JP3769107B2 - 高性能なダイレクト感熱平版印刷原版 - Google Patents

高性能なダイレクト感熱平版印刷原版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット印刷用ダイレクト感熱平版印刷原版、平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータの普及につれ、版材構成とともに種々の平版の製版方法が提案されている。実用面からは、版下からポジ若しくはネガフィルムを作製して平版印刷原版に焼き付ける方法が一般に行われているが、該フィルムを介することなく版下から直接製版する電子写真版や銀塩写真版、あるいは、電子組版、DTP(デスクトップ・パブリッシュメント)で編集・作製された印刷画像情報を、可視画像化することなく、直接版材にレーザー若しくはサーマルヘッドで印字し製版できる、所謂コンピュータ・ツー・プレート(CTP)タイプの平版材が登場するにいたっている。これらはまだ実用化されていないが、特にCTPタイプの版材は製版工程の合理化と短縮化、材料費節減が可能となることから、CTS化が完了した新聞製作等の分野で大いに期待されている。
【0003】
かかるCTP版材としては、感光性タイプ、感熱性タイプあるいは電気エネルギーで製版するタイプの版材が知られている。感光性タイプあるいは電気エネルギーで製版する版材は、版価格が従来のPS版に比べ割高となるばかりでなく、その製造装置も大型かつ高価であるため、これらの版材および製版工程は実用化には至っていない。さらに、これらは現像液の廃棄処理の問題も有する。
【0004】
感熱性タイプの版材は、社内印刷を始めとする軽印刷用途に幾つか開発されている。特開昭63−64747号公報、特開平1−113290号公報等には、支持体上に設けられた感熱層に分散させた熱溶融樹脂および熱可塑性樹脂を熱印字により溶融し、加熱部を親水性から親油性に変化させる版材が開示され、米国特許第4034183号、同4063949号明細書には、支持体上に設けられた親水性ポリマーをレーザー照射し親水性基を無くし親油性に転換させる版材が開示されている。しかしながら、これらの版材は、版表面に存在する熱溶融物質によるインキの受容により非画像部が汚れたり、耐刷性が不十分であったり、また、版材設計の自由度が低いという問題があった。
【0005】
特開平3−108588号公報、特開平5−8575号公報には、マイクロカプセル化された熱溶融物質と結着性樹脂とからなる感熱記録層を支持体に設け、加熱部を親油性に変化させる版材が開示されている。しかし、これらの版材ではマイクロカプセル化された熱溶融物質から形成される画像が脆弱であって、耐刷性において満足のいくものではなかった。一方、特開昭62−164596号公報、同62−164049号公報には、親水性表面を有する支持体上に活性水素含有バインダーポリマーと共にブロックイソシアネートとからなる記録層を設けた平版印刷原版及びその方法が開示されている。しかし、この版材は、印字後、非印字部分を除去する現像工程が必要である。
【0006】
さらに、ダイレクト型平版印刷材料の一つに、親水層の表面に画像部をインキジェットやトナー転写等の外的手段で形成する直描型平版印刷材料がある。特開昭62−1587号公報には、マイクロカプセル化した非反応性の熱溶融性物質を塗布し、加熱印字によりトナー受理層を形成する版材が開示されている。しかし、形成されたトナー受理層に親油性のトナー等を固着して初めて印刷版となるものであり、印字後、画像部が形成されるものではない。
【0007】
このように従来の感熱性平版印刷用の版材は、耐刷力に乏しいか親油性に乏しいため、軽印刷などの用途に限られていた。また、その製版工程において現像工程を要するものもあった。
そこで特開平07−01849号公報、特開平07−01850号公報、特願平08−161840号、特願平08−272023号には熱により画像に転換する反応性マイクロカプセルを三次元架橋した親水性バインダー中に分散した形の版材が記載されている。これらの版材は熱モードのダイレクト版材であって、印加エネルギーとして近赤外線レーザーを用いるために通常の室内での取り扱いが可能であり、また現像が不要であるために製版工程を大きく簡略化できる利点がある。更に、親水性バインダーの三次元架橋を強化する方法として特願平08−347984号に記載されているように多価金属イオンとバインダーポリマーに含まれるカルボキシル基の相互作用を利用したものもある。これらの版は画像品位や耐刷性について優れた性能を有するが、後出するような問題点も有している。即ち、特願平8−347984号記載の発明は、親水層に含まれる親水性バインダーポリマーが、多価金属イオンと窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用によって、親水性でかつ強固な三次元架橋構造を親水層全体に渡って均一に形成することで、湿し水による膨潤を抑え、支持体との接着強度や親水層の機械的物性を維持し、高い耐刷性を示すことができるという利点を有するが、処理条件によっては、外部から飛来する汚れ原因物質を受容しやすくなったり、多価金属イオン発生薬剤の残留があったりして、印刷物に汚れを生ずることがある。特に、版を乾燥後12時間以上放置した場合に起きることが多く、印刷初期に於いて汚れを発生するという結果を招き、損紙枚数を増やすという問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の通り、先行する技術は、版性能、製版装置、製版作業性、あるいは版材や製版、装置のコストの点で商業レベルでの実施に問題があった。また、反応性マイクロカプセルと親水性バインダーポリマーを利用した現像レスダイレクト平版に於いても、版の表面が外部からの汚れ成分を受容し易かったり、残留薬剤の影響で、取り扱いによっては印刷物に地汚れを発生させるという問題を有している。本発明は、従来のダイレクト型オフセット版材のこれらの問題点を解決することを目的とするものである。即ち、本発明の目的は、高耐刷性、高寸法精度の平版印刷版が得られ、かつ、地汚れのない鮮明な画像の印刷物が得られる平版印刷原版を低価格で供給することである。さらに、製版工程において、現像液などの廃棄物処理の必要な現像工程がなく、専用の大掛りかつ高価な製版装置を用いなくとも製版できる平版印刷原版およびその製版方法を提供することも本発明の目的である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高耐刷性、高寸法精度の平版印刷版が得られ、かつ、地汚れのない鮮明な画像の印刷物が得られる平版印刷原版を得るために鋭意研究した結果、多価金属イオンと、親水性バインダーポリマー中に存在する窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用を利用して親水性バインダーポリマーを三次元架橋し、さらに親水層表面に親水性ポリマーの薄膜層を設けることによって、上記性能に著しく優れた平版印刷原版が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) 熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーとを含有する親水層、及び支持体を有する感熱平版印刷原版であって、該親水性バインダーポリマーが、(i)多価金属イオンと、該親水性バインダーポリマー中の窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋されており、かつ(ii)親水層表面に親水性ポリマー薄膜を設けてなる感熱平版印刷原版であって、
窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分が、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、イソウレイド基、イソチオウレイド基、イミダゾリル基、イミノ基、ウレイド基、エピイミノ基、ウレイレン基、オキサモイル基、オキサロ基、オキサロアセト基、カルバゾイル基、カルバゾリル基、カルバモイル基、カルボキシラト基、カルボイミドイル基、カルボノヒドラジド基、キノリル基、グアニジノ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、スルホアミノ基、セミカルバジド基、セミカルバゾノ基、チオウレイド基、チオカルバモイル基、トリアザノ基、トリアゼノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾ基、ヒドラゾノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、含窒素複素環、ホルムアミド基、ホルムイミドイル基、3−モルホリニル基、モルホリノ基から選ばれる少なくとも一種である感熱平版印刷原版
(2) 親水性バインダーポリマーが、マイクロカプセル破壊後、該マイクロカプセル中の親油性成分と化学結合する官能基を有しており、マイクロカプセル中の親油性成分が、該マイクロカプセルの破壊後、上記親水性バインダーポリマーと化学結合する官能基を有している上記(1)の感熱平版印刷原版。
(3) 多価金属イオンが、チタニウムイオン、ジルコニウムイオン、第二錫イオンから選ばれる少なくとも一種である上記(1)又は(2)の感熱平版印刷原版。
(4) 親水性バインダーポリマーが、炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、且つ構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも1種含有し、更に構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマーから選ばれる少なくとも1種である上記(1)、(2)又は(3)の感熱平版印刷原版。
(5) 親水性ポリマー薄膜用ポリマーが、酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成されるポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中にリン酸基、スルホン酸基もしくはこれらの塩、水酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に窒素ないし酸素ないし硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有し、更に、構造中にルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である上記(1)、(2)、(3)又は(4)の感熱平版印刷原版。
(6) 上記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の感熱平版印刷原版に熱モードで印字してなる平版印刷版。
