JP3765613B2 - 液晶表示素子用シール材組成物及びそれを用いた液晶表示素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、軽量、薄型、低消費電力等の特徴から液晶表示素子が広く普及している。液晶表示素子は、配向処理を施された二枚のガラス、あるいはプラスチックの基板の外周部を接着剤により圧着封止しており、一般にこれを液晶表示素子用シール材(略して液晶シール材)と呼んでいる。現在、この液晶シール材は硬化物の電気的信頼性に優れることから広くエポキシ樹脂を主体としたものが用いられている。近年液晶パネルメーカーではLCDの生産性を高めるため、液晶シール材も従来品より低温短時間で硬化できるものが強く求められている。従来のシール材硬化条件は160〜180℃で2時間というものが一般的であった。しかしながら低温短時間硬化を追い求めたものは、単純に従来の液晶シール材に促進剤を増量したものが多く、保存安定性及び電気的信頼性に劣るものが多く、これまでバランスのとれた材料は未だ上市されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、120〜150℃/5分の条件で初期硬化を完了して液晶パネルの適正ギャップを保持し、更に150℃/1時間という低温短時間の条件で後硬化を完了できることを特徴とする液晶シール材組成物を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は(A)エポキシ樹脂、(B)アジピン酸ジヒドラジド(以下、ADHと略す)、(C)1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン(以下、VDHと略す)、(D)アミンアダクト型ポリマー化合物、および(E)無機充填材を必須成分として含有してなることを特徴とする液晶表示素子用シール材組成物である。
【0005】
本発明で必須成分として用いられるADHは従来より液晶シール材の硬化剤として用いられてきたことは周知の事実である。しかし、これに低温硬化性のヒドラジドであるVDH及び硬化促進剤であるアミンアダクト型ポリマー化合物を併用することにより、初めて常温で十分なライフを有し且つ120〜150℃/5分の条件で初期硬化を終え、更に150℃/1時間の条件で後硬化を完了し液晶シール材として十分な接着性、電気的信頼性が得られることを見いだし本発明に至った。
【0006】
更にADH、VDH、アミンアダクト型ポリマー化合物および無機充填材の固形物最大粒径が5ミクロン未満であるときに特に良好なギャップ保持特性を示す。固形物最大粒径が5ミクロン以上であるときはスクリーン印刷性が低下する場合があり、更に固形物どうしが二次凝集をおこすことにより適正セルギャップ保持が困難になる場合があり好ましくない。
【0007】
また、ADH及びVDHの合計に対してVDHの占める割合が10%以上50%未満であるとき、液晶シール材は特に良好な硬化物特性を示す。このVDHの占める割合が50%以上であるときは低温硬化性は著しく上昇するものの、液晶シール材硬化物の吸水性が著しく高くなり接着性及び電気的信頼性に悪影響を及ぼす傾向にあり好ましくない。又、VDHの占める割合が10%未満の場合には低温硬化性が著しく損なわれる為に好ましくない。
120〜150℃/5分の条件で初期硬化を行う際、先ずアミンアダクト型ポリマーが瞬時に溶融し活性なアミンがエポキシ樹脂のオキシラン環を攻撃する。開環したオキシラン環はVDHの活性水素を攻撃し架橋構造を形成する。これにより系全体の反応は完了していないものの、液晶パネルの両基板を仮接着してギャップを保持することが可能となる。更に150℃/1時間の条件で後硬化を行う際には、同様に開環したオキシラン環がADHを攻撃して反応を終了する。ADHは無触媒の系では通常180℃以上の温度条件を与えないとエポキシ樹脂とスムーズに反応が開始されない。この為、後硬化行程でもアミンアダクト型ポリマーが存在することにより、初めて150℃の温度条件下で反応を完結させることが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
【0009】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は特に限定されないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、アルキル置換ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、アルキル置換ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂等がある。
【0010】
又、無機充填材としては、例えば、各種金属の炭酸塩、アルミナ、シリカ、酸化チタン、チタン酸カリウム等が挙げられこれらの中で種々の点からアルミナ、シリカを一種または二種以上併用して使用されることが好ましい。更に無機充填材の添加量としては、印刷性等の作業性の点から全組成物のうち3〜50重量%とすることが好ましい。
【0012】
又、シール材組成物の粘度調整、各成分の均一混合の目的で必要に応じて溶剤を添加しても良い。用いる種類については特に制限はないが、例えばn−ヘキサン、n−デカン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素系溶剤、ブチルアセテート、ベンジルアセテート等のエステル系溶剤、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルセロソルブアセテート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジグライム等の多価アルコール及びその誘導体等が一種あるいは二種以上併用されて用いられる。溶剤の添加量については印刷性等の点から全組成物のうち2〜50重量%とすることが好ましい。
【0013】
更に、溶剤の他に必要に応じてカップリング剤、消泡剤、レベリング剤等を添加しても良い。本発明の液晶シール材を調整する際は、各成分を均一に混合させるために3本ロール等を用いて混練することが好ましい。
【0014】
本発明の液晶シール材を用いて液晶表示素子を製造する方法としては、一般に以下のような方法が用いられる。先ず、液晶配向層を形成したガラス及びプラスティック基板の一方に、スクリーン印刷等の工程によりシールパターンを形成する。液晶シール材組成中に溶剤を含む場合は乾燥炉等で予備乾燥させた後、もう一方の基板を貼り合わせて加圧し、更に乾燥炉等で120〜150℃/5分の条件で初期硬化を終えて液晶パネルの適正ギャップ保持を行う。この後、圧力を解除した状態で更に150℃/1時間の条件で後硬化を完了させる。この貼り合わせた基板に液晶を注入し、注入口をUV硬化樹脂等で封じて液晶表示素子とする。
【0015】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0016】
(実施例1)
エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、HP−7200)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート828)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)7重量部、VDH(味の素社製)3重量部、硬化促進剤としてアミンアダクト型ポリマー化合物であるアミキュアPN−R(味の素社製)2重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、球状シリカ(アドマテックス社製、SO−C4)20重量部、溶剤としてエチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。
【0017】
次に、この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、以下の要領で液晶セルを作製した。
(スクリーン印刷)
300メッシュの版を用いて配向膜を形成させたITO付きガラス基板上(一辺3cmの正方形)に線幅が0.3mmの正方形のパターンをスクリーン印刷した。
(予備乾燥)
熱風乾燥中、90℃/30分予備乾燥した。
(貼り合わせ/加熱硬化)
配向膜を形成させたITO付きガラス基板を、配向方向がシール材を印刷した基板の配向処理方向に対して90度になるように貼り合わせ、1kg/cm2の圧力をかけた状態で熱風乾燥機中130℃/5分初期硬化させた。これを室温まで冷却し、圧力を解除した状態で150℃/1時間、後硬化を行った。尚、評価セルは各n=10作製した。
(液晶注入/封口)
フッソ系液晶(メルク社製,ZLI−4792)を注入し、注入口をアクリル系UV硬化樹脂で封口した。
【0018】
評価は次のように行った。125℃/2.3atmに設定したプレッシャークッカー試験器に12hr、上記液晶表示素子を放置。処理が終わった後、この液晶セルの電圧保持率及びシール部分の剥離の有無を確認した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0019】
(実施例2)
