JP3783334B2 - ポリエステルフィラメント経編地 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸湿性のあるポリエステル使いフィラメント経編地に関する。さらに詳しくは、洗濯耐久性に優れた吸湿性、制電性、抗菌性などの優れた複合機能を有するポリエステルフィラメント経編地に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的に作業服には、形態安定性、機械強度、耐薬品性、耐熱性、洗濯耐久性などに優れていることから、ポリエステル繊維が中心的に使用されている。しかし、ポリエステル繊維は極めて吸湿率が低いため、作業服のように運動量が多く、かつ長時間にわたる状態で着用される場合には、発汗によるムレやベタツキなどの温熱的不快感や、汗や汗の中で繁殖する細菌による臭いなどの臭気的不快感を生じやすい。さらに、電荷を帯びやすく、摩擦帯電圧が高くなるため、放電衝撃による不快感や製品への障害を起こしやすいなどの問題があった。
【0003】
このような点で、天然繊維やセルロース系合成繊維よりも劣り、作業服用途への進出は一部で制限されているのが実情である。
【0004】
この欠点を解消するため、たとえば特公昭60−475号公報、実公昭60−40612号公報、あるいは特開昭60−215835号公報に記載されているように、平衡水分率(吸湿率)の高い繊維とポリエステルとの混繊、合撚、引揃えなどにより布帛として吸湿快適性を得んとする試みが提案されている。これらの方法を用いることで確かに快適性は向上するものの、汗や汗の中で繁殖する細菌による臭いなどの臭気的不快感の解消効果は十分とはいえず、また、ポリエステルを染色する際に一般に使用される分散染料によって汚染を生じたり、同色性に劣ったり、ポリエステル本来の物理的特性が失われるという問題点があった。
【0005】
また、ポリエステル/綿混合素材はポリエステル100%素材に比べて、形態安定性や摩耗耐久性に劣る傾向がある。形態安定性については近年、形態安定加工技術が進みかなり改善されているが、複雑な工程を経るため比較的高価な加工技術であり、形態安定加工により綿の吸湿性が一部損なわれているものも見受けられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステルの特性である形態安定性、強度保持性や耐薬品性を具備しながら、洗濯耐久性に優れた吸湿性、制電性、抗菌性などの複合機能を有する上に、着用感の快適な衣料用生地、特に作業服地を提供するためのポリエステルフィラメント経編地を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリエステルフィラメント経編地は、ポリスルホン酸を主体とする化合物が1〜20%owf および、第4級アンモニウム塩が0.02〜10%owf 付与されたポリエステル経編地であって、該ポリエステル経編地の経編地密度がウェル方向は18〜40ウェル/インチ、コ−ス方向は30〜70コース/インチであって、フロント、ミドルおよびバック糸のうち少なくともいずれかにおいて、単糸繊度0.1〜20デニール、総繊度15〜350デニールの糸を用いてなり、かつ、該経編地が、吸放湿パラメーター(△MR)が1%以上で、JIS L−1094 B法による摩擦帯電圧が3kv未満であり、かつ、菌数測定法による菌数増減値差が1.6以上であるという機能を有することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、ポリエステルフィラメント経編地の欠乏している特性である吸湿性、制電性および抗菌性などの複合機能を洗濯耐久性に優れた状態にすべく鋭意検討したところ、該経編地を特定な条件を満足する編構造にして、ポリスルホン酸化合物と第4級アンモニウム塩とを同時に付与してみたところ、意外にも、かかる課題を一挙に改善することを究明したものである。
【0009】
かかる機能を同時に惹起させるためには、該ポリエステルフィラメント経編地に対して、ポリスルホン酸化合物が1〜20%owf 、第4級アンモニウム塩が0.02〜10%owf という特定量付与されていることが重要である。
【0010】
本発明において、ポリエステル経編地はポリエステル100%に限定されずポリエステルと天然繊維やセルロース系合成繊維との混繊繊維を使用した織物や天然繊維やセルロース系合成繊維と交編したものなど何等限定されるものではない。
【0011】
