JP3765500B2 - 内視鏡用対物レンズ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、医療分野および工業分野で広く用いられる内視鏡用対物レンズで、特に広範囲の観察、検査が可能な内視鏡用対物レンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内視鏡を用いての観察で、同じ部位を観察する場合でも、より拡大して観察する場合や、広い範囲を一度に観察する場合等がある。そのため、通常複数の内視鏡を用意して、その都度交換して観察を行なう。しかし、複数の内視鏡を用意して使い分けることは、術者にとって手間や時間がかかり好ましくない。また医療用の場合は、患者にとっても苦痛であり好ましくない。
【0003】
この欠点を解消するための手段として、可変焦点の内視鏡いわゆるズーム内視鏡を用いることが考えられ、それによれば一つの内視鏡で狭角にして拡大して観察したり、広角にして広い範囲を観察することが出来る。
【0004】
このようなズームレンズなどの倍率を変え得るものは、倍率が変わってもピント位置がずれないことが必要である。そのためカメラ等に用いるズームレンズは、バリエーターやコンペンセーター等の複数のレンズ群を移動させている。しかし複数のレンズ群を移動させるとレンズ系が複雑になるだけでなく、枠構造なども複雑になる。そのためこのようなズームレンズをそのまま内視鏡対物レンズに適用すると、内視鏡の先端部が長く又太くなる。工業用内視鏡のように大きさ等に制限がない場合を除けば内視鏡の先端部が大型になることは望ましくなく、特に医療用内視鏡においては、望ましくない。
【0005】
そのため、複数のレンズ群を移動させずに一つのレンズ群の移動により変倍を行なうようにした内視鏡対物レンズがある。それは、特公昭61−44283号に記載された対物レンズで、図17に示すように正,負,正(図において、GP,GN,GP)の3群構成で、負の第2群のみを、図18の(A),(B)のように光軸上を移動させて変倍と合焦とを同時に行なうようにしている。
【0006】
しかし、正,負の構成のレトロフォーカス型の内視鏡用対物レンズを前記のような構成にした場合、レンズの枚数を多くせざるを得ず全長が長くなり、コンパクトになし得ない。しかも倍率比がさほど大きくなくても前記のような構成にしなければならず、一層小型な構成で所望の倍率が得られる対物レンズが望まれる。
【0007】
より簡単な構成で倍率を変え得る内視鏡対物レンズとして特開平1−279219号に記載されたレンズ系がある。それは、図19に示すような正,負(GN,GP)の2群構成で、第2群を移動させて変倍と合焦を同時に行なっている。このレンズ系も、前記従来例と移動群が負か正かの違いがあるが、変倍と合焦とを同時に行なっている点では同じである。
【0008】
この図19に示す従来例は、絞りより像側の正のレンズ群を移動させ或いは絞りと前記正のレンズ群とを一体に移動させて変倍比が2程度にしている。しかし変倍範囲は、通常の観察状態(画角90°〜120°程度)およびより高倍率状態(狭角状態)の範囲で比較的画角が小さい。
【0009】
このように画角が比較的小さい場合は、各レンズを通過する光線の高さは小さく、又変倍比もあまり大きくないので、通常観察状態から高倍率状態へ変化させても性能は低下しない。しかし逆に通常観察状態から広角にしようとした場合、図19のレンズ系のように絞りの前に負レンズのみしか配置されていないと、第1群と第2群との間隔を大にしなければならず、第1群における光線高が高くなる。そのため第1群にて光線が大きく曲げられ、コマ収差特に下側コマが大きくプラスに発生する。更にこの負の第1群により倍率の色収差も発生し性能が低下し、良好な画像を得ることが出来ない。
【0010】
以上述べたように、従来のレンズ系では、特に超広角の状態を含んだ変倍レンズ系を達成することはできなかった。
【0011】
また広角になればなるほど部品の加工精度や組立誤差等により画角のばらつき量が多くなる。これはズームレンズに限らず固定焦点レンズも同様であるが、特に広角なズームレンズの場合、各状態ごとにばらつきを補正する必要がある。
【0012】
通常の観察画角の場合、これらのばらつきは、実用上影響がないが、特に画角が140°を越えるような超広角では、これらのばらつきにより画角が180°を越え周辺画像が暗くなるおそれがある。そのために、この画角のばらつきを抑えるために部品公差を厳しくしたり、各部品の精度をもとにその組合わせを決めて組立てを行なっていた。しかし、これではレンズ系の組立てに手間がかかり、又完全な調整は出来ず、画角の調整法としては現実的ではない。したがって、実際には画角のばらつきの調整は行なわれていなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の固定焦点レンズと同程度のレンズ構成で、全長が短く、外径が小さいコンパクトなレンズ系で、通常観察およびより広範囲な観察が可能で、焦点距離を変化し得る内視鏡用対物レンズを提供することを目的としている。
【0014】
また、本発明は、特に超広角なレンズ系において、部品の加工精度や組立て誤差等による画角のばらつきの調整が容易な内視鏡用対物レンズを提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の内視鏡用対物レンズは、物体側から順に、負のパワーを持ち、物体側の負の第1−1レンズ群と像側の第1−2レンズ群とからなる第1レンズ群と、明るさ絞りと、正のパワーの第2レンズ群とを備え、前記第1−1レンズ群と第2レンズ群の物体側の少なくとも一部のレンズ群とを一体として光軸上を移動させることにより全系の焦点距離を可変としたことを特徴とするものである。
【0016】
