JP5641710B2 - 建築用木材の接合方法とその解体・再利用方法 - Google Patents

建築用木材の接合方法とその解体・再利用方法 Download PDF

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本願発明は、木造建築物の柱と梁などの建築用木材の接合方法および、接合された柱と梁などの建築用木材の解体方法に関するものである。
従来、木造建築物の柱と梁などの建築用木材の接合方法としては、特開2000−45396号公報の発明が知られている。これは、木造の柱と梁、柱と柱、梁と梁との接合に鋼棒を使用したものであり、一方の挿入部から他方の挿入部に鋼棒が挿入され、該挿入部にエポキシ樹脂系接着剤が充填されて接合されたものである。
特開2000−45396号公報
しかし、上記の柱と梁などの建築用木材の接合方法は、柱からの鋼棒が梁の挿入孔に挿入され、この挿入孔にはエポキシ樹脂系接着剤が充填されて接合されているが、この接着剤はコストが割高であるとともに、発熱が高く、硬化収縮が大きいため、接着界面での応力が発生し、また、比重が軽いため鬆(す)が入ってしまうという問題があった。そのため、接着剤が挿入孔に十分に充填されずに間隙ができ、接合部材として均一な品質を得ることができないという問題がある。
また、前記挿入孔等の差込溝に鋼棒を挿入し、エポキシ樹脂系接着剤を充填する場合、硬化発熱を低くするために、溝に沿った木栓を加工し、樹脂の体積を小さくする必要があった。この木栓の加工には、溝に合わせて正確に加工することが必要で、技術と手間を要していた。
更に、このように接合部に鋼棒を使用した木材は、木造建築物の解体後に有効な再利用がされておらず、ほとんど廃材として処理されていたため産業廃棄物を増やす結果になっていた。
本発明に係る建築用木材の接合方法およびその解体方法、このような課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、接着剤の充填後に十分な接着効果を得ることができると共に、木栓の加工の手間を省き、接合された木材の解体後に再利用ができる建築用木材の接合方法およびその解体方法を提供することにある。
本発明に係る建築用木材の接合方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、一方の木材と他方の木材とを面接合し、該面接合した部分において一方の木材から他方の木材にかけて形成した差込溝に連結鉄筋を差し込んだ後、該差込溝に、合成系接着材に天然系骨材若しくは合成系骨材を混合して、少なくともその特性において、比重が1.5で、硬化収縮率が0.35%で、圧縮弾性率が5500N/mm 、であるレジンモルタルを充填して硬化させることである。
また、前記差込溝に一方の木材の側面に開口する開口部がある場合は、連結鉄筋を両木材の前記差込溝に差し込んだ後に、前記開口部に粘着テープを型枠として貼着して塞ぎ、他方の木材の差込溝から前記一方の木材の差込溝へ請求項1に記載のレジンモルタルを隙間なく充填し、当該レジンモルタルが硬化するまで前記粘着テープの型枠で塞いでおくこと、;
前記接合する木材が柱と柱、若しくは、梁と梁とである場合には、接合部における両木材の外周面に請求項1に記載のレジンモルタルを塗布し、当該外周面に繊維シートを巻装するとともに、該繊維シートを巻き付ける範囲は、木材内部の連結鉄筋の端部から斜め45°の線が前記木材の側面に至る点から少なくともそれ以上接合部から離間する位置に繊維シート端部が位置するように巻き付け、当該木材を1周して前記繊維シートの巻き付け方向の端部同士が10cm以上重畳させた繊維シートの上から前記レジンモルタルを含浸させて硬化させること、;
を含むものである。
本発明に係る建築用木材の解体・再利用方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、前記本発明に係る建築用木材の接合方法により接合した両木材を再利用するには、当該両木材の接合部を切断して両木材を分離した後、これらの木材における差込溝にある連結筋とレジンモルタルとを撤去し請求項1に記載のレジンモルタルを用いて前記木材を建築用接合木材として再利用することである。