本発明において、ポリスルホン酸を主体とする化合物とはビニルスルホン酸と架橋剤を共重合したものをいう。ビニルスルホン酸の具体例として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アリオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、シソプレンスルホン酸ナトリウム、スルホエチルメタクリレート、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウムなどを用いることができる。本発明ではこれらのモノマーを2種類以上用いることも何等差し支えない。特に重合効率と吸湿性の面から、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を用いるのが好ましい。
【0012】
架橋剤としては、特に限定されるものではないが、ジビニルモノマーやメチロール基を有するビニルモノマーを用いるのが好ましく、例えば、N−メチロールアクリルアミドやN−メチロールメタクリルアミドなどが好ましく用いられるが、特に好ましくは一般式[I]で示されるポリエチレングリコールジアクリレートがよい。
【0013】
【化5】
【0014】
(ここで、XはHまたはCH3 、mは1〜23を示す。)
かかるポリスルホン酸を主体とする化合物は、優れた風合いと吸湿性を付与する観点から、1〜20%owf 、好ましくは3〜10%owf の範囲で繊維に固着するものである。1%owf に満たないと、十分な吸湿性を付与できないという問題があり、20%owf を越えると風合が粗硬になり、作業服としては適さないという問題がある。
【0015】
本発明において用いる第4級アンモニウム塩は、制電性と抗菌性を付与できる化合物であれば特に制約を受けず用いることができるが、好ましくは下記一般式[II]、[III ]および[IV]から選ばれた少なくとも1種が含まれていることがよく、特に好ましくは、少なくとも一般式[IV]で示される第4級アンモニウム塩を含む場合に、優れた制電性と抗菌性および耐久性を付与することができる。
【0016】
【化6】
【0017】
(ここで、R6 はヤシ油を示す。)
【0018】
【化7】
【0019】
(ここで、Yはアクリル酸またはメタクリル酸を示す。)
【0020】
【化8】
【0021】
(ここでR1 は炭素数6〜20のアルキル基、R2 は炭素数1または2のアルキル基、R3 は炭素数1または2のアルキル基、R4 は炭素数1または2のアルキル基、R5 はHまたはCH3 、nは1または2を示す。)
上記式[IV]で示される第4級アンモニウム塩の中でも、R1 がオクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデジル、ペンタデジル、オクタデジル等の炭素数6〜20のアルキル基であるものが好ましく、より好ましくは炭素数8〜18のアルキル基であるものであり、さらに好ましくは炭素数10〜12のアルキル基であるものである。炭素数5以下または21以上では抗菌力が不十分となる傾向にある。
【0022】
また、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立に、メチルまたはエチルの炭素数1または2のアルキル基であるものが好ましい。炭素数を3以上にすると粘度が上昇して製造上好ましくない傾向にあり、また水に対する溶解性が低くなる。一方、炭素数が0の場合、すなわちHではアンモニアガスとなってアンモニウム塩でなくなってしまう。また、R5 は、HまたはCH3 であるものであり、炭素数を2以上にすると粘度が上昇して製造上好ましくない傾向にあり、また水に対する溶解性が低くなる。nは、1または2であるものが好ましい。すなわち、リン原子が5価であり、そのうち2価を酸素が占めているもので、残り3価を水酸基と式中二重結合を有する特定の有機基とで分け合うものである。nが0では陰イオンがリン酸イオンとなり、二重結合を含む官能基がなくなるため、ラジカル重合が起こりにくくなり耐久性がなくなる傾向にある。一方、nが3ではリン原子に結合する水酸基がなくなり、第4級アンモニウム塩でなくなるため、制電性能と抗菌性能が著しく低下する傾向にある。
【0023】
かかる第4級アンモニウム塩は、優れた風合いと吸湿性を付与する観点から、好ましくは0.02〜10%owf 、さらに好ましくは0.05〜2%owf の範囲で繊維に固着しているのがよい。
【0024】
かかるポリスルホン酸を主体とする化合物および該第4級アンモニウム塩を繊維に固着させる方法としては、ポリスルホン酸および第4級アンモニウム塩を同時に固着させる1段処理で行なう方法、あるいは、ポリスルホン酸を先に固着させ、次いで第4級アンモニウム塩を固着させる2段処理で行なう方法あるいは該2段処理方法において、固着化合物を逆にしたものなど、いずれの方法も使用することができる。
