JP3767657B2 - 色伝達特性予測方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラー原稿を読み取って、画像処理を施し、原稿画像を被記録媒体上に再生するデジタルフルカラー複写機、カラーファクシミリ、カラーシステム等において、希望する色再現を得るために行なう各種画像処理装置の色処理係数を決定する際に用いる、スキャナー、プリンター、ディスプレイ等のカラー画像入出力装置の色伝達特性予測方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、原稿をスキャナーで読み、スキャナーの出力であるRGB色空間の信号から、装置に依存しない色空間の信号に変換する画像処理を行ない、何らかの編集処理をした後、プリンターの入力であるCMYK色空間の信号に変換する画像処理を行ない、プリンターでプリント出力するようなシステムを想定する。この場合、スキャナーの出力である装置に依存したRGB色空間の信号から、装置に依存しない色空間の信号に変換する画像処理を行なうということは、スキャナーの入力の色とスキャナーの出力のRGB色空間の色との関係、すなわち、入力装置の色伝達特性を正確に把握して、その逆の画像処理を施すことになる。同様に、装置に依存しない色空間の信号からプリンターの入力である装置に依存したCMYK色空間の信号に変換する画像処理を行なうことは、プリンターの入力のCMYK色空間における色とプリンターの出力の色との関係、すなわち、出力装置の色伝達特性を正確に把握して、その逆の画像処理を施すことになる。出力装置がディスプレイであっても同様のことがいえる。
【0003】
実際の画像処理において用いる色処理係数を決める方法は、画像処理方式の相違、希望する色再現をどう設定するか等によって異なってくるが、装置の特性を正確に把握することが基本であり、カラー画像入力装置の任意の入力信号に対する出力信号を予測したり、任意の出力信号に対する入力信号を予測したりできる方法があれば、画像処理の色処理係数を決めることは容易となる。
【0004】
カラー入出力装置の色伝達特性予測方法としては、入出力装置の物理的な特性を把握してモデル化した物理モデルを用いて予測するものと、装置の入出力の実データを統計的に処理して予測する方法とがある。
【0005】
例えば、特公平5−18305号公報では、入力装置であるカラースキャナーにおいては3×3マトリックスを、出力装置であるプリンターにおいてはノイゲバウアー方程式と呼ばれる物理的なモデルを仮定して予測を行ない、マスキングパラメータを収束計算によって求める手法を提案している。しかし、このような物理的なモデルはモデル精度が良くなく、実際の入出力装置の色処理係数を決めても実用に耐えられるものは得られない。また、より予測精度の高い物理的なモデルの開発は困難であるし、モデルの開発ができたとしても装置の種類が異なるとその装置ごとにモデルを考案する必要があるという問題があった。
【0006】
これに対して、コンピュータカラーマッチングと一般に呼ばれている方法は、プリンターの入出力間に高次の多項式、または装置の物理特性に対応した関数を仮定し、複数の入力信号の実データとそれに対応する出力信号の実データのデータ対から関数の係数を決定して、その関数を漸近的に解くことにより任意の出力信号に対する入力信号を予測するものである。しかし、実データの取り方と装置に依存した関数の形状の関係から予測精度が左右されたり、計算時間がかかる、高次の多項式の場合は実データの色空間の外を外挿して予測することはできない等の問題があった。
【0007】
また、特開平7−87347号公報、および、村井ほか,「フレキシブルGCRによる高精度色変換−ニューラルネットワークによる高精度プリンタモデル−」,電子写真学会誌,Vol.35,No.2,1996年,P.125−129には、複数の入力信号の実データとそれに対応する出力信号の実データのデータ対から、ニューラルネットワークを用いて、任意の入力信号に対する出力信号を予測したり、任意の出力信号に対する入力信号を予測する方法が提案されている。この方法では、学習に時間がかかりすぎるとか、多項式の利用と同じく、実データの色空間の外を外挿して予測する場合には使用できないという問題があった。
【0008】
また、特開平2−226870号公報では、複数の入力信号の実データとそれに対応する出力信号の実データのデータ対から、内挿によってデータ対の数を増やした後、入出力信号が3次元の場合は入出力の局所的な3角錘空間を線形行列で結び付け、任意の出力信号に対する入力信号を予測する方法が提案されている。この方法では、データのスムージング機能が含まれていないので入出力信号の実データがノイズを含む場合に対処できない。また、この方法は入力と出力の次元が同じ次元の場合に使える手法であって、入力がYMCKのような4次元で出力が色を表わす3次元の場合には対処できない。さらに、実データの色空間の外を外挿して予測する場合には使用できないという問題もあった。
【0009】
また、米国特許第5471324号明細書には、プリンターの複数の入力信号の実データとそれに対応する出力信号の実データのデータ対から、単純な内挿によってデータ対の数を増やした後、重み付け平均によって出力信号から入力信号を予測することにより、プリンター用の変換ルックアップテーブルの係数を決める方法を提案している。しかしこの方法も、上述の特開平2−226870号公報とほぼ同様の問題があった。
【0010】
また、特開平2−289367号公報には、複数の入力信号の実データとそれに対応する出力信号の実データのデータ対から、統計的と類推される手法を用いて色処理の係数を決定する方法が提案されている。しかしその内容は、部分空間に分割する、相関させる、内挿する、等の言葉で記述されているだけで具体性に欠けており、上述の特開平2−226870号公報と同様の問題があるか、あるいは、部分空間に分割するという記述から、スムージング機能が含まれているとしても部分空間の境界での予測値の連続性が確保されないという問題があることが予想される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、カラー入出力装置の入出力の実データを統計的に処理して色伝達特性を予測する方法、すなわち、任意の入力信号に対する出力信号を予測する方法、および、任意の出力信号に対する入力信号を予測する方法、または、任意の出力信号と入力信号の一部から入力信号の残りの一部を予測する方法として、以下のような特徴を持つ方法を、具体的な形で提供することを目的とするものである。
1.装置の種類(物理的特性)に依存しない方式であること。
2.入出力の実データがノイズを含んでいることを前提として、スムージング機能を持つ方式であること。
3.入力信号の次元が4次元の場合でも、3次元の場合と同等に扱えること。
4.予測精度が高いこと。
5.予測値の連続性が確保されること。
6.外挿能力があること。
7.従来のニューラルネットワークを用いる方法に比較して予測の時間が短いこと。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、カラー画像入力装置またはカラー画像出力装置の入力信号と出力信号の関係を定数項を含む線形関係となるように行列で結びつけ、複数の入力信号の実データと、それに対応する出力信号の実データのデータ対から、この行列の成分を決定するものである。このとき、入力信号を被予測値、出力信号を予測値とし、入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値と、それに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に、重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるようにすれば、行列の成分を決定することができる。重み付けの係数としては、被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各入力信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数で求めることができる。
【0013】
また、重み付けの係数として被予測値依存とともに行列の成分依存の係数を用いる場合には、まず重み付けの係数の初期値を与えて複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に、重み付けの係数の初期値で重み付けした値の2乗和が最小になるように行列の成分を算出して、被予測値である入力信号から行列を用いて出力予測値を求め、被予測値依存および行列の成分依存の関数により重み付けの係数を再計算する。そして、複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に再計算した重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるように行列の成分を再算出し、被予測値である入力信号から前記行列を用いて出力予測値を再度求め、収束を判定して収束していない場合には重み付けの係数の再計算と前記行列の成分の再算出と前記出力予測値の再算出を繰り返せばよい。
【0014】
あるいは、出力信号を被予測値、入力信号を予測値とし、または出力信号と一部の入力信号を被予測値、残りの入力信号を予測値とした場合も、入力信号の実データから該行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に予測値依存の関数で求められる重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるように、行列の成分と重み付けの係数と予測値を決定することができる。この場合、重み付けの係数として被予測値依存とともに行列の成分依存の係数を用いてもよく、その場合には、まず重み付けの係数の初期値を与えて、複数の入力信号の実データから該行列を用いて求めた出力予測値と、それに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に、重み付けの係数の初期値で重み付けした値の2乗和が最小になるように、行列の成分を算出して被予測値から該行列を用いて予測値を求め、被予測値依存および行列の成分依存の関数により重み付けの係数を再計算する。そして、複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に再計算した重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるように行列の成分を再算出し、被予測値から行列を用いて予測値を再度求め、収束を判定して収束していない場合には重み付けの係数の再計算と前記行列の成分の再算出と予測値の再算出を繰り返せばよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の色伝達特性予測方法の第1の実施の形態について、まず概括的な説明を行なう。ここでは、入力信号が3次元または4次元で出力信号が3次元の場合を例に取り、以下に示す(1)式から(7)式を用いて説明するが、入出力信号の次元数はこれらに限定されるわけでなく、他の次元数でも同様である。(1)式と(6)式は、入力信号が3次元で出力信号が3次元の場合に対応しており、(2)式と(7)式は、入力信号が4次元の場合に対応しており、(3)式は、両方の場合に対応している。