(7) 熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーとを含有する親水層、及び支持体を有する感熱平版印刷原版であって、該親水性バインダーポリマーが、(i)多価金属イオンと、該親水性バインダーポリマー中の窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋されてお り、かつ(ii)親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設けてなる感熱平版印刷原版の製造方法であって、
前記支持体上に、窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を構造中に含む未架橋の親水性バインダーポリマーを含有するドープを塗布し乾燥させて感熱平版印刷材料を設ける工程と、
前記感熱平版印刷材料に外部より多価金属イオンを供給することにより、前記親水性バインダーポリマーを、前記多価金属イオンと、前記親水性バインダーポリマー中の前記ルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋させて親水層を設ける工程と、
前記親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設ける工程と
を具備する、感熱平版印刷原版の製造方法。
(8) 親水性バインダーポリマーが、マイクロカプセル破壊後、該マイクロカプセル中の親油性成分と化学結合する官能基を有しており、マイクロカプセル中の親油性成分が、該マイクロカプセルの破壊後、上記親水性バインダーポリマーと化学結合する官能基を有している上記(7)に記載の感熱平版印刷原版の製造方法。
(9) 多価金属イオンが、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、チタニウムイオン、第一鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニウムイオン、第一錫イオン、第二錫イオン、鉛イオンから選ばれる少なくとも一種である上記(7)または(8)に記載の感熱平版印刷原版。
(10) 親水性バインダーポリマーが、炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、且つ構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも1種含有し、更に構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である上記(7)〜(9)のいずれかに記載の感熱平版印刷原版。
(11) 親水性ポリマー薄膜用ポリマーが、酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成されるポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に窒素ないし酸素ないし硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有し、更に、構造中にルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である上記(7)〜(10)のいずれかに記載の感熱平版印刷原版。
(12) 熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有している未架橋親水性バインダーポリマーとを有する親水層、及び支持体とから構成される感熱平版印刷材料に熱モードで印字後、外部より供給される多価金属イオンと上記ルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋され、かつ親水層表面に親水性ポリマー薄膜を設けてなる平版印刷版。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感熱平版印刷原版および平版印刷版において、親水性バインダーポリマーからなる親水層は、インキを撥き、非画像部の主成分を構成する。更に、その表面に親水性ポリマーからなる薄膜層を設けることによって、外部から飛来する汚れ原因物質の受容を抑制し、また残留多価金属イオン発生薬剤を化学的トラップすることによって印刷初期の汚れを大きく減少させることができる。実用的には乾燥した版を提供する場合が大多数であることも鑑みれば、該薄膜層を布設することは大いに有用である。
【0012】
本発明における三次元架橋構造を有する親水性バインダーポリマーとしては、炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、該構造中に窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有し、該ルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用によって網目化されたポリマー、並びに炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、構造中に水酸基、リン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種以上含有し、更に構造中にルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用によって網目化されたポリマーが挙げられる。
【0013】
本発明において親水性バインダーポリマーは、多価金属イオンと相互作用しているルイス塩基部分以外に、該作用に与かっていないルイス塩基部分、水酸基、スルホン酸基、そのアルカリ金属塩、そのアルカリ土類金属塩あるいはそのアミン塩のいずれかを有する又はこれらを組み合わせたセグメントを繰り返し有する親水性バインダーポリマーが好ましく、さらにこれらの親水性官能基と主鎖セグメントの一部にポリオキシエチレン基を有するものは親水性が高くより好ましい。これらに加えて親水性バインダーポリマーの主鎖もしくは側鎖にウレタン結合もしくはウレア結合を有するものは、親水性のみならず非画像部の耐刷性も向上するので特に好ましい。
【0014】
親水性バインダーポリマーの多価金属イオンによる三次元架橋構造は、印字前後いずれにおいて形成されてもよく、印字前に親水性バインダーポリマーが多価金属イオンによる三次元架橋構造をとっていないものも用いることができるが、取扱い時の傷付け防止、およびサーマルヘッドで印字する場合、熱溶融した親水層成分がサーマルヘッドへ付着するのを防止する観点からは、印字前に三次元架橋構造を形成し終えている方が好ましい。
【0015】
本発明において未架橋親水性バインダーポリマーとは、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋構造を有していない、親水性バインダーポリマーの前段階のものをいう。上記未架橋親水性バインダーポリマーにおいて、後述する種々の三次元架橋方法による三次元架橋構造を有していても構わない。また、本発明において多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋構造を有していない、感熱平版印刷原版の前の段階のものを感熱平版印刷材料という。
【0016】
上記の親水性官能基の親水性バインダーポリマー中の割合は、前述の主鎖セグメントの種類と使用する親水性官能基の種類により、それぞれの試料について次に記載する方法で実験的に適宜求めていけばよい。すなわち、本発明の親水性バインダーポリマーの親水性は、支持体上に親水性バインダーポリマーあるいは未架橋親水性バインダーポリマーを含んでなる感熱平版印刷原版または感熱平版印刷材料を形成し、実施例に記載する方法で印刷版の作成と印刷試験を行い、印刷用紙へのインキの付着の有無、あるいは、印刷前後の非画像部の用紙の反射濃度差(例えば、大日本スクリーン製造(株)製、反射濃度計DM400)で評価する、又は水−ケロシンを用いた水中油滴法接触角測定法(例えば、協和界面科学製接触角計、型式CA−A)でケロシンが試料に付着するか否かで評価する。
【0017】
前者の方法で評価する場合、肉眼で観察し、インキ汚れが認められなければ可、認められれば不可とするか、印刷前後の非画像部の用紙の反射濃度差が0.01未満を可、0.01以上を不可とする。後者の方法で評価する場合、新聞印刷のように低粘度インキを使用する印刷版向けには、試料の上記接触角が約150度より大きいことが必要であり、さらには160度以上が好ましい。印刷前に練ってから使用する高粘度インキを使用する印刷版向けには、約135度より大きいことが必要である。
【0018】
本発明の親水層表面に設ける親水性ポリマー薄膜層用のポリマーとしては、親水性バインダーポリマーと同種類のポリマーを使用することができるが、多価金属イオンによる三次元架橋は必要ではないので、親水性バインダーポリマーで必須とされる窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分は必須ではない。親水性ポリマー薄膜層用のポリマーとしては、酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマー;炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、該構造中に水酸基、リン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種以上含有するポリマー;炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、該構造中に窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー;および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、構造中に水酸基、リン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種以上含有し、更に構造中にルイス塩基部分を有するポリマーが挙げられる。ただし、望ましくは親水層との親和性・接着性や、残留する多価金属イオン発生薬剤を化学的にトラップする効果を考慮すると、該親水性該バインダーポリマーと同種のルイス塩基部分およびリン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を有するポリマーが好ましい。該親水性ポリマー薄膜層用ポリマーの分子量としては1000〜100万、望ましくは3000〜10万程度のものが好ましい。この範囲より低分子量であると親水層自体の脆弱化を招き、また、この範囲より高分子量であると画像形成が妨害されて所定の効果が発現しないことがある。
【0019】
本発明でいうルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用を発現させ、親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を布設する具体的態様は次の通りである。
