JP3755775B2 - 物体の表面に固定化した付着物易除去被覆 - Google Patents

物体の表面に固定化した付着物易除去被覆 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、水によって付着物を容易に除去できる被膜を物体表面に固定することによって、物体を繰り返し容易に清浄にすることを可能にした物体の表面に固定化した付着物易除去被覆に関する。
【0002】
なお、この発明はその性質上、付着物の付着を阻止するものではなく、付着を許容するものであって、この付着物を水処理だけで容易に除去できるようにしたものであるため、本明細書中におけるこの発明の被覆を付着物易除去被覆と称した。
【0003】
【従来の技術】
従来、水に不溶な付着物を除去することは容易ではなく、液状の油程度であっても水に界面活性剤を加えて多大な手間をかけて洗浄するか、人体・環境に問題のある有機溶剤を用いて溶解しなければならない。
【0004】
ワックス状、固体状になると界面活性剤ではほとんど困難になる場合が多く、有機溶剤を用いるか、あるいは機械的に掻き落とす等重労働が必要となり、完全に除去できなかったり、被付着物を傷めたり、さらには除去不可能である場合も多い。
【0005】
また、表面に剥離または溶解可能な被覆を形成し、それと共に付着物を除去する方法もあるが、その度に新たな被膜を形成しなければならなかったり、余分な廃棄物を生じる等、本質的な解決方法とは言えない。
【0006】
繰り返し付着物を除去できるような被覆としてはテフロン被覆があるが、コストが高かったり、被覆できる表面が限られたり、透明性が低い等の問題点から利用範囲は狭かった。
【0007】
そこでこのような問題点のほとんどない、繰り返し容易に付着物を除去できるような被覆の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように付着物を除去するためには、多大な労力が費やされたり、人体・環境に悪影響を与える場合が多い。また、OHPフィルムやOA紙のように付着物であるインクが除去できないために多量に廃棄され、環境問題等を生じている場合もある。これは繰り返し容易に付着物を除去可能な、低コストで汎用性の高い被覆がないためである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明はかかる現状に鑑み種々検討を行った結果なされたもので、水によって膨潤するが流出して消失しない、親水性でかつ空気中常温で固体状の樹脂を主成分とする膜からなることを特徴とする物体の表面に固定化した被覆を用いることによって、水によって付着物を容易に除去できる被膜を物体表面に固定することによって、繰り返し物体を容易に清浄することを可能にしようとするものである。
【0010】
本発明の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、水に不溶または難溶性の付着物例えば油性物質等の多くが除去可能であり、付着物がこれらである場合により効果を発揮する。
【0011】
付着物除去の機構は、樹脂鎖の水和による付着物の付着力の低下、膨張や柔軟化による樹脂と付着物との間の歪みの発生等が考えられるが、正確な機構は明らかではない。
【0012】
本発明の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、水によって膨潤することが必要であるが、効果的に付着物を除去するためには、膨潤率が 1.5倍以上であることが好ましい。体積膨潤率は、厚さ数十μmで約1×1cmの大きさの試料を水に5分間浸漬したときの前後の試料のサイズの測定長さの比を3乗することにより求めることができる。
【0013】
本発明の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、繰り返し使用するためには水によって流出して消失しないことが必要であり、溶解流出しない樹脂の割合であるゲル分率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。これにより被覆自体にもある程度の耐擦傷性、耐水性等を付与することができる。
【0014】
このためには親水性の樹脂を架橋するのが有効である。架橋に用いる官能基としてはエポキシ基、イソシアネ−ト基、二重結合等が挙げられ、これらは架橋剤としても樹脂分子中の官能基としても用いることが可能である。架橋剤としては、エポキシ架橋剤、イソシアネ−ト架橋剤または放射線架橋剤等が好適に用いられる。
【0015】
また剥離流出を抑制するために、水に浸漬したときに、被覆した物体の表面から剥離することのない接着性・耐剥離性を有することが必要であり、被覆する物体の表面に処理を施したり、または被覆する物体の表面に該物体とは異なる層を設けることも有効である。
【0016】
例えば、接着性を向上するために、パラクロロフェノ−ル、トリフロロ酢酸、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アジド化合物、各種重合物等による処理または表面層を用いることができる。また、被覆と被覆する物体の膨潤率が異なる場合には、これらの間に生じる歪みを吸収するために、膨潤率が中程度の表面層を用いることもできる。