【0016】
【数1】
【数2】
【数3】
【0017】
まず、(1)式と(2)式は、n組の入力信号の実データ(x1i,x2i,x3i)または(x1i,x2i,x3i,x4i),i=1〜nと、その予測値(y1i’,y2i’,y3i’),i=1〜nとを、定数項を含む線形の関係になるように行列で結び付けることを示しており、m11,m12,・・・が行列の各成分となっている。
【0018】
次の(3)式は、複数の入力信号の実データから(1)式または(2)式に示す行列を用いて求めた出力予測値と、その入力信号の実データに対応する複数の出力実データとの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を示している。ここで、(y1i’,y2i’,y3i’),i=1〜nは、(1)式または(2)式で示したn組の入力信号の実データ(x1i,x2i,x3i)または(x1i,x2i,x3i,x4i),i=1〜nから行列を用いて求めた出力予測値であり、(y1i,y2i,y3i),i=1〜nは、(x1i,x2i,x3i)または(x1i,x2i,x3i,x4i),i=1〜nに対応するn組の出力信号の実データであり、Wij,i=1〜nは、それら入力信号の実データから(1)式または(2)式に示す行列を用いて求めた出力予測値と出力信号の実データ間のユークリッド距離に対する重み付けの係数である。
【0019】
(6)式は、入力信号が3次元で出力信号が3次元の場合の、任意の被予測値から予測値を求める方法を示しており、m11,m12,・・・は(1)式と同じ行列の各成分である。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)である場合は、(6)式に代入することにより、容易に予測値である出力信号(y1j,y2j,y3j)を求めることができる。被予測値が出力信号(y1j,y2j,y3j)である場合は、同様に(6)式を逆に解くことにより、予測値である入力信号(x1j,x2j,x3j)を求めることができる。
【0020】
(7)式は、入力信号が4次元で出力信号が3次元の場合の予測値を求める方法を示しており、m11,m12,・・・は(2)式と同じ行列の各成分である。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j,x4j)である場合は、(7)式に代入することにより、容易に予測値である出力信号(y1j,y2j,y3j)を求めることができる。被予測値が出力信号(y1j,y2j,y3j)である場合は、(7)式を逆に解くことはできないので、入力信号の一部、例えば(x4j)を被予測値として指定し、(7)式を逆に解いて、残りの予測値である入力信号である入力信号、例えば(x1j,x2j,x3j)を求めることができる。
【0021】
このように、入力信号の次元が4次元の場合でも、3次元の場合と同等に扱うことができる。もちろん、次元数にかかわらず予測を行なうことができ、その応用範囲は広い。また、入出力の関係を比較的単純な線形関係で結びつけているために外挿能力が強く、入出力の実データ対が入出力色空間の全域をカバーしていなくても入出力色空間の全域において使用可能であり、入出力色空間の色域外の特性予測にも使用することができる。
【0022】
最小2乗法と呼ばれる公知の方法を用いることによって、重み付けの係数Wij,i=1〜nが定まっている場合にEj を最小とするような条件で行列の各成分m11,m12,・・・を求めることができる。ただし、前記の重み付けの係数Wij,i=1〜nが行列の成分または予測値である入力値に依存する場合は一意的に決められるものではないので、(3)式のEj を最小とするという条件の下で、重み付けの係数Wij,i=1〜nと行列の成分m11,m12,・・・と予測値の最適値を逐次近似の手法を用いて決定する。
【0023】
なお、Ej を最小とするということは、(3)式を変形した(4)式からわかるように、出力信号空間の各信号成分について正の成分の和に分解できるので、各々の信号成分に分解した量を独立で最小とするということと等価である。次の(5)式は、複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データの差を信号成分ごとに定数倍した値に対して重み付けされた距離の2乗和Ej ’を示している。本発明の方法は、(5)式に示したようなEj ’を最小にする場合にも、全く同様に適用可能である。
【0024】
また、重み付けの係数Wijは、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijと、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を該行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gij、から構成している。このように重み付けの係数Wijをユークリッド距離の単調減少関数によって構成することによって、距離の差が大きい実データについては重みを小さくして影響を少なくし、距離の差が小さい実データについては重みを大きくして重要なデータとして扱うことができる。また、これらの関数形状が単調減少関数であるので、原理的に予測値の連続性が確保され、局所間の不連続性を気にしないでカラー画像入出力装置の色処理の係数を決めることができる。
【0025】
これを、入力信号が3次元または4次元で出力信号が3次元の場合を例にとり、以下に示す(8)式から(12)式を用いて説明する。(8)式と(10)式は、入力信号が3次元の場合に対応しており、(9)式と(11)式は、入力信号が4次元で出力信号が3次元の場合に対応しており、(12)式は、両方の場合に対応している。
【0026】
【数4】
【0027】
まず、(8)式と(9)式は、重み付けの係数の要素である、被予測値または予測値の入力信号と実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数を示している。ここで、(x1j,x2j,x3j)または、(x1j,x2j,x3j,x4j)が被予測値または予測値の入力信号、(x1i,x2i,x3i)または(x1i,x2i,x3i,x4i)が入力信号の実データ、(x10,x20,x30)または(x10,x20,x30,x40)が入力信号空間の規格化の定数、Fijが単調減少関数である。例えば(8)式では、被予測値または予測値の入力信号(x1j,x2j,x3j)と入力信号の実データ(x1i,x2i,x3i)との信号成分ごとの差(x1i−x1j),(x2i−x2j),(x3i−x3j)を求め、これを規格化の定数(x10,x20,x30)で規格化し、(x1i−x1j)/x10,(x2i−x2j)/x20,(x3i−x3j)/x30とする。これらの2乗和を単調減少関数Fijのパラメータとしている。
【0028】
次に、(10)式と(11)式は、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を該行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数を示している。ここで、(x1j,x2j,x3j)または(x1j,x2j,x3j,x4j)が被予測値または予測値の入力信号、(x1i,x2i,x3i)または(x1i,x2i,x3i,x4i)が入力信号の実データ、m11,m12,・・・が前述の行列の成分、(y10,y20,y30)が出力信号空間の規格化の定数、Gijが単調減少関数である。ここで、感度を加味した出力空間の成分に変換するとは、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差と行列の成分を掛けて信号成分ごとに2乗した後に和をとることを意味しており、2乗せずに和をとって通常の出力空間のユークリッド距離に変換する方法に比べて差が大きくなっている。2乗せずに和をとる場合には、各項の符号によっては絶対値が大きくても和は小さくなってしまうことがある。(10)式および(11)式のように2乗することによって各項の絶対値を感度として加味することができる。
【0029】
例えば(10)式は、被予測値または予測値の入力信号(x1j,x2j,x3j)と入力信号の実データ(x1i,x2i,x3i)との信号成分ごとの差(x1i−x1j),(x2i−x2j),(x3i−x3j)を求める。これに行列を掛けることにより出力空間の成分に変換できるが、ここでは上述のように行列の成分を掛けて2乗した後に和をとる。すなわち、(m11(x1i−x1j))2 +(m12(x2i−x2j))2 +(m13(x3i−x3j))2 ,(m21(x1i−x1j))2 +(m22(x2i−x2j))2 +(m23(x3i−x3j))2 ,(m31(x1i−x1j))2 +(m32(x2i−x2j))2 +(m33(x3i−x3j))2 を求める。これらを規格化の定数(y10,y20,y30)を用いてそれぞれ(y10)2 ,(x20)2 ,(x30)2 で除算して規格化し、加算して単調減少関数Gijのパラメータとしている。
【0030】
次に、(12)式は、上述の2つの単調減少関数を合成して重み付けの係数を作成することを示している。ここで、合成する方法は、その要素である2つの関数が各々のユークリッド距離の単調減少関数であるという特徴をくずさないように合成する必要があり、たとえば、和とか積のような演算を用いることができる。
【0031】
このようにして(12)式で求められたW12ijが(3)式の重み付けの係数Wijである。この重み付けの係数Wijを用いて最小2乗法によって(3)式に示すEj を最小とする行列の成分m11,m12,・・・を求める。そして、求めた行列の成分m11,m12,・・・からなる行列を用いて予測値を計算する。さらに必要に応じて、この計算された予測値を用いて再び重み付けの係数を計算し、Ej を最小とする行列の成分m11,m12,・・・を求め、これを用いて予測値を再計算する。このような処理を繰り返すことによって予測値は収束し、所望の予測値を得ることができる。
【0032】
図1は、本発明の色伝達特性予測方法の第1の実施の形態における動作の一例を示すフローチャートである。最初に、S11の入出力実データ対準備工程で、実際に特性を予測したい入出力装置の複数組の実データ対、つまり、前述の(1)〜(3)式で述べたn組の入力信号の実データ(x1i,x2i,x3i),i=1〜nと、それに対応するn組の出力信号の実データ(y1i,y2i,y3i),i=1〜nを用意する。その具体例としては、カラースキャナの場合は、あらかじめ色を測定してある種々のカラーパッチを読み込ませて出力のRGB値を計測し、入力の色度座標、例えば、L* a* b* と、出力のRGB値との実データ対を用意することに相当する。またディスプレイの場合は、入力のRGB値の種々の組合せでカラーパッチを表示させ、その色を測定することにより、入力のRGB値と、出力の色座標、例えば、L* a* b* との実データ対を用意することに相当する。さらに4色カラープリンタの場合は、入力のYMCK%の種々の組合せでカラーパッチを出力し、その色を測定することにより、入力のYMCK%と、出力の色度座標、例えば、L* a* b* との実データ対を用意することに相当する。
