JPH1062969A - 感光性平版印刷版原版および平版印刷版の製造方法 - Google Patents

感光性平版印刷版原版および平版印刷版の製造方法

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JPH1062969A
JPH1062969A JP21362396A JP21362396A JPH1062969A JP H1062969 A JPH1062969 A JP H1062969A JP 21362396 A JP21362396 A JP 21362396A JP 21362396 A JP21362396 A JP 21362396A JP H1062969 A JPH1062969 A JP H1062969A
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hydrophilic
water
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JP21362396A
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English (en)
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Kenichi Tabata
憲一 田畑
Norimasa Ikeda
憲正 池田
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Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】現像が簡便であって、不感脂化処理を行うこと
なく高いインキ反発性を有し、湿し水のコントロール幅
の広く、湿し水のIPAレス化が可能な感光性平版印刷
版を得る。 【解決手段】基板上に親水性膨潤層をそなえ、該親水性
膨潤層が特定の分子量の親油性エチレン性不飽和化合物
を含有する感光性平版印刷版原版。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は感光性平版印刷版原
版に関するものであり、不感脂化処理を行なうことなく
高いインキ反撥性を有し、湿し水のコントロール幅が広
く、湿し水のIPAレス化が可能な新規な感光性平版印
刷版原版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】平版印刷とは、画線部と非画線部とを基
本的にほぼ同一平面に存在させ、画線部をインキ受容
性、非画線部をインキ反撥性として、インキの付着性の
差異を利用して、画線部のみにインキを着肉させた後、
紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方式を意味
する。またこのような平版印刷には通常、PS版が用い
られる。
【0003】ここで言うPS版とは、下記のものを意味
する。
【0004】すなわち、米澤輝彦著「PS版概論」
(株)印刷学会出版部(1993)p18〜p81に記
載されているように、親水化処理されたアルミニウム基
板上に親油性の感光性樹脂層を塗布し、フォトリソグラ
フィの技術により画線部は感光層が残存し、一方非画線
部は上記したアルミ基板表面が露出し、該表面に湿し水
層を形成してインキ反撥し、画像形成する水ありPS版
と、湿し水層の代わりにシリコーンゴム層をインキ反撥
層として用いる水なしPS版、いわゆる水なし平版であ
る。
【0005】ここで言う水なし平版とは、非画線部がシ
リコーンゴム、含フッ素化合物などの通常平版印刷で用
いられる油性インキに対してインキ反撥性を有する物質
からなり、湿し水を用いずにインキ着肉性の画線部との
間で画像形成し、印刷可能な印刷版を意味する。
【0006】前者の水ありPS版は実用上優れた印刷版
で、支持体に通常アルミニウムが用いられ、該アルミニ
ウム表面は保水性を有するとともに印刷中に親油性の感
光性樹脂層が該表面から剥離脱落しないように感光層と
の接着性に優れている必要があった。そのため、該アル
ミニウム表面は通常砂目立てされ、さらに必要に応じて
この砂目立てされた表面を陽極酸化するなどの処理が施
され、保水性の向上と該感光性樹脂層に対する接着性の
補強が計られてきた。また、該感光性樹脂層の保存安定
性を得るために該アルミニウム表面はフッ化ジルコニウ
ム、ケイ酸ナトリウムなどの化学処理が一般的に施され
ている。
【0007】このように水ありPS版は製造工程が複雑
であり、その簡易化が望まれていたが、該版の優れた印
刷特性(耐刷性、画像再現性など)から広く使用されて
いる。
【0008】上記問題を解決すべく、アルミニウム基板
と同等もしくはそれ以上の印刷特性有し、しかも材料コ
ストが安くかつ簡易な製造工程によるアルミニウム基板
とは異なる新規な平版材料の提案がある。例えば、特公
昭56−2938号公報においては、アルミニウム基板
に代えて親水性高分子材料からなるインキ反撥層を塗設
した支持体を用い、該支持体上に感光層を形成する方法
が提案されている。しかしながら、該方法は、ポリ塩化
ビニル、ポリウレタン、ポリビニルアルコールのアルデ
ヒド縮合物の耐水性層上に親水性層として尿素樹脂が単
純塗布されているものであるため、該層はインキ反撥性
が不十分であるうえ、感光性樹脂層との密着性にも劣る
ものであり、耐刷性が不十分なものであった。また、特
開昭57−179852号公報においては、支持体上に
親水性ラジカル重合化合物を塗設し、活性光線の照射に
よって該支持体表面を親水化処理し、感光性樹脂層を塗
設する方法が提案されている。しかしながら、該方法に
よって形成された親水性表面層も剛直でインキ反撥性は
不十分であり、耐刷性にも乏しいものであった。
【0009】またこれらの水ありPS版の現像に際して
は、感光層を溶解してアルミ基板表面を露出させる方式
であるため、感光層成分が現像液中に溶解させることが
必須で、該現像液は短期間に大幅に組成変動が起こり疲
労してしまうため、大量の現像廃液が発生する。
【0010】そのため、該現像液は頻繁にメンテナンス
し交換する必要があった。また発生した現像廃液の処理
には多大な労力と費用が必要であった。
【0011】また、水ありPS版の簡便な形態として、
紙などの支持体上に、トナーなどの画像受理層を有しP
PCを用いて画像形成し、非画像部をエッチ液などで不
感脂化処理して該画像受理層をインキ反撥層に変換させ
て使用する直描型平版印刷原版が広く実用に供されてい
る。具体的には、耐水性支持体上に水溶性バインダポリ
マ、無機顔料、耐水化剤等からなる画像受理層を設けた
ものが一般的で、USP2532865号公報、特公昭
40−23581号公報、特開昭48−9802号公
報、特開昭57−205196号公報、特開昭60−2
309号公報、特開昭57−1791号公報、特開昭5
7−15998号公報、特開昭57−96900号公
報、特開昭57−205196号公報、特開昭63−1
66590号公報、特開昭63−166591号公報、
特開昭63−317388号公報、特開平1−1144
88号公報、特開平4−367868号公報などが挙げ
られる。これらの直描型平版印刷原版は、インキ反撥層
に変換させる画像受理層として、PVA、澱粉、ヒドロ
キシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、ポリビニ
ルピロリドン、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、スチ
レン−マレイン酸共重合体などのような不感脂化処理す
る以前から親水性を示す水溶性バインダポリマおよびア