図1は本発明を適用したレンズ系の一例の断面図である。上記のように、本発明のレンズ系は負のパワーの第1レンズ群G1と、明るさ絞りSと、正のパワーの第2レンズ群G2とを備えている。そして、第1レンズ群は負のパワーの第1−1レンズ群G11と正のパワーの第1−2レンズ群G12とに分かれており、第1−2レンズ群G12と第2レンズ群G2とが一体となってレンズ群GMが光軸上を移動する。
【0017】
尚、図中、Fはフィルタ、カバーガラスであり、この例ではフィルタFも移動レンズ群と共に移動する構成となっている。
【0018】
まず、斯かる構成のレンズ系の変倍作用につき説明する。
【0019】
図15は上記のレンズ群のパワー配置を示す図で、GNは上記負の第1−1レンズ群のパワー、GMは移動レンズ群のパワーを薄肉レンズとして表わしたものである。ここで、この負レンズ群の焦点距離をfn、移動レンズ群の倍率をβmとするとき、全系の焦点距離fは、次の式にて与えられる。
【0020】
f=fn ・βm
上記式から、焦点距離fを可変にするためには、βm を変化させればよく、その値に依存して変化する。この倍率βm は、移動レンズ群GMを移動させることにより変えることが出来る。ここで移動レンズ群GMを物体側へ移動させればβm が大になり、逆に像側に移動させれば小になる。また、移動レンズ群GMの焦点距離をfm とすると、負レンズ成分GNから像面までの距離Dは、次の式で表わせる。
【0021】
D=fn +[2+βm +(1/βm )]・fm
ただし、結像倍率は物点が無限遠の時の倍率である。尚、本願における説明では簡略化のため倍率については符号を付けず大きさのみを示すものとする。
【0022】
物体距離が一定の場合、物体Oから像面Iまでの距離IOは次の式で表わされる。
【0023】
IO=L+fn +[2+βm +(1/βm )]・fm
ただし、Lは物体距離である。
【0024】
上記の式から物点と像点との間の距離IOは、移動レンズ群GMの結像倍率βm によって変化することがわかる。そしてその変化量がピントのずれ量を表わしている。
【0025】
このβm を変化させた時の[2+βm +(1/βm )]の変化をグラフに示したものが図16である。この図16より明らかなように、βm =1の近傍にβm の範囲を定めれば、ピントのずれ量が小さい。逆にピントのずれ量を小さくするためには、なるべくβm =1にすればよいことがわかる。例えば変倍比をZとした時、倍率βm を下記の範囲内に設定すればよい。これはズームレンズの場合の他、2焦点切り換えのレンズ系でも同様である。
【0026】
(1) 1/(Z)1/2 <βm <(Z)1/2
ところで、移動レンズ群GMよりも物体側に配置した負のレンズ成分GNの焦点距離をfn、移動レンズ群の倍率をβm 、移動レンズ群より像側のレンズ群の結像倍率をβとする時、全系の焦点距離fは下記の式にて表わされる。
【0027】
f=fn・βm ・β
ここで、移動レンズ群より像側にレンズ群又はレンズ成分がなく又平行平面板のみ配置されている場合は、β=1である。又結像倍率は、いずれも物点が無限遠の場合である。
【0028】
移動レンズ群の倍率βm がおおよそ1であれば、上記の式より負レンズ成分GNの焦点距離fnは、全系の焦点距離fにほぼ等しくなる。ここで移動レンズ群の結像倍率βm を1より大きくすると、移動レンズ群を物体側に寄せることになるためレンズ間隔が小になり余裕がなくなる。また倍率を大にすると特に倍率の色収差が発生する。そのために結像倍率βm は、やや小さく設定した方が好ましく、下記の範囲内にするのがよい。
【0029】
(2) 0.75<|βm |<1.2
上記の範囲内の倍率βm の移動レンズ群を移動させた時、変倍時にピントずれを生ずるがそのずれ量ΔP が次の範囲内であれば問題はない。
【0030】
(3) |ΔP /fW |≦0.1
ただしfW は、ワイド状態における全系の焦点距離である。
【0031】
内視鏡用対物レンズは、焦点距離が短いために被写界深度が深い。その上、本発明のような超広角の場合は、一層被写界深度が深い。そのため、多少ピントがずれても被写界深度即ち観察範囲に差はほとんど生じない。しかし、前記条件(3)の範囲を越えるとピントずれによって変倍したときの観察範囲が変わるので好ましくない。むろん各状態において必ずしも観察範囲を一致させる必要はないので、場合によっては、上記の設定にこだわらなくともよい。
【0032】
又、物体側負レンズ成分GNと移動レンズ群GMとの間隔dは、移動レンズ群から像面までの距離をSB とすると各々次の式で表わすことが出来る。
【0033】
d=[1+(1/βm )]・fm −fn
SB =(1+βm )・fm
このdおよびSB は、移動レンズ群を移動させるためにある程度大きくなければならない。特にSB は赤外カットフィルターなどの光学補正フィルターを配置したり、組立時に行なうピント調整のための移動レンズ群の移動量よりも大きな値にする必要がある。
【0034】
又、上記のdおよびSB の値は、後に詳細に述べる画角のばらつきを調整するためにも余裕を持たせる必要がある。
【0035】
このdおよびSB の値を大きくするためには、前述の理由によりβm がある程度決まってしまうために、fm の値を大きくする必要がある。しかし、fm の値をあまり大きくしすぎると、レンズ系の全長が長くなり、又光線高も高くなってレンズ外径を大にしなければならず好ましくない。逆にfm の値が小さすぎるとレンズ間隔が小さくなり、移動のためのスペースを十分とることが出来ず、移動レンズ群を構成する各レンズの焦点距離が小になるためレンズの加工性が悪くなる。
【0036】
以上の理由から、fm の値は、下記の範囲内であることが望ましい。
【0037】
1.5<fm /fW <3
