プロファイルは、デバイス依存色空間上の色値及びデバイス非依存色空間上の色値のうちの一方が既知の色の色票を、プロファイル作成対象のデバイスにより色空間の全域に分布する多数色について各々生成し、生成した各色票についてデバイス依存色空間上の色値及びデバイス非依存色空間上の色値のうちの未知の色値を各々測色し、デバイス依存色空間上の色値とデバイス非依存色空間上の色値を対応付けるデータを多数個(色票の数と同数)生成することで作成することができるが、これに代えて、第1色空間上の第1色値と第2色空間上の第2色値との関係を所定のアルゴリズムに従って推定演算する色予測モデル(デバイスモデルともいう)を用い、この色予測モデルに、より少数の色票を用いて生成したより少数の第1色空間の色値に対応する第2色空間の色値を記述したデータ群(ベースデータという)を入力することで、プロファイルを作成する方法も用いられている。これらはプロファイル作成だけでなく、SmartCMMシステム(色変換条件と色変換処理であるCMM(色変換モジュール)部を含めたシステム)の一部に利用してもよい。
ところで最近、新たな色管理システムとして、任意のベースデータ及び任意の色予測モデルを用いて色管理システム自身が色変換条件(プロファイル)を生成し、生成した色変換条件に基づいて色変換を行うシステムが提案されている。このシステムでは、ベースデータの作成に必要とされる色票の数がプロファイルよりも大幅に少なくて済むので、例えばユーザが独自にベースデータを作成して利用する等も容易に行うことができる。但し、上記色管理システムでは色変換条件の生成に用いられるベースデータ及び色予測モデルに無数の組み合わせが生ずるので、ベースデータと色予測モデルの組み合わせによっては適正な色変換を行える色変換条件が得られない場合もあり、適正な色変換が行われるか否かが保証されないという問題がある。
例えば色予測モデルには、アルゴリズムの特性に起因して、単一の色空間の中に補間性能の優れた色領域と補間性能の劣る色領域があるが、個々の色予測モデルはアルゴリズムが互いに異なるので、補間性能の優れた色領域及び補間性能の劣る色領域も個々の色予測モデル毎に相違している。このため、或るベースデータを特定の色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件が得られたとしても、上記ベースデータを別の色予測モデルと組合わせたときには、当該別の色予測モデルにおける補間性能の劣る色領域についてのデータの数が少ないことで適正な色変換条件が得られない可能性があり、適正な色変換条件が得られることは保証されない。
本発明は上記事実を考慮して成されたもので、色変換条件の生成に用いるベースデータと色予測モデルの組み合わせの適否を事前に確認可能な色変換装置、色変換方法及び色変換プログラムを得ることが目的である。
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る色変換装置は、特定色票の色を表す第1色空間上の第1色値及び第2色空間上の第2色値を複数の色票について規定するベースデータが入力されるか又はベースデータ記憶手段に記憶された複数の前記ベースデータの中から指定されると共に、前記ベースデータに基づいて前記第1色値と前記第2色値との関係を推定演算する色予測モデルが入力されるか又は色予測モデル記憶手段に記憶された複数の前記色予測モデルの中から指定され、当該入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて前記第1色値を前記第2色値へ変換するための色変換条件を生成し、前記生成した色変換条件に基づいて入力された画像データの色変換を行う色変換装置であって、前記入力又は指定されたベースデータが、前記入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータか否かを演算処理によって判定する判定手段を備えたことを特徴としている。
請求項1記載の発明では、特定色票の色を表す第1色空間上の第1色値及び第2色空間上の第2色値を複数の色票について規定するベースデータが入力されるか又はベースデータ記憶手段に記憶された複数のベースデータの中から指定されると共に、ベースデータに基づいて第1色値と第2色値との関係を推定演算する色予測モデルが入力されるか又は色予測モデル記憶手段に記憶された複数の色予測モデルの中から指定される。なお、第1色空間及び第2色空間としては、例えば一方を特定デバイスに依存する色空間、他方をデバイスに依存しない色空間(例えばCIE(Commission Internationale de l'Eclairage:国際照明委員会)が推奨したL*a*b*色空間のような均等知覚色空間や、三刺激値XYZ表色系の色空間、CAM02空間のような色の見えモデル等)とすることができるが、これに限られるものではなく、任意の色空間を適用可能である。
また、ベースデータは、例えば請求項2に記載したように、特定色票の色を表す第1色値及び第2色値の一方に基づき特定色票を生成し、生成した特定色票に対し第1色値及び第2色値の他方を測色することを、複数の色票について各々行うことで生成することができる。
請求項1記載の発明に係る色変換装置は、ベースデータ及び色予測モデルが入力又は指定されると、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて第1色値を第2色値へ変換するための色変換条件を生成し、生成した色変換条件に基づいて入力された画像データの色変換を行う。なお、上記の色変換条件としては、例えばCLUT(カラールックアップテーブル)に設定する色変換データ(所謂プロファイル)が好適であり、この場合、色変換条件としての色変換データを設定したCLUTを用いて入力された画像データを変換することで、画像データの色変換を行うことができるが、これに限定されるものではなく、上記の色変換条件として、ベースデータを設定した色予測モデル自体を用いることも可能であり、この場合、ベースデータを設定した色予測モデルを用いて入力された画像データを変換することで、画像データの色変換を行うようにしてもよい。また1次色やそれ以上の複数色での階調特性を表現した1次元ルックアップテーブルを複数利用してそのままで利用したり、補完しあって利用してもよい。
ところで、上記構成では画像データの色変換に用いるベースデータ及び色予測モデルとして任意の組み合わせを採用可能であるので、入力又は指定されたベースデータと色予測モデルの組み合わせによっては、適正な色変換を行える適正な色変換条件が得られない可能性がある。このため請求項1記載の発明は、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータか否かを演算処理によって判定する判定手段を備えている。これにより、入力又は指定されたベースデータと色予測モデルの組み合わせが、適正な色変換条件を生成することが困難な組み合わせ(不適切な組み合わせ)であった場合には、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定手段によって判定されることで、入力又は指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組み合わせであることを検知することができる。
従って、請求項1記載の発明によれば、色変換条件の生成に用いるベースデータと色予測モデルの組み合わせの適否を、画像データの色変換を実際に行う前に確認することができる。そして、判定手段による判定結果に基づき、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、例えばベースデータを補完する補完データをベースデータに追加したり(後述)、ベースデータを切替可能な環境であれば色変換条件の生成に使用するベースデータを切り替えたり、色予測モデルを切替可能な環境であれば色変換条件の生成に使用する色予測モデルを切り替える等の対処を行うことができるので、適正な色変換を行うことが可能となる。
なお請求項1記載の発明において、判定手段は、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータか否かを演算処理によって判定することを、例えば請求項3に記載したように、入力又は指定されたベースデータから所定割合のデータを除外したデータ及び入力又は指定された色予測モデルを用いて評価用の色変換条件を生成し、当該評価用の色変換条件から得られる第2色値について、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成した色変換条件から得られる第2色値又はベースデータから除外したデータが表す第2色値との色差が閾値未満か否かを判定することで行うように構成することができる。
請求項3記載の発明において、評価用の色変換条件から得られる第2色値としては、ベースデータから除外したデータに対応する第2色値が規定されている特定の第1色値を評価用の色変換条件に入力することで得られる第2色値を用いることができ、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成した色変換条件から得られる第2色値としては、当該色変換条件に上記の特定の第1色値を入力することで得られる第2色値を用いることができ、ベースデータから除外したデータが表す第2色値としては、前記除外したデータにおいて、上記の特定の第1色値と対応付けられている第2色値を用いることができる。また、請求項3記載の発明に係る色差は複数の色について各々求めることが望ましく、この場合、複数の色差の平均値又は最大値又は標準偏差(或いは分散)を閾値未満か否か判定するように構成すればよい。また、複数の色について色差を求める場合、各色は色空間を複数の部分色領域に分割したときに各部分色領域に分散して分布する色であることが望ましく、例えばベースデータから特定の部分色領域に相当するデータを所定割合除外して色差を求めることを、毎回異なる部分色領域を対象として複数回繰り返すことで、個々の部分色領域毎に色差を求めることができる。
ベースデータと色予測モデルを用いて生成される色変換条件は、ベースデータに含まれている或る色領域のデータの数が、当該色領域について色予測モデルが必要としているデータの数に対して十分である場合には、元のベースデータから前記色領域のデータを多少除去したベースデータを用いて新たな色変換条件を生成したとしても、新たに生成した色変換条件の前記色領域についての精度は大きくは低下しない(これに伴い請求項3記載の発明に係る色差も閾値未満となる)のに対し、ベースデータに含まれている前記色領域のデータの数が、前記色領域について色予測モデルが必要としているデータの数に対して不足している場合には、元のベースデータから前記色領域のデータを多少除去したベースデータを用いて新たな色変換条件を生成すると、新たに生成した色変換条件の前記色領域についての精度が大幅に低下する(これに伴い請求項3記載の発明に係る色差も閾値以上となる)という特性を有している。