【0033】
次に、S12の被予測値準備工程で、前述の(6)式および(7)式で述べた被予測値、つまり、被予測値が入力信号の場合は(x1j,x2j,x3j)または、(x1j,x2j,x3j,x4j)を、また、被予測値が出力信号の場合は、(y1j,y2j,y3j)、または、(y1j,y2j,y3j)と(x4j)を、必要な数だけ用意する。
【0034】
次に、S13の重み付けの係数の初期値算出工程で、(3)式で示したn組の重み付けの係数Wijの初期値を算出する。初期値は、逐次近似法で最終的に決定する値にできるだけ近い値にすることが、収束を早めるために重要である。例えば、被予測値が入力信号の場合は、(8)式と(9)式に示した被予測値入力信号と入力信号の実データの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijの重みW1ij を用いる。この段階では行列の成分が決定されていないので、(10)式、(11)式に示した単調減少関数Gijは用いず、重みW1ij のみで初期値とする。
【0035】
被予測値が出力信号の場合は、出力空間で代用する。入力が3次元の場合は、以下に示す(13)式に示した被予測値出力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した出力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijの重みW2ij'を用いる。また、入力が4次元の場合は、(13)式に示した重みW2ij'と、(14)式に示した入力空間の1つの差分成分だけを規格化した入力信号空間における距離の単調減少関数Gijによる重みW2ij'とを、(15)式で示す関数Hで合成した重みW12ij’を使えばよい。
【0036】
【数5】
【0037】
次に、S14の行列の成分算出工程で、(3)式で示した複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を最小にするという条件のもとに、最小2乗法を用いて、行列の各成分m11,m12,・・・をひとまず算出する。ここで用いる重み付けの係数Wijは、S13の重み付けの係数の初期値算出工程で決めた重みである。
【0038】
次に、S15の予測値算出工程で、(6)式または(7)式を用いて、被予測値から予測値をひとまず算出する。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)または、(x1j,x2j,x3j,x4j)の場合は(y1j,y2j,y3j)を、被予測値が出力信号(y1j,y2j,y3j)または(y1j,y2j,y3j)と(x4j)の場合は(x1j,x2j,x3j)を、S14の行列の成分算出工程で求めた行列の各成分m11,m12,・・・を使って求める。
【0039】
次に、S16の重み付けの係数の再算出工程で、(8)式または(9)式の、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijの重みW1ij と、(10)式または(11)式の、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijの重みW2ij を、(12)式の合成関数Hで合成し、n組の素データ対に対して重みW12ijを再度計算する。
【0040】
次に、S17の行列の成分算出工程で、(3)式で示した複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を最小にするという条件のもとに、最小2乗法を用いて、行列の各成分m11,m12,・・・を再度算出する。
【0041】
次に、S18の予測値再算出工程で、(6)式または(7)式を用いて、被予測値から予測値を再度算出する。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)または(x1j,x2j,x3j,x4j)の場合は(y1j,y2j,y3j)を、被予測値が出力信号(y1j,y2j,y3j)または(y1j,y2j,y3j)と(x4j)の場合は(x1j,x2j,x3j)を、S17の行列の成分再算出工程で求めた行列の各成分m11,m12,・・・を使って求める。
【0042】
次に、S19の予測値の収束判定工程で、S18の予測値再算出工程で求めた予測値と、S15の予測値算出工程または1回前のS18の予測値再算出工程で求めた予測値とを比較して、予測値が収束したか否かを判定する。判定の方法としては、例えば、今回の予測値と先の予測値との間の差分を成分ごとに求め、その絶対値があらかじめ設定しておいた成分ごとの閾値より小さいときは収束していると判定することができる。あるいは、今回の予測値と先の予測値との間のユークリッド距離が、あらかじめ設定しておいた閾値より小さいときは収束していると判定することもできる。ここで、収束していると判定したならば、S18の予測値再算出工程で今回求めた予測値を最終的な予測値として、S22の予測終了判定工程に進み、収束していないと判定したならば、S20の予測値の再計算判定工程に進む。
【0043】
S20の予測値の再計算判定工程は、予測値の収束方向と収束計算の回数を調べ、さらに収束計算を行なわせるか否かを判断する工程である。この工程により、予測値がある極値の周辺で発散してしまって収束しない場合に、無限回の計算ループに陥らないようにしている。例えば、この工程が1回目の場合は、無条件で予測値の再計算を行なうと判定し、2回目以降は、予測値と1回前の予測値との関係および1回前の予測値と2回前の予測値の関係を成分ごとに調べ、同じ方向にシフトしているときは予測値の再計算を行なうと判定する。異なる方向にシフトしているときはその回数をカウントしていき、カウント値があらかじめ設定しておいた閾値以下の場合は再計算を行なうと判定し、閾値を越えたときは、発散してしまって収束しないので再計算を行なわないと判定すればよい。ここで、予測値の再計算を行なうと判定したならば、S16の重み付けの係数の再算出工程へ進んで収束計算を繰り返し、再計算を行なわないと判定したならば、S21の予測値最終決定工程に進む。
【0044】
S21の予測値最終決定工程は、予測値がある極値の周辺で発散してしまって収束しない場合に、最もそれらしい値を最終的な予測値として決定する工程である。再計算を行なった予測値を記憶しておき、例えば、発散を始めてからの全予測値の平均をとったり、あるいは、予測値と1回目の予測値との差分が最も小さい予測値を選択するなど、最もそれらしい値を最終的な予測値として決定する。
【0045】
次のS22の予測終了判定工程は、全ての被予測値について予測値が算出が終了したか否かを判定する工程で、未終了の場合は、S13の重み付けの係数の初期値算出工程に戻って、次の被予測値について予測を繰り返し、終了の場合は、カラー画像入出力装置の色伝達特性予測処理は全て終了する。
【0046】
次に、本発明の色伝達特性予測方法の第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態では、(3)式の重み付けの係数Wijとして、上述の第1の実施の形態で用いた、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求めた規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijと、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を該行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化した求めた規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijのほかに、データ精度関数Ji を用いる例を示す。このデータ精度関数Ji は、入力信号の実データに対して上記2種類の重みW1ij とW2ij を使用して予測された出力予測値と出力信号の実データとの相互関係から計算される関数であり、ノイズを含む各実データ対の確からしさを表わすものである。
【0047】
ここで、被予測値または予測値の入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求めた規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijと、被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を該行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化した求めた規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijとは、上述の第1の実施の形態で示したものと同じであるので、入力信号の実データに対してこれらの2種類の重みを使用して予測された出力予測値と出力信号の実データとの相互関係から計算されるデータ精度関数Ji について、出力信号が3次元の場合を例にとり、以下に示す(16)式から(23)式を用いて説明する。
【0048】
【数6】
【0049】
(16)式から(18)式は、i番目の実データ対における出力予測値(yi1’,yi2’,yi3’)と出力実データ(yi1,yi2,yi3)の差分要素を示しており、(19)式から(21)式は、i番目の実データ対を除く実データ対における出力予測値と出力素データの差分要素を重み係数Vk で重み付け平均したものを示している。ここでの重みは、例えば、i番目の実データの入力信号とi番目以外の実データの入力信号の信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数とすればよい。
【0050】
次の(22)式は、(16)から(21)式までの差分要素を、差分要素ごとに対応させて求めるデータ精度関数を示している。ここに示したデータ精度関数Ji は、i番目の実データ対に関する出力予測値と出力実データとの差分方向とその差の大きさ△yi1,△yi2,△yi3、i番目の実データ対を除く実データ対の実データ対に関する出力予測値と出力実データとの重み付け平均の差分方向とその差の大きさ△yis1 ,△yis2 ,△yis3 から、両者が同じ方向なら差の大きさが大きくなるほど大きな値を、異なる方向ならば差の大きさが大きくなるほど小さな値をとるようにした、実データ対の確からしさを示す関数Ii1,Ii2,Ii3を用いていることが特徴である。
【0051】
次の(23)式は、2つの単調減少関数FijおよびGijを用いた重みW1ij ,W2ij とデータ精度関数Ji を用いた重みW3iとを合成関数Hで合成して重み付けの係数W123ij を作成することを示している。ここで、合成する方法は、その要素である2つの単調減少関数が各々のユークリッド距離の単調減少関数であるという特徴をくずさないような合成方法、および、データ精度関数が実データ対の確からしさを示すという特徴をくずさないような合成方法を用いる必要があり、例えば、和とか積のような合成方法を用いることができる。
【0052】
