JP3792908B2 - ペルオキシダーゼ活性の測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学発光反応を利用するペルオキシダーゼ活性の測定方法に関するものであり、更に詳しくは、特定の新規化学発光試薬を用いた化学発光反応を利用することによる水素受容体の存在下における高感度なペルオキシダーゼ活性の測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ペルオキシダーゼは、水素受容体の存在下で水素供与体の酸化反応を触媒する酵素である。このような触媒活性は、例えば、ヘモグロビンのような非酵素物質においても観察され、ペルオキシダーゼ活性と総称される。ペルオキシダーゼの触媒活性は微量でも高感度で検出しやすいので、ペルオキシダーゼ酵素活性の検出のみならず、種々の検出対象物質の指標となる分析用試薬として幅広い分野で利用されている。
【0003】
このようにペルオキシダーゼを標識物質として用いる分析方法は、抗原抗体反応を利用する免疫学的測定法、核酸の相補性を利用する核酸ハイブリダイゼーションアッセイ法、その他アビジン−ビオチン、ホルモン−ホルモン受容体、糖−レクチン等の特異的な親和性を利用する分析系に用いられる。
【0004】
また、このようなペルオキシダーゼ活性の測定には、過酸化水素を水素受容体として水素供与体を酸化し、色素を生成させてその発色量を分光光度計等で測定する比色法または蛍光物質を生成させてその蛍光を蛍光分光光度計で測定する蛍光法等が行なわれている。しかしながら、ペルオキシダーゼ活性の測定に比色法を用いる場合には、ペルオキシダーゼの低濃度領域での定量性に欠けると云う問題点があり、これを解決する目的で蛍光法が開発されたのであるが、低濃度領域での定量性に関しては未だ充分とは言えない。この問題点を解決する目的で、化学発光法によるペルオキシダーゼ活性の測定方法が開発されている。化学発光法は、ペルオキシダーゼ酵素の触媒活性によって化学発光性物質が中間体を経て励起状態となり、この状態から基底状態に戻る際に放出される発光量を測定することによりペルオキシダーゼ酵素活性を定量する方法であり、化学発光性物質にルミノールを、水素受容体に過酸化水素を、そしてさらに発光増強剤にp−ヨードフェノールを用いる化学発光系が開発されており、ペルオキシダーゼ活性を高感度で定量することが可能になっている。
しかしながら、ペルオキシダーゼ酵素活性の測定を酵素免疫測定法に応用する場合には、酵素の低濃度領域での定量性を更に高める必要性が生じるケースが多く、ペルオキシダーゼ酵素活性の測定において更なる高感度化が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、前記事情に鑑み、ペルオキシダーゼ活性をより高感度で測定することが可能な化学発光反応による新規な測定方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討を行なった結果、化学発光試薬として、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後に特定のアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光性物質を含有する化学発光試薬を用い、水素受容体として過酸化水素を用い、そして、さらに、発光増強剤として特定のフェノール性化合物を用いる発光系が、化学発光性物質にルミノールを用いる発光系に比較して、更に高感度でペルオキシダーゼ活性を定量することが可能なことを見い出し、これらの知見に基づいて、本発明に到達したものである。
【0007】
従って、本発明の第一は、
N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後に特定のアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光試薬を用い、水素受容体の存在下でペルオキシダーゼ酵素活性を測定することを特徴とする化学発光法によるペルオキシダーゼ活性の測定方法に関するものである。
【0008】
また、本発明の第二は、
N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後にアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光試薬を用い、発光増強剤としてフェノール性化合物を加え、水素受容体の存在下でペルオキシダーゼ酵素活性を測定することを特徴とする化学発光法によるペルオキシダーゼ活性の測定方法に関するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のペルオキシダーゼ活性の測定方法は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及びアミノアルコール化合物とからなる化学発光性物質を含有する化学発光試薬を用い、水素受容体の存在下において、更に好ましくは、発光増強剤を加えてペルオキシダーゼ酵素活性を測定するものである。その測定の手順は任意に決定することができるが、化学発光試薬、発光増強剤及びペルオキシダーゼ酵素を含有する測定試料を混合し、特定塩基性pH領域において水素受容体溶液を添加して化学発光反応させ、この化学発光量を発光測定装置で測定する方法等を採用することができる。
【0010】
本発明のペルオキシダーゼ活性の測定方法に用いられる化学発光試薬は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後にアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光性物質を含有する反応混合物である。
【0011】
前記アミノアルコール化合物は、前記光照射前にN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類とN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物との混合物に添加してもよいが、反応時及び/又は反応後、即ち、光照射時又は光照射後のいずれか或いは光照射時及び光照射後の両者において添加してもよい。特に、発光性能の安定性確立の観点からは光照射後、即ち、反応後に添加することが肝要である。
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類は、下記の一般式(1)
【0012】
【化4】
で表わすことができる。
【0013】
前記一般式(1)において、R1 及びR2 はアルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群より選択され、互いに同一でも又は異なるものでもよい。アルキル、アリール基及びハロゲン化アリール基は、炭素数1〜14を有するものであり、好ましいアルキル基は炭素数1〜10のものである。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基を挙げることができる。また、アリール基は、炭素数6〜20のものであり、フェニル基、トリール基、キシリル基等を挙げることができ、さらにアルキル基で置換されたものでもよい。アリール基としては、特に、フェニル基が好ましい。ハロゲン化アリール基としてはハロゲン化フェニル基、ハロゲン化トリル基、ハロゲン化キシリル基等を挙げることができ、特に、クロロフェニル基が好ましい。
【0014】