ベースデータに対する評価は、印刷出力、測色などを繰り返し行って色の再現精度を確認したり、経験に基づいて人間が行うことが一般的であるが、請求項3記載の発明では上記特性を利用し、入力又は指定されたベースデータから所定割合のデータを除外したデータ及び入力又は指定された色予測モデルを用いて生成した評価用の色変換条件から得られる第2色値と、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成した色変換条件から得られる第2色値又はベースデータから除外したデータが表す第2色値との色差が閾値未満か否かを判定しているので、ベースデータが適正か否か(色予測モデルが要求しているデータの数に比して十分なデータがベースデータに含まれているか否か)を精度良く判断することができる。
また、請求項1記載の発明において、色予測モデルが要求しているデータの数に比して十分なデータがベースデータに含まれていない場合にも、当該ベースデータを補完するデータをベースデータに追加すれば、適正な色変換条件を生成できる可能性があることを考慮すると、例えば請求項4に記載したように、判定手段により、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、ベースデータを補完する補完データを取得してベースデータへ追加する取得手段を更に設けることが好ましい。これにより、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、補完データが追加されることで、適正な色変換条件が生成されるようにベースデータが再編成されることになり、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルから適正な色変換条件を生成することができる。
なお、請求項4記載の発明に係る取得手段による補完データの取得は、例えば請求項5に記載したように、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成した色変換条件から、対応する第1色値と第2色値の組を補完データとして生成又は取得することで行うことができる。
請求項5記載の発明において、例えばベースデータ及び色予測モデルを用いて生成する色変換条件がCLUTに設定する色変換データ(プロファイル)である場合、補完データとしての対応する第1色値と第2色値の組は、上記色変換データをセットしたCLUTに第1色値を入力し、CLUTから出力される第2色値を入力した第1色値と対応付けることで生成してもよいし、上記の色変換データ自体が色空間内に離散的に分布する各色について第1色値と第2色値を対応付ける情報であるので、色変換データから対応する第1色値と第2色値の組を取得(抽出)することも可能である。また、例えばベースデータ及び色予測モデルを用いて生成する色変換条件がベースデータを設定した色予測モデル自体である場合、補完データとしての対応する第1色値と第2色値の組は、ベースデータを設定した色予測モデルに第1色値を入力し、色予測モデルから出力される第2色値を入力した第1色値と対応付けることで生成することができる。
ベースデータ及び色予測モデルを用いて色変換条件を生成した場合、生成される色変換条件は、ベースデータを構成する各データの間を補間して全体にスムージングを掛けたことに相当する変換特性となる。このため、請求項5記載の発明のように、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成した色変換条件から、対応する第1色値と第2色値の組を補完データとして生成又は取得した場合にも、この補完データを追加したベースデータを用いて色変換条件を生成することで、より適正な色変換が行える色変換条件を得ることができる。
また、請求項4記載の発明において、色予測モデルを複数記憶する色予測モデル記憶手段が設けられている場合、取得手段による補完データの取得は、例えば請求項6に記載したように、色予測モデル記憶手段に記憶されている複数の色予測モデルのうち、入力又は指定された色予測モデルと異なる色予測モデルを色予測モデル記憶手段から読み出し、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデル記憶手段から読み出した色予測モデルを用いて補完データ生成用の色変換条件を生成し、生成した補完データ生成用の色変換条件から、対応する第1色値と第2色値の組を補完データとして生成又は取得することで行うことも可能である。
この場合も、上記の補完データを追加したベースデータを用いて色変換条件を生成することで、より適正な色変換が行える色変換条件を得ることができる。なお、色予測モデル記憶手段が複数記憶する色予測モデルの中には、ニューラルネットや統計的な推測を行うモデルの他に、ノウゲバウワーやクベルカムンク等の物理モデルが含まれていてもよい。
また、請求項4記載の発明において、過去に入力されたベースデータを複数記憶するベースデータ記憶手段が設けられている場合、取得手段による補完データの取得は、例えば請求項7に記載したように、ベースデータ記憶手段に記憶されているベースデータの中から、入力又は指定されたベースデータとの類似度の高いベースデータを探索し、当該探索によって抽出されたベースデータをベースデータ記憶手段から読み出し、読み出したベースデータから対応する第1色値と第2色値の組を補完データとして取得することで行うことも可能である。
請求項7記載の発明において、入力又は指定されたベースデータとの類似度の高いベースデータの探索は、例えば入力又は指定されたベースデータから対応する第1色値と第2色値を基準値として抽出した後に、特定のベースデータを一定の色予測モデルにセットし、特定のベースデータをセットした色予測モデルから、基準値としての第1色値に対応する第2色値を出力させることを、個々のベースデータについて各々行い、色予測モデルから出力された第2色値と基準値としての第2色値との色差が最小のベースデータを判断することで行うことができる。また、デバイスの経時的な特性変動に対応するために、同一のデバイスに対応する複数のベースデータが各々異なる時期に作成されて記憶されている場合には、個々のベースデータの作成時期とデバイスの特性変動の周期に基づいて類似度の高いベースデータ(デバイスが同じような特性のときに作成されたベースデータ)を探索することも可能である。この場合も、上記の補完データを追加したベースデータを用いて色変換条件を生成することで、より適正な色変換が行える色変換条件を得ることができる。
更に、請求項4記載の発明において、過去に生成された色変換条件を複数記憶する色変換条件記憶手段が設けられている場合、取得手段による補完データの取得は、例えば請求項8に記載したように、色変換条件記憶手段に記憶されている色変換条件の中から、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成される色変換条件との類似度の高い色変換条件を探索し、当該探索によって抽出された色変換条件を色変換条件記憶手段から読み出し、読み出した色変換条件から対応する第1色値と第2色値の組を補完データとして生成又は取得することで行うことも可能である。
請求項8記載の発明において、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成される色変換条件との類似度の高い色変換条件の探索についても、例えば入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成される色変換条件に任意の第1色値を入力し、前記色変換条件による色変換を経て出力される第2色値を基準値として記憶すると共に、個々の色変換条件に前記任意の第1色値を入力し、個々の色変換条件のうち色変換を経て出力される第2色値と基準値としての第2色値との色差が最小の色変換条件を判断することで行うことができる。この場合も、上記の補完データを追加したベースデータを用いて色変換条件を生成することで、より適正な色変換が行える色変換条件を得ることができる。
また、請求項4乃至請求項8の何れかに記載の発明において、例えば請求項9に記載したように、判定手段により、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、第1又は第2色空間を複数個の部分色領域に分割したときの個々の部分色領域を単位としてベースデータの精度を検知し、他の部分色領域よりもデータの精度が低い低精度部分色領域を検知する低精度領域検知手段を更に設け、取得手段は、低精度領域検知手段によって検知された低精度部分色領域に対応する補完データを取得するように構成することが好ましい。これにより、複数の部分色領域のうち他の部分色領域よりもデータの精度が低い低精度色領域に対して補完データの取得及び追加が行われることになり、ベースデータの精度、すなわち色変換条件の精度を効率良く向上させることができる。
また、請求項1記載の発明において、色予測モデルが、第1又は第2色空間内の特定位置に対し該特定位置を中心として所定サイズの参照領域を設定し、ベースデータを構成するデータのうち設定した参照領域内の色のデータに基づいて特定位置及びその付近における第1色値と第2色値との関係を推定演算することを、第1又は第2色空間内の各位置について各々行うことで、第1又は第2色空間内の全域について第1色値と第2色値との関係を推定演算するアルゴリズムである場合、例えば請求項10に記載したように、判定手段により、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、第1又は第2色空間を複数個の部分色領域に分割したときの個々の部分色領域を単位としてベースデータの精度を検知し、他の部分色領域よりもデータの精度が低い低精度部分色領域を検知する低精度領域検知手段と、低精度領域検知手段によって検知された低精度部分色領域内及びその付近における第1色値と第2色値との関係が色予測モデルを用いて推定演算される際に適用される参照領域のサイズを拡大する拡大手段と、を設けてもよい。これにより、低精度部分色領域及びその付近における第1色値と第2色値との関係が色予測モデルを用いて推定演算される際に、より多数のデータに基づいて第1色値と第2色値との関係が推定演算されることになり、低精度部分色領域及びその付近における色変換条件の精度を向上させることができる。
また、請求項1記載の発明において、例えば請求項11に記載したように、判定手段により、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、少なくとも前記判定の結果を報知する報知手段を更に設けることが好ましい。これにより、少なくともユーザは、入力又は指定したベースデータと色予測モデルの組み合わせでは適正な色変換が行える色変換条件が得られないことを認識することができ、例えば先に説明した取得手段と同様の作業(ベースデータを補完する補完データを取得してベースデータに追加する作業)を行ったり、ベースデータを切替可能な環境であれば色変換条件の生成に使用するベースデータを切り替えたり、色予測モデルを切替可能な環境であれば色変換条件の生成に使用する色予測モデルを切り替える等の対処を行うことができる。そして、このような対処が行われることで、画像データに対して適正な色変換を行うことができる。