図2は、本発明の色伝達特性予測方法の第2の実施の形態における動作の一例を示すフローチャート、図3は、データ精度関数準備工程の詳細を示すフローチャートである。ここでは、データ精度関数を選択的に使用できるようにした例を示しており、データ精度関数を用いないことを選択した場合には、上述の第1の実施の形態と同じである。S11の入出力実データ対準備工程は、データ精度関数による重みを使用しない場合とまったく同様なので、説明は省略する。次にS23のデータ精度関数重み利用判定工程で、データ精度関数を用いた重み付けの係数を利用するか否かを判定する。利用しない場合にはS12へ進み、上述の第1の実施の形態で説明した処理を行なう。データ精度関数を用いた重み付けの係数を利用する場合には、S24のデータ精度関数重み準備工程へと進む。
【0053】
S24のデータ精度関数重み準備工程は図3に示されている。以下、図3を用いて説明する。S31の被予測値設定工程で、図2のS11の入出力実データ対準備工程で準備した全ての入力実データを被予測値として設定し、S32以下で入力実データに対する出力値を予測する準備をする。
【0054】
次に、S32の重み付けの係数の初期値決定工程で、(3)式で述べたn組の重み付けの係数Wijの初期値を算出する。初期値は、(8)式に示した被予測値入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijの重みW1ij を用いればよい。
【0055】
次に、S33の行列の成分算出工程で、(3)式で示した複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を最小にするという条件のもとに、最小2乗法を用いて、行列の各成分m11,m12,・・・をひとまず算出する。ここでの重み付けの係数Wijは、S32の重み付けの係数の初期値算出工程で決めた重み付けの係数Wijである。
【0056】
次に、S34の予測値算出工程で、(6)式を用いて、被予測値から予測値をひとまず算出する。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)であるので、(y1j,y2j,y3j)を、S33の行列の成分算出工程で求めた行列の各成分m11,m12,・・・を使って求める。
【0057】
次に、S35の重み付けの係数の再算出工程で、(8)式に示す被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijの重みW1ij と、(10)式に示す被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を該行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijの重みW2ij とを、(12)式に示す合成関数Hで合成した重みW12ijを、n組の素データ対に対して再度計算する。
【0058】
次に、S36の行列の成分再算出工程で、(3)式で示した複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を最小にするという条件のもとに、最小2乗法を用いて、行列の各成分m11,m12,・・・を再度算出する。
【0059】
次に、S37の予測値再算出工程で、(6)式を用いて被予測値から予測値を再度算出する。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)であるので、(y1j,y2j,y3j)を、S36の行列の成分算出工程で求めた行列の各成分m11,m12,・・・を使って求める。
【0060】
次に、S38の予測値の収束判定工程で、S37の予測値再度算出工程で求めた予測値と、S34の予測値算出工程または1回前のS37の予測値再算出工程で求めた予測値とを比較して、予測値が収束したか否かを判定する。判定の方法としては、例えば、今回の予測値と前回の予測値との間の差分を成分ごとに求め、その絶対値があらかじめ設定しておいた成分ごとの閾値より小さいときは収束していると判定することができる。あるいは、今回の予測値と前回の予測値との間のユークリッド距離が、あらかじめ設定しておいた閾値より小さいときは収束していると判定することもできる。ここで、収束していると判定したならば、S37の予測値再算出工程で求めた予測値を最終的な予測値として、S41の予測終了判定工程に進み、収束していないと判定したならば、S39の予測値の再計算判定工程に進む。
【0061】
S39の予測値の再計算判定工程は、予測値の収束方向と収束計算の回数を調べ、更に収束計算を行なわせるか否かを判定する工程である。この処理によって予測値がある極値の周辺で発散してしまって収束しない場合に、無限回の計算ループに陥らないようにしている。例えば、この工程が1回目の場合は、無条件で予測値の再計算を行なうと判定し、2回目以降は、今回の予測値と前回の予測値との関係および前回の予測値と前々回の予測値の関係を成分ごとに調べ、同じ方向にシフトしているときは予測値の再計算を行なうと判定する。異なる方向にシフトしているときはその回数をカウントしていき、カウント値があらかじめ設定しておいた閾値以下の場合は再計算を行なうと判定し、閾値を越えたときは、発散してしまって収束しないので再計算を行なわないと判定すればよい。ここで、予測値の再計算を行なうと判定したならば、S35の重み係数の再算出工程へ進んで収束計算を繰り返し、再計算を行なわないと判定したならば、S40の予測値最終決定工程に進む。
【0062】
S40の予測値最終決定工程は、予測値がある極値の周辺で発散してしまって収束しない場合に、最もそれらしい値を最終的な予測値として決定する工程である。再計算を行なった予測値を記憶しておき、例えば、始めてからの全予測値の平均をとったり、今回の予測値との差分が最も小さい予測値を選択するなどにより、最もそれらしい値を最終的な予測値として決定する。
【0063】
次のS41の予測終了判定工程は、全ての被予測値について予測値の算出が終了したか否かを判定する工程で、未終了の場合は、S32の重み係数の初期値算出工程に戻って次の被予測値について予測を繰り返し、終了の場合は、S42のデータ精度関数重み算出工程に進む。
【0064】
次のS42のデータ精度関数重み算出工程は、(16)式から(22)式に示したデータ精度関数Ji にしたがって、データ精度関数重みW3iを算出する。データ精度関数は、対象実データ対に関する出力予測値と出力実データとの差分方向とその差の大きさ、対象実データ対を除く実データ対の実データ対に関する出力予測値と出力実データとの重み付け平均の差分方向とその差の大きさから、両者が同じ方向なら差の大きさが大きくなるほど大きな値を、異なる方向ならば差の大きさが大きくなるほど小さな値をとるようにした、実データ対の確からしさを示す関数である。
【0065】
次のS43のデータ精度関数重み算出終了判定工程は、全ての入出力実データ対についてデータ精度関数による重み算出が終了したか否かを判定する工程で、未終了の場合は、S42のデータ精度関数重み算出工程に戻って、次の入出力実データ対についてデータ精度関数による重み算出を繰り返す。終了の場合は、図2のS12の被予測値準備工程に進む。
【0066】
図2のS12からS22までの予測工程は、データ精度関数重みを使う場合も、使わない場合もほぼ同様であるので、異なる部分のみ説明を加える。S13の重み付けの係数の初期値算出工程で、(3)式で示したn組の重み係数Wijの初期値を算出する。この場合の初期値は、例えば、被予測値が入力信号の場合は、(8)式または(9)式に示した被予測値入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijの重みW1ij と、データ精度関数重みW3iを以下に示す(24)式で合成したものを用いる。被予測値が出力信号の場合は、入力が3次元の場合は、(13)式に示した被予測値出力信号と出力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した出力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijの重みW2ij'と、データ精度関数重みW3iとを以下に示す(25)式で合成したものを用いる。入力が4次元の場合は、(13)式の重みW2ij'と、(14)式に示した入力空間の1つの差分成分だけを規格化した入力信号空間における距離の単調減少関数Fijによる重みW1ij'と、データ精度関数重みW3iを、以下に示す(26)式で合成した重みW123ij'を使えばよい。
【0067】
【数7】
【0068】
S16の重み付けの係数の再算出工程で、(8)式または(9)式に示す被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijによる重みW1ij と、(10)式または(11)式に示す被予測値または予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を該行列の成分を用いて感度を加味した出力空間の成分に変換した後に規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Gijによる重みW2ij と、(22)式に示したデータ精度関数Ji による重みW3iを、(23)式の合成関数Hで合成し、n組の実データ対に対して重みW123ij を再度計算する。
【0069】
以上のS13とS16以外は、データ精度関数重みを使う場合も、使わない場合も全く同様であり、S12からS22までの予測工程を経ることにより、データ精度関数重みを使う場合の予測が実施できる。
【0070】
次に、本発明の色伝達特性予測方法の第3の実施の形態について説明する。この第3の実施の形態では、(3)式の重み付けの係数Wijとして、第1の実施の形態で用いた被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijのみを用いる例を示す。
【0071】
ここで、被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各成分ごとのを定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijとは、上述の第1の実施の形態で示した(8)式または(9)式と同じである。被予測値である任意の出力信号に対応する予測値である入力信号を求める場合は、単調減少関数Fijが予測値である入力信号に依存するので、色伝達特性予測方法は、(3)式の重み付けの係数Wijとして、(12)式のW12ijを用いる代わりに、(8)式または(9)式に示したWijを用いる以外は、図1に示す方法と全く同じとなる。そのため、ここでは被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合について説明する。
【0072】
図4は、本発明の色伝達特性予測方法の第3の実施の形態において、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合における動作の一例を示すフローチャートである。最初は、S51の入出力実データ対準備工程であるが、これは、図1に示すS11の入出力実データ対準備工程と全く同様なので、説明は省略する。
【0073】
次に、S52の被予測値準備工程では、被予測値が入力信号の場合なので、上述の(6)式、(7)式で述べた被予測値の入力信号(x1j,x2j,x3j)または入力信号(x1j,x2j,x3j,x4j)を必要な数だけ用意する。