【0025】
本発明において、ポリスルホン酸を主体とする化合物および第4級アンモニウム塩を繊維に固着させる具体的な方法としては、ラジカル重合に用いられる方法であれば、あらゆる手段を用いることができる。例えば、乾熱処理、スチーム処理、浸漬法、コールドバッチ法、マイクロ波処理、紫外線処理などを用いることができる。これらの手段は、単独で適用してもよいし、加熱効率を高めるために、例えば、スチーム処理または乾熱処理時にマイクロ波処理、または紫外線処理を併用するなどしてもよい。なお、空気中の酸素が存在すると重合が進みにくくなるので、乾熱処理、マイクロ波処理、紫外線処理の場合には、不活性ガス雰囲気下で処理するのが好ましく、コールドバッチ法の場合にも、シール剤で密閉するのが好ましい。
【0026】
これらのラジカル重合方法の中では、スチーム処理が重合効率および処理の安定性の観点から好ましい。スチーム処理は、常圧スチーム、過熱スチーム、高圧スチームのいずれでもよいが、コスト面からは、常圧スチーム、過熱スチームが好ましい。スチーム処理温度は、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜150℃である。スチーム処理時間は、1〜10分程度でよい。なお、本発明においては、モノマーを重合させる前に、風乾あるいは乾燥機などで予備乾燥してもさしつかえない。
【0027】
本発明に用いる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を使用できる。例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素などの無機系重合開始剤や、2,2´−3アゾビス(2−アミディノプロパン)ジハイドロクロライド、2,2´−3アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチラミディン)ジハイドロクロライド、2−(カルバモイラゾ)イソブチルニトリルなどの有機系重合開始剤を用いることができる。また、過酸化ペンゾイル、アゾビスイソブチルニトリルなどの水不溶性重合開始剤をアニオン、ノニオンなどの界面活性剤で乳化させて用いてもよい。コスト、取扱の容易さの点から過硫酸アンモニウムが好ましく用いられる。さらに、重合効率を高めるために、重合開始剤としての過酸化物と還元性物質を併用するいわゆるレドックス系重合開始剤を用いてもよい。
【0028】
また、本発明においては、ポリスルホン酸を主体とする化合物および第4級アンモニウム塩を固着させる方法として、上述したモノマーの共重合に加えて、バインダー等で固着させる方法を採用することもできる。かかるバインダーは、特に限定されないが、中でもアクリル酸エステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリエーテルエステルブロックコポリマー、ポリアミド系樹脂、シリコーン系樹脂等が好ましい。これらのバインダーの中でも、シリコーン系樹脂が、洗濯耐久性、衣料の柔軟性を向上させるので好ましい。かかるシリコーン系樹脂の中でも、80℃以下の低温でも造膜性に優れたシリコーン系樹脂、例えば、ヒドロキシオルガノポリシロキサンにアルコキシシランをカップリング剤として添加したものなどは特に好ましく使用される。
【0029】
本発明では、上述ポリスルホン酸のスルホン酸基を、Zn2+、Cu2+、Ni+ 、Mn2+、Ag+ 、Fe2+からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属イオンで置換させたものは、消臭性を著しく向上させる作用を発揮するので好ましい。これら金属イオンに置換する方法としては、例えば、これら金属イオンを含んだ化合物を含有した仕上加工剤に浸漬し、マングルで絞り、乾燥する方法または浴中で50〜80℃の温度で1〜30分程度処理し、水洗、乾燥する方法等を用いることができる。かかる置換処理時に風合いを柔らかくするために、柔軟剤を併用することも好ましく行われる。また、本発明においては、これら所定の金属イオンで置換された酸性基以外に、例えばH+ 、K+ 、Ma+ 、Ca2+、Mg2+、Al3+等の金属イオンで置換された酸性基が本発明の目的を阻害しない範囲で一部含まれていても何等さしつかえない。
【0030】