クリル系樹脂エマルジョン等の水分散性ポリマ、シリ
カ、炭酸カルシウム等のような無機顔料およびメラミン
・ホルムアルデヒド樹脂縮合物のような耐水化剤で構成
されているものが提案されている。また特開昭63−2
56493号公報などでは、不感脂化処理により加水分
解されて親水性基が発生する疎水性ポリマを主成分とし
て用いる直描型平版印刷原版が提案されている。
【0012】このような直描型平版印刷原版は、いずれ
も画像受理層をインキ反撥層に変換するために、不感脂
化処理が必須であり、該処理なしではインキ反撥性を殆
ど示さない性質のものであった。
【0013】すなわち、実用レベルのインキ反撥性を得
るためには、不感脂化処理および、親水性バインダポリ
マを大量に使用する必要があるが、耐水性に劣る傾向に
あり印刷耐久性が低下する。また親水性を高めるとトナ
ーなどの画像との接着性が低下する傾向にあるなどの問
題点があった。一方、印刷耐久性を向上するために耐水
化剤の添加量を多くしたり疎水性ポリマを添加したりし
て耐水性を増大させると、親水性が低下し、インキ反撥
性が大幅に低下してしまう問題点があった。
【0014】また、ユニオンカーバイド社が開発した親
水性/疎水性変換反応を利用した現像、ラッカー盛りお
よび不感脂化処理が一切不要な、いわゆる露光のみの一
工程版の技術が、特公昭42−131号公報、特公昭4
2−5365号公報、特公昭42−14328号公報、
特公昭42−20127号公報、USP3231377
号公報、USP3231381号公報、USP3231
382号公報などによって開示されている。該版はポリ
エチレンオキサイドとフェノール樹脂の会合体を感光剤
とともに塗設したものであるが、非画線部が剛直で柔軟
性に劣りインキ反撥性が不十分であり、また非画線部と
画線部との間でのインキ反撥/インキ着肉差が小さく、
実用性に乏しいものであった。
【0015】さらに、水ありPS版は印刷に際して湿し
水の量を常時コントロールする必要があり、適性な湿し
水量を制御するには相当の技術や経験が必要とされてき
た。また、湿し水に必須成分として添加されるIPA
(イソプロパノール)が近年、労働衛生環境や廃水処理
の立場から使用が厳しく規制される方向にあり、その対
策が急務となっている。
【0016】一方、後者の湿し水の代わりにシリコーン
ゴム層をインキ反撥層とする水なしPS版の場合、特公
昭54−26923号公報、特公昭57−3060号公
報、特公昭56−12862号公報、特公昭56−23
150号公報、特公昭56−30856号公報、特公昭
60−60051号公報、特公昭61−54220号公
報、特公昭61−54222号公報、特公昭61−54
223号公報、特公昭61−616号公報、特公昭63
−23544号公報、特公平2−25498号公報、特
公平3−56622号公報、特公平4−28098号公
報、特公平5−1934号公報、特開平2−63050
号公報、特開平2−63051号公報などに示されてい
るように湿し水を用いずに印刷できるため、前者の水あ
りPS版で必要な湿し水のコントロール作業がいっさい
必要なく、印刷作業が極めて簡便となることから、近年
急速に普及しつつある実用性の高い版材であるが、イン
キ反撥性層として力学的強度が弱いシリコーンゴム層を
用いるため、耐久性の不足が指摘され、耐久性に優れた
インキ反撥性材料の必要性が強く求められている。また
現像に際しては該シリコーンゴム層をブラシ擦りによっ
て機械的に剥離除去する必要があるため、剥離除去され
たシリコーンゴムかすを含んだ現像廃液が大量に発生す
る。そのため、ブラシの使用寿命が短く頻繁にブラシを
交換する必要がありまた、該シリコーンゴムかすを捕集
廃棄するなどのメンテナンス処置が必要であった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の欠点に鑑み創案されたもので、その目的とすると
ころは、現像が簡便であって、不感脂化処理を行うこと
なく高いインキ反発性を有し、湿し水のコントロール幅
が広く、湿し水のIPAレス化が可能な平版印刷版原版
を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明は下記の構成からなる。
【0019】(1)基板上に少なくとも感光性の親水性
膨潤層を備えた感光性平版印刷版原版において、親水性
膨潤層が分子量1000を越える親油性エチレン性不飽
和化合物および分子量1000以下の親油性エチレン性
不飽和化合物を含有することを特徴とする感光性平版印
刷版原版 (2)分子量1000を越える親油性エチレン性不飽和
化合物がアクリル酸誘導体モノマまたはオリゴマである
ことを特徴とする(1)記載の感光性平版印刷版原版 (3)分子量1000以下の親油性エチレン性不飽和化
合物がメタクリル酸誘導体モノマまたはオリゴマである
ことを特徴とする(1)記載の感光性平版印刷版原版 (4)感光性の親水性膨潤層が、親水性ポリマを主成分
とする相および疎水性ポリマを主成分とする相の少なく
とも2相から構成された相分離構造を含有することを特
徴とする(1)記載の感光性平版印刷版原版 (5)親水性膨潤層の上に保護層を有することを特徴と
する(1)記載の感光性平版印刷版原版 (6)(1)記載の感光性平版印刷版原版の版表面に活
性光線を照射し、画線部に対応した部分の親水性膨潤層
内の親油性エチレン性不飽和化合物を光硬化させ、その
後、非画線部に対応した部分の親水性膨潤層内の親油性
エチレン性不飽和化合物を除去することを特徴とする平
版印刷版の製造方法 (7)非画線部に対応した部分の親水性膨潤層内の親油
性エチレン性不飽和化合物の除去を、版全面を水洗処理
することによって行なうことを特徴とする(6)記載の
平版印刷版の製造方法
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の感光性平版印刷版原版の
親水性膨潤層について説明する。
【0021】本発明の親水性膨潤層は感光性であり、感
光性化合物として分子量が1000を越える親油性エチ
レン性不飽和化合物および分子量が1000以下の親油
性エチレン性不飽和化合物を含有する。
【0022】これら分子量の異なる親油性エチレン性不
飽和化合物を併用することにより、画線部と非画線部の
コントラストに優れた印刷物が作製できる感光性平版印
刷版原版が得られる理由は、親水性膨潤層中において分
子量の異なる親油性エチレン性不飽和化合物を用いるこ
とにより、これら親油性エチレン性不飽和化合物が光重
合・光硬化して得られる親水性膨潤層からなる画線部が
非常に均質に光硬化するため、画線部の吸水性、ゴム弾
性、水膨潤性にムラがないためと推察される。すなわ
ち、親水性膨潤層への分散性、溶解性、浸透性の違いか
ら、分子量の大きなエチレン性不飽和化合物は比較的表
層にあって浸透性が小さいが、分子量の小さなエチレン
性不飽和化合物は表層よりもむしろ内部まで深く浸透す
る。したがって、分子量の異なるエチレン性不飽和化合
物を併用することにより、結果として表層および内部の
別なく、親水性膨潤層内に均一にエチレン性不飽和化合
物が存在することとなり、光重合・光硬化の結果得られ
る画線部は表層および内部とも均一に光重合・光硬化が
行われており、インキ着肉性が優れた、したがって画線
部と非画線部のコントラストに優れた平版印刷版が本発
明の感光性平版印刷版原版から作製することができると
考えられる。
【0023】加えて、日本接着協会誌、20巻、第7
号、p22〜30(1984)には、エチレン性不飽和
化合物として、アクリル酸系化合物とメタクリル酸系化
合物を比較すると、硬化速度の点でアクリル酸系化合物
が優れているが、一方で皮膚一次刺激性(以下P.I.