【0074】
次に、S53の重み付け係数の算出工程で、(3)式で述べたn組の重み付けの係数Wijを算出する。被予測値が入力信号の場合であり、重み付けの係数としては、(8)式または(9)式に示した被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijのみを求めればよく、一意的に求めることができる。
【0075】
次に、S54の行列の成分算出工程で、(3)式で示した複数の入力信号の実データから行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力信号の実データの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を最小にするという条件のもとに、最小2乗法という公知の方法を用いて、行列の各成分m11,m12,・・・を算出する。
【0076】
次に、S55の予測値算出工程で、(6)式または(7)式を用いて、被予測値から予測値を算出する。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)または入力信号(x1j,x2j,x3j,x4j)の場合であるので、出力信号(y1j,y2j,y3j)を、S54の行列の成分算出工程で求めた行列の各成分m11,m12,・・・を使って求める。
【0077】
次のS56の予測終了判定工程は、全ての被予測値について予測値が算出が終了したか否かを判定する工程で、未終了の場合は、S53の重み付け係数の算出工程に戻って、次の被予測値について予測を繰り返す。終了の場合は、単調減少関数Fijのみを使用する場合のカラー画像入出力装置の色伝達特性予測は、全て終了となる。
【0078】
以上の説明でわかるように、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合で、単調減少関数Fijのみを使用する場合は、重み付けの係数は一意的に定めることができるので、逐次近似法を用いることなく予測を行なうことが可能である。
【0079】
次に、本発明の色伝達特性予測方法の第4の実施の形態について説明する。この第4の実施の形態では、(3)式の重み付けの係数Wijとして、第1の実施の形態で用いた被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijと、第2の実施の形態で用いたデータ精度関数Ji を用いる例を示す。
【0080】
ここで、被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijとは、上述の第1の実施の形態で示した(8)式または(9)式と同じであり、データ精度関数Ji とは、上述の第2の実施の形態で示した(16)式〜(22)式と同じである。
【0081】
被予測値である任意の出力信号に対応する予測値である入力信号を求める場合は、単調減少関数Fijが予測値である入力信号に依存するので、色伝達特性予測方法は、(3)式の重み付けの係数Wijとして(12)式のW12ijを用いる代わりに(8)式または(9)式に示したW1ij を用いる以外は、図2または図3に示した方法と全く同じとなる。そのため、ここでは被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合について説明する。
【0082】
図5は、本発明の色伝達特性予測方法の第4の実施の形態において、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合における動作の一例を示すフローチャート、図6は、同じくデータ精度関数準備工程の詳細を示すフローチャートである。ここでは、データ精度関数を選択的に使用できるようにした例を示しており、データ精度関数を用いないことを選択した場合には、上述の第3の実施の形態と全く同じとなる。最初はS61の入出力実データ対準備工程であるが、これは図1におけるS11の入出力実データ対準備工程と全く同様なので、説明は省略する。
【0083】
次にS62のデータ精度関数重み利用判定工程で、データ精度関数を用いた重み付け係数を利用するか否かを判定する。利用しない場合はS64に進み、上述の第3の実施の形態で説明した処理を行なう。データ精度関数を用いた重み付けの係数を利用する場合には、S63のデータ精度関数重み準備工程へと進む。S63のデータ精度関数重み準備工程は、図6に示されているので、以下図6を用いて説明する。
【0084】
S71の被予測値設定工程で、図5のS61の入出力実データ対準備工程で準備した全ての入出力実データを被予測値として設定し、S72以下で入出力実データに対する出力値を予測するための準備を行なう。
【0085】
次にS72の重み付けの係数の決定工程で、(3)式で述べたn組の重み付けの係数Wijを算出する。被予測値が入力信号の場合であり、重み付けの係数としては、(8)式または(9)式に示した被予測値入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数Fijのみを求めればよく、一意的に定めることができる。
【0086】
次にS73の行列の成分算出工程で、(3)式で示した複数の入力信号の実データから行列を用いて出力予測値とそれに対応する複数の出力信号の実データの重み付けされたユークリッド距離の2乗和Ej を最小にするという条件のもとに、最小2乗法という公知の方法を用いて、行列の成分m11,m12,・・・を算出する。ここでの重み付けの係数は、S72の重み付けの係数の算出工程で決めた重み付けの係数である。
【0087】
次にS74の予測値算出工程で、(6)式または(7)式を用いて、被予測値から予測値を算出する。被予測値が入力信号(x1j,x2j,x3j)であるので、出力信号(y1j,y2j,y3j)を、S73の行列の成分算出工程で求めた行列の各成分m11,m12,・・・を使って求める。
【0088】
次のS75の予測終了判定工程は、全ての被予測値について予測値が算出が終了したか否かを判定する工程である。未終了の場合は、S72の重み付けの係数の算出工程に戻って、次の被予測値について予測を繰り返す。終了の場合はS76のデータ精度関数重み算出工程に進む。
【0089】
S76のデータ精度関数重み算出工程は、(16)式から(19)式に示したデータ精度関数に従って、データ精度関数重みを算出する。データ精度関数は、対象実データ対に関する出力予測値と出力信号の実データとの差分方向とその差の大きさ、対象実データ対を除く実データ対の実データ対に関する出力予測値と出力信号の実データとの重み付け平均の差分方向とその差の大きさから、両者が同じ方向なら差の大きさが大きくなるほど大きな値を、異なる方向ならば差の大きさが大きくなればなるほど小さな値とするようにした、実データ対の確からしさを示す関数である。
【0090】
次のS77のデータ精度関数重み算出終了工程は、すべての入出力実データ対についてデータ精度関数による重み算出が終了したか否かを判定する工程である。未終了の場合は、S76のデータ精度関数重み算出工程に戻って、次の入出力実データ対についてデータ精度関数重みの算出を繰り返し、終了の場合は、図5におけるS64の被予測値準備工程に進む。
【0091】
図5のS64からS68までの予測工程は、データ精度関数重みを使う場合も、使わない場合もほぼ同様であって、S64のみ異なるので、S64のみ説明を加える。
【0092】
S64の重み係数の算出工程では、(3)式で述べたn組の重み付けの係数Wijを算出する。この場合は、被予測値が入力信号なので、(8)式または(9)式に示した被予測値である入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数の重みとデータ精度関数重みを(24)式で合成したものを用いればよく、一意的に定めることができる。
【0093】
以上、図5のS64以外は、データ精度関数重みを使う場合も使わない場合も全く同様であり、S61からS68までの予測工程を経ることにより、データ精度関数重みを使った予測を行なうことができる。以上の説明でわかるように、データ精度関数重みを使う場合であっても、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合で、単調減少関数Fijのみを使用する場合は、重み付けの係数は一意的に定めることができるので、逐次近似法を用いることなく予測を行なうことが可能である。
【0094】
以上、本発明の実施の4つの形態を説明したが、この他にも、図6に示したデータ精度関数と図2に示した色伝達特性予測方法の組み合わせも可能であるが、容易に類推できる組み合わせであるので、説明は省略する。
【0095】
【実施例】
図7は、本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第1の例を示す構成図である。図中、101はカラースキャナ、102〜104は1次元テーブル、105はマトリックスマスキング部である。ここではカラー画像入力装置としてカラースキャナ101を用い、本発明の色伝達特性予測方法を用いて色処理の係数を決定する方法とその処理の精度を計算上で確認する方法について説明する。
【0096】
図7に示すシステムでは、カラースキャナ101は与えられたカラー画像を読み取ってRGB色空間の信号を出力する。カラースキャナ101から出力されるRGB色空間の信号は、それぞれの信号成分ごとに1次元テーブル102〜104において色調整が行なわれる。1次元テーブル102〜104の目的は、通常は反射率に比例するRGB色空間のデータを、次のマトリックスマスキング部105でL* a* b* 色空間のデータに変換するときに変換精度が良くなるように、反射率でない別の単位、例えば、濃度とか明度などの単位のデータR’G’B’に変換を施すこと、および、カラースキャナ101のRGBの各センサの感度の違いを補正するため、カラースキャナ101にグレイが入力されたときにR’,G’,B’が同じ値になるように変換を施すことである。1次元テーブル102〜104でR,G,B各成分ごとの変換を行なった後、マトリックスマスキング部105で装置に依存しない均等色空間L*'a*'b*'に変換して出力する。このとき、カラースキャナ101で読み取らせたカラー画像を測色器等によって測定した均等色空間L* a* b* の実データと、マトリックスマスキング部105の出力のL*'a*'b*'色空間のデータを一致させる。これによって、カラースキャナ101に与えられたカラー画像を忠実に再現できるカラー画像データが入力されることになる。
【0097】
図8は、本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第1の例における色処理係数決定および確認処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、色伝達特性の予測の方法として、データ精度関数を使用しない第1の実施の形態で説明した予測方法を用いるものとする。
【0098】
まず、S81の入出力実データ対準備工程で、あらかじめ色を測定して均等色空間L* a* b* におけるデータを得ておいた種々のカラーパッチをカラースキャナ101に読み取らせ、カラースキャナ101から出力されるRGB色空間における信号を計測する。これにより、入力信号の実データとして均等色空間L* a* b* のデータと、カラースキャナ101の出力のRGB色空間における実データとの実データ対を用意できる。種々のカラーパッチの色は、入力の色空間内にまんべんなく分布していることが望ましく、その数は望む予測の精度に依存するが、通常は100から1000位となる。
