JP3779614B2 - 難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。とりわけ耐傷付き性、引張特性に優れ、酸素指数が高く、燃焼時におけるチャー形成性にも優れた難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
オレフィン系重合体は、一般に電気的特性、機械的性質、加工性等が優れているところから、電気絶縁材料として広く使用されている。とくに電線、ケーブル、床材などの建材等の用途には、強度、低温特性、耐傷付き性、硬度等のバランスが良好であるところから、エチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・アクリル酸エチル共重合体などのエチレン・不飽和エステルランダム共重合体が広く使用されている。
【0003】
このようなエチレン共重合体は易燃性であるため、用途によっては難燃化する必要があり、そのため古くはハロゲン系難燃剤を配合することにより対処してきた。しかしながらこのような配合物は燃焼時に有害ガスを発生するという問題があり、近年では非ハロゲン系の水酸化マグネシウム等の金属水酸化物難燃剤を配合する処方が採用されるようになってきた。ところが金属水酸化物難燃剤は、かなり大量に配合しないと充分な難燃効果を発揮することができないため、往々にしてエチレン共重合体の耐傷付き性、その他機械的特性を犠牲にすることがあった。
【0004】
これら問題点を解決する手段はこれまでに数多く検討されている。中でも酸変性樹脂を併用する処方が一般的であるが、それら処方は無機系難燃剤との反応による凝集力向上による耐傷付き性の改良策であり、そのため加工性を著しく低下させてしまうという問題点があった。またそれら処方によっても、充分な耐磨耗性を得るまでには至っていない。さらに酸変性樹脂やエチレン・不飽和カルボン酸共重合体と水酸化マグネシウムのような無機系難燃剤との組み合わせでは、反応性が高すぎて混練加工ができず、難燃性樹脂組成物を得ることができなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、充分な難燃性を示すとともに、加工性、耐傷付き性、機械的特性等に優れた難燃性樹脂組成物を得るべく、鋭意検討を行った。その結果、無機系難燃剤として水酸化アルミニウムを選択すると共に、酸含量とメルトフローレートが特定の関係にあるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーをベース樹脂として使用するときに、所望物性を有する難燃性樹脂組成物が得られることを知った。またこのような難燃性樹脂組成物は、とくにチャー形成性に優れており、さらに他の金属化合物や熱可塑性樹脂と併用することにより、難燃性、加工性、機械的強度等の改良や柔軟化、高剛性化などが可能であることも知った。
【0006】
したがって本発明の目的は、加工性、耐傷付き性、機械的強度等が優れると共に、難燃性、燃焼時のチャー形成性等に優れた難燃性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、不飽和カルボン酸含量(a)が0.5〜25重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10分の範囲にあり、かつ(a)/MFRの値が0.001〜50の範囲にあるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)又は(A1)とその他の熱可塑性樹脂(A2)からなり、(A1)/(A2)(重量比)が10/90〜100/0である樹脂成分(A)に水酸化アルミニウム(B)又は水酸化アルミニウム(B)と2価の金属化合物を配合してなる難燃性樹脂組成物であって、樹脂成分(A)100重量部当たり、水酸化アルミニウム(B)の配合量は30〜200重量部であり、また2価の金属化合物を配合する場合は、水酸化アルミニウム(B)100重量部当たり2価の金属化合物の配合量は50重量部以下であり、かつ赤リンを含有しない難燃性樹脂組成物が提供される。とくに(A1)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の場合は、(A1)/(A2)(重量比)が60/40〜100/0であることが好ましく、(A1)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーの場合は、(A1)/(A2)(重量比)が10/90〜100/0であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明においては、不飽和カルボン酸含量が0.5〜25重量%、好ましくは1〜25重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)が使用される。このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)はまた、190℃、2160g荷重におけるMFRが0.1〜500g/10分、好ましくは0.3〜400g/10分、とくに好ましくは0.3〜80g/10分の範囲にあり、その不飽和カルボン酸含量(a)との関係において、(a)/MFRが0.001〜50、好ましくは0.005〜40となる範囲のものが使用される。
【0009】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーにおいて、不飽和カルボン酸含量が上記範囲より少ないものを使用すると、耐傷付き性に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができず、また不飽和カルボン酸含量が上記範囲より多いものを使用すると、機械的特性、加工性等に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができず、いずれも好ましくない。また上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマーにおいて、MFRが上記範囲より小さく、あるいは(a)/MFRの値が上記範囲より大きくなると、加工性に優れた難燃性樹脂組成物を得ることができず、またMFRが上記範囲より大きく、あるいは(a)/MFRの値が上記範囲より小さくなると難燃性、機械的特性に優れた樹脂組成物を得ることが難しい。