ただしfW はワイド端における全系の焦点距離である。
【0038】
又、負レンズ成分GNの焦点距離fnは、次の理由から或る範囲内の値に決まってしまう。
【0039】
一般に内視鏡用対物レンズは、その焦点距離をf、半画角をθ、像高をhとすると、h=fsin θの関係が成立つ。しかし、画角がより広くなるとh=fsin θの関係から外れ、h=fsin θとh=f・θとの間の関数にて表わされる関係を有するようになる。つまり下記のようになる。
【0040】
sin θ<h/f<θ
ここで、像高hと半画角θとは、最初に決められるべきものであるため、これにより対物レンズの焦点距離は、ほぼ決まる。
【0041】
今、ワイド状態における全系の焦点距離をfW 、倍率をβW 、半画角をθW 、又テレ状態における全系の焦点距離をfT 、倍率をβT 、半画角をθT とすると、変倍比Zは次の式で表わすことが出来、又、下記範囲内であることが好ましい。
【0042】
Z=βT /βW ≒fT /fW
sin θT /sin θW <Z<θT /θW
例えば、画角が130°から170°まで変わるとすると、変倍比は次の範囲になる。
【0043】
1.10<Z<1.31
また、f=fn・βm であるから、fとβm の値が決まれば、fnの値も決まり、fnは下記の範囲内が好ましい。
【0044】
(4) 0.8<|fn /fW |<1.35
上記条件の下限の0.8を越えると第2レンズ群の結像倍率が大になり、物点側にレンズ群を移動させるための間隔が足りなくなり、又倍率が大になることにより特に倍率の色収差が大になり性能が低下する。逆に上限の1.35を越えると変倍に伴うピントずれ量が大きくなる。
【0045】
又、前述のd,SB の値は、次に述べる理由により、下記条件の範囲が望ましい。
【0046】
(5) 0.3<d/fW <2
(6) 0.5<SB /fW <4
ここで、d,SB とも平行平面板が配置されている場合は、空気換算長に置換えるものとする。又、移動レンズ群の後ろ側に平行平面板しか配置しない場合は、SB は移動レンズ群の後側最終面から像面までの空気換算長である。移動レンズ群の後ろ側に固定レンズ成分が配置されている場合は、SB は、移動レンズ群の最終面から、固定レンズ成分の物体側の面までの空気換算長である。
【0047】
上記条件(5)において、d/fW が下限の0.3を越えると移動レンズ群とその前側に配置されたレンズとが衝き当る。また画角調整のための間隔がなくなる。上限の2を越えると、移動レンズ群とその前のレンズとの間隔が大になりすぎレンズ系の全長が長くなり、又特に第1レンズ群における光線高が高くなりレンズ外径を大きくしなければならない。
【0048】
条件(6)において、SB が下限の0.5を越えると移動レンズ群とその後ろ側のレンズ成分とがぶつかり、又赤外カットフィルター等の光学補正フィルターを配置できなくなる。又ピント調整のための間隔も得られなくなる。逆に上限の4を越えると、移動レンズ群とその後ろ側のレンズ成分の間隔が大になる等、レンズ系の全長が長くなる。
【0049】
又、特に広角になると、第1レンズ群G1の最も物体側に配置した負レンズの光線高が高くなり、負レンズにより光線が強く曲げられるために、特にコマ収差の発生が顕著になる。そのため負レンズの像側に正レンズを配置して、明るさ絞りに対する非対称性を緩和して、コマ収差を補正する必要がある。また負レンズの像側に正レンズを配置すれば、コマ収差のみでなく、倍率の色収差の補正も可能になる。
【0050】
本発明では、前述のように、負の屈折力を持つ第1レンズ群G1中の像側に配置したレンズ成分を一体に移動させることによって、より広角にての変倍を可能とし、又特に広角において問題となる、製作誤差等による画角のばらつきの調整を移動レンズ群の少ない移動により可能にしている。次にこの点に関しての詳細な説明を行なう。
【0051】
前述のようにレンズや枠などの部品の加工精度によって、実際の内視鏡に組込まれた対物レンズは設計値と異なり画角が変わってしまう。そのため、従来は部品の加工精度を厳しくしたり、使用する部品の組合わせを変えて調整を行なっていたが、多少のばらつきは許容していた。しかし、狭角の場合に比べ超広角になると画角のばらつきが大きく、調整がむづかしく、すぐに画角が180°を越えるようになり、前記の従来の調整方法では対処できない。
【0052】
画角は、第1レンズ群中の負レンズ成分のパワーにより決まるが、この負レンズ成分の後側の間隔の変化が画角の変化に大きく影響を及ぼす。そのため、この間隔が変わると画角が大きくばらつくことになる。むろん、この間隔の変化だけにより画角がばらつくのではなく、この間隔公差だけを厳しくしても画角のばらつきは生ずるが、特に超広角になるとこの間隔の誤差が画角のばらつきに与える影響が大きく、この間隔の精度を厳しくする必要がある。
【0053】
しかし、レンズや枠などの部品の加工精度には限界があり、公差を0にして画角のばらつきをなくすことは出来ない。
【0054】
本発明では、逆に画角のばらつきに大きく影響を及ぼす間隔の公差を厳しくすることなく、この間隔を調整することにより画角の調整を行なうようにした。
【0055】
ここで、画角のばらつきの補正方向を簡単に説明する。ここでは、物体像を受ける手段としてCCDイメージセンサ等の固定撮像素子を用いた場合について述べる。
【0056】
まず、各レンズを保持枠に取り付けた後移動レンズ群を動かして画角が設計値になるように調整し、その位置で移動レンズ群を固定する。この時、CCDの位置は画像におよそピントがあっていれば良い。その状態で、次にCCDのピント出し調整を行ない、レンズとCCDとの距離を固定する。これで調整が終わるので、移動群の固定を解除し、移動群が変倍のために移動できるようにする。
【0057】
