JP3841546B2 - オフセット印刷版材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はオフセット印刷版に用いる版材に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、オフセット印刷版は、印刷時において湿し水供給手段から水は受理するがインキロールからの油性インキを受理しない親水性非画像部と、インキロールからの油性インキを受理する親油性画像部とから構成される。このような親水性非画像部と親油性画像部とを発現する組み合わせは種々知られているが、一般的なものとしては、表面を脱脂、機械もしくは化学的に粗面化した後、陽極酸化し、さらに必要により水ガラス処理等種々の表面処理を施したアルミニウムシート上に親油性画像部を形成されたものが知られている。このような方法は例えば、米澤 輝彦著、「PS版概論」、印刷学会、1993年、18−35頁に記載されている。アルミニウムの代わりにスティール、ステンレススティールを粗面化したものも知られている。前者のアルミシートの場合、多用はされているものの、その製造設備が大がかりであり、また原材料のアルミニウムが高価格であるという問題を抱えている。後者のスティールは安価ではあるが錆びやすいという性質上、水を用いるオフセット印刷には不向きであった。またアルミシートに比べ重く作業性もよくなかった。ステンレススティールは錆びの点では改良されたが、重量の点では依然問題を抱えている。
【0003】
金属材料の他に、親水性非画像部を構成するものとして、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体といった親水性ポリマーを架橋不溶化せしめたものが知られている。この場合、必要により、シリカ、炭酸カルシウムといった無機顔料が加えられることがある。さらに耐水化剤で補強される場合もある。これらのものは耐水性が不十分で耐刷性が乏しいか、耐刷性は有するが非画像性が乏しいかの問題を抱えている。
【0004】
また、電子写真オフセットマスターとして知られている、酸化亜鉛と、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂などのバインダー樹脂とを用いて表面層を形成し、電子写真方式によりトナーを融着して画像部を形成したのち、トナーの付着していない表面をリン酸、リン酸塩、フェロシアン化カリウム、フィチン酸及び界面活性剤などを含有する不感脂化液(エッチ液)により不感脂化処理を行って非画像部を形成するものが知られている。これらのものは非画像部、画像部とも耐刷性の乏しいものであり軽印刷といった少量印刷部数の用途に限られた。
【0005】
金属材料以外で非画像部を形成する上記材料の問題点を解決するための方法としてアクリルアミド重合体を非架橋、架橋形態で使用する方法が各種提案されている。例えば、特開昭48−83902号公報、特開昭53−17406号公報、特開昭53−17407号公報、特開昭53−17408号公報、特開昭54−6602号公報、特開昭54−6603号公報に開示されている。しかし、これらの方法では何れも耐水性が不足しているか、基材適合性が極めて狭い等の問題があった。さらにこの点を改良する目的でアクリルアミド、付加重合性不飽和カルボン酸及びエポキシ基含有付加重合性不飽和化合物を含む共重合体を用いて非画像部を構成する平版印刷版が提案された(特開昭59−67097号公報)。このものは架橋により耐刷性は発揮されたが、同一ポリマー中にカルボキシル基とエポキシ基を含有するためこれらが反応してポリマー不溶化をもたらすという貯蔵安定性上の問題を抱えていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、安価であって耐刷性、非画像性ともに優れた親水性非画像層を有するオフセット印刷に用いられる版材を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、多価金属イオンと、窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分との相互作用を利用して三次元架橋して得られる架橋親水性ポリマーで親水性非画像層を形成することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は次の通りである。
(1) 基材上に設けられた親水性非画像層が、窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有する架橋親水性ポリマーからなり、該架橋親水性ポリマーが該ルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用によって三次元架橋されているオフセット印刷用版材の前記親水性非画像層の表面に、さらに親水性薄膜用ポリマーからなる薄膜層を設けてなるオフセット印刷版材。
(2) 多価金属イオンが、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、チタニウムイオン、第一鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニウムイオン、第一錫イオン、第二錫イオンおよび鉛イオンから選ばれる少なくとも一種である(1)記載のオフセット印刷版材。
(3) 窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分が、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、イソウレイド基、イソチオウレイド基、イミダゾリル基、イミノ基、ウレイド基、エピイミノ基、ウレイレン基、オキサモイル基、オキサロ基、オキサロアセト基、カルバゾイル基、カルバゾリル基、カルバモイル基、カルボキシル基、カルボキシラト基、カルボイミドイル基、カルボノヒドラジド基、キノリル基、グアニジノ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、スルホアミノ基、セミカルバジド基、セミカルバゾノ基、チオウレイド基、チオカルバモイル基、トリアザノ基、トリアゼノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾ基、ヒドラゾノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、含窒素複素環、ホルムアミド基、ホルムイミドイル基、3−モルホリニル基、モルホリノ基から選ばれる少なくとも一種である(1)又は(2)記載のオフセット印刷版材。
(4) 架橋親水性ポリマーが、炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成され、且つ構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに該ポリマー構造中に、更にリン酸基、スルホン酸基もしくはこれらの塩、水酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマーの群から選ばれる少なくとも一種である(1)、(2)又は(3)記載のオフセット印刷版材。
