JP3773817B2 - ノイズキャンセラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力信号のノイズを除去するノイズキャンセラに関するもので、特に、FM受信装置に設けられるFM受信信号のノイズを除去するノイズキャンセラに関する。
【0002】
【従来の技術】
車載のFM受信装置において、受信するFM受信信号に、イグニッションノイズなどのパルスノイズが重畳される。このようなパルスノイズをFM受信信号から除去するためのノイズキャンセラが設けられている。
【0003】
従来のノイズキャンセラは、例えば、図6(a)のようにパルスノイズが重畳されたコンポジット信号が受信される際、HPF(High Pass Filter)にコンポジット信号を通すことによってパルスノイズの検出が行われる。そして、HPFでパルスノイズが検出されると、図6(b)のようなパルスノイズ検出信号が発生する。そして、HPFからのパルスノイズ検出信号が積分器に与えられると、積分器の出力が図6(c)のようになる。
【0004】
即ち、パルスノイズ検出信号が与えられると、積分器を構成するキャパシタが充電されて、積分器の出力が閾値より高くなる。このように積分器の出力が所定の閾値より高くなると、キャパシタが放電されるように積分器が制御され、積分器の出力が徐々に低くなる。このような積分器の出力と所定の閾値を比較することによって、ゲート制御信号を生成する。このゲート制御信号によって、パルスノイズを除去するためのゲート回路の動作が制御される。
【0005】
よって、積分器の出力が図6(c)のようになるとき、パルスノイズ検出信号が発生して、積分器の出力が閾値より高い間、ゲート制御信号がハイとなる。そして、ゲート回路では、コンポジット信号の信号レベルがパルスノイズ発生直前の信号レベルに保持されるように、信号処理が行われるため、図6(d)のように、パルスノイズが除去されたコンポジット信号が出力される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図6のような動作を行うことによってパルスノイズの除去を行うノイズキャンセラでは、受信信号の状況によらず、ゲート回路でパルスノイズ発生期間中、パルスノイズ発生直前の信号レベルに保持される。よって、受信信号に歪みが発生するために、復調した音声信号の音質が余り良くない。
【0007】
又、特開平8−56168号公報のように、受信状況によりフィルタの切換を行うFM受信装置において、パルスノイズを除去するために受信信号の信号レベルを保持するゲート期間を可変とすることにより、適切なパルスノイズの除去を行うものが提案されている。しかしながら、結局は、図6の動作と同様、パルスノイズ発生直前の信号レベルに保持することによって、パルスノイズの除去を行うため、受信信号に歪みが発生する。
【0008】
このような問題を鑑みて、本発明は、パルスノイズ除去後、受信信号の状況に応じて補間動作を行うノイズキャンセラを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のノイズキャンセラは、入力信号に重畳されたパルスノイズを検出するパルス位置検出部を有するともに、前記入力信号から前記パルス位置検出部で検出されたパルスノイズを除去するノイズキャンセラにおいて、前記入力信号の状態を判定する状態算出部と、前記パルスノイズの除去を行うとともに補正処理を行うためのデータ位置における補間幅を、該状態算出部で判定された前記音声信号に含まれる高域成分の割合が高いほど短く設定する補間幅算出部と、前記入力信号から前記パルス位置検出部でパルスノイズが検出されたデータ位置を中心として前記補間幅算出部で設定された前記補間幅分のデータを処理することによって、前記パルスノイズの除去を行うとともに補間処理を行って出力するパルスノイズ低減処理部と、を有することを特徴とする。
【0010】
このようなノイズキャンセラにおいて、パルスノイズがパルス位置検出部で検出されるとき、前記補間幅算出部において、パルスノイズが重畳されたデータ位置を含む補間幅が、前記状態算出部で判定されたパルスノイズが重畳されたデータ位置の音声信号の状態によって設定される。そして、パルスノイズが重畳されたデータ位置を含む前記補間幅算出部で設定された補間幅における音声信号が補間処理される。このとき、補間幅前後のデータを用いて、補間幅内の音声信号が線形補間されるようにしても構わない。
【0011】
又、このようなノイズキャンセラにおいて、請求項2に記載するように、前記補間幅算出部において、前記状態算出部で前記音声信号が無音声状態に近いと判定されるとき、前記補間幅が最も長く設定され、前記状態算出部で前記音声信号が有する高域成分の比率が高いと判定されるほど、前記補間幅が短く設定されるようにして、補間処理後の波形を適切なものとし、歪みを抑制することができる。更に、請求項3に記載するように、前記状態算出部において、まず、前記音声信号が無音状態であるか否かが判定された後、前記音声信号に高域成分が多く含まれているか否かが判定されるようにしても構わない。
