JP3827465B2 - 改良された化学発光試薬 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ペルオキシダーゼ酵素量に依存して過酸化物等の水素受容体により化学発光し、ペルオキシダーゼ酵素活性を長期間に亘り高感度に測定することができる改良された化学発光試薬に関し、更に詳しくは、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体及びN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物からなる化学発光系、又はN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及び特定のアミノアルコール化合物からなる化学発光系に糖類及び/又は糖アルコール類を添加し凍結乾燥してなる、ペルオキシダーゼ酵素活性を長期間に亘り高感度に測定することができ、化学発光分析による種々の物質の検出及び定量等に用いられる改良された化学発光試薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
ペルオキシダーゼ酵素量に依存して過酸化物等の水素受容体により化学発光する化学発光性物質としては、ルミノール類がよく知られているが、化学発光量がそれ程大きくないために発光量を増幅させる目的で種々の発光促進剤が検討されており、その一つとしてフェノールインドフェノール誘導体を発光促進剤としてペルオキシダーゼ酵素活性を測定する試みが為されており、化学発光量の増幅効果が認められている。しかしながら、この発光促進剤は不安定で長期保存には耐えられないと云う欠点を有している。この欠点を補う目的でサイクロデキストリン誘導体などの安定化剤をもちいる方法等が行われている。しかしながら、ペルオキシダーゼ酵素活性の測定を酵素免疫測定法に応用する場合には、酵素の低濃度領域での定量性を更に高める必要性が生じるケースが多く、ペルオキシダーゼ酵素活性を長期間に亘り更に高感度に測定することができる改良された化学発光試薬の開発が望まれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、過酸化水素等の過酸化物を基質とするペルオキシダーゼのモル数に依存して化学発光し、長期間に亘りペルオキシダーゼ酵素活性をより高感度に測定することができる改良された化学発光試薬を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行なった結果、特定のN,N’−ジ置換−9,9’−ビスジアクリジニウム塩類の電荷移動錯体及びN,N−ジ置換カルボンアミド化合物を含む混合物又はこれに特定のアミノアルコール化合物を添加した混合物に糖類及び/又は糖アルコール類を添加し凍結乾燥してなる化学発光試薬が、特定pH条件下において、過酸化水素とは反応せず、長期間の保存の後にも過酸化水素とペルオキシダーゼの存在下に、ペルオキシダーゼのモル数に依存して化学発光することを見い出し、これらの知見に基いて本発明に到達したものである。
【0005】
従って、本発明は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体及びN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物からなる化学発光系、又はN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及び特定アミノアルコール化合物からなる化学発光系に糖類及び/又は糖アルコール類を添加し凍結乾燥してなることを特徴とする化学発光試薬に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の化学発光試薬の成分の一つであるN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体は、
次の一般式(1)
【0007】
【化4】
で表される。
上記一般式(1)において、R1 及びR2 は、アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基からなる群より選択され、互いに同一でも又は異なるものでもよい。アルキル基、アリール基及びハロゲン化アリール基は、炭素数1〜20を有するものであり、好ましいアルキル基は炭素数1〜10のものである。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基及びデシル基等の直鎖状アルキル基又はこれらの分岐状アルキル基を挙げることができる。また、アリール基は炭素数6〜20のものが好ましく、例えばフェニル基、トリール基、キシリル基等を挙げることができ、さらにアルキル基で置換されたものでもよい。アリール基としては、特にフェニル基が好ましい。ハロゲン化アリール基としてはハロゲン化フェニル基、ハロゲン化トリル基、ハロゲン化キシリル基等を挙げることができ、特にクロロフェニル基が好ましい。
【0008】
一般式(1)において、R3 、R4 、R5 及びR6 は、それぞれ水素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基及びハロゲン基からなる群より選択され、互いに同一でも又は異なるものでもよい。これらの炭化水素基としては、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のものを挙げることができる。例えば、炭素数1〜20の直鎖状又は分岐状アルキル基、アルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、アリーロキシ基を挙げることができ、アリール基、アリーロキシ基はアルキル基が置換されたものでもよい。
また、一般式(1)において、X・は前駆体ビスアクリジニウム塩の対アニオンから電子が移動した残基である酸ラジカルを示す。
【0009】
N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体は、紫外吸収スペクトルにおける550nm付近に出現する極大を有する巾広い吸収帯を分光光度計を用いて測定することができる。
【0010】