(5) 親水性薄膜用ポリマーが、酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成されるポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成され、構造中にリン酸基、スルホン酸基もしくはこれらの塩、水酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成され、構造中に窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びにこのルイス塩基部分を有するポリマー構造中に更にリン酸基、スルホン酸基もしくはこれらの塩、水酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である(1)、(2)、(3)又は(4)記載のオフセット印刷版材。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のオフセット印刷用版材において、親水性非画像層を構成する架橋親水性ポリマーは、ルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用により三次元架橋されている。この親水性非画像層は、乾燥された状態では高い表面自由エネルギー状態にあるために、最初に接触した物質と強く相互作用する性質を有している。即ち、初めに水を与えた後にオフセット印刷を行えば水を強く引きつけて強力な非画像性を発揮するが、逆に初めにインキ等の油性成分を与えると、それらを強く引きつけるため、オフセット印刷を行うと、この油性成分が与えられた領域は画像として印刷される。本発明は、この性質を利用することで、後で詳述するように親水性非画像層を形成した後に、その上に種々の方法で画像を形成することが可能となったものである。
【0010】
また、この乾燥された親水性非画像層は環境中の油性成分に対しても極めて敏感であることから、該非画像層の上に更に親水性のポリマー(以下、親水性薄膜用ポリマーという。)からなる薄膜層を設けることによって、外部から飛来する油性の汚れ原因物質の受容を抑制し、印刷初期の汚れを大きく減少させることができる。実用的には乾燥した版を提供する場合が大多数であることも鑑みれば、該薄膜層を布設することは大いに有用である。この場合、該薄膜層を設けた親水性非画像層は、外部から飛来する油性汚れ原因物質は受容しないが、後述するような方法で高濃度に画像形成物質を該薄膜層表面に与えた場合には溶解、融解、あるいは濃度勾配によって下層の親水性非画像層に達し、画像を形成しうる。
【0011】
本発明における三次元架橋構造を有する架橋親水性ポリマーとしては、炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、該構造中に窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有し、該ルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用によって網目化されたポリマー、並びに炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、構造中に水酸基、リン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種以上含有し、更に構造中にルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用によって網目化されたポリマーが挙げられる。
【0012】
該架橋親水性ポリマー形成に用いられる親水性ポリマーの分子量としては1000〜100万、好ましくは3万〜50万程度のものである。この範囲より低分子量であると親水性非画像層自体の脆弱化を招き、また、この範囲より高分子量であると画像形成が妨害されて所定の効果が発現しないことがある。
本発明において架橋親水性ポリマーは、多価金属イオンと相互作用しているルイス塩基部分以外に、該作用に与かっていないルイス塩基部分、水酸基、スルホン酸基、リン酸基、そのアルカリ金属塩、そのアルカリ土類金属塩あるいはそのアミン塩のいずれかを有する、又はこれらを組み合わせたセグメントを繰り返し有するものが好ましく、さらにこれらの親水性官能基と主鎖セグメントの一部にポリオキシエチレン基を有するものは親水性が高くより好ましい。これらに加えて架橋親水性ポリマーの主鎖もしくは側鎖にウレタン結合もしくはウレア結合を有するものは、親水性のみならず非画像部の耐刷性も向上するので特に好ましい。
【0013】
架橋親水性ポリマーの多価金属イオンによる三次元架橋構造は、後述する方法によって画像形成前後のいずれにおいて形成されてもよく、画像形成時に多価金属イオンによる三次元架橋構造をとっていないものも用いることができる。しかし、取扱い時の傷付け防止、およびサーマルヘッドを用いて画像形成する場合、熱溶融した親水層成分がサーマルヘッドへ付着するのを防止する観点からは、印字前に三次元架橋構造を形成し終えている方が好ましい。
【0014】
本発明において未架橋親水性ポリマーとは、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋構造を有していない、架橋親水性ポリマーの前段階のものをいう。該未架橋親水性ポリマーにおいて、後述する種々の三次元架橋方法による三次元架橋構造を有していても構わない。また、本発明において多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋構造を有していない、オフセット印刷用版材の前の段階のものをオフセット印刷用原版材という。
【0015】
上記の親水性官能基の架橋親水性ポリマー中の割合は、前述の主鎖セグメントの種類と使用する親水性官能基の種類により、それぞれの試料について次に記載する方法で実験的に適宜求めていけばよい。すなわち、本発明の架橋親水性ポリマーの親水性は、基材上に架橋親水性ポリマーを含んでなるオフセット印刷用版材または未架橋親水性ポリマーを含んでなるオフセット印刷用原版材を形成し、後述する方法で画像の形成と印刷試験を行い、印刷用紙へのインキの付着の有無、あるいは、印刷前後の非画像部の用紙の反射濃度差(例えば、大日本スクリーン製造(株)製、反射濃度計DM400)で評価する、又は水−ケロシンを用いた水中油滴法接触角測定法(例えば、協和界面科学製接触角計、型式CA−A)でケロシンが試料に付着するか否かで評価する。
【0016】
前者の方法で評価する場合、肉眼で観察し、インキ汚れが認められなければ可、認められれば不可とするか、印刷前後の非画像部の用紙の反射濃度差が0.01未満を可、0.01以上を不可とする。後者の方法で評価する場合、新聞印刷のように低粘度インキを使用する印刷版向けには、試料の上記接触角が約150度より大きいことが必要であり、さらには160度以上が好ましい。印刷前に練ってから使用する高粘度インキを使用する印刷版向けには、約135度より大きいことが必要である。
【0017】
本発明においては、親水性非画像層表面に親水性薄膜用ポリマーからなる薄膜層(以下、親水性薄膜層という。)を設けることが好ましい。該親水性薄膜用ポリマーとしては、架橋親水性ポリマー形成に用いられる親水性ポリマーと同種類のポリマーを使用することができるが、多価金属イオンによる三次元架橋は必要ではないので、架橋親水性ポリマーで必須とされる窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分は必須ではない。