【0099】
カラー画像の読み込みのとき、出力信号には、カラースキャナの面内の不均一性や、時間的な不安定特性等の原因によるノイズが乗っているため、これらのノイズが色特性予測方法の持つスムージング機能で除去されやすいように工夫するとよい。また、カラーパッチの読み込み時にその配列をランダムにして面内の不均一性の影響がRGB色空間のデータにランダムに乗るようにしたり、何回ものスキャンに分割してRGB色空間のデータを採取することにより時間的な不安定特性の影響もRGB値にランダムに乗るようにするとよい。さらに、カラーパッチ自体の不均一性も考慮して、色の測定時のアパーチャの大きさを小さくしすぎないようにしたり、RGB色空間のデータを計測した後、アパーチャの大きさに対応した領域の平均を求める等の工夫をするとさらによい。
【0100】
次に、S82の重み付け関数形状/パラメータ設定工程で、色伝達特性予測時の重み付けの関数の形状とそのパラメータを設定する。例えば、(8),(10),(12)式に相当する重み付けの関数を、以下に示す(27)〜(29)式として設定する。ここで、(Lj ,aj ,bj )が被予測値または予測値の入力信号、(Li ,ai ,bi )が入力信号の実データ、(L0 ,a0 ,b0 )が入力信号空間の規格化の定数、(R0 ,G0 ,B0 )が出力信号空間の規格化の定数、pが関数形状を決める定数である。
【0101】
【数8】
【0102】
重み付けのパラメータとは、ここでは(L0 ,a0 ,b0 )、(R0 ,G0 ,B0 )、pの3種類の定数を意味しており、スムージング機能の程度を調整するものである。式の形状で分かるように、(L0 ,a0 ,b0 )と(R0 ,G0 ,B0 )は、値が大きくなるほどスムージング機能は強くなり、pは値が大きくなるほどスムージング機能は弱くなるパラメータである。これらのパラメータは、予測を実行する前に、入出力実データ対のノイズの程度により決定される必要がある。一般的には、ノイズが大きければスムージング機能を強くし、ノイズが小さければスムージング機能を弱くすればよい。しかし、通常はノイズの程度を判定するデータは入出力実データ対しかなく、真値がわかっているわけでないので、ある程度は経験的に設定することになる。
【0103】
例えば、あるパラメータの組を仮定して入力実データに対する出力を予測し、予測値と出力実データとの差分を見て、適当なあるパラメータの組を選択する方法がある。この場合、予測値と出力実データとの差分は、予想方法そのものの誤差と、ノイズによる誤差が合成されたものとなっており、この差分と最適パラメータの組との関係をあらかじめシミュレーション等によって求めておけばよい。
【0104】
別の例としては、被予測値としてL* a* b* 色空間のグラデーションデータ、例えば、a* =b* =0でL* が少しづつ変わるような被予測値を準備して、あるパラメータの組を仮定して、RGB色空間のデータを予測してみる。そして、L* に対する予測結果のRGB色空間のデータをグラフ化してみて、その形状から、仮定したパラメータの組でよいかどうかを判定する。例えば、その結果が実データ対に追従しすぎていて不自然な極値が多いような場合は、スムージング機能が弱すぎるので、より強いスムージングを与えるようなパラメータの組を再度仮定し、同様に判定を行なう。これを何度か繰り返すことにより、最適なパラメータの組を設定することもできる。
【0105】
次に、S83の被予測値準備工程で、色処理の係数を決めるための複数の被予測値を設定する。この被予測値の設定は、使用する色処理アルコリズムとその係数の決定方法に依存するが、ここでは1次元テーブル102〜104の係数を先に決定し、次にマトリックスマスキング部105の係数を決定するものとする。この場合は、1次元テーブル102〜104の係数を決めるために、グレイスケール、すなわち、a* =b* =0でL* が0から100まで均等に変化している被予測値を設定する。そのステップの幅は、例えば8ビットのテーブルを使う場合は、100/256程度にしておけば問題はない。また、マトリックスマスキング部105の係数を決めるためには、色空間で均等に色差を小さくしたいという前提ならばL* a* b* の格子点データ、例えば、10間隔の格子点データを被予測値として設定する。人の顔色等、特に色差を小さくしたいという色があれば、その色を追加してもよい。
【0106】
次に、S84の予測値算出工程で、S83の被予測値準備工程で設定した複数の被予測値について予測を実行する。その方法は、図1で説明した方法と全く同一であるので省略する。これにより、被予測値であるグレイスケールとL* a* b* の格子点データに対するRGB色空間における予測値が得られる。
【0107】
次に、S85の色処理係数決定用データ選出工程で、S84までの工程で得た複数の被予測値と予測値のデータ対から、色処理の係数を決めるために必要なデータ対を選出する。選出の基準は、RGB色空間の予測値が、このシステムの色処理で扱う範囲に入っているか否かである。すなわち、通常RGB色空間のデータは反射率という単位で表わせるが、グレイスケールとL* a* b* の格子点データのRGB色空間の予測値は、0未満、または100%をこえるデータが含まれている可能性がある。それらのデータは色処理係数決定用データとしては不必要なので、それらのデータを除去して、RGB色空間の予測値が0から100%の範囲に入っているデータ対を選出すればよい。
【0108】
次に、S86の色処理係数決定工程で、実際の色処理のための係数を決定する。まず、1次元テーブル102〜104の係数を、グレイスケールのデータを使って決定する。ここでは、1次元テーブル102〜104は、反射率に比例するRGB色空間のデータを、明度を単位とするR’G’B’色空間のデータに変換するものとする。R,G,Bの各信号成分に対応する1次元テーブル102〜104の係数は、横軸にRまたはGまたはBの予測値の値を、縦軸にL* の値をとってグレースケールのデータ対をプロットし、プロット間は折れ線で近似することでRGB色空間からR’G’B’色空間への変換関数を定め、この変換関数を量子化することにより決定することができる。
【0109】
次に、マトリックスマスキング部105の係数をL* a* b* の格子点データを使って決定する。L* a* b* の格子点データに対応するRGB色空間の予測値を、先に決めた1次元テーブル102〜104を用いてR’G’B’色空間のデータに変換し、そのR’G’B’色空間のデータをマトリックスマスキング部105の入力とし、入力されるカラー画像のL* a* b* 色空間のデータを出力の目標として、最小2乗法を使って再帰的に計算することにより、マトリックスマスキング部105の係数を決定することができる。
【0110】
最後に、S87の色処理確認工程で、色処理の精度を確認する。色処理の精度を確認するとは、確認したい色のL* a* b* 色空間のデータに対し、色処理後の出力であるL*'a*'b*'色空間のデータがどうなっているかを調べることを意味している。したがって、確認したい任意の色L* a* b* を被予測値としてカラースキャナ101の出力であるRGB色空間のデータを予測し、それを1次元テーブル102〜104を用いてR’G’B’色空間のデータに変換し、更にマトリックスマスキング部105によってL*'a*'b*'色空間のデータに変換し、L* a* b* 色空間におけるデータとの色差を求めればよい。同様のことを、任意のRGB色空間のデータを出発点として確認することが可能である。このときは、任意のRGB色空間のデータを被予測値としてカラースキャナ101に与えられるカラー画像のL* a* b* 色空間のデータを予測し、RGB色空間のデータを1次元テーブル102〜104とマトリックスキング部105を用いてL*'a*'b*'に変換したものとの色差を求めればよい。
【0111】
図9は、本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第2の例を示す構成図である。図中、111は3次元テーブル、112〜115は1次元テーブル、116はカラープリンターである。ここではカラー画像出力装置としてカラープリンター116を用い、本発明の色伝達特性予測方法を用いて色処理の係数を決定する方法とその処理の精度を計算上で確認する方法について説明する。
【0112】
図9に示すシステムでは、記録すべきカラー画像のデータがL*'a*'b*'色空間のデータとして3次元テーブル111に与えられる。3次元テーブル111は、L*'a*'b*'色空間のデータをY’M’C’K’の4次元の色空間のデータに変換する。その際に、テーブルにない色については、補間処理によって求める。このとき、入力されるL*'a*'b*'色空間のデータと、カラープリンター116によって記録されたカラー画像のL* a* b* 色空間におけるデータとがなるべく一致するように変換する。
【0113】
3次元テーブル111から出力されるY’M’C’K’色空間のデータは、それぞれの成分ごとに1次元テーブル112〜115に入力される。各1次元テーブル112〜115は、各成分の調整を行なってYMCK色空間のデータとしてカラープリンター116へ出力する。この1次元テーブル112〜115の目的は、3次元テーブル111では対処できないような単色スケールの局所的非線形性を補正することである。
【0114】
カラープリンター116は、各1次元テーブル112〜115から出力されるYMCK色空間のデータを受け取り、カラー画像を被記録媒体に記録する。このとき、記録されたカラー画像のL* a* b* 色空間における値と、3次元テーブル111に入力されたカラー画像データのL*'a*'b*'色空間における値とが一致するように3次元テーブル111の係数および1次元テーブル112を構成することによって、与えられたカラー画像データを忠実に再現したカラー画像を得ることができる。
【0115】
図10は、本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第2の例における色処理係数決定および確認処理の一例を示すフローチャートである。ここでは、予測の方法として上述の第2の実施の形態で説明したように、データ精度関数を使用した予測方法を用いるものとする。
【0116】
まず、S91の入出力実データ対準備工程で、YMCK色空間のデータの種々の組合せでカラーパッチを出力し、その色を測定することにより、入力側のYMCK色空間のデータと出力側のL* a* b* 色空間のデータとの実データ対を用意する。種々のカラーパッチの色は、上述のカラー画像入力装置の場合と同様に、入力側の色空間内にまんべんなく分布していることが望ましく、例えば、YMCKの10%ごとの全ての組合せでカラーパッチを出力する等が理想的である。しかし、数が大きくなりすぎるので、直交表を用いて間引いたり、YMCK色空間のデータが変化しても出力側のL* a* b* 色空間のデータがあまり変化しないような領域を間引いたりすることにより、数100から数1000くらいのカラーパッチを出力するのが実用的である。逆に、カラープリンター116の色伝達特性が急激に変化しているような部分は、より細かい間隔でカラーパッチを出力する場合もある。また、カラーパッチの出力の際に、出力信号には、プリンターの面内の不均一性や、時間的な不安定性の原因によるノイズが乗っているため、これらのノイズが色特性予測方法の持つスムージング機能で除去されやすいように工夫したり、カラーパッチ自体の不均一性に対処する工夫も設けるとよい。それらの方法は、上述のカラー画像入力装置の場合と同様なので省略する。