【0017】
本発明の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、水によって膨潤する親水性の樹脂が主成分であることを必要とするが、このような樹脂としては例えば、極性の官能基または親水鎖を有する樹脂が挙げられ、極性の官能基または親水鎖の具体例としては、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、アミノ基、リン酸基またはそれらの塩、ポリエチレングリコ−ル鎖等が挙げられる。
【0018】
これらの官能基または親水鎖を有する樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルアルコ−ル、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ジヒドロキシプロピルメタクリレ−ト、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリリルグリシンアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレ−ト、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレ−ト、アリルアミンまたはこれらの塩、アミノ基の4級化物、ポリエチレングリコ−ル等の、単独重合物、共重合物、上記以外の物質との共重合物等が挙げられる。
【0019】
樹脂の親水性は水に対する後退接触角により評価することが可能であり、水に対する後退接触角が40度以下、より好ましくは20度以下、さらに好ましくは10度以下のほぼ0度の親水性である樹脂が好適に利用される。
【0020】
水に対する後退接触角は、水滴を樹脂フィルム上に形成し、この水を注射器等で吸い上げ、水滴の端が内側に移動し初めたときの、水が樹脂に接する角度を分度器等で求めることができる。なお、特定の水溶液による処理を前提とする場合で、その処理によって親水性が変化する場合には、その水溶液に浸漬・乾燥後測定する必要がある。
【0021】
また、各種特性を改善するために、親水性の樹脂以外の物質を併用することも有効である。例えば、無機粉末、可塑剤、帯電防止剤、潤滑剤、染料、顔料、分散剤、疎水性の樹脂等を必要に応じて使用することができる。
【0022】
本発明は、水によって付着物を容易に除去できるようにするものであり、付着物の除去工程が水による洗浄であればより効果的である。水のみでは膨潤が不十分で除去が難しい場合、あるいは膨潤速度を高めて除去効率を高めたい場合等には、電解質、アルコ−ル等を含む水を用いることが効果的である場合が多い。
【0023】
電解質としては、樹脂の種類に応じて塩、塩基または酸を好適に用いることができる。その一例としては、重曹、食塩、酢酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩酸、硫酸、硝酸等の電解質、エチルアルコ−ル、イソプロピルアルコ−ル、メチルアルコ−ル等のアルコ−ル等が挙げられる。
【0024】
また、水に溶解する樹脂を含む水を用いることによって、被覆の樹脂中の溶出する成分等を補給することができ、被膜の各種特性の維持に効果的である。また除去効率を高めるために界面活性剤等を水に含めることも可能である。
【0025】
なお、付着物の除去工程において使用する水をそのまま廃棄する場合または水が直接人体に接触する可能性がある場合には、水に含まれる物質および被覆から溶出する物質は、人体・環境に対する悪影響の小さい物質であることが好ましく、生分解性物質であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の付着物除去材およびそれを用いた被覆は、形状または被覆を維持するため空気中常温で固体であることが必要である。実用性を考慮すると、乾燥時の引っ掻き強度が荷重を100gとした鉛筆引っ掻き試験で6B以上であれば、多くの場合好ましく、2B以上であればより好ましい。また、上記被覆どうしを接触させたこときに粘着または接着を生じないことは、実用上好ましい。
【0027】
本発明は、用途によっては、特に被覆として用いられる場合には、透明性を有することが好ましい場合が多い。その場合には一般に透明性が全光線または波長550nmの光線の透過率が80%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
被覆する基材がシ−ト状であるものは幅広い応用が可能であり、例えば、除去可能な付着物がインクである場合が挙げられる。これは本発明が優れた効果を発揮する代表的な例であり、その中でも特に、インクの付着方法が複写、印字または印刷である場合は、オフィス等で発生する紙ゴミの問題等の解決に非常に有効である。
【0029】