画角のばらつきはレンズやレンズ保持枠の公差が積算された結果生ずるもので、画角のばらつき量はワイド、テレ等の状態によって変化する。しかし、同時に移動レンズ群を移動させた際の補正量も状態に応じて変化し、両者の変化の傾向が同じであるため、一つの状態で画角の調整を行なえば全ての状態において実質上問題ないレベルの調整が可能である。
【0058】
尚、1つの状態の調整では不十分な場合、あるいは特に厳密な調整が必要な場合等には、ワイド、テレの両端において調整することが望ましい。両端での調整が困難である場合には、ワイド側に重点をおいて調整することが望ましい。画角調整のための移動レンズ群の倍率βの値が1に近ければ、画角調整をしてもピント位置は殆ど変わらない。
【0059】
上記のような調整方法は変倍のための移動レンズ群を画角調整にも利用するものであるから、調整だけのために移動間隔を設ける必要がなく、構成の簡略化やコンパクト化の面で好ましい。
【0060】
この方法を実際に適用するに当たって、明るさ絞りより像側のレンズ群のみを移動させて画角の調整を行なうと、調整後も各変倍状態にてある程度のばらつき、つまり設計値と実際の画角との差が大きい。又絞りより像側のレンズ群による調整では、画角調整のための移動量による画角への影響が小さいため移動量が大になるか、調整のための可変間隔が多くなり、レンズ系の全長が長くなる。また移動量が大であるため、移動によって、レンズ系の明るさ絞りに対する対称性が大きく崩れ、コマ収差や非点収差等が著しく発生し、画質の低下をまねく。
【0061】
本発明のレンズ系のように、明るさ絞り前後のレンズ群又はレンズ成分を一体に、特に明るさ絞りを含めて一体に移動させれば、明るさ絞りに対する対称性を保持しつつかつレンズ群やレンズ成分(移動レンズ群)の移動量が少なくてすみ、レンズ系全体のバランスを保つことが出来る。したがって変倍を行なってもレンズ系の性能の低下が少なくてすむ。
【0062】
さらに、変倍時に負の第1レンズ群の負のレンズ成分の像側の間隔のみを変化させたと同じ作用により画角を調整し得ることが一つの特徴である。それは、対物レンズの全長つまり対物レンズの第1面から像面までの長さは、倍率の変化や画角の調整の際に不変である。そして移動レンズ群の移動によりこのレンズ群の前後の間隔が変化し、一方が広くなれば他方は狭くなり、これらの間隔の変化に伴う画角のばらつきへの影響度が重要である。例えば、両間隔共にその変化の画角のばらつきに対する調整に有効に作用する時は、互いの効果が打ち消し合うため注意する必要がある。そのため、明るさ絞りより像側に配置したレンズ群(レンズ成分)のうち画角ばらつき等の光学系の性能にあまり影響を与えない間隔が可変となるように移動レンズ群をえらべばよい。
【0063】
具体的には、明るさ絞りより後ろ側に配置されているレンズ群(レンズ成分)のすべてを移動させるか、後の実施例7のようにフィールドレンズを除くレンズ成分を移動させればよい。
【0064】
上記の移動レンズ群を移動させての画角の調整は、変倍光学系に限ることなく、固定焦点の対物レンズに対しても適用し得ることは言うまでもない。
【0065】
以上のことを考慮すると、移動レンズ群の移動量Dm と半画角当りの画角の変化量Δωとが次の関係を満足することが望ましい。
【0066】
35fW <ΔW/Dm <120fW
前記の条件の下限の35fW を越えると、調整間隔が多く必要になりレンズ系の全長が大になる。また収差が悪化し、画質が低下する。逆に上限の120fW を越えると僅かな移動量ですぐに画角がばらつき微妙な調整を行ないにくい。
【0067】
前記のように効率よく調整を行なうためには、移動されるレンズ群のレンズ成分間に明るさ絞りが位置することになる。この明るさ絞りを固定しその前後のレンズ成分を互いに相関を持たせて精度よく移動させることは難しく、内視鏡用対物レンズのような微小レンズ系においては一層困難になる。そのためにも、明るさ絞りは、移動レンズ群と一体に移動させることが必要である。又このように明るさ絞りを移動させることにより、変倍を行なってもFナンバーの変化が少なくてすむと言う利点がある。
【0068】
【実施例】
次に本発明の内視鏡用対物レンズの各実施例を示す。
実施例1
f=1.143 (テレ)〜1.000 (ワイド),NA=-0.008,像高=1.179
2ω=129.296 °(テレ)〜168.49°(ワイド),物体距離=-9.167
r1 =16.5891 d1 =0.5348 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =0.9956 d2 =D1 (可変)
r3 =∞ d3 =0.8046 n2 =1.84666 ν2 =23.78
r4 =-2.8985 d4 =0.2143
r5 =∞(絞り) d5 =0.5959
r6 =-5.9461 d6 =0.6259 n3 =1.69680 ν3 =55.52
r7 =-1.5934 d7 =0.1495
r8 =8.4589 d8 =1.0863 n4 =1.72916 ν4 =54.68
r9 =-1.1436 d9 =0.4345 n5 =1.84666 ν5 =23.78
r10=-4.6622 d10=0.0764
r11=∞ d11=0.3056 n6 =1.52287 ν6 =59.89
r12=∞ d12=0.0229
r13=∞ d13=0.4736 n7 =1.52000 ν7 =74.00
r14=∞ d14=0.0229
r15=∞ d15=0.3056 n8 =1.52287 ν8 =59.89
r16=∞ d16=D2 (可変)
r17=∞ d17=0.7639 n9 =1.51633 ν9 =64.15
r18=∞
f 1.143 1.000
D1 0.828 1.104
D2 0.714 0.438