即ち、ルイス塩基部分を構造中に含む未架橋親水性バインダーポリマーと、後述するような、平版印刷版に必要な他の成分とを混合してドープを調製し、支持体上に塗布、乾燥し、本発明でいう感熱平版印刷材料を得ることができる。しかる後に、多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液への感熱平版印刷材料の浸漬や、該溶液の感熱平版印刷材料への塗布や噴霧によって外部より多価金属イオンを供給すると、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用が発現して三次元架橋が形成される。この版に親水性ポリマー薄膜層を設けると、本発明でいう感熱平版印刷原版を得ることができる。親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設ける方法としては、親水性ポリマーの水溶液あるいは有機溶媒溶液を親水層表面にバーコータやブレードコータなどで塗布、あるいはスプレーで噴霧、あるいは版を親水性ポリマー溶液に浸漬する方法がある。水溶液あるいは有機溶媒溶液から多価金属イオンを供給した直後の版の親水層は鋭利な力に対しては脆弱になっていることもあるので、非接触的に親水性ポリマー薄膜層用ポリマーの液を供給することが好ましく、この点においてはスプレー方式か浸漬方式が好ましい。
【0020】
用いられる親水性ポリマーの水溶液あるいは有機溶媒溶液の濃度としては、0.01重量%〜50重量%が好ましく、0.1重量%〜10重量%の範囲がより好ましい。この範囲より低濃度では親水層表面に存在する薄膜材の量が少なすぎて、親水層表面の保護あるいは残留多価金属イオン発生薬剤の化学的トラップが十分に行われない場合がある。また、この範囲より高濃度では、薄膜材の量が多すぎて、画像形成を妨げることがある。本発明において、親水層表面に設ける親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.01〜10μmであり、0.1〜1μmが好ましい。
【0021】
また、上記感熱平版印刷材料に熱モードで印字後、多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液によって上記の方法で外部より多価金属イオンを供給し、その後に親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設けることにより、本発明でいう平版印刷版を得ることもできる。
多価金属イオンを供給した後に、版面に存在する過剰の薬剤を除去する必要があれば、適当な洗液で洗浄を行ってもよい。洗液としては水のほかに塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸の稀薄水溶液、界面活性剤稀薄溶液のほか有機溶剤を使用することもできる。洗浄は多価金属イオンを供給した直後に行うことが好ましい。また、親水性ポリマー薄膜層の形成は、多価金属イオン供給あるいは洗浄後直ちに行うことが好ましい。親水性ポリマー薄膜層を親水層表面に設ける前に乾燥させると、外部からの油分付着や、残存薬剤の変質などによって汚れが発生し、本発明の効果が十分に得られないことがある。
【0022】
本発明において、上述の多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋方法と、後述する種々の三次元架橋方法の一種類以上を併用してもよい。また、本発明の親水性バインダーポリマーは必要に応じ、後述する種々のその他の成分を含んでいてもよい。
本発明の多価金属イオンは、主として水溶液などの溶液を介して感熱平版印刷材料あるいは熱モードで印字した感熱平版印刷材料の外部より供給される。該多価金属イオンを発生せしめる金属塩類の具体例を以下に例示する。すなわち、該金属塩類は、水のほか塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸の水溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ水溶液などに溶解して、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、チタニウムイオン、第一鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニウムイオン、第一錫イオン、第二錫イオン、鉛イオンの金属イオンあるいは金属錯イオンの一種以上を発生せしめるものであればよく、例えば、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化第一鉄、臭化第一鉄、塩化コバルト、臭化コバルト、塩化第二銅、臭化第二銅、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、塩化第一錫、塩化第二錫などの金属ハロゲン化物、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸第一鉄、硝酸コバルト、硝酸銅、硝酸ストロンチウム、硝酸鉛等の硝酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸コバルト、硫酸チタン、硫酸銅等の硫酸塩、酢酸カルシウム、酢酸ジルコニウム、酢酸銅、酢酸鉛等の酢酸塩などの他、炭酸ジルコニウムアンモン、フェロシアン化鉄、フェリシアン化鉄なども用いられる。中でも酢酸ジルコニウム、塩化第一錫、塩化第二錫が特に好ましい。
【0023】
多価金属イオンを含む溶液の濃度は金属の種類やカウンタアニオンの種類によって変わりうるが、塩の濃度として好ましくは0.01〜50重量%、更に好ましくは0.2〜20重量%である。これら多価金属イオンの供給によって、該イオンと相互作用して三次元架橋構造を形成する親水性バインダーポリマー中のルイス塩基部分の量は、イオン供給前に存在したルイス塩基部分の総数の10〜100モル%、更には60〜100モル%が好ましい。
【0024】
次に本発明における、多価金属イオンと親水性バインダーポリマー中のルイス塩基部分の相互作用による三次元架橋形成の具体的態様の例を述べる。
即ち親水性バインダーポリマーとして、(メタ)アクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、イタコン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンの如きルイス塩基部分を有する親水性モノマーを必須とし、更に、必要に応じて3−ビニルプロピオン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、ビニルスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミンのハロゲン化水素酸塩等のスルホン酸基、リン酸基、アミノ基の塩、水酸基、およびエーテル基などの親水性基を有する親水性モノマーから選ばれる一種以上を用いて、少なくとも窒素、酸素および硫黄から選ばれる1種を含むルイス塩基部分を有する親水性ホモあるいはコポリマーを合成する。これに、後述するような、平版印刷版に必要な他の成分を混合し、適当な溶媒に分散および/または溶解してドープを調製する。また、例えば、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸誘導体のようなルイス塩基部分を含む天然高分子に後述するような、平版印刷版に必要な他の成分を混合し、適当な溶媒に分散および/または溶解してドープを調製してもよい。これを、支持体上に塗布、乾燥し、本発明でいう感熱平版印刷材料を得ることができる。
【0025】
しかる後に、多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液への感熱平版印刷材料の浸漬や、該溶液の感熱平版印刷材料への噴霧、あるいは塗工によって外部より多価金属イオンを供給すると、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用が発現して三次元架橋が形成される。この親水層表面に、親水性ポリマー薄膜用ポリマーの溶液を浸漬あるいは噴霧などの方法で与えて親水性ポリマー薄膜層を設けると、本発明でいう感熱平版印刷原版を得ることができる。また、該感熱平版印刷材料に熱モードで印字後、外部より多価金属イオンを、該イオンを発生せしめるような水溶液ないしは有機溶媒溶液によって同上の方法で供給し、その後に親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設けると、同上の機構によって、本発明でいう平版印刷版を得ることができる。
【0026】
本発明の親水性バインダーポリマーには、これまで説明してきた多価金属イオンとルイス塩基との相互作用による三次元架橋法に加えて、以下に示すような三次元架橋法の一種類以上を併用することもできるし、また、以下に示すような方法で三次元架橋されたポリマーの一種類以上を親水性バインダーポリマーとして併用してもよい。
【0027】
即ち、カルボキシル基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基およびエポキシ基などの官能基を有する親水性バインダーポリマーは、これらの官能基を利用し、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等のエチレン付加重合性不飽和基あるいはシンナモイル基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基,p−フェニレンジアクリレート基等の環形成基を導入した不飽和基含有ポリマーを得ることができる。これに、必要により、該不飽和基と共重合し得る単官能、多官能モノマーと後述の重合開始剤と無機充填剤、および必要に応じて後述の滑剤とを加え、適当な溶媒に溶解し、ドープを調製する。これを支持体上に塗布し乾燥後あるいは乾燥を重ねて三次元架橋させる。
【0028】
水酸基、アミノ基およびカルボキシル基などの活性水素を含有する親水性バインダーポリマーは、イソシアネート化合物あるいはブロックポリイソシアネート化合物および後述の他の成分と共に活性水素非含有溶剤中に添加しドープを調合し、支持体に塗布し乾燥後或いは乾燥を兼ねて反応させ三次元架橋させる。
親水性バインダーポリマーの共重合成分としてグリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基あるいはアミノ基を有するモノマーを用いることができる。グリシジル基を有する親水性バインダーポリマーは、架橋剤として1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸などのα,ω−アルカンもしくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、α,ω−ビス−(3−アミノプロピル)−ポリエチレングリコルエーテル等のポリアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のオリゴアルキレンまたはポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリストール、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物を用い、これらとの開環反応を利用して三次元架橋することができる。
【0029】
カルボキシル基またはアミノ基を有する親水性バインダーポリマーは、架橋剤として、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物を用いたエポキシ開環反応等を利用して三次元架橋するこができる。
【0030】
親水性バインダーポリマーが、セルロース誘導体などの多糖類、ポリビニルアルコールもしくはその部分鹸化物、グリシドールホモもしくはコポリマー、あるいはこれらを含む場合には、これらが含有する水酸基を利用し、前述の架橋反応し得る官能基を導入し、前述の方法により三次元架橋できる。
ポリオキシエチレングリコール等の水酸基をポリマー末端に有するポリオールまたはアミノ基をポリマー末端に有するポリアミンと2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートとから合成した親水性ポリウレタン前駆体に、エチレン付加重合性不飽和基または環形成基を導入して親水性バインダーポリマーとし、前述の方法で三次元架橋できる。
【0031】
上記合成された親水性ポリウレタン前駆体が、イソシアネート基末端を有する場合は、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、桂皮酸および桂皮アルコール等の活性水素を有する化合物と反応させて三次元架橋する。親水性ポリウレタン前駆体が水酸基あるいはアミノ基末端を有する場合は、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートおよび2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートなどと反応させ三次元架橋する。
【0032】
親水性バインダーポリマーが、多塩基酸とポリオール、多塩基酸とポリアミンとから形成されるポリマーの場合は、それらを支持体に塗布後、加熱により三次元架橋化させる。親水性バインダーポリマーが、カゼイン、グルー、ゼラチン等の場合は、それらの水溶性コロイド形成化合物を加熱により三次元架橋させて網目構造を形成してもよい。
【0033】
さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびビニルアルコールなどの水酸基含有モノマー、アリルアミンから合成したホモもしくはコポリマー、部分鹸化ポリビニルアルコール、セルロース誘導体などの多糖類、グリシドールホモもしくはコポリマー等の、水酸基やアミノ基を含有する親水性ポリマーと一分子中に二個以上の酸無水基を有する多塩基酸無水物とを反応させ、三次元架橋した親水性バインダーポリマーを形成することもできる。この反応で用いる多塩基酸無水物としては、エチレングリコール−ビス−アンヒドロ−トリメリテート、グリセロール−トリス−アンヒドロトリメリテート、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカル酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等を例示できる。
【0034】
親水性バインダーポリマーが、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンとポリアミンまたはポリオール等の活性水素含有化合物とから形成される場合には、それらの化合物と後述の他の成分とを溶剤中に溶解もしくは分散させ支持体に塗布して溶剤を除去した後、マイクロカプセルが破壊しない温度でキュアリングし三次元架橋させることもできる。この場合、親水性はポリウレタンもしくは活性水素含有化合物のいずれかもしくは両方のセグメント、または側鎖に親水性官能基を導入することにより付与すればよい。親水性を発現するセグメント、官能基としては上記記載の中から適宜選択すればよい。
【0035】
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が例示できる。
【0036】
塗布工程前後のハンドリング時、イソシアネート基が変化するのを防ぐことを目的に、イソシアネート基を公知の方法でブロック化(マスク化)しておくのが好ましい場合もある。たとえば、岩田敬治著「プラスチック材料講座▲2▼ポリウレタン樹脂」日刊工業新聞社刊(1974)、頁51−52、岩田敬治著「ポリウレタン樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(1987)、頁98、419、423、499、等に記載された方法に従い、酸性亜硫酸ナトリウム、芳香族2級アミン、3級アルコール、アミド、フェノール、ラクタム、複素環化合物、ケトオキシム等を使用し、ブロック化することができる。中でも、イソシアネート再生温度が低い、例えばマロン酸ジエチルやアセト酢酸エチルなどが好ましい。
【0037】
前述の非ブロック化あるいはブロック化ポリイソシアネートの何れかに付加重合性不飽和基を導入し、架橋の強化や親油性成分との反応に利用してもよい。
以上述べた中で、親水性バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、イタコン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンの如きルイス塩基部分を有する親水性モノマーを必須とし、更に、必要に応じて3−ビニルプロピオン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、ビニルスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミンのハロゲン化水素酸塩等のスルホン酸基、リン酸基、アミノ基の塩、水酸基、およびエーテル基などの親水性基を有する親水性モノマーから選ばれる一種以上を用いて合成された、少なくとも窒素、酸素および硫黄から選ばれる1種を含むルイス塩基部分を有する親水性ホモあるいはコポリマーを、上述のように多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用と、それ以外の方法で三次元架橋させたものが好ましい。
【0038】
本発明の親水性バインダーポリマーは、下記の単官能モノマー、多官能モノマーを併用させてもよい。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊(1989)、加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会(1985)、赤松清監修「新・感光性樹脂の実際技術」シーエムシー、頁102−145、(1987)等に記載されているN,N′−メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、パラスチレンスルホン酸もしくはその塩、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量600)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(PPG数平均分子量400)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパンまたはそのアクリレート体、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチハドロジェンサクシネート、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートまたはそのメタクリル体、グリセリンモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはそのメタクリル体、N−フェニルマレイミド、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、N−ビニルカルバゾール、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素等がある。
【0039】
本発明の親水性バインダーポリマーにおいて、エチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行うときは、公知の光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いることが反応効率上好ましい。
本発明において用いられる光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。
【0040】
これらの中から、製造工程で用いる光源の波長領域に吸収を持ち、ドープを調合する際使用する溶媒に溶解もしくは分散するものを適宜選択すればよい。通常、使用する溶媒に溶解するものが反応効率が高く好ましい。
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等がある。この開始剤を用いるときは、架橋反応種としてエポキシ基も併用できる。この場合、前述のエポキシ基含有化合物を架橋剤もしくは、親水性バインダーポリマーとして用いるか、親水性バインダーポリマーにエポキシ基を導入すればよい。
【0041】
光二量化反応により三次元架橋させる場合には、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン等、該反応に一般的によく知られた各種増感剤も使用できる。
上記以外にも、徳丸克巳他著「増感剤」、2章、4章、講談社刊(1987)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊、頁62−147(1989)、ファインケミカル、Vol.20 No4、16(1991)に記載されている公知の重合開始剤も使用できる。
【0042】
上記重合開始剤の添加量は、ドープ中の溶媒を除いた有効成分に対し、0.01%〜20重量%の範囲で使用できる。0.01重量%より少ないと開始剤の効果が発揮されず、20%重量より多いと、活性光線の開始剤による自己吸収のため内部への光の到達が不良となり所望する耐刷力を発揮することができなくなることがある。実用的には0.1〜10重量%の範囲で開始剤の効果と非画像部の地汚れとのバランスで組成に応じて決定するのが好ましい。
【0043】
照射光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ等公知のものが使用できる。照射光源からの熱がカプセル破壊の恐れがある場合、冷却しながら照射する必要がある。
本発明で用いられる熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチルニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。使用に際しては、マイクロカプセルを破壊する温度より低温で反応させなければならない。熱重合開始剤の使用量は、ドープ溶媒を除いた成分に対し、0.01〜10重量%の範囲がよい。0.01重量%より少ないと硬化時間が長くなりすぎ、10重量%より多いとドープ調合中に生じる熱重合開始剤の分解によりゲル化が起こることがある。効果と取扱い性を考慮すると、好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0044】
本発明の親水性バインダーポリマーの架橋度は、使用するセグメントの種類、会合性官能基の種類と量等により異なるが、要求される耐刷性に応じ決めていけばよい。まず、多価金属イオンとの相互作用に与るルイス塩基部分の総量は、全モノマーユニットに対して1〜100%になるように設定するのが好ましく、更には50〜100%がより好ましい。また、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用以外の架橋率、即ち架橋間分子量は通常、500〜5万の範囲で設定される。500より小さいとかえって脆くなる傾向があり、耐刷性が損なわれ、5万を超えると湿し水で膨潤し、耐刷性が損なわれる場合もある。耐刷性および親水性の両者のバランスを考慮すると、800〜3万程度が好ましく、さらには、1000〜1万程度が好ましい。
【0045】
本発明の親水性バインダーポリマーは、マイクロカプセル中の親油性成分と化学結合する官能基を有していることが好ましく、両者が化学結合することによって、高い耐刷性を得ることができる。マイクロカプセル中の親油性成分と親水性バインダーポリマーとを反応させるためには、後述する親油性成分の反応性官能基に合わせそれと反応する官能基を有するモノマーを用いて親水性バインダーポリマーを合成することにより、目的の官能基をポリマー中に導入するか、親水性バインダーポリマー合成後目的の官能基を導入すればよい。
【0046】
親水性バインダーポリマーと親油性成分との反応は、反応速度の速い反応、例えば、水酸基、カルボキシル基もしくはアミノ基を有する親水性バインダーポリマーとイソシアネート基を有する親油性成分とのウレタン化反応または尿素化反応、水酸基、カルボキシル基もしくはアミノ基を有する親水性バインダーポリマーとエポキシ基を有する親油性成分との反応、あるいは不飽和基の付加重合反応が好ましい。酸無水基を有する親水性バインダーポリマーと水酸基、アミノ基もしくはイミノ基を有する親油性成分との開環付加反応や不飽和基とチオールとの付加反応でもよい。耐刷性を向上させるためには、上記化学結合が三次元架橋構造をとることが好ましい。
【0047】
本発明の親油性成分は、親水性バインダーポリマーと反応する官能基を有していることが好ましい。この場合、熱印字によりカプセル外に放出された親油性成分は、該親水性バインダーポリマーと速やかに反応し化学結合されたインキを受容する画像部を形成する。耐刷性を向上させるためには、親油性成分自身も架橋構造をとることが好ましい。
【0048】
本発明の親油性成分としては、例えばフェニルイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ポリメチレン−ポリフェニルイソシアネート、ポリメリック−ポリイソシアネート等のイソシアネート;トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサンジイソシアネートあるいは2,4−トリレンジイソシアネートといった上記ジイソシアネートとの1対3モル付加体等のポリイソシアネート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのオリゴマーおよびポリマーなどのイソシアネート化合物;N,N′−メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N′−ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルミド、パラスチレンスルホン酸およびその塩、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量600)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(PPG数平均分子量400)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパンおよびそのアクリレート体、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ポリエチレンおよびポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートおよびそのメタクリル体、グリセリンモノおよびジ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびそのメタクリル体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルモノマー類、これらと単官能(メタ)アクリレートとの組合せ、さらには前述の親水性基を含有する(メタ)アクリレートモノマーとの組合せ;N−フェニルマレイミド、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、N−ビニルカルバゾール、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル化合物、これらと単官能アリル化合物との組合せ;さらには、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、チオール基、エポキシ基等の反応性基をポリマー分子両末端に含有する1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、水添加1,2−ポリブタジエン、イソプレン等の液状ゴム;ウレタン(メタ)アクリレート等の各種テレキーリック性ポリマー;炭素−炭素不飽和基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基含有反応性ワックス;プロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパン−トリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル等の多官能エポキシ化合物等が使用できる。さらには、既存のPS版の画像成分として使用されている架橋前の公知の、(メタ)アクリルコポリマーやウレタンアクリレート、ジアゾ樹脂も使用出来る。
【0049】
親油性成分は、室温で固体状、液体状何れでもよい。室温で固体のポリイソシアネート化合物として、例えば、トリデンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレン−ポリフェニルイソシアネート、ポリメリック−ポリイソシアネート等がある。
親油性成分中に含まれるエチレン付加重合性モノマー、オリゴマーの二重結合反応を利用して、親油性成分と親水性バインダーポリマーとを化学反応させるか、あるいは親油性成分自身を反応させる場合は、以下の熱重合開始剤を用いることができる。熱重合開始剤は、50℃以下で貯蔵しても安定であるものが好ましく、60℃以下で安定であれば、さらに好ましい。
【0050】
例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテートなどの過酸化物が挙げられる。
【0051】
熱重合開始剤添加の方法としては、これををマイクロカプセル化して親油性成分のマイクロカプセル中にカプセル−イン−カプセルの形で用いても良く、親水層にそのまま分散させてもよい。親油性成分の硬化は、重合反応だけでなく、親油性成分と親水性バインダーポリマーとの化学結合の際の反応を利用することもできる。
【0052】
画像部の耐刷性向上の観点から、本発明の画像部は、ウレタンもしくはウレア構造を有するのが好ましい。親油性成分を印字による熱反応でウレタンもしくはウレア構造に変えるか、親油性成分もしくは親水性バインダーポリマーのセグメントにあらかじめウレタンもしくはウレア構造を導入するか、何れかの方法で実施できる。
【0053】
親油性成分のカプセル化は、例えば経営開発センター経営教育部編「マイクロカプセル化の新技術とその用途開発・応用実例」経営開発センター出版部刊(1978)記載の公知の方法に従う。たとえば、互いに溶解しあわない二つの液体の界面で、予め各々の液体に添加してあるリアクタントを重縮合させ、両溶媒に不要なポリマー膜を形成させ、カプセル膜を作る界面重合法、芯物質の内側または外側のどちらか一方のみからリアクタントを供給し、芯物質の周囲にポリマー壁を形成させるin−situ法、親水性ポリマー溶液中に分散させた疎水性物質の表面に、親水性ポリマーを相分離させ、カプセル膜を作るコンプレックスコアセルベート法、有機溶液系からの相分離法等により行うことができる。中でも、界面重合法、in−situ法が比較的多くの芯物質のカプセル化が行いやすく好ましい。親油性成分とは異なる材料でカプセル化してもよい。生成したカプセル中の親油性成分の形態は、原料状態と異なるものであってもよく、例えば、原料状態が液体であったものが、合成途中で印字による熱で流動しうる程度のゲル状、あるいは高粘稠性体、あるいは固体になったり、逆に固体であったものが合成途中で液体になってもよい。
【0054】
本発明でいうカプセル化は、室温で固体のポリイソシアネート化合物を微粉末化し微粒子表面を前記ブロック化剤でブロック化することにより周囲の活性水素と室温で反応出来ないようにする方法も含む。何れにしろ印字の際の熱でカプセル内の親油性成分がカプセル外に放出され、最初のカプセルの形態が破壊されることが必要である。例えば、カプセル壁の膨張、圧縮、溶融、化学分解により、親油成分が放出されたり、カプセルの該壁材が膨張することにより密度が低下し親油性成分が壁材層を透過して放出される場合等がある。
【0055】
カプセル外殻表面は、マイクロカプセルが親水層に含有された状態で印刷した際に、非画像部の地汚れが発生しなければ特に限定されるものではないが、親水性であることが好ましい。マイクロカプセルのサイズは、平均10μm以下、高解像力の用途には平均5μm以下が好ましい。カプセル全体に対する親油性成分の割合が低すぎると画像形成効率が低下するので平均0.01μm以上であることが好ましい。
【0056】
上述のようなマイクロカプセルとして、例えば、特願平08−181937号に示されているような、油性成分を水溶性アルギン酸またはその誘導体の存在下で乳化し、次いで界面重合法によって得られるマイクロカプセルや、特願平08−180480号に示されているような、マイクロカプセルの壁材が付加重合性官能基を有するポリマーであるマイクロカプセルや、特願平08−326548号に示されているような、カプセル内包物分散系にラジカル重合性モノマーを加え、非水溶性酸化剤/水溶性還元剤あるいは水溶性酸化剤/非水溶性還元剤の組み合わせからなるレドックス開始剤を用いて開始されるin−situ重合法で得られるマイクロカプセル等を例示することができる。
【0057】
マイクロカプセル化された親油性成分の使用量は印刷用途毎の必要とされる耐刷性に応じて決めればよい。通常は、マイクロカプセル/親水性バインダーポリマー重量比率が1/20〜200/1の範囲、さらには感度、耐刷性の観点からは、1/15〜100/1の範囲で使用するのが好ましい。
本発明の親水層には、他の成分として、カプセルの熱破壊促進、親油性成分と該成分と反応する官能基を有する反応物質との反応促進、親油性成分と親水性バインダーポリマーとの反応促進を目的としてさらに、増感剤を添加することが出来る。添加により、印字感度の高感度化、耐刷性の向上および高速製版が可能となる。かかる増感剤として、例えばニトロセルロース等の自己酸化性物質、置換されたシクロプロパン、キュバン等高歪み化合物がある。
【0058】
親油性成分の重合反応触媒も増感剤として使用できる。例えば、親油性成分の反応がイソシアネート基の反応であれば、ジブチルチンジラウレート、塩化第二スズ、アミン化合物等のウレタン化触媒、エポキシ基の開環反応であれば第四級アンモニウム塩等の開環触媒が例示出来る。増感剤は、ドープ調合時に添加する方法、親油性成分のマイクロカプセル化の際に同時に包含させる方法、あるいは支持体と親水層の中間にバインダー樹脂と一緒に設ける方法がある。その使用量は用いる増感剤の効果、非画像部の耐刷性、といった観点から決めればよい。
【0059】
レーザー印字の場合、用いるレーザーの発光波長領域に吸収帯を有する光−熱変換物質をさらに使用することも出来る。かかる物質としては、例えば、松岡賢著「JOEM ハンドブック2 アブソープション スペクトル オブ ダイズフォー ダイオード レイザーズ」ぶんしん出版(1990)、シーエムシー編集部「90年代 機能性色素の開発と市場動向」シーエムシー(1990)第2章2.3に記載されているポリメチン系色素(シアニン色素)、フタロシアニン系色素、ジチオール金属錯塩系色素、ナフトキノン、アントラキノン系色素、トリフェニルメタン系色素、アミニウム、ジインモニウム系色素、アゾ系分散染料、インドアニリン金属錯体色素、分子間型CT色素等の染料、顔料および色素がある。
【0060】
具体的には、N−[4−[5−(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−2,4−ペンタジエニリデン]−3−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N,N−ジメチルアンモニウムアセテート、N−[4−[5−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−フェニル−2−ペンテン−4−イン−1−イリデン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N,N−ジメチルアンモニウム パークロレート、N,N−ビス(4−ジブチルアミノフェニル)−N−[4−[N,N−ビス(4−ジブチルアミノフェニル)アミノ]フェニル]−アミニウム ヘキサフルオロアンチモネート、5−アミノ−2,3−ジシアノ−8−(4−エトキシフェニルアミノ)−1,4−ナフトキノン、N′−シアノ−N−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)−1,4−ナフトキノンジイミン、4,11−ジアミノ−2−(3−メトキシブチル)−1−オキソ−3−チオキソピロロ[3,4−b]アントラセン−5,10−ジオン、5,16(5H,16H)−ジアザ−2−ブチルアミノ−10,11−ジチアジナフト[2,3−a:2′3′−c]−ナフタレン−1,4−ジオン、ビス(ジクロロベンゼン−1,2−ジチオール)ニッケル(2:1)テトラブチルアンモニウム、テトラクロロフタロシアニン アルミニウムクロライド、ポリビニルカルバゾール−2,3−ジシアノ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン錯体等が例示出来る。
【0061】
マイクロカプセルの熱破壊を促進する目的で、親油性成分と共に加熱されると気化または体積膨張しやすい物質をカプセル中に親油性成分と共に入れることができる。例えば、シクロヘキサン、ジイソプロピルエーテル、エチルアセテート、エチルメチルケトン、テトラハイドロフラン、t−ブタノール、イソプロパノール、1,1,1−トリクロロエタンといった沸点が室温より十分高く、60〜100℃付近の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトン化合物がある。
【0062】
印字部のみが発色する公知の感熱色素を親油性成分と併用し、印字部の可視化を計ると検版を行ないやすいので好ましい。例えば、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランとビスフェノールAなどのロイコ染料および粉砕した顕色剤の組合せ等がある。大河原信他編「色素ハンドブック」講談社刊(1986)等の成書に開示されている感熱色素が使用できる。
【0063】
親水性バインダーポリマーとは別に、親油性成分の架橋度を高めるために親油性成分と反応する官能基を有する反応性物質を用いることができる。その添加量は、親水性バインダーポリマーの撥インキ性、親水性の程度に従い、地汚れを引き起こさない程度の量とする。かかる反応性物質として、例えば、親油性成分の架橋反応がウレタン生成なら水酸基、アミノ基、カルボキシル基を複数個有する化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリアミン、ポリアクリル酸、トリメチロールプロパン等が例示できる。
【0064】
親水性の調整を目的として、使用する親水性バインダーポリマーおよび親油性成分と反応しない非反応性親水性ポリマーを耐刷性を損なわない範囲で親水層に添加してもよい。
サーマルヘッドで印字する場合、加熱により生ずる溶融物がサーマルヘッドに付着するのを防止する目的で溶融物の吸収剤として、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、カオリン、焼成カオリン、加水ハロイサイト、アルミナゾル、ケイソウ土、タルク等公知の化合物を添加することが出来る。
【0065】
さらに、版の滑り性向上、版と版とを重ねたときの密着防止を兼ね、ステアリン酸、ミリスチン酸、ジラウリルチオジプロピオネート、ステアリン酸アミド、ステアリン酸亜鉛等の常温固体の滑剤を親水層に少量添加することが出来る。
本発明に使用される支持体は、印刷分野に要求される性能とコストを勘案して公知の材料から選択すればよい。多色刷りといった高寸法精度が要求される場合、版胴への装着方式が金属支持体に合わせて出来上がっている印刷機で用いる場合には、アルミニウム、スチール製等の金属支持体が好ましい。多色印刷せず高耐刷性が要求される場合はポリエステル等のプラスチック支持体、さらに低コストが要求される分野には紙、合成紙、防水樹脂ラミネート或いはコート紙支持体が使用できる。支持体と接触する材料との接着性向上のために支持体自身の表面処理を施したものを使用してもよい。かかる表面処理の例としてアルミシートの場合、各種研摩処理、陽極酸化処理があり、プラスチックシートの場合、コロナ放電処理、ブラスト処理等がある。
【0066】
耐刷力等必要に応じ支持体の上に接着剤層を設けることが出来る。一般的に高耐刷性を必要とする場合、接着剤層を設ける。接着剤は親水層成分と使用する支持体に合わせ選択・設計する必要がある。山田章三郎監「接着・粘着の事典」朝倉書店刊(1986)、日本接着協会編「接着ハンドブック」日本工業新聞社刊(1980)等に記載のアクリル系、ウレタン系、セルロース系、エポキシ系、アリルアミン系等の接着剤が使用できる。
【0067】
本発明の感熱平版印刷原版は、以下の方法で製造できる。上述の成分をその種類、親水性バインダーポリマーの架橋方法に従って選択した溶媒と共にペイントシェーカー、ボールミル、超音波ホモジナイザー等でよく分散し、得られた塗布液(ドープ)をドクターブレード法、バーコート法、ロールコート法等公知の方法で支持体上に塗布し乾燥し、感熱平版印刷材料を得る。
【0068】
溶媒としては、水、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールといったアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンといったケトン類、ジエチレングリコールジエチルエテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン、ジエチレングリコールといったエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルといったエステル類、トルエン、キシレンといった芳香族炭化水素、n−ヘキサン、デカリンといった脂肪族炭化水素、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、アセトニトリル又はこれらの混合溶剤を使用することができる。
【0069】
さらに必要なら親水性バインダーポリマーを三次元架橋させるためにマイクロカプセルが破壊する温度より低温で追加の加熱或いは紫外線照射を行なう。親水性ポリマー薄膜層を含まない塗膜の厚みは、0.1μm〜100μmの間で任意に設定すればよい。通常は性能とコストの関係から1〜10μmの厚みが好ましい。
【0070】
その後に多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液へこの得られた感熱平版印刷材料を浸漬する、又は該水溶液あるいは有機溶媒溶液を感熱平版印刷材料に塗布あるいは噴霧することによって多価金属イオンを供給して、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋を形成し、その後に親水性ポリマー薄膜用ポリマーの溶液に浸漬する、又は塗布あるいは噴霧することによって親水層表面に親水性ポリマー薄膜を形成して、本発明の感熱平版印刷原版を得ることができる。表面平滑性を高める必要があれば、塗布・乾燥後、若しくは親水性バインダーポリマーの三次元架橋化反応後にカレンダー処理を行えばよい。特に高度の平滑性が必要なら塗布・乾燥後に行うのが好ましい。
【0071】
本発明の感熱平版印刷原版を製版するには、電子組版機、DTP、ワードプロセッサー、パーソナルコンピュータ等で作製・編集された文書・画像をサーマルヘッド、熱モードのレーザーで描画・印字するだけで現像工程は一切行なわず完了する。印字後、カプセルが破壊しない温度で加温(ポストキュアー)もしくは版全面に活性光線照射することにより画像部の架橋度を高めることが出来る。後者の方法を実行する場合、親水層中に前述の光重合開始剤や光カチオン重合開始剤とそれによって反応が進む官能基を有する化合物とを併用するか親油性成分に該官能基を導入することが必要である。該開始剤、官能基を有する化合物は前述のほか、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊(1989)、加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会(1985)等の成書に記載の公知のものも使用しうる。
【0072】
また、本発明においては、感熱平版印刷材料に上記方法で印字し、その後に多価金属イオンを供給して多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋を形成し、さらに親水層表面上に親水性ポリマー薄膜を設けて製版することもできる。
以上のようにして得られた平版印刷版は、市販のオフセット印刷機にセットし通常の方法で印刷することができる。印刷する際、必要ならば平版印刷版に通常のエッチング処理を施してから印刷することが出来る。
【0073】
【発明の実施の形態】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、文中、部、%と記してあるのは特に断りの無い限りそれぞれ重量部、重量%である。
【0074】
参考例1】
(1) マイクロカプセル化した親油性成分の作成
トリレンジイソシアネート3モル/トリメチロールプロパン1モル付加物(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製、25重量%酢酸エチル含有物)1.26部、近赤外線吸収色素(日本化薬(株)製 KayasorbIR−820 B)0.3部をグリシジルメタクリレート7.2g中に均一に溶解させて油性成分を調製した。次いで、精製水120gに、アルギン酸プロピレングリコールエステル(ダックロイドLF、(株)紀文フードケミファ製、数平均分子量:2×105)2部、ポリエチレングリコール(PEG 400、三洋化成工業(株)製)0.86部を混合した水相を調製した。続いて、上記油性成分と水相をホモジナイザーを用いて6000rpmで室温下混合乳化した後、60℃で3時間反応させて平均粒径1.8μmのマイクロカプセルを得た。
(2) 感熱平版印刷原版の作成
陽極酸化を施したアルミニウム板(厚さ0.24cm、310mm×458mm)上に、ポリアクリル酸(ジュリマーAC10MP、日本純薬(株)製、数平均分子量:8×104)の10重量%水溶液:20.0部、(1)で作成したマイクロカプセル化した親油性成分:80.0部、アルギン酸プロピレングリコールエステル(ダックロイドLF、(株)紀文フードケミファ製)の3重量%水溶液:300部の割合で配合し調製したドープをバーコーター(ロッド16番)で塗布し、一晩室温で風乾し感熱平版印刷材料を得た(感熱平版印刷材料の厚みは4.2μmであった。)。次に、この版を塩化第二錫五水和物(東京化成工業(株)製)の5%水溶液1.5リットル中に3分間浸漬後、精製水(和光純薬工業(株)製)1リットルを用いて1分間水洗した。更に、これをポリアクリル酸(ジュリマーAC10P、日本純薬(株)製、数平均分子量:5×103)の0.5%水溶液中に1分間浸漬した後、垂直に立てて24時間室温で風乾して感熱平版印刷原版を作成した。親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。なお、親水性ポリマー薄膜層の厚みは、フィルム厚み測定機((株)セイコー製「計太郎」)で測定した感熱平版印刷材料と感熱平版印刷原版の厚みの差より求めた。
(3)平版印刷版の作成及び印刷
(2)で作成した感熱平版印刷原版に、電子組版装置と接続した、1W半導体レーザー素子搭載の印字装置で印刷画像を熱印字し、次いで版全面をケミカルランプで6J/cm2照射した。この版をトリミングし、オフセット印刷機(ハマダ印刷機械株式会社製、HAMADA611XL)に装着し上質紙に対し印刷した(用いたインキは大日本インキ化学工業(株)製のGEOS−Gで、湿し水は富士写真フルム(株)製のEU−3を100倍希釈したもの)。2万部を過ぎても地汚れがなく、画像部も鮮明に印刷出来た。印刷前後の非画像部の用紙反射濃度を反射濃度計(DM400、大日本スクリーン製造(株)製)にて測定したところ、両者の差(ΔOD)は、0.00で目視でも汚れを認めなかった。また、ベタ画像部の反射濃度(OD)は1.2であった。また、感熱層の剥離は観測されなかった。これらの結果を表1に示した。
【0075】
【実施例
参考例1のポリアクリル酸(AC10MP)をポリアクリルアミド(数平均分子量:3×105)に替えた他は、参考例1と同様にして印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。また、感熱平版印刷材料の厚みは4.5μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。
【0076】
参考例2
参考例1の塩化第二錫五水和物を酢酸ジルコニウムに替えた他は、参考例1と同様にして印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。また、感熱平版印刷材料の厚みは4.3μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。
【0077】
参考例3
参考例1の塩化第二錫五水和物を硫酸第一鉄に替えた他は、参考例1と同様にして印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。また、感熱平版印刷材料の厚みは4.2μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。
【0078】
参考例4
(1)親水性バインダーポリマーの合成
セパラブルフラスコ中にアクリル酸248.5部、トルエン2000部を計量し、室温で攪拌しながらアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記する。)2.49部をトルエン24.9部に溶解し、徐々に滴下し加えた。その後、60℃に昇温し3時間攪拌した。生成して沈殿した重合体を濾過しトルエン約2リットルで洗浄し、80度で大凡乾燥した後、さらに恒量になるまで真空乾燥し一次ポリマー235部を得た(GPC法による数平均分子量:6×104)。次いで、セパラブルフラスコ中に蒸留水355部中に、一次ポリマー35.5部を溶解させた。乾燥空気をフラスコに流しながら、グリシジルメタクリレート2.84部と2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略記する。)0.1部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド1部からなる液を滴下ロートからフラスコ内を攪拌しながら30分間かけて添加した。添加終了後、徐々に昇温し80℃で1時間攪拌した時点で所定の酸化になった。内容物を冷却し、アセトン中でポリマーを単離し、さらにアセトンでポリマーを揉み洗いした。その後、室温で真空乾燥し付加重合性不飽和基含有ポリマーを得た(NMR法による付加重合性不飽和基導入率:2.2%)。
(2) 感熱平版印刷原版の作成
参考例1と同様に、陽極酸化を施したアルミニウム板(厚さ0.24cm、310mm×458mm)上に(1)で合成した親水性バインダーポリマーの10%水溶液:20.0部、参考例1の(1)で作成したマイクロカプセル化した親油性成分:80.0部、アルギン酸プロピレングリコールエステル(ダックロイドLF、(株)紀文フードケミファ製)の3重量%水溶液:300部、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム2%水溶液:1部の割合で配合し調製したドープをバーコーター(ロッド16番)で塗布し、一晩室温で風乾し感熱平版印刷材料を得た(感熱平版印刷材料厚みは4.1μmであった。)た。次に、この版を塩化第二錫五水和物(東京化成工業(株)製)の5%水溶液1.5リットル中に3分間浸漬後、精製水(和光純薬工業(株)製)1リットルを用いて1分間水洗した。更に、これをポリアクリル酸(ジュリマーAC10P、日本純薬(株)製)の0.5%水溶液中に1分間浸漬した後、垂直に立てて24時間室温で風乾して感熱平版印刷原版を作成した。親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。
(3)平版印刷版の作成及び印刷
(2)で作成した平版印刷材料を用い、参考例1と同様にして平版印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。
【0079】
参考例5
参考例4のポリアクリル酸(AC10P)をポリアクリル酸(AC10MP、数平均分子量:8×104)に替えた他は、参考例4と同様にして印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。また、感熱平版印刷材料の厚みは4.3μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.3μmであった。
【0080】
【実施例
参考例4のポリアクリル酸(AC10P)をポリアクリルアミド(数平均分子量:1×104)に替えた他は、参考例4と同様にして印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。また、感熱平版印刷材料の厚みは4.2μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.3μmであった。
【0081】
【実施例
参考例4のポリアクリル酸(AC10P)をポリアリルアミン(数平均分子量:1×104)に替えた他は、参考例4と同様にして印刷版の作成と印刷評価を行った。結果を表1に示した。また、感熱平版印刷材料の厚みは4.3μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。
【0082】
【実施例
(1)感熱平版印刷材料の作成
参考例1と同様に、陽極酸化を施したアルミニウム板(厚さ0.24cm、310mm×458mm)上に、ポリアクリル酸(ジュリマーAC10MP、日本純薬(株)製)の10重量%水溶液:20.0部、(1)で作成したマイクロカプセル化した親油性成分:80.0部、アルギン酸プロピレングリコールエステル(ダックロイドLF、(株)紀文フードケミファ製)の3重量%水溶液:300部の割合で配合し調製したドープをバーコーター(ロッド16番)で塗布し、一晩室温で風乾した。感熱平版印刷材料の厚みは4.2μmであった。
(2)平版印刷版の作成及び印刷評価
(1)で作成した感熱平版印刷材料に、電子組版装置と接続した、1W半導体レーザー素子搭載の印字装置で印刷画像を熱印字し、次いで版全面をケミカルランプで6J/cm2照射して印刷版を作成した。次に、この版を塩化第二錫五水和物(東京化成工業(株)製)の5%水溶液1.5リットル中に3分間浸漬後、精製水(和光純薬工業(株)製)1リットルを用いて1分間水洗した。更に、これをポリアクリル酸(ジュリマーAC10P、日本純薬(株)製)の0.5%水溶液中に1分間浸漬した後、垂直に立てて24時間室温で風乾して平版印刷版を作成した。親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。これを用いて参考例1と同様に印刷評価を行った。結果を表1に示した。
【0083】
【比較例1】
参考例1において、塩化第二錫五水和物5%水溶液への浸漬、水洗、ポリアクリル酸(AC10P)への浸漬、乾燥を行わなかった他は参考例1と同様にして塗布、製版、印刷を行った。感熱平版印刷材料の厚みは4.1μmであった。その結果、印刷100部程度で塗布層が剥離する現象が見られた。結果を表1に示した。
【0084】
【比較例2】
参考例1において、水洗、ポリアクリル酸(AC10P)への浸漬、乾燥を行わなかった他は参考例1と同様にして塗布、製版、印刷を行った。感熱平版印刷材料の厚みは4.2μmであった。但し、塩化第二錫五水和物5%水溶液への浸漬後は垂直に立てて24時間室温で風乾した。その結果、印刷初期より全面に強い汚れ(光学濃度で△OD=0.5)が発生した。結果を表1に示した。
【0085】
【比較例3】
参考例1において、塩化第二錫五水和物5%水溶液の替わりに炭酸ナトリウム5%水溶液を用いて、参考例1と同様に塗布、製版、印刷を行った。感熱平版印刷材料の厚みは4.2μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。その結果、印刷100部程度で塗布層が剥離する現象が観測された。結果を表1に示した。
【0086】
【表1】
Figure 0003769107
【0087】
【発明の効果】
本発明において親水層の親水性バインダーポリマーが、多価金属イオンとバインダーポリマー中のルイス塩基部分と強く相互作用して三次元架橋し、かつ親水層表面が親水性ポリマーの薄膜で被覆されているため、地汚れの極めて少ない平版印刷版、およびその製造可能な平版印刷原版を提供することができる。
【0088】
本発明の感熱平版印刷原版は、その非画像部が主として親水性ポリマーで形成されているため、本発明の製版工程では現像が不要であることから、現像液の管理、廃液の処理といった作業を必要とせず、作業効率、コスト削減を図ることが可能になる。また、製版装置もコンパクトに出来、装置価格も低く設計出来ることから、産業上、大いに有用である。

Claims (12)

  1. 熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーとを含有する親水層、及び支持体を有する感熱平版印刷原版であって、該親水性バインダーポリマーが、(i)多価金属イオンと、該親水性バインダーポリマー中の窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋されており、かつ(ii)親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設けてなる感熱平版印刷原版であって、
    窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分が、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、イソウレイド基、イソチオウレイド基、イミダゾリル基、イミノ基、ウレイド基、エピイミノ基、ウレイレン基、オキサモイル基、オキサロ基、オキサロアセト基、カルバゾイル基、カルバゾリル基、カルバモイル基、カルボキシラト基、カルボイミドイル基、カルボノヒドラジド基、キノリル基、グアニジノ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、スルホアミノ基、セミカルバジド基、セミカルバゾノ基、チオウレイド基、チオカルバモイル基、トリアザノ基、トリアゼノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾ基、ヒドラゾノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、含窒素複素環、ホルムアミド基、ホルムイミドイル基、3−モルホリニル基、モルホリノ基から選ばれる少なくとも一種である感熱平版印刷原版
  2. 親水性バインダーポリマーが、マイクロカプセル破壊後、該マイクロカプセル中の親油性成分と化学結合する官能基を有しており、マイクロカプセル中の親油性成分が、該マイクロカプセルの破壊後、上記親水性バインダーポリマーと化学結合する官能基を有している請求項1記載の感熱平版印刷原版。
  3. 多価金属イオンが、チタニウムイオン、ジルコニウムイオン、第二錫イオンから選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載の感熱平版印刷原版。
  4. 親水性バインダーポリマーが、炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、且つ構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも1種含有し、更に構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2又は3記載の感熱平版印刷原版。
  5. 親水性ポリマー薄膜用ポリマーが、酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成されるポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に窒素ないし酸素ないし硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有し、更に、構造中にルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2、3又は4記載の感熱平版印刷原版。
  6. 請求項1、2、3、4又は5記載の感熱平版印刷原版に熱モードで印字してなる平版印刷版。
  7. 熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と親水性バインダーポリマーとを含有する親水層、及び支持体を有する感熱平版印刷原版であって、該親水性バインダーポリマーが、(i)多価金属イオンと、該親水性バインダーポリマー中の窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用によって三次元架 橋されており、かつ(ii)親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設けてなる感熱平版印刷原版の製造方法であって、
    前記支持体上に、窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を構造中に含む未架橋の親水性バインダーポリマーを含有するドープを塗布し乾燥させて感熱平版印刷材料を設ける工程と、
    前記感熱平版印刷材料に外部より多価金属イオンを供給することにより、前記親水性バインダーポリマーを、前記多価金属イオンと、前記親水性バインダーポリマー中の前記ルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋させて親水層を設ける工程と、
    前記親水層表面に親水性ポリマー薄膜層を設ける工程と
    を具備する、感熱平版印刷原版の製造方法。
  8. 親水性バインダーポリマーが、マイクロカプセル破壊後、該マイクロカプセル中の親油性成分と化学結合する官能基を有しており、マイクロカプセル中の親油性成分が、該マイクロカプセルの破壊後、上記親水性バインダーポリマーと化学結合する官能基を有している請求項7に記載の感熱平版印刷原版の製造方法。
  9. 多価金属イオンが、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、チタニウムイオン、第一鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニウムイオン、第一錫イオン、第二錫イオン、鉛イオンから選ばれる少なくとも一種である請求項7または8に記載の感熱平版印刷原版。
  10. 親水性バインダーポリマーが、炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、且つ構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも1種含有し、更に構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である請求項7〜9のいずれかに記載の感熱平版印刷原版。
  11. 親水性ポリマー薄膜用ポリマーが、酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成されるポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に窒素ないし酸素ないし硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子もしくは炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有し、更に、構造中にルイス塩基部分を有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である請求項7〜10のいずれかに記載の感熱平版印刷原版。
  12. 熱により画像部に転換するマイクロカプセル化された親油性成分と窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有している未架橋親水性バインダーポリマーとを有する親水層、及び支持体とから構成される感熱平版印刷材料に熱モードで印字後、外部より供給される多価金属イオンと上記ルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋し、親水層表面に親水性ポリマー薄膜を設けてなる平版印刷版。
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