中でもコピ−機による複写や、プリンタやタイプライタ等による印字または印刷による紙ゴミの増加は著しく、したがって上記シ−ト状の基材上の被覆が、これらに用いられるインクと親和性を有して複写、印字または印刷可能であり、これらのインクの除去に用いることは非常に有効である。
【0030】
中でも電子写真複写方式のコピ−やレ−ザ−方式のプリンタに用いられるトナ−インクに対応することは、最近のオフィスにおける使用量から考えて、特に有効である。
【0031】
また、その他の方式による印字または印刷に用いられるインクに対応することももちろん有効であり、それらのインクの例としてはインクジェットインク、感熱リボンインク、インパクトインク、タイプライタリボンインクなどが挙げられる。
【0032】
この場合、シ−ト状の基材上の被覆が、複写、印字または印刷によるインクの付着工程の前後において劣化を受けない耐熱性、機械特性を有することが好ましい。
【0033】
また、シ−ト状の基材としては、用途に応じて樹脂フィルム、紙、金属ホイルまたはそれらの複合材または積層材等を好適に用いることができ、複写、印字または印刷が可能な可撓性および厚さを有することが好ましく、インクの付着および除去工程の前後において平面性を維持するものが好ましい。言い換えれば、平面性を維持可能な耐熱性、耐水性、機械特性または形状記憶性を有することが好ましい。
【0034】
また被覆が、複写、印字または印刷によるインクの付着および付着したインクの除去工程の前後において平面性を維持可能な収縮率または膨張率であることも好ましい。ただし、シ−ト両面に被覆を設ける場合には、比較的広い範囲の収縮率または膨張率の被覆が使用可能である。維持される平面性は、通常シ−トを平面上に置いたときに最も浮き上がった部分の浮き上がり幅が10mm以内であることが好ましい。
【0035】
なお、本発明における被覆の厚さは、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、 0.1μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。薄い場合には繰り返し使用回数が少なくなり、厚い場合には付着物除去時に被覆の損傷を生じ易い。
【0036】
本発明の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、水によって膨潤することが必要であるが、特定の用途、例えば上記インクの付着等においては、付着物の除去に必要な膨潤が、特定の温度領域においてのみ得られれば、実用上より好ましい。即ち室温使用時においては付着物が付着するが除去されにくく、室温とは異なる温度を用いる除去工程においてのみ付着物除去性が高いのがより好ましい。上記温度領域が20℃以上であれば、使用においても除去工程の設計においても好適であり、28℃以上であればより好ましい。
【0037】
このような効果を発現する樹脂としては、含窒素基および/または有機酸基を有する樹脂または樹脂の併用物が挙げられ、含窒素基、有機酸基としては、アミド基、アミノ基、カルボン酸基等が挙げられる。これらの官能基を有する樹脂または樹脂の併用物としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−アクリリルグリシンアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸等の単独重合物、共重合物、上記以外の物質との共重合物およびこれらの併用等が挙げられる。
【0038】
代表的な例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸とポリアクリリルグリシンアミド、ポリアクリル酸とポリジメチルアクリルアミド等の組み合わせがあり、例えば、最初の例では29℃以上の温度、水存在下で分子レベルの膨張が学問的に証明されている〔上遠野浩樹他、表面談話会コロイド懇話会編集、表面、30、32(1992)〕。
【0039】
また、インクの付着方法が、複写、印字または印刷である場合も含めて、特定の筆記具によるインクの付着および除去が可能であることが一般に好ましい。
【0040】
本発明の水によって膨潤するが流出して消失しない、親水性でかつ空気中常温で固体状の樹脂を主成分とする膜からなることを特徴とする物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、付着物を除去することを目的として広く利用することが可能であり、例えば以下のように利用することができる。
【0041】
インク類を除去することを目的として、OHPシ−ト、紙または紙同等品、セル画用シ−ト等に使用することができる。
【0042】
油等の汚れを除去することを目的としては、建材、家具、換気扇、灯油器具、電気製品、ガス器具、道具類、食器、その他種々の日用品等に用いることができる。特に台所周り、機械等を使用する作業場、塗料等を扱う作業場等、油や塗料等の汚れが発生し易い場所に用いられるものに効果的である。
【0043】
また、マスキングを目的として、塗装やグラフィックスの作成等に用いることも可能である。なお、水に膨潤するという優れた親水性から、曇り防止被膜としても利用可能である。