fm =1.802 ,fn =-1.219,d=0.828 〜1.104 ,SB =1.829 〜2.073
ΔW /Dm =71.00 ,ΔW =19.597,Dm =0.276 ,ΔP =0.032
fT /fW =1.143 ,Z=1.15
【0069】
実施例2
f=1.141 (テレ)〜1.000 (ワイド)
NA=-0.008(テレ)〜-0.007(ワイド),像高=1.165
2ω=129.966 °(テレ)〜169.902 °(ワイド),物体距離=-9.057
r1 =16.1079 d1 =0.5283 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =0.9814 d2 =D1 (可変)
r3 =∞ d3 =0.2969 n2 =1.72916 ν2 =54.68
r4 =1.3860 d4 =0.4832 n3 =1.61293 ν3 =37.00
r5 =-2.2950 d5 =0.2117
r6 =∞(絞り) d6 =0.5878
r7 =-7.7228 d7 =0.6166 n4 =1.51633 ν4 =64.15
r8 =-1.3416 d8 =0.0869
r9 =7.7223 d9 =1.0295 n5 =1.72916 ν5 =54.68
r10=-1.1214 d10=0.3689 n6 =1.84666 ν6 =23.78
r11=-4.3585 d11=0.0755
r12=∞ d12=0.3019 n7 =1.52287 ν7 =59.89
r13=∞ d13=0.0226
r14=∞ d14=0.4679 n8 =1.52000 ν8 =74.00
r15=∞ d15=0.0226
r16=∞ d16=0.3019 n9 =1.52287 ν9 =59.89
r17=∞ d17=D2 (可変)
r18=∞ d18=0.8302 n10=1.51633 ν10=64.15
r19=∞ d19=0.7547 n11=1.51633 ν11=64.15
r20=∞
f 1.141 1.000
D1 0.820 1.093
D2 0.705 0.432
fm =1.836 ,fn=-1.203,d=0.820 〜1.093 ,SB =2.318 〜2.565
ΔW /Dm =73.15 ,ΔW =19.968,Dm =0.273 ,ΔP =0.026
fT /fW =1.141 ,Z=1.149
【0070】
実施例3
f=1.136 (テレ)〜1.000 (ワイド)
NA=-0.008(テレ)〜-0.007(ワイド),像高=1.175
2ω=129.992 °(テレ)〜170.07°(ワイド),物体距離=-9.139
r1 =17.9078 d1 =0.5331 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =0.9877 d2 =D1 (可変)
r3 =∞ d3 =0.8024 n2 =1.84666 ν2 =23.78
r4 =-2.3048 d4 =0.0762
r5 =4.9254 d5 =0.2742 n3 =1.51633 ν3 =64.15
r6 =2.0686 d6 =0.213
r7 =∞(絞り) d7 =0.5855
r8 =-4.4006 d8 =0.5490 n4 =1.51633 ν4 =64.15
r9 =-1.3911 d9 =0.137
r10=7.1750 d10=1.0341 n5 =1.72916 ν5 =54.68
r11=-1.2720 d11=0.2939 n6 =1.84666 ν6 =23.78
r12=-3.4252 d12=0.076
r13=∞ d13=0.3046 n7 =1.52287 ν7 =59.89
r14=∞ d14=0.0228
r15=∞ d15=0.4722 n8 =1.52000 ν8 =74.00
r16=∞ d16=0.0228
r17=∞ d17=0.3046 n9 =1.52287 ν9 =59.89
r18=∞ d18=D2 (可変)
r19=∞ d19=0.8378 n10=1.51633 ν10=64.15
r20=∞ d20=0.7616 n11=1.51633 ν11=64.15
r21=∞
f 1.136 1.000
D1 0.829 1.123
D2 0.643 0.349
fm =2.048 ,fn =-1.202,d=0.829 〜1.123 ,SB =2.278 〜2.540
ΔW /Dm =68.16 ,ΔW =20.039,Dm =0.294 ,ΔP =0.032
fT /fW =1.136 ,Z=1.152
【0071】
実施例4
f=1.134 (テレ)〜1.000 (ワイド),NA=-0.008,像高=1.159
2ω=130.032 °(テレ)〜170.014 °(ワイド),物体距離=-9.016
r1 =16.9603 d1 =0.5259 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =0.9971 d2 =D1 (可変)
r3 =-17.3788 d3 =0.3368 n2 =1.60729 ν2 =49.19
r4 =8.1599 d4 =0.1127
r5 =∞ d5 =0.7901 n3 =1.84666 ν3 =23.78
r6 =-2.6406 d6 =0.2112
r7 =∞(絞り) d7 =0.6011
r8 =-5.1820 d8 =0.6126 n4 =1.69680 ν4 =55.52
r9 =-1.6358 d9 =0.1445
r10=11.5387 d10=1.0602 n5 =1.72916 ν5 =54.68
r11=-1.1715 d11=0.4287 n6 =1.84666 ν6 =23.78