【0010】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、エチレンと不飽和カルボン酸からなる2元共重合体のみならず、他の極性モノマーやスチレン系モノマーなどを共重合成分として含む多元共重合体であってもよい。上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを例示することができる。これらの中では、とくにアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0011】
また上記他の極性モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルなどを例示することができる。またスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルイソプロペニルトルエンなどを例示することができる。
【0012】
例えば上記のような他の極性モノマーは、共重合体の柔軟性付与には効果的であるが耐傷付き性等を損なうことがあるので、このような他の極性モノマーやスチレン系モノマーは共重合成分として含まれていたとしても、30重量%以下、とくに20重量%以下程度であることが好ましい。
【0013】
このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0014】
本発明の(A1)成分としては、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーを使用する場合には、アイオノマーのMFRが上記のような範囲にあるものが使用される。したがってアイオノマーの原料となるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体としては、さらにMFRの大きいもの、例えば0.5〜2000g/10分、とくに1〜100g/10分程度のものを使用することができる。アイオノマーは、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が陽イオンで中和されたものであって、中和度が90%以下、とくに1〜80%程度のものが好適に使用できる。アイオノマーを構成する陽イオンとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などの金属イオンを代表例として挙げることができる。金属イオンは2種以上であってもよく、また金属イオンのほかに1,3−ジアミノメチルシクロヘキサンのようなアミノ化合物を含むものであってもよい。
【0015】
本発明の難燃性樹脂組成物のベース樹脂は、上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)のみで構成されていてもよいが、伸びのような引張特性その他物性の改良のために、他の熱可塑性樹脂(A2)を配合したものを使用することができる。他の熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、耐傷付き性を考慮すると、(A1)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体の場合は、(A1)60〜100重量部、好ましくは65〜100重量部に対し、他の熱可塑性樹脂(A2)40〜0重量部(両者の合計が100重量部)、好ましくは35〜0重量部のような割合とするのが好ましい。また(A1)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー場合は、(A1)10〜100重量部、好ましくは15〜100重量部に対し、他の熱可塑性樹脂(A2)90〜0重量部(両者の合計が100重量部)、好ましくは85〜0重量部のような割合とするのが好ましい
【0016】
このような他の熱可塑性樹脂(A2)の例としては、エチレンの単独重合体又はエチレンと炭素数3〜12の在るα−オレフィンとの共重合体、例えば高圧法ポリエチレン、中・高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、とくに密度が940kg/m3以下の直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、(上記A1)以外のエチレンと極性モノマーとの共重合体、ポリオレフィン系エラストマーの如きオレフィン系重合体、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレンやABS樹脂のようなゴム強化スチレン系樹脂のようなスチレン系重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルエラストマーのようなポリエステル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、あるいはこれら2種以上の混合物などを例示することができる。
【0017】
これらの中では、難燃性樹脂組成物の加工性を考慮すると、エチレンの単独重合体あるいはエチレンを主体とするエチレンの共重合体を使用することが好ましい。
【0018】
