本発明の感光層は、光重合性のネガ型感光性平版印刷版を与えるものであり、光重合開始剤と重合性化合物を少なくとも含有する。重合性化合物としては、重合性のモノマー、オリゴマー、あるいはポリマーの少なくとも1種を含有する。本発明の感光層は、上記の構成に加えて、ポリマー粒子とフッ素系界面活性剤を含有する。
本発明の平版印刷版はオーバー層を有しないので、本発明の上記目的・効果を得るためには、感光層の厚みとポリマー粒子の平均粒子径との関係が非常に重要であることを見いだした。即ち、感光層の厚みに対してポリマー粒子径が過小であると、耐傷性、耐ブロッキング性への効果が得られなくなり、逆に、感光層の厚みに対してポリマー粒子径が過大でも、耐傷性への効果は得られなくなり、更に感光層の塗布面にピンホールが発生しやすくなり、その他にも画質及び印刷時のクリーナー耐性等も低下する。従って、本発明の感光層に含まれるポリマー粒子の平均粒子径は、感光層の厚みに対して80〜300%である。ポリマー粒子の好ましい平均粒子径の範囲は、感光層の厚みに対して90〜250%であり、更に好ましい範囲は100〜200%である。感光層自体の厚みは、支持体上に0.5μmから10μmの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、特に1μmから5μmの範囲であることが高耐刷性を確保する上で好ましい。感光層の厚みは、断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。
本発明に用いられるポリマー粒子は有機ポリマー粒子が好ましく、例えば、シリコーン樹脂粒子、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート等のアクリレート樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリスチレンとポリ(メタ)アクリレートとの共重合体樹脂粒子、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂粒子、ポリフルオロエチレン、ポリクロロエチレン等のハロゲン化ポリオレフィン樹脂粒子、ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子等が挙げられる。特に好ましいポリマー粒子はシリコーン樹脂粒子であり、東芝シリコーン(株)よりトスパールシリーズとして市販されており、入手することができる。
本発明に用いられるポリマー粒子の形状は、より真球状に近い球形が好ましい。
ポリマー粒子の含有量については、感光層の全固形分に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%の範囲がより好ましく、特に0.3〜3質量%の範囲が好ましい。
感光層にポリマー粒子を適正に加えるだけでは、感光層の塗布面へのピンホールの発生頻度を抑制できず、更に非画像部の溶出性を悪化させる問題を有する。そこで、本発明では感光層に更にフッ素系界面活性剤を加える事で、ピンホール及び非画像部の溶出性を顕著に改善できる事を見出した。
本発明に用いることができるフッ素系界面活性剤は、例えば、パーフルオロアルキル基含有カルボン酸塩、パーフルオロアルキル基含有スルホン酸塩、パーフルオロアルキル基含有硫酸エステル塩、パーフルオロアルキル基含有燐酸塩等のアニオン性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル基含有アミン塩、パーフルオロアルキル基含有4級アンモニウム塩等のカチオン性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル基含有カルボキシルベタイン、パーフルオロアルキル基含有アミノカルボン酸塩等の両性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテル、その他パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマーエステル、パーフルオロアルキル基含有スルホンアミドポリエチレングリコール付加物等が挙げられる。具体的には、特開平9−134011号公報に記載の界面活性剤、下記化1、2に示される活性剤が挙げられる。
好ましくは、パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテル、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマー、パーフルオロアルキル基含有ポリマーエステルのノニオン性のものである。より好ましくは、分子内にエチレンオキシ基を4〜20個含有するノニオン性のフッ素系界面活性剤であり、更に好ましくは、分子内にエチレンオキシ基を4〜20個とパーフルオロアルケニル基を有するノニオン性のフッ素系界面活性剤(パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテル)である。
パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテルの具体例を以下に示す。この中でRfはパーフルオロアルケニル基であり、エチレンオキシ基の片末端あるいは両末端に結合したもの、あるいは(ポリ)グリセリン骨格になっているもの等が挙げられる。より好ましくは(ポリ)グリセリン骨格のもので、分子内のエチレンオキシ基の個数nが4〜20個のものである。
式中、Rは脂肪族基を表し、Rfはパーフルオロアルケニル基を表す。Rfの好ましいものを下記に示す。
上記パーフルオロアルケニルポリオキシエチレンエーテルは、(株)ネオス社より、(F−1)片末端タイプはFTX−212M(エチレンオキシ12個)、(F−2)両末端タイプはFTX−209F(エチレンオキシ9個)、213F(エチレンオキシ13個)、(F−3)グリセリンタイプはFTX−208G(エチレンオキシ8個)、218G(エチレンオキシ18個)、(F−4)ジグリセリンタイプはFTX−204D(エチレンオキシ4個)、FTX−208D(エチレンオキシ8個)、FTX−212D(エチレンオキシ12個)、FTX−218D(エチレンオキシ18個)として入手することができる
