以下に添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態においては、商業印刷用の画像処理システムを例とする。画像処理システムにおけるPC(Personal Computer)等の汎用情報処理装置は、画像形成(出力)するべき対象の画像データ(出力対象データ)を取得する。そして、出力条件に基づいて当該画像データを画像形成装置の色域特性に応じて色変換し、CMYK(Cyan Magenta Yellow blacK)等の画像形成出力用の形式に変換する。その後、変換された画像データは、画像形成装置に送信されて出力(印刷)される。
図1は、本実施形態にかかる画像処理システムの全体構成図の一例である。図1に示すように、本実施形態にかかる画像処理システム1は、画像形成装置100、コントローラ端末であるPC200、ファイルサーバ300、およびデジタルカメラ400を含んで構成されている。また、画像形成装置100、PC200、およびファイルサーバ300は、図1に示すようにネットワークを介して接続されている。
画像形成装置100は、インクジェット方式や電子写真方式等の画像形成エンジンを含む装置であり、PC200から送信された画像データに基づいて用紙上に画像を出力(印刷)する。なお、画像形成装置100が画像出力装置の一例である。
PC200は、上述したように画像形成出力するべき対象の画像データを取得し、出力条件に基づいてカラーマッチング等の画像処理を行う。また、本実施形態に係るPC200は、上記カラーマッチングを行う前後の画像の色味の変化をオペレータが容易に確認できるような画面を表示する機能を有する。なお、PC200が画像処理装置の一例である。
ファイルサーバ300は、PC200と同様に情報処理装置によって構成され、ネットワークを介してアクセス可能な記憶領域を提供する。本実施形態において、ファイルサーバ300は、出力対象となり得る画像データを格納しており、PC200からのアクセスに応じて画像データを提供する画像入力装置として機能する。
デジタルカメラ400は、画像情報の撮影装置であり、ファイルサーバ300と同様に、出力対象となり得る画像データをPC200に提供する画像入力装置として機能する。なお、画像入力装置として運用可能な装置としては、図1に示すファイルサーバ300、デジタルカメラ400の他、スキャナ等があり得る。
次に、本実施形態にかかるPC200のハードウェア構成について説明する。図2は、本実施形態にかかるPCのハードウェア構成図である。図2に示すように、本実施形態のPC200は、一般的な情報処理端末と同様の構成を有している。
本実施形態にかかるPC200は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、HDD(Hard Disk Drive)40、およびI/F50がバス80を介して接続されている。また、I/F50にはLCD(Liquid Crystal Display)60および操作部70が接続されている。なお、本実施形態にかかる画像形成装置100は、図2に示すような構成に加えて、画像形成を実行するエンジンを有している。
CPU10は、演算手段であり、PC200全体の動作を制御する。RAM20は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM30は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。
HDD40は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーション・プログラム等が格納されている。また、本実施形態のHDD40には、PC200が画像処理を実行する際に参照するための情報が記憶されている。これについては後に詳述する。
I/F50は、バス80と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD60は、ユーザがPC200の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部70は、キーボードやマウス等、ユーザがPC200に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
このようなハードウェア構成のPC200では、ROM30やHDD40、もしくは光学ディスク等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM20に読み出され、CPU10の制御に従って動作することにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るPC200の機能を実現する機能ブロックが構成される。