本発明の建築用木材の接合方法によれば、接着剤として安価な無機骨材が入っているレジンモルタルを使用したことにより、コストを抑えることができるとともに、発熱や硬化収縮、熱膨張率が小さくなり、連結鉄筋や木材など接着界面での応力を低減させることができる。また、前記レジンモルタルは比重が重いため、空隙を樹脂で埋めやすく、鬆が入るのを軽減でき、品質の均一化が図れる。また、レジンモルタルは発熱が小さいため、エポキシ樹脂に比べ、充填樹脂の体積を大きくすることができる。従来のような差込溝に沿った木栓を加工し嵌め込むという手間が無くなり、本発明のように溝をレジンモルタルのみで充填することができる。
また、木材の柱と柱、梁と梁との接合部が曲げ荷重を受けると、引張を受ける部位が外側へ割り広がり破壊に至るが、繊維シートを前記接合部に巻装し、該繊維シートに樹脂を含浸させて硬化させることにより、木材を拘束して曲げ耐力が向上する。
更に、本発明の建築用木材の解体方法によれば、住宅などから排出される廃木材のほとんどが、柱や梁などの構造材であるため、柱や梁の解体後にこれらを構造材に再利用することができる。また、連結鉄筋が挿入された差込溝を刳り抜くと、元の大きさより多少大きくなるが、再利用時に接合の差込溝に充填するレジンモルタルの体積が増しても、このレジンモルタルは発熱などが少ないため、問題なく再利用することができる。
(1)は木造建築物の柱と梁の分解斜視図、(2)は溝に連結鉄筋を差し込んだ梁の斜視図である。 柱と梁の接合方法を示すものであり、(1)は柱と梁の接合部の横方向断面図、(2)は同縦方向の断面図である。 (1)は柱と梁の接合部の断面図、(2)は同斜視図である。 (1)は柱同士の接合方法を示す斜視図、(2)は梁同士の接合方法を示す斜視図、(3)はトラスの形成方法を示す斜視図である。 本発明の第2実施例を示す側面図(1)と、正面図(2)とである。 本発明に係る解体方法により、柱と梁の解体方法を示す斜視図である。 本発明に係る解体方法により、柱と梁の解体を示したものであり、(1)は斜視図、(2)は断面図である。 本発明に係る解体方法により、梁の鉄筋の引き抜きを示したものであり、(1)は平面図、(2)は断面図である。 本発明に係る解体方法により、鉄筋を引き抜いた梁であり、(1)は平面図、(2)は断面図である。 本発明に係る解体方法により、鉄筋とレジンモルタルとを引き抜いた梁であり、(1)は平面図、(2)は断面図である。
本発明に係る建築用木材の接合方法とその解体方法との実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。はじめに建築用木材の接合方法について説明し、その後に建築用木材の解体方法について説明する。また、各実施の形態において、同じ構成は同じ符号を付して説明し、異なった構成にのみ異なった符号を付して説明する。
図1に示すように、本発明に係る建築用木材の接合方法は、両木材間に差込溝を形成してその差込溝に連結鉄筋を差し込んでレジンモルタルを充填させて接合する。そして、その接合方法により接合させた両木材をカッタで切断して切り離し、差込溝を刳り抜くことで、連結鉄筋とレジンモルタルを撤去するものである。
本発明に係る建築用木材の接合方法は、木造建築物の柱と梁の接合を図面に沿って説明する。この木造の柱1と梁2とを接合するには、図1の(1)に示すように、梁の柱への接合端面3、すなわち木口面3から長手方向(軸方向)にかけて平面U字形の溝4を形成する。
この溝4は、同図の(2)に示すように、例えば鋼棒である連結鉄筋5が梁の長手方向の軸6に沿って位置する任意の深さ7にする。すなわち、梁の一面8から梁の前記軸6までの深さにし、梁の軸方向の長さ9は必要な耐力に応じて決められる。例えば、連結鉄筋径の15倍の長さの連結鉄筋5が収容される長さにする。
一方、柱1にも、軸方向(長手方向)と直交させて交差する方向に孔10が形成され
る。この孔10は、梁2の長手方向の任意の軸6の延長線上にあり、その長さは必要な
耐力に応じて決められる。例えば、柱1の太さから10mm減じる長さとする。