【0018】
親水性薄膜用ポリマーとしては、酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマー;炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、該構造中に水酸基、リン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種以上含有するポリマー;炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、該構造中に窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー;並びに炭素−炭素結合から構成されるポリマー、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から構成されるポリマー、即ち、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリオキシアルキレン系、ポリウレタン系、エポキシ開環付加重合系、ポリ(メタ)アクリル酸系、ポリ(メタ)アクリルアミド系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアミン系、ポリビニル系、多糖類系等もしくはそれらの複合系のポリマーであって、構造中に水酸基、リン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を一種以上含有し、更に構造中にルイス塩基部分を有するポリマーが挙げられる。
【0019】
ただし、親水性非画像層との親和性・接着性や、残留する多価金属イオン発生薬剤を化学的にトラップする効果を考慮すると、該架橋親水性ポリマーと同種のルイス塩基部分およびリン酸基、スルホン酸基、ポリオキシエチレン基等の親水性官能基を有するポリマーが好ましい。該親水性薄膜用ポリマーの分子量としては1000〜100万、望ましくは3000〜10万程度のものが好ましい。この範囲より低分子量であると親水層自体の脆弱化を招き、また、この範囲より高分子量であると画像形成が妨害されて所定の効果が発現しないことがある。
【0020】
本発明において、ルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用を発現させて親水性非画像層を形成し、更に該非画像層表面に親水性薄膜層を布設する具体的態様は次の通りである。
即ち、ルイス塩基部分を構造中に含む未架橋親水性ポリマーと、後述するような、オフセット印刷版に必要な他の成分とを混合してドープを調製し、基材上に塗布、乾燥し、本発明でいうオフセット印刷用原版材を得ることができる。しかる後に、多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液へのオフセット印刷用原版材の浸漬や、該溶液のオフセット印刷用原版材への塗布や噴霧によって外部より多価金属イオンを供給すると、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用によって三次元架橋が形成され、本発明でいうオフセット印刷用版材を得ることができる。さらに、この版に親水性薄膜層を設けると、本発明でいうオフセット印刷版材を得ることができる。
【0021】
親水性非画像層表面に親水性薄膜層を設ける方法としては、親水性薄膜用ポリマーの水溶液あるいは有機溶媒溶液を親水性非画像層表面にバーコータやブレードコータなどで塗布、あるいはスプレーで噴霧、あるいはオフセット印刷用版材を親水性ポリマー溶液に浸漬する方法がある。水溶液あるいは有機溶媒溶液から多価金属イオンを供給した直後の版の親水性非画像層は鋭利な力に対しては脆弱になっていることもあるので、非接触的に親水性薄膜用ポリマーの液を供給することが好ましく、この点においてはスプレー方式か浸漬方式が好ましい。
【0022】
用いられる親水性薄膜用ポリマーの水溶液あるいは有機溶媒溶液の濃度としては、0.01重量%〜50重量%が好ましく、0.1重量%〜10重量%の範囲がより好ましい。この範囲より低濃度では親水性非画像層表面に存在する薄膜材の量が少なすぎて、親水性非画像層表面の保護あるいは残留多価金属イオン発生薬剤の化学的トラップが十分に行われない場合がある。また、この範囲より高濃度では、薄膜材の量が多すぎて、画像形成を妨げることがある。本発明において、親水性非画像層表面に設ける親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.01〜10μmであり、0.1〜1μmが好ましい。
【0023】
また、上記オフセット印刷用原版材に画像を形成後、多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液によって上記の方法で外部より多価金属イオンを供給し、その後に親水性非画像層表面に親水性薄膜層を設けることにより、オフセット印刷版を得ることもできる。
多価金属イオンを供給した後に、版面に存在する過剰の薬剤を除去する必要があれば、適当な洗液で洗浄を行ってもよい。洗液としては水のほかに塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸の稀薄水溶液、界面活性剤稀薄溶液のほか有機溶剤を使用することもできる。洗浄は多価金属イオンを供給した直後に行うことが好ましい。
【0024】
また、親水性薄膜層の形成は、多価金属イオン供給あるいは洗浄後直ちに行うことが好ましい。該薄膜層を親水性非画像層表面に設ける前に乾燥させると、外部からの油分付着や、残存薬剤の変質などによって汚れが発生し、本発明の効果が十分に得られないことがある。
本発明において、上述の多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋方法と、後述する種々の三次元架橋方法の一種類以上を併用してもよい。また、本発明の親水性ポリマーは必要に応じ、後述する種々のその他の成分を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の多価金属イオンは、上述したように、主として水溶液や有機溶媒溶液などの溶液を介してオフセット印刷用原版材あるいは画像を形成したオフセット印刷用原版材の外部より供給される。
即ち、該多価金属イオンを発生せしめる金属塩類は、水溶液や有機溶媒溶液としてマグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、チタニウムイオン、第一鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニウムイオン、第一錫イオン、第二錫イオン、鉛イオンの金属イオンあるいは金属錯イオンの一種以上を発生せしめるものがあれば良いが、水や、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸の水溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどのアルカリ水溶液などに溶解して多価金属イオンあるいは多価金属錯イオンの一種以上を発生せしめるものが好ましい。