なお、請求項11記載の発明において、例えば請求項12に記載したように、判定手段により、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、第1又は第2色空間を複数個の部分色領域に分割したときの個々の部分色領域を単位としてベースデータの精度を検知し、他の部分色領域よりもデータの精度が低い低精度部分色領域を検知する低精度領域検知手段を更に設け、報知手段は、低精度領域検知手段によって検知された低精度部分色領域も報知するように構成するようにしてもよい。この場合、入力又は指定したベースデータと色予測モデルの組み合わせでは適正な色変換が行える色変換条件が得られないことを認識したユーザが、ベースデータを補完する補完データを取得してベースデータに追加する作業を行う際に、何れの部分色領域に対応する補完データをベースデータに追加する必要があるのかを認識することができるので、低精度部分色領域に対応する補完データを取得してベースデータに追加する作業を容易に行うことができる。
また、請求項11記載の発明において、報知手段は、例えば請求項13に記載したように、判定手段により、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定された場合に、新たなベースデータの提供を依頼する依頼情報、又は、前記判定の結果への対処を質問する質問情報を予め登録された送信先(例えばメーカ、ユーザが属しているか又は参加しているグループ(例えば企業等の団体やオンラインのコミュニティサイト等)内の他の人)に送信する送信処理を行うように構成してもよい。これにより、入力又は指定したベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータでないと判定されたものの、解決するための知識やノウハウ、新たなベースデータを作成するための設備等をユーザが有していない場合にも、上記の依頼情報又は質問情報が報知手段によって自動的に送信され、依頼情報に基づきメーカや他の人からベースデータの提供を受けたり、質問情報に基づきメーカや他の人から回答(対処等)を受信することで、画像データに対して適正な色変換が行われるようにするための対処を容易に行うことができる。
なお、請求項9、請求項10及び請求項12の何れかに記載の発明において、低精度領域検知手段による、個々の部分色領域を単位とするベースデータの精度検知及び低精度部分色領域の検知は、具体的には、例えば請求項14に記載したように、個々の部分色領域を単位とするベースデータの精度として、ベースデータに含まれる前記個々の部分色領域に対応するデータの数を個々の部分色領域毎に検知し、低精度部分色領域として、対応するデータの数が他の部分色領域よりも少ない部分色領域を検知するか、又は、ベースデータから複数個の部分色領域のうちの特定部分色領域内に対応するデータを所定割合除外したデータ及び入力又は指定された色予測モデルを用いて評価用の色変換条件を生成し、当該評価用の色変換条件から得られる第2色値について、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて生成した色変換条件から得られる第2色値又は前記ベースデータから除外したデータが表す第2色値との色差を求めることを、個々の部分色領域について各々行うことで、個々の部分色領域を単位とするベースデータの精度として、個々の部分色領域毎の前記色差を求め、低精度部分色領域として前記色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知することで行うことができる。
請求項15記載の発明に係る色変換方法は、特定色票の色を表す第1色空間上の第1色値及び第2色空間上の第2色値を複数の色票について規定するベースデータが入力されるか又はベースデータ記憶手段に記憶された複数の前記ベースデータの中から指定されると共に、前記ベースデータに基づいて前記第1色値と前記第2色値との関係を推定演算する色予測モデルが入力されるか又は色予測モデル記憶手段に記憶された複数の前記色予測モデルの中から指定され、当該入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて前記第1色値を前記第2色値へ変換するための色変換条件を生成し、前記生成した色変換条件に基づいて入力された画像データの色変換を行うにあたり、前記入力又は指定されたベースデータが、前記入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータか否かを演算処理によって判定することを特徴としているので、請求項1記載の発明と同様に、色変換条件の生成に用いるベースデータと色予測モデルの組み合わせの適否を事前に確認することができる。
請求項16記載の発明に係る色変換プログラムは、コンピュータを、特定色票の色を表す第1色空間上の第1色値及び第2色空間上の第2色値を複数の色票について規定するベースデータが入力されるか又はベースデータ記憶手段に記憶された複数の前記ベースデータの中から指定されると共に、前記ベースデータに基づいて前記第1色値と前記第2色値との関係を推定演算する色予測モデルが入力されるか又は色予測モデル記憶手段に記憶された複数の前記色予測モデルの中から指定され、当該入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて前記第1色値を前記第2色値へ変換するための色変換条件を生成し、前記生成した色変換条件に基づいて入力された画像データの色変換を行う色変換装置として機能させる色変換プログラムであって、前記コンピュータを、前記入力又は指定されたベースデータが、前記入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータか否かを演算処理によって判定する判定手段として機能させることを特徴としている。
請求項16記載の発明に係る色変換プログラムは、コンピュータを上記の色変換装置として機能させると共に、上記の判定手段として機能させるためのプログラムであるので、コンピュータが請求項16記載の発明に係る色変換プログラムを実行することで、コンピュータが請求項1に記載の色変換装置として機能することになり、請求項1記載の発明と同様に、色変換条件の生成に用いるベースデータと色予測モデルの組み合わせの適否を事前に確認することができる。
以上説明したように本発明は、特定色票の色を表す第1色空間上の第1色値及び第2色空間上の第2色値を複数の色票について規定するベースデータが入力されるか又はベースデータ記憶手段に記憶された複数のベースデータの中から指定されると共に、ベースデータに基づいて第1色値と第2色値との関係を推定演算する色予測モデルが入力されるか又は色予測モデル記憶手段に記憶された複数の色予測モデルの中から指定され、入力又は指定されたベースデータ及び色予測モデルを用いて第1色値を第2色値へ変換するための色変換条件を生成し、生成した色変換条件に基づいて入力された画像データの色変換を行うにあたり、入力又は指定されたベースデータが、入力又は指定された色予測モデルと組合わせたときに適正な色変換条件を生成できるベースデータか否かを演算処理によって判定するようにしたので、色変換条件の生成に用いるベースデータと色予測モデルの組み合わせの適否を事前に確認できる、という優れた効果を有する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1には本実施形態に係るコンピュータ・システム10の概略構成が示されている。コンピュータ・システム10は、LAN等から成るネットワーク12に、PC(Personal Computer:パーソナル・コンピュータ)等から成る複数台のクライアント端末14と、コンピュータ・システム10に画像(データ)を入力する入力デバイス16と、コンピュータ・システム10から入力された画像データを画像として可視化する出力デバイス18が各々接続されて構成されている。なお、入力デバイス16としては、例えば原稿を読み取って画像データを出力するスキャナが、出力デバイス18としては、例えば入力された画像データが表す画像を用紙へ印刷するプリンタが挙げられる。また、図示は省略するが、ネットワーク12はインターネット等のコンピュータ・ネットワークにも接続されている。
ネットワーク12に接続された個々のクライアント端末14は、CPU14A、RAM等から成るメモリ14B、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)14C、ネットワークインタフェース(I/F)部14Dを備えており、ネットワークI/F部14Dを介してネットワーク12に接続されている。また、クライアント端末14には、出力デバイスの一種であるディスプレイ20、入力手段としてのキーボード22及びマウス24が各々接続されている。なお、入力デバイス16や出力デバイス18についても、ディスプレイ20と同様にクライアント端末14に直接接続されていてもよい。例えば入力デバイス16としてはスキャナ以外にデジタルスチルカメラ等が挙げられるが、デジタルスチルカメラ等はクライアント端末14に直接接続される。
また、クライアント端末14のHDD14Cには、OS(Operating System)のプログラムや、CPU14Aが後述するベースデータ判定処理を行うためのベースデータ判定プログラム、入力デバイスや出力デバイスを使用する各種のアプリケーションのプログラム(図示省略)が予め各々インストールされており、後述する色変換処理で使用したプロファイルを記憶するためのプロファイルDB(DataBase:データベース)、色予測モデルを記憶するための色予測モデルDB及びベースデータを記憶するためのベースデータDBが各々記憶されている。なお、プロファイル、色予測モデル及びベースデータについては後述する。
また、OSのプログラムには、クライアント端末14を後述する色管理システムとして機能させるための色管理プログラムが含まれている。また、ベースデータ判定処理は本発明に係る判定手段に対応する処理であり、ベースデータ判定プログラムは請求項16に記載の色変換プログラムに対応している。クライアント端末14は、上記の色管理プログラム及びベースデータ判定プログラムを実行することで、本発明に係る色変換装置として機能する。
上記のプロファイルDB、色予測モデルDB及びベースデータDBを記憶するHDD14Cは、請求項6に記載の色予測モデル記憶手段、請求項7に記載のベースデータ記憶手段及び請求項8に記載の色変換条件記憶手段に各々対応している。なお、コンピュータ・システム10にサーバ・コンピュータを設け、上記のプロファイルDB、色予測モデルDB及びベースデータDBを、個々のクライアント端末14から各々アクセス可能にサーバ・コンピュータのHDD等に記憶させておくようにしてもよい。
次に本第1実施形態の作用を説明する。クライアント端末14上で動作するOSに組み込まれている色管理システムは、図2に示す色管理処理を行う。すなわち、入力デバイス16からクライアント端末14へ入力される画像データは、当該画像データの個々の画素の色を入力デバイス16に依存する色空間(例えばRGB色空間等)上の色値で表す画像データであるが、色管理システムは、入力デバイス16からクライアント端末14へ入力された画像データに対し、例えばクライアント端末14への画像データの入力時や、出力デバイス18への画像データの出力時等のタイミングで、入力デバイス16に依存する色空間上の色値を、特定のデバイスに依存しない色空間(例えばL*a*b*色空間やXYZ色空間、CAM02空間のような色の見えモデル等)上の色値へ変換する第1の色変換処理(図2参照)を行う。