次に、このように孔10が形成された柱1と、溝4が形成された梁2とを接合するが、図2に示すように、梁2の接合面(木口面)3を柱1の側面14に付き合わせて溝4と孔10とを接合すると、柱1と梁2にわたる差込溝15が形成される。そして、この差込溝15の梁の軸6と柱1の孔10の中心に位置する箇所に連結鉄筋5を配置する。
次に、後述するように、前記差込溝15に充填されるレジンモルタル16が溝4の開口部17から流出するのを防ぐために、該開口部17を型枠として兼用させる粘着テープ18で塞ぐ。この粘着テープ18は、熱による伸び縮みが少なく、且つ、丈夫であるアルミテープを使用する。そして、連結鉄筋5が配置された差込溝15に注入孔11から、合成系接着材に天然系骨材若しくは合成系骨材を混合して成るレジンモルタル16を注入して、図2(1),(2)に示すように、隙間なく注入する。なお、溝4の中の空気は、空気孔12から抜ける。
前記レジンモルタル16は、合成樹脂系接着材に、シリカ,石英,石灰石,氷晶石,フリント,アルミニウム酸化物,ガーネット,石,スラグ,溶解アルミナ,シリコンカーバイド,セラミック,大理石等の天然系または合成系骨材を混合したものである。以下に、レジンモルタル16とエポキシ樹脂との性質について比較する。

Figure 0005641710
このように、レジンモルタル16の特徴は、接着剤にフィラー(無機骨材)を入れることにより、硬化発熱や硬化収縮、熱膨張率が小さくなり、接着界面での応力を低減させることができる。硬化収縮やひずみが小さく寸法安定性が良いので大断面に打設することができる。また、比重が高いため、空隙を樹脂で埋めやすく、鬆(す)が入るのを軽減でき、品質の均一化が図れる。硬化反応が均一である。硬度や圧縮強度など物理的強度が高い。更に、熱伝導性、耐薬品性・耐水性等が良く、砂(細骨材)が入っている分、コストを抑えることができる。
前記レジンモルタル16を充填しながら、充填作業の完了を確認するために、空気孔12からレジンモルタル16が出てくるのを目視で確認する。その後、養生することで、前記充填した前記レジンモルタル16が硬化した時点で、開口部17から前記粘着テープ18を剥がすものである。
このように、前記差込溝15にレジンモルタル16を充填しそれが硬化した後に、前記開口部17から前記テープ18を剥がすと、図3に示すように、柱1と梁2とが接合される。なお、本実施の形態においては、柱1と梁2との接合について説明したが、これは柱1と梁2に限らず、図4−A(1),(2),(3)に示すように、柱1と柱1,梁2と梁2,または、トラスの形成のための斜材の接合にも適用することができる。
本発明の第2実施例は、図4−Bに示すように、接合する木材が柱1と柱1、若しくは、梁2と梁2である場合には、接合部における両木材1,1(2,2)の外周面に樹脂を塗布し、そして繊維シート18aを巻装すると共に、その繊維シート18a上から樹脂を含浸させて硬化させるものである。
前記繊維シート18aは、例えば炭素繊維シート、アラミド繊維シート、ビニロンシート、ガラス繊維シート、等の高強度繊維シートである。これらの繊維シート18aを木材に巻き付ける範囲は、図4−B(1)に示すように、連結鉄筋5の端部から斜め45°の線が木材1(2)の側面に至る点から少なくともそれ以上接合部から離間する位置に繊維シート端部が位置するようにして巻き付け、木材1(2)を1周して繊維シート18aの巻き付け方向の端部同士を10cm以上重畳させる。
また、繊維シート18aと木材1(2)とを密着させるために、木材1(2)の角部を面取りして曲線にして、繊維シート18aの浮きを防いでいる。このようにして木材同士の接合部を補強することで、木材の引張側の部位が割れ広がるのを拘束し、木材接合部の曲げ耐力が向上する。例えば、繊維目付300g/m、引張強度3400N/mmの炭素繊維シートを1重に巻き付けた時、曲げ耐力が24%向上した。

Figure 0005641710