上記N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体の具体的な例としては、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジエチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジプロピル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジイソプロピル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジブチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジイソブチル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジフェニル−9,9’−ビスアクリジニウム塩、N,N’−ジ−m−クロロフェニル−9,9’−ビスアクリジニウム塩等の電荷移動錯体が挙げられるが、これらのなかで、特に、N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジナイトレート(ルシゲニン)の電荷移動錯体が好適に用いられる。
【0011】
N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体の前駆体であるN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の対イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン及びカルボン酸イオン等が非限定的に挙げられる。
上記化学発光試薬の成分の一つであるN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物は、
下記一般式(2)
【0012】
【化5】
で表わすことができる。
一般式(2)において、R1 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択され、該アリール基はアルキル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子等で置換されていてもよい。R2 はメチル基及びエチル基からなる群より選択される。R3 は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び炭素数6〜20のアリール基からなる群より選択され、該アリール基はアルキル基、ニトロ基、水酸基、アミノ基又はハロゲン原子等で置換されていてもよい。また、R1 及びR3 は、互いに結合して、それぞれが結合しているカルボニル基の炭素原子及びアミド基の窒素原子と共に環を形成していてもよい。
【0013】
上記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が非限定的に挙げられる。
更に、上記化学発光試薬の成分の一つであるアミノアルコール化合物は、下記一般式(3)
【0014】
【化6】
で表わされる化合物である。
一般式(3)において、Rは炭素数1〜5の二価の脂肪族炭化水素を表わし、mは1〜3の整数を表わす。
【0015】
上記アミノアルコール化合物の具体的な例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等を非限定的に挙げることができる。
【0016】
更に、本発明の化学発光試薬の成分である糖類の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種のセルロース誘導体を挙げることができる。また、糖アルコール類の具体例としては、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、リビトールからなる群より選択される少なくとも一種の化合物を非限定的に挙げることができる。
【0017】
本発明の化学発光試薬を構成する成分であるN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体の前駆体であるN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類は、他の成分であるN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の存在により自然光等により容易に電荷移動錯体に転化する現象が認められる。また、このN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物は、生成した電荷移動錯体のラジカルの安定性にも寄与していると考えられ、求核性の弱い酸からなるN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体の形成及び安定化の必須成分として作用している。また、この化学発光系へ特定のアミノアルコール化合物を添加した化学発光系において、アミノアルコール化合物の添加は、発光反応のブランク値を低下させると共に、より広いペルオキシダーゼ濃度範囲において安定した化学発光反応を実現することが可能になる。このアミノアルコール化合物の添加効果については必ずしも明確ではないが、対イオンからアクリジン環への電荷移動に関与してその反応を促進すると共に、生成する電荷移動錯体の有するラジカルを一層安定化して発光反応時における溶存酵素との反応を阻止してブランク値を高める要因を排除することにより、ブランク値の低い安定した高感度測定を可能にしているものと考えられる。
【0018】
本発明の化学発光試薬の構成成分であるN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体及びN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物を含む混合物からなる発光系、又はN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物及びアミノアルコール化合物を含む混合物からなる発光系は、多くの場合、N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物の溶液として調製されるが、こられの発光系は不活性ガス雰囲気下、冷暗所での保存において120日経過時点よりその発光量が徐々に低下する傾向が見られるが、これらの系に糖類及び/又は糖アルコール類を添加して凍結乾燥することにより不活性ガス雰囲気下、冷暗所での保存において360日経過後もその発光量に変化は認められず、良好な長期保存安定性を有することが認められた。
【0019】