次に、図3を参照して、本実施形態のPC200の機能構成について説明する。図3は、本実施形態にかかるPCの機能ブロック図の一例である。図3に示すように、本実施形態のPC200は、図2において説明したHDD40、LCD60および操作部70に加えて、コントローラ200CおよびネットワークI/F90を含んでいる。また、コントローラ200Cは、ネットワーク制御部201、表示制御部202、操作制御部203、および画像処理部210を含んでいる。
ネットワークI/F90は、PC200がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。ネットワークI/F90は、図2に示すI/F50によって実現される。
コントローラ200Cは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM30や不揮発性メモリ並びにHDD40や光学ディスク等の不揮発性記憶媒体に格納されたプログラムが、RAM20等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、そのプログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ200Cが構成される。コントローラ200Cは、PC200を制御する制御部である。
ネットワーク制御部201は、ネットワークI/F90を介して入力される情報を取得すると共に、ネットワークI/F90を介して他の機器に情報を送信する。表示制御部202は、画像処理部210のGUI(Graphical User Interface)等、PC200の状態をLCD60に表示させる。操作制御部203は、操作部70に対するユーザによる操作の信号を取得し、画像処理部210等のPC200において動作するソフトウェアに入力する。
画像処理部210は、RAM20に読み出されたアプリケーション・プログラムに従ってCPU10が演算を行うことにより構成されている。画像処理部210は、画像形成装置100に画像形成出力を実行させる際に、複数の出力条件に基づいて、出力対象の画像データの形式を変換すると共に、画像形成装置100によって出力される画像の色味がより出力対象の画像データの色味に忠実になるように色域の変換を行う。画像処理部210は、画像形成装置100による画像形成出力の色味の特性を示す出力プロファイルに基づいて上記色域の変換を行う。
そして、画像処理部210は、実際に出力(印刷)する画像データ(出力画像データ)を決定し、ネットワーク制御部201は、決定された出力画像データを画像形成装置100に送信し、画像形成装置100において出力画像データが出力される。
ここで、出力条件とは、画像形成装置100において出力される際に設定される条件であって、1つもしくは複数の候補があることが考えられるが、1つの場合はそのまま出力対象が決定されるため、以下の実施形態では、出力条件に複数の候補がある前提で説明する。また、それぞれの出力条件には、具体的には例えば以下のような情報が含まれている。
出力機器 :印刷機種、機器の型番、ステーションの配置、等
生産性 :ppm(page per minute)/mpm(meter per minute)設定、等
印刷モード:1パス印刷か2パス印刷か、等
色材 :使用色の有無、色材の型番、等
先塗り :有無、先塗材の型番、塗布量、等
後塗り :有無、後塗材の型番、塗布量、等
RIP :開発元、バージョン、等
解像度 :度数、等
用紙 :用紙種、用紙名、等
図4は、画像処理部が有する機能ブロックの説明図である。図3、4に示すように、画像処理部210は、さらに、画像取得部220と、画像変換部221と、色特徴量算出部222と、コスト算出部223と、出力条件決定部224と、を有している。以下では、図4を参照しながら、画像処理部210の概要について説明する。そして、図6以降で各部のさらに具体的な内容を説明する。
図4に示すように、本実施形態のPC200は、記憶部401、402、403、404が備えられており、これらはHDD40により実現される。記憶部401は、入力プロファイルが記憶されており、記憶部402は、出力プロファイルが記憶されており、記憶部403は、コストテーブルが記憶されており、記憶部404は、重み付けテーブルが記憶されている。
画像取得部220は、入力画像データを取得する。本実施形態では、画像取得部220は、ファイルサーバ300からネットワークI/F90およびネットワーク制御部201を経由して、入力画像データを受信する。なお、入力画像データの取得はこれに限らず、例えばデジタルカメラ400から撮像された画像データを取得してもよい。
画像変換部221は、受信した入力画像データを画像変換して、複数の出力条件それぞれに対応する出力画像データを生成する。本実施形態では、画像変換部221は、まず、入力画像データに対して、記憶部401に記憶されている入力プロファイルを元に入力側のデバイス依存の色空間データ(例:RGB:Red Green Blue)からデバイス非依存の色空間データ(例:L*a*b*)に変換する。