本発明のポリエステルフィラメント経編地は、かかる構成、つまりポリスルホン酸を主体とする化合物および第4級アンモニウム塩を該経編地に固着させたのみでは、着用感の快適な衣料用生地を提供することはできない。すなわち、かかる化合物を固着して有していることは必須であるが、さらに該経編地が、吸放湿パラメーター(△MR)が1%以上で、JIS L−1094 B法による摩擦帯電圧が3 kv 未満であり、かつ、菌数測定法による菌数増減値差が1.6以上であるという機能を同時に満足することが必須である。
【0033】
かかる特定な機能特性を該ポリエステルフィラメント経編地が有していることによって、初めて上述の課題を全て解決することができるものである。
【0034】
まず、上述の吸放湿パラメーター(△MR)が、1%に満たないと、吸湿率が低いため、肌からの発汗によるムレやベタツキなどを防止することが困難になるという問題があるので、好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは3%以上であるのが、着用時の快適性の観点からよい。この吸放湿パラメーター(△MR)の上限は特に限定されないが、風合いとの兼ね合いから10%以下であることが好ましく、7%以下であることはより好ましい。なお、吸湿性に関しては、洗濯耐久性に優れていることが好ましく、具体的には30回洗濯後の吸放湿パラメーター(△MR)が洗濯前の、好ましくは50%以内、さらに好ましくは80%以内であるのがよい。
【0035】
かかる吸放湿パラメーター(△MR)とは、30℃×90%RHにおける吸湿率(MR2 )と20℃×65%RHにおける吸湿率(MR1 )との差で表される(△MR(%)=MR2 −MR1 )値のことをいうものである。
【0036】
ここで、△MRは衣服着用時の衣服内の湿気を外気に放出することにより快適性を得ることのドライビングフォースであり、軽〜中作業あるいは軽〜中運動を行った際の、30℃×90%RHに代表される衣服温湿度と、20℃×65%RHに代表される外気温湿度との吸湿率差を表す。
【0037】
本発明では、吸湿性評価の尺度として、この△MRをパラメーターとして用いる。△MRが大きければ大きいほど吸放湿力が高く、着用時の快適性が良好であることを表わしている。
【0038】
次に、JIS L−1094 B法(摩擦帯電圧測定法)による摩擦帯電圧は、従来のポリエステルフィラメント経編地では、洗濯を繰り返すと、帯電防止効果が低下する傾向があった。しかし、本発明のポリエステルフィラメント経編地にあっては、洗濯30回後の摩擦帯電圧が3kv未満でなければ、着用時の快適性を満足することはできない。ここで、洗濯1回とは、市販の自動うずまき式電気洗濯機の洗濯槽に40±2℃の0.2%弱アルカリ性合成洗剤液25リットルを入れ、試験布と追加布の合計重量がやく500gとなるように調整した後、洗濯5分、脱水30秒、すすぎ2分、脱水30秒、すすぎ2分、脱水30秒という手順で行ったものをいう。また、すすぎは常温水を用い、オーバーフローさせながら行うものである。本発明のポリエステルフィラメント経編地の洗濯30回後の摩擦帯電圧のより好ましい値は、1kv未満(実質的に0kvである)であることが洗濯に対する耐久性の上からよい。
【0039】
次に、繊維製品衛生加工協議会が用いている抗菌性評価法(AATCC−100−1977に準ずる)の菌数測定法による菌数増減値差が、1.6より小さいと該ポリエステルフィラメント経編地の抗菌性が低く、抗菌・防臭効果も低いという問題が惹起する。
【0040】
本発明のポリエステルフィラメント経編地は、前記ポリスルホン酸を主体とする化合物および第4級アンモニウム塩を該経編地に固着させる構成に加えて、上述機能を重畳させたことによって、優れた着用感の快適な衣料用生地を提供することができ多ものである。
【0046】
次に、本発明のポリエステル経編地は、その経編地密度では、ウェル方向が18〜40ウェル/インチ、コース方向が30〜70コース/インチであって、フロント、ミドルおよびバック糸のうち少なくともいずれかにおいて、単糸繊度0.1〜20デニール、総繊度15〜350デニールの糸を用いて構成されたものである。かかる経編地の中でも破裂強力が5kg以上であるものがより好ましく使用される。かかる経編地の密度が18ウェル/インチおよび/または30コースに満たないと、生地の破裂強力が低く、地薄となり、衣料用生地、特に作業服地としては風合いがやわらかくなりすぎる。他方、密度が40ウェル/インチおよび/または70コース/インチを越えると、生地が厚くなり、通気性も悪くなり、軽量感がそこなわれる傾向がある。
【0047】
