JP3408238B2 - レゾルバ/デジタル変換装置および変換方法 - Google Patents

レゾルバ/デジタル変換装置および変換方法

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JP3408238B2
JP3408238B2 JP2000355784A JP2000355784A JP3408238B2 JP 3408238 B2 JP3408238 B2 JP 3408238B2 JP 2000355784 A JP2000355784 A JP 2000355784A JP 2000355784 A JP2000355784 A JP 2000355784A JP 3408238 B2 JP3408238 B2 JP 3408238B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動機や内燃機関
などの回転機器の回転角度を検出するレゾルバのレゾル
バ出力信号をデジタル角度信号に変換するレゾルバ/デ
ジタル変換装置および変換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のレゾルバ/デジタル変換装置に関
わるハードウェアは、専用の集積回路として構成される
ことが多いが、このような集積回路を用いることはコス
トが高くなってしまうといった問題を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電動機を駆動する駆動
装置や、内燃機関を制御する制御装置にはマイクロコン
ピュータが組込まれることが多いので、制御装置に組込
まれるマイクロコンピュータを用い、マイクロコンピュ
ータの持つ機能を最大限に利用することによって、レゾ
ルバ/デジタル変換に関わるハードウェアを最大限に利
用し、レゾルバ/デジタル変換に関わるハードウェアを
最小にすることが望まれる。また、典型的な先行技術と
して、以下の3つの先行技術が挙げられる。 イ):特開平10−111145 レゾルバデジタル変
換方法 ロ):特開平11−118520 ディジタル角度変換
方法 ハ):特開平09−265504 レゾルバ/デジタル
信号出力方法 これらの先行技術には、以下に述べるような問題点が存
在する。
【0004】イ)およびロ)では、レゾルバの出力信号
をA/D変換器に取込んでいる。これらの場合、A/D
変換時には、直流成分誤差が不可避的に生じ、A/D変
換されたデジタル値は誤差を含むため、角度検出を正確
に行なうことができないという問題がある。直流成分誤
差が生じる主な原因として、A/D変換器内部のスケー
リング抵抗の抵抗値が温度や経時変化により変化するこ
と、A/D変換器内部のD/Aコンバータの出力電圧が
誤差を含むことが挙げられる。イ)では回路の構成上、
サンプルを行なう点が励磁信号の1周期の間における1
点に限定される。前述の誤差を小さくするには、より高
精度のA/D変換器を用意するほかに解決方法はなく、
ハードウェアのコストアップを招く。またロ)では、サ
ンプル回数を多くとってフーリエ変換するという手法を
採用しているため、直流電圧の誤差は除去可能である。
しかし、マイクロコンピュータによる演算量が過大とな
り、高速な処理を行なえるマイクロコンピュータを必要
とし、ハードウェアの制約が厳しくなるという問題点が
あった。
【0005】本発明の目的は、A/D変換時に生じる直
流誤差を除去し、またマイクロコンピュータに過大な負
荷をかけることなく、角度を正確に検出することができ
るレゾルバ/デジタル変換装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、(a)1相励
磁2相出力のレゾルバ本体11であって、固定子に、9
0度の位相差をもつA相巻線1とB相巻線2とが巻か
れ、回転機器によって回転される回転子に、励磁巻線3
が巻かれ、励磁巻線3と、A相巻線1およびB相巻線2
との磁気的な結合は、回転子の回転角度φによって変化
するレゾルバ本体と、 (b)一定の角周波数ω0および一定の振幅Vrの周期
的な交流電圧である励磁信号を、励磁巻線3に、印加す
る励磁信号発生回路12と、 (c)アナログ/デジタル変換器13a,13bであっ
て、A相巻線1からのA相出力電圧Aと、B相巻線2か