ここで、入力プロファイルとは、RGB色空間によって表現された画像をL*a*b*色空間によって表現された画像に変換するための情報である。すなわち、例えば、本実施形態の入力プロファイルは、RGB形式によって表現された色の値とL*a*b*形式によって表現された色の値とが1:1に対応づけられたルックアップテーブルの情報である。
次に、画像変換部221は、候補となっている複数の出力条件のうち、1つの出力条件に紐づいた出力プロファイルを元に、上述のデバイス非依存の色空間データを、出力機器である画像形成装置100に応じたデバイス依存の色空間データ(例:CMYK)に変換し、出力画像データを生成する。
ここで、出力プロファイルとは、L*a*b*色空間によって表現された画像を、単純にCMYK形式によって表現された画像に変換するための情報である。すなわち、例えば、本実施形態の出力プロファイルは、L*a*b*形式によって表現された色の値と、CMYK形式によって表現された色の値とが1:1に対応づけられたルックアップテーブルの情報である。
なお、一般的に出力プロファイルは、1つもしくは複数の出力条件を想定して事前に作成されるものであって、本実施形態では、複数の出力条件それぞれに対して出力プロファイルが紐づいているものとする。
色特徴量算出部222は、画像変換の前後の画像データから、各画素の色特徴の変化量である色特徴量を算出する。本実施形態の色特徴量算出部222は、出力プロファイルによる色変換処理前後のそれぞれのデバイス非依存の色空間データを比較することで、色特徴の変化量を算出し、色特徴量のデータを得る。このように、色特徴量算出部222により費用対効果を判断する上での「効果」を把握することができる。なお、「効果」とは、出力画像の品質がどの程度かを示す。具体的には、効果が高い場合は出力画像の品質が高く、効果が低い場合は出力画像の品質が低いことを示す。
コスト算出部223は、出力条件および出力画像データに基づいて、複数の出力条件それぞれに対応する出力画像データのコストを示すコスト情報を算出する。すなわち、コスト算出部223は、出力画像データによる色材使用量や出力条件内の情報から、コストテーブルを参照してコストを算出してコスト情報を得る。
ここで、コストテーブルとは、例えば、出力条件の各項目に対応させてコスト情報が設定されたテーブルであるが、この設定値は固定したままでもよいし、都度編集するようにして構成してもよい。このように、コスト算出部223により費用対効果を判断する上での「費用」を把握することができる。
出力条件決定部224は、色特徴量算出部222により算出された色特徴量による「効果」の情報と、コスト算出部223により算出されたコスト情報による「費用」の情報と、出力条件の項目に対する重みが設定された重み付けテーブルとを参照して、費用対効果を算出する。
図5は、重み付けテーブルの一例を示す図である。例えば、図5(a)に示すように、重み付けテーブルには、「効果」を算出する際に使用する係数α1、α2と、それぞれの係数に対応する重み値とが対応付けて記憶される。また、例えば、図5(b)に示すように、重み付けテーブルには、「費用」を算出する際に使用する係数β1、β2、β3、β4、β5、β6、β7、β8、β9と、それぞれの係数に対応する重み値とが対応付けて記憶される。なお、図5に示す「重み値」の値は一例であり、管理者やユーザは規定し直すことができる。また、「効果」と「費用」との算出例については後述する。
ここで、重み付けテーブルとは、例えば、出力条件の各項目に対応させて重要度が設定されたテーブルであるが、この設定値は固定したままでもよいし、都度編集するようにして構成してもよい。
このような一連の処理により、1つの出力条件に対する費用対効果を把握することができる。ここで、もし他にも出力条件の候補がある場合は、別の出力条件を候補に設定し、再度費用対効果の算出処理を繰り返す。
そして、出力条件決定部224は、費用対効果の最も高い出力条件を選択し、その出力条件に基づく出力画像データを画像形成装置100において出力する対象画像として決定し、実際に出力する出力対象データを得る。つまり、各出力条件に対して、それによって得られる効果の違いを定量化して費用対効果を算出し、当該費用対効果の情報を元に出力条件を決定できる。なお、費用対効果を表示し、ユーザによる出力画像データの選択を受け付けて、出力条件を決定してもよい。
次に、図6を参照して、画像変換部221および色特徴量算出部222が有する機能ブロックについて説明する。図6は、本実施形態にかかる画像変換部および色特徴量算出部が有する機能ブロックの説明図である。
本実施形態の画像変換部221は、さらにL*a*b*変換部2211と、ガマット圧縮部2213と、ガマット調整部2214と、出力装置依存情報変換部2216と、を備えている。また、色特徴量算出部222は、さらに変化量抽出部2221を備えている。
