JP3792295B2 - 新規なアミノ酸エステル塩及びその製造法並びにそれを含有する柔軟剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規なアミノ酸エステル塩及びその製造法並びにそれを含有する柔軟剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
現在、繊維用柔軟仕上げ剤または毛髪処理剤として市販されている商品はほとんどが、ジ(硬化牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロライドに代表されるような1分子中に2つの長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩を含む組成物である。
しかしながら、上記第4級アンモニウム塩は、処理後の残存物が河川などの自然界に放出された場合、ほとんど生分解されずに蓄積されるという問題点がある。
【0003】
このような問題点の改良品としてN−メチル−N, N−ビス〔硬化牛脂アルカノイルオキシエチル〕−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム メチルサルフェートやN, N−ジメチル−N, N−ビス〔アルカノイルオキシエチル〕アンモニウム クロライドなどが上市されているが、これらのものは上記第4級アンモニウム塩と比較して生分解性は改善されているが柔軟性、環境安全性が充分満足のいく基剤とは言えない。
【0004】
従って、本発明の目的は、柔軟性に優れ、かつ生分解性の良い柔軟基剤として適した化合物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の新規アミノ酸エステル塩が上記目的に最適であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、一般式(I)で表わされるアミノ酸エステル塩を含有する繊維用柔軟仕上剤を提供するものである。
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、R1及びR2は同一もしくは異なって、炭素数8〜36の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、R3及びR4は同一もしくは異なって炭素数2〜4のアルキレン基を示し、p 及びq はそれぞれアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す0〜4の数であり、p 個のR3、q 個のR4は同一でも異なっていても良い。r は1又は2、 X- は無機もしくは有機酸から水素原子1個を除いた陰イオン基を示す。)
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
本発明の一般式(I)で表わされるアミノ酸エステル塩において、R1及びR2は同一もしくは異なって、炭素数8〜36の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数12〜22の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、更に好ましくは炭素数14〜18の直鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R1とR2が同一のものが好ましい。
【0010】
R3及びR4は同一もしくは異なって炭素数2〜4のアルキレン基を示し、p 個のR3、q 個のR4は同一でも異なっていても良いが、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、エチレン基が特に好ましい。
p 及びq はそれぞれ0〜4の数を示すが、0が好ましい。
【0011】
X-は無機もしくは有機酸から水素原子1個を除いた陰イオン基を示すが、ハロゲンイオン、スルホン酸イオンまたは硫酸イオンが好ましく、Cl- 、p−トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、硫酸イオンが更に好ましい。
【0012】
一般式(I)で表わされるアミノ酸エステル塩としては、例えば次のようなものが挙げられる。
【0013】
【化4】
【0014】
一般式(I)で表わされるアミノ酸エステル塩は次のようにして製造される。すなわち、一般式(II)
【0015】
【化5】
【0016】
(式中、r は前記の意味を示す。)
で表わされるアミノ酸を、一般式(III)
HX (III)
(式中、X は前記の意味を示す。)
で表わされる無機もしくは有機酸で中和した後、一般式 (IV) 又は(IV')
R1O-(R3O)p-H (IV)
R2O-(R4O)q-H (IV')
(式中、R1, R2, R3, R4, p 及びq は前記の意味を示す。)
で表わされる高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物の1種又は2種以上でエステル化することにより製造される。
【0017】
一般式(II)で表されるアミノ酸としては、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸が挙げられる。これらのアミノ酸の中和は、アミノ酸を水溶液とした後、一般式(III) で表される無機もしくは有機酸を加えても良いし、また、次のエステル化に用いる一般式 (IV) 又は(IV') で表される高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物中に分散させた後、一般式(III) で表される無機もしくは有機酸を加えても良い。あるいは次のエステル化に用いる溶媒中で中和しても良い。中和に用いる一般式(III) で表される無機もしくは有機酸としては、強酸であれば何でも良いが、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などが好ましい。一般式(III) で表される無機もしくは有機酸の添加量は、一般式(II)で表されるアミノ酸に対して1当量を加えれば充分であるが、さらに過剰に加えればエステル化の触媒として働き好ましい。従って、一般式(III) で表される無機もしくは有機酸の添加量は、一般式(II)で表されるアミノ酸に対して1.0 〜1.2 当量が好ましく、1.0 〜1.1 当量が更に好ましい。
