〜第3インバータ回路51A,51B,51Cを構成するトランジスタがオンからオフまたはオフからオンに切替わるときに生じる。トランジスタがオンからオフ、またはオフからオンに切替わる周期は、誘導電動機2の回転子が回転する周期よりも早いので、主に第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データが主制御装置4から第1伝送路8を介して第1副制御装置5に伝達されるときに重畳するノイズの周波数は、第1推定角度値θ1および第1推定角速度値Ω1の周波数よりも高い。第1θ復元器83Bは、高周波数のノイズを除去することができるので、第1θ復元器83Bから出力される第2推定角度値θ2は、回転子の回転角度φに十分近い値であり、第2推定角速度Ω2は、回転子の回転角速度Ψに十分近い値である。
第2加算器84Bは、第1θ復元器83Bから与えられる角度指令値θREF2である第2推定角度値θ2に第3の角度Θ3、つまり2・π/9を加算して、このように加算した値を含む第2加算器データを第6〜第8正弦値生成器43B,44B,45Bにそれぞれ与える。
第2V/F演算器41Bは、前述の第1V/F演算器41Aと同様の処理を行う。第1V/F演算器41Aは、角速度指令値ΩREF1に基づいて第1V/Fデータを算出するのに対して、第2V/F演算器41Bは、角速度指令値ΩREF2である第2推定角速度値Ω2に基づいて第2V/Fデータを算出する。
第1副制御装置5の第2PWM変調率生成器42B、第6〜第8正弦値生成器43B,44B,45B、第2比較器54B、および第6〜第8乗算器46B,47B,48Bは、前述した主制御装置4の第1PWM変調率生成器42A、第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45A、第1比較器54Aおよび第1〜第3乗算器46A,47A,48Aとそれぞれ同様の処理を行う。
第2インバータ回路51Bは、第1インバータ回路51Aと同様の構成である。第2インバータ回路51Bは、第2比較器54Bから与えられる6つのPWM変調パルスに基づいて、第2U相巻線に第2U相巻線電圧U2を与え、第2V相巻線に第2V相巻線電圧V2を与え、第2W相巻線に第2W相巻線電圧W2を与える。第2U相巻線電圧U2の位相、第2V相巻線V2の位相および第2W層巻線電圧W2の位相は、互いにそれぞれ第1の角度Θ1(rad)異なる。また、第2加算器84Bから、第6〜第8正弦値生成器43B,44B,45Bにそれぞれ与えられる値θ2は、第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45Aにそれぞれ与えられる第1推定角度値θ1よりも第3の角度Θ3大きいので、第2U相巻線電圧U2の位相は、前述したように、第1U相巻線電圧U1の位相より第3の角度Θ3(rad)進む。
第2副制御装置6は、第1副制御装置5と同様の構成であるので、対応する部分については、同一の数字に添字Cを付して記載する。第2副制御装置6は、ソフトウェアを実行することによって実現される第2θ復元器83C、第4加算器84C、第3V/F演算器41C、第3PWM変調率生成器42C、第10正弦値生成器43C、第11正弦値生成器44C、第12正弦値生成器45C、第11乗算器46C、第12乗算器47C、第13乗算器48C、第3比較器54Cと、第3インバータ回路51C、第5A/D変換器15Cおよび第6A/D変換器14Cとを含んで構成される。第2副制御装置6は、主制御装置4から与えられる第1推定角度値θ1の正弦sinθ1を含む第2アナログ正弦値データと、第1推定角度値θ1の余弦cosθ1を含む第2アナログ余弦値データとに基づいて、第3U相巻線に第3U相巻線電圧U3を与え、第3V相巻線に第3V相巻線電圧V3を与え、第3W相巻線に第3W相巻線電圧W3を与える。第2副制御装置6は、前述した第1副制御装置5と同様の構成であり、重複する説明は省略する。
第2副制御装置6の、第5A/D変換器15C、第6A/D変換器14C、第2θ復元器83C、第4加算器84C、第3V/F演算器41C、第3PWM変調率生成器42C、第10正弦値生成器43C、第11正弦値生成器44C、第12正弦値生成器45C、第11乗算器46C、第12乗算器47C、第13乗算器48C、第3比較器54Cおよび第3インバータ回路51Cは、第1副制御装置5の第3A/D変換器15B、第4A/D変換器14B、第1θ復元器83B、第2加算器84B、第2V/F演算器41B、第2PWM変調率生成器42B、第6正弦値生成器43B、第7正弦値生成器44B、第8正弦値生成器45B、第6乗算器46B、第7乗算器47B、第8乗算器48B、第2比較器54Bおよび第2インバータ回路51Bにそれぞれ対応する。