らのB相出力電圧Bとを、同時刻でサンプリングし、こ
のサンプリング時刻は、励磁信号の1周期のうち、半周
期毎に180度の位相差をもって1回ずつ、合計2回、
サンプリングを行う時刻であり、サンプリングしたA相
出力電圧AとサンプリングしたB相出力電圧Bとを、デ
ジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換器と、 (d)差分・符号補正手段25,26であって、アナロ
グ/デジタル変換器の出力に応答し、1サンプル前と現
在とのサンプリングデータの差分(An−1−An),
(Bn−1−Bn)を算出し、その算出した差分がレゾ
ルバの回転子の角度φに応じて正または負に符号を補正
する差分・符号補正手段25,26と、 (e)差分・符号補正手段25,26の出力に応答し、
φを実角度とするとき、符号補正された一方の前記差分
(An−1−An)を算出する第1算出手段と、 (f)差分・符号補正手段25,26の出力に応答し、
符号補正された他方の前記差分(Bn−1−Bn)を算
出する第2算出手段と、 (g)入力される推定角度θの信号に応答し、推定角度
θのsinθとcosθの値を出力するsin・cos出力手段と、 (h)第1算出手段と第2算出手段とsin・cos出力手段
とからの出力に応答し、sinφ、cosφ、sinθ、cosθに
よって偏差φ−θを算出する第3算出手段と、 (i)第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θを積分
して推定角速度vを算出する第1積分器29と、 (j)第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θが与え
られ、比例要素を有し、系を安定化する位相補償器31
と、 (k)第1積分器29の出力と位相補償器31の出力と
を積分し、推定角度θを算出して第1算出手段に与える
第2積分器30とを含むことを特徴とするレゾルバ/デ
ジタル変換装置である。本発明は、励磁信号発生回路1
2は、矩形波の励磁信号を導出し、アナログ/デジタル
変換器は、励磁信号の波形の切替わり時刻から前記A相
およびB相出力電圧A,Bが安定する所定時間遅れたサ
ンプリング時刻でサンプリングを行うことを特徴とす
る。
【0007】
【0008】レゾルバ/デジタル変換装置は、レゾルバ
本体と、アナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換
器と略記する)と演算手段とを有する。電動機や内燃機
関などの回転機器は、マイクロコンピュータを内蔵する
制御装置を有し、前記演算装置は、この制御装置で実現
される。つまり、本発明の演算手段は、レゾルバ専用集
積回路でなく、回転機器に設けられる制御装置のソフト
ウェアとして実現される。これによって、レゾルバ/デ
ジタル変換装置の低コスト化が図られる。
【0009】前述したように、A/D変換器では、サン
プリングデータは直流誤差を含む。したがって、1周期
に1回のサンプリングを行なうレゾルバ/デジタル変換
装置では、正確に回転角度を算出することが困難であ
る。これに対し、本発明では、サンプリングを励磁信号
1周期のうち2回行い、連続する2回のデータを引き算
によって、誤差が除去される。これによって、安価なA
/D変換器であっても高精度に角度を検出することがで
きる。また従来技術のように、1周期あたりに多点をサ
ンプリングし、フーリエ変換して角度を算出する場合に
は、演算手段での演算処理量が膨大となり、回転機器に
設けられる制御装置では処理できない場合があるが、本
発明では2点のみのサンプリングであるので、回転機器
に設けられる制御装置で充分に演算可能である。また、
1周期あたり2点のみのサンプリングであるので、低速
のA/D変換器を用いることができ、これによっても低
コスト化が図られる。
【0010】A/D変換器は、たとえば−2.5V〜+
2.5Vの入力信号を変換するタイプ(両入力タイプ)
と、0V〜5Vの入力信号を変換するタイプ(片入力タ
イプ)とがあり、両入力タイプの場合には、励磁信号は
極性に関して対称の波形を必要とする。本発明では、サ
ンプリングした2点のデータを引き算して演算するの
で、励磁信号を、極性に関して対称とする必要がない。
