JP3781439B2 - クロロシランおよび水素の反応器 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、クロロシランの水素添加用反応器に関するものである。該反応器は、反応室と炭化ケイ素で被覆した炭素繊維複合材料で作った発熱体を特徴とし、該発熱体を電気的に絶縁する窒化ケイ素を使用している。
【0002】
【従来の技術】
超高純度の半導体等級シリコンを製造する典型的な方法において、トリクロロシラン・ガスは水素の存在下で還元されて、加熱体上に蒸着する。該方法に供給されるトリクロロシラン・ガスのかなりの部分は脱水素されて、副生成物のテトラクロロシランを生成する。この副生物のテトラクロロシランを再びトリクロロシランに転化して、それを蒸着プロセスへ再循環させることが望ましい。
【0003】
1980年8月12日付けワイゲルト(Weigert)らによる米国特許第4,217,334号は、テトラクロロシランをトリクロロシランに転化する優れた方法に関する。その方法はトリクロロシランと水素を600℃〜1200℃の温度で反応させ(テトラクロロシランと水素の混合体はトリクロロシラン及び塩化水素との平衡下で1:1〜1:50のモル組成を有する)、その混合体を300℃以下に急冷させることから成る。そのワイゲルトらの方法は炭素で作った気密管内で実施された。
【0004】
反応室を構成する黒鉛のような炭素と炭素を主成分とした材料の使用は多くの欠点をもつ。例えば、反応器の経験する差圧、高温および急激な温度変化は反応器の構成要素に極端な熱応力をもたらし、しばしば修理のために反応器を停止しなければならない。さらに、炭素を主成分とした材料は供給されるクロロシラン及び水素と反応して炭化ケイ素、メタンおよび一酸化炭素のような副産物を生成する。これらの反応は反応器の劣化をもたらすのみならず、必要な水素添加クロロシランを炭素および微量の金属で汚染する恐れがある。
【0005】
本発明は、これらの問題を解消するように設計された構成の材料を用いる反応器である。特許請求した炭素繊維複合材料は高強度と良好な弾性を与え、従って反応器の圧力及び熱応力損傷に対して優れた耐性を与える。さらに、炭素繊維複合材料の膨脹係数を炭化ケイ素被膜の値によく合致するように仕立てることができる。従って、炭素繊維複合材料の熱膨脹は炭化ケイ素被膜の熱破損をもたらすことはない。炭素繊維複合材料上に配置した炭化ケイ素被膜は、反応室および発熱体の劣化および水素添加クロロシランの汚染をもたらす恐れのある還元性プロセスに対して保護作用をする。
【0006】
1988年4月12日付けのレビン(Levin)による米国特許第4,737,348号は、1500℃以上の温度で水素ガスとテトラクロロシランを反応させてケイ素を生成する反応器を記載している。その反応器は壁を炭素又は黒鉛で作り、その壁に炭化ケイ素被膜を現場で形成している。レビンはその炭化ケイ素被膜が化学的分解に対して極めて耐性があると記載している。レビンは、反応器の高温および加熱、冷却に伴う熱衝撃の問題も差圧に起因する材料の破壊問題も取扱っていない。
【0007】
本発明は、反応室を加熱するために使用する発熱体を電気的に絶縁する窒化ケイ素を使用することもできる。クロロシランと水素を反応させる典型的な反応器おいては、反応室を完全にシールして反応物の漏れを防ぐことができない。従って、発熱体を電気的に絶縁するのに用いる材料は高温でクロロシランと水素にさらすことができる。本発明者らは、窒化ケイ素が典型的なプロセスの条件下で劣化しない優れた電気絶縁材料であることを見出した。ウイッター(Witter)らの米国特許第4,710,260号は、窒化ケイ素粒子上でトリクロロシランの水素分解法を記載している。窒化ケイ素は絶縁材料としての使用を考えず、前記のプロセス条件下で著しく劣化することが報告されている。従って、本発明者らが窒化ケイ素は水素とクロロシランを反応させる反応器に用いるのに適当な電気絶縁材料であること、およびそれは水素添加クロロシランの汚染をしないということを発見したことは驚くべきことである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、反応室および発熱体の構成材料として炭化ケイ素を被覆した炭素繊維複合材料を使用する水素とクロロシランの反応用反応器を提供することである。この材料は還元性プロセスに優れた耐性および高熱衝撃耐性を提供する。該反応器は発熱体を電気的絶縁する窒化ケイ素を使用することもできる。窒化ケイ素は高絶縁特性および反応器に存在する反応物質による化学的侵食に対して優れた耐性を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明により、約600℃以上の温度におけるクロロシランの水素添加用反応器が提供される。該反応器は、(1)炭化ケイ素をコーテイングした炭素繊維複合材料で成形された反応室、(2)炭化ケイ素をコーテイングした炭素繊維複合材料で成形された発熱体、および(3)その発熱体を電気的絶縁する窒化ケイ素絶縁体という改良点からなる。
