JP3767023B2 - 木材接合部の補強方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、柱や梁等の木材の接合部や、割れが生じた木材等に施す木材の補強方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、木造建築物の柱や梁などに適用される木材同士の接合部は継手、仕口などといわれ、例えば継手では図3(a)の相欠き、同図(b)の蟻、同図(c)の略鎌、同図(d)の鎌などと呼ばれる各種基本形を組み合わせた伝統的な接合方法が用いられており、仕口においても同様の伝統的な接合方法が用いられている。
【0003】
しかし、このような伝統的な木材同士の接合方法は、手間が掛かるだけでなく、引張力に対しての強度が低く、大きな引張力が加わった場合などには、例えば図4(a),(b)の略鎌継手及び鎌継手に示すように、接合部に開きが生じて木材の繊維方向に沿ってせん断破壊を招き易い。このため、このような伝統的な木材の接合方法に加えて、更に梁受け金物や土台金物、ガセットなどの接合金物や補強金物を用いて継手部や仕口部を補強することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、既存の木造建築を接合金具や補強金具を用いて補強する場合には、ガセットなどの補強金物や接合金物がかなり大型化して、その補強工事は大掛かりなものとなり、また見栄えも悪くなって美観が損なわれてしまうので、耐震強度の適格に欠けた既存の木造建築物に対して、耐震補強を施すのが容易でないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、既存の木造建築物に対して、その美観を損なわせることなく簡易な工事で補強でき、かつ新築の木造建築物にも適用し得る木材の補強方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、柱や梁等の木材同士の接合部の補強方法であって、繊維強化シートを、接合される両木材に跨って、木材の3面に亘ってコ字状に、接着剤を併用して貼り付けることを特徴とするもので、在来木構造の弱点である木材同士の接合部に、接着剤を併用しつつ繊維強化シートを張り付けるだけの簡単な作業で補強が行え、耐震強度が不適格な既存の木造建築物に対しても、容易に耐震補強を施すことができ、しかも繊維方向に異方性があるそれぞれの木材の繊維方向に応じて、繊維強化シートの繊維方向を調整することで合理的な補強を行える。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係わる木材の補強方法の実施形態について添付図面に基づき詳細に説明する。
【0008】
図1は2つの木材を長手方向に接合する継手部分を補強する場合の実施例を示し、同図(a)は相欠きによる接合、同図(b)は蟻による接合、同図(c)は略鎌による接合、同図(d)は鎌による接合を示し、これらの継手構造自体は図3に示す従来例と全く同様の伝統的な構造となっている。
【0009】
ここで、同図(a)〜(d)にそれぞれ示すように、2つの木材2,4はその端部同士がそれぞれ各種の伝統的な接合構造で接合されて継ぎ足されている。そして、これらの各種接合構造において、各々の補強要求箇所であるその接合部分には、所定の長さに亘ってその周面の全面を覆って繊維強化シートが巻き付けられて補強され、かつその際には、エポキシ樹脂等でなる合成樹脂接着剤が木材2,4同士の接合面や周面に塗布されて併用される。
【0010】
この繊維強化シートは、炭素繊維やガラス繊維,ビニロン繊維,アラミド繊維等の強化繊維をその繊維方向を縦横に配向してエポキシ樹脂等の合成樹脂で一体的に固めて予めシート状に形成したプリプレグでなり、使用する強化繊維の種類は補強要求箇所に求められる補強強度に合わせて任意に選択し得る。ここで、これらの継手構造の補強にあたっては、繊維強化シートの繊維方向を長手方向に沿わせて指向させる。
【0011】
このようにして、継手による接合部分の周囲に繊維強化シートを巻き付けて補強すれば、引張力は繊維補強シートの対応する方向に配向された繊維が負担して2つの木材間に伝達し合うから、その引っ張り強度の格段の向上が図れる。また、図4に示すような開きが生じようとしても、その開きは周方向に沿って配向された繊維によって拘束されるから、せん断破壊が生じ難くなり接合部の強度は格段の向上が図られる。
【0012】
また、繊維強化シート面には容易に塗装を施せるので、人目に触れやすいような箇所でも、美観を損なうことなく、きれいに仕上げることができる。
【0013】
図2は仕口における接合部分の補強方法の実施例を示すものである。同図(a)はL形仕口の伝統的な相欠き構造の補強例であり、この図示例では3枚の繊維強化シートを接着剤を併用して張り付けている。すなわち、2つの木材2,4のそれぞれの端部にその長手方向に沿って上面2a,4aから下面2b,4bに亘ってコ字状に繊維補強シート6を張り付けるとともに、2つの木材の側面2c,4cに沿って繊維強化シートを張り付けている。これにより、X,Y,Zの3方向の引張力を繊維強化シート6で負担できる。