好適なエチレン共重合体の例として、エチレンと不飽和エステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸secブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸nアミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸nヘキシル、アクリル酸nオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸N、N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチルのようなアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチルのようなメタクリル酸エステル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸エステルなどの不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を例示することができる。このような共重合体は、さらにアクリルアミド、一酸化炭素のような他の極性モノマーがさらに共重合されたものであってもよい。
【0019】
上記エチレン・不飽和エステル共重合体は、通常不飽和エステル含量が1〜50重量%、好ましくは5〜46重量%、その他モノマーが通常0〜20重量%、好ましくは0〜15重量%の割合で共重合されているものである。上記共重合体としてはまた、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが通常0.1〜50g/10分、好ましくは0.2〜10g/10分のものが望ましい。
【0020】
このようなエチレン・不飽和エステル共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合によって得ることができる。
【0021】
上記熱可塑性樹脂(A2)の他の好適例として、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3以上、好ましくは炭素数3〜12のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテンとの共重合体を挙げることができる。これらはいかなる触媒系で製造されたものであってもよく、例えば過酸化物触媒による高温、高圧下でのラジカル重合、あるいは高活性チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物成分とからなるマルチサイト触媒系やシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を少なくとも1個以上有するジルコニウムの化合物からなる触媒成分と有機アルミニウムオキシ化合物触媒成分とからなるシングルサイト触媒系でエチレンを重合又は共重合することによって製造されるたものであってもよい。
【0022】
上記エチレンの重合体又は共重合体としては、製造方法や共重合体のα−オレフィン含量に応じ種々の密度のものが使用可能であるが、一般には密度が870〜970kg/m3程度、とくに890〜960kg/m3、とりわけ900〜950kg/m3のポリエチレン又はエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンの共重合体を使用することが好ましい。また加工性及び実用物性を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜50g/10分、とくに0.2〜10g/10分のものの使用が好ましい。
【0023】
本発明においては、難燃性無機化合物として水酸化アルミニウム(B)が使用される。水酸化アルミニウムの代りに水酸化マグネシウムを単味で使用すると、後記比較例で示すように溶融混練ができず、所望の難燃性樹脂組成物を得ることができない。このため、後述のような所定の割合で水酸化アルミニウムと配合することが望ましい。
【0024】
水酸化アルミニウムとしては、例えば粒径が0.05〜20μm、好ましくは0.1〜5μm程度のものを使用するのがよい。水酸化アルミニウムとしてはまた、樹脂成分への分散性の点から、表面処理剤で処理されているものを使用することが好ましい。このような表面処理剤としては、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、例えばカプリン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、リノール酸ナトリウムなど、高級脂肪酸、例えばカプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸など、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、チタンカップリング剤、例えばイソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネートなど、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、シリコンオイルなどを例示することができる。
【0025】
本発明において水酸化アルミニウム(B)は、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)又は(A1)とその他熱可塑性樹脂(A2)からなる樹脂成分(A)100重量部当たり、30〜200重量部、好ましくは50〜150重量部の範囲である。水酸化アルミニウムの使用量が少なすぎると、充分な難燃性を示すことができず、またその配合量が多くなりすぎると、加工性が損なわれるようになる。
【0026】