したがって、安価な素子を使用可能であり、装置の低コ
スト化が図られる。
【0011】
【0012】これによって、安定してサンプリングを行
なうことができる。本発明は、励磁信号発生回路12
は、ノコギリ波、三角波または正弦波の励磁信号を導出
することを特徴とする。
【0013】レゾルバ/デジタル変換装置がアナログ回
路素子で構成される場合は、回路の構成上の理由から、
励磁信号を正弦波波形とすることが多い。しかし、本発
明においては、励磁信号が正弦波に限定されることはな
く、矩形波や高調波を含む歪み波であってもよい。
【0014】
【0015】本発明は、回転機器は、電動機または内燃
機関であって、電動機または内燃機関に備えられ、電動
機または内燃機関を制御し、マイクロコンピュータ14
を内蔵する制御装置が設けられ、この制御装置は、前記
差分・符号補正手段25,26と、第1算出手段と、第
2算出手段と、sin・cos出力手段と、第3算出手段と、
第1積分器29と、位相補償器31と、第2積分器30
とを、ソフトウェアの実行によって実現することを特徴
とする。
【0016】本発明は、レゾルバ本体を準備し、このレ
ゾルバ本体は、固定子に、90度の位相差をもつA相巻
線1とB相巻線2とが巻かれ、回転機器によって回転さ
れる回転子に、励磁巻線3が巻かれ、励磁巻線3と、A
相巻線1およびB相巻線2との磁気的な結合は、回転子
の回転角度φによって変化する1相励磁2相出力の構成
を有し、励磁信号発生回路12から、一定の角周波数ω
0および一定の振幅Vrの周期的な交流電圧である励磁
信号を、励磁巻線3に、印加し、アナログ/デジタル変
換器によって、A相巻線1からのA相出力電圧Aと、B
相巻線2からのB相出力電圧Bとを、同時刻でサンプリ
ングし、このサンプリング時刻は、励磁信号の1周期の
うち、半周期毎に180度の位相差をもって1回ずつ、
合計2回、サンプリングを行う時刻であり、こうしてサ
ンプリングしたA相出力電圧AとB相出力電圧Bとを、
デジタル信号に変換し、差分・符号補正手段25,26
によって、アナログ/デジタル変換器の出力に応答し、
1サンプル前と現在とのサンプリングデータの差分(A
n−1−An),(Bn−1−Bn)を算出し、その算
出した差分がレゾルバの回転子の角度φに応じて正また
は負に符号を補正し、第1算出手段によって、差分・符
号補正手段25,26の出力に応答し、φを実角度とす
るとき、符号補正された一方の前記差分(An−1−A
n)を算出し、第2算出手段によって、差分・符号補正
手段25,26の出力に応答し、符号補正された他方の
前記差分(Bn−1−Bn)を算出し、sin・cos出力手
段によって、入力される推定角度θの信号に応答し、推
定角度θのsinθとcosθの値を出力し、第3算出手段に
よって、第1算出手段と第2算出手段とsin・cos出力手
段とからの出力に応答し、sinφ、cosφ、sinθ、cosθ
によって偏差φ−θを算出し、第1積分器29によっ
て、第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θを積分し
て推定角速度vを算出し、位相補償器31によって、第
3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θが与えられ、比
例要素を有し、系を安定化し、第2積分器30によっ
て、第1積分器29の出力と位相補償器31の出力とを
積分し、推定角度θを算出して第1算出手段に与えるこ
とを特徴とするレゾルバ/デジタル変換方法である。
【0017】本発明に従えば、2点サンプリング点で回
転角度を算出するので、誤差のうち、直流成分が除去さ
れ、高精度に回転角度を検出することができる。また、
A/D変換器は安価なものでよく、これによって低コス
ト化が図られる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明で対象とするレゾルバは、
1相励磁・2相出力方式のレゾルバである。回転子の巻
線に電流を流すためには給電のためにスリップリングと
ブラシが必要になるが、スリップリングとブラシとを回
転変圧器に置き換えたブラシレスタイプのレゾルバもあ
る。
【0019】1相励磁・2相出力方式のレゾルバの代表
的な構成を図1に示す。この例では、幾何的に90度の