画像変換部221には、まず出力対象の画像データとしてRGB(Red Green Blue)の入力画像データが入力される。入力画像データは、上述のようにファイルサーバ300からネットワークI/F90およびネットワーク制御部201を経由して受信され、データ形式はRGBを例として説明する。
L*a*b*変換部2211は、入力プロファイルを用いて、入力側のデバイス依存の色空間データである入力画像データを、デバイス非依存の色空間データに変換するものであって、第1の画像変換部に相当する。
具体的には、画像変換部221に入力画像データが入力されると、L*a*b*変換部2211は、HDD40に格納されている入力プロファイルに基づいてRGBの入力画像データをL*a*b*データに変換する。
ここで、L*a*b*データとは、人の視覚に応じた色表現の数値系であるL*a*b*色空間によって表現されたデータである。なお、本実施形態では入力画像データをRGB形式の画像データとしているが、これに限定する必要はなく、例えばCMYK形式のデータでもよい。入力プロファイルは上述と同様である。
L*a*b*変換部2211によるL*a*b*変換処理は、入力されるRGBの入力画像データに含まれる画素の色の範囲や、画像形成装置100が表現可能な色域に関わらず、単純にRGB形式をL*a*b*形式に変換する処理である。L*a*b*変換部2211によって生成されたL*a*b*データは、デバイス非依存のL*a*b*データであり、ガマット圧縮がおこなわれる前の圧縮前L*a*b*データとなる。L*a*b*変換部2211によって生成された圧縮前L*a*b*データは、ガマット圧縮部2213に入力される。
ガマット圧縮部2213は、出力プロファイルに基づいて、圧縮前L*a*b*データをガマット圧縮する。ガマット圧縮とは、画像形成出力を実行する画像形成装置100が表現可能な色域に応じて、デバイス非依存のL*a*b*データを画像形成装置100が表現可能な色域に限定されたL*a*b*データ、すなわちデバイス依存のL*a*b*データに変換する処理である。
図7は、ガマット圧縮の概念を示す図である。図7に示すように、L*a*b*のうちa*b*、すなわち色差成分を直交する座標によって表現している。図7において実線で示されているAは、デバイス非依存のL*a*b*色空間、すなわちL*a*b*色空間全体を示す枠である。他方、図7において破線で示されているBは、L*a*b*色空間全体のうち、画像形成装置100によって再現可能な色域を示す枠である。
画像形成装置100に限らず一般的な画像形成装置では、色空間の全ての色を再現することはできない。従って、画像形成装置によって画像形成出力を実行する場合、出力対象の画像データに含まれる色が、画像形成装置によって再現可能な色の範囲に収まるように変換する必要がある。図7で説明すると、Aの範囲によって表現される画像を、Bの範囲によって表現される画像に変換する処理がガマット圧縮処理である。
出力プロファイルは上述と同様であり、ガマット圧縮部2213は、出力プロファイルのルックアップテーブルを参照することによって、圧縮前L*a*b*データをガマット圧縮して圧縮後L*a*b*データを生成する。
また、ガマット圧縮部2213は、ガマット調整部2214から入力されるパラメータに従って、ガマット圧縮の処理内容を調整する。ガマット調整部2214は、ユーザによる操作部70への操作に応じて操作制御部203から入力される信号に従ってガマット圧縮部2213にパラメータを入力する。ガマット圧縮部2213によって生成された圧縮後L*a*b*データは、出力装置依存情報変換部2216に入力される。
出力装置依存情報変換部2216は、出力プロファイルに基づいて、圧縮後L*a*b*データを出力装置依存情報に変換することで、出力画像データを生成する。なお、出力装置依存情報となる色版データはCMYKを例としているが、これに限定する必要はなく、出力条件ならびにそれに紐付けられている出力プロファイル次第で、例えばCMYKに加えてO(Orange)、G(Green)、V(Violet)といった多色の版によって構成されてもよい。
出力装置依存情報変換部2216によって生成された出力画像データは、ネットワーク制御部201により、ネットワークを介して画像形成装置100に送信される。そして、画像形成装置100が、このPC200から受信した出力画像データを出力する。
このように、本実施形態に係る画像変換部221は、PC等の情報処理装置においてRGB形式でやりとりされる画像データの色味を画像形成装置100の再現可能な色空間に合わせ、より忠実な色味によって画像形成出力がされるように処理した上で、CMYK形式の画像データに変換する。なお、ガマット圧縮部2213、ガマット調整部2214、および出力装置依存情報変換部2216が第2の画像変換部に相当する。