また、クライアント端末14から出力デバイス18への画像データの出力にあたっては、個々の画素の色を出力デバイス18に依存する色空間(例えばCMYK色空間やRGB色空間等)上の色値で表す画像データを出力デバイス18へ出力する必要がある。このため、色管理システムは、特定のデバイスに依存しない色空間上の色値を出力デバイス18に依存する色空間(例えばCMYK色空間やRGB色空間等)上の色値へ変換する第2の色変換処理(図2参照)を行う。なお、特定のデバイスに依存しない色空間として上記の色の見えモデル等を適用し、第1の色変換を経た画像データに対し、入力デバイス16における画像の見えと出力デバイス18における画像の見えの差(この見えの差は画像の観察条件の相違等を原因として生ずる)を補正する色変換処理も行うように色管理システムを構成してもよい(図2では見えの差を補正する色変換処理を「ガミュートマッピング」と表記して示している)。
また、上述した第1の色変換処理や第2の色変換処理(以下、単に色変換処理という)は、色管理システムが図4に示す色変換処理を行うことによって成される。以下、この色変換処理について説明する。
色管理システムによる色変換処理は、入力色値(第1色空間(入力色空間)上の第1色値)を出力色値(第2色空間(出力色空間)上の第2色値)へ変換する変換データ(プロファイル)をCLUTにセットし、当該CLUTに変換対象の画像データ(各画素の色を入力色値で表す画像データ)を順次入力することによって成される。ここで、プロファイルの生成方法としては、図3の(1)に示すような、入力色値及び出力色値の一方が既知の各色のパッチ(色票)を生成し(例えば出力デバイス18としてのプリンタへ画像データを出力する際の第2の色変換処理用のプロファイルを生成する場合、色票の生成は出力色値が既知の色票をプリンタによって印刷させることによって成され、出力デバイスとしてのディスプレイ20へ画像データを出力する際の第2の色変換処理用のプロファイルを生成する場合には、色票の生成は出力色値が既知の色票をディスプレイ20に表示させることによって成される)、生成した各色票について、入力色値及び出力色値のうちの未知の色値を測色計等によって各々計測することで、各色票毎に入力色値と出力色値とを対応付けるデータを求め、このデータをプロファイルとして用いる方法が知られている。
しかし、上記の生成方法では膨大な数の色票を形成し、かつ膨大な数の色票について入力色値又は出力色値を計測する必要があるので、プロファイルの生成に多大な手間がかかるという問題がある。このため、プロファイルの別の生成方法として色予測モデルを用いる方法も利用されている。色予測モデルは、より少数の入力色値と出力色値の対応関係を表すベースデータに基づいて、対応する出力色値が未知の入力色値が入力されると、入力された入力色値に対応する出力色値を各種のアルゴリズムによって推定演算して出力するプログラムである。色予測モデルを用いたプロファイルの生成は、色票から直接プロファイルを生成する場合よりも少数の色票(入力色値又は出力色値が既知の色票)を生成し(図3の(1)も参照)、生成した各色票について入力色値及び出力色値のうちの未知の色値を計測することで、各色票の入力色値と出力色値を対応付けるベースデータを生成する(図3の(2)も参照)。なお、上記手順で生成されるベースデータは請求項2に記載のベースデータに対応している。次に、このベースデータを色予測モデルにセットし(図3の(4)も参照)、各入力色値を色予測モデルに順に入力し、色予測モデルから順に出力される出力色値を入力した入力色値と対応付けることで、プロファイルを生成する(図3の(5)参照)。そして、生成したプロファイルをLUTに設定する(図3の(6)も参照)ことで、当該LUTで色変換を行うことが可能となる。
色予測モデルを用いたプロファイルの生成では、色票から直接プロファイルを生成する場合と比較して、必要な色票の数を大幅に削減することができるので、プロファイル生成の手間を大幅に削減できる。本実施形態に係る色管理システムは、プロファイル生成方法として、ベースデータ及び色予測モデルを使用する生成方法を採用しており、プロフィルの生成に使用するベースデータや色予測モデルをユーザが指定することも可能とされている。
このため、特定の入力デバイスから入力される画像データに対する色変換(第1の色変換)や、特定の出力デバイスへ出力する画像データに対する色変換(第2の色変換)の実行に際し、特定のベースデータ(例えばユーザ自身が作成したベースデータ等)や、特定の色予測モデルを使用して生成されたプロファイルを用いることを所望している場合、ユーザは、必要に応じてベースデータを作成する作業(図3の(1),(2)も参照)を行った後に、作成したベースデータを色変換(プロファイルの生成)に使用するベースデータとして入力・指定したり(ユーザによって入力されたベースデータはベースデータDBに記憶される)、色変換(プロファイルの生成)に使用するベースデータをベースデータDBに記憶されているベースデータの中から指定したり、色変換(プロファイルの生成)に使用する色予測モデルを色予測モデルDBに記憶されている色予測モデルの中から指定する操作を事前に行う(図3の(3)も参照)。
図4に示すように、色管理システムによって行われる色変換処理では、まずステップ50において、これから実行する色変換(のプロファイル生成)に使用するベースデータ及び色予測モデルとしてユーザから指定されたベースデータ及び色予測モデルを認識し、認識したベースデータをベースデータDBから取得すると共に、認識した色予測モデルを色予測モデルDBから取得する処理を行う。なお、使用するベースデータや色予測モデルがユーザによって指定されていない場合には、デフォルトで使用対象として設定されているベースデータ及び色予測モデルを取得する。
次のステップ52では、ステップ50で取得した使用対象のベースデータを、ステップ50で取得した使用対象の色予測モデルにセットする(図3の(4)も参照)。ステップ54では、ベースデータをセットした色予測モデルに任意の第1色値(入力色値)を入力し、次のステップ56では、ステップ54における第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値を、ステップ54で色予測モデルに入力した第1色値と対応付けてメモリ14Bに記憶させる。ステップ58では色予測モデルに第1色値を所定数入力したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ54に戻り、ステップ58の判定が肯定される迄ステップ54〜ステップ58を繰り返す。この間、ステップ54では、色予測モデルに入力する第1色値として、第1色空間を格子状に多数の立方体領域へ区切ったときの個々の立方体領域の頂点(格子点)に相当する色値を順次選択・入力する。これにより、個々の格子点位置における第1色値と第2色値を各々対応付けるプロファイル(色変換条件)がメモリ14B上に生成(記憶)される(図3の(5)も参照)。
ステップ58の判定が肯定されるとステップ60へ移行し、上記処理で生成したプロファイルを色変換用のCLUTにセットする(図3の(6)も参照)。そしてステップ62では、色変換対象の画像データを、プロファイルをセットしたCLUTに順次入力することで、上記画像データの色変換を行い(図3の(7)も参照)、色変換処理を終了する。
ところで、上述した色変換処理では、任意のベースデータ・任意の色予測モデルをプロファイルの生成に使用可能であるので、プロファイルの生成に使用するベースデータと色予測モデルの組み合わせによっては、適正な色変換を行える適正なプロファイルが得られない可能性がある。このため、本実施形態に係るクライアント端末14にはベースデータ判定プログラムがインストールされており、プロファイルの生成への使用を予定しているベースデータと色予測モデルの組み合わせが、過去に使用した実績の無い組合わせである等の場合に、ベースデータと色予測モデルの組み合わせの適否を確認するためにユーザによってベースデータ判定プログラムが起動され、ベースデータ判定処理(図5)がクライアント端末14で実行される。なお、このベースデータ判定処理は、上記のようにユーザからの指示を契機として実行されることに限られるものではなく、色管理システムが色変換処理を実行する際に、色管理システムから呼び出されて毎回実行されるようにしてもよい。
ベースデータ判定処理では、まずステップ80において、第1色空間(入力色空間)を複数個の部分色領域に分割し、当該複数個の部分色領域のうちの何れか1個を判定対象の部分色領域として選択する。なお、部分色領域は第2色空間(出力色空間)を分割することで得られる領域であってもよい。次のステップ82では、色変換(のプロファイル生成)に使用するベースデータとしてユーザから指定されている使用対象のベースデータ(ベースデータ判定処理における判定対象のベースデータ)を認識し、認識した使用対象のベースデータをベースデータDBから取得し、取得した使用対象のベースデータから、ステップ80で選択した判定対象の部分色領域に対応するデータ(判定対象の部分色領域内の各色を表す第1色値と第2色値の組)の一部を除外する。なお、除外するデータのデータ量は、使用対象のベースデータに含まれる判定対象の部分色領域に対応するデータの総データ量に対して第1の所定割合のデータ量であってもよいし、使用対象のベースデータの総データ量に対して第2の所定割合のデータ量であってもよい。
ステップ84では、色変換(のプロファイル生成)に使用する色予測モデルとしてユーザから指定されている使用対象の色予測モデルを認識し、認識した使用対象の色予測モデルを色予測モデルDBから取得した後に、ステップ82で判定対象の部分色領域に対応するデータの一部を除外したベースデータを使用対象の色予測モデルにセットする。なお、一部データを除外したベースデータをセットした色予測モデルは、請求項3に記載の評価用の色変換条件に対応している。またステップ86では、ステップ82でベースデータから除外した判定対象の部分色領域に対応するデータの一部から任意の第1色値と対応する第2色値の組を抽出し、抽出した第1色値を上記の色予測モデルに入力する。そしてステップ88では、ステップ86で除外したデータから抽出した第2色値(元のベースデータ上での第2色値)と、ステップ86における第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値(評価用の色予測モデルから出力される第2色値)との色差を演算し、演算した色差をメモリ14Bに記憶させる。なお、判定対象の単一の部分色領域についてステップ86,88の処理を複数回行い、各回の処理で得られた色差の平均値や中央値、最大値等を前記部分色領域における色差として記憶するようにしてもよい。