第1副制御装置5の第2加算器84Bに対応する第2副制御装置6の第4加算器84Cは、第2θ復元器83Cから与えられる角度指令値θREF2である第2推定角度値θ2と第3の角度Θ3の負値、つまり(−2・π/9)とを加算した第4加算器データを第10〜第12正弦値生成器43C,44C,45Cにそれぞれ与える。
第3インバータ回路51Cは、第3比較器54Cから与えられるPWM変調パルスに基づいて、第3U相巻線に第3U相巻線電圧U3を与え、第3V相巻線に第3V相巻線電圧V3を与え、第3W相巻線に第3W相巻線電圧W3を与える。第3U相巻線電圧U3の位相、第3V相巻線V3の位相および第3W層巻線電圧W3の位相は、互いに第1の角度Θ1(rad)異なる。また、第4加算器84Cから、第10〜第12正弦値生成器43C,44C,45Cにそれぞれ与えられる値θ2は、第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45Aにそれぞれ与えられる第1推定角度値θ1よりも2・π/9小さく、第6〜第8正弦値生成器43B,44B,45Bに与えられる第2加算器データに含まれる値θ2よりも4・π/9小さいので、第3U相巻線電圧U3の位相は、前述したように、第1U相巻線電圧U1の位相より第3の角度Θ3(rad)、つまり2・π/9(rad)遅れ、第2U相巻線電圧U2の位相より第3の角度Θ3の2倍、つまり4・π/9(rad)遅れる。
第2アナログ/デジタル変換部は、第3A/D変換器15B、第4A/D変換器14B、第5A/D変換器15C、および第6A/D変換器14Cを含んで実現される。また第1インバータ回路51Aと同期して誘導電動機2に電力を供給する第2インバータ回路は、第2および第3インバータ回路51B,51Cを含んで実現される。また第2および第3インバータ回路51B,51Cを第1インバータ回路51Aと同期して駆動する第2インバータ駆動部は、第1および第2θ復元器83B,83Cと、第2および第3V/F演算器41B,41Cと、第2および第3PWM変調率生成器42B,42Cと、第6および第10正弦値生成器43B,43Cと、第7および第11正弦値生成器44B,44Cと、第8および第12正弦値生成器45B,45Cと第6および第11乗算器46B,46Cと、第7および第12乗算器47B,47Cと、第8および第13乗算器48B,48Cと、第2および第3比較器54B,54Cと、第2および第4加算器84B,84Cとを含んで実現される。また推定角度値算出部および推定角速度値算出部は、第1および第2θ復元器83B,83Cによって実現される。
以上述べたように、第1および第2副制御装置5,6が、主制御装置4と同期して誘導電動機2を駆動するための電力を供給するために、主制御装置4から第1伝送路8を介して第1および第2副制御装置5,6にアナログ値の第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データを与える。第1および第2副制御装置5,6は、この第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データに基づいて、主制御装置4と同期して誘導電動機2を駆動するための電力を供給する。
主制御装置4から第1および第2副制御装置5,6に与えられる信号が、デジタル値で表される場合、この信号は、第1伝送路8を通過する間に、ノイズの影響を受けて、大きく変化する可能性がある。たとえば、第1伝送路8を通過する間にノイズの影響を受けて、デジタル値で表される信号のうちの1ビットが反転した情報を、第1および第2副制御装置5,6が受け取る場合がある。デジタル値で表される信号のうちの1ビットのみが反転した場合であっても、反転した1ビットが符号を表す符号ビットであれば、符号が反転した信号が第1および第2副制御装置5,6に与えられることになる。この場合、第1および第2副制御装置5,6は、この符号が反転した情報に基づいて誘導電動機2を駆動する電力を供給するので、誘導電動機2の回転子が、予め設定された回転状態から大きく外れる可能性がある。本実施の形態では、第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データは、アナログ値で表されるので、伝送路を通過する間にノイズによって変化したとしても、その変化分のみがノイズとして第1および第2副制御装置5,6に与えられる。