また、色特徴量算出部222は、ガマット変換前とガマット変換後のデバイス非依存色空間データの色値を、デバイス非依存色空間上で比較することで、色特徴量を算出する。
具体的には、ガマット圧縮部2213によるガマット圧縮の影響を解析し、その影響を画質の良し悪しを把握できる情報として算出する。図6に示すように、画像変換部221の各処理の過程によって生成された圧縮前L*a*b*データおよび圧縮後L*a*b*データが色特徴量算出部222のガマット変換前後の変化量抽出部2221に入力される。
変化量抽出部2221は、ガマット変換前後の圧縮前L*a*b*データおよび圧縮後L*a*b*データにおいてそれぞれ対応する画素の色の値を比較し、ガマット変換によって各画素の色がどの程度変化したかを示す変化量を算出して、色特徴量を得る。
変化量抽出部2221は、当該変化量を算出する際、ガマット変換前後の圧縮前L*a*b*データの画素と圧縮後L*a*b*データの画素との相違度を算出するための計算式を用いて計算を行う。この計算式は、一般的な色差の計算式を用いることができるが、本実施形態においては、L*a*b*データに基づいて色味の変化量を求めるため、L*a*b*データそれぞれの要素の二乗の平方根を求める式を用いることが可能である。その他にも、色味の変化量を求める方法として、CIE1994色差式や、CIE2000色差式等を用いてもよい。加えて、ガマット変換後のガマット体積の大きさを算出することで、大局的な色表現力の大きさを把握することもできる。
以上から、画像処理部210は、各出力条件に合わせて、画像変換する際にICC(International Color Consortium)プロファイルを用いて画像変換することで、出力画像データを生成することができる。また、画像変換の際にデバイス非依存色空間上でその差を数値化することや、ガマット体積を算出することで色変換の精度を客観的に確認することができる。
次に、図8を参照して、コスト算出部223が有する機能ブロックについて説明する。図8は、本実施形態にかかるコスト算出部が有する機能ブロックの説明図である。
コスト算出部223は、出力条件および画像変換部221により生成された出力画像データを入力情報として、出力条件の項目と当該項目のコスト値とを対応付けたコストテーブルを参照し、コスト情報を算出するものであり、静的コスト算出部2232と、動的コスト算出部2233とを有している。
静的コスト算出部2232は、出力画像データに依らない出力条件に対応するコスト値に基づく静的コスト情報を算出する。また、動的コスト算出部2233は、出力画像データに依る出力条件に対応するコスト値に基づく動的コスト情報を算出する。コスト情報は、静的コスト情報と動的コスト情報とから成る。
出力条件には、上述したような複数の項目があって、コストテーブルは、これらの項目と当該項目に対するコスト値とを対応付けたテーブルである。図9−1、図9−2は、コストテーブルの一例を示す図である。例えば、図9−1(a)は、出力条件の項目である出力機器(機種)と、当該出力機器を使用した場合のコスト値が対応付けられた出力機器のコストテーブルを示している。
同様に、図9−1(b)は、出力条件の項目である生産性とコスト値が対応付けられた印刷スピードのコストテーブルである。また、図9−1(c)は、出力条件の項目である印刷モードとコスト値が対応付けられた印刷モードのコストテーブルである。
また、図9−1(d)は、出力条件の項目である色材とコスト値が対応付けられた色材のコストテーブルである。また、図9−2(e)は、出力条件の項目である先塗材とコスト値が対応付けられた先塗材のコストテーブルである。また、図9−2(f)は、出力条件の項目である後塗材とコスト値が対応付けられた後塗材のコストテーブルである。
また、図9−2(g)は、出力条件の項目であるRIPとコスト値が対応付けられたRIPのコストテーブルである。また、図9−2(h)は、出力条件の項目である解像度とコスト値が対応付けられた解像度のコストテーブルである。また、図9−2(i)は、出力条件の項目である用紙とコスト値が対応付けられた用紙のコストテーブルである。
図10は、算出されたコスト情報を示す説明図である。図10(a)は、コストテーブルを参照した結果であるコスト情報を示している。図10(a)に示すコスト情報の例では、3列目に示す出力条件Aの場合、各コストテーブルを参照してその出力条件Aに応じて取得したコスト値が4列目に示す結果となる。
図10(b)は、静的コスト情報の一例である。図10(b)に示すように、項番#1、3、7、8の項目は、出力画像データの内容やその枚数に依らず一定のものである。従って、静的コスト算出部2232が、これらの項目のコスト値を加算することで静的コスト情報を算出する。
図10(c)は、動的コスト情報の一例である。図10(c)に示すように、項番#2、4、5、6、9の項目は、出力画像データの内容やその枚数に依り変動する。従って、動的コスト算出部2233が、これらの項目に対する1job分の総量を計算した上で、コスト値を加算することで動的コスト情報を算出する。なお、図10(c)では、1jobあたり10枚分の画像がある例を示している。