I.と略記する)はメタクリル酸系の方が小さいと記さ
れているが、本発明のように、分子量が大きく、低P.
I.I.であるアクリル酸系化合物と低分子量で低P.
I.I.であるメタクリル酸系化合物を併用することに
より、硬化速度の点でバランスがとれ、しかも安全性の
高い感光性平版印刷版原版が得られることも本発明の効
果として挙げることができる。
【0024】本発明の親油性エチレン性不飽和化合物に
ついて説明する。
【0025】本発明の親油性エチレン性不飽和化合物と
は20℃において、水に対する溶解度が8重量%以下の
光重合可能なモノマまたはオリゴマを意味する。
【0026】本発明の親油性エチレン性不飽和化合物の
具体例としては、以下の一般式(I)で表わされる、モ
ノマまたはオリゴマが挙げられる。
【0027】 CH2 =C(R1 )−CO−(O−(CH2 )n)m−R2 (I) (ここで、R1 は水素またはメチル基を表わす。R2 は
水素、炭素数1〜20の置換または無置換のアルキル
基、ニトロ基、アジド基、炭素数2〜20のアルケニル
基、炭素数4〜20の置換または無置換のアリール基、
置換または無置換のアラルキル基、アクリロキシ基、メ
タアクリロイロキシ基を表す。m、nは1〜30の整数
である。) 具体例としては、以下の化学式を有する化合物(I
I)、(III)、(IV)が挙げられる。
【0028】 CH2 =CHCO(O(CH2 )n)m−OCOCH=CH2 (II) CH2 =C(CH3 )CO(O(CH2 )n)m−OCOC(CH3 )=CH2 (III) CH2 =C(CH3 )CO(O(CH2 )n)m−OCOCH=CH2 IV) m、nは上記一般式で表わされる化合物の平均値を意味
する。すなわち、上記一般式で表わされる化合物はm、
nに分布を持った混合物からなる。
【0029】これら化合物は、感光性平版印刷版原版製
造時の親水性膨潤層への分散性、溶解性、浸透性の点か
ら、mは1〜30の範囲であることが必要で、1〜20
の範囲であることが好ましい。mが30を越える場合に
は、これら化合物の親水性膨潤層への分散性、溶解性、
浸透性が低下するためこと、および重量あたりの不飽和
基当量が不足し、感光性の低下につながって、親水性膨
潤層からなる画線部の吸水量、水膨潤率を十分に低下さ
せることができず、結果として印刷物上の十分な画線部
と非画線部のコントラストが得られない。
【0030】これらの化合物はインキ着肉性の点からn
は4〜30の整数であることが好ましく、8〜13が更
に好ましい。nが3以下の場合、親油性が不足し、イン
キ着肉性が不足する傾向にある。nが31以上である
と、重量あたりの不飽和基当量が不足し感光性が低下す
る。例えば、nが4,5,6,7,8,9,10,1
3,22等の化合物を用いることができる。
【0031】上記一般式(I)以外の本発明に好ましく
用いられる親油性のエチレン性不飽和化合物の具体例と
しては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチル
ヘキシルメタアクリレート、ネオペンチルグリコールジ
アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタアクリレ
ート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタク
リレートなどが挙げられる。
【0032】また、以下の一般式(V)、(VI)で示
されるモノマまたはオリゴマも好ましく用いられる。
【0033】
【化1】 (ここで、化学式中、Aはアクロイル基を表す。) これらの親油性のエチレン性不飽和化合物は、単独また
は2種以上を適宜混合して使用することが可能である。
【0034】上記の、本発明において用いられる親油性
エチレン性不飽和化合物の内、分子量1000を越える
親油性エチレン性不飽和化合物しては、アクリル酸誘導
体モノマまたはオリゴマを用いることがさらに好まし
い。これら化合物の具体例としては、1,4−ブタンジ
オールジアクリレートのオリゴマ(式(II)において
mが15.3以上、n=4)、1,5−ペンタンジオー
ルジアクリレートのオリゴマ(式(II)においてmが
12.2以上、n=5)、1,6−ヘキサンジオールジ
アクリレートのオリゴマ(式(II)においてmが1
0.2以上、n=6)、1、9ーノナンジオールジアク
リレートのオリゴマ(式(II)においてmが6.8以
上、n=9)、1,22−ドコサンジオールジアクリレ
ートおよびそのオリゴマ(式(II)においてmが2.