更に、この糖類及び/又は糖アルコール類の添加により、本発明の構成成分である上記発光系は安定化され、これらの安定化剤の非存在下での凍結乾燥処理において上記発光系は失活してその化学発光性能の大部分を失うのに較べ、驚くべきことに、これらの安定化剤の添加により凍結乾燥処理後もその化学発光性能には全く変化がなく、その活性を保持することが可能である。
【0020】
本発明の化学発光試薬の製造方法は任意であるが、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類を等モル以上のN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物と混合して自然光の下に放置することにより得られるが、電荷移動錯体の生成は光により触媒されるので、光照射下に反応を行なうのが好ましい。この光照射に用いる光源としては、波長領域が約290〜800nmの範囲の紫外可視部が用いられ、特に約400〜800nmの範囲の可視光が望ましい。これらの光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、殺菌灯、蛍光灯及び白熱電灯等を非限定的に用いることができるが、白熱電灯が好ましく用いられる。
【0021】
また、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体とN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物との混合比は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体に対してN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物を1〜1万倍モル、好ましくは1〜5千倍モルの割合で用いることができる。N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物は溶媒としての機能を兼用させて大過剰に用いるのが好適である。
【0022】
また、この化学発光系への特定のアミノアルコール化合物の添加は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動反応時及び/又は反応後に行なうことができるが、電荷移動反応後に添加するのが好ましい。アミノアルコール化合物の添加量は、N,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体に対してアミノアルコール化合物を1〜1万倍モル、好ましくは1〜2千倍モルの量で用いることができる。
【0023】
これらの発光系への糖類及び/又は糖アルコール類の添加方法は任意であるが、これらの発光系溶液に糖類及び/又は糖アルコール類を直接添加して溶解させるか、或いは糖類及び/又は糖アルコール類を溶媒に溶解させた溶液を添加して混合する方法等が挙げられる。これらの糖類及び/又は糖アルコール類の添加量はそれらの化合物の種類によって異なるが、概して、発光系の溶液に対して0.01〜5重量%、好ましくは0.2〜2重量%の範囲の量で用いることができる。
【0024】
本発明の化学発光試薬の調製は、これらの成分を含有する溶液を凍結乾燥させることによって完結するが、その凍結乾燥を行なう方法は任意であり、市販の凍結乾燥機を使用することによって行なうことができる。その場合、減圧度は5mTorr以下の高真空下に行なうのが望ましい。この凍結乾燥処理により、溶媒としての機能を果たしていたN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物は凍結後に大部分は昇華して系外に排出されるが、一部は凍結乾燥後にも残存して固体化したN,N’−ジ置換−9,9’−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体の安定化に寄与していることがそのNMRスペクトル等から推察される。
【0025】
本発明の化学発光試薬は、その凍結乾燥品を適当な緩衝液で溶解させて使用する。緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン緩衝液等を任意に用いることができる。
【0026】
また、本発明の化学発光試薬は、pH7.5〜13の塩基性条件下において、過剰の水素受容体の存在下、ペルオキシダーゼの濃度に依存した量で発光する。この発光は、フェノール性化合物等の発光促進剤によって増強することが認められる。このようなフェノール性化合物としては、p−ヒドロキシ桂皮酸、p−フェニルフェノール、p−(4−クロロフェニル)フェノール、p−(4−ブロモフェニル)フェノール、p−(4−ヨードフェニル)フェノール、p−ヨードフェノール、p−ブロモフェノール、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−クマル酸、6−ヒドロキシベンゾチアゾール、2−ナフトール、ホタルルシフェリン等が非限定的に挙げられる。
【0027】
水素受容体としては、ペルオキシダーゼ酵素の基質となり得るものであれば特に限定されるものではなく、無機過酸化物、有機過酸化物等を任意に用いることができるが、特に過酸化水素が好ましい。
【0028】
本発明の化学発光試薬を用いて化学発光分析を行なう場合には、化学発光試薬は10-8〜1M、好ましくは10-6〜10-2Mの範囲の濃度で用いられ、その使用量としては、10〜500μl、好ましくは50〜300μlの範囲が望ましい。また、発光促進剤の使用量は、化学発光試薬の0.01〜100倍モル、好ましくは0.1〜10倍モルの範囲であり、その濃度としては、10-6〜1M、好ましくは10-4〜10-2Mの範囲が望ましい。
【0029】
また、化学発光反応に用いる過酸化水素の量は、化学発光試薬に対して充分に過剰な量で用いることが必要であり、その使用量は化学発光試薬に対して3〜1万倍モル、好ましくは10〜1000倍モルの範囲で用いるのが望ましい。
【0030】
また、ペルオキシダーゼを標識物質として抗体、核酸等を標識して種々の物質を定量する場合には、特に限定されるものではないが、ペルオキシダーゼとして、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)が好ましく用いられる。
【0031】
化学発光反応に用いる緩衝液としては、トリス緩衝液、リン酸緩衝液、ほう酸緩衝液、炭酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液等を任意に挙げることができる。これらの緩衝液の濃度は1mM〜1Mの範囲が望ましい。また、反応時に界面活性剤、キレート剤等の添加剤を任意に用いることができる。