r12=-5.2855 d12=0.0751
r13=∞ d13=0.3005 n7 =1.52287 ν7 =59.89
r14=∞ d14=0.0225
r15=∞ d15=0.4658 n8 =1.52000 ν8 =74.00
r16=∞ d16=0.0225
r17=∞ d17=0.3005 n9 =1.52287 ν9 =59.89
r18=∞ d18=D2 (可変)
r19=∞ d19=0.8264 n10=1.51633 ν10=64.15
r20=∞ d20=0.7513 n11=1.51633 ν11=64.15
r21=∞
f 1.134 1.000
D1 0.811 1.084
D2 0.707 0.434
fm =1.892 ,fn =-1.219,d=0.811 〜1.084 ,SB =2.298 〜2.536
ΔW /Dm =73.22 ,ΔW =19.991,Dm =0.273 ,ΔP =0.035
fT /fW =1.134 ,Z=1.149
【0072】
実施例5
f=1.142 (テレ)〜1.000 (ワイド)
NA=-0.007(テレ)〜-0.006(ワイド),像高=1.176
2ω=129.972 °(テレ)〜170.018 °(ワイド),物体距離=-11.433
r1 =16.2226 d1 =0.5335 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =0.9874 d2 =D1 (可変)
r3 =-26.4884 d3 =0.8138 n2 =1.84666 ν2 =23.78
r4 =-2.7486 d4 =0.2253
r5 =∞(絞り) d5 =0.4421
r6 =-5.9974 d6 =0.4865 n3 =1.76182 ν3 =26.52
r7 =-8.3557 d7 =0.4192 n4 =1.69680 ν4 =55.52
r8 =-1.5889 d8 =0.1541
r9 =10.6404 d9 =1.0976 n5 =1.72916 ν5 =54.68
r10=-1.1409 d10=0.4573 n6 =1.84666 ν6 =23.78
r11=-4.6841 d11=0.0762
r12=∞ d12=0.3049 n7 =1.52287 ν7 =59.89
r13=∞ d13=0.0229
r14=∞ d14=0.4726 n8 =1.52000 ν8 =74.00
r15=∞ d15=0.0229
r16=∞ d16=0.3049 n9 =1.52287 ν9 =59.89
r17=∞ d17=D2 (可変)
r18=∞ d18=0.7622 n10=1.51633 ν10=64.15
r19=∞
f 1.142 1.000
D1 0.833 1.108
D2 0.847 0.572
fm =1.822 ,fn =-1.211,d=0.833 〜1.108 ,SB =1.915 〜2.155
ΔW /Dm =72.80 ,ΔW =20.023,Dm =0.275 ,ΔP =0.035
fT /fW =1.142 ,Z=1.16
【0073】
実施例6
f=1.141 (テレ)〜1.000 (ワイド),NA=-0.008,像高=1.142
2ω=130.138 °(テレ)〜170.414 °(ワイド),物体距離=-8.882
r1 =17.0214 d1 =0.5477 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =0.9816 d2 =D1 (可変)
r3 =∞ d3 =0.2887 n2 =1.72916 ν2 =54.68
r4 =1.2539 d4 =0.4747 n3 =1.61293 ν3 =37.00
r5 =-2.6186 d5 =0.1729
r6 =∞(絞り) d6 =0.5705
r7 =-1.7937 d7 =0.6176 n4 =1.51633 ν4 =64.15
r8 =-1.2113 d8 =0.0735
r9 =5.7467 d9 =0.9274 n5 =1.72916 ν5 =54.68
r10=-1.2157 d10=0.2763 n6 =1.84666 ν6 =23.78
r11=-3.6385 d11=0.0740
r12=∞ d12=0.2961 n7 =1.52287 ν7 =59.89
r13=∞ d13=0.0222
r14=∞ d14=0.4589 n8 =1.52000 ν8 =74.00
r15=∞ d15=0.0222
r16=∞ d16=0.2961 n9 =1.52287 ν9 =59.89
r17=∞ d17=D2 (可変)
r18=5.7589 d18=0.8142 n10=1.51633 ν10=64.15
r19=∞ d19=0.7402 n11=1.51633 ν11=64.15
r20=∞
f 1.141 1.000
D1 0.848 1.119
D2 1.605 1.335
fm =1.997 ,fn =-1.199,d=0.848 〜1.119 ,SB =2.145 〜2.434
ΔW /Dm =74.32 ,ΔW =20.138,Dm =0.271 ,ΔP =0.019
fT /fW =1.141 ,Z=1.147
【0074】
実施例7
f=1.204 (テレ)〜1.000 (ワイド)
NA=-0.007(テレ)〜-0.006(ワイド),像高=1.298
2ω=130 °(テレ)〜170 °(ワイド),物体距離=-10.765
r1 =6.3882 d1 =0.4205 n1 =1.88300 ν1 =40.78
r2 =1.0230 d2 =0.6897
r3 =5.4364 d3 =0.2944 n2 =1.77250 ν2 =49.66
r4 =2.4831 d4 =D1 (可変)