位相差をもつ2つの巻線、A相巻線1とB相巻線2とが
固定子に巻かれ、回転子には1つの巻線、R相巻線3が
巻かれている。R相巻線3は励磁巻線とも呼ばれる。R
相巻線は回転子に固定されているために、回転子の回転
に伴って向きを変える。固定子側の2つの巻線、すなわ
ちA相巻線1とB相巻線2は幾何的に互いに直交してお
り、磁気的な結合はない。R相巻線には、通常、一定の
角周波数、一定の振幅の正弦波交流電圧が印加される。
この結果、回転子はこの角周波数で励磁される。印加さ
れる交流電圧の電圧の振幅をVrとし、角周波数をωo
とする。R相巻線3と、A相巻線1およびB相巻線2と
の間の磁気的な結合は、レゾルバ軸の回転角度によって
変化する。B相巻線2とA相巻線1とは、幾何的に90
度の位相差をもつ。レゾルバの回転角度をφとし、R相
巻線3と、A相巻線1およびB相巻線2との間の磁気的
な結合係数Mar,Mbrは、回転子の回転角度φの関
数となる。 Mar=Mcosφ,Mbr=Msinφ
【0020】ここにMは正定数であって、レゾルバの構
造と巻線とによって決まる。いまR相巻線3に角周波数
ωoの交流電圧fo(t)を印加する。ここにtは時刻
を表している。このときA相巻線1とB相巻線2とに誘
起させる電圧Va,Vbは以下のようになる。 Va=Marfo(t)=Mcosφfo(t) Vb=Mbrfo(t)=Msinφfo(t)
【0021】産業界で広く用いられているレゾルバ/デ
ジタル変換装置は、上記のA相巻線1、B相巻線2に誘
起される瞬時電圧Va,Vbおよび、R相巻線3に印加
される電圧fo(t)をもとに、回転子の角度φを求
め、デジタル値に変換するものである。 φ=tan-1(Va/Vb)
【0022】レゾルバデジタル変換装置が、アナログ回
路素子で構成される場合は、回路の構成上の理由から、
励磁電圧を正弦波波形とすることが多い。
【0023】この場合、上記交流電圧fo(t)は正弦
波波形となり、交流電圧の振幅をVroとすれば、 fo(t)=Vro sinωo t と表現できる。このときのA相巻線1とB相巻線2とに
誘起される電圧Va,Vbの一例を図2に示す。また、
レゾルバの出力信号が、A/D変換器によって取込ま
れ、ソフトウェアでレゾルバ/デジタル変換が行われる
場合には、回路構成をシンプルにするために、励磁信号
を矩形波波形とすることも可能である。交流電圧の振幅
をVrrとすれば、交流電圧fo(t)は次のように表現で
きる。 fo(t)=Vrr sgn(sinωot)
【0024】ここに関数sgn()は符号関数であり、かっ
こ内が正の値をもつときには+1の値を、負の値をもつ
ときには−1の値をとる。このときのA相とB相の巻線
に誘起される電圧Va,Vbの一例を図3に示す。
【0025】図4は、本発明の実施の一形態のレゾルバ
/デジタル変換装置10のハードウェア構成を示す図で
ある。レゾルバ/デジタル変換装置10は、レゾルバ本
体11と、励磁信号発生回路12と、A/D変換器13
と、マイクロコンピュータ14とから構成される。レゾ
ルバ本体11は、回転角度を検出するモータなどの回転
機器に取付けられ、前述したA相巻線、B相巻線、R相
巻線を有する。励磁信号発生回路12は、R相巻線を励
磁する回路であり、A/D変換器13は、A相巻線用の
A/D変換器13aとB相巻線用A/D変換器13bと
を有する。マイクロコンピュータ14は、回転機器の制
御装置に内蔵されるものであり、本来、回転機器を制御
するために設けられるものであるが、本発明では、これ
をレゾルバ/デジタル変換装置の角度算出の演算に用い
る。
【0026】本実施形態では、励磁信号発生回路12
は、矩形波を発生することを特徴としている。矩形波
は、デジタル素子によって構成されるカウンタ・タイミ
ング回路15で発生される。この矩形波は、巻線を励磁
するのに必要な電圧に増幅回路16で増幅され、レゾル
バ本体のR相巻線に供給される。また、矩形波の増幅回
路は、巻線を励磁するために充分な電流を供給できるも
のとする。増幅回路16のゲインは1でもよく、この場
合は産業界で広く用いられるデジタル回路用素子を使用
してもよい。本実施形態では、正弦波を取扱う必要がな
いので、巻線を駆動するためのリニアアンプや正弦波発
振回路が不要となる。また、カウンタ・タイミング回路