フッ素系界面活性剤の含有量については、感光層の全固形分に対して0.001〜0.5質量%が好ましく、0.005〜0.3質量%の範囲がより好ましい。
本発明の感光性平版印刷版は、オーバー層を有しなくても高感度である感光層を有する。係る感光層を得るための手段は特に限定されないが、例えば特開2001−290271号公報に記載の重合体、あるいは重合性モノマーを用いること、特開2003−122002号公報に記載のウレタン化合物を用いること、特開2003−315990号公報に記載のHLB値が10以下の非フッ素系ノニオン界面活性剤を用いることが挙げられる。これらの中でも、高感度、高耐刷力が安定して得られるという観点から、特開2001−290271号公報に記載された、側鎖にビニル基が置換したフェニル基(ビニルフェニル基)を有する重合体をバインダー樹脂として用いることが好ましい。
以下に、側鎖にビニルフェニル基を有する重合体について説明する。側鎖にビニルフェニル基を有する重合体とは、該フェニル基が直接もしくは連結基を介して主鎖と結合したものであり、連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。また、前記フェニル基はビニル基以外の置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、前記ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。上記した側鎖にビニルフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記一般式で表される基を側鎖に有するものである。
式中、Z1は連結基を表し、R1、R2、及びR3は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R4は置換可能な基または原子を表す。nは0または1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
上記一般式について更に詳細に説明する。Z1の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基、及び下記構造式で表される基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。上記一般式で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
上記一般式で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R1及びR2が水素原子でR3が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。更に、連結基Z1としては複素環を含むものが好ましく、k1は1または2であるものが好ましい。
上記の例で示されるような側鎖にビニルフェニル基を有する重合体としては、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましく、そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。この場合、共重合体組成に於ける側鎖にビニルフェニル基を有するモノマーの割合として、共重合体トータル組成100質量%中に対して5質量%以上95質量%以下であることが好ましく、10〜95質量%の範囲がより好ましく、更に20〜90質量%の範囲が好ましい。また、共重合体中に於けるカルボキシル基含有モノマーの割合は同じく5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、更に10〜90質量%の範囲が好ましい。これ以下の割合では共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体として合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中に於ける化3で示す基およびカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
上記のような重合体の分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
本発明に係わる側鎖にビニルフェニル基を有する重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
本発明の感光層は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては公知の化合物を用いることができる。例えば、有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物、オニウム塩(特開2003−114532号公報に記載のヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩)等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、特に有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。更に好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物を組み合わせて用いることである。
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式で表される。
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