前記一般式(1)において、R3 、R4 、R5 及びR6 は、各々、水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン原子からなる群より選択され、互いに同一でも又は異なるものでよい。これらの炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のものを挙げることができる。例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、アリーロキシ基を挙げることができ、アリール基、アリーロキシ基はアルキル基で置換されたものでもよい。
【0015】
また、前記一般式(1)において、Xn-はn価の陰イオンであり、nは1又は2である。陰イオンとしては、特に限定されるものではなく、硝酸イオン(NO3 -)、ハロゲン化物イオン(例えば、塩化物イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン等)、(メタ)リン酸イオン(PO3 -)等を挙げることができる。これらの陰イオンのなかで、特に硝酸イオンが好ましい。
【0016】
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の具体例としては、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジエチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジプロピル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジイソプロピル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジブチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジイソブチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N−ジフェニル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジ−m−クロロフェニル−9,9’−ビスアクリジニウムジナイトレート(ルシゲニン)等を挙げることができる。特に、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジナイトレート(ルシゲニン)が好適である。
また、前記N,N’−ジ置換カルボン酸アミド化合物は、次の一般式(2)
【0017】
【化5】
で表すことができる。
【0018】
前記一般式(2)において、R1 は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択され、該アリール基はアルキル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基及びハロゲン原子等からなる群より選択される基で置換されていてもよい。R2 は、メチル基又はエチル基であり、R3 は、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択され、該アリール基は、アルキル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基及びハロゲン原子等からなる群より選択される基で置換されていてもよい。R1 及びR3 のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を挙げることができる。また、R1 及びR3 は互いに結合して、それぞれが結合しているカルボニル基の炭素原子及びアミド基の窒素原子と共に環を形成していてもよい。
【0019】
前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を挙げることができる。
前記アミノアルコール化合物は、下記一般式(3)
【0020】
【化6】
で表わすことができる。
前記一般式(3)において、Rは炭素数1〜5の二価の脂肪族炭化水素基であり、mは1〜3の整数である。
【0021】
前記アミノアルコール化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を非限定的に挙げることができる。
【0022】
前記化学発光試薬の調製に際し用いる光照射用の光線としては、波長領域が約290〜800nmの範囲の紫外可視部が用いられ、特に、約400〜800nmの範囲の可視光が好ましい。これらの光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、殺菌灯、蛍光灯及び白熱電灯等を非限定的に用いることができるが、白熱電灯が好ましく用いられる。この光照射により得られる化学発光試薬は、光源を用いずに自然光の下で製造した化学発光試薬に較べて、同じ原料ルシゲニン濃度で製造し同量で使用した場合に短時間で非常に高い発光強度を示すことと、この反応を光遮断下に実施した場合にはペルオキシダーゼ濃度依存性を有する化学発光試薬が得られないことから、化学発光性物質の生成には光照射が重要な役割を担っていることが認められる。
【0023】
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類は、pH8付近では過酸化水素ともペルオキシダーゼ存在下の過酸化水素とも顕著な化学発光反応は起こさないが、これはN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウムカチオンが対イオン、特に硝酸イオンと安定な塩を形成しているためと考えられる。しかし、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物等の極性の高い化合物の存在下で光照射を行なうことにより、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウムカチオンへの対アニオンからの電荷移動が促進され、イオン性の高い塩類からラジカル性を有する電荷移動錯体に変化し、この錯体がN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の配位もしくは溶媒和によって安定化され、この安定化されたビラジカル性化合物が過酸化水素の酵素分解により生成する活性酸素と反応して、励起状態のジオキセタン構造を経て発光するのでペルオキシダーゼ濃度に依存した発光強度が得られるものと考えられる。
【0024】
前記光照射による反応において、前記アミノアルコール化合物の添加は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウムカチオンへの電荷移動に関与してその反応を促進し、発光反応時のブランク値を高める副生成物の生成を抑え、且つ生成するビラジカルを更に安定化する作用を有するものと考えられる。具体的には、前記化学発光反応時において、アミノアルコール化合物はブランク値を低下させる効果及びペルオキシダーゼの高濃度領域における発光強度を上昇させる効果を有し、また、化学発光試薬の保存時において、その発光性能の低下を防ぐ保存安定性を改善する効果等を有し、化学発光試薬の感度や安定性等の性能の向上に寄与する処が大きい。
【0025】
前記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及びアミノアルコール化合物の三種の化合物のモル比は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類に対してN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物を1〜1万倍モル、アミノアルコール化合物を1〜1万倍モルの量でそれぞれ用いることができ、さらに、同種及び/又は異種のN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及び/又はその他の溶媒を反応溶媒として用いることもできる。