次のステップ90では、全ての部分色領域に対して上記処理を行ったか否か判定する。判定が否定された場合はステップ80に戻り、ステップ90の判定が肯定される迄、ステップ80〜ステップ90を繰り返す。これにより、個々の部分色領域について、元のベースデータ上での第2色値と評価用の色予測モデルから出力される第2色値との色差が各々演算・記憶されることになる。ステップ90の判定が肯定されるとステップ92へ移行し、個々の部分色領域について各々演算・記憶した色差に基づいて、使用対象のベースデータを代表する色差(代表色差)を演算する。代表色差としては、例えば各部分色領域毎の色差の絶対値の平均値、中央値、色差の標準偏差(又は分散)の何れかを用いることができる。また、各部分色領域毎の色差の中から選択した最大値を代表色差として用いるようにしてもよい。
次のステップ94では、ステップ92で演算又は選択した代表色差が閾値未満か否か判定する。上記のように、一部のデータを除外したベースデータをセットした評価用の色予測モデルは、元のベースデータ(一部データを除外していないベースデータ)を色予測モデルにセットした場合と比較して色変換の精度が低下し、これに伴って上記の色差が生ずると共に、除外するデータの量が多くなるに従って色変換の精度低下量が増大し上記の色差も大きくなる。但し、元のベースデータに含まれている個々の部分色領域に対応するデータの数が、個々の部分色領域について色予測モデルが必要としているデータの数に対して十分である場合には、例として図6に「OK」と表記して示すように、除外するデータ量に比して色変換の精度はさほど低下せず、色差も比較的小さい値となるのに対し、元のベースデータに含まれている特定の部分色領域のデータの数が、特定の部分色領域について色予測モデルが必要としているデータの数に対して不足している場合には、例として図6に「NG」と表記して示すように、除外するデータ量に比して色変換の精度は大幅に低下し、色差も比較的大きい値となる。
従って、代表色差として色差の絶対値の平均値、中央値、最大値、色差の標準偏差(又は分散)の何れかを用いたとしても、個々の部分色領域に対応するデータが元のベースデータに十分に含まれている場合には代表色差の値が小さくなり、元のベースデータが、対応するデータが不足している部分色領域が存在している、或いは全体的にデータが不足しているベースデータである場合には、代表色差の値も大きくなる。本実施形態に係るベースデータ判定処理では、上記に基づきステップ94で代表色差と閾値との大小関係を判定している。なお、上述したステップ80〜ステップ94は請求項3に記載の判定手段に対応している。
ステップ94の判定が肯定された場合(ベースデータが図6に「OK」と表記して示す特性である場合)はステップ96へ移行し、ディスプレイ20にメッセージを表示させる等により、色変換(のプロファイル生成)への使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせが、十分な精度の色変換条件(プロファイル)が得られる適正な組合わせであることをユーザへ通知し、ベースデータ判定処理を終了する。この場合、ユーザは使用対象として指定したベースデータと色予測モデルが適正な組合わせであることを認識することができ、上記組合わせのまま色管理システムによる色変換処理を行わせることができる。
一方、ステップ94の判定が否定された場合(ベースデータが図6に「NG」と表記して示す特性である場合)にはステップ98へ移行し、色変換の精度が低いと推定される低精度部分色領域として、ステップ88で演算した色差が比較的大きい部分色領域を抽出する。なお、抽出する低精度部分色領域の数は1個、所定の複数個、不定個数の何れでもよく、低精度部分色領域を1個のみ抽出する場合は代表色差が最大の部分色領域を抽出し、所定の複数個の低精度部分色領域を抽出する場合は代表色差の降順に所定個の部分色領域を選択・抽出すればよく、抽出する低精度部分色領域の数が不定個数であれば、例えば代表色差が閾値以上の部分色領域を全て抽出することができる。
なお、部分色領域の中には、色変換時に多用されることで色変換の精度への関与の度合が大きい領域と、色変換時に殆ど使用されないために色変換の精度への関与の度合が僅かな領域とがあり、ステップ98で低精度部分色領域を抽出した結果、抽出された低精度部分色領域が、色変換の精度への関与の度合が僅かな領域のみであった場合には、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが適正な組合わせであると判定してステップ96へ移行するようにしてもよい。なお、このステップ98は、前述したステップ80〜ステップ92と共に請求項12に記載の低精度領域検知手段に対応しており、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応している。
次のステップ100では、ディスプレイ20にメッセージを表示させる等により、色変換(のプロファイル生成)への使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせが、十分な精度の色変換条件(プロファイル)が得られない不適切な組合わせであることをユーザへ通知すると共に、ステップ98で抽出した低精度部分色領域も通知する。なお、ステップ100は請求項11,12に記載の報知手段に対応している。
また、本実施形態に係るベースデータ判定処理は、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであると判定した場合に、ユーザによって事前に登録された送信先へ、定型の文面又はユーザによって事前に登録された文面の電子メールへ通知する機能も備えており、次のステップ102では、上記電子メールの送信がユーザによって指示されているか否か判定する。なお、ベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであると判定する毎に、電子メールを送信するか否かをユーザに問い合わせるようにしてもよい。ステップ102の判定が否定された場合は何ら処理を行うことなくベースデータ判定処理を終了する。
上記の電子メール送信機能を利用しないユーザは、ベースデータや色予測モデルに関する豊富な知識や、ベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切と判定された場合の対処についてのノウハウを有していたり、ベースデータを新規に作成したり既存のベースデータに追加するデータを生成するための設備(例えば測色計等)を有しているユーザであることが多いが、当該ユーザは、ステップ100の通知に基づき、使用対象のベースデータを既存の別のベースデータへ切り替えたり、使用対象のベースデータを新たに作成して使用したり、使用対象のベースデータに追加するデータを新たに作成したり、使用対象の色予測モデルを別の色予測モデルに切り替える等の対処を行う。そして、必要に応じて再度ベースデータ判定処理を行わせ、新たな使用対象のベースデータと色予測モデルが適正な組合わせであることを確認した後に、色管理システムによる色変換処理(図4)を行わせることで、当該色変換処理で適正な色変換を行わせることができる。
一方、ステップ102の判定が肯定された場合はステップ104へ移行し、事前に選択又は登録された文面の電子メールを、事前に登録された送信先へ送信した後にベースデータ判定処理を終了する。ステップ104で送信する電子メールとしては、組合わせが不適切と判定されたベースデータと色予測モデルを通知すると共に、当該色予測モデルに適した新たなベースデータの提供を依頼する依頼メール、或いは、組合わせが不適切と判定されたベースデータと色予測モデルを通知すると共に、前記判定結果への対処を質問する質問メールが挙げられる。また、電子メールの送信先としては、色変換に関係する入力デバイス又は出力デバイスの製造メーカ、ユーザが所属している企業やその他の団体内の他の人、ユーザが登録しているオンラインのコミュニティサイト内の他の人等が挙げられる。
上記の電子メール送信機能を利用するユーザは、ベースデータや色予測モデルに関する知識や、ベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切と判定された場合の対処についてのノウハウに乏しく、ベースデータを新規に作成したり既存のベースデータに追加するデータを生成するための設備も有していないユーザであることが多いが、上記の依頼メールや質問メールが送信されることで、当該ユーザが前記判定結果への対処について教示を受けたり、新たなベースデータの提供を受けることができ、教示された対処に従い使用対象のベースデータを既存の別のベースデータへ切り替えたり、使用対象の色予測モデルを別の色予測モデルに切り替えたり、使用対象のベースデータを提供された新たなベースデータに切り替える等の対処を行うことができる。
そして、必要に応じて再度ベースデータ判定処理を行わせ、新たな使用対象のベースデータと色予測モデルが適正な組合わせであることを確認した後に、色管理システムによる色変換処理(図4)を行わせることで、当該色変換処理で適正な色変換を行わせることができる。従って、知識やノウハウに乏しく測色計等の設備も有していないユーザであっても、上記の電子メール送信機能を利用することで、適正な色変換を行わせるための対処を容易に行うことができる。なお、ステップ104は請求項13に記載の報知手段に対応している。
なお、上記ではベースデータからの一部データの除外や色差の演算等の処理(図5のステップ82〜ステップ88)を個々の部分色領域毎に行うことで、使用対象のベースデータの精度が低いと判定した場合に、低精度部分色領域の抽出も併せて行うようにしていたが、これに限定されるものではなく、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが適正な組合わせであるか否かの判定のみを行い、低精度部分色領域の抽出を省略してもよい。
〔第2実施形態〕
次に本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下で説明する各実施形態は第1実施形態と同一の構成であるので、各部分に同一の符号を付して構成の説明を省略し、各実施形態に係るベースデータ判定処理について、既に説明した他の実施形態に係るベースデータ判定処理と異なる部分についてのみ説明する。
第1実施形態で説明したベースデータ判定処理(図5)では、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが適正な組合わせか否かの判定及び低精度部分色領域の抽出を、使用対象のベースデータから一部データを除外したときの各部分色領域毎の色差に基づいて行っていたが、本第2実施形態に係るベースデータ判定処理(図7)は、上記の判定及び抽出を、使用対象のベースデータを構成するデータのうち個々の部分色領域に対応するデータの数(使用対象のベースデータに占める個々の部分色領域に対応するデータの割合)に基づいて行う。