【0117】
次にS92の重み付け関数形状/パラメータ設定工程で、色伝達特性予測時の重み付けの関数の形状とそのパラメータを設定する。例えば、(9),(11),(16)〜(23)式に相当する重み付け関数を、以下に示す(30)〜(39)式のように設定する。ここで、(Yj ,Mj ,Cj ,Kj )が被予測値または予測値の入力信号、(Yi ,Mi ,Ci ,Ki )が入力信号の実データ、(Y0 ,M0 ,C0 ,K0 )が入力信号空間の規格化の定数、(Lj ,aj ,bj )が被予測値または予測値の出力信号、(Li ,ai ,bi )が出力信号の実データ、(L0 ,a0 ,b0 )が出力信号空間の規格化の定数、pが関数形状を決める定数である。
【0118】
【数9】
【数10】
【0119】
ここで重み付けのパラメータとは、(Y0 ,M0 ,C0 ,K0 )、(L0 ,a0 ,b0 )、pの3種類の定数を意味しており、スムージング機能の程度を調整するものである。式の形状で分かるように、(Y0 ,M0 ,C0 ,K0 )と(L0 ,a0 ,b0 )は、値が大きくなるほどスムージング機能は強くなり、pは値が大きくなるほどスムージング機能は弱くなるパラメータである。これらのパラメータは、予測を実行する前に、入出力実データ対のノイズの程度により決定されるが、その方法は上述のカラー画像入力装置の場合と同様なので省略する。
【0120】
次に、S93のデータ精度関数重み準備工程で、(16)〜(23)式に相当する重み、すなわち(32)〜(39)式から重みW123ij を計算する。その方法は、図3においてすでに説明した方法と全く同一であるのでここでは省略する。この工程により、全ての入出力の実データ対に対するデータ精度関数重みが決定される。
【0121】
次に、S94の被予測値準備工程で、色処理の係数を決めるための複数の被予測値を設定する。この被予測値の設定は、使用する色処理アルコリズムとその係数の決定方法に依存するが、ここでは、1次元テーブル112〜115の係数を先に決定し、次に、3次元ルックアップテーブル111の係数を決定するものとする。この場合は、1次元テーブル112〜115の係数を決めるために、単色スケール、すなわち、M=C=K=0%でYが0%から100%まで均等に変化しているもの、Y=C=K=0%でMが0%から100%まで均等に変化しているもの、Y=M=K=0%でCが0%から100%まで均等に変化しているもの、Y=M=C=0%でKが0%から100%まで均等に変化しているもの、を被予測値として設定する。そのステップの幅は、例えば8ビットのテーブルを使う場合は、100/256程度にしておけば問題はない。
【0122】
また、3次元テーブル111の係数を決めるためには、そのテーブルの格子点に対応するL* a* b* 色空間のデータと、その色に対応するKの%値を被予測値として設定する。このKの%値の設定方法は、最大墨量を用いる方法等、種々の方法が考案されており、本発明の予測方法を用いてこれを決定することも可能であるが、ここでは省略する。
【0123】
次に、S95の予測値算出工程で、S94の被予測値準備工程で設定した複数の被予測値について予測を実行する。その方法は、図2で説明した方法と全く同一であるので省略するが、被予測値である単色スケールに対するL* a* b* 色空間の予測値と、格子点のL* a* b* 色空間のデータとKの%データに対するYMC色空間の予測値が得られる。
【0124】
次に、S96の色処理係数決定工程で、実際の色処理装置の係数を決定する。まず、1次元テーブル112〜115の係数を、単色スケールのデータを使って決定する。Y,M,C,Kの各成分に対応する1次元テーブル112〜115の係数は、横軸に各単色スケールの予測値であるL* a* b* 空間の値から算出した0%の色度に対する色差値を、縦軸にYまたはMまたはCまたはKの%値をとって単色スケールのデータ対をプロットし、プロット間は折れ線で近似することによりY’M’C’K’色空間からYMCK色空間への変換関数を定め、この変換関数を量子化することにより決定することができる。
【0125】
次に、3次元テーブル111の係数を、3次元テーブル111の格子点に対応するL* a* b* 色空間のデータを使って決定する。そのためには、3次元テーブル111の格子点に対応するデータ、予測によって求めたYMC色空間の%値とすでに定めてあるKの%値とを、先に決めた1次元テーブル112〜115を逆に解くことによってY’M’C’K’色空間のデータに変換し、その値を対応する格子点の係数とすればよい。
【0126】
ただし、この方法は3次元テーブル111の格子点のL*'a*'b*'色空間のデータが、カラープリンター116が再現できる色域内の場合に使える基本的な方法である。このシステムにその色域外のデータが入力される可能性がある場合には、この方法を拡張する必要がある。例えば、1次元テーブル112〜115を0〜100%の間で作成するのではなく、外挿を使って3次元テーブル111の格子点のL*'a*'b*'の値を全てカバーする領域で仮に作成しておき、これを使って同様の決め方をすると、Y’M’C’K’色空間のデータの一部が0%未満または100%を越えるもの、すなわち、色域外を含めたY’M’C’K’色空間のデータが求まる。その後に、この値を0〜100%に収める方法、通常Gamut圧縮と呼ばれる手法等と組み合わせて、最終的な格子点の係数とすることができるが、詳細は省略する。
【0127】
最後にS97の色処理係数確認工程で、色処理の精度を確認する。色処理の精度を確認するとは、確認したい色処理入力のL*'a*'b*'色空間のデータに対し、カラープリンター116から出力されるL* a* b* 色空間のデータがどうなっているかを調べることを意味している。したがって、確認したい任意のL*'a*'b*'色空間のデータを3次元テーブル111で変換してY’M’C’K’色空間のデータを求め、その値を1次元テーブル112〜115を用いてYMCK色空間のデータに変換し、YMCK色空間のデータを被予測値としてカラープリンター116から出力されるL* a* b* 色空間のデータを予測し、入力されたL*'a*'b*'色空間のデータとの色差を求めればよい。
【0128】
次に、本発明の第3の実施の形態を適用した実施例として、被予測値が1次元データの場合について、再び図7,図8を用いて説明する。上述のように、図7はカラースキャナ入力装置の場合の色処理を示しており、1次元テーブル102〜104と、マトリックスマスキング部105の係数を決める例を先に説明した。ここでは、すでにこれらの係数は一度決められており、カラースキャナ入力装置の光源やCCDの時間的変動などにより色伝達特性が変化し、1次元テーブル102〜104の係数のみを再度簡易的に決め直す場合を想定して説明する。
【0129】
図8は、データ精度関数を用いない場合の色処理係数決定方法を示しており、ここでの手順も、データ精度関数を用いない場合を想定し、図8の手順に従って説明する。まずS81の入出力実データ対準備工程で、あらかじめ明度を測定してあるグレースケールパッチを読み込ませて出力のRGB色空間における信号を計測し、入力信号の実データとしての明度L* と出力信号の実データとしてのRGB色空間におけるデータとの実データ対を用意する。グレースケールの間隔は、所望する予測の精度に依存するが、通常は10から数10くらいが適当であり、マトリックスマスキング部105の係数も決める場合に比べると、大幅にその数を減らすことができる。読み込みのとき、出力信号には、カラースキャナの面内の不均一性、時間的な不安定性等の原因によるノイズが乗っているため、これらのノイズが色特性予測方法の持つスムージング機能で除去されやすいようにする工夫や、グレースケールパッチ自体の不均一性も考慮した工夫などは、上述の実施例と同様である。
【0130】
次にS82の重み付け関数形状/パラメータ設定工程で、色伝達特性予測時の重み付けの関数形状とそのパラメータを設定する。この場合は、入力が明度であるので、(8)式に相当する重み付け関数を、(40)式のように設定すればよい。ここで、(Lj)が被予測値の入力信号、(Li)が入力信号の実データ、(L0 )が入力信号空間の規格化の定数、pが関数形状を決める定数である。
【数11】
【0131】
重み付けのパラメータとは、(L0 )、pの2種類の定数を意味しており、スムージング機能の程度を調整するものであることは、上述したとおりである。この場合は、1次元テーブル102〜104とマトリックスマスキング部105の係数は一度決定してあることを想定しているので、これら重み付けのパラメータは、そのとき使用したパラメータを参考にして決めればよい。
【0132】
次に、S83の被予測値基準工程では、1次元テーブル102〜104の係数を決めるための複数の被予測値を設定する。この場合は、グレースケール、すなわち、明度L* が0から100まで均等に変化しているものを被予測値と設定する。そのステップの幅は、例えば8ビットのテーブルを使う場合は、100/256程度にしておけば問題はない。
【0133】
次に、S84の予測値算出工程では、前の工程で設定した複数の被予測値について予測を実行する。その方法は、図4において説明したS51からS56までの処理と、入力の次元数が異なる点を除けば全くの同一である。そのためここでは説明を省略する。この予測値算出工程で被予測値であるグレイスケールに対するRGB色空間における予測値が得られる。
【0134】
次に、S85の色処理係数決定用データ選出工程では、前の工程までで得た複数の被予測値と予測値のデータ対から、色処理の係数を決めるために必要なデータ対を選出する。選出の基準は、RGB色空間における予測値が、色処理装置で扱う範囲に入っているか否かである。すなわち、通常、RGB色空間のデータは反射率という単位で表わせるが、グレイスケールのRGB色空間における予測値は、0未満、または100%を超えるデータが含まれている可能性がある。それらのデータは色処理係数決定用データとしては不必要なので、それらのデータをカットして、RGB色空間における予測値が0から100%の範囲に入っているデータ対を選出すればよい。
【0135】
次に、S86の色処理係数決定工程で、実際の1次元テーブルの係数を決定する。1次元テーブル102〜104の第1の目的は、通常は反射率に比例するRGB色空間のデータを、次のマトリックスマスキング部105でL* a* b* 色空間のデータに変換するときに変換精度が良くなるように、反射率ではない別の単位、例えば、濃度や明度などを単位とするR’G’B’色空間のデータに変換を施すことである。また、第2の目的は、スキャナのRGBセンサの感度の違いを補正するため、スキャナにグレイが入力されたときにR’G’B’色空間のデータが同じ値になるように変換を施すことである。ここでは、明度の単位に変換する場合を想定する。R,G,B各々に対応する1次元テーブル102〜104の係数は、横軸にRまたはGまたはBの予測値の値を、縦軸に明度L* の値をとってグレイスケールのデータ対をプロットし、プロット間は折れ線で近似することでRGB色空間からR’G’B’色空間への変換関数を定め、この変換関数を量子化することにより決定することができる。