【0044】
このような応用に十分対応できることを、比較的取れ易い付着物である機械油の除去、および電子写真複写方式のコピ−機による複写において焼き付けられるトナ−インクという付着物の中でも特に強固に付着した付着物の除去を例にとって示す。
【0045】
【実施例】
次に、この発明の実施例について説明する。
Figure 0003755775
この組成物を冷却器を取り付けたフラスコ内に入れ、撹拌しながら80℃で、粘度増加が認められるまで反応させた。
【0046】
次いで、得られた樹脂溶液を、厚さが100μmのポリエチレンテレフタレ−トフィルム上に60μmの溶液厚さで塗布し、乾燥した後、70℃で3日間高温処理を施して、親水性の樹脂を架橋してなる物体の表面に固定化した付着物易除去被覆フィルムをつくった。
【0047】
また、剥離紙上に約200μmの溶液厚さで樹脂溶液を塗布し、乾燥した後、70℃で3日間高温処理を施して、体積膨潤率およびゲル分率測定用の試料を作成した。トナ−インクの除去、体積膨潤率およびゲル分率の測定の処理液には、水を用いた。
【0048】
Figure 0003755775
この組成物を室温で混合撹拌して、樹脂溶液を得た。
【0049】
次いで、得られた樹脂溶液を、厚さが100μmのポリエチレンテレフタレ−トフィルム上に300μmの厚さで塗布し、乾燥した後、110℃で5時間高温処理を施して、親水性の樹脂を架橋してなる物体の表面に固定化した付着物易除去被覆フィルムをつくった。
【0050】
また、ガラス板に張り付けたテフロンシ−ト上に100cm2 当たり25gの樹脂溶液を注ぎ込み、乾燥した後、110℃で5時間高温処理を施して、体積膨潤率およびゲル分率測定用の試料を作成した。トナ−インクの除去、体積膨潤率およびゲル分率の測定の処理液には、水を用いた。
【0051】
Figure 0003755775
この組成物を冷却器を取り付けたフラスコ内に入れ、窒素気流下撹拌しながら70〜80℃で10時間反応させ、親水性の樹脂Aの15重量%イソプロピルアルコ−ル溶液を得た。次に、
【0052】
Figure 0003755775
この組成物を室温で混合撹拌して、樹脂溶液を得た。
【0053】
次いで、得られた樹脂溶液を、厚さが100μmの易接着処理(ポリウレタン処理)を施したポリエチレンテレフタレ−トフィルム上に60μmの厚さで塗布し、乾燥した後、110℃で5時間高温処理を施して、親水性の樹脂を架橋してなる物体の表面に固定化した付着物易除去被覆フィルムをつくった。
【0054】
また、剥離紙上に約350μmの溶液厚さで樹脂溶液を塗布し、乾燥した後、110℃で5時間高温処理を施して、体積膨潤率およびゲル分率測定用の試料を作成した。トナ−インクの除去、体積膨潤率およびゲル分率の測定の処理液には、重曹の1重量パ−セント水溶液を用いた。
【0055】
実施例4
実施例3と同じ試料であるが、トナ−インクの除去の処理液に、樹脂Aが1重量%、重曹が1重量パ−セントの水溶液を用いた。
【0056】
比較例1
実施例1において、親水性の成分を有する樹脂層からなる表面層を形成する前のポリエチレンテレフタレ−トフィルムをそのまま試料とした。
【0057】
比較例2
市販の親水性樹脂(アクリル酸塩とビニルアルコ−ルの4:6共重合物)5重量%水溶液を、厚さが100μmのポリエチレンテレフタレ−トフィルム上に120μmの厚さで塗布し、乾燥した後、110℃で5時間高温処理を施して、親水性の樹脂をほとんど架橋していない被覆フィルムをつくった。
【0058】
また、ガラス板に張り付けたテフロンシ−ト上に100cm2 当たり14gの樹脂溶液を注ぎ込み、乾燥した後、110℃で5時間高温処理を施して、体積膨潤率およびゲル分率測定用の試料を作成した。トナ−インクの除去、体積膨潤率およびゲル分率の測定の処理液には、水を用いた。
【0059】
比較例3
付着物除去剤被覆を施すフィルムとして、表面処理を施していないポリエチレンテレフタレ−トフィルムを用いた他は、実施例3と同様にして物体の表面との接着性が低い被覆フィルムをつくり、処理液としては同じものを用いた。
【0060】
各実施例で得られた付着物除去材被覆フィルムおよび比較例1のフィルムを用いて、機械油を筆で約1×2cm塗布して付着させ、また電子複写方式のコピ−機で文字を複写してトナ−インクを付着させ、下記の方法で水による機械油および複写文字の除去性および各種特性を調べた。なお、樹脂Aの場合には、処理液によって親水性が向上するため、処理液に20分間浸漬、乾燥後、付着操作を行った。また、複写する文字としてはアルファベットの12ポイントゴシック体とした。
【0061】
〈体積膨潤率〉
体積膨潤率測定用試料を約1×1cmの大きさに切り、処理液に5分間浸漬する。5分間浸漬の前後の試料サイズの測定値から、長さの比を3乗して体積の比を求め、体積膨潤率とした。
【0062】
〈ゲル分率〉
ゲル分率測定用試料を約 0.1gの大きさに切り、50mlの処理液に浸漬して超音波を30分かける。その後処理液を入れ替えて上記操作を1回繰り返す。溶解せずに残った試料を、80℃乾燥機中で重量変化がなくなるまで(1週間程度)乾燥する。以上の操作の前後の重量差から、溶解しない部分の重量パ−セントを求め、ゲル分率とした。