【0026】
前記化学発光試薬の製造時の光照射反応の反応温度は、溶媒の有無及びその種類によって異なるが、一般的に、−10〜+150℃、好ましくは0〜120℃、特に好ましくは20〜90℃の範囲の温度である。また、反応時間は1分〜一昼夜、好ましくは10分〜15時間、特に好ましくは30分〜10時間の範囲である。
【0027】
また、前記化学発光試薬は、pH7.5〜13の塩基性条件下において過剰の過酸化水素の存在下、ペルオキシダーゼの濃度に依存した量で発光する。この発光は、フェノール性化合物等の発光増強剤によって増強することが認められる。発光増強作用を有するフェノール性化合物としては、p−ヒドロキシ桂皮酸、p−フェニルフェノール、p−(4−クロロフェニル)フェノール、p−(4−ブロモフェニル)フェノール、p−(4−ヨードフェニル)フェノール、p−ヨードフェノール、p−ブロモフェノール、p−クロロフェノール、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、2−ナフトール、ホタルルシフェリン等が非限定的に挙げられる。
【0028】
本発明の化学発光反応によるペルオキシダーゼ活性の測定方法において、化学発光試薬は、10-8〜1M、好ましくは10-6〜10-2M、更に好ましくは10-4〜10-2Mの範囲の濃度で用いられ、その使用量は10〜500μl、特に50〜300μlの範囲が好ましい。
【0029】
また、発光増強剤の使用量は、化学発光試薬の0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルの範囲であり、その濃度は10-6〜1M、特に10-4〜10-2Mの範囲で用いるのが好ましい。
【0030】
前記化学発光反応に用いられる水素受容体としては、ペルオキシダーゼ酵素の基質となり得るものであれば特に限定されるものではないが、有機過酸化物、無機過酸化物等を任意に採用することができる。これらのなかでは具体的には過酸化水素が好ましく用いられる。この水素受容体は、化学発光試薬に対して充分に過剰な量で用いることが必要であり、化学発光試薬に対して3〜1万倍モル、好ましくは10〜1000倍モルの範囲で用いることができる。
【0031】
また、ペルオキシダーゼを標識物質として抗体、核酸等を標識して種々の物質を定量する場合には、特に限定されるものではないが、ペルオキシダーゼとして、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が好ましく用いられる。
【0032】
前記化学発光反応に用いられる塩基性緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液等を任意に選択することができる。これらの緩衝液の濃度は1mM〜1Mの範囲で用いるのが好ましい。また、反応時には界面活性剤、キレート剤等の添加剤を任意に用いることができる。
【0033】
本発明のペルオキシダーゼ活性の測定方法は、具体的には、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム類をN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後にアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光性物質を含有する化学発光試薬を過酸化水素の存在下において塩基性条件下で、試料中のペルオキシダーゼの作用により発光反応させ、その発光量を測定することにより、ペルオキシダーゼ活性を定量するものである。
【0034】
前記化学発光試薬は、塩基性条件下に過酸化水素及びペルオキシダーゼの存在で反応して発光するので、この化学発光反応を過酸化水素の検出及びペルオキシダーゼの定量等に利用することが可能であり、ペルオキシダーゼを標識物質として用いることにより、さらに、種々の物質の定量に用いることが可能になる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例等により限定されるものではない。
【0036】
[実施例1]
化学発光試薬の調製
ルシゲニン1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射してから、トリエタノールアミン0.5mlを添加し混合することにより化学発光試薬を得た。
ペルオキシダーゼ活性の測定
この化学発光試薬を8×10-4Mのp−ヨードフェノール75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液で500倍に希釈して化学発光試薬溶液を調製した。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)溶液100μlを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液100μl及び0.0017重量%過酸化水素の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液50μlを順次注入して発光反応させた後、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で0〜5秒間発光量を積算した結果、表1に示す発光強度が得られ、HRPを1×10-19 mol/assayまで測定することが可能であり、トリエタノールアミンを添加していない比較例1に較べて感度及び発光強度において改善が認められた。
【0037】
【表1】
【0038】
[実施例2]
化学発光試薬の調製
ルシゲニン1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射してから、モノエタノールアミン0.1mlを添加し混合することにより化学発光試薬を得た。
ペルオキシダーゼ活性の測定
この化学発光試薬を8×10-4Mのp−ヨードフェノール75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液で500倍に希釈して化学発光試薬溶液を調製した。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)溶液100μlを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液100μl及び0.0017重量%過酸化水素の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液50μlを順次注入して発光反応させた後、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で0〜5秒間発光量を積算した結果、表2に示すような発光強度が得られ、HRPを1×10-19 mol/assayまで測定することが可能であり、モノエタノールアミンを添加していない比較例1に較べて感度及び発光強度において改善が認められた。
【0039】
【表2】
【0040】
[実施例3]
化学発光試薬の調製
ルシゲニン1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射してから、トリイソプロパノールアミン0.1mlを添加し混合することにより化学発光試薬を得た。
ペルオキシダーゼ活性の測定