すなわち、まずステップ110では各部分色領域に対応するデータ数を各々0に初期設定する。ステップ112では色変換(のプロファイル生成)に使用するベースデータとしてユーザから指定されている使用対象のベースデータを認識し、認識した使用対象のベースデータをベースデータDBから取得した後に、取得した使用対象のベースデータから単一のデータ(特定の色に対応する第1色値と第2色値の組)を取り出す。次のステップ114では、ステップ112で取り出したデータが何れの部分色領域内の色に対応するデータかを判別する。そしてステップ116では、ステップ114で判別した部分色領域に対応するデータ数を1だけインクリメントする。ステップ118では使用対象のベースデータから全てのデータを取り出したか否か判定する。判定が否定された場合はステップ112に戻り、ステップ118の判定が肯定される迄ステップ112〜ステップ118を繰り返す。これにより、使用対象のベースデータに含まれる、個々の部分色領域に対応するデータの数が個々の部分色領域毎に計数されることになる。
上記の計数が終了するとステップ118の判定が肯定されてステップ120へ移行し、個々の部分色領域毎のデータ数を使用対象のベースデータを構成するデータの総数(第1色値と第2色値の組の総数)で除算することで、個々の部分色領域毎のデータ数を、使用対象のベースデータを構成するデータに占める個々の部分色領域に対応するデータの割合に換算する。そして次のステップ122では、ステップ120で得られたデータの割合が他の部分色領域よりも所定%以上低い部分色領域が存在しているか否か判定する。前述のように、ベースデータを構成するデータの量と、当該ベースデータを用いて実現される色変換の精度には相関があり、使用対象のベースデータに含まれる、各部分色領域に対応するデータの数に偏りがある場合、対応するデータの数が少ない特定部分色領域における色変換の精度が不足している可能性が高い。本第2実施形態に係るベースデータ判定処理では、上記に基づきステップ122で個々の部分色領域に対応するデータの割合を比較することで、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが適正な組合わせか否かを判定している。
上記判定は、使用対象の色予測モデルが要求している個々の部分色領域毎のデータの数に対して足りているか否かを考慮していないので、第1実施形態で説明したベースデータ判定処理と比較して、色変換の精度に対する判定の精度は若干低下するものの、個々の部分色領域毎のデータの数を単に計数するのみで判定を行うことができるので、処理が簡単になる。なお、ステップ122の判定において、使用対象のベースデータを構成するデータの総数が閾値以上か否かも併せて判定し、当該判定が否定された場合はベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判断するようにしてもよい。また、ステップ122の判定において、個々の部分色領域に対応するデータの割合に代えて個々の部分色領域に対応するデータの数を用い、個々の部分色領域に対応するデータの数のうちの最小値が第1の閾値以上か否か、或いは、個々の部分色領域に対応するデータの数の標準偏差(又は分散)が第2の閾値未満か否かを判定することで、ベースデータと色予測モデルが適正な組合わせか否かを判定するようにしてもよい。なお、ステップ110〜ステップ122は本発明に係る判定手段に対応している。
ステップ122の判定が否定された場合はステップ96へ移行し、第1実施形態と同様に、ベースデータと色予測モデルの組合わせが適正な組合わせであることをユーザへ通知し、ベースデータ判定処理を終了する。一方、ステップ122の判定が肯定された場合にはステップ99へ移行し、色変換の精度が低いと推定される低精度部分色領域として、ステップ120で演算した対応するデータの割合が比較的小さい部分色領域を抽出する。なお、低精度部分色領域を1個のみ抽出する場合はデータの割合が最小の部分色領域を抽出し、所定の複数個の低精度部分色領域を抽出する場合はデータの割合の昇順に所定個の部分色領域を選択・抽出すればよく、抽出する低精度部分色領域の数が不定個数であれば、例えばデータの割合が閾値未満の部分色領域を全て抽出することができる。
なお、第1実施形態と同様に、ステップ99で抽出した低精度部分色領域が、色変換の精度への関与の度合が僅かな領域のみであった場合には、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが適正な組合わせであると判定してステップ96へ移行するようにしてもよい。また、次のステップ100以降の処理は第1実施形態に係るベースデータ判定処理と同一であるので説明を省略する。なお、本第2実施形態に係るベースデータ判定処理におけるステップ110〜120及びステップ99は請求項12に記載の低精度領域検知手段に対応しており、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として、対応するデータの数が他の部分色領域よりも少ない部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応している。
〔第3実施形態〕
次に本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態及び第2実施形態で説明したベースデータ判定処理(図5,7)では、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定した場合に、ユーザへ通知すると共に依頼メール又は質問メールを送信していたが、本第3実施形態に係るベースデータ判定処理(図8)は、使用対象のベースデータを補完する補完データを自動的に生成して使用対象のベースデータに追加する処理を行う。
すなわち、本第3実施形態に係るベースデータ判定処理では、代表色差が閾値以上であったためにステップ94の判定が否定され(ベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定され)、ステップ98で低精度部分色領域を抽出すると、次のステップ130において、使用対象のベースデータ(一部データを除外していない元のベースデータ)を使用対象の色予測モデルにセットする。次のステップ132では、ステップ98で抽出した低精度部分色領域内の任意の色を表す第1色値を、ステップ130でベースデータをセットした色予測モデルに入力する。そしてステップ134では、ステップ132における第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値を上記の第1色値と対応付け、使用対象のベースデータ中の低精度部分色領域のデータを補完する補完データとしてメモリ14Bに記憶させる。
ステップ136では所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されたか否か判定する。なお、上記の所定数は固定値としてもよいが、ステップ94で比較した代表色差と閾値との偏差に応じて変更する(偏差が大きくなるに従って所定数の値を大きくする)ようにしてもよい。ステップ136の判定が否定された場合はステップ132に戻り、ステップ136の判定が肯定される迄ステップ132〜ステップ136を繰り返す。そして、所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されると、ステップ136の判定が肯定されてステップ138へ移行し、メモリ14Bに蓄積した補完データを使用対象のベースデータへ追加する。
上記のように、本第3実施形態では適切な組合わせでないと判定した使用対象のベースデータと色予測モデルを用いて補完データを求めている。色予測モデルは、セットされたベースデータに基づいて、対応する出力色値が未知の入力色値が入力されると、入力された入力色値に対応する出力色値を各種のアルゴリズムによって推定演算して出力するものであるが、上記のアルゴリズムは、セットされたベースデータを構成する各データの間を補間して全体にスムージングを掛けたことに相当する変換特性で入力色値を出力色値へ変換するアルゴリズムとされている。従って、適切な組合わせでないベースデータと色予測モデルをそのまま用いてプロファイルを生成することに代えて、上記のベースデータと色予測モデルを用いて低精度部分色領域のデータを補完する補完データを生成し、生成した使用対象のベースデータに追加することにより、使用対象のベースデータと色予測モデルを用いて生成される色変換条件(プロファイル)の低精度部分色領域における色変換の精度を向上させることができる。
次のステップ140〜ステップ148では、補完データを追加した使用対象のベースデータと色予測モデルの組合わせの適否を、ステップ82〜ステップ94と同様にして、低精度部分色領域に対してのみ判定する。すなわち、まず補完データを追加したベースデータから低精度部分色領域に対応するデータの一部を除外し(ステップ140)、低精度部分色領域に対応するデータの一部を除外したベースデータを使用対象の色予測モデルにセットし(ステップ142)、先にベースデータから除外した低精度部分色領域に対応するデータの一部から任意の第1色値と対応する第2色値の組を抽出し、抽出した第1色値を上記の色予測モデルに入力する(ステップ144)。そしてステップ144で抽出した第2色値と、色予測モデルへの第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値との色差を演算し(ステップ146)、算出された色差が閾値未満か否かを判定する(ステップ148)。
ステップ148の判定が肯定された場合、使用対象のベースデータへの補完データの追加に伴って、低精度部分色領域における色変換の精度が十分なレベルに達したと判断できるので、ステップ96へ移行してベースデータと色予測モデルの組合わせが適正な組合わせであることをユーザへ通知し、ベースデータ判定処理を終了する。なお、使用対象のベースデータへの補完データの追加を行った場合には、補完データを追加したことも併せてユーザへ通知するようにしてもよい。また、ステップ148の判定が否定された場合は、使用対象のベースデータへ補完データを追加したにも拘わらず、低精度部分色領域における色変換の精度が十分なレベルに達していないと判断できるので、ステップ100において、ベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであることをユーザへ通知すると共に、低精度部分色領域もユーザへ通知し、ベースデータ通知処理を終了する。
なお、本第3実施形態に係るベースデータ判定処理において、ステップ80〜92及びステップ98は請求項9に記載の低精度領域検知手段、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応しており、ステップ130〜ステップ138は請求項4に記載の取得手段、より詳しくは請求項5,9に記載の取得手段に対応している。
このように、本第3実施形態に係るベースデータ判定処理では、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定した場合に、適正な色変換が行われるように補完データを生成してベースデータへ追加する処理を自動的に行うので、この補完データの追加により低精度部分色領域における色変換の精度が向上し、指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)を得ることが可能となる。従って、使用対象としてユーザが指定したベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであった場合に、適正な色変換条件を得るためのユーザの負担を軽減することが可能となる。