【0026】
金属塩類の具体例を以下に例示すると、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化第一鉄、臭化第一鉄、塩化コバルト、臭化コバルト、塩化第二銅、臭化第二銅、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、塩化第一錫、塩化第二錫などの金属ハロゲン化物、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸カルシウム、硝酸第一鉄、硝酸コバルト、硝酸銅、硝酸ストロンチウム、硝酸鉛等の硝酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸コバルト、硫酸チタン、硫酸銅等の硫酸塩、酢酸カルシウム、酢酸ジルコニウム、酢酸銅、酢酸鉛等の酢酸塩などの他、炭酸ジルコニウムアンモン、フェロシアン化鉄、フェリシアン化鉄なども用いられる。中でも酢酸ジルコニウム、塩化第一錫、塩化第二錫が特に好ましい。
【0027】
多価金属イオンを含む溶液の濃度は金属の種類やカウンタ−アニオンの種類によって変わりうるが、塩の濃度として好ましくは0.01〜50重量%、更に好ましくは0.2〜20重量%である。これら多価金属イオンの供給によって、該多価金属イオンと相互作用して三次元架橋構造を形成する親水性ポリマー中のルイス塩基部分の量は、多価金属イオン供給前に存在したルイス塩基部分の総数の10〜100モル%が好ましく、60〜100モル%がより好ましい。
【0028】
次に本発明における、多価金属イオンと三次元架橋構造を形成する親水性ポリマー中のルイス塩基部分の相互作用による三次元架橋形成の具体的態様の例を述べる。
即ち(メタ)アクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、イタコン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンの如きルイス塩基部分を有する親水性モノマーを必須とし、更に、必要に応じて3−ビニルプロピオン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、ビニルスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミンのハロゲン化水素酸塩等のスルホン酸基、リン酸基、アミノ基の塩、水酸基、およびエーテル基などの親水性基を有する親水性モノマーから選ばれる一種以上を用いて、少なくとも窒素、酸素および硫黄から選ばれる1種を含むルイス塩基部分を有する親水性ホモあるいはコポリマーを合成する。これに、後述するような、オフセット印刷版に必要な他の成分を混合し、適当な溶媒に分散および/または溶解してドープを調製する。また、例えば、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アルギン酸誘導体のようなルイス塩基部分を含む天然高分子に後述するような、平版印刷版に必要な他の成分を混合し、適当な溶媒に分散および/または溶解してドープを調製してもよい。これを、支持体上に塗布、乾燥し、本発明でいうオフセット印刷用原版材を得ることができる。
【0029】
しかる後に、多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液へのオフセット印刷用原版材の浸漬や、該溶液のオフセット印刷用原版材への噴霧、あるいは塗工によって外部より多価金属イオンを供給すると、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用が発現して三次元架橋が形成され、本発明でいうオフセット印刷用版材を得ることができる。また、この親水性非画像層表面に、親水性薄膜用ポリマーの溶液を浸漬あるいは噴霧などの方法で与えて親水性薄膜層を設けると、本発明でいうオフセット印刷版材を得ることができる。
【0030】
また、該オフセット印刷用原版材に画像形成後、外部より多価金属イオンを、該イオンを発生せしめるような水溶液ないしは有機溶媒溶液によって同上の方法で供給し、その後に親水性非画像層表面に親水性薄膜層を設けると、同上の機構によって、オフセット印刷版を得ることができる。
本発明の架橋親水性ポリマーには、これまで説明してきた多価金属イオンとルイス塩基との相互作用による三次元架橋法に加えて、以下に示すような三次元架橋法の一種類以上を併用することもできるし、また、以下に示すような方法で三次元架橋されたポリマーの一種類以上を架橋親水性ポリマーとして併用してもよい。
【0031】
即ち、カルボキシル基、アミノ基もしくはそれらの塩、水酸基およびエポキシ基などの官能基を有する親水性ポリマーは、これらの官能基を利用し、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基等のエチレン付加重合性不飽和基あるいはシンナモイル基、シンナミリデン基、シアノシンナミリデン基,p−フェニレンジアクリレート基等の環形成基を導入した不飽和基含有ポリマーを得ることができる。これに、必要により、該不飽和基と共重合し得る単官能、多官能モノマーと後述の重合開始剤と無機充填剤、および必要に応じて後述の滑剤とを加え、適当な溶媒に溶解し、ドープを調製する。これを支持体上に塗布し乾燥後あるいは乾燥を重ねて三次元架橋させる。
【0032】
水酸基、アミノ基およびカルボキシル基などの活性水素を含有する親水性ポリマーは、イソシアネート化合物あるいはブロックポリイソシアネート化合物および後述の他の成分と共に活性水素非含有溶剤中に添加しドープを調合し、支持体に塗布し乾燥後或いは乾燥を兼ねて反応させ三次元架橋させる。
親水性ポリマーの共重合成分としてグリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基あるいはアミノ基を有するモノマーを用いることができる。グリシジル基を有する親水性バインダーポリマーは、架橋剤として1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸などのα,ω−アルカンもしくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、α,ω−ビス−(3−アミノプロピル)−ポリエチレングリコルエーテル等のポリアミン化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のオリゴアルキレンまたはポリアルキレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリストール、ソルビトール等のポリヒドロキシ化合物を用い、これらとの開環反応を利用して三次元架橋することができる。
【0033】
カルボキシル基またはアミノ基を有する親水性ポリマーは、架橋剤として、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物を用いたエポキシ開環反応等を利用して三次元架橋するこができる。
【0034】
親水性ポリマーが、セルロース誘導体などの多糖類、ポリビニルアルコールもしくはその部分鹸化物、グリシドールホモもしくはコポリマー、あるいはこれらを含む場合には、これらが含有する水酸基を利用し、前述の架橋反応し得る官能基を導入し、前述の方法により三次元架橋できる。