したがって、第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データは、デジタル値で表される場合に比べ、第1伝送路8を通過する間に大きな変化を受ける可能性は少ない。この第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データに基づいて、第1および第2副制御装置5,6は、主制御装置4に同期して誘導電動機2に電力を供給する。これによって、主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6は、誘導電動機2の回転子を正確に角速度指令値ΩREF1に応じた回転状態となるように誘導電動機2を制御することができる。
また、主制御装置4は、誤り検出機能などの複雑な制御を設けない簡易な通信の制御によって、第1および第2副制御装置5,6にアナログ値の第2アナログ正弦値データおよび第2アナログ余弦値データを与える。したがって、通信の制御に複雑な制御を設ける場合に比べて、主制御装置4、第1副制御装置5および第2副制御装置6が処理すべき量を抑制することができる。これによって、主制御装置4に角速度指令値ΩREF1が与えられると、この角速度指令値ΩREF1を反映した電力を速やかに誘導電動機2に与えることができる。
また、前述したように回転情報算出部7は、高域通過フィルタを構成するので、回転子の回転角度φに十分近い第1推定角度値θ1を出力するとともに、回転子の回転角速度Ψに十分近い第1推定角速度値Ω1を出力することができる。また、第1復元器83Bおよび第2復元器83Bは、高域通過フィルタを構成するので、回転子の回転角度に十分近い第2推定角度値θ2を角度指令値θREF2として出力するとともに、回転子の回転角速度Ψに十分近い第2推定角速度値Ω2を角速度指令値ΩREF2として出力することができる。第1および第2副制御装置5,6は、回転子の回転角度φに十分近い第2推定角速度値θ2および回転子の角速度Ψに十分近い第2推定角速度値Ω2に基づいて誘導電動機2を駆動する電力を供給する。これによって、主制御装置4、第1および第2副制御装置5,6は、誘導電動機2の回転子が正確に角速度指令値ΩREF1に応じた回転状態となるように誘導電動機2を制御することができる。
図9は、本発明の他の実施の形態の制御装置85、誘導電動機2、レゾルバ3およびドライバ18の構成を示すブロック図である。本発明の制御装置85は、前述の実施の形態の制御装置1と同様の構成であるので、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態の制御装置85は、前述の実施の形態の制御装置1における主制御装置4の構成が異なり、すべり周波数制御を行う。
主制御装置86は、ソフトウェアを実行することによって実現される回転情報算出部87、角度指令値算出器88、すべり周波数制御部89、第1V/F演算器90、第1PWM変調率生成器42A、第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45A、第1〜第3乗算器46A,47A,48A、第1比較器54A、第4正弦値生成器52および第1余弦値生成器53、第1インバータ回路51A、第1D/A変換器55および第2D/A変換器56とを含んで構成される。
回転情報算出部87は、第1アナログ回転情報を、デジタル値で表される第1デジタル回転情報に変換する第1アナログ/デジタル変換部として機能する。角度指令値算出器88、すべり周波数制御部89、第1V/F演算器90、第1PWM変調率生成器42A、第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45A、第1〜第3乗算器46A,47A,48A、および第1比較器54Aは、第1デジタル回転情報およびすべり周波数制御に基づいて第1インバータ回路を駆動する第1インバータ駆動部として機能する。また角度指令値算出器88、すべり周波数制御部89、第4正弦値生成器52および第1余弦値生成器53、第1インバータ回路51A、第1D/A変換器55および第2D/A変換器56は、第1デジタル回転情報およびすべり周波数制御に基づいて、第2アナログ回転情報を生成し、伝送路を介して第2アナログ回転情報を第2インバータ駆動手段に与えるデジタル/アナログ変換部として機能する。
回転情報算出部87は、第1推定角速度値Ω1を算出し、第1推定角速度値Ω1を含む第1積分器データをすべり周波数制御部89に与える。