有機ホウ素塩を構成するカチオンとしては、アルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が挙げられるが、好ましくは、オニウム塩であり、例えばテトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
他の好ましい光重合開始剤として、トリハロアルキル置換化合物が挙げられる。上記トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を以下に示す。
上述したような光重合開始剤の含有量は、バインダー樹脂に対して、1〜100質量%の範囲が好ましく、更には1〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
本発明の感光層は増感色素が含まれる。この増感色素は出力機の光源種(例えばアルゴンレーザー、ヘリウム・ネオンレーザー、赤色LED等)に適合する様に用いられるが、本発明では赤外線、特に近赤外(即ち700nm以上、更には750〜1000nmの波長領域)のレーザー光を用いた走査露光に対応した増感色素を含有するのが好ましい。これらの増感色素の具体例を以下に示す。
上記で例示した増感色素の含有量は、前述した光重合開始剤に対して1〜60質量%の範囲が適当であり、好ましくは2〜50質量%の範囲である。
本発明の感光層は、重合性モノマーもしくはオリゴマーを含有する。かかるモノマーもしくはオリゴマーの分子量は1万以下で、好ましくは5000以下である。該化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルフェニル基等の重合性二重結合を2個以上有する化合物が挙げられる。
重合性二重結合としてアクリロイル基もしくはメタクリロイル基を有する化合物としては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールグリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールエポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリアクリレート等が挙げられる。
重合性二重結合としてビニルフェニル基を有する化合物は、代表的には下記一般式で表される。
式中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R24は置換可能な基または原子を表す。m2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
上記一般式について更に詳細に説明する。Z2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
上記一般式で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。即ち、R21及びR22は水素原子でR23は水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k2は2〜10の化合物が好ましい。以下に具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
上記したようなモノマーもしくはオリゴマーの含有量は、バインダー樹脂に対して、1〜100質量%の範囲が好ましく、更に5〜50質量%の範囲が好ましい。
本発明の感光層は、重合性モノマーもしくはオリゴマーとして、上記したモノマーもしくはオリゴマーに加えて更に、ウレタン結合と重合性二重結合を有する化合物(以降、ウレタン化合物と称す)を含有するのが好ましい。ウレタン化合物を含有することによって、非画像部の溶出性が更に向上し、地汚れが改良される。
本発明に用いられるウレタン化合物は、分子内に下記構造式で示されるウレタン結合を少なくとも1個有する。また、重合性二重結合としては、アクリロイル基やメタクリロイル基等が挙げられ、これらの重合性二重結合を2個以上有するのが好ましい。更に、ウレタン結合が2〜6個でかつ重合性二重結合が4〜10個有するウレタン化合物が好ましい。
上記したウレタン化合物の具体例を以下に示す。
本発明において、上記ウレタン化合物の含有量は、バインダー樹脂に対して5〜60質量%の範囲で含有するのが好ましく、特に10〜50質量%の範囲が好ましい。
本発明の感光層は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。例えば、保存性を向上させる目的で、ヒンダードフェノール化合物やヒンダードアミン化合物を添加することが好ましく行われる。これらの化合物の添加量は、バインダー樹脂に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましい。
本発明の感光層は、露光時の酸素の影響を受けないので酸素遮断のためのオーバー層を設ける必要がなく、また感度が高く露光部は充分に硬化できるので製版時の加熱処理の必要がない。従って、本発明の感光性平版印刷版は、製版工程が従来のものに比べて大幅に効率化できる。
本発明の感光層は、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。塗布方式としては、例えばロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティングなどが挙げられる。
本発明の感光性平版印刷版の支持体については、例えばポリエステルフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。好ましく用いられるアルミニウム支持体について説明する。本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、0. 1〜0. 6mm程度である。 この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさおよびユーザーの希望により適宜変更することができる。以下にアルミニウム支持体の処理方法について説明する。