r5 =2.6387 d5 =0.5887 n3 =1.72825 ν3 =28.46
r6 =-3.6140 d6 =0.0841
r7 =∞(絞り) d7 =0.3532
r8 =27.3161 d8 =0.9251 n4 =1.58913 ν4 =60.97
r9 =-0.8655 d9 =0.3364 n5 =1.80518 ν5 =25.43
r10=-2.3949 d10=0.0883
r11=∞ d11=0.4205 n6 =1.53172 ν6 =48.90
r12=∞ d12=0.0841
r13=5.2029 d13=0.7149 n7 =1.65160 ν7 =58.52
r14=-4.1111 d14=0.2088
r15=-2.1717 d15=0.2523 n8 =1.84666 ν8 =23.78
r16=-3.6649 d16=D2 (可変)
r17=∞ d17=0.8410 n9 =1.51633 ν9 =64.15
r18=∞
f 1.204 1.000
D1 1.054 1.400
D2 1.336 0.989
fm =1.982 ,fn =-1.032,d=1.054 〜1.40,SB =1.499 〜1.930
ΔW /Dm =57.80 ,ΔW =20.0,Dm =0.346 ,ΔP =0.084
fT /fW =1.204 ,Z=1.224
ただしr1 ,r2 ,・・・ はレンズ各面の曲率半径、d1 ,d2 ,・・・ は各レンズの肉厚およびレンズ間隔、n1 ,n2 ,・・・ は各レンズの屈折率、ν1 ,ν2 ,・・・ は各レンズのアッベ数である。
【0075】
これら実施例1乃至実施例7は、夫々図1乃至図7に示すレンズ構成である。これら図において上段はいずれもテレ状態、下段はワイド状態である。又ワイド状態にのみ示してあるG1 ,G2 は夫々第1レンズ群,第2レンズ群、GM は移動レンズ群、Sは明るさ絞り、Fは赤外カットフィルター,YAGカットフィルター,水晶フィルター等の光学補正フィルター、CはCCD等の撮像素子の前のカバーガラスである。
【0076】
図1に示す実施例1は、第1レンズ群G1 の負のレンズ成分を除く全レンズ成分が明るさ絞りSと共に一体に移動可能にした移動レンズ群GM で、光学補正フィルターFも移動可能にした。又ピント調整は像面位置に配置したCCDなどの固体撮像素子を移動させることにより可能である。
【0077】
又画角調整後は、移動レンズ群GM の前後の移動幅を制限すれば、変倍に際して常に適正な画角範囲とすることが出来る。このとき、移動幅を前後の両端で制限出来ない場合は、特にけられ等の心配のある広角側のみ制限すればよい。
【0078】
図2に示す実施例2は、実施例1よりも多くの光学補正フィルターFを配置するためにレンズ系のバックフォーカスを少し長くしている。そのために発生する倍率の色収差の補正のために、第1レンズ群G1 の正のレンズ成分を接合レンズにした。この接合レンズは、屈折率差が大きいと接合面の曲率が小になり又屈折率差が小さいと接合面の曲率が大になりレンズ加工性が悪くなるので、屈折率差は0.07〜0.13程度が好ましい。
【0079】
図3に示す実施例3は、実施例2の第1レンズ群G1 の正の接合レンズ成分の負レンズと正レンズを分離したものである。
【0080】
図4に示す実施例4は、実施例3における分離した正のレンズ成分の各レンズの負,正を逆にして正レンズと負レンズの順に配置したものである。
【0081】
図5に示す実施例5は、実施例2の第2レンズ群G2 の物体側の正レンズ成分を接合レンズとし、第2レンズ群G2 を二つの接合レンズ成分にて構成したものである。
【0082】
図6に示す実施例6は、撮像面にフィールドレンズLF を配置することによって、撮像面にほぼ垂直に光線が入射するようにしたものである。これにより、この実施例では、変倍を行なっても撮像面への光線の入射角が数度程度に収っている。第2レンズ群G2 は、このフィールドレンズLF を除いて移動可能である。このフィールドレンズLF は、撮像面と一体になっているが、別体にしてもよい。
【0083】
図7に示す実施例7は、第1レンズ群G1 負レンズ成分,負レンズ成分,正レンズ成分にて構成し、又第2レンズ群G2 を正の接合レンズ成分と夫々負の単レンズおよび正の単レンズの二つのレンズ成分よりなる三つのレンズ成分にて構成したものである。この実施例では、第1レンズ群G1 の物体側の二つのレンズ成分を固定し、第1レンズ群G1 の像側の正のレンズ成分以降を移動レンズ群にしている。
【0084】
以上の各実施例のうち、実施例1乃至実施例5は、いずれも第1レンズ群G1 の最も物体側の負レンズ成分を固定し、他は移動レンズ群にしている。又実施例6,実施例7は、第1レンズ群G1 の最も物体側の負のレンズ成分以外にも固定のレンズ成分(実施例6はフィールドレンズLF 、実施例7は第1レンズ群G1 中の2番目の負のレンズ成分)を有しているが、他の実施例と同等の効果が得られる。
【0085】
各実施例において、第1レンズは物体側に凸面を向けた負のメニスカスレンズであるが、物体側が平面の平凹レンズにしてもよい。特に画角が大きい場合、第1面に曲率をもたせ凸面にすれば、画角の割に第1面へ入射する光線の入射角を小さく出来るので、光線の表面反射による損失を低減させることが出来る。又反射防止のためのコーティングを行なえば、反射損失を低減することが出来る。しかし、第1面の曲率をあまり大にすると、第1面へ入射する光線の入射角は小さく出来るが、レンズ系の第1面の中央が出っ張るため、レンズ表面がよごれやすくなり、表面の洗浄を行ないにくくなるおそれがある。そのために、第1面は適正な曲率の凸面にすることが好ましい。ここでレンズの外径をDとし、第1面の曲率半径をRとすると、第1面の出っ張り量Δは、下記の通りである。