特に#4の色材のように、原稿データの内容に依存して量が決まるものは、出力画像データを参照して算出する。なお、色材の量を算出する際は、各画素値から使用色材量を概算することで処理効率を上げてもよいし、ハーフトーンスクリーン処理まで実施した上で、ドット単位で色材量を確認するようにして見積もり精度を上げてもよい。
なお、図10に示す例では、一般的な観点から項番♯1、3、7、8を静的コスト情報、項番♯2、4、5、6、9を動的コスト情報、として項目を分けたが、項目を図10(b)(c)の内容で固定する必要はなく、例えば全て動的コストという扱いにして計算してもよいし、その逆でもよい。
次に、図11を参照して、出力条件決定部224が有する機能ブロックについて説明する。図11は、本実施形態にかかる出力条件決定部が有する機能ブロックの説明図である。出力条件決定部224は、色特徴量算出部222により算出された色特徴量と、コスト算出部223により算出されたコスト情報とを入力情報として、重み付けテーブルを参照した上で費用対効果を算出し、出力に用いる出力条件を決定し、決定した出力条件に基づいて生成された出力画像データを得る。重み付けテーブルは上述したように、出力条件の各項目について重要度が設定されている。
本実施形態の出力条件決定部224は、さらに効果算出部2241と、費用算出部2242と、出力候補抽出部2243と、情報表示部2244と、選択受付部2245と、プレビュー画像生成部2246と、を備えている。
効果算出部2241は、図5(a)に示す重み付けテーブルを参照して、色特徴量により出力画像データの出力時の効果を算出する。具体的には、効果算出部2241は、以下の式を用いて効果を算出する。
効果=α1×1/(色差ΔE)+α2×ガマット体積
色特徴量のデータは、上述したように、デバイス非依存色空間上で数値化されており、色差ΔEが小さいほど色再現精度が高いため、効果算出部2241は、例えば、効果として色特徴量の数値の逆数を計算することで効果の大きさを算出する。一方、ガマット体積の場合は、その数値が大きいほど効果が大きいといえる。また、効果算出部2241は、重み付けテーブルを参照することで、注目する色域を限定したり、特定色に関して重視することもできる。
費用算出部2242は、図5(b)に示す重み付けテーブルを参照して、コスト情報により出力画像データの出力時の費用を算出する。具体的には、費用算出部2242は、以下の式を用いて費用を算出する。
費用=β1×出力機器+β2×生産性+β3×印刷モード+β4×色材+β5×先塗材+β6×後塗材+β7×RIP+β8×解像度+β9×用紙
コスト情報のデータは、上述したように数値化されているため、費用算出部2242は、この数値の大きさでコストの大きさを算出する。また、費用算出部2242は、重み付けテーブルを参照することで、注目する項目を限定したり、特定の項目に関して重視することもできる。
出力候補抽出部2243は、効果算出部2241で算出した効果を、費用算出部2242で算出した費用で除すること(効果/費用)で、出力条件のそれぞれにおいて費用対効果を算出して候補として列挙する。ここでは、出力候補抽出部2243は、これらの候補の中から、費用対効果の最も高い出力条件により変換された出力画像データを、画像形成装置100において出力する出力対象データと決定する。
このように、重み付けテーブルを用いることにより、例えば、色特徴量において注目する画素の重要度(例えば、黄色成分は色差が大きくても気にしない等)に応じて算出した色差の扱いに偏りを持たせたり、コスト情報において、重視する色材とそうでないものに偏りを持たせたり(例えば、Kインクは大量に在庫があるので算出結果に加味しない等)する運用ができ、ユーザの都合を加味した上で費用対効果を計算することができる。
情報表示部2244は、各種情報を表示するものであって、例えば、複数の出力条件や、複数の出力条件それぞれに対する費用対効果を表示したり、プレビュー画像生成部2246によって生成されたプレビュー画像を表示する。情報表示部2244は、各種情報を画面表示データに変換し、表示制御部202を経由してLCD60により表示してユーザに提供する。
ここで、画面表示データは、例えばそれぞれの出力条件に対する色差ΔEによる色再現精度の情報やガマット体積の情報、コスト情報などである。さらに、画像表示データは、重み付けテーブルによる重み付けを加味した結果で「効果/費用」の算出結果群をリスト表示するようにしてもよい。また、算出結果群が多くなることでユーザが混乱する可能性も考慮して、例えばGUI上で費用対効果(「効果/費用」)の高い順に表示したり、項目別でソートしたり、範囲値を設定してスクリーニングできるようにしてもよい。