アルミニウム板は、通常、より好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的砂目立て(機械的粗面化処理)、化学的エッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることができる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わせて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。
ブラシグレイン法の場合、研磨剤として使用される粒子の平均粒径、最大粒径、使用するブラシの毛径、密度、押し込み圧力等の条件を適宜選択することによって、アルミニウム支持体表面の長い波長成分の凹部の平均深さを制御することができる。ブラシグレイン法により得られる凹部は、平均波長が3〜15μmであるのが好ましく、平均深さが0.3〜1μmであるのが好ましい。
電気化学的粗面化方法としては、塩酸電解液中または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法が好ましい。好ましい電流密度は、陽極時電気量50〜400C/dm2である。更に具体的には、例えば、0.1〜50質量%の塩酸または硝酸を含む電解液中で、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100〜400C/dm2の条件で直流または交流を用いて行われる。電解粗面化処理によれば、表面に微細な凹凸を付与することが容易であるため、感光層とアルミニウム支持体との密着性を向上させるうえでも好適である。
機械的粗面化処理の後の電気化学的粗面化処理により、平均直径約0.3〜1.5μm、平均深さ0.05〜0.4μmのクレーター状またはハニカム状のピットをアルミニウム板の表面に80〜100%の面積率で生成させることができる。なお、機械的粗面化方法を行わずに、電気化学的粗面化方法のみを行う場合には、ピットの平均深さを0.3μm未満とするのが好ましい。設けられたピットは、印刷版の非画像部の汚れにくさおよび耐刷性を向上する作用を有する。電解粗面化処理では、十分なピットを表面に設けるために必要なだけの電気量、即ち、電流と電流を流した時間との積が、重要な条件となる。より少ない電気量で十分なピットを形成できることは、省エネの観点からも望ましい。粗面化処理後の表面粗さは、JIS B0601−1994に準拠してカットオフ値0.8mm、評価長さ3.0mmで測定した算術平均粗さ(Ra)が、0.2〜0.8μmであるのが好ましい。
このように砂目立て処理されたアルミニウム板は、化学エッチング処理をされるのが好ましい。化学エッチング処理としては、酸によるエッチングやアルカリによるエッチングが知られているが、エッチング効率の点で特に優れている方法として、アルカリ溶液を用いる化学エッチング処理が挙げられる。
好適に用いられるアルカリ剤は、特に限定されないが、例えば、カセイソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウムが挙げられる。アルカリエッチング処理の条件は、Alの溶解量が0.05〜1.0g/m2となるような条件で行うのが好ましい。また、他の条件も、特に限定されないが、アルカリの濃度は1〜50質量%であるのが好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましく、また、アルカリの温度は20〜100℃であるのが好ましく、30〜50℃であるのがより好ましい。アルカリエッチング処理は、1種の方法に限らず、複数の工程を組み合わせることができる。なお、本発明においては、機械的粗面化処理の後、電気化学的粗面化処理の前にアルカリエッチング処理を行うこともできる。この場合、Alの溶解量は、0.05〜30g/m2とするのが好ましい。
アルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。特に、電解粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度で15〜65質量%の硫酸と接触させる方法が挙げられる。
また、化学エッチング処理を酸性溶液で行う場合において、酸性溶液に用いられる酸は、特に限定されないが、例えば、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。酸性溶液の濃度は、1〜50質量%であるのが好ましい。また、酸性溶液の温度は、20〜80℃であるのが好ましい。
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流すとアルミニウム板の表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温−5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10〜200秒であるのが適当である。これらの陽極酸化処理の中でも、英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸電解液中で高電流密度で陽極酸化処理する方法が特に好ましい。
本発明においては、陽極酸化皮膜の量は1〜10g/m2であるのが好ましく、1.5〜7g/m2であるのがより好ましく、2〜5g/m2であるのが特に好ましい。粗面化処理の後、電気化学的粗面化処理の前にアルカリエッチング処理を行うこともできる。この場合、Alの溶解量は、0.05〜30g/m2とするのが好ましい。
上記のようにして製造されたアルミニウム支持体上に感光層を塗設されて得られた感光性平版印刷版は、感光層に付与された感光域に応じてレーザー走査露光が行われ、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することで露光画像のパターン形成が行われる。
本発明に用いられるアルカリ性現像液は、25℃におけるpHが10〜12であるのが好ましい。現像液のpHを