ポリオキシエチレングリコール等の水酸基をポリマー末端に有するポリオールまたはアミノ基をポリマー末端に有するポリアミンと2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートとから合成した親水性ポリウレタン前駆体に、エチレン付加重合性不飽和基または環形成基を導入して親水性ポリマーとし、前述の方法で三次元架橋できる。
【0035】
上記合成された親水性ポリウレタン前駆体が、イソシアネート基末端を有する場合は、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、桂皮酸および桂皮アルコール等の活性水素を有する化合物と反応させて三次元架橋する。親水性ポリウレタン前駆体が水酸基あるいはアミノ基末端を有する場合は、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレートおよび2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレートなどと反応させ三次元架橋する。
【0036】
親水性ポリマーが、多塩基酸とポリオール、多塩基酸とポリアミンとから形成されるポリマーの場合は、それらを支持体に塗布後、加熱により三次元架橋化させる。親水性ポリマーが、カゼイン、グルー、ゼラチン等の場合は、それらの水溶性コロイド形成化合物を加熱により三次元架橋させて網目構造を形成してもよい。
【0037】
さらに、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびビニルアルコールなどの水酸基含有モノマー、アリルアミンから合成したホモもしくはコポリマー、部分鹸化ポリビニルアルコール、セルロース誘導体などの多糖類、グリシドールホモもしくはコポリマー等の、水酸基やアミノ基を含有する親水性ポリマーと一分子中に二個以上の酸無水基を有する多塩基酸無水物とを反応させ、三次元架橋した親水性ポリマーを形成することもできる。この反応で用いる多塩基酸無水物としては、エチレングリコール−ビス−アンヒドロ−トリメリテート、グリセロール−トリス−アンヒドロトリメリテート、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカル酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等を例示できる。
親水性ポリマーが、末端にイソシアネート基を有するポリウレタンとポリアミンまたはポリオール等の活性水素含有化合物とから形成される場合には、それらの化合物と後述の他の成分とを溶剤中に溶解もしくは分散させ、基材上に塗布して溶剤を除去した後、キュアリングし三次元架橋させることもできる。この場合、親水性はポリウレタンおよび活性水素含有化合物のいずれか、もしくは両方のセグメント、または側鎖に親水性官能基を導入することにより付与すればよい。親水性を発現するセグメント、官能基としては上記記載の中から適宜選択すればよい。
【0038】
本発明において用いられるポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が例示できる。
【0039】
塗布工程前後のハンドリング時、イソシアネート基が変化するのを防ぐことを目的に、イソシアネート基を公知の方法でブロック化(マスク化)しておくのが好ましい場合もある。たとえば、岩田敬治著「プラスチック材料講座▲2▼ポリウレタン樹脂」日刊工業新聞社刊(1974)、頁51−52、岩田敬治著「ポリウレタン樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(1987)、頁98、419、423、499、等に記載された方法に従い、酸性亜硫酸ナトリウム、芳香族2級アミン、3級アルコール、アミド、フェノール、ラクタム、複素環化合物、ケトオキシム等を使用し、ブロック化することができる。中でも、イソシアネート再生温度が低い、例えばマロン酸ジエチルやアセト酢酸エチルなどが好ましい。
【0040】
前述の非ブロック化あるいはブロック化ポリイソシアネートの何れかに付加重合性不飽和基を導入し、架橋の強化や親油性成分との反応に利用してもよい。
以上述べた中で、架橋親水性ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、イタコン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミンの如きルイス塩基部分を有する親水性モノマーを必須とし、更に、必要に応じて3−ビニルプロピオン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、ビニルスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはそのアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アリルアミンのハロゲン化水素酸塩等のスルホン酸基、リン酸基、アミノ基の塩、水酸基、およびエーテル基などの親水性基を有する親水性モノマーから選ばれる一種以上を用いて合成された、少なくとも窒素、酸素および硫黄から選ばれる1種を含むルイス塩基部分を有する親水性ホモあるいはコポリマーを、前述のように多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用と、それ以外の方法で三次元架橋させたものが好ましい。
【0041】
本発明の架橋親水性ポリマー形成に用いられる親水性ポリマーは、下記の単官能モノマー、多官能モノマーを併用させてもよい。具体的には、山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」大成社刊(1981)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊(1989)、加藤清視編「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会(1985)、赤松清監修「新・感光性樹脂の実際技術」シーエムシー、頁102−145、(1987)等に記載されているN,N′−メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルピリジン、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、パラスチレンスルホン酸もしくはその塩、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量400)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量600)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(PEGの数平均分子量1000)、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(PPG数平均分子量400)、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパンまたはそのアクリレート体、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチハドロジェンサクシネート、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェートまたはそのメタクリル体、グリセリンモノまたはジ(メタ)アクリレート、トリス(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレートまたはそのメタクリル体、N−フェニルマレイミド、N−(メタ)アクリルオキシコハク酸イミド、N−ビニルカルバゾール、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素等がある。