15は、R相励磁信号だけでなく、A/D変換器13へ
の変換開始信号、マイクロコンピュータ14への変換終
了信号を生成する。次に、図5を参照してカウンタ・タ
イミング回路15について説明する。
【0027】カウンタ・タイミング回路15はデジタル
回路で構成され、1つのバイナリカウンタ20と、2つ
の比較器21,22で構成される。バイナリカウンタ2
0の最上位ビットはそのままR相励磁電圧波形として出
力される。この出力は、R相に励磁に必要な電流を流す
ための増幅回路(バッファIC)16に与えられる。比
較器21は、バイナリカウンタの下位n−1ビットと、
もう1つの予め定められた値Eとを比較して、値が一致
したときに変換終了信号を生成する。
【0028】A相巻線に誘起されている電圧VaとB相
巻線に誘起される電圧Vbは、それぞれA/D変換器1
3によってアナログ値からデジタル値に変換される。A
/D変換器13によってVaとVbとがサンプリングさ
れるのは同時刻である。
【0029】図6は、カウンタ・タイミング回路16に
よる変換開始信号および変換終了信号のタイミング・チ
ャートである。励磁信号(R相駆動信号)は矩形波であ
り、安定した一定の電圧値を半周期毎にとるので、A相
巻線およびB相巻線電圧は、励磁信号の電圧の切替わり
後に、安定した一定電圧をとる。したがって、この安定
した部分でサンプリングされるように、変換開始時刻を
決定する値Sが決定される。A/D変換を行なうには、
変換器の特性によって定まる変換時間を要するので、変
換開始信号の時刻と、変換終了信号の時刻の時間差は、
A/D変換器13の変換時間よりも大きく取られ、この
変換時間から前記予め定める値Eが決まる。サンプリン
グは、搬送波(励磁信号)の1周期のうちに2回行われ
る。1回は、搬送波が正の値をとる半周期内の1つの時
刻であり、もう1回は搬送波に対しておよそ180度の
位相差をもって行われる。矩形波の信号によって励磁さ
れるので、A相巻線電圧およびB相巻線電圧も、1周期
に2回の安定した一定の電圧値が存在し、180度の位
相差をもって1周期に2回サンプリングする場合、安定
した値をサンプリングすることができる。これによっ
て、伝送線路の特性などによってサンプリングの時間遅
れが発生したとしても、一定の値をサンプリングするこ
とができ、変換誤差を低減させることができる。
【0030】次に、図7を参照してマイクロコンピュー
タ14の内部でソフトウェアによって行われる処理を示
す。A相巻線電圧、B相巻線電圧は、A/D変換器13
a,13bによってデジタル化され、マイクロコンピュ
ータ14によってその値が読込まれた後、差分・符号補
正処理される。次に、図8を参照して、差分・符号補正
処理について説明する。
【0031】時刻0から15の間に、AD変換器13に
よりA相(sin成分)のデータをそれぞれA0からA1
5までサンプリングしたとき、以下の処理を行う。 (A0−A1)・sgn、(A1−A2)・sgn、(A2−
A3)・sgn、(A3−A4)・sgn、…、(An−1
An)・sgn
【0032】搬送波fo(t)の周波数成分を除去するため
に、1サンプル前の時刻のサンプリングデータから現在
時刻のサンプリングデータを引いて差分を算出する。図
8の縦の点線部分はモータの角度が180度を超えたこ
とを意味する。180度を超えたとき差分の符号を正か
ら負に変える必要がある。差分に関数sgnを乗算して符
号を補正する。この例の場合は、時刻が0,2,4,
6,8,10,12,14のとき、s gn=−1であり、
時刻が1,3,5,7,9,11,13,15のとき、
sgn=+1である。180度以前において(An−1
An)・sgnは正の値となり、180度以後において
(An−1−An)・sgnを負の値とすることができ
る。
【0033】以上の搬送波fo(t)の周波数成分を目的と
した処理は、サンプリングデータの差分を算出するた
め、次の2つの働きを有する。サンプリングデータに
含まれるA/D変換器の直流分誤差の除去、サンプリ
ングデータに高域通過フィルタをかけることができる。
【0034】本発明では、推定角度θを求めるのに、実
角度φと推定角度θとの偏差φ−θを算出し、この偏差
と2個の積分器を用いて、推定角速度vおよび推定角度
θを算出する。