【0010】
一般に、その反応プロセスは800℃〜1200℃の範囲内の温度で行って作業能率を上げることが望ましい。これらのプロセス温度を得るために、反応室および発熱体の壁は1600℃の高温に維持される。
【0011】
【作用】
炭素および黒鉛材料は、このプロセスを実施する反応室の形成および反応室を加熱する発熱体の形成に使用できることが知られている。しかしながら、必要な高温において、高温にさらされる反応室、発熱体および反応器の他の部分の構成材料には著しい熱応力が加わる。その上、水素、クロロシラン並びに塩化水素のような腐食性副産物が反応器の構成材料と反応して劣化する。熱応力による破損および高温反応器を構成する炭素および黒鉛材料の化学的劣化は、反応器の停止時間を増し作業能率を下げることになる。
【0012】
本発明者らは、反応器の反応室および発熱体の構成材料として炭化ケイ素を被覆した炭素繊維複合材料を使用できること、そしてその炭化ケイ素を被覆した炭素繊維複合材料は圧力および熱応力破損、および供給材料および腐食性副産物との反応による劣化に対して優れた耐性を有することを見出した。
【0013】
本発明に有用な炭素繊維複合材料は、約1600℃までの温度で安定なマトリックス材料に固定された炭素繊維からなる。そのマトリックス材料は、例えば炭素、黒鉛又は炭化ケイ素にすることができる。マトリックス材料が炭素のときが望ましい。その炭素繊維複合材料は普通の方法で成形することができる。例えば、マトリックス材料炭素のときには、炭素繊維にピッチや樹脂のような適当な炭素源を含浸させ、特定の方向に巻き又は積層することによって必要な形状に固定する、又は型内に積層する。この材料は次に圧力下で炭化される。含浸工程および炭化工程は、必要な密度が得られるまで反復することができる。一般に、約1.5〜2.0/ccの範囲内の密度をもった炭素繊維複合材料が有用であることがわかった。炭素繊維は複合材料の約20〜80体積%にすることができるが、約50〜70体積%が望ましい。
【0014】
本発明に使用される複合材料に有用な炭素繊維は、約1.5〜2.0g/ccの密度、約200〜600GN/m2 の範囲内のヤング率および約1500〜8000N/mm2 の範囲内の引張強さを有する。
【0015】
炭素繊維複合材料は、供給材料および塩化水素のような腐食性副産物にさらされるための劣化から炭素繊維複合材料を保護するために炭化ケイ素被膜をコーテイングする。炭化ケイ素被膜は、標準の方法、例えばオルガノクロロシランのような原料ガスを使用して化学蒸着法によって付加することができる。炭化ケイ素被膜の有効な厚さは約0.01〜1.0mmであるが、約0.02〜0.13mmの範囲内の厚さをもった炭化ケイ素被膜が望ましい。
【0016】
さらに、本発明者らは、窒化ケイ素が反応器の高温および供給材料および副産物の反応性および腐食性に耐えることができる有効な絶縁材料であることを見出した。
【0017】
本法によって水素添加できるクロロシランはテトラクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシランおよびクロロシランを含む。
【0018】
【実施例】
本発明はさらに説明するために、図1を参照する。図1は、本発明の実施例の破断側面図である。水素とクロロシランを反応させる反応器はステンス鋼からなる外殻1からなる。外殻1の内表面は断熱材2よって発熱体3から断熱される。断熱材2は標準の高温絶縁材料、例えば炭素又は黒鉛のフエルトと一体シートから作ることができる。断熱材2が1992年6月30日付けのブルギイ−(Burgie)の米国特許第5,126,112号に記載されているものに類似の絶縁系が望ましい。
【0019】