【0086】
Δ=R−{R2 −(D/2)2 }1/2
この出っ張り量の好ましい範囲は、前記の点から考え、下記の通りである。
【0087】
0≦Δ/fW ≦0.2
前記実施例のΔ/fW の値は、データー中に示す通りであり、およそ0.08〜0.12である。
【0088】
前記のΔ/fW の条件の下限は、平面の場合を意味し、平面の場合反射による損失は比較的大であるが、洗浄性はよい。しかし下限を越えると凹面になり洗浄性も悪くなる。又上限を越えると反射による損失は少ないが、第1面が出っ張っているためレンズに傷がつきやすく、洗浄性も悪くなる。
【0089】
実施例においては、いずれも赤外カットフィルター等の光学補正フィルターを移動レンズ群GM と一体に移動させているが、これらフィルター群を固定してもよい。又実施例7のように、レンズ系の間(レンズ成分間)に配置してもよく、複数の光学補正フィルターを分散させて配置してもよい。特に、この光学補正フィルターを、像面側に固定配置すれば、移動レンズ群の移動によりごみ等が落ちても、光学補正フィルター表面では、光束径が太いので画像への影響は少ない。又第1レンズ群G1 の最も物体側の負のレンズ成分と移動レンズ群GM との間に平行平面板を配置して、前記の第1の負のレンズ成分を確実に封止すればレンズ表面が曇るのを抑えることが出来る。又これにより、この負のレンズ成分の表面は、光束径が細いが、移動レンズ群を動かしてもごみ等がレンズ表面には落ちないので画像への影響を低減出来る。
【0090】
尚、本発明は、CCD等の固体撮像素子を用いた内視鏡に限らず、他の撮像素子やイメージガイドファイバーを用いた内視鏡にも適用できる。
【0091】
又前記実施例1〜実施例7の収差状況は、夫々図8〜図14に示す通りで、図1〜図9の断面図と同様上段がテレ、下段がワイドである。
【0092】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の内視鏡用対物レンズは、従来の固定焦点レンズと同程度のレンズ構成で、全長が短く外径の小さいコンパクトなレンズ系で、通常観察およびより広範囲な観察が可能な焦点が可変なレンズ系である。又、特に超広角な内視鏡用対物レンズで、加工精度や組立誤差等による画角の調整を容易に行ない得るレンズ系である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の断面図
【図2】本発明の実施例2の断面図
【図3】本発明の実施例3の断面図
【図4】本発明の実施例4の断面図
【図5】本発明の実施例5の断面図
【図6】本発明の実施例6の断面図
【図7】本発明の実施例7の断面図
【図8】実施例1の収差曲線図
【図9】実施例2の収差曲線図
【図10】実施例3の収差曲線図
【図11】実施例4の収差曲線図
【図12】実施例5の収差曲線図
【図13】実施例6の収差曲線図
【図14】実施例7の収差曲線図
【図15】本発明の基本構成の概略図
【図16】本発明のレンズ系において移動レンズ群の倍率と物点と物点の間の距離との関係を示すグラフ
【図17】従来の内視鏡用対物レンズの構成を示す図
【図18】上記従来例の変倍と合焦との関係を示す図
【図19】他の従来の内視鏡用対物レンズの構成を示す図
【図20】更に他の従来例の構成を示す図
Claims (7)
- 物体側から順に、負のパワーを持つ第1レンズ群と、明るさ絞りと、正のパワーを持つ第2レンズ群とを備えた内視鏡用対物レンズにおいて、前記第1レンズ群を物体側の負の第1−1レンズ群と像側の第1−2レンズ群とにより構成し、前記第1−1レンズ群は固定であり、前記第1−2レンズ群と前記第2レンズ群の物体側の少なくとも1部のレンズ成分とを一体として光軸上を移動させることにより、全系の焦点距離を可変とし、下記条件(2)を満足することを特徴とする内視鏡対物レンズ。
(2) 0.75<|β m |<1.2
ただし、β m は移動レンズ群の結像倍率である。 - 下記条件(3)を満足する請求項1に記載の内視鏡対物レンズ。
(3) |ΔP /fW |≦0.1
ただし、ΔPは移動レンズ群を移動させた時のピントずれ量、fW はワイド状態における全系の焦点距離である。 - 下記条件を満足する請求項1又は2に記載の内視鏡対物レンズ。
1.5<fm /fW <3
ただし、fm は移動レンズ群の焦点距離、fW はワイド状態における全系の焦点距離である。 - 下記条件(4)を満足する請求項1乃至3の何れかに記載の内視鏡対物レンズ。
(4) 0.8<|fn /fW |<1.35
ただし、fn は前記第1−1レンズ群の焦点距離、fW はワイド状態における全系の焦点距離である。 - 下記条件(5)及び(6)を満足する請求項1乃至4の何れかに記載の内視鏡対物レンズ。
(5) 0.3<d/fW <2
(6) 0.5<SB /fW <4
ただし、fW はワイド状態における全系の焦点距離、dは前記第1−1レンズ群と移動レンズ群とのレンズ間隔で平行平面板が配置されている場合は空気換算長に置き換え、SB は移動レンズ群から像面までの距離で平行平面板が配置されている場合は空気換算長に置き換え、また移動レンズ群の後側に固定レンズ成分が配置されている場合は移動レンズ群の最終面から固定レンズ成分の物体側面までの空気換算長とする。 - 下記条件を満足する請求項1乃至5の何れかに記載の内視鏡対物レンズ。
1.1<Z<1.31
ただし、Zは変倍比である。 - 下記条件を満足する請求項1乃至6の何れかに記載の内視鏡対物レンズ。
35fW <Δω/Dm <120fW
ただし、fW はワイド状態における全系の焦点距離、Δωは半画角当りの画角の変化量、Dm は移動レンズ群の移動量である。
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