【0018】
次に、一般式 (IV) 又は(IV') で表される高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物でエステル化するが、ここで用いられる高級アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ドコサノール、オレイルアルコールあるいはこれらのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0019】
エステル化はベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶媒の存在下、もしくは無溶媒で行なわれる。エステル化の反応温度は80℃〜200℃、好ましくは80℃〜120℃である。生成する水を留去させながら反応するのが好ましく、また常圧もしくは減圧下で反応するのが好ましい。
【0020】
溶媒を用いた場合、反応終了後溶媒を留去すれば、一般式(I)で表わされるアミノ酸エステル塩を得ることができる。
得られたアミノ酸エステル塩は赤外線吸収スペクトル、 1H−NMRスペクトルからその構造を確認することができる。
【0021】
このようにして得られる本発明の一般式(I)で表されるアミノ酸エステル塩を水中に分散させることにより繊維の柔軟仕上剤として使用できる。本発明の柔軟仕上剤中の一般式(I)で表されるアミノ酸エステル塩の含有量は2〜40重量%が好ましい。2重量%以上で充分な柔軟効果を得ることができ、40重量%以下では組成物の粘性が増大せずハンドリングが良好となる。
【0022】
本発明の柔軟仕上剤には、更に柔軟性能、保存安定性を向上させるために、高級アルコール、高級脂肪酸、その他粘度調整剤、保存安定剤として低級アルコール、更には公知のカチオン活性剤、ノニオン活性剤、無機塩、pH調整剤、ハイドロトロープ剤、香料、消泡剤、顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0023】
本発明の柔軟仕上剤は、一般式(I)で表されるアミノ酸エステル塩及びその他の成分を溶融混合し、攪拌下、脱イオン水の中に徐々に滴下してエマルジョン化することにより調製することができる。
【0024】
本発明の柔軟仕上剤は、繊維に柔軟性及び弾力性を付与するための柔軟仕上剤として用いることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0026】
実施例1
攪拌機、脱水管、温度計を付けた4つ口フラスコにトルエン 200mlを入れ、アスパラギン酸26.6gを分散させた後、p−トルエンスルホン酸(1水塩)38.2gを加え中和した。次にオクタデカノール 108.0gを加え、 105℃で6時間、生成する水を留去しながらエステル化を行なった。反応終了後、減圧で溶媒を留去し、下記の構造式(A)で表わされるアミノ酸エステル塩 170.5gを得た。
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
IRスペクトル(KBr錠剤)
1760cm-1,1740cm-1,1600cm-1
実施例2
攪拌機、脱水管、温度計を付けた4つ口フラスコに10%塩酸 120gを入れ、グルタミン酸44.1gを加え中和した。次にヘキサデカノール 145.2gを加え、50torrで水を留去させながら 120℃まで昇温した。そのまま6時間、生成する水を留去しながらエステル化を行なった。反応終了後、減圧で溶媒を留去し、下記の構造式(B)で表わされるアミノ酸エステル塩 185.3gを得た。
【0030】
【化8】
【0031】
【化9】
【0032】
IRスペクトル(KBr錠剤)
1740cm-1,1710cm-1
実施例3
攪拌機、脱水管、温度計を付けた4つ口フラスコにトルエン 200mlを入れ、アスパラギン酸26.6gを分散させた後、p−トルエンスルホン酸(1水塩)38.2gを加え中和した。次にオレイルアルコールのエチレンオキサイド付加物(平均付加モル数 3.0) 162.3gを加え、 105℃で6時間、生成する水を留去しながらエステル化を行なった。反応終了後、減圧で溶媒を留去し、下記の構造式(C)で表わされるアミノ酸エステル塩 210.5gを得た。
【0033】
【化10】
【0034】
【化11】
【0035】
IRスペクトル(KBr錠剤)
1760cm-1,1740cm-1,1600cm-1
試験例
実施例1〜3で得られたアミノ酸エステル塩を含有する柔軟剤組成物について、下記の方法で柔軟性を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
<柔軟性評価方法>
▲1▼ 柔軟剤組成物の調製
実施例1〜3で得られたアミノ酸エステル塩を融解し、攪拌しながら温水中に滴下し、アミノ酸エステル塩の濃度が5重量%になるように分散液を調製して柔軟剤組成物を得た。
【0037】
▲2▼ 処理方法
市販の木綿タオル2kgを、30リットルの洗濯機を用い、 3.5°DH硬水にて市販洗剤アタック(花王株式会社製、登録商標)で5回繰り返し洗濯した後、すすぎ時に上記のアミノ酸エステル塩の分散液からなる柔軟剤組成物25mlを投入し、25℃、1分間攪拌下で処理した。
【0038】
▲3▼ 柔軟性評価方法
上記方法で処理した木綿タオルを室温で風乾後、25℃、65%RHの恒温、恒湿室にて24時間放置した。これらについて柔軟性の評価を行なった。評価は柔軟基剤として一般的なジメチルジ硬化牛脂アルキルアンモニウム クロライドで上記処理をした木綿タオルを対照にして一対比較を行い、下記の基準で評価した。
【0039】
評価基準
3;対照より柔らかい
2;対照よりやや柔らかい
1;対照と同等
0;対照の方がやや柔らかい
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜3で得られたアミノ酸エステル塩を含有する柔軟剤組成物で処理したものはいずれの場合も、対照に比べ柔軟性に優れていた。
Claims (2)
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