また、単糸繊度が細くなると、糸割れが起こりやすく、割れた単糸がガイドから外れてしまい、タテスジ等の品位欠点が発生し、そのたびに編機を停止せねばならず編成が困難となり生産性を著しく低下させる。本発明の編地を構成する編糸は、好ましくは0.1デニール以上、さらに好ましくは0.5デニール以上の単糸繊度の繊維が、製編性や生地の強力等の観点から使用され、さらにかかる編糸を単糸繊度が異なる異繊度フィラメント糸の混繊糸などで構成すると、ソフトでハリのある経編地を作成することができる。
【0048】
なお、糸の総繊度が15デニールに満たない場合は、編成難度が高くなり、糸切れ等の欠点を起こしやすくなり、生地の強度が低下する傾向を示すので、好ましくは総繊度は20デニール以上の総繊度を有する編糸がよい。一方総繊度が350デニールより大きくなると、編成時に針折れが起こりやすく、そのため生機に穴ができる等の欠点ができ、生産性が低下してしまう。また地厚で風合の硬い編み地となり使用することが困難になる。また、生地の破裂強力が5kg未満であると使用に耐える強度を保つことができなくなる。
【0049】
かかるポリエステルフィラメント経編地は、ハーフ、逆ハーフ、サテンおよびそれらの変化組織など、またトリコット地、ラッセル地などの組織のものを使用することができ、組織に何等限定されるものではない。
【0050】
【実施例】
以下、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明における吸湿性・制電性・抗菌性については上述した方法により測定した。風合いについては、以下の方法により測定した。
(風合い) 生地を掴んだときの感触で、非常に柔らかい、柔らかい、やや硬い、硬い、非常に硬いの5段階で評価した。
【0094】
また、実施例の供試編物には以下の2種類のものを用いた。
供試生地A:
32ゲ−ジの3枚オサ仕様のシングルトリコット機で、フロントオサにポリエステル100%の50デニール、36フィラメント仮ヨリ加工糸を総詰め、ミドルオサにポリエステル100%の150デニール、48フィラメント仮ヨリ加工糸を総詰め、バックオサにポリエステル100%75デニ−ル、36フィラメント仮ヨリ加工糸を同じく総詰めで使用し、ランナー速度がフロントオサは138cm/Rc、ミドルオサは44.5cm/Rc、バックオサは164cm/Rc、オサの動きがフロント1001、ミドル1210、バック0011の組織である生機を作成した。該生機を精練、乾熱セット、8%減量後、蛍光染料 ミカホワイト−MTN(日本化薬(株)製)0.2%owf を用いて常法で染色し、洗浄、乾燥した目付が205g/m2 の経編地。
供試生地B:
32ゲ−ジの3枚オサ仕様のシングルトリコット機で、フロントオサにポリエステル100%の50デニール、36フィラメント仮ヨリ加工糸を総詰め、ミドルオサに綿100%の40番手糸を総詰め、バックオサにポリエステル100%75デニ−ル、36フィラメント仮ヨリ加工糸を同じく総詰めで使用し、ランナー速度がフロントオサは138cm/Rc、ミドルオサは44.5cm/Rc、バックオサは164cm/Rc、オサの動きがフロント1001、ミドル1210、バック0011の組織である生機を作成した。該生機を精練、乾熱セット、8%減量後、蛍光染料 ミカホワイト−MTN(日本化薬(株)製)0.2%owf を用いて常法で染色し、洗浄、乾燥した目付が200g/m2 の経編地。
【0095】
実施例1
供試生地Aを下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で120℃・2分乾燥した。
【0096】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:3wt%
一般式[I]においてX=CH3 ,n=9のモノマー:0.6wt% N−メチロールアクリルアミド:0.2wt%
過硫酸アンモニウム:0.06wt%
乾燥後、100℃の過熱スチーマーで3分間処理し、硫酸亜鉛7水和物5%owf を用いて、浴中で80℃・20分(浴比1:20)処理し,湯水洗、乾燥した。次いで、下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で160℃・2分乾燥セットし、評価に供した。結果を表1に示す。
【0097】
一般式[IV]においてR1 =ヤシ油、R2〜5 =CH3 ,n=1(50%)/2(50%)のモノマー:0.2wt%
2,2´−アゾビス−ジハイドロクロライド:0.02wt%
水溶性メラミン樹脂(有効成分80%):0.1wt%
メラミン樹脂用触媒(有効成分35%):0.06wt%
水溶性ウレタン樹脂(有効成分25%):1wt%
ウレタン樹脂用触媒(有効成分25%):0.04wt%
表3より、△MRはやや低いものの、未加工ポリエステルの10倍あり、さらに制電性、抗菌性ともに十分な性能を持っていることが分かる。