〔第4実施形態〕
次に本発明の第4実施形態について説明する。本第4実施形態に係るベースデータ判定処理(図9)は、使用対象の色予測モデルと異なる色予測モデルを用いて補完データを生成する点で第3実施形態と相違している。
すなわち、本第4実施形態に係るベースデータ判定処理では、代表色差が閾値以上であったためにステップ94の判定が否定され(ベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定され)、ステップ98で低精度部分色領域を抽出すると、次のステップ160において、使用対象の色予測モデルと異なる任意の色予測モデルを色予測モデルDBから読み出す。なお、ステップ160で読み出す色予測モデルとしては任意の色予測モデルを適用可能であり、ノウゲバウワーやクベルカムンク等の物理モデルであってもよい。ステップ162では、ステップ160で読み出した色予測モデルに使用対象のベースデータをセットし、次のステップ164では、ステップ98で抽出した低精度部分色領域内の任意の色を表す第1色値を、ステップ162でベースデータをセットした色予測モデルに入力する。
そしてステップ166では、ステップ164における第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値を上記の第1色値と対応付け、使用対象のベースデータ中の低精度部分色領域のデータを補完する補完データとしてメモリ14Bに記憶させる。ステップ168では所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されたか否か判定する。なお、上記の所定数は固定値としてもよいが、ステップ94で比較した代表色差と閾値との偏差に応じて変更する(偏差が大きくなるに従って所定数の値を大きくする)ようにしてもよい。ステップ168の判定が否定された場合はステップ164に戻り、ステップ168の判定が肯定される迄ステップ164〜ステップ168を繰り返す。そして、所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されると、ステップ168の判定が肯定されてステップ138へ移行し、メモリ14Bに蓄積した補完データを使用対象のベースデータへ追加する。なお、次のステップ140以降の処理は第3実施形態に係るベースデータ判定処理と同一であるので説明を省略する。
なお、本第4実施形態に係るベースデータ判定処理において、ステップ80〜92及びステップ98は請求項9に記載の低精度領域検知手段、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応しており、ステップ160〜ステップ168及びステップ138は請求項4に記載の取得手段、より詳しくは請求項6,9に記載の取得手段に対応している。
このように、本第4実施形態に係るベースデータ判定処理は、第3実施形態と同様に、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定した場合に、適正な色変換が行われるように補完データを生成してベースデータへ追加する処理を自動的に行うので、この補完データの追加により低精度部分色領域における色変換の精度が向上し、指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)を得ることが可能となる。
また色予測モデルには、アルゴリズムの特性に起因して、補間性能の優れた部分色領域と補間性能の劣る部分色領域があるが、個々の色予測モデルが採用しているアルゴリズムは互いに異なるので、補間性能の優れた色領域及び補間性能の劣る色領域も個々の色予測モデル毎に相違している。このため、使用対象のベースデータを使用対象の色予測モデルと組み合わせたときに、色変換の精度が低い低精度部分色領域と判定された部分色領域であっても、本第4実施形態のように、使用対象の色予測モデルと異なる色予測モデルに使用対象のベースデータをセットして補完データを求めることで、上記の部分色領域のデータ(補完データ)として高精度な色変換を実現できる適正なデータが得られる確率が向上する。従って、使用対象としてユーザが指定したベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであった場合に、当該組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)が得られる確率を向上させることができ、上記場合に適正な色変換条件を得るためのユーザの負担を更に軽減することができる。
〔第5実施形態〕
次に本発明の第5実施形態について説明する。本第5実施形態に係るベースデータ判定処理(図10)は、使用対象のベースデータと異なるベースデータを用いて補完データを生成する点で第3実施形態、第4実施形態と相違している。
すなわち、本第5実施形態に係るベースデータ判定処理では、代表色差が閾値以上であったためにステップ94の判定が否定され(ベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定され)、ステップ98で低精度部分色領域を抽出すると、次のステップ180において、ベースデータDBに記憶されている各ベースデータについて使用対象のベースデータとの類似度を評価し、ステップ182では、ステップ180における類似度の評価結果に基づいて、使用対象のベースデータとの類似度の高いベースデータを判定し、当該ベースデータをベースデータDBから読み出す。
なお、ステップ180、182におけるベースデータの類似度の評価・判定は、例えば例えば使用対象のベースデータから対応する第1色値と第2色値の組を基準値として複数抽出した後に、特定のベースデータを一定の色予測モデルにセットし、基準値として抽出した複数の第1色値を特定のベースデータをセットした色予測モデルに順次入力し、色予測モデルから順次出力される第2色値について、色予測モデルに入力した第1色値に対応する基準値としての第2色値との色差を各々演算・記憶し、得られた複数の色差から代表色差(例えば色差の平均値等)を演算することを、ベースデータDBに記憶されている個々のベースデータについて各々行い、代表色差が最小のベースデータを使用対象のベースデータとの類似度が最大のベースデータとして選択することで行うことができる。
また、入力デバイスや出力デバイスの特性は経時的かつ周期的に変動するが、この経時的かつ周期的な特性変動を色変換によって吸収(補正)するために、同一のデバイスに対応するベースデータが、前記デバイスの特性が互いに相違しているタイミングで各々作成され、ベースデータDBに各々記憶されている場合がある。デバイスが現在の特性と同一又は類似の特性のときに作成されたベースデータは、使用対象のベースデータとの類似度の高いベースデータと判断できるので、上記のように同一のデバイスに対応する複数のベースデータがベースデータDBに記憶されており、かつデバイスの特性変動の周期が既知である場合には、デバイスの特性変動の周期に基づいて、デバイスの特性が現在の特性と同一の特性であったと推定される時期を判断し、判断した時期又は判断した時期に最も近い時期に作成されたベースデータを、使用対象のベースデータとの類似度が最大のベースデータと判定するようにしてもよい。
ステップ184では、ステップ182で読み出したベースデータを使用対象の色予測モデルにセットし、次のステップ186では、ステップ98で抽出した低精度部分色領域内の任意の色を表す第1色値を、ステップ184でベースデータをセットした色予測モデルに入力する。そしてステップ188では、ステップ186における第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値を上記の第1色値と対応付け、使用対象のベースデータ中の低精度部分色領域のデータを補完する補完データとしてメモリ14Bに記憶させる。ステップ190では所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されたか否か判定する。なお、上記の所定数は固定値としてもよいが、ステップ94で比較した代表色差と閾値との偏差に応じて変更する(偏差が大きくなるに従って所定数の値を大きくする)ようにしてもよい。
ステップ190の判定が否定された場合はステップ186に戻り、ステップ190の判定が肯定される迄ステップ186〜ステップ190を繰り返す。そして、所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されると、ステップ190の判定が肯定されてステップ138へ移行し、メモリ14Bに蓄積した補完データを使用対象のベースデータへ追加する。なお、次のステップ140以降の処理は第3実施形態に係るベースデータ判定処理と同一であるので説明を省略する。
なお、本第5実施形態に係るベースデータ判定処理において、ステップ80〜92及びステップ98は請求項9に記載の低精度領域検知手段、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応しており、ステップ180〜ステップ190及びステップ138は請求項4に記載の取得手段、より詳しくは請求項7,9に記載の取得手段に対応している。
このように、本第5実施形態に係るベースデータ判定処理は、第3実施形態及び第4実施形態と同様に、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定した場合に、適正な色変換が行われるように補完データを生成してベースデータへ追加する処理を自動的に行うので、この補完データの追加により低精度部分色領域における色変換の精度が向上し、指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)を得ることが可能となる。また、本第5実施形態では、使用対象のベースデータと類似度の高いベースデータを判定し、この類似度の高いベースデータを使用対象の色予測モデルにセットして補完データを求めているので、当該補完データとして高精度な色変換を実現できる適正なデータが高い確率で得られる。従って、使用対象としてユーザが指定したベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであった場合に、当該組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)が得られる確率を向上させることができ、上記場合に適正な色変換条件を得るためのユーザの負担を更に軽減することができる。
〔第6実施形態〕
次に本発明の第6実施形態について説明する。本第6実施形態に係るベースデータ判定処理(図11)は、使用対象のベースデータと色予測モデルから生成されるプロファイルと異なるプロファイルを用いて補完データを生成する点で第3実施形態〜第5実施形態と相違している。