【0032】
【実施例】
以下、参考例及び実施例を示し、本発明を具体的に説明する。もっとも、本発明は実施例等により限定されるものではない。
【0033】
[参考例1]
N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジ硝酸塩の電荷移動錯体、N,N−ジメチルアセトアミド及びメチルセルロースを含む化学発光試薬の調製
ルシゲニン1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射することによりN,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウム硝酸塩の電荷移動錯体及びN,N−ジメチルアセトアミドを含有する化学発光系を得る。尚、電荷移動錯体の生成は、紫外吸収スペクトルにおける550nm付近に極大をもつ幅広い吸収帯の出現を分光光度計を用いる方法により測定して確認する。次いで、これにメチルセルロース0.5重量%、N,N−ジメチルアセトアミド1mlを添加して混合した後、凍結乾燥機(レイタントライフサイエンス(株)製LFD−600DNA)を用い、1mTorr以下の真空度、トラップ温度−80℃で15時間凍結乾燥させることにより化学発光試薬を得る。この化学発光試薬は、4℃の冷蔵庫に遮光して保存する。
【0034】
〔実施例1〕
参考例1で調製した化学発光試薬に10mlの75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)を加えて溶解させた後、その50μlを採り、75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)2.95mlと混合する。次に、この溶液に10mMのp−ヨードフェノールを含む0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)溶液100μlを添加し混合して化学発光試薬溶液を調製する。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)溶液100μlずつを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液及び0.0017重量%過酸化水素水溶液100μlを順次注入して発光反応させ、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で1〜5秒間積算した結果、表1に示すような発光強度が得られ、ペルオキシダーゼ活性を1×10-13 mol/lの濃度まで測定できることが認められた。更に、この化学発光試薬を、4℃の冷蔵庫に遮光して1年間保存した後、上記と同様の方法で西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の活性を測定した結果、表1に示すような発光強度が得られ、本発明の化学発光試薬の性能に大きな変化は認められなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
[参考例2]
N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジ硝酸塩の電荷移動錯体、N,N−ジメチルアセトアミド、トリエタノールアミン及びマンニトールを含有する化学発光試薬の調製
ルシゲニン1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射してから、トリエタノールアミン0.5mlを添加し混合することにより化学発光系を得る。尚、電荷移動錯体の生成は参考例1と同様の方法で確認する。次いで、これにマンニトールの0.5重量%N,N−ジメチルアセトアミド1mlを添加して混合した後、凍結乾燥機(レイタントライフサイエンス(株)製LFD−600DNA)を用い、1mTorr以下の真空度、トラップ温度−80℃で15時間凍結乾燥させることにより化学発光試薬を得る。この化学発光試薬は、4℃の冷蔵庫に遮光して保存する。
【0037】
〔実施例2〕
参考例2で調製した化学発光試薬に10mlの75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)を加えて溶解させた後、その50μlを採り、75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)2.95mlと混合する。次に、この溶液に10mMのp−ヨードフェノールを含む0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)溶液100μlを添加し混合して化学発光試薬溶液を調製する。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)溶液100μlずつを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液及び0.0017重量%過酸化水素水溶液100μlを順次注入して発光反応させ、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で1〜5秒間積算した結果、表2に示すような発光強度が得られ、ペルオキシダーゼ活性を1×10-13 mol/lの濃度まで測定できることが認められた。更に、この化学発光試薬を、4℃の冷蔵庫に遮光して1年間保存した後、上記と同様の方法で西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の活性を測定した結果、表2に示すような発光強度が得られ、本発明の化学発光試薬の性能に大きな変化は認められなかった。
【0038】
【表2】
【0039】
[参考例3]
N,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウムジ沃化水素酸塩の電荷移動錯体、N,N−ジメチルアセトアミド、トリエタノールアミン及びソルビトール を含有する化学発光試薬の調製