8以上、n=22)、トリメチロールプロパントリアク
リレートのオリゴマ(式(V)においてmが3.9以
上)、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのオリ
ゴマ(式(VI)においてmが5.2以上)などが挙げ
られる。この内、1,6−ヘキサンジオールジアクリレ
ートのオリゴマ(ビスコート#230D;大阪有機工業
(株))、トリメチロールプロパントリアクリレートの
オリゴマ(ビスコート#295D;大阪有機工業
(株))、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの
オリゴマ(ビスコート#400D;大阪有機工業
(株))などが市場から入手できる。
【0035】また、上記の、本発明において用いられる
親油性エチレン性不飽和化合物の内、分子量1000以
下の親油性エチレン性不飽和化合物しては、メタクリル
酸誘導体モノマまたはオリゴマを用いることがさらに好
ましい。これら化合物の具体例としては、1,4−ブタ
ンジオールジメタクリレート、1,5−ペンタンジオー
ルジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタ
クリレート、1、9ーノナンジオールジメタクリレート
などが挙げられる。
【0036】これらの本発明に用いられる親油性エチレ
ン性不飽和化合物は親水性膨潤層を形成する際に該組成
物に添加し、該層内に存在させる方法、または親水性膨
潤層を形成した後、該化合物を該層上に必要に応じて親
水性膨潤層に容易に浸透する適当な溶剤で希釈して塗布
し、該層内に含浸させる方法などを用いて添加される。
【0037】本発明の感光性平版印刷版原版に用いられ
る親水性膨潤層は、親水性ポリマを主成分とする相およ
び疎水性ポリマを主成分とする相の少なくとも2相から
構成された相分離構造を有することが好ましい。
【0038】本発明の親水性膨潤層に用いられる親水性
ポリマについて説明する。
【0039】親水性ポリマとは、水に対して実質的に不
溶でかつ水膨潤性を示す、公知の水溶性ポリマ(水に完
全溶解するものを意味する)、疑似水溶性ポリマ(両親
媒性を意味し、マクロには水に溶解するがミクロには非
溶解部分を含むものを意味する)、水膨潤性ポリマ(水
に膨潤するが溶解しないものを意味する)を意味する。
すなわち、通常の使用条件下で水を吸着または吸収する
ポリマを意味し、水に溶けるか或いは水に膨潤するポリ
マを意味する。
【0040】本発明において親水性ポリマとしては公知
のものを使用することができ、動物系ポリマ、植物系ポ
リマ、合成系ポリマがある。例えば、「Functio
mnal Monomers」(Y.Nyquist
著、Dekker)、「水溶性高分子」(中村著、化学
工業社)、「水溶性高分子 水分散型樹脂の最新加工・
改質技術と用途開発 総合技術資料集」(経営開発セン
ター出版部)、「新・水溶性ポリマの応用と市場」(シ
ーエムシー)などに記載の水溶性ポリマが挙げられる。
具体例を以下に示す。
【0041】(A)天然高分子類。
【0042】デンプン−アクリロニトリル系グラフト重
合体加水分解物、デンプン−アクリル酸系グラフト重合
体、デンプン−スチレンスルフォン酸系グラフト重合
体、デンプン−ビニルスルフォン酸系グラフト重合体、
デンプン−アクリルアミド系グラフト重合体、カルボキ
シル化メチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロ
ース、キサントゲン酸セルロース、セルロース−アクリ
ロニトリル系グラフト重合体、セルロース−スチレンス
ルフォン酸系グラフト重合体、カルボキシメチルセルロ
ース系架橋体、ヒアルロン酸、アガロース、コラーゲ
ン、ミルクカゼイン、酸カゼイン、レンネットカゼイ
ン、アンモニアカゼイン、カリ化カゼイン、ホウ砂カゼ
イン、グルー、ゼラチン、グルテン、大豆蛋白、アルギ
ン酸塩、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カリウ
ム、アルギン酸ナトリウムアラビヤガム、トラガカント
ガム、カラヤガム、グアールガム、ロカストビーンガ
ム、アイリッシュモス、大豆レシチン、ペクチン酸、澱
粉、カルボキシル化澱粉、寒天、デキストリン、マンナ
ンなど。
【0043】(B)合成高分子類。
【0044】ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキ
サイド、ポリ(エチレンオキサイド-co-プロピレンオキ
サイド)、水性ウレタン樹脂、水溶性ポリエステル、ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレート系ポリマ、ポリ
(ビニルメチルエーテル-co-無水マレイン酸)、無水マ
レイン酸系共重合体、ビニルピロリドン系共重合体、ポ
リエチレングリコールジ(メタ)アクリレート系架橋重
合体、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト系架橋重合体、ポリ(N−ビニルカルボン酸アミ
ド)、N−ビニルカルボン酸アミド共重合体、など。
【0045】なお、上記の親水性ポリマは発明の効果を
損わない範囲で、柔軟性を付与したり、親水性を制御す
る目的から置換基が異なるモノマや共重合成分を、1種
または2種以上を適宜混合して用いることが可能であ
る。
【0046】本発明に好ましく用いられる親水性ポリマ
の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらの例に限定
されるものではない。
【0047】(1)マレイン酸または無水マレイン酸、
マレイン酸アミドもしくはマレイン酸イミドなどのマレ
イン酸誘導体とエチレン、プロピレン、ブチレン、イソ
ブチレンまたはジイソブチレンなどの炭素数が2〜12
好ましくは炭素数2〜8の直鎖または分岐状のα−オレ
フィンとの共重合体と、アルカリ金属化合物、アルカリ
土類金属化合物、アンモニア、アミンとの反応物の架橋
体。
【0048】(2)マレイン酸またはその誘導体とスチ
レン、酢酸ビニル、メチルビニルエーテル、アクリル酸
エステル、メタクリル酸エステルまたはアクリロニトリ
ルなどのビニルまたはビニリデン化合物との共重合体
と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ア
ンモニア、アミンとの反応物の架橋体。
【0049】(3)アクリル酸またはメタクリル酸と前
記(2)のビニルまたはビニリデン化合物との共重合体
と、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ア
ンモニア、アミンとの反応物の架橋体。
【0050】特公昭58−37027号公報などに開示
されているポリオキシアルキレン系の親水性ポリマ、特
開昭60−104106号公報などに開示されているポ
リビニルピロリドン、スルフォン酸基を親水性基とする
ポリスチレンスルフォン酸、アクリルアミドメチルプロ
パンスルフォン酸共重合体などの架橋体、特開昭60−
42416号公報などに開示されている水酸基、アミノ
基を有する親水性ポリマにポリイソシアネートを架橋さ