【0063】
〈水に対する後退接触角〉
水滴をフィルムの被覆面上に形成し、この水を注射器で吸い上げ、水滴の端が内側に移動し初めたときの、水が樹脂に接する角度を分度器で求めた。なお、樹脂Aの場合には、処理液によって親水性が変化するため、処理液に20分浸漬・乾燥後測定した。
【0064】
〈鉛筆引っ掻き試験〉
荷重を100gとした以外はJIS K 5400に従った。
【0065】
〈粘着・接着試験〉
被覆面どうしを接触させてフィルムを重ね、1kgの分銅をその中心に置いて1日放置し、粘着および接着性を調べた。粘着および接着性の評価は、粘着・接着共に認められない場合を(○)、粘着が認められる場合を(△)、接着が認められる場合を(×)で示した。
【0066】
〈光線透過率〉
UV・可視分光光度計(日立制作所社製、200−20形ダブルビ−ム分光光度計)で波長550nmにおける光線透過率を求めた。
【0067】
〈平面製の維持性〉
電子複写方式のコピ−機(キャノン社製、NP5060)で文字を複写後、シ−トを平面上に置いた時に最も浮き上がった部分の浮き上がり幅を測定した。
【0068】
〈被覆の劣化〉
除去5回後の被覆の様子を目視および光学顕微鏡により観察した。
【0069】
〈機械油除去性〉
各付着物除去材被覆フィルムおよびフィルムを流水中において写真用スポンジで表面を擦り、油汚れ除去性を調べた。除去性の評価は、流水のみで除去できる場合を(◎)、軽く擦ることにより完全に消去される場合を(○)、強く擦っても油汚れが広がるだけで除去できない場合を(×)で示した。
【0070】
〈トナ−インク除去性〉
各付着物除去材被覆フィルムおよびフィルムを処理液に20分間浸漬した後、水中において写真用スポンジで表面を擦り、トナ−インク除去性を調べた。除去性の評価は、流水のみで除去できる場合を(◎)、軽く擦ることにより完全に消去される場合を(○)、強く擦っても全く消去できない場合を(×)で示した。
【0071】
〈トナ−インク繰り返し除去性〉
上記トナ−インク除去性試験の操作を実行後、ドライヤ−で水分を十分除去した後、再び複写およびトナ−インク除去を行うという操作を繰り返し、完全にトナ−インク除去が行える回数を調べた。
下記表1および表2はその結果である。
【0072】
Figure 0003755775
【0073】
Figure 0003755775
【0074】
【発明の効果】
上記表1および表2から明らかなように、この発明で得られた物体の表面に固定化した付着物易除去被覆(実施例1〜4)は、比較例1〜3の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆を施していないものまたは該被覆が固定化されていないものに比し、トナ−インクの除去性がよいかまたは繰り返し使用可能であることがわかる。
【0075】
また、比較的取れ易い付着物である機械油だけではなく、焼き付けたトナ−という付着物の中でも特に強固に付着した付着物が容易にかつ繰り返し除去できることから、他の付着物についても同様であることは言うまでもない。
【0076】
従って、この発明によって得られる物体の表面に固定化した付着物易除去被覆は、付着物を容易にかつ繰り返し除去することができ、物体の再利用、清浄化、マスキング等に有効であることがわかる。

Claims (28)

  1. 物体の表面に固定化した付着物易除去被覆であって、
    複写、印字または印刷が可能な可撓性および厚さを有するシ−ト状の基材の表面に被覆された、水によって膨潤するが流出して消失しない、親水性でかつ空気中常温で固体状の樹脂を主成分とする膜からなり、
    前記樹脂は、体積膨潤率が1.5倍以上であって、ゲル分率が50%以上の架橋されてなる樹脂であることを特徴とする、物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  2. 架橋されてなる樹脂の架橋に用いられる官能基が、エポキシ基、イソシアネ−ト基、二重結合である請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  3. 架橋剤として、エポキシ架橋剤、イソシアネ−ト架橋剤または放射線架橋剤を用いた請求項2記載の表面に固定化した付着物易除去被覆
  4. 樹脂が、極性の官能基または親水鎖を有する樹脂である請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  5. 極性の官能基または親水鎖が、カルボン酸基、水酸基、スルホン酸基、アミド基、アミノ基、リン酸基またはそれらの塩、もしくはポリエチレングリコ−ル鎖である請求項4記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  6. 樹脂が、水に対する後退接触角40度以下の親水性を有する樹脂である請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  7. 