【0136】
最後に、S87の色処理係数確認工程で色処理の精度を確認する。色処理の確認するとは、確認したいグレイスケールのスキャナ入力の明度L* に対し、色処理後のL* a* b* 色空間の出力データがどうなっているかを調べることを意味している。従って、確認したい任意のグレイスケールL* を被予測値としてスキャナのRGB色空間の出力データを予測し、それを1次元テーブル102〜104を用いてR’G’B’色空間のデータに変換し、さらにマトリックスマスキング部105を用いてL* a* b* 色空間のデータに変換し、明度L* との差を求めればよい。
【0137】
以上のように、1次元テーブルの係数のみを再度決め直すような場合にも、本発明の色伝達特性予測方法を用いて1次元のデータ処理を行なえば、少ない実データ対を用いて実現することが可能である。
【0138】
この実施例ではデータ精度関数を用いない場合について説明したが、もちろんデータ精度関数を用い、図10に示すような処理過程によって1次元テーブルの係数の決め直しを行なうこともできる。
【0139】
なお、ここでは入力信号を被予測値、出力信号を予測値として(40)式で示した重み付けの係数W1ij のみを用いた予測処理を行なったが、逆に出力信号を被予測値、入力信号を被予測値とし、あるいは出力信号と入力信号の一部を被予測値、入力信号の残りの一部を予測値として予測処理を行なう場合、例えば図9に示すカラープリンターのような場合においても、前述の逐次近似法を使用すれば重み付けの係数としてW1ij のみを用いて予測処理を行なうこともできる。もちろん、それに加えてデータ精度関数を用いてもよい。
【0140】
このように、本発明の色処理係数決定方法は、カラー画像入力装置やカラー画像出力装置に関する色処理の係数を決定する場合や、決定した色処理の係数の精度を確認する場合等、様々な場合に応用可能である。
【0141】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、カラー画像入出力装置の入出力の実データを統計的に処理して、色伝達特性の予測、すなわち、任意の入力信号に対する出力信号の予測、および、任意の出力信号に対する入力信号の予測を行なうことができ、または、任意の出力信号と入力信号の一部から入力信号の残りの一部を予測することができる。これにより、カラー画像入出力装置の種類に依存しないで色伝達特性を予測することができ、装置の物理特性を調べてモデル化する手間を省き、どのようなカラー画像入出力装置に対しても、重み付けのパラメータを決めるだけで容易に予測を行なうことができる。また、使用する入出力の実データ対にノイズが含まれていても、そのノイズの程度によって重み付けのパラメータを決定することにより高い予測精度を得ることができ、カラー画像入出力装置の色処理の係数を正確に決めることができる。さらに、予測方法が簡単であるので、高速に予測を行なうことができ、カラー画像入出力装置の色処理の係数の決定を迅速に行なうことができるなど、種々の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の色伝達特性予測方法の第1の実施の形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図2】 本発明の色伝達特性予測方法の第2の実施の形態における動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】 本発明の色伝達特性予測方法の第2の実施の形態におけるデータ精度関数準備工程の詳細を示すフローチャートである。
【図4】 本発明の色伝達特性予測方法の第3の実施の形態において、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合における動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】 本発明の色伝達特性予測方法の第4の実施の形態において、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める場合における動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】 本発明の色伝達特性予測方法の第4の実施の形態におけるデータ精度関数準備工程の詳細を示すフローチャートである。
【図7】 本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第1の例を示す構成図である。
【図8】 本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第1の例における色処理係数決定および確認処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】 本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第2の例を示す構成図である。
【図10】 本発明の色伝達特性予測方法を適用するシステムの第2の例における色処理係数決定および確認処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
101…カラースキャナ、102〜104…1次元テーブル、105…マトリックスマスキング部、111…3次元テーブル、112〜115…1次元テーブル、116…カラープリンター。
Claims (6)
- カラー画像入力装置またはカラー画像出力装置の複数の入力信号の実データと、それに対応する出力信号の実データのデータ対から、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める色伝達特性予測方法において、重み付けの係数を被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各入力信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数で求め、入力信号と出力信号の関係を定数項を含む線形関係となるように行列で結びつけ、複数の入力信号の実データから該行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に前記重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるように該行列の成分を決定し、被予測値である入力信号から該行列を用いて出力予測値を求めることを特徴とする色伝達特性予測方法。
- カラー画像入力装置またはカラー画像出力装置の複数の入力信号の実データと、それに対応する出力信号の実データのデータ対から、被予測値である任意の入力信号に対応する予測値である出力信号を求める色伝達特性予測方法において、入力信号と出力信号の関係を定数項を含む線形関係となるように行列で結びつけ、重み付けの係数の初期値を与えて複数の入力信号の実データから該行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に前記重み付けの係数の初期値で重み付けした値の2乗和が最小になるように前記行列の成分を算出して被予測値である入力信号から該行列を用いて出力予測値を求め、被予測値依存および該行列の成分依存の関数により重み付けの係数を再計算し、前記複数の入力信号の実データから前記行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に再計算した重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるように前記行列の成分を再算出し、被予測値である入力信号から前記行列を用いて出力予測値を再度求め、収束を判定して収束していない場合には重み付けの係数の再計算と前記行列の成分の再算出と前記出力予測値の再算出を繰り返すことを特徴とする色伝達特性予測方法。
- 前記重み付けの係数は、被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各入力信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の第1の単調減少関数と、被予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差と該行列の成分を掛けて信号成分ごとに2乗した後に和をとり各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の第2の単調減少関数から求められることを特徴とする請求項2に記載の色伝達特性予測方法。
- カラー画像入力装置またはカラー画像出力装置の複数の入力信号の実データと、それに対応する出力信号の実データのデータ対から、被予測値である任意の出力信号に対応する予測値である入力信号、または、被予測値である任意の出力信号と入力信号の一部に対応する予測値である入力信号の残りの一部を求める色伝達特性予測方法において、入力信号と出力信号の関係を定数項を含む線形関係となるよう行列で結びつけ、重み付けの係数の初期値を与えて複数の入力信号の実データから該行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に前記重み付けの係数の初期値で重み付けした値の2乗和が最小になるように前記行列の成分を算出して被予測値から該行列を用いて予測値を求め、被予測値依存および該行列の成分依存の関数により重み付けの係数を再計算し、前記複数の入力信号の実データから前記行列を用いて求めた出力予測値とそれに対応する複数の出力実データとの信号成分ごとの差分に再計算した重み付けの係数で重み付けした値の2乗和が最小になるように前記行列の成分を再算出し、被予測値から前記行列を用いて予測値を再度求め、収束を判定して収束していない場合には重み付けの係数の再計算と前記行列の成分の再算出と予測値の再算出を繰り返すことを特徴とする色伝達特性予測方法。
- 前記重み付けの係数は、予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各入力信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の単調減少関数で求められることを特徴とする請求項4に記載の色伝達特性予測方法。
- 前記重み付けの係数は、予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差を各入力信号成分ごとの定数で割ることにより規格化した入力空間差分成分から求める規格化入力信号空間におけるユークリッド距離の第1の単調減少関数と、予測値の入力信号と入力信号の実データとの信号成分ごとの差と該行列の成分を掛けて信号成分ごとに2乗した後に和をとり各信号成分ごとの定数で割ることにより規格化して求める規格化出力信号空間におけるユークリッド距離の第2の単調減少関数から求められることを特徴とする請求項4に記載の色伝達特性予測方法。
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