せて得られるポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0051】次に、本発明の親水性膨潤層に用いられる
疎水性ポリマについて説明する。
【0052】本発明に用いられる疎水性ポリマとしては
水性エマルションから主として構成されたものが好まし
く用いられる。
【0053】本発明に言う水性エマルションとは、微細
なポリマ粒子と必要に応じて該粒子を包囲する保護層か
らなる粒子を水中に分散させた疎水性ポリマ懸濁水溶液
を意味する。
【0054】すなわち、基本的に分散質としてのポリマ
粒子と必要に応じて形成される保護層からなるエマルジ
ョン粒子と分散媒としての希釈水溶液から構成される自
己乳化または強制乳化水溶液を意味する。本発明に用い
られる水性エマルジョンの具体例としては、ビニルポリ
マ系ラテックス、共役ジエンポリマ系ラテックスおよび
水性または水分散ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0055】ビニルポリマ系ラテックスとしては、アク
リル系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系などが挙げら
れる。
【0056】共役ジエンポリマ系ラテックスとしては、
スチレン/ブタジエン系(以下、SB系と略記する)、
アクリロニトリル/ブタジエン系(以下、NB系と略記
する)、メタクリル酸メチル/ブタジエン系(以下、M
B系と略記する)、クロロプレン系などが挙げられる。
【0057】水性または水分散ポリウレタン樹脂として
は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオー
ル、ポリ(エステル/エーテル)ポリオールとポリイソ
シアネートからなる疎水性のポリウレタン樹脂を界面活
性剤を用いて強制的に乳化させた強制乳化型、樹脂自身
に親水性基または、親水性セグメントを付与し、自己分
散性にして乳化させた自己乳化型が挙げられ、両者にお
いて非反応性のものおよびブロック剤でイソシアネート
基などの反応基をブロックした反応性のものが挙げられ
る。
【0058】これらの水性エマルションの中でも本発明
に特に好ましく用いられる疎水性ポリマとしてはSB
系、NB系、MB系、クロロプレン系などの共役ジエン
系化合物を含有するラテックスが挙げられる。
【0059】これらの共役ジエンポリマ系ラテックスは
単独または2種以上を適宜混合して使用することが可能
である。
【0060】本発明の親水性膨潤層は上記の親水性ポリ
マと疎水性ポリマを混合し、必要に応じて架橋または疑
似架橋し、水に不溶化せしめることによって基板上に積
層形成される。
【0061】架橋には親水性ポリマおよび疎水性ポリマ
が有する反応性官能基を用いて架橋反応することが好ま
しい。
【0062】架橋反応は、共有結合性の架橋であって
も、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0063】架橋反応に用いられる化合物としては、架
橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、ポリエ
ポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリ(メ
タ)アクリル化合物、ポリメルカプト化合物、ポリアル
コキシシリル化合物、多価金属塩化合物、ポリアミン化
合物、ポリアルデヒド化合物、ポリビニル化合物、ヒド
ラジンなどが挙げられ、該架橋反応は公知の触媒を添加
し、反応を促進することが行なわれる。
【0064】また本発明の疎水性ポリマとして好ましく
用いられる水性エマルジョンを作製する際に、共重合成
分として、カルボキシル基、水酸基、メチロールアミド
基、エポキシ基、カルボニル基、アミノ基などの反応性
官能基を存在させて自己架橋させる方法および、架橋剤
として上記の多官能性化合物を用いて架橋構造を形成さ
せる方法が挙げられる。
【0065】これらの架橋剤は単独または2種以上を混
合して使用することが可能である。
【0066】本発明の親水性膨潤層の親水性ポリマと疎
水性ポリマを混合する方法としては、3本ロールなどの
ロールミキサ、ニーダーなどの混合機を用いて混練りす
る方法、ホモジナイザー、ボールミルなどのディスパー
サーを用いて湿式混合分散する方法など、塗料やパテを
製造する際に用いられる公知の方法で好ましく混合され
る。
【0067】また、本発明の親水性膨潤層を形成する方
法としては、疎水性ポリマとして水性のエマルションを
好ましく用いることから、水溶液系で各成分(親水性ポ
リマ、疎水性ポリマなど)を混合し、必要に応じて架橋
剤が添加される方法が、均質な相分離構造を実現し、イ
ンキ反発性を向上させる点から好ましい。
【0068】したがって、架橋剤としては、水溶性の多
官能性化合物が好ましく用いられる。すなわち、水溶性
のポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、メラミン化
合物などを用いることが好ましい。
【0069】次に本発明に言う親水性膨潤層の相分離構
造について説明する。
【0070】親水性ポリマを主成分とする相と疎水性ポ
リマを主成分とする相から構成された相分離構造とする
ことにより、インキ反撥性と印刷耐久性の両者を広い組
成範囲において実現することが可能となる。
【0071】該相分離構造を構成する親水性ポリマ相と
疎水性ポリマ相の組成比は自由であり、 (1)いずれか一方が連続相で、他方が分散相である形
態、 (2)親水性および疎水性ポリマ相がそれぞれ連続相お
よび分散相を有する形態 (3)親水性および疎水性ポリマ相がいずれも連続相と
なる形態 の中から自由に選択することができる。
【0072】上記(1)〜(3)の相分離構造の一例を
それぞれ図1〜3に示す。
【0073】すなわち親水性ポリマが比較的強い親水性
を示す材料を選択した場合(水溶性ポリマおよび疑似水
溶性ポリマなど)、親水性膨潤層に含まれる該親水性ポ
リマの割合は、インキ反撥性および印刷耐久性の点から
比較的少量で十分であり、疎水性ポリマの割合が相対的
に多くなるため、親水性ポリマを分散相とする上記の
(1)または(2)の形態となることが好ましい。一
方、親水性ポリマが比較的弱い親水性を示す材料を選択
した場合(水膨潤性ポリマなど)、親水性膨潤層に含ま
れる該親水性ポリマの割合は、インキ反撥性および印刷
耐久性の点から比較的多量に必要であり、疎水性ポリマ
の割合が相対的に少なくなるため、上記の(1)、
(2)または(3)の形態となることが好ましい。
【0074】本発明に用いられる親水性膨潤層は以下の
方法にしたがって算出される吸水量が特定の範囲である
ことが好ましい。
【0075】吸水量(g/m2 )=WWET −WDRYDRY :乾燥状態における重量(g/m2 ) WWET :水中に25℃×10分間浸漬した後の重量(g
/m2 ) [吸水量の測定方法]測定しようとする平版印刷版の非
画線部または画線部のみから形成された部分を所定面積
に裁断し、25℃の精製水に浸漬する。10分間浸漬し
た後、該原版の親水性膨潤層表面および裏面に付着した
余分の水分を「ハイゼガーゼ」(コットン布:旭化成工