【0012】
又、請求項4に記載するように、前記パルスノイズ低減処理部において、更に、前記補間処理が成された前記音声信号を低域通過フィルタで濾波するようにして、補間処理された部分と補間処理されていない部分との不連続性を抑えるようにすることができる。更に、請求項5に記載するように、前記補間幅算出部において、前記状態算出部で判定された前記音声信号が有する高域成分の比率が高くなるほど、前記低域通過フィルタのカットオフ周波数が高くなるように設定して、前記パルスノイズ低減処理部に与えるようにしても構わない。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明のノイズキャンセラを有するFM受信装置の内部構成を示すブロック図である。図2は、本発明のノイズキャンセラの内部構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すFM受信装置は、放送信号を受信するアンテナ1と、アンテナ1で受信した放送信号から所望のチャンネルのFM受信信号を選択受信するとともに高周波増幅を行うフロントエンド部(FE)2と、FE2で受信されたFM受信信号を10.7MHzの中間周波数に周波数変換するとともに増幅する中間周波数増幅部(IF)3と、IF3で周波数変換されたFM受信信号を検波して変調信号を取り出す検波部4と、検波部4で検波されて得られた変調信号に重畳したノイズを除去するためのノイズキャンセラ(NC)5と、NC5でノイズが除去された変調信号を左スピーカ7と右スピーカ8に出力するための音声信号に分離するためのマルチプレクサ(MPX)6と、音声を再生出力する左スピーカ7及び右スピーカ8とを有する。
【0015】
アンテナ1により受信された放送信号から、所望のチャンネル周波数のFM受信信号をFE2で選局すると、IF3において、この選局したFM受信信号に局部発振信号を混合することによって中間周波数変換を行う。そして、中間周波数変換が成されたFM受信信号が、検波部4でPLL(Phase Locked Loop)などによる検波方式が用いられて検波されて変調信号が得られる。更に、検波部4において、この変調信号がデジタル信号に変換される。この変調信号がNC5に与えられて、重畳されたノイズが検知されるとともに除去される。このノイズ除去された変調信号がMPX6に与えられると、変調信号に含まれる主チャンネル信号と副チャンネル信号とを処理することによって、左スピーカ7と右スピーカ8に出力するための音声信号に分離して左スピーカ7と右スピーカ8に出力する。
【0016】
このようなFM受信装置におけるNC5について、以下に説明する。図2に示すNC5は、検波部4で得られた変調信号に重畳されたパルスノイズの検出を行うパルス位置検出部51と、変調信号の状態を認識するモード算出部52と、モード算出部52で認識された変調信号の状態に応じてパルスノイズが検出された位置での補間を行うための補間幅を設定するための補間幅算出部53と、パルス位置検出部51で検出されたパルスノイズの除去とパルスノイズ除去後の補間動作を行うパルスノイズ低減処理部54とを有する。
【0017】
離散化されたデジタル信号として、変調信号がNC5に入力されると、パルス位置検出部51でパルスノイズが重畳された位置の検出が行われる。このとき、例えば、広域フィルタで濾波した変調信号を2乗回路で2乗して絶対値形成を行う。そして、この絶対値形成が成された変調信号を、リミッタ回路で極端に振幅の大きい部分を取り除き、時間平均回路で時間的な平均値を求める。この時間的な平均値と絶対値形成された変調信号の信号レベルとを比較し、時間的な平均値に対して、その信号レベルが十分に大きくなるとき、パルスノイズが発生したものとして、その位置を検出する。
【0018】
尚、本発明者は、このパルス位置検出部51の詳細について、例えば、特開2001−102944号公報に「ラジオ受信機におけるノイズ検出装置」として提案している。又、本実施形態では、ノイズ位置検出回路を、特開2001−102944号公報におけるノイズ検出装置に基づいた構成のものとして説明するが、他の構成のものとしても構わない。
【0019】
又、モード算出部52では、まず、入力された変調信号を2乗することによって絶対値形成を行って、所定期間の変調信号の振幅を測定する。この測定した変調信号の振幅を所定の閾値と比較したとき、所定期間内に置いて連続して閾値以下となる場合、変調信号が無音状態に近い状態であることを認識する。又、無音状態でないと判定されたとき、この所定期間の変調信号が、高域周波数の変調信号を濾波するBPF(Band Pass Filter)によって濾波された高域成分と変調信号全体の成分の比を求め、求められた成分比が所定値より大きくなったとき、高域成分が多いものとして判定する。