【0035】図9は、実角度φから推定角速度vを求め
る伝達関数のブロック図である。積分器30からの出力
が推定角度θであり、この推定角度θと、実際の角度φ
とから偏差φ−θが算出される。この偏差φ−θは、ゲ
インを乗じた後、再び上記の積分器30に入力される。
このことによって、推定角度θは、常に実際の角度に追
従しようと働く。したがって、推定角度θが実際の角度
φに追従するように、フィードバックゲインを選べば、
積分器30への入力は推定角速度vとして利用される。
回転機器が一定回転で回り続ける場合、速度は一定にな
るので、積分器30への入力はゼロでない一定値でなけ
ればならない。一方、推定角度θが実角度φに完全にト
ラッキングしてしまえば、角度の偏差φ−θはゼロとな
る。この場合には、フィードバックゲインに積分器を含
ませる必要がある。これが積分器29である。また、フ
ィードバックゲインが積分器のみの場合は、系が安定と
ならない。そこで、比例要素をフィードバックゲインに
追加して、ダイピングを追加する。これが位相補償器3
1である。位相補償器31の出力は、第1積分器29の
出力である推定角速度vに加えられておらず、これによ
って実角度φが変化したときの誤差を抑制することがで
きる。よって、最終的な制御構成図は、図9に示すよう
になる。図9の制御系の伝達関数は次のようになる。 v/φ = sK/(s2+sKp+K)
【0036】ωn 2=K,2ζωn=Kpとすれば、自然
角周波数ωnおよび減衰定数ξを適切に選ぶことによ
り、ブロック図中のKとKpを決定することができ
る。たとえば、減衰定数ξ=1/√2とする。
【0037】次に、図7のマイクロコンピュータ14の
ブロック図と、図10のフローチャートを参照して、回
転速度推定値と、回転角度推定値の算出方法を説明す
る。
【0038】まず、ステップS1において、A/D変換
器13a,13bで変換されたA相とB相のサンプリン
グデータがマイクロコンピュータ14に読込まれる。ス
テップS2では、sgn=1であるか否かが判断され、1
の場合は、ステップS3に進み、−1の場合は、ステッ
プS4に進む。ステップS3では、An−1−Anが、
si nφとして算出され、Bn−1−Bnが、cosφとし
て算出される。ここで、φは実際の角度である。次に、
ステップS5で、推定角度θのsinとcosの値をsin cos
テーブル27から読出す。ステップS6では、演算回路
28で、φ−θ=sinφ cosθ−cosφ sinθを演算し、
偏差φ−θを算出する。ステップS7では、積分器29
で積分し、ステップS8で積分値sに定数K・τを乗
じて推定角速度vを算出する。次のステップS9では、
推定角速度vを積分器30で積分するとともに、位相補
償器31で位相補償を行い、推定角度θを算出する。つ
まり、K・τ2・s+Kp・τ・(φ−θ)を算出す
る。また、この推定角度θは、前述したsin cosテーブ
ル27で参照される。最後のステップS10で、An-1
=An,Bn-1=Bnとしてサンプリングデータを1つず
つずらして一連の処理が終了する。このようなスタート
からエンドまでの一連の処理を、マイクロコンピュータ
14の制御周期毎に行なう。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、サンプリングを励磁信
号の1周期のうち2回行い、連続する2回のデータを引
き算するので、サンプリングデータに直流誤差が含まれ
ていたとしても、引き算によって、誤差が除去され、こ
れによって、安価なA/D変換器であっても高精度に角
度を検出することができる。また、レゾルバの励磁巻線
を駆動するドライバは、極性に関する対称性を要求され
ないため、安価な素子が使用可能である。
【0040】また、角度を推定するための演算は、レゾ
ルバ出力1周期に対して2回しか行われず、低速のA/
D変換器が使用可能である。また、演算量も少なくて済
み、回転機器に設けられる制御装置のマイクロコンピュ
ータで演算することができる。以上により、装置の低コ
ストを実現できる。
【0041】また本発明によれば、励磁信号に矩形波を
用いることで、1周期に2回安定してサンプリングを行
なうことができ、レゾルバ本体の特性に起因する波形歪
みがあっても、精度良く角度検出ができる。また上述し
た実施形態では、励磁信号矩形波としたが、本発明はこ