業(株)製)にて素速く拭き取り、該原版の膨潤重量W
WET を秤量する。その後、該原版を60℃のオーブンに
て約30分間乾燥し、乾燥重量WDRY を秤量する。
【0076】本発明の親水性膨潤層からなる非画線部の
吸水量は、インキ反発性および形態保持性の観点から1
〜50g/m2 であることが好ましく、1〜10g/m
2 、さらに2〜7g/m2 であることがさらに好まし
い。
【0077】一方、本発明の親水性膨潤層からなる画線
部の吸水量は、画像形成のためには非画線部の吸水量未
満であることが必要であるが、有利に画像形成を行うた
めには非画線部の吸水量の50%以下、さらに30%以
下であることが好ましい。
【0078】本発明の親水性膨潤層はゴム弾性を有する
ことが好ましい。すなわち、以下の方法により算出した
親水性膨潤層の初期弾性率が特定の範囲内にあることが
好ましい。
【0079】[初期弾性率の測定方法]測定しようとす
る平版印刷版の非画線部および画線部に対応した部分と
同一組成の溶液をテフロンシャーレ上に展開し、60℃
×24時間乾燥させる。得られた乾燥硬化膜は、剃刀刃
などを用いて、長さ40mm、幅1.95mm、厚み約
0.2mmの短冊状のテストピースに裁断する。溶液塗
布後、刷版とするまでに画線部および/または非画線部
に処理を施す場合には、テストピースにも同様の処理を
施す。例えば、後述の作成方法による場合には、画線部
に対応した部分は、刷版処理と同一条件で露光処理し、
感光性化合物を反応させる。
【0080】このようにして得られたテストピースは、
測定前に25℃×50%RHの環境下にて24時間以上
放置し、調湿した後、厚みをマイクロゲージにて測定
し、下記の引張条件で初期弾性率を測定した。データ処
理は、JIS K6301に準じて行った。
【0081】 引張速度 200mm/分 チャック間距離 20mm 繰返し回数 4回 測定機 「RTM−100」((株)オリエンテック製) 親水性膨潤層の初期弾性率は、0.01〜10kgf/
mm2 の範囲内にあることがインキ反発性および形態保
持性の観点から重要であり、0.01〜5kgf/mm
2 の範囲が好ましく、0.01〜2kgf/mm2 の範
囲がさらに好ましい。初期弾性率が0.01kgf/m
2 未満の場合は、親水性膨潤層の形態保持性が低下
し、印刷の耐久性が劣り、初期弾性率が10kgf/m
2 よりも大きくなるとインキ反発性が極端に低下す
る。
【0082】一方、画線部(インキ着肉部分)の初期弾
性率は非画線部の親水性膨潤層の初期弾性率よりも大き
いことが必要で、有利に画像形成を行うためには2倍以
上、好ましくは3倍以上である。
【0083】本発明に用いられる親水性膨潤層は以下の
方法にしたがって算出される水膨潤率が特定の範囲であ
ることが好ましい。
【0084】 水膨潤率(%)=(ΘWET −ΘDRY )/ΘDRY ×100 ΘDRY :乾燥状態における非画線部または画線部からな
る親水性膨潤層の厚み(μm) ΘWET :膨潤状態における非画線部または画線部からな
る親水性膨潤層の厚み(μm) [水膨潤率の測定方法(A)]測定しようとする平版印
刷版の画線部または非画線部を含む部位が断面となるよ
うに切削して切片を作製する。この切片を常温にて1昼
夜真空乾燥した後、光学顕微鏡にて当該部位の親水性膨
潤層厚さを観察し、これをΘDRY (μm)とする。な
お、光学顕微鏡観察は23℃、20%RHの環境下にお
いて手早く行った。
【0085】さらに、この平版印刷版切片に過剰の水滴
を載せ、親水性膨潤層が十分に水膨潤した状態で断面を
光学顕微鏡観察し、当該部位の親水性膨潤層厚さを読み
とり、これをΘWET (μm)とする。
【0086】[水膨潤率の測定方法(B)]測定しよう
とする平版印刷版の画線部または非画線部をOsO4
溶液の雰囲気下に1昼夜さらしてOsO4 により親水性
膨潤層を固定した後、所定の部位が断面となるようにミ
クロトームで切削して超薄切片を作製する。この切片を
透過型電子顕微鏡(TEM)にて1〜5万倍程度の倍率
で当該部位の親水性膨潤層厚さを観察し、これをΘDRY
(μm)とする。
【0087】一方、測定しようとする平版印刷版をOs
4 水溶液に2〜3日浸漬し親水性膨潤層を水膨潤状態
で固化/固定する。所定の部位が断面となるようにミク
ロトームで切削して超薄切片を作製し、この切片を透過
型電子顕微鏡(TEM)にて1〜5万倍程度の倍率で当
該部位の親水性膨潤層厚さを読みとり、これをΘ
WET(μm)とする。
【0088】本発明の親水性膨潤層からなる非画線部の
水膨潤率は、インキ反発性および形態保持性の観点から
10〜2000%であることが好ましく、50〜170
0%、さらに50〜700%の範囲であることがより好
ましい。非画線部の水膨潤率が10%未満になると、イ
ンキ反発性が低下し、また塗工時にピンホールなどの欠
陥が生じ易くなる。一方、非画線部の水膨潤率が200
0%よりも大きくなると、形態保持性が大きく低下し、
印刷時に損傷を受け易くなる。
【0089】一方、本発明の親水性膨潤層からなる画線
部の水膨潤率は、画像形成のためには非画線部の水膨潤
率未満であることが必要であるが、有利に画像形成を行
うためには非画線部の水膨潤率の50%以下、さらに3
0%以下であることが好ましい。
【0090】次に本発明の保護層について説明する。
【0091】本発明の感光性平版印刷版原版の親水性膨
潤層の表面には、該親水性膨潤を保護する目的で適当な
保護層をコーティングにより該親水性膨潤層上に形成し
たり、保護フィルムをラミネートすることが行なわれ
る。また、該保護層中には感光層を曝光(露光光源以外
の光で、本来非照射部分に光が照射されることを意味す
る)から保護する目的で、光退色性物質を含有せしめる
こともできる。本発明においては、親水性膨潤層が水洗
などによって抽出除去が可能な親油性のエチレン性不飽
和化合物を含有するので、他物質との接触による該原版
表面からの転移を防ぎ、また露光による該化合物の光硬
化を促進する上から保護相を形成することが好ましい。
【0092】保護フィルムの具体例としては、ポリエチ
レン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニ
リデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタ
レート、セロファンなどが挙げられる。また、これらの
保護フィルムは画像露光時の焼枠における真空密着性を
改良するために、凹凸加工を施したり、表面をマット処
理したり、シリカ粒子などを含むプラスチック層を上記
保護フィルムの表面に塗布積層することも好ましく行な
われる。
【0093】次に本発明の感光性平版印刷版原版を用い
た平版印刷版の製造方法について説明する。
【0094】本発明の感光性平版印刷版原版は、ネガテ
ィブワーキング用の製版工程を経て刷版となる。すなわ
ち、基板上に形成された親水性膨潤層内に存在する親油
性のエチレン性不飽和化合物は、ネガ原画フィルムおよ
び親水性膨潤層の上層に位置する保護フィルムを通して
露光される。
【0095】本発明の感光性平版印刷版原版は露光後、
該保護フィルムを剥離し、版表面を水洗するのみで基本
的に製版が終了する。水洗工程に用いる水には特殊な添
加物が一切必要なく、水道水など用いてを版表面を水洗