本発明の難燃性樹脂組成物においては、樹脂成分(A)に水酸化アルミニウムのみを配合しても充分な難燃性と加工性、耐傷付き性、機械的強度が得られるが、水酸化アルミニウム(B)とともに水酸化アルミニウムと等重量以下の2価金属化合物を配合すると、難燃性(酸素指数)、加工性、機械的強度(破断点強度)の少なくとも一つがさらに改良されるので好ましい。このような2価金属化合物の例として、マグネシウム、カルシウム、亜鉛などの化合物、例えば水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトのような金属水酸化物、珪酸金属塩、ホウ酸金属塩、炭酸カルシウムなどを例示することができる。これら2価金属化合物の配合量は、その種類によっても異なるが、好ましくは水酸化アルミニウムと等重量以下、すなわち水酸化アルミニウム100重量部当たり、50重量部以下である。このうちとくに好ましいのは2価金属水酸化物、とくに水酸化マグネシウムであり、とりわけ水酸化アルミニウム100重量部当たり、水酸化マグネシウムを0.1〜20重量部、とくに0.2〜10重量部の範囲で配合することが望ましい。
【0027】
本発明の難燃性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲において、各種添加剤を配合することができる。このような添加剤の例として、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、ゼオライト、カーボンブラックなどの他の無機充填剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃助剤、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤などを例示することができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例において用いた原料及び樹脂組成物の物性評価方法は次の通りである。
【0029】
1.原料
(1)樹脂
(イ)エチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)
AC−1:エチレン・アクリル酸共重合体(アクリル酸含量12重量%、MFR7g/10分)
AC−2:エチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(メタクリル酸含量15重量%のエチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛中和度20%のアイオノマー、MFR15g/10分)
AC−3:エチレン・アクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(アクリル酸含量15重量%のエチレン・アクリル酸共重合体の亜鉛中和度40%のアイオノマー、MFR0.4g/10分)
AC−4:エチレン・アクリル酸共重合体のマグネシウムアイオノマー(アクリル酸含量15重量%のエチレン・アクリル酸共重合体のマグネシウム中和度40%のアイオノマー、MFR3g/10分)
【0030】
(ロ)熱可塑性樹脂(A2)
P−1:高密度ポリエチレン(三井化学(株)製ハイゼックス5305、MFR0.8g/10分)
P−2:エチレン・アクリル酸エチル共重合体(アクリル酸エチル含量25重量%、MFR0.5g/10分)
P−3:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量17重量%、MFR0.8g/10分)
【0031】
(2)難燃性無機化合物
ATH:水酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm、脂肪酸処理品)
MDH:水酸化マグネシウム(平均粒径0.7μm、脂肪酸処理品)
(3)酸化防止剤(AO)
チバスペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノックス1010
【0032】
2.物性評価方法
(1)難燃性
難燃性の指標として、酸素指数及びチャー形成性の観察を行った。
(イ)酸素指数:JIS K7201(1976)に準拠
(ロ)チャー形成
酸素指数測定時のサンプルの燃焼状況を目視で観察し、下記の判定基準で評価を行った。
○:チャーを形成し、チャー自体が強固なもの
△:チャーを形成する
×:溶融しながら流れ落ちるもの(ドリップするもの)
【0033】
(2)耐傷付き性
2種類の実用的な耐傷付き性の評価を行い、多面的な耐傷付き性の判定を行った。すなわち耐傷付き試験として代表的なエリクセン試験及びテーバー磨耗試験を実施した。
(イ)エリクセン試験(エリクセン塗料用測定器モデル318 引っ掻き式硬度計を使用)
荷重 判定
>400g(傷が殆どつかない。鉛筆硬度7H〜8Hレベル) ◎
200〜400g(傷がつくが僅か。鉛筆硬度5H〜7Hレベル) ○
200g未満(爪で容易に傷がつく。鉛筆硬度3Hレベル) ×
【0034】
(ロ)テーバー磨耗試験(磨耗輪 CS−17)
磨耗量 判定
100mg未満 ◎
100〜200mg ○
200mg以上 ×
【0035】
(ハ)耐傷付き性の総合判定
【表1】
【0036】
(3)メルトフローレート(MFR)
加工性の指標としてMFRの測定を行った。
JIS K7670(1981)に準拠
樹脂温度:190℃、荷重:2160g(単位:g/10分)
【0037】
(4)引張特性
(イ)破断点強度
機械強度の指標として、破断点強度の測定を行った。
JIS K6760(1981)に準拠
試験片:JIS K6301(1975)3号ダンベル
【0038】
(ロ)伸び
同時に伸びの測定を行い、以下の基準で判定した。
◎:伸びが200%以上で、実用性に極めて優れる
○:伸びが100%以上で、実用性のあるレベルである
×:伸びが30%以下で、実用性に乏しい
【0039】
[実施例1]
エチレン・アクリル酸共重合体(AC−1)、水酸化アルミニウム(ATH)、酸化防止剤(AO)を表1に示す配合比で配合し、ニーダー混練機にて、溶融温度160℃で混練を行うことにより、難燃性樹脂組成物を調製した。プレス成形により厚さ1mmと3mmのシートを作製し、難燃性(酸素指数、チャー形成)、耐傷付き性の評価を行った。また前記組成物からMFR及び引張特性の測定を行った。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、実施例1の難燃性樹脂組成物は、従来のポリオレフィン系樹脂では到底達成できなかった難燃性(酸素指数、チャー形成性)、耐傷付き性、機械強度、加工性の全てを兼ね備えた実用性の高い組成物であった。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、水酸化アルミニウム100重量部の代りに、水酸化アルミニウム99重量部と水酸化マグネシウム(MDH)1重量部を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた組成物は、難燃性、加工性、機械強度がさらに上昇していた。複数の金属化合物を用いて難燃性、加工性、機械強度がいずれも向上するという知見は、従来知られていない。