【0020】
このようにして、モード算出部52では、まず、入力された変調信号が無音状態に近い第1モードであるか否かが判定される。次に、入力された変調信号が第1モードに属さない場合、高域部分が少ない第2モードであるか、又は、高域部分の多い第3モードであるかを判定する。よって、モード算出部52では、第1〜第3モードの3種類のモードが判定される。
【0021】
このようにして3種類のモードがモード算出部52で判定されると、判定したモードを補間幅算出部53に通知する。補間幅算出部53では、ノイズ除去するための補間幅を設定する。即ち、パルスノイズが検出されたとき、このパルスノイズを除去した後に波形成形するために、補間する時間間隔が設定される。このとき、モード算出部52で第1モードと判定されると、補間幅を最も長く設定し、又、モード算出部52で第3モードと判定されると、補間幅を最も短く設定する。
【0022】
今、変調信号は、サンプリングされた離散信号として入力されるため、補間幅は、補間処理するためのデータの個数として設定される。即ち、第1モードではパルスノイズが検出されたデータを含む10個のデータを補間幅とし、第2モードではパルスノイズが検出されたデータを含む7個のデータを補間幅とし、第3モードではパルスノイズが検出されたデータを含む5個のデータを補間幅とする。
【0023】
更に、パルスノイズ低減処理部54において、補間処理を行ってパルスノイズが除去された部分と補間処理の行われない部分との不連続性をなくすために、LPF(Low Pass Filter)処理が行われる。このLPF処理を行う際のカットオフ周波数とが各モードに応じて設定される。このカットオフ周波数は、第1モードで最も低く設定されるとともに、第3モードで最も高く設定される。
【0024】
そして、パルス位置検出部51で検出されたパルスノイズの重畳されたデータ位置と、検出されたパルスノイズの重畳されたデータ位置において補間幅算出部53で設定された補間幅とが、パルスノイズ低減処理回路54に与えられる。そして、パルスノイズの重畳されたデータ位置を中心として補間幅の前後の位置のデータを用いて線形補間が行われることで、補間幅の各データ位置のデータが求められる。
【0025】
例えば、図3のように、データ位置Y3においてパルスノイズが検出されるとともに、第3モードと判定されて、補間幅内のデータの個数が5個と設定されるものとする。そして、補間幅内の各データ位置Y1〜Y5の信号レベルをy1〜y5とするとともに、補間幅直前のデータ位置Xaの信号レベルをxa、補間幅直後のデータ位置Xbの信号レベルをxbとする。このとき、補間幅内の各データ位置Y1〜Y5の信号レベルy1〜y5は、以下のようになる。
y1=(xb−xa)/6+xa
y2=2×(xb−xa)/6+xa
y3=3×(xb−xa)/6+xa
y4=4×(xb−xa)/6+xa
y5=5×(xb−xa)/6+xa
【0026】
このようなパルスノイズ除去が、無音状態の場合及び周波数3kHzの正弦波の場合のそれぞれにおいて行われたときの様子を、図4及び図5に示す。尚、図4(a)及び図5(a)が入力されたパルスノイズが重畳された変調信号を、図4(b)及び図5(b)が補間幅内のデータの個数を5個としたときの補間処理後の変調信号を、図4(c)及び図5(c)が補間幅内のデータの個数を10個としたときの補間処理後の変調信号を、それぞれ表す。又、図4及び図5は、補間幅の違いによる補間処理後の様子を比較するための図である。
【0027】
図4(a)のように、無音状態の変調信号(第1モード)にパルスノイズが重畳されたとき、補間幅内のデータの個数を5個とした場合、図4(b)のように、補間処理後の変調信号から完全にパルスノイズを除去することができず、補正残りが発生する。よって、補間幅内のデータの個数を10個と多くすることによって、図4(c)のように、パルスノイズを完全に除去するとともに、パルスノイズが除去された補間部分を無音状態として復元することができる。
【0028】
又、図5(a)のように、周波数3kHzの正弦波となる変調信号(第3モード)にパルスノイズが重畳されたとき、補間幅内のデータの個数を10個とした場合、図5(c)のように、補間処理されてパルスノイズが除去された変調信号が歪んだ波形として出力される。よって、補間幅内のデータの個数を5個と少なくすることによって、図5(b)のように、パルスノイズを完全に除去するとともに、パルスノイズが除去された補間部分を周波数3kHzの正弦波に近い状態に復元することができる。
【0029】