【0042】
本発明の架橋親水性ポリマーにおいて、エチレン付加重合性不飽和基を用いて三次元架橋反応を行うときは、公知の光重合開始剤もしくは熱重合開始剤を用いることが反応効率上好ましい。
本発明において用いられる光ラジカル重合開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、(4−ベンゾイルベンジル)塩化トリメチルアンモニウム、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オン−メソクロライド、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボルニルジスルフィドジメトキシキサントゲンジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンジルジメチルジチオカーバメイトキノキサリン、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。
【0043】
これらの中から、製造工程で用いる光源の波長領域に吸収を持ち、ドープを調製する際使用する溶媒に溶解もしくは分散するものを適宜選択すればよい。通常、使用する溶媒に溶解するものが反応効率が高く好ましい。
本発明で用いられる光カチオン重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等がある。この開始剤を用いるときは、架橋反応種としてエポキシ基も併用できる。この場合、前述のエポキシ基含有化合物を架橋剤もしくは、親水性ポリマーとして用いるか、親水性ポリマーにエポキシ基を導入すればよい。
【0044】
光二量化反応により三次元架橋させる場合には、2−ニトロフルオレン、5−ニトロアセナフテン等、該反応に一般的によく知られた各種増感剤も使用できる。
上記以外にも、徳丸克巳他著「増感剤」、2章、4章、講談社刊(1987)、加藤清視著「紫外線硬化システム」総合技術センター刊、頁62−147(1989)、ファインケミカル、Vol.20 No4、16(1991)に記載されている公知の重合開始剤も使用できる。
【0045】
上記重合開始剤の添加量は、ドープ中の溶媒を除いた有効成分に対し、0.01重量%〜20重量%の範囲で使用できる。0.01重量%より少ないと開始剤の効果が発揮されず、20%重量より多いと、活性光線の開始剤による自己吸収のため内部への光の到達が不良となり所望する耐刷力を発揮することができなくなることがある。実用的には0.1〜10重量%の範囲で開始剤の効果と非画像部の地汚れとのバランスで組成に応じて決定するのが好ましい。
【0046】
照射光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ等公知のものが使用できる。照射光源からの熱がカプセル破壊の恐れがある場合、冷却しながら照射する必要がある。
本発明で用いられる熱重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスイソブチルニトリル、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウム等の過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤といった公知のものが使用できる。使用に際しては、マイクロカプセルを破壊する温度より低温で反応させなければならない。熱重合開始剤の使用量は、ドープ溶媒を除いた成分に対し、0.01〜10重量%の範囲がよい。0.01重量%より少ないと硬化時間が長くなりすぎ、10重量%より多いとドープ調合中に生じる熱重合開始剤の分解によりゲル化が起こることがある。効果と取扱い性を考慮すると、好ましくは、0.1〜5重量%である。
【0047】
本発明の親水性ポリマーの架橋度は、使用するセグメントの種類、会合性官能基の種類と量等により異なるが、要求される耐刷性に応じ決めていけばよい。まず、多価金属イオンとの相互作用に与るルイス塩基部分の総量は、全モノマーユニットに対して1〜100%になるように設定するのが好ましく、更には50〜100%がより好ましい。また、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用以外の架橋率、即ち架橋間分子量は通常、500〜5万の範囲で設定される。500より小さいと却って脆くなる傾向があり、耐刷性が損なわれ、5万を超えると湿し水で膨潤し、耐刷性が損なわれる場合もある。耐刷性および親水性の両者のバランスを考慮すると、800〜3万程度が好ましく、さらには、1000〜1万程度が好ましい。
【0048】
親水性ポリマーおよび添加剤を溶解もしくは分散させる溶剤としては、高沸点でなければ、水、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、これらを主とした混合溶剤等、大概の溶剤を使用することができる。溶解状態で塗布するには水が好ましい。水を用いる場合でも、蒸発速度制御上、水に溶解度を有する溶剤を少量添加してもよい。分散状態で塗布する際、分散安定化のために、ノニルまたはオクチルフェノールのエチレンオキサイド付加物、直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、プルロニック型洗剤等の公知の界面活性剤を少量併用することもできる。基材上に形成される未架橋親水性ポリマー厚みは特に限定されないが、0.01μmないし100μmの範囲が適用される。通常は0.5μmないし10μmの範囲である。
【0049】
基材には、耐刷性あるいは均一厚みのポリマー膜を得る上で必要によりアンカー層を設けたスティール、アルミニウム、プラスチック、耐水性紙等のシートが用いられる。アンカー層はアクリル系、ウレタン系、セルロース系、ポリアリルアミン系等の接着剤を塗布することにより設けることが出来る。アンカー層の厚みは、均一に設けられていれば特に制約はないが、平均的に0.1〜3μmの範囲で塗布されていればよい。通常は1μm前後で塗布される。
【0050】
本発明の親水性非画像層を基材上に形成する塗布液には、非画像性を損なわない範囲で公知の染料、シリカゲル、炭酸マグネシウムなどの顔料等の添加剤を添加することが出来る。添加量は実際用いる印刷条件で印刷して非画像性が維持される範囲で設定すれば良い。
これらを含む塗布液中の親水性物質、架橋剤及び添加剤等の合計の含有率は、塗布すべき基材若しくはアンカー層を設けた基材(以下、支持体と称す。)や塗布方法により異なるが、一般に0.5ないし80重量%の範囲が適当である。