【0014】
同図(b)はX形仕口の伝統的な相欠き構造の補強例であり、2つの木材2,4のそれぞれの切欠き形成面2b,4aに長手方向に沿って繊維強化シートを張り付けてX軸及びY軸方向の引張力を負担するようにしており、これにより両木材2,4の切欠部の開きを防止できる。
【0015】
同図(c)はL形仕口の伝統的なほぞ構造の補強例であり、2つの木材のうち一方の男木2側にはその上面2aから側面2c及び下面2bに掛けてコ字状に女木4に亘って繊維強化シート6を掛け回して張り付け、X軸方向の引張力を負担するようにしている。
【0016】
同図(d)はT形仕口の伝統的なほぞ構造の補強例であり、2つの木材のうち一方の男木2側にはその両側面2a,2bに亘ってコ字状に繊維強化シート6を掛け回して張り付けて、Y軸方向の引張力を負担するようにしている。
【0017】
同図(e)はT形仕口の伝統的な蟻構造の補強例であり、男木2と女木4との上面2a,4a及び下面2b,4bのそれぞれに男木2の長手方向に沿って繊維強化シート6を張り付けて、Y軸方向の引張力を負担するようにしている。
【0018】
なお、繊維強化シートによる補強は、上述の継手や仕口等の2つの木材の接合部分だけでなく、柱等の角材や板材等の単一の木材に生じた割裂等の割れ目の補強にも適用できる。しかも繊維方向に異方性があるそれぞれの木材の繊維方向に応じて、繊維強化シートの繊維方向を調整することで合理的な補強が行える。
【0019】
また、1987年に改正された建築基準法により、集成材やLVLなどのエンジニアードウッドを構造材に用いることができるようになり、大断面木材建築の施工が増えて来ているが、このようなエンジニアードウッドに対しても、上記のような補強方法を適用し得る。
【0020】
ここで、上記集成材はラミナと呼ばれる挽板あるいは小角材などを、その繊維方向が互いにほぼ平行となるようにして接着積層した一種の合成木材であり、原木を1.5〜2.5cmのラミナ材に製材し、人工乾燥して表面を削ったラミナを3次元方向から圧力をかけながら接着することにより形成されるもので、一般の製材では得られない大断面材、長尺材、アーチ材などが得られるものである。
【0021】
また、上記LVLは Laminated Venner Lumber の略称で、単板を多層接着した積層材である。LVLは、ロータリーレースまたはスライサーで単板を削り出し、その繊維方向を平行にして積層しながら接着することにより形成されるもので、このLVLも、集成材と同様に構造材として用いることができる。
【0022】
そして、このようなエンジニアードウッドを用いた大断面木造建築にこの補強方法を採用すれば、従来の接合方法では十分に対応することができなかった構造材の大断面化が図れるようになるばかりか、軸組構造の採用にあたっても従来複雑であった接合金物や補強金物の簡素化が図れるようになり、大型の接合金物や補強金物で仕上がりの美観性を損なわせててしまうことを可及的に防止できるようになる。
【0023】
【発明の効果】
以上、実施例で説明したように、本発明によれば、2つの木材の接合部に対し、接着剤を併用してその表面に繊維強化シートを張り付けて補強するので、簡単な作業で簡易に充分な補強が行え、既存の耐震強度が不適格な木造建築物に対しても、容易に耐震補強を施すことができ、しかも繊維方向に異方性があるそれぞれの木材の繊維方向に応じて、繊維強化シートの繊維方向を調整することで合理的な補強を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る木材の補強方法を、従来の伝統的な各種継手構造に適用した場合の実施例を示す図である。
【図2】本発明に係る木材の補強方法を、従来の伝統的な各種仕口構造に適用した場合の実施例を示す図である。
【図3】従来の伝統的な各種継手構造を示す図である。
【図4】従来の継手構造で生じ易い、せん断破壊を説明する図である。
【符号の説明】
2,4 木材
6 繊維強化シート

Claims (4)

  1. 柱や梁等の木材同士の接合部の補強方法であって、繊維強化シートを、接合される両木材に跨って、木材の3面に亘ってコ字状に、接着剤を併用して貼り付けることを特徴とする木材接合部の補強方法。
  2. 前記接合部はL型仕口であり、前記繊維強化シートを、接合される各木材の端部にその長手方向に沿って上面から下面に亘ってコ字状に張り付けるとともに、両木材の側面に跨って張り付けることを特徴とする請求項1記載の木材接合部の補強方法。
  3. 前記接合部はL型仕口であり、前記繊維強化シートを、一方の木材側にその上面、側面及び下面に亘ってコ字状に、他方の木材に跨って張り付けることを特徴とする請求項1記載の木材接合部の補強方法。
  4. 前記接合部は一方の木材の端面が他方の木材の側面に接合されるT型仕口であり、前記繊維補強化シートを、前記一方の木材にその一側面から前記他方の3面、及び前記一方の木材の他側面に亘ってコ字状に掛け回して張り付けることを特徴とする請求項1記載の木材接合部の補強方法。
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