なお、ユーザによる判断から重み付けテーブル自体を再設定した場合、出力候補抽出部2243は、結果を得るまでの一連の処理をやり直すように構成してもよい。
また、ユーザにより画像形成装置100において出力する出力対象データが決定される構成としてもよい。つまり、上述のような画像表示データ(複数の出力条件とそれらに対する費用対効果)を提示されたユーザが、出力条件の候補群から画像形成装置100により出力させる際に用いる出力条件を選択すると、操作部70を用いて操作制御部203を経由して、選択情報として選択受付部2245に入力される。
選択受付部2245は、情報表示部2244により表示された複数の出力条件のうち、ユーザによる所望の出力条件の選択を受け付ける。選択受付部2245は、選択情報による選択に基づいて、出力画像データを決定する。
プレビュー画像生成部2246は、画像変換部221により変換された、複数の出力条件それぞれに対応する出力画像データを入力情報として、プレビュー画像を生成する。生成されたプレビュー画像は情報表示部2244により表示制御部202を経由して表示される。プレビュー画像は、費用対効果(効果/費用)の算出結果群と併せてユーザへと提示される。
次に、図12を参照して、プレビュー画像生成部2246が有する機能ブロックについて説明する。図12は、本実施形態にかかるプレビュー画像生成部が有する機能ブロックの説明図である。プレビュー画像生成部2246は、さらに、色差情報生成部461と、ガマット内外判定部462と、画像合成部463と、プレビュー設定部464と、RGB変換部466と、を備えている。そして、PC200は、さらに記憶部405が備えられており、モニタプロファイルが記憶されている。
プレビュー画像生成部2246は、ガマット圧縮部2213によるガマット圧縮の影響を解析し、その影響をユーザが容易に認識できるように画面を生成する。図12に示すように、画像変換部221の各処理の過程によって生成された圧縮前L*a*b*データおよび圧縮後L*a*b*データがプレビュー画像生成部2246の色差情報生成部461に入力されるとともに、圧縮前L*a*b*データおよび出力プロファイルがガマット内外判定部462に入力される。
色差情報生成部461は、圧縮前L*a*b*データおよび圧縮後L*a*b*データにおいてそれぞれに対応する画素の色の値を比較し、ガマット変換によって各画素の色がどの程度変化したかを算出し、その変化量を色差情報に変換する。そして、色差情報生成部461は、出力画像データを構成する各画素が色差情報によって構成されている色差画像データを生成する。
色差情報生成部461は、圧縮前L*a*b*データの画素と圧縮後L*a*b*データの画素との相違度を算出するための計算式に基づいて計算を行う。この計算式は、一般的な色差の計算式を用いることができるが、本実施形態においては、L*a*b*データに基づいて色味の変化量を求めるため、L*a*b*データのそれぞれの要素の二乗の平方根を求める式を用いることが可能である。その他にも、色味の変化量を求める方法として、CIE1994色差式や、CIE2000色差式等を用いてもよい。
ガマット内外判定部462は、圧縮前L*a*b*データおよび出力プロファイルに基づき、出力画像データを構成する画素が画像形成装置100において再現可能な色かどうか判定して、画素毎に再現可否を示すフラグ情報を生成し、出力画像データを構成する各画素のうち少なくとも色再現不可能な領域を示す色再現不可領域データを生成する。
画像合成部463は、色差情報生成部461によって生成された色差画像データ、およびガマット内外判定部462によって生成された色再現不可領域データを画像に変換して合成し、出力画像データのどの部分の色がどの程度変化しているかを示すプレビュー画像L*a*b*データを生成する。画像合成部463は、プレビュー設定部464から入力されるパラメータに従い、プレビュー画像L*a*b*データを生成する際の処理内容を調整する。プレビュー設定部464は、オペレータによる操作部70への操作に応じて操作制御部203から入力される信号に従い、画像合成部463にパラメータを入力する。
パラメータは、プレビュー画像L*a*b*データをどのような形式で表示するかを規定する情報であり、例えば、色差画像データを元に、色差の大きい部分をハイライトして図13(a)のような2D表示にしたり、色差画像データを等高線状データとして扱って図13(b)のような3D表示にしたり、と合成の仕方を設定することで、画像合成部463における処理を通してプレビュー画像L*a*b*データに反映することができる。このようにして生成されたプレビュー画像L*a*b*データは、RGB変換部466に入力される。