この化学発光試薬を8×10-4Mのp−ヨードフェノール75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液で500倍に希釈して化学発光試薬溶液を調製した。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)溶液100μlを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液100μl及び0.0017重量%過酸化水素の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液50μlを順次注入して発光反応させた後、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で0〜5秒間発光量を積算した結果、表3に示す発光強度が得られた。この結果によれば、HRPを1×10-19 mol/assayまで測定することが可能であり、トリイソプロノールアミンを添加していない比較例1に較べて感度及び発光強度において改善が認められた。
【0041】
【表3】
【0042】
[比較例1]
化学発光試薬の調製
ルシゲニン1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルホルムアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射することにより化学発光性物質を含む反応生成物を含有する化学発光試薬を得た。
ペルオキシダーゼ活性の測定
この化学発光試薬を8×10-4Mのp−ヨードフェノール75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液で500倍に希釈して化学発光試薬溶液を調製した。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液100μlを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液100μl及び0.0017重量%過酸化水素の75mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0) 溶液50μlを順次注入して発光反応させた後、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で0〜5秒間発光量を積算した結果、表4に示すような発光強度が得られた。この結果によれば、HRPを5×10-19 mol/assayまで測定することが可能であった。
【0043】
【表4】
【0044】
【発明の効果】
本発明のペルオキシダーゼ活性の測定方法により、ペルオキシダーゼ酵素活性を従来から広く使用されているルミノールを用いる測定系よりも高感度で測定することが可能であり、ペルオキシダーゼを標識物質に用いる酵素免疫測定方法により抗原、抗体類を、また、ハイブリダイゼーションアッセイ法により核酸類を各々より高感度で検出又は定量することができる。
Claims (9)
- 下記一般式(1)
で表わされるN,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類を
下記一般式(2)
で表わされるN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後に
下記一般式(3)
で表されるアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光試薬を用い、水素受容体の存在下においてペルオキシダーゼ酵素活性を測定することを特徴とする化学発光法によるペルオキシダーゼ活性の測定方法。 - 下記一般式(1)
で表わされるN,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類を
下記一般式(2)
で表わされるN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在下において光照射により反応させる際に、その反応時及び/又は反応後に
下記一般式(3)
で表されるアミノアルコール化合物を添加することにより得られる化学発光試薬を用い、発光増強剤としてフェノール性化合物を加え、水素受容体の存在下においてペルオキシダーゼ酵素活性を測定することを特徴とする化学発光法によるペルオキシダーゼ活性の測定方法。 - 前記N,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類が、N,N'−ジメチル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩、N,N'−ジエチル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩、N,N'−ジプロピル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩、N,N'−ジブチル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩、N,N'−ジペンチル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩、N,N'−ジフェニル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩、N,N'−m−クロロフェニル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩である請求項1又は2に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
- 前記N,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類がN,N'−ジメチル−9,9'−ビスアクリジニウムジナイトレート(ルシゲニン)である請求項1又は2に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
- 前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物が、N、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド又はN−メチル−2−ピロリドンである請求項1ないし4のいずれかの1項に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
- 前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物がN,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドである請求項1ないし5のいずれかの1項に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
- 前記アミノアルコール化合物がモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項1ないし6のいずれかの1項に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
- 前記水素受容体が過酸化水素または過酸化水素源である請求項1ないし7のいずれかの1項に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
- 前記発光増強剤がp−ヨードフェノール、p−フェニルフェノールおよび6−ヒドロキシベンゾチアゾールからなる群より選択される少なくとも1種のフェノール性化合物である請求項2ないし8のいずれかの1項に記載のペルオキシダーゼ活性の測定方法。
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