れに限定されるものでなく、正弦波であってもよく、高
調波を含む歪み波であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象とするレゾルバの構造を示す図で
ある。
【図2】正弦波で励磁したときのA相とB相の巻線に誘
起される電圧の波形図である。
【図3】矩形波で励磁したときのA相とB相の巻線に誘
起される電圧の波形図である。
【図4】本発明の実施の一形態のレゾルバ/デジタル変
換装置10のハードウェア構成を示す図である。
【図5】カウンタ・タイミング回路15のブロック図で
ある。
【図6】信号のタイミングを示すタイムチャートであ
る。
【図7】マイクロコンピュータ14のブロック図であ
る。
【図8】B相(sin成分)のデータと、それに対する符
号の付与を説明する図である。
【図9】推定角度を算出する伝達関数のブロック図であ
る。
【図10】マイクロコンピュータで演算するソフトウェ
アのフローチャートである。
【符号の説明】
1 A相巻線 2 B相巻線 3 R相巻線 10 レゾルバ/デジタル変換装置 11 レゾルバ本体11 12 励磁信号発生回路 13 A/D変換器 14 マイクロコンピュータ
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−334306(JP,A) 特開 平11−118520(JP,A) 特開 平10−111145(JP,A) 特開2000−39337(JP,A) 実開 平1−165414(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01D 5/00 - 5/62 G01B 7/00 - 7/34

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)1相励磁2相出力のレゾルバ本体
    11であって、 固定子に、90度の位相差をもつA相巻線1とB相巻線
    2とが巻かれ、 回転機器によって回転される回転子に、励磁巻線3が巻
    かれ、 励磁巻線3と、A相巻線1およびB相巻線2との磁気的
    な結合は、回転子の回転角度φによって変化するレゾル
    バ本体と、 (b)一定の角周波数ω0および一定の振幅Vrの周期
    的な交流電圧である励磁信号を、励磁巻線3に、印加す
    る励磁信号発生回路12と、 (c)アナログ/デジタル変換器13a,13bであっ
    て、 A相巻線1からのA相出力電圧Aと、B相巻線2からの
    B相出力電圧Bとを、同時刻でサンプリングし、 このサンプリング時刻は、励磁信号の1周期のうち、半
    周期毎に180度の位相差をもって1回ずつ、合計2
    回、サンプリングを行う時刻であり、 サンプリングしたA相出力電圧AとサンプリングしたB
    相出力電圧Bとを、デジタル信号に変換するアナログ/
    デジタル変換器と、 (d)差分・符号補正手段25,26であって、 アナログ/デジタル変換器の出力に応答し、 1サンプル前と現在とのサンプリングデータの差分(A
    n−1−An),(Bn−1−Bn)を算出し、その算
    出した差分がレゾルバの回転子の角度φに応じて正また
    は負に符号を補正する差分・符号補正手段25,26
    と、 (e)差分・符号補正手段25,26の出力に応答し、 φを実角度とするとき、符号補正された一方の前記差分
    (An−1−An)を算出する第1算出手段と、 (f)差分・符号補正手段25,26の出力に応答し、 符号補正された他方の前記差分(Bn−1−Bn)を算
    出する第2算出手段と、 (g)入力される推定角度θの信号に応答し、推定角度
    θのsinθとcosθの値を出力するsin・cos出力手段と、 (h)第1算出手段と第2算出手段とsin・cos出力手段
    とからの出力に応答し、sinφ、cosφ、sinθ、cosθに
    よって偏差φ−θを算出する第3算出手段と、 (i)第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θを積分
    して推定角速度vを算出する第1積分器29と、 (j)第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θが与え