すなわち、本第6実施形態に係るベースデータ判定処理では、代表色差が閾値以上であったためにステップ94の判定が否定され(ベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定され)、ステップ98で低精度部分色領域を抽出すると、次のステップ200において、プロファイルDBに記憶されている各プロファイルについて、使用対象のベースデータと色予測モデルから生成されるプロファイル(便宜的に基準プロファイルと称する)との類似度を評価し、ステップ202では、ステップ200における類似度の評価結果に基づいて、基準プロファイルとの類似度の高いプロファイルを判定し、当該プロファイルをプロファイルDBから読み出す。
なお、ステップ200、202におけるプロファイルの類似度の評価・判定は、例えば例えば基準プロファイルを色変換用のCLUTにセットし、基準プロファイルをセットしたCLUTに複数の第1色値を順次入力し、第1色値の入力に伴ってCLUTから順次出力される第2色値を入力した第1色値と対応付けて基準データとして記憶した後に、特定のプロファイルをCLUTにセットし、基準データとして記憶した複数の第1色値を特定のプロファイルをセットしたCLUTに順次入力し、CLUTから順次出力される第2色値について、基準データとして記憶した第2色値との色差を各々演算・記憶し、得られた複数の色差から代表色差(例えば色差の平均値等)を演算することを、プロファイルDBに記憶されている個々のプロファイルについて各々行い、代表色差が最小のプロファイルを基準プロファイルとの類似度が最大のプロファイルとして選択することで行うことができる。
なお、上記のように基準プロファイルをCLUTにセットして第1色値を入力することで、基準データとしての第1色値と第2色値の組を取得することに代えて、基準プロファイルに設定されている第1色値と第2色値の組をそのまま基準データとして基準プロファイルから抽出するようにしてもよい。
ステップ204では、ステップ202で読み出したプロファイルを色変換用のCLUTにセットし、次のステップ206では、ステップ98で抽出した低精度部分色領域内の任意の色を表す第1色値を、ステップ204でプロファイルをセットしたCLUTに入力する。そしてステップ208では、ステップ206における第1色値の入力に伴って色予測モデルから出力された第2色値を上記の第1色値と対応付け、使用対象のベースデータ中の低精度部分色領域のデータを補完する補完データとしてメモリ14Bに記憶させる。ステップ210では所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されたか否か判定する。なお、上記の所定数についても、ステップ94で比較した代表色差と閾値との偏差に応じて変更してもよい(偏差が大きくなるに従って所定数の値を大きくする)。
ステップ210の判定が否定された場合はステップ206に戻り、ステップ210の判定が肯定される迄ステップ206〜ステップ210を繰り返す。そして、所定数の補完データがメモリ14Bに蓄積されると、ステップ210の判定が肯定されてステップ138へ移行し、メモリ14Bに蓄積した補完データを使用対象のベースデータへ追加する。なお、次のステップ140以降の処理は第3実施形態に係るベースデータ判定処理と同一であるので説明を省略する。
なお、本第6実施形態に係るベースデータ判定処理において、ステップ80〜92及びステップ98は請求項9に記載の低精度領域検知手段、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応しており、ステップ200〜ステップ210及びステップ138は請求項4に記載の取得手段、より詳しくは請求項8,9に記載の取得手段に対応している。
このように、本第6実施形態に係るベースデータ判定処理は、第3実施形態〜第5実施形態と同様に、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定した場合に、適正な色変換が行われるように補完データを生成してベースデータへ追加する処理を自動的に行うので、この補完データの追加により低精度部分色領域における色変換の精度が向上し、指定されたベースデータと色予測モデルの組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)を得ることが可能となる。また、本第6実施形態では、使用対象のベースデータ色予測モデルから生成されるプロファイル(基準プロファイル)と類似度の高いプロファイルを判定し、この類似度の高いプロファイルをCLUTにセットして補完データを求めているので、当該補完データとして高精度な色変換を実現できる適正なデータが高い確率で得られる。従って、使用対象としてユーザが指定したベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであった場合に、当該組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)が得られる確率を向上させることができ、上記場合に適正な色変換条件を得るためのユーザの負担を更に軽減することができる。
〔第7実施形態〕
次に本発明の第7実施形態について説明する。本第7実施形態に係るベースデータ判定処理(図12)は、補完データを生成することに代えて色予測モデルのパラメータを変更する点で第3実施形態〜第6実施形態と相違している。
色予測モデルのアルゴリズムとしては、一般に、入力色空間(入力色値の色空間)内の特定位置に対し該特定位置を中心として所定サイズのデータ参照領域を設定し、ベースデータを構成するデータのうち設定したデータ参照領域内の色のデータ(入力色値と出力色値の組)に基づいて特定位置及びその付近における色変換条件(入力色値と出力色値との関係)を推定演算することを、入力色空間内の各位置について各々行うことで、入力色空間内の全域について入力色値と出力色値との関係を推定演算するアルゴリズムが採用される。このため、色予測モデルにセットされたベースデータにおいて、入力色空間内の或る位置を中心として設定したデータ参照領域内の色を表すデータの数が不足している場合、色予測モデルによって生成される色変換条件は、前記或る位置及びその付近における色変換の精度が低下する。一方、上記場合に、データ参照領域のサイズを拡大したとすると、前記或る位置及びその付近における色変換条件の推定演算に際して参照されるデータの数が増加することで、生成される色変換条件の精度が改善される。
上記に基づき本第7実施形態に係るベースデータ判定処理では、代表色差が閾値以上であったためにステップ94の判定が否定され(ベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定され)、ステップ98で低精度部分色領域を抽出すると、次のステップ220において、使用対象の色予測モデルに対し、低精度部分領域付近における色変換条件の推定演算に際してデータ参照範囲のサイズが拡大されるようにパラメータを変更する。なお、次のステップ140以降の処理は、ステップ142において、低精度部分色領域に対応するデータの一部を除外したベースデータを、ステップ220でパラメータを変更した使用対象の色予測モデルにセットする点以外は第3実施形態に係るベースデータ判定処理と同一であるので説明を省略する。また、本第7実施形態において、ステップ220でパラメータを変更した色予測モデルは、色管理システムによる色変換処理(図4)でプロファイルを生成する際にも用いられる。
なお、本第5実施形態に係るベースデータ判定処理において、ステップ80〜92及びステップ98は請求項10に記載の低精度領域検知手段、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として色差が他の部分色領域よりも大きい部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応しており、ステップ200は請求項10に記載の拡大手段に対応している。
このように、本第7実施形態に係るベースデータ判定処理は、使用対象として指定されたベースデータと色予測モデルが不適切な組合わせと判定した場合に、低精度部分領域付近における色変換条件の推定演算に際して参照範囲のサイズが拡大されるように使用対象の色予測モデルのパラメータを変更しているので、低精度部分色領域及びその付近における色変換条件(第1色値と第2色値との関係)が色予測モデルによって推定演算される際に、より多数のデータに基づいて色変換条件が推定演算されることになり、低精度部分色領域及びその付近における色変換条件の精度を向上させることができる。従って、使用対象としてユーザが指定したベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであった場合に、当該組合わせから適正な色変換条件(プロファイル)が得られる確率を向上させることができ、上記場合に適正な色変換条件を得るためのユーザの負担を更に軽減することができる。
なお、第3実施形態〜第7実施形態で説明したベースデータ判定処理では、使用対象のベースデータから一部データを除外したときの各部分色領域毎の色差に基づいて、ベースデータと色予測モデルが適正な組合わせか否かの判定及び低精度部分色領域の抽出を行っていたが、これに代えて、第2実施形態でも説明したように、ベースデータを構成するデータのうち個々の部分色領域に対応するデータの数(使用対象のベースデータに占める個々の部分色領域に対応するデータの割合)に基づいて上記の判定及び抽出を行うようにしてもよい。当該態様において、低精度部分色領域の抽出に係るステップ(第2実施形態に係るベースデータ判定処理のステップ110〜122及びステップ99に相当するステップ)は、請求項9に記載の低精度領域検知手段、より詳しくは請求項14に記載の「低精度部分色領域として、対応するデータの数が他の部分色領域よりも少ない部分色領域を検知する」低精度領域検知手段に対応している。
また、第3実施形態〜第7実施形態で説明したベースデータ判定処理において、ステップ100でベースデータと色予測モデルの組合わせが不適切な組合わせであることを通知した後に、第1実施形態に係るベースデータ判定処理(図5)のステップ102、104と同様に、必要に応じて依頼メール又は質問メールを送信するようにしてもよい。また、第3実施形態〜第7実施形態で説明したベースデータ判定処理では、使用対象のベースデータに補完データを追加した後に、ステップ140〜ステップ148で低精度領域における色変換の精度を再度判定しているが、これに限定されるものではなく、使用対象のベースデータへの補完データの追加を行った後、低精度領域における色変換の精度を再度判定することなく処理を終了するようにしてもよいし、低精度領域における色変換の精度を再度判定し、低精度領域における色変換の精度が低い(色差が閾値以上の)場合には、補完データの生成・追加を再度行うようにしてもよい。
また、使用対象のベースデータ及び色予測モデルが不適切な組合わせであると判定した場合に、第3実施形態〜第6実施形態では、補完データを生成して使用対象のベースデータに追加する処理を行う態様を、第7実施形態では色予測モデルのパラメータを変更する態様を各々説明したが、使用対象のベースデータ及び色予測モデルが不適切な組合わせであると判定した場合に、上記の補完データの生成・追加と色予測モデルのパラメータ変更を各々行うようにしてもよいことは言うまでもない。