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート828)30重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195LB)20重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート1001)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)6重量部、VDH(味の素社製)4重量部、硬化促進剤としてアミンアダクト型ポリマー化合物であるアミキュアMY−R(味の素社製)4重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、アルミナ(昭和電工、UA−5105)20重量部、溶剤としてメチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0020】
(実施例3)
エポキシ樹脂としてナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、HP−4032)30重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195LB)20重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート1001)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)6重量部、VDH(味の素社製)4重量部、硬化促進剤としてアミキュアMY−R(味の素社製)2重量部、アミキュアPN−R(味の素社製)2重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、アルミナ(昭和電工、UA−5105)20重量部、溶剤としてメチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0021】
(実施例4)
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート828)30重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195LB)10重量部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート604)10重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート1001)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)6重量部、VDH(味の素社製)4重量部、硬化促進剤としてアミキュアMY−R(味の素社製)4重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、アルミナ(昭和電工、UA−5105)20重量部、溶剤としてメチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0022】
(比較例1)
エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、HP−7200)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート828)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)3重量部、VDH(味の素社製)7重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、球状シリカ(アドマテックス社製、SO−C4)20重量部、溶剤としてエチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0023】
(比較例2)
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート828)30重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195LB)20重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート1001)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)2重量部、VDH(味の素社製)8重量部、硬化促進剤としてアミキュアMY−R(味の素社製)4重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、アルミナ(昭和電工、UA−5105)20重量部、溶剤としてメチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0024】
(比較例3)
エポキシ樹脂としてナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、HP−4032)30重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195LB)20重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート1001)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)4重量部、VDH(味の素社製)6重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、アルミナ(昭和電工、UA−5105)20重量部、溶剤としてメチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0025】
(比較例4)
エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート828)30重量部、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学社製、ESCN−195LB)10重量部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート604)10重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社製、エピコート1001)50重量部、硬化剤としてADH(大塚化学社製)9.5重量部、VDH(味の素社製) 0.5重量部、硬化促進剤としてアミキュアMY−R(味の素社製)4重量部、無機充填材として無定型シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR−972)5重量部、アルミナ(昭和電工、UA−5105)20重量部、溶剤としてメチルカルビトール15重量部を攪拌混合し、更に三本ロールで十分に混練して接着剤組成物を得た。この接着剤組成物に直径6μmのロッド状スペーサーを1%混合し、実施例1の要領で液晶セルを作製した。評価の結果は表1に示す通りである。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明の液晶表示素子用シール材は硬化剤としてADHとVDHを併用し、且つ硬化剤中VDHの占める割合が10%以上50%未満であること、硬化促進剤としてアミンアダクト型ポリマー化合物を必須成分とすることにより、120〜150℃/5分の条件で初期硬化を終え、更に150℃/1時間の条件で後硬化を完了することが可能となる。上記液晶シール材は今までにない低温速硬化性の材料であり且つ耐湿熱性に優れた液晶表示素子を提供することができる。
Claims (4)
- (A)エポキシ樹脂、
(B)アジピン酸ジヒドラジド、
(C)1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、
(D)アミンアダクト型ポリマー化合物、および
(E)無機充填材
を必須成分として含有してなることを特徴とする液晶表示素子用シール材組成物。 - アジピン酸ジヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、アミンアダクト型ポリマー化合物、および無機充填材の固形物最大粒径が5ミクロン未満であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール材組成物。
- アジピン酸ジヒドラジドおよび1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインの合計に対して1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインの占める割合が10%以上50%未満であることを特徴とする請求項1または2記載の液晶表示素子用シール材組成物。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶表示素子用シール材組成物を用いた液晶表示素子。
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