発熱体3は、例えば炭素、黒鉛又は炭化ケイ素をコーテイングした炭素複合材料から作ることができる。発熱体3が炭化ケイ素をコーテイングした炭素複合材料で作るのが望ましい。発熱体3は標準の形状、例えば、反応室の外側の回りに配置された1個以上の棒又はストレートにすることができる。発熱体3が図2に示したものに類似の杭垣状の設計が望ましい。発熱体3は、外部エネルギー源に接続する手段を提供する電極へ接続される。
【0020】
発熱体3は、電気絶縁体4によって反応器の残部から電気的に絶縁される。電気絶縁体4は、標準の高温および化学的耐性の電気絶縁材料、例えば、溶融シリカ又は窒化ケイ素から作ることができる。電気絶縁体4は窒化ケイ素、すなわちSiNで作るのが望ましいが、焼結するために熱間静水圧プレスした窒化ケイ素粒子から成形するが一層望ましい。
【0021】
発熱体3は反応室を囲んでいる。図1の反応室は同心配置の2つの管によって形成された外室と内室をもった二重室設計のものである。その外室は管6と管7の間に形成される。内室は管7によって形成される。反応室の上部はダイバータ8によって形成される。
【0022】
管6、管7およびダイバータ8は、高温反応器の標準構成材料、例えば、炭素、黒鉛、炭化ケイ素被覆の炭素および炭化ケイ素被覆の黒鉛;又は炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で作ることができる。管6および管7を炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で作るのが望ましい、管6、管7およびダイバータ8を炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で作るのがさらに望ましい。
【0023】
反応器は、熱交換器9に接続し、そこで反応器へ供給される水素とクロロシランは管6と管7の間に形成された外室に通す前に予熱される。これらのガスは別の流路を通り、そこで発熱体3によってさらに加熱され、そしてダイバータ8によって向きを変えられて管7によって形成される内室を逆向きに流れる。管7を排出する加熱されたガスは次に熱交換器9を通って、熱を流入する供給ガスに伝達する。熱交換器9は標準の設計にすることができる。例えば、熱交換器9は、ヒラード(Hillard)の米国特許第2,821,369号;マッククラリー(McCrary)らの米国特許第3,250,322号;および米国特許第3,391,016号に開示されている設計に類似したものにできる。
【0024】
次の実施例は、水素とクロロシランの反応用反応器の構成材料としての炭化ケイ素被覆の炭素繊維組成物および窒化ケイ素の適合性を示す。これらの実施例は、特許請求の範囲の限定を意図していない。
【0025】
実施例1
水素とテトラクロロシランの環境における窒化ケイ素の安定性を評価した。評価は5.1cm(2in)の水平管炉で行った。試験する材料は管炉内で窒素パージ下72時間乾燥した。次にその炉に25モル%のテトラクロロシランと75モル%の水素(TCS/H2 )からなるガス状混合体を464cc/分の流量で供給して、反応器内に2〜3秒の滞留時間を与えた。各材料試料はTCS/H2 フイードに合計約21時間暴露した。その暴露の中で最初の6時間は約1150℃の温度で、そして残りの15時間は約1350℃の温度で暴露した。暴露期間中に、フレームイオン化検出器を使用した気液クロマトグラフイ−(GLC−FID)によって炉から出るガスのメタンと一酸化炭素を監視した。それらの結果を体積を基準にしたppmv値で示す。
【0026】
試験した材料は、熱圧した窒化ケイ素(米国マサチュセッツ州ノ−スボロに在るノルトン社)の商品名ノラライド(Noralide)NC−132/HP;反応接合した窒化ケイ素(同じくノルトン社の商品名NC−5301および溶融シリカ(米国ミシガン州ベイ・シテイに在るWYSEガラス社製)であった。それらの結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003781439
実施例2
水素およびテトラクロロシランの環境における炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料の安定性を評価した。評価の方法は実施例1で記載した方法と同様であった。試験した材料は炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で55〜65%の繊維体積率と1.6〜1.7g/cm3 のかさ密度を有するもの(米国ウイスコンシン州メノモニー・フオールスに在るSchunk Graphite Technology社製のカタログNo.CF222/P22);および被覆しない炭素繊維複合材料(米国オレゴン州ポートランドにあるTT America社製のカタログNo.CX−21)であった。