するのみでよい。
【0096】また、水洗の効率を高める上から、スプレ
ー、シャワー、浸漬、ブラッシング、ラビングなど公知
の自動現像機で用いられるリンス液供給および現像促進
手段を用いることは自由である。また、供給する水温は
制限されない。
【0097】また水洗処理したのち、抽出除去された親
油性のエチレン性不飽和化合物の残留物を版面から完全
に除去する目的から油性溶剤で洗浄することが好まし
い。
【0098】油性溶剤の具体例としては、パラフィン系
炭化水素、イソパラフィン系炭化水素、シクロパラフィ
ン系炭化水素および芳香族炭化水素が単一または混合さ
れた形で用いられる。これらの炭化水素系溶媒の代表的
なものとしては、石油の分留品およびその改質品などが
挙げられる。
【0099】露光部においては該エチレン性不飽和化合
物が光架橋し、親水性膨潤層内に固定される。露光部分
は、該親水性膨潤層が水と接触した際、光架橋された親
油性成分が親水性膨潤層の水膨潤性を阻害し、また架橋
密度の増加によってゴム弾性を減ずるため、インキ着肉
性の画線部となる。一方、未露光部の親水性膨潤層内に
存在する親油性のエチレン性不飽和化合物は、該親水性
膨潤層が水と接触した際、親水性膨潤層が水膨潤する際
に該層から容易に抽出除去され、インキ反撥するのに適
した相分離構造および水膨潤性を有する非画線部とな
る。水洗工程によって非画線部に対応する部分の親水性
膨潤層内から抽出さらた親油性のエチレン性不飽和化合
物は、水に非溶解であるため、公知の吸油材料(例え
ば、「東レWOSEP」:東レ(株)製など)を洗浄水
排水溝などに配置することによって、容易に吸着分離す
ることができる。
【0100】上記のように本発明の感光性平版印刷版原
版は、感光性化合物の親油性のエチレン性不飽和化合物
の光反応によって、インキ反撥性の親水性膨潤層の相分
離構造が有するゴム弾性や水膨潤性を変化させる親油性
の画線部を形成することによって画像形成するものであ
る。
【0101】本発明の製版露光工程で用いられる光源と
しては、例えば高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キセノ
ン灯、メタルハライド灯、蛍光灯などが挙げられる。
【0102】本発明に用いられる感光性平版印刷版原版
の基板としては、通常の平版印刷機に取り付けられるた
わみ性と印刷時に加わる荷重に耐えうるものである必要
がある以外には一切制限を受けない。
【0103】代表的なものとしては、アルミ、銅、鉄、
などの金属板、ポリエステルフィルムやポリプロピレン
フィルムなどのプラスチックフィルムあるいはコート
紙、ゴムシートなどが挙げられる。また、該基板は上記
の素材が複合されたものであってもよい。
【0104】また、該基板表面は検版性向上や接着性向
上の目的から、電気化学的処理や酸塩基処理、コロナ放
電処理など各種に表面処理を施すことも可能である。
【0105】またこれらの基板上には接着性向上やハレ
ーション防止の目的からコーティングなどを施してプラ
イマー層を形成し、基板とすることも可能である。
【0106】次に本発明の感光性平版印刷版原版から作
製された刷版を用いた印刷方法について説明する。
【0107】本発明の平版印刷には公知の平版印刷機が
用いられる。すなわち、オフセットおよび直刷り方式の
枚葉および輪転印刷機などが用いられる。
【0108】本発明の感光性平版印刷版原版を画像形成
したのち、これらの平版印刷機の版胴に装着し、該版面
には接触するインキ着けローラーからインキが供給され
る。該版面上の親水性膨潤層を有する非画線部分は湿し
水供給装置から供給される湿し水によって膨潤し、イン
キを反撥する。一方、画線部分はインキを受容し、オフ
セットブランケット胴表面または被印刷体表面にインキ
を供給して印刷画像を形成する。
【0109】本発明の感光性平版印刷版原版から得られ
た刷版で印刷する際に使用される湿し水は、水ありPS
版で使用されるエッチ液を用いることはもちろん可能で
あるが、添加物を一切含有しない純水を使用することが
できる。
【0110】本発明の感光性平版印刷版を用いて印刷す
る際には添加物を一切含有しない純水を使用することが
好ましい。
【0111】
【実施例】以下に、実施例により本発明をさらに詳しく
説明する。
【0112】実施例 1〜3 厚さ0.2mmのアルミ板(住友軽金属(株)製)に、下
記組成物を塗布したのち、160℃×40分間熱処理し
て3g/m2 の厚みを有する親水性膨潤層を塗設した。
【0113】 <親水性膨潤層組成(重量部)> (1)親水性ポリマ 20重量部 (2)テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル 6重量部 (3)水性ラテックス「DN703」 72重量部 [カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエン共重合ラテックス:大日 本インキ化学工業(株)製] (4)2−アミノプロピルトリメトキシシラン 2重量部 (5)精製水 900重量部 [親水性ポリマの合成例]1リットルの4ッ口セパラブ
ルフラスコに攪拌棒、温度計および窒素導入管を装着
し、これにN−ビニルアセトアミド100gを280g
の脱イオン交換水に溶解した水溶液を仕込んだ。窒素ガ
スを約10分間導入して、溶存酸素を追い出し、液温度
を30℃に上昇させ、重合開始剤として2,2’−アゾ
ビス−2−アミノプロパン二塩酸塩の5%水溶液を20
g添加し、約10時間重合反応を行った。得られた各重
合体の粘度はB型粘度計(0.2%水溶液、30℃、回
転数20rpm)で測定した結果、235cpsであっ
た。
【0114】上記の様にして塗設した親水性膨潤層上
に、表1の親油性エチレン性不飽和化合物を用いて、以
下の組成の感光性組成物を塗布し、120℃×5分間熱
処理して感光性組成物0.4g/m2 を親水性膨潤層中
に含浸させた。なお、第一の親油性エチレン性不飽和化
合物としてはビスコート#400D(実施例1〜2)、
ビスコート#230D(実施例3)、ビスコート#29
5D(実施例4)(いずれも大阪有機化学工業(株))
を用いた。
【0115】 <感光性組成物(重量部)> (1)第一の親油性エチレン性不飽和化合物(表1記載) 12重量部 (2)第二の親油性エチレン性不飽和化合物(表1記載) 12重量部 (3)ミヒラー氏ケトン 2重量部 (4)2,4−ジエチルチオキサントン 2重量部 (5)「アイソパーE」(イソパラフィン系炭化水素:エッソ化学(株)製) 72重量部
【表1】 その後、厚さ12ミクロンの片面マット化二軸延伸ポリ
プロピレンフィルムをマット化されていない面が該親水
性膨潤層と接するようにしてカレンダーローラーを用い
てラミネートし、ネガ型の感光性平版印刷用原版を得
た。
【0116】得られた感光性平版印刷版原版は、高圧水
銀灯「ジェットライト3303kW :オーク製作所(株)
製」を用い、PCW(PLATE CONTOROL WEDGE:KALL
E社製)を貼込んだネガフィルムを通して90秒間密着
露光(3.6mW/cm2 )した。次いで、版全面を水道水でリ
ンスし、未露光部の感光性組成物を洗浄して刷版とし
た。
【0117】実施例3で得られた刷版の親水性膨潤層を