次に、上記建築用木材の接合方法により接合した両木材を解体する解体方法について説明する。この柱1と梁2とは連結鉄筋5入りのレジンモルタル16で接合されているので、図5に示すように、柱1と梁2との接合部間19にダイヤモンドカッタ20を差し込んで、これらを切断する。それにより、図6(1),(2)に示すように、柱1と梁2とが分離される。
そして、分離した柱1と梁2との差込溝15内の連結鉄筋5とレジンモルタル16とを撤去する。それには、図7に示すように、梁2の切断面21から溝4よりも大きな径のコアドリル22で、切断された鉄筋23の挿入長さまでのコア抜きを行って、該鉄筋23と切断されたレジンモルタル24との一部をねじ切る。このように、溝4よりもやや大きく木材を切り取るため、図8に示すように、元の溝4よりも大きな切り取り孔25が開口される。しかし、この時点では、切断された鉄筋23のみが引き抜かれるため、切断されたレジンモルタル24は残ったままになっている。
次に、残ったレジンモルタル24を、前記と同じように、溝4よりもやや大きく木材を切り取って引き抜くと、図9に示すように、元の溝4よりも大きな溝26が形成された梁27となり、これを新たな梁27として再利用する。また上記実施例は梁2の鉄筋23とレジンモルタル24とを引き抜く方法について説明したが、柱1の鉄筋23とレジンモルタル24も、上記と同様にして引き抜くものである。
本発明に係る上記建築用木材の接合方法と解体方法は、木材の接合だけに限らず、合成樹脂製部材の接合や解体にも適用できる。
1 柱、
2,27 梁、
3 接合端面、
4、26 梁の溝、
5 連結鉄筋、
6 梁の長手方向の軸、
7 梁の溝の深さ、
8 梁の一面、
9 梁に溝の長さ、
10 孔、
11 注入孔、
12 空気抜き孔、
13 柱の溝の長さ、
14 柱の側面、
15 差込溝、
16 レジンモルタル、
17 開口部、
18 粘着テープ、 18a 繊維シート、
19 接合部間、
20 ダイヤモンドカッタ、
21 梁の切断面、
22 コアドリル、
23 切断された鉄筋、
24 切断されたレジンモルタル、
25 切り取り孔、
28 斜材。

Claims (4)

  1. 一方の木材と他方の木材とを面接合し、該面接合した部分において一方の木材から他方の木材にかけて形成した差込溝に連結鉄筋を差し込んだ後、
    該差込溝に、合成系接着材に天然系骨材若しくは合成系骨材を混合し少なくともその特性において、比重が1.5で、硬化収縮率が0.35%で、圧縮弾性率が5500N/mm 、であるレジンモルタルを隙間なく充填して硬化させること、
    を特徴とする建築用木材の接合方法。
  2. 差込溝に一方の木材の側面に開口する開口部がある場合は、連結鉄筋を両木材の前記差込溝に差し込んだ後に、前記開口部に粘着テープを型枠として貼着して塞ぎ、他方の木材の差込溝から前記一方の木材の差込溝へ請求項1に記載のレジンモルタルを隙間なく充填し、当該レジンモルタルが硬化するまで前記粘着テープの型枠で塞いでおくこと、
    を特徴とする請求項1に記載の建築用木材の接合方法。
  3. 接合する木材が柱と柱、若しくは、梁と梁とである場合には、接合部における両木材の外周面に請求項1に記載のレジンモルタルを塗布し、当該外周面に繊維シートを巻装するとともに、該繊維シートを巻き付ける範囲は、木材内部の連結鉄筋の端部から斜め45°の線が前記木材の側面に至る点から少なくともそれ以上接合部から離間する位置に繊維シート端部が位置するように巻き付け、当該木材を1周して前記繊維シートの巻き付け方向の端部同士が10cm以上重畳させた繊維シートの上から前記レジンモルタルを含浸させて硬化させること、
    を特徴とする請求項1または2に記載の建築用木材の接合方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建築用木材の接合方法により接合した両木材を再利用するには、当該両木材の接合部を切断して両木材を分離した後、これらの木材における差込溝にある連結筋とレジンモルタルとを撤去し請求項1に記載のレジンモルタルを用いて前記木材を建築用接合木材として再利用すること、
    を特徴とする建築用木材の解体・再利用方法。
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