【0028】
【表2】
Figure 0003781439
表2に示したデータは、炭化ケイ素を被覆した炭素繊維複合材料の重量変化が最少であることを示している。しかしながら、被覆しなかった炭素繊維複合材料は、重量増が著しく、複合材料の炭素とテトラクロロシランと反応して炭化ケイ素を生成することを示している。
【0029】
実施例3
テトラクロロシランの水素添加用商業反応器内で長時間水素およびテトラクロロシランの環境において窒化ケイ素試料の安定性を評価した。試験する試料は炉内窒素パ−ジ下で約72時間乾燥した後、反応器へ移した。反応器への供給材料は約25モル%のテトラクロロシランと75%の水素からなるガス混合体であった。その反応器内で試料は800℃の温度に暴露した。試料は表3に示した時間で反応器から取り出して重量損失を測定した。次に試料を反応器に戻して、そのプロセスを続けた。それらの結果を表3に示す。試験した試料は、全て前に記載したSi34(NC132/HP),Si34 NCX5301)および溶解シリカ(YSE)であった。
【0030】
【表3】
Figure 0003781439
実施例4
炭化ケイ素を被覆した炭素繊維複合材料の安定性を商業反応器内で長期間評価した。評価の方法は実施例3と類似したが、例外は試料の暴露温度が約1200℃であったことである。試験した試料は炭化ケイ素を被覆した炭素繊維複合材料(CF222/P22)と無被覆の炭素繊維複合材料(CF212)であった、これらは共に実施例で既に記載したもにである。それらの結果を表4に示す。
【表4】
Figure 0003781439

【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の破断側面図である。
【図2】 本発明の破断平面図であって、二重室反応器を囲む杭垣状発熱体を示す。
【符号の説明】
1 外殻
2 断熱材
3 発熱体
4 電気絶縁体
5 電極
6 管
7 管
8 ダイバータ
9 熱交換器

Claims (7)

  1. 600℃以上の温度でクロロシランと水素を接触させる反応室を画定する反応槽から成り、該反応槽が炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で作られ、該炭素繊維複合材料の膨脹係数が、その上に被覆される炭化ケイ素の膨脹係数とよく合致するように仕立てられることを特徴とする反応器。
  2. 600℃以上の温度でクロロシランと水素を接触させる反応室を画定する反応槽から成り、該反応槽が、前記反応槽に配置され炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で作られた発熱体によって加熱されることを特徴とする反応器。
  3. 前記炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料が、0.02〜0.13mmの範囲内の厚さをもった炭化ケイ素被膜と;炭素のマトリックスと;1.5〜2.0g/cm 範囲内の密度、200〜600GN/mの範囲内のヤング率および1500〜8000N/mmの範囲内の引張強さをもった炭素繊維から成ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の反応器。
  4. 前記炭素繊維複合材料が、1.5〜2.0g/cm 範囲内の密度を有し、炭素繊維が該炭素繊維複合材料の50〜70体積%であることを特徴とする請求項3記載の反応器。
  5. 600℃以上の温度でクロロシランと水素を接触させる反応室を画定する反応槽と、該反応槽に配置された発熱体から成り、前記反応槽および発熱体が炭化ケイ素被覆の炭素繊維複合材料で作られることを特徴とする反応器。
  6. 前記発熱体が、窒化ケイ素絶縁体で電気的に絶縁されることを特徴とする請求項5記載の反応器。
  7. 前記窒化ケイ素絶縁体が、ホット・プレスした窒化ケイで作られることを特徴とする請求項6記載の反応器。
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