このように、高域成分を有する変調信号ほど、その補間幅を短くすることによって適切な補間処理を行うことができる。パルスノイズ低減処理部54において、このようにして、パルスノイズ除去を行うとともに補間処理が行われると、LPF処理を行うことによって、補間処理された部分と補間処理が成されていない部分との不連続性をなくす。よって、パルスノイズ低減処理部54より、パルスノイズが低減されるとともに補正歪みの抑制された変調信号が出力される。
【0030】
尚、本実施の形態において、モード算出部が、無音状態と、高域成分の少ない状態と、高域成分の多い状態となる第1〜第3モードの3つのモードを判定するものとしたが、複数種類のBPFを利用することによって、更に細かく変調信号の状態を判定することできるようにしても構わない。又、このとき、それぞれの状態で最適とされる補間幅を設定することによって、補間処理後に発生する変調信号に現れる歪みを抑制することができる。又、補間処理についても、単純な線形補間方法を用いたが、他の方法を用いて補間を行うようにしても構わない。更に、検波部においてデジタル信号に変換されるものとしたが、中間周波数に周波数変換された後にデジタル信号に変換し、IF後段の各部においてデジタル信号処理されるようにしても構わない。
【0031】
【発明の効果】
本発明によると、入力信号の状態に応じて補間処理をするための補間幅が調整することができるため、各状態に最適な補間処理を施すことができる。よって、補間処理後に生成される入力信号の波形に生じる歪みを抑制することができ、自然な波形とすることができる。又、無音状態に近いような場合には、補間幅を長くすることで補正されていないノイズ部分が重畳された補正残りを防ぐことができるとともに、高域成分が多い場合には補間幅を短くすることで補間処理後の波形の歪みを低減することができる。更に、補間処理後の入力信号に対して、LPF処理を行うことによって、補間処理された部分と補間処理されていない部分との間に生じる不連続性を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のノイズキャンセラを有するFM受信装置の内部構成を示すブロック図。
【図2】本発明のノイズキャンセラの内部構成を示すブロック図
【図3】補正処理動作を示すための図。
【図4】無音状態の変調信号を補正処理したときの様子を示す図。
【図5】周波数3kHzの正弦波の変調信号を補正処理したときの様子を示す図。
【図6】従来のノイズキャンセラの動作を示すための各種信号の様子を示す図。
【符号の説明】
1 アンテナ
2 FE
3 IF
4 検波部
5 NC
6 MPX
7 左スピーカ
8 右スピーカ
51 パルス位置検出部
52 モード算出部
53 補間幅算出部
54 パルスノイズ低減処理部
Claims (5)
- 音声信号に重畳されたパルスノイズを検出するパルス位置検出部を有するとともに、前記入力信号から前記パルス位置検出部で検出されたパルスノイズを除去するノイズキャンセラにおいて、
前記音声信号の状態を判定する状態算出部と、
前記パルスノイズの除去を行うとともに補正処理を行うためのデータ位置における補間幅を、該状態算出部で判定された前記音声信号に含まれる高域成分の割合が高いほど短く設定する補間幅算出部と、
前記音声信号から前記パルス位置検出部でパルスノイズが検出されたデータ位置を中心として前記補間幅算出部で設定された前記補間幅分のデータを処理することによって、前記パルスノイズの除去を行うとともに補間処理を行って出力するパルスノイズ低減処理部と、
を有することを特徴とするノイズキャンセラ。 - 前記補間幅算出部において、
前記状態算出部で前記音声信号が無音声状態に近いと判定されるとき、前記補間幅が最も長く設定されることを特徴とする請求項1に記載のノイズキャンセラ。 - 前記状態算出部において、まず、前記音声信号が無音状態であるか否かが判定された後、前記音声信号に高域成分が多く含まれているか否かが判定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のノイズキャンセラ。
- 前記パルスノイズ低減処理部において、更に、前記補間処理が成された前記音声信号を低域通過フィルタで濾波することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のノイズキャンセラ。
- 前記補間幅算出部において、前記状態算出部で判定された前記音声信号が有する高域成分の比率が高くなるほど、前記低域通過フィルタのカットオフ周波数が高くなるように設定して、前記パルスノイズ低減処理部に与えることを特徴とする請求項4に記載のノイズキャンセラ。
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