RGB変換部466は、モニタプロファイルを参照して、PC200のLCD60の色表現特性に応じて、L*a*b*形式のデータをRGB形式のデータに変換してプレビュー画像RGBデータを生成する。すなわち、RGB変換部466は、デバイス非依存の色空間によって表現された圧縮前L*a*b*データ等に基づいて生成されるプレビュー画像を、PC200のLCD60が表現可能な色空間上によって表現されるRGBデータへと変換する。
ここで、記憶部405に記憶されたモニタプロファイルは、デバイス非依存のL*a*b*形式によって表現された色の値が、LCD60が表現可能な色域に限定されたRGB色空間の色の値に対応づけられたルックアップテーブルの情報である。モニタプロファイルは、LCD60に紐づいて事前に設計されて提供されているのが一般的であり、実体としては例えばPC200のHDDに格納されているものである。
このように、本実施形態においては、画像合成部463による画像の合成処理によって生成された画像情報が、RGB変換部466による処理を経て表示される。すなわち、画像合成部463およびRGB変換部466が連動して、プレビュー画像生成部として機能する。
このようにして生成および出力されたプレビュー画像RGBデータは、表示制御部202に入力される。そして、表示制御部202は、LCD60を制御して、画像処理部210から入力されたプレビュー画像RGBデータを表示する。
つまり、上述したように、各出力条件における費用対効果をユーザに表示(提示)し、ユーザによる選択によって出力条件を決定することで、ユーザに事前に納得してもらった上で出力画像データの出力を実施することができる。さらに、ガマット変換処理によって変化する色値の大きさを視覚的に確認することができ、ユーザが効率よく客観的に、かつ試し印刷をしなくとも費用対効果を把握することができる。
次に、画像形成装置100において出力する対象画像である出力画像データを決定する処理の流れを説明する。図14は、出力画像データの決定処理の流れを示すフローチャートである。
図14に示すように、まず、画像取得部220がファイルサーバ300からネットワークを介して入力画像データを受信(取得)する(ステップS10)。画像変換部221は、入力プロファイルを元にデバイス非依存の色空間データ(例えば、L*a*b*データ)に変換する(ステップS11)。
次に、画像変換部221は、出力条件に紐付いた出力プロファイルを元に、デバイス依存の色空間データ(例えばCMYKデータ)に変換する(ステップS12)。色特徴量算出部222は、色変換前後(ガマット圧縮前後)の画像データから色特徴量を算出する(ステップS13)。
次に、コスト算出部223は、出力画像データ、出力条件、コストテーブルからコスト情報を算出する(ステップS14)。すなわち、コスト算出部223は、出力画像データによる色材使用量や出力条件内の情報から、コストテーブルを参照してコスト情報を得る。
次に、出力条件決定部224は、色特徴量、コスト情報、重み付けテーブルから、費用対効果を算出する(ステップS15)。すなわち、出力条件決定部224は、色特徴量による「効果」の情報と、算出されたコスト情報による「費用」の情報と、出力条件の項目に対する重みが設定された重み付けテーブルとを参照して、費用対効果を算出する。
そして、出力条件決定部224は、他の出力条件の候補があるか否かを判断し(ステップS16)、他の出力条件があった場合(ステップS16:Yes)、出力条件を別の候補に設定して継続し(ステップS17)、ステップS12に戻り処理を繰り返す。
一方、他の出力条件がなかった場合(ステップS16:No)、算出した費用対効果の最も高い出力条件を用いた出力画像データを、画像形成装置100において出力する画像データとして決定する(ステップS18)。
このように、本実施形態の画像処理システム1は、出力条件に対して得られる効果の違いを定量化し、その費用対効果を把握できるため、当該費用対効果に基づいて、所望の出力条件を用いた出力画像データを決定することができる。
本実施形態のPC200で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、本実施形態のPC200で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態のPC200で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
また、本実施形態のPC200で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。本実施形態のPC200で実行されるプログラムは、上述した各部(画像取得部、画像変換部、色特徴量算出部、コスト算出部、出力条件決定部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、上記各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。また、例えば、上述した各部の機能のうちの一部または全部が専用のハードウェア回路で実現されてもよい。