ルシゲニンの1×10-2mol/lの水溶液に、2倍モルの固体の沃化カリウムを添加し、室温で1時間攪拌することにより赤色沈殿が生成する。この赤色沈殿を含む反応液をナス型フラスコに入れ、ロータリーエバポレーターを用いて減圧下に60℃で溶媒の水を蒸発して乾固させ、赤色沈殿からなる残渣をベンゼンで洗浄して副生物を除去し、ベンゼン不溶分を濾別し乾燥して粗生成物を得る。次に、この粗生成物に少量の水を加え、遮光下に95℃の湯浴上で加熱して溶解した後、室温に戻してから、更に、4℃に冷却放置し、生成する沈殿を濾別、乾燥して未反応物を除去してN,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウム沃化水素酸塩を約70%の収率で得る。次に、この化合物1.5mgを試験管に採り、これにN,N−ジメチルアセトアミド1mlを加えて溶解させた後、30℃の温度の水浴中で250Wのコピーランプを7時間照射してから、トリエタノールアミン0.5mlを添加し混合することによりN,N’−ジメチル−9,9’−ビスアクリジニウム沃化水素酸塩の電荷移動錯体及びトリエタノールアミンを含有する化学発光系を得る。尚、電荷移動錯体の生成は、参考例1と同様の方法で確認する。次いで、これにソルビトールの0.5重量%N,N−ジメチルアセトアミド1mlを添加して混合した後、凍結乾燥機(レイタントライフサイエンス(株)製LFD−600DNA)を用い、1mTorr以下の真空度、トラップ温度−80℃で15時間凍結乾燥させることにより化学発光試薬を得る。この化学発光試薬は、4℃の冷蔵庫に遮光して保存する。
【0040】
〔実施例3〕
参考例3で調製した化学発光試薬に10mlの75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)を加えて溶解させた後、その50μlを採り、75mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)2.95mlと混合する。次に、この溶液に10mMのp−ヨードフェノールを含む0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)溶液100μlを添加し混合して化学発光試薬溶液を調製する。また、化学発光測定用マイクロプレートの複数のウェルに西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の種々の濃度水準の0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.8)溶液100μlずつを充填し、これに溶液注入装置から前記化学発光試薬溶液及び0.0017重量%過酸化水素水溶液100μlを順次注入して発光反応させ、この発光量をルミノメーター(ダイアヤトロン社製ルミナスCT−9000D)で1〜5秒間積算した結果、表3に示すような発光強度が得られ、ペルオキシダーゼ活性を1×10-13 mol/lの濃度まで測定できることが認められた。更に、この化学発光試薬を、4℃の冷蔵庫に遮光して1年間保存した後、上記と同様の方法で西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)の活性を測定した結果、表3に示すような発光強度が得られ、本発明の化学発光試薬の性能の大きな変化は認められなかった。
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】
本発明により提供される新規化学発光試薬は、安価な製造原料を用いて比較的短時間で容易に製造でき、且つ長期間に亘ってその活性を保持することが可能であり、過酸化水素とペルオキシダーゼの存在下に、ペルオキシダーゼの濃度に依存して化学発光する性質を利用して、ペルオキシダーゼ酵素を高感度で検出することができる。更に、ペルオキシダーゼを標識物質として抗原、抗体、核酸等を標識した酵素標識物を用いて、酵素免疫測定法により抗原、抗体等を、ウェスタンブロット法により蛋白質を、サザーン及びノーザンブロット法によりDNA及びRNAを、そして酵素標識核酸プローブを用いて核酸をそれぞれ特異的に且つ高感度で測定することができる。
Claims (7)
- 下記一般式(1)
で表わされるN,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体、及び下記一般式(2)
で表わされるN,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物を主成分とする化学発光系、又はこの化学発光系に、下記一般式(3)
で表わされるアミノアルコール化合物を添加してなる化学発光系に、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択される少なくとも一種のセルロース誘導体を含有する糖類及び/又はソルビトール、マンニトール、エリスリトール及びリピトールからなる群より選択される少なくとも一種の糖アルコール類を添加し凍結乾燥してなることを特徴とする化学発光試薬。 - 前記N,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体が、N,N'−ジメチル−9,9'−ビスアクリジニウム塩又はN,N'−ジエチル−9,9'−ビスアクリジニウム塩である請求項1に記載の化学発光試薬。
- 前記N,N'−ジ置換−9,9'−ビスアクリジニウム塩類の電荷移動錯体が、N,N'−ジメチル−9,9'−ビスアクリジニウムジナイトレート又はN,N'−ジメチル−9,9'−ビスアクリジニウムジ塩酸塩の電荷移動錯体である請求項1に記載の化学発光試薬。
- 前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びN−エチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1ないし3のいずれかの請求項に記載の化学発光試薬。
- 前記N,N−ジ置換カルボン酸アミド化合物が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド及びN−メチル−2−ピロリドンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項1又は2に記載の化学発光試薬。
- 前記アミノアルコール化合物が、モノエタノールアミン、ジュタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン及びジイソプロパノールアミンからなる群より選択される少なくとも一種の化合物である請求項1又は2に記載の化学発光試薬。
- 請求項1に記載の化学発光試薬を用いて、水素受容体の存在下においてペルオキシダーゼ酵素活性を測定することを特徴とする化学発光法によるペルオキシダーゼ活性の測定方法。
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