    られ、比例要素を有し、系を安定化する位相補償器31
    と、 (k)第1積分器29の出力と位相補償器31の出力と
    を積分し、推定角度θを算出して第1算出手段に与える
    第2積分器30とを含むことを特徴とするレゾルバ/デ
    ジタル変換装置。
  2. 【請求項2】 励磁信号発生回路12は、矩形波の励磁
    信号を導出し、 アナログ/デジタル変換器は、励磁信号の波形の切替わ
    り時刻から前記A相およびB相出力電圧A,Bが安定す
    る所定時間遅れたサンプリング時刻でサンプリングを行
    うことを特徴とする請求項1記載のレゾルバ/デジタル
    変換装置。
  3. 【請求項3】 励磁信号発生回路12は、 ノコギリ波、三角波または正弦波の励磁信号を導出する
    ことを特徴とする請求項1記載のレゾルバ/デジタル変
    換装置。
  4. 【請求項4】 回転機器は、電動機または内燃機関であ
    って、 電動機または内燃機関に備えられ、電動機または内燃機
    関を制御し、マイクロコンピュータ14を内蔵する制御
    装置が設けられ、 この制御装置は、前記差分・符号補正手段25,26
    と、第1算出手段と、第2算出手段と、sin・cos出力手
    段と、第3算出手段と、第1積分器29と、位相補償器
    31と、第2積分器30とを、ソフトウェアの実行によ
    って実現することを特徴とする請求項1〜3のうちの1
    つに記載のレゾルバ/デジタル変換装置。
  5. 【請求項5】 レゾルバ本体を準備し、 このレゾルバ本体は、 固定子に、90度の位相差をもつA相巻線1とB相巻線
    2とが巻かれ、 回転機器によって回転される回転子に、励磁巻線3が巻
    かれ、 励磁巻線3と、A相巻線1およびB相巻線2との磁気的
    な結合は、回転子の回転角度φによって変化する1相励
    磁2相出力の構成を有し、 励磁信号発生回路12から、一定の角周波数ω0および
    一定の振幅Vrの周期的な交流電圧である励磁信号を、
    励磁巻線3に、印加し、 アナログ/デジタル変換器によって、 A相巻線1からのA相出力電圧Aと、B相巻線2からの
    B相出力電圧Bとを、同時刻でサンプリングし、 このサンプリング時刻は、励磁信号の1周期のうち、半
    周期毎に180度の位相差をもって1回ずつ、合計2
    回、サンプリングを行う時刻であり、 こうしてサンプリングしたA相出力電圧AとB相出力電
    圧Bとを、デジタル信号に変換し、 差分・符号補正手段25,26によって、 アナログ/デジタル変換器の出力に応答し、 1サンプル前と現在とのサンプリングデータの差分(A
    n−1−An),(Bn−1−Bn)を算出し、その算
    出した差分がレゾルバの回転子の角度φに応じて正また
    は負に符号を補正し、 第1算出手段によって、 差分・符号補正手段25,26の出力に応答し、 φを実角度とするとき、符号補正された一方の前記差分
    (An−1−An)を算出し、 第2算出手段によって、 差分・符号補正手段25,26の出力に応答し、 符号補正された他方の前記差分(Bn−1−Bn)を算
    出し、 sin・cos出力手段によって、 入力される推定角度θの信号に応答し、推定角度θのsi
    nθとcosθの値を出力し、 第3算出手段によって、 第1算出手段と第2算出手段とsin・cos出力手段とから
    の出力に応答し、sinφ、cosφ、sinθ、cosθによって
    偏差φ−θを算出し、 第1積分器29によって、 第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θを積分して推
    定角速度vを算出し、 位相補償器31によって、 第3算出手段の出力に応答し、偏差φ−θが与えられ、
    比例要素を有し、系を安定化し、 第2積分器30によって、 第1積分器29の出力と位相補償器31の出力とを積分
    し、推定角度θを算出して第1算出手段に与えることを
    特徴とするレゾルバ/デジタル変換方法。
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