図10は、すべり周波数制御部89の構成を示すブロック図である。すべり周波数制御部89は、制御対象である誘導電動機2に対してPI制御を行う。すべり周波数制御部89は、主制御装置86の外部から与えられる角速度目標値ΩCMDと第1推定角速度値Ω1とに基づいて角速度指令値ΩREF1を算出し、第1V/F演算器90および角度指令値算出器88に与える。角速度目標値ΩCMDは、制御対象である回転子の角速度の目標値である。
すべり周波数制御部89は、第3減算器91、比例器92、第5積分器93、第5加算器94および第6加算器95を含む。第3減算器91は、角速度目標値ΩCMDから第1推定角速度値Ω1を減算して角速度偏差値を算出し、このようにして求めた角速度偏差値を含む偏差データを比例器92および第5積分器93に与える。
比例器92は、第3減算器91から与えられる偏差データに含まれる角速度偏差値に比例ゲイン値KfPを乗算し、このようにして求めた比例値を含む比例データを第5加算器94に与える。第5積分器93は、第3減算器91から与えられる偏差データに含まれる角速度偏差値を時間に関して積分して、積分ゲインKfIを乗算し、このようにして求めた積分値を含む積分データを第5加算器94に与える。第5加算器94は、比例器92および第5積分器93から与えられる比例データおよび積分データに含まれる比例値と積分値とを加算し、加算値を加算データとして第6加算器95に与える。第6加算器95は、第5加算器94から与えられる加算データに含まれる加算値と、角速度目標値ΩCMDとを加算することによって角速度指令値ΩREF1を算出し、算出した角速度指令値ΩREF1を含む角速度指令データを角度指令値算出器88および第1V/F演算器90に与える。
角度指令値算出器88は、すべり周波数制御部89から与えられる角速度指令値ΩREF1を時間に関して積分することによって角度指令値θREF1を算出する。角度指令値算出器88は、算出した角度指令値θREF1を第1〜第3正弦値生成器43A,44A,45A、第4正弦値生成器52および第1余弦値生成器53に与える。
第4正弦値生成器52、第1余弦値生成器53、第1D/A変換器55および第2D/A変換器56は、デジタル値で表される角度指令値θREF1をアナログ値で表される第2アナログ回転情報に変換して第1および第2副制御装置5,6に角度指令値θREF1を含む第2アナログ回転情報を与える。
第1および第2副制御装置5,6は、主制御装置86から与えられた角度指令値θREF1を含む第2アナログ回転情報に基づいて主制御装置86と同期してインバータ回路51B,51Cを制御する。角度指令値θREF1は、すべり周波数制御に基づいて算出された値なので、主制御装置86、第1および第2副制御装置5,6は、互いに同期して誘導電動機2に対してすべり周波数制御を行う。
以上述べた制御装置85によれば、前述したように主制御装置86から第1および第2副制御装置5,6に角度指令値θREF1を含む第2アナログ回転情報を正確に伝達することができる。これによって主制御装置86、第1および第2副制御装置5,6は、正確に同期して誘導電動機2に対してすべり周波数制御を行うことができ、制御装置85は、図10に示す角速度目標値ΩCMDに図10に示す角速度推定値Ω1を正確に追従させることができる。
本実施の形態において、レゾルバ3は、1相励磁2相出力方式のレゾルバであるとしたけれども、これに限ることはない。たとえばレゾルバの回転子の巻線に電流を流すためスリップリングおよびブラシを、回転変圧器に置き換えたブラシレスタイプのレゾルバであってもよい。また回転子に巻線が巻回されない構成のリラクタンス型レゾルバと呼ばれるレゾルバでもよい。すなわちレゾルバ3は、電気的には見掛け上、1相励磁2相出力方式と同等の電気的特性を有するレゾルバであればよい。
また本実施の形態において、主制御装置4に同期して誘導電動機2に電力を供給する制御装置は、2つ、すなわち第1および第2副制御装置5,6であるとしたけれども、主制御装置4に同期して誘導電動機2に電力を供給する制御装置は、2つに限らず、1つまたは3つ以上であってもよい。
また、本実施の形態において、誘導電動機2は、9相の誘導電動機であるとしたけれども、誘導電動機の相数は、9相に限らず、3相以上であればよい。3相以上の誘導電動機2を、主制御装置と副制御装置とによって同期して駆動すればよい。また、制御装置1は、誘導電動機2を駆動するとしたけれども、制御装置1が駆動する電動機は、誘導電動機に限らず、同期電動機であってもよい。