【0098】
実施例2
供試生地Aを下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で120℃・2分乾燥した。
【0099】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:15wt%
一般式[I]においてX=CH3 ,n=9のモノマー:3wt%
N−メチロールアクリルアミド:1wt%
過硫酸アンモニウム:0.3wt%
乾燥後、100℃の過熱スチーマーで3分間処理し、硫酸亜鉛7水和物5%owf を用いて、浴中で80℃・20分(浴比1:20)処理し,湯水洗、乾燥した。次いで、下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で160℃・2分乾燥セットし、評価に供した。結果を表1に示す。
一般式[IV]においてR1=ヤシ油、R2〜5=CH3 ,n=1(50%)/2(50%)のモノマー:1wt%
2,2´−アゾビス−ジハイドロクロライド:0.1wt%
水溶性メラミン樹脂(有効成分80%):0.5wt%
メラミン樹脂用触媒(有効成分35%):0.3wt%
水溶性ウレタン樹脂(有効成分25%):5wt%
ウレタン樹脂用触媒(有効成分25%):0.2wt%
表1より、△MR、制電性、抗菌性ともに十分な性能を持っていることが分かる。
【0100】
実施例3
供試生地Aを下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で120℃・2分乾燥した。
【0101】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:45wt%
一般式[I]においてX=CH3 ,n=9のモノマー:9wt%
N−メチロールアクリルアミド:3wt%
過硫酸アンモニウム:0.9wt%
乾燥後、100℃の過熱スチーマーで3分間処理し、硫酸亜鉛7水和物5%owf を用いて、浴中で80℃・20分(浴比1:20)処理し,湯水洗、乾燥した。次いで、下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で160℃・2分乾燥セットし、評価に供した。結果を表1に示す。
【0102】
一般式[IV]においてR1=ヤシ油、R2〜5=CH3 ,n=1(50%)/2(50%)のモノマー:3wt%
2,2´−アゾビスホジハイドロクロライド:0.3wt%
水溶性メラミン樹脂(有効成分80%):1.5wt%
メラミン樹脂用触媒(有効成分35%):0.9wt%
水溶性ウレタン樹脂(有効成分25%):15wt%
ウレタン樹脂用触媒(有効成分25%):0.6wt%
表1より、風合いはやや硬いものの、△MR、制電性、抗菌性ともに十分な性能を持っていることが分かる。
【0103】
比較例1
供試生地Aを下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で120℃・2分乾燥した。
【0104】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:15wt%
一般式[I]においてX=CH3 ,n=9のモノマー:3wt%
N−メチロールアクリルアミド:1wt%
過硫酸アンモニウム:0.3wt%
乾燥後、100℃の過熱スチーマーで3分間処理し、硫酸亜鉛7水和物5%owf を用いて、浴中で80℃・20分(浴比1:20)処理し,湯水洗、乾燥した。次いで、乾燥機で180℃・1分セットし、評価に供した。結果を表1に示す。
【0105】
表1より、第4級アンモニウム塩が付与されていないと、制電性、抗菌性が不十分であることが分かる。
【0106】
比較例2
供試生地Aを下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で160℃・2分乾燥セットし、評価に供した。結果を表1に示す。
【0107】
一般式[IV]においてR1=ヤシ油、R2〜5=CH3 ,n=1(50%)/2(50%)のモノマー:1wt%
2,2´−アゾビス−ジハイドロクロライド:0.1wt%
水溶性メラミン樹脂(有効成分80%):0.5wt%
メラミン樹脂用触媒(有効成分35%):0.3wt%
水溶性ウレタン樹脂(有効成分25%):5wt%
ウレタン樹脂用触媒(有効成分25%):0.2wt%
表1より、ポリスルホン酸が付与されていないと、吸湿性、消臭性が不十分であることが分かる。
【0108】
比較例3
供試生地Aを下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で120℃・2分乾燥した。