物体が、接着性、耐剥離性を向上する表面処理を表面に施したシ−ト状の基材、または表面に接着性、耐剥離性を有する表面層を設けたシ−ト状の基材である請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  8. 表面処理または表面層が、酸、カップリング剤、重合体によるものである請求項7記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  9. 電解質を含む水によって膨潤する請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  10. 電解質が、塩、塩基または酸である請求項9記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  11. アルコ−ルを含む水によって膨潤する請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  12. 樹脂とともに、無機粉末、可塑剤、帯電防止剤、潤滑剤、染料、顔料、分散剤、疎水性の樹脂から選ばれる1種以上を併用した請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  13. 乾燥時の引っ掻き強度が荷重を100gとした鉛筆引っ掻き試験で6B以上である請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  14. 被覆どうしを接触させたときに粘着または接着を生じない請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  15. 透明性を有する請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  16. 透明性が、全光線または波長550nmの光線の透過率が80%以上である請求項15記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  17. シ−ト状の基材が、樹脂フィルム、紙、金属ホイルまたはそれらの複合材または積層材である請求項記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  18. シ−ト状の基材上の被覆が、複写、印字または印刷可能なそれらに用いられるインクとの親和性を有する被覆である請求項1記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  19. インクが、トナ−インクである請求項18記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  20. インクが、インクジェットインク、感熱リボンインク、インパクトインク、タイプライタリボンインクである請求項18記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  21. シ−ト状の基材上の被覆が、複写、印字または印刷によるインクの付着工程の前後において劣化を受けない耐熱性、機械特性を有する被覆である請求項記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  22. シ−ト状の基材が、複写、印字または印刷によるインクの付着および付着したインクの除去工程の前後において平面性を維持可能な耐熱性、耐水性、機械特性または形状記憶性を有するシ−ト状の基材である請求項記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  23. シ−ト状の基材上の被覆が、複写、印字または印刷によるインクの付着および付着したインクの除去工程の前後において平面性を維持可能な収縮率または膨張率の被覆である請求項記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  24. 維持される平面性が、シ−トを平面上に置いたときに最も浮き上がった部分の浮き上がり幅が10mm以内の平面性である請求項22または23記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  25. 厚さが 0. 05μm以上5μm以下である請求項記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  26. 樹脂が、特定の温度領域においてのみ十分な膨潤性が得られる樹脂である請求項記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  27. 樹脂が、含窒素基および/または有機酸基を有する樹脂または樹脂の併用物である請求項26記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被覆
  28. 含窒素基、有機酸基が、アミド基、アミノ基、カルボン酸基である請求項27記載の物体の表面に固定化した付着物易除去被
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