【0051】
このようにして調合した塗布液を基材に塗布、乾燥した後に、架橋処理を施す。架橋処理は印刷前のどの段階で行ってもよく、塗布装置との連携具合や画像部形成手段に応じ設定することが出来る。通常は塗布乾燥後、架橋処理を施す。熱架橋を採用する場合、塗布後に乾燥加熱を行い実施することも出来る。
多価金属イオンとルイス塩基部分の相互作用による三次元架橋は、塗布乾燥後、あるいは塗布乾燥後に他手段による架橋を行った後に行う。即ち、該処理を行い、その後に多価金属イオンを発生せしめるような水溶液あるいは有機溶媒溶液へ、この得られたオフセット印刷用原版材を浸漬する、又は該水溶液あるいは有機溶媒溶液をオフセット印刷用原版材に塗布あるいは噴霧することによって多価金属イオンを供給して、多価金属イオンとルイス塩基部分との相互作用による三次元架橋を形成し、本発明のオフセット印刷用版材を得る。その後に親水性薄膜用ポリマーの溶液に浸漬する、又は塗布あるいは噴霧することによって親水性非画像層表面に親水性薄膜層を形成して、本発明のオフセット印刷版材を得ることができる。表面平滑性を高める必要があれば、塗布・乾燥後、もしくは親水性ポリマーの三次元架橋化反応後にカレンダー処理を行えばよい。特に高度の平滑性が必要なら塗布・乾燥後に行うのが好ましい。
【0052】
本発明のオフセット印刷用版材およびオフセット印刷版材は、該版材の親水性非画像層上に親油性画像部を形成し、一方親水性非画像部を親水性非画像層で構成することによってオフセット印刷版として使用するものである。架橋されていないオフセット印刷用原版材を用いた場合は、上記したように印刷前の何れかの段階で架橋処理する。
【0053】
以下にオフセット印刷用版材またはオフセット印刷版材上に親油性画像部を形成し、オフセット印刷版を作成する方法を示す。
1) 基材上に設けた親水性非画像層上にポジタイプ(光照射された領域が可溶化)もしくはネガタイプ(光照射された領域が不溶化)の公知の感光層を設け、画像担体フィルムを介し画像形成露光を行うかディジタルデータに基づきレーザで直接露光描画し、現像液で溶解する感光層を除去し親水性非画像層を露出させ親水性非画像部を形成する。現像処理で除去されなかった感光層は親油性画像部を形成する。こうしてオフセット印刷版が作成される。
2) 基材上に設けた親水性非画像層上に熱硬化性の親油性感熱層を設け、レーザで画像描画露光を行い、未硬化部分を洗い出し除去し親水性非画像層を露出させ非画像部を形成し、硬化層は親油性画像部となる。こうしてオフセット印刷版が作成される。
3) 基材上に設けた親水性非画像層上に親油層を設け、レーザで親油層上に描画し非画像相当領域親油層をレーザでアブレイジョンさせ下層の親水性非画像層を露出させ非画像部を形成する。アブレイジョンされなかった領域は親油性画像部となる。光硬化性親油層を用い、アブレイジョン前には架橋させずアブレイジョン後に全面露光してアブレイジョンに要するエネルギーを低くさせ、かつ描画後の露光により親油層の機械的強度を向上することも出来る。こうしてオフセット印刷版が作成される。
4) 基材上に設けた親水性非画像層上に直接、インキ、塗料を用い、描画、印刷、転写、タイプすることにより親油性画像部を形成し、オフセット印刷版を作成することが出来る。さらに具体的には、インキジェット方式で画像描画する方法、昇華性材料もしくは熱溶融性材料を用い転写層としたテープあるいはシートを介し、レーザもしくはサーマルヘッドで熱転写する方法がある。熱溶融性材料として感光性材料を用いた場合、転写された部分を全面露光することにより画像部を強化出来、耐刷性を著しく向上させることが可能である。
5) 基材上に設けた親水性非画像層上に電子写真方式でトナーを熱融着させ親油性画像部を形成しオフセット印刷版とすることも出来る。
【0054】
本発明のオフセット印刷用版材および印刷版材は通常のオフセット印刷の他にショートラン印刷、さらには校正印刷の用途にも使用できる。校正印刷版作成は画像担体フィルムを介したアナログ露光方式と画像データをディジタル信号のまま直接描画する方式がある。最近ではフィルムを出力しないダイレクトディジタル方式が注目されている。本方式にも本発明のオフセット印刷用版材および印刷版材は効果的である。
【0055】
【発明の実施の形態】
以下本発明を実施例をもってさらに具体的に説明する。文中、注意書きがない限り部は重量部であり、%は重量%である。
【0056】
【実施例1】
(1)オフセット印刷版材の作成
陽極酸化を施したアルミニウム板(厚さ0.24cm、310mm×458mm)上に、ポリアクリル酸(ジュリマーAC10MP、日本純薬(株)製、数平均分子量:8×104)の10重量%水溶液をバーコーター(ロッド16番)で塗布し、一晩室温で風乾しオフセット印刷用原版材を得た(未架橋親水性ポリマー層の厚みは4.2μmであった。)。次に、この版を塩化第二錫五水和物(東京化成(株)製)の5%水溶液1.5リットル中に3分間浸漬後、精製水(和光純薬(株)製)1リットルを用いて1分間水洗した。更に、これをポリアクリル酸(ジュリマーAC10P、日本純薬(株)製、数平均分子量:5×103)の0.5%水溶液中に1分間浸漬した後、垂直に立てて24時間室温で風乾してオフセット印刷版材を作成した。親水性薄膜層の厚みは0.3μmであった。なお、親水性薄膜層の厚みは、フィルム厚み測定機((株)セイコー製 「計太郎」)で測定したオフセット印刷用原版材とオフセット印刷版材の厚みの差より求めた。
(2)印刷版の作成及び印刷
特公昭49−34041号公報記載の実施例1に準拠して製造した、ポリアクリル酸−スチレン共重合体にグリシジルメタクリレートをカルボキシル基に対し、68モル%付加させて得られる側鎖に不飽和基を有するアクリル樹脂100部、モノマーとしてテトラメチロールメタンテトラメタクリレート25部、光重合開始剤として1,2−ベンズアントラキノン0.9部、ベンゾインメチルエーテル0.1部とからなる感光性樹脂を、(1)で得られたオフセット印刷版材にバーコーターを用いて、乾燥塗布後の厚みが1.5g/m2 となるように塗布して感光層を設けた。次いで、この感光層面にネガフィルムを密着させ、約1m離したところから水冷式高圧水銀灯で90秒間露光した後、リン酸ナトリウム1部、メタノール10部、水100部の割合から成る現像液で現像し未露光部の感光層を除去して、親水性非画像部と親油性画像部を形成しオフセット印刷版を作成した。得られた印刷版をオフセット印刷機(ハマダ611XLA)に装着し、湿し水(富士写真フィルム株(製),EU−3、100倍希釈)、インキ(大日本インキ工業(株)製、GEOS−G)を用い上質紙に印刷したところ、非画像部の汚れもなく、1万枚の印刷物を得ることが出来た。
【0057】
【実施例2】
実施例1のポリアクリル酸(AC10MP)をポリアクリルアミド(数平均分子量:3×105 )に替えた他は、実施例1と同様にしてオフセット印刷版の作成と印刷評価を行った。未架橋親水性ポリマー層の厚みは4.5μm、親水性薄膜層の厚みは0.2μmであった。印刷の結果、非画像部の汚れもなく、1万枚の印刷物を得ることが出来た。
【0058】
【実施例3】
実施例1の塩化第二錫五水和物を酢酸ジルコニウムに替えた他は、実施例1と同様にしてオフセット印刷版の作成と印刷評価を行った。未架橋親水性ポリマー層の厚みは4.3μm、親水性ポリマー薄膜層の厚みは0.2μmであった。印刷の結果、非画像部の汚れもなく、1万枚の印刷物を得ることが出来た。