【0109】
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸:2.5wt%
一般式[I]においてX=CH3 ,n=9のモノマー:0.5wt% N−メチロールアクリルアミド:0.17wt%
過硫酸アンモニウム:0.05wt%
乾燥後、100℃の過熱スチーマーで3分間処理し、硫酸亜鉛7水和物5%owf を用いて、浴中で80℃・20分(浴比1:20)処理し,湯水洗、乾燥した。次いで、下記組成の処理液に浸漬後、マングルで絞り率50%なるように絞り、乾燥機で160℃・2分乾燥セットし、評価に供した。結果を表1に示す。
【0110】
一般式[IV]においてR1=ヤシ油、R2〜5=CH3 ,n=1(50%)/2(50%)のモノマー:1wt%
2,2´−アゾビス−ジハイドロクロライド:0.1wt%
水溶性メラミン樹脂(有効成分80%):0.5wt%
メラミン樹脂用触媒(有効成分35%):0.3wt%
水溶性ウレタン樹脂(有効成分25%):5wt%
ウレタン樹脂用触媒(有効成分25%):0.2wt%
表1より、ポリスルホン酸の付着量が1%に満たないと、本発明の目的である吸湿性が十分付与できないことが分かる。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例4
実施例2で作製した本発明の複合機能付与ポリエステル100%経編地、未加工の供試生地A(ポリエステル100%経編地)、さらに未加工の供試生地B(綿を約20%含むポリエステル/綿経編地)を用いて、それぞれ看護白衣を縫製し、女性5名により、30℃×65%RHの恒温恒湿室内で時速6kmの歩行運動を30分間行った後、着用者の官能試験により快適性を評価した。その評価結果を表2に示す。
【0113】
【表2】
【0114】
表2より、本発明の複合機能付与ポリエステル100%経編地は、未加工の供試生地A、供試生地Bに比べあらゆる面で快適であることが実着用でも証明されたことが分かる。
【0115】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエステルの長所である形態安定性、機械強度、洗濯耐久性などを維持しながら、洗濯耐久性に優れた吸湿性、制電性、抗菌性などの複合機能を付与することにより、着用感の快適なポリエステルフィラメント経編地を提供することができる。
Claims (10)
- ポリスルホン酸を主体とする化合物が1〜20%owf および、第4級アンモニウム塩が0.02〜10%owf 付与されたポリエステル経編地であって、該ポリエステル経編地の経編地密度がウェル方向は18〜40ウェル/インチ、コ−ス方向は30〜70コース/インチであって、フロント、ミドルおよびバック糸のうち少なくともいずれかにおいて、単糸繊度0.1〜20デニール、総繊度15〜350デニールの糸を用いてなり、かつ、該経編地が、吸放湿パラメーター(△MR)が1%以上で、JIS L−1094 B法による摩擦帯電圧が3kv未満であり、かつ、菌数測定法による菌数増減値差が1.6以上であるという機能を有することを特徴とするポリエステルフィラメント経編地。
- 該ポリスルホン酸を主体とする化合物が、ビニルスルホン酸と架橋剤との共重合体である請求項1記載のポリエステルフィラメント経編地。
- 該架橋剤が、ジビニルモノマーおよびメチロール基を有するビニルモノマーである請求項2記載のポリエステルフィラメント経編地。
- 該ポリスルホン酸を主体とする化合物が、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および架橋剤との共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステルフィラメント経編地。
- 該ポリスルホン酸を主体とする化合物が、そのスルホン酸基がZn2+、Cu2+、Ni+、Mn2+、Ag+、Fe2+からなる群より選ばれた少なくとも1種の金属イオンで置換されたものであることを特徴とする請求項1、2および5のいずれかに記載のポリエステルフィラメント経編地。
- 該第4級アンモニウム塩が、少なくとも一般式[IV]を含むものである請求項1または7記載のポリエステルフィラメント経編地。
- 該ポリエステルフィラメント経編地が、衣料用生地で、作業服用である請求項1〜8のいずれかに記載のポリエステルフィラメント経編地。
- 該作業服が、白衣または介護衣である請求項9記載のポリエステルフィラメント経編地。
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