【0041】
[実施例3〜5]
実施例1において、エチレン・アクリル酸共重合体100重量部の代りに、エチレン・アクリル酸共重合体70重量部と高密度ポリエチレン(P−1)30重量部又はエチレン・アクリル酸エチル共重合体(P−2)30重量部又はエチレン・酢酸ビニル共重合体(P−3)30重量部とを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた組成物は、難燃性、加工性、機械強度が実施例1のものと同様に優れていた。
【0042】
[比較例1]
実施例1において、水酸化アルミニウムの代りに水酸化マグネシウムを使用して、実施例と同様の操作を行った。従来の知見通り、水酸マグネシウムとエチレン・アクリル酸共重合体は反応性が強く、溶融混練開始直後に急激な粘度上昇が起こり、加工できなかった。加工温度を200℃以上に上昇させたが、粘性が低下するどころかさらに上昇したため、混練を中止した。
【0043】
[比較例2]
実施例1において、エチレン・アクリル酸共重合体の代りにエチレン・アクリル酸エチル共重合体を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、得られた組成物はチャー形成性、耐傷付き性に劣っていた。
【0044】
【表2】
【0045】
[実施例6〜8]
実施例1において、エチレン・アクリル酸共重合体の代りにエチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(AC−2)又はエチレン・アクリル酸共重合体の亜鉛アイオノマー(AC−3)又はエチレン・アクリル酸共重合体のマグネシウムアイオノマー(AC−4)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。
表3の結果から明らかなように、得られた組成物は、難燃性、加工性、機械強度が実施例1のものと同様に優れていた。
【0046】
【表3】
【発明の効果】
本発明によれば、加工性、耐傷付き性、機械強度、燃焼時のチャー形成性に優れ、酸素指数の高い難燃性樹脂組成物を提供することができる。このような難燃性樹脂組成物は、高度な難燃性が要求される分野、例えば玩具、ホース、シート、テープ、壁紙、電線被覆材、建材などの用途に有効に利用される。
【0047】
このような用途における成形品の具体例としては、例えば、玩具、人工芝、マット、止水シート、トンネルシート、ルーフィング等の土木分野、ホース、チューブ等のパイプ用途、パッキング、制振シート等の家電製品、カーペット等の裏打ち材、ドアパネル防水シート、泥よけ、モール等の自動車用途、壁紙、家具、床材、発泡シート等の建材用途、配線ケーブル、通信ケーブル、機器用ケーブル、電源コード、プラグ、耐火ケーブル、制御・計装ケーブル、収縮チューブ等のケーブル用途、粘着テープ等の接着用途等の分野で用いられるものが挙げられる。
Claims (6)
- 不飽和カルボン酸含量(a)が0.5〜25重量%、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10分の範囲にあり、かつ(a)/MFRの値が0.001〜50の範囲にあるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体又はそのアイオノマー(A1)又は(A1)とその他の熱可塑性樹脂(A2)からなり、(A1)/(A2)(重量比)が10/90〜100/0である樹脂成分(A)に水酸化アルミニウム(B)又は水酸化アルミニウム(B)と2価の金属化合物を配合してなる難燃性樹脂組成物であって、樹脂成分(A)100重量部当たり、水酸化アルミニウム(B)の配合量は30〜200重量部であり、また2価の金属化合物を配合する場合は、水酸化アルミニウム(B)100重量部当たり2価の金属化合物の配合量は50重量部以下であり、かつ赤リンを含有しない難燃性樹脂組成物。
- 樹脂成分(A)が、(A1)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体であり、(A1)/(A2)(重量比)が60/40〜100/0であることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 樹脂成分(A)が、(A1)がエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーであり、(A1)/(A2)(重量比)が10/90〜100/0であることを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
- 190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜5.0g/10分である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- 2価の金属化合物が水酸化マグネシウムである請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
- (A1)における不飽和カルボン酸がアクリル酸である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
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