水膨潤させたのち、OsO4 染色し、TEM(透過型電
子顕微鏡)観察した。観察の結果、親水性膨潤層が、図
2に示されるような親水性ポリマを主成分とする相およ
び疎水性ポリマを主成分とする相から構成された相分離
構造を有することが確認された。また、画線部において
は、露光により光重合した親油性モノマが固定され、水
膨潤を阻害していることが確認された。
【0118】親水性膨潤層の膜厚が約半分になるまでハ
イゼガーゼで印刷版の画線部を擦った。
【0119】次に、同じ絵柄の刷版を2枚用意し、刷版
上に湿し水を付けた後、余分の水分を「ハイゼガーゼ」
にて素早く拭き取った後、PSインキをなじませたハン
ドローラーにてインキングを行った。インキングは、非
画線部が汚れ始める直前まで行って、そのときのインキ
着肉性を調べた。1枚の刷版は未処理のまま、もう1枚
は以下の摩耗処理を行った後、インキングを行った。
【0120】<摩耗処理>刷版の親水性膨潤層の膜厚が
約半分になるまで水で湿した「ハイゼガーゼ」で刷版版
面を強く擦った。
【0121】未処理および摩耗処理後のインキ着肉性を
表2に示す。
【0122】
【表2】 比較例 1〜3 親油性エチレン性不飽和化合物を併用しない、以下のよ
うな組成の感光性組成物を用いたこと以外は実施例1〜
4と同様にして、刷版作製、インキ着肉性評価を行っ
た。結果を表2に示す。
【0123】 <感光性組成物(重量部)> (1)親油性エチレン性不飽和化合物(表1記載) 24重量部 (2)ミヒラー氏ケトン 2重量部 (3)2,4−ジエチルチオキサントン 2重量部 (5)「アイソパーE」(イソパラフィン系炭化水素:エッソ化学(株)製) 72重量部 表2の結果から、比較例1では、分子量1000を越え
る親油性エチレン性不飽和化合物単独では、刷版の表層
のインキ着肉性は優れていても、摩耗処理後の刷版表面
(親水性膨潤層の内部に相当する)ではインキ着肉性が
不十分である。この結果は、印刷耐久性テストにおいて
比較例の印刷版のインキ着肉性がロングランにおいては
低下し、徐々に非画線部と画線部のコントラストが小さ
くなることを示唆すると考えられる。
【0124】また、比較例2〜3では、分子量1000
以下の親油性エチレン性不飽和化合物単独では、刷版の
表層のインキ着肉性が不十分であるが、摩耗処理後の刷
版表面(親水性膨潤層の内部に相当する)ではインキ着
肉性が良好であることが分かる。
【0125】また、皮膚一次刺激性(P.I.I.)に
ついても、分子量の異なる親油性エチレン性不飽和化合
物を併用する方が、より安全であり、かつインキ着肉性
と両立することが分かる。
【0126】実施例 5 実施例1に用いた平版印刷版と通常のPS版(FNS;
富士写真フィルム(株)製)を露光、現像処理して刷版
としたものを、同じ版胴に装着し、湿し水として市販の
精製水を供給しながら実施例1と同様にして印刷を行っ
た。
【0127】湿し水の供給量を標準条件から増量した場
合、PS版を用いた部分では、画線部のインキ濃度が極
端に低下し、いわゆる「水負け」によるインキの着肉不
良が発生した。一方、実施例1に用いた平版印刷版を用
いた部分では、着肉不良の程度が軽微であった。
【0128】また、湿し水の供給量を標準条件から減量
した場合、PS版を用いた部分では、全面にインキ汚れ
が発生した。一方、実施例1に用いた平版印刷版を用い
た部分では、良好な印刷物が得られた。
【0129】なお、湿し水の供給量は印刷機のダイヤル
目盛り値にて相対的に比較した。評価結果を表3に示
す。
【0130】
【表3】
【0131】
【発明の効果】本発明の感光性平版印刷版原版は、感光
成分として特定の分子量の親油性エチレン性不飽和化合
物を用いるため、安全性が高く、画線部のインキ着肉性
に優れ、版表面を水洗するのみで基本的に製版できる。
【0132】本発明の原版から得られた平版印刷版は、
特殊な表面処理を行なうことなく、高いインキ反撥性を
発現する。また、わずかな湿し水の給水量で効率良くイ
ンキを反撥することができ、湿し水のコントロール幅が
拡大される。さらに、湿し水に通常添加されるイソプロ
パノールなどの溶剤を用いることなく、印刷が可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる感光性平版印刷版原版の親水
性膨潤層の相分離構造の一例を表す。
【図2】 本発明にかかる感光性平版印刷版原版の親水
性膨潤層の相分離構造の一例を表す。
【図3】 本発明にかかる感光性平版印刷版原版の親水
性膨潤層の相分離構造の一例を表す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に少なくとも感光性の親水性膨潤層
    を備えた感光性平版印刷版原版において、親水性膨潤層
    が分子量1000を越える親油性エチレン性不飽和化合
    物および分子量1000以下の親油性エチレン性不飽和
    化合物を含有することを特徴とする感光性平版印刷版原
    版。
  2. 【請求項2】分子量1000を越える親油性エチレン性
    不飽和化合物がアクリル酸誘導体モノマまたはオリゴマ
    であることを特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷
    版原版。
  3. 【請求項3】分子量1000以下の親油性エチレン性不
    飽和化合物がメタクリル酸誘導体モノマまはオリゴマで
    あることを特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷版
    原版。
  4. 【請求項4】感光性の親水性膨潤層が、親水性ポリマを
    主成分とする相および疎水性ポリマを主成分とする相の
    少なくとも2相から構成された相分離構造を含有するこ
    とを特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷版原版。
  5. 【請求項5】親水性膨潤層の上に保護層を有することを
    特徴とする請求項1記載の感光性平版印刷版原版。
  6. 【請求項6】請求項1記載の感光性平版印刷版原版の版
    表面に活性光線を照射し、画線部に対応した部分の親水
    性膨潤層内の親油性エチレン性不飽和化合物を光硬化さ
    せ、その後、非画線部に対応した部分の親水性膨潤層内
    の親油性エチレン性不飽和化合物を除去することを特徴
    とする平版印刷版の製造方法。
  7. 【請求項7】非画線部に対応した部分の親水性膨潤層内
    の親油性エチレン性不飽和化合物の除去を、版全面を水
    洗処理することによって行なうことを特徴とする請求項
    6記載の平版印刷版の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011118456A1 (ja) * 2010-03-26 2011-09-29 富士フイルム株式会社 平版印刷版原版及びその製造方法
CN113557144A (zh) * 2019-03-29 2021-10-26 东丽株式会社 印刷物的制造方法

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