【0059】
【実施例4】
(1)親水性ポリマーの合成
セパラブルフラスコ中にアクリル酸248.5部、トルエン2000部を計量し、室温で攪拌しながらアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと略記する。)2.49部をトルエン24.9部に溶解し、徐々に滴下し加えた。その後、60℃に昇温し3時間攪拌した。生成して沈殿した重合体を濾過しトルエン約2リットルで洗浄し、80度で大凡乾燥した後、さらに恒量になるまで真空乾燥し一次ポリマー235部を得た(GPC法による数平均分子量:6×104)。次いで、セパラブルフラスコ中に蒸留水355部中に、一次ポリマー35.5部を溶解させた。乾燥空気をフラスコに流しながら、グリシジルメタクリレート2.84部と2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(以下、BHTと略記する。)0.1部とトリエチルベンジルアンモニウムクロライド1部からなる液を滴下ロートからフラスコ内を攪拌しながら30分間かけて添加した。添加終了後、徐々に昇温し80℃で1時間攪拌した時点で所定の酸化になった。内容物を冷却し、アセトン中でポリマーを単離し、さらにアセトンでポリマーを揉み洗いした。その後、室温で真空乾燥し付加重合性不飽和基含有ポリマーを得た(NMR法による付加重合性不飽和基導入率:2.2%)。
(2)オフセット印刷版材の作成
実施例1と同様に、陽極酸化を施したアルミニウム板(厚さ0.24cm、310mm×458mm)上に(1)で合成した親水性ポリマーの10%水溶液:20.0部、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム2%水溶液:1部の割合で配合し調製したドープをバーコーター(ロッド16番)で塗布し、一晩室温で風乾しオフセット印刷用原版材を得た(未架橋親水性ポリマー層の厚みは4.1μmであった。)。次に、この版材を塩化第二錫五水和物(東京化成(株)製)の5%水溶液1.5リットル中に3分間浸漬後、精製水(和光純薬(株)製)1リットルを用いて1分間水洗した。更に、これをポリアクリル酸(ジュリマーAC10P、日本純薬(株)製)の0.5%水溶液中に1分間浸漬した後、垂直に立てて24時間室温で風乾してオフセット印刷版材を作成した。親水性薄膜層の厚みは0.2μmであった。
(3)平版印刷版の作成及び印刷
(2)で作成したオフセット印刷版材を用い、実施例1と同様にしてオフセット印刷版の作成と印刷評価を行った。印刷の結果、非画像部の汚れもなく、1万枚の印刷物を得ることが出来た。
【0060】
【比較例1】
実施例1において、塩化第二錫五水和物5%水溶液への浸漬、水洗、ポリアクリル酸(AC10P)への浸漬、乾燥を行わなかった他は実施例1と同様にしてオフセット印刷版材を作成し、印刷を行った。未架橋親水性ポリマー層の厚みは4.1μmであった。その結果、印刷100部程度で非画像部全面に汚れが発生し、塗布層が剥離する現象が見られ、オフセット印刷版としての性能は不十分であった。
【0061】
【発明の効果】
本発明のオフセット印刷用版材を用いて作成されたオフセット印刷版は、撥インキ性に優れ、通常オフセット印刷で非画像部として使用される陽極酸化されたアルミ支持体に匹敵する耐刷性の非画像性能を発揮する。特に、通常の練りインキ使用印刷分野はもとより、新聞用オフセットインキといった練りインキに比べ遥かに低粘度のインキ使用印刷においても、良好な撥インキ性を発揮する。
Claims (5)
- 基材上に設けられた親水性非画像層が、窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有する架橋親水性ポリマーからなり、該架橋親水性ポリマーが該ルイス塩基部分と多価金属イオンとの相互作用によって三次元架橋されているオフセット印刷用版材の前記親水性非画像層の表面に、さらに親水性薄膜用ポリマーからなる薄膜層を設けてなるオフセット印刷版材。
- 多価金属イオンが、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カルシウムイオン、チタニウムイオン、第一鉄イオン、コバルトイオン、銅イオン、ストロンチウムイオン、ジルコニウムイオン、第一錫イオン、第二錫イオンおよび鉛イオンから選ばれる少なくとも一種である請求項1記載のオフセット印刷版材。
- 窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分が、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルアミノ基、イソウレイド基、イソチオウレイド基、イミダゾリル基、イミノ基、ウレイド基、エピイミノ基、ウレイレン基、オキサモイル基、オキサロ基、オキサロアセト基、カルバゾイル基、カルバゾリル基、カルバモイル基、カルボキシル基、カルボキシラト基、カルボイミドイル基、カルボノヒドラジド基、キノリル基、グアニジノ基、スルファモイル基、スルフィナモイル基、スルホアミノ基、セミカルバジド基、セミカルバゾノ基、チオウレイド基、チオカルバモイル基、トリアザノ基、トリアゼノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾ基、ヒドラゾノ基、ヒドロキシアミノ基、ヒドロキシイミノ基、含窒素複素環、ホルムアミド基、ホルムイミドイル基、3−モルホリニル基、モルホリノ基から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2記載のオフセット印刷版材。
- 架橋親水性ポリマーが、炭素−炭素結合、または酸素、窒素、硫黄、リンからなるヘテロ原子の少なくとも1種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成され、且つ構造中に多価金属イオンと相互作用している窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びに該ポリマー構造中に、更に親水性官能基を少なくとも1種含有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2又は3記載のオフセット印刷版材。
- 親水性薄膜用ポリマーが、酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成されるポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成され、構造中に親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマー、炭素−炭素結合または酸素、窒素、硫黄およびリンからなるヘテロ原子の少なくとも一種で結合された炭素原子および炭素−炭素結合から形成され、構造中に窒素、酸素もしくは硫黄を含むルイス塩基部分を有するポリマー、並びにこのルイス塩基部分を有するポリマー構造中に更に親水性官能基を少なくとも一種含有するポリマーの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1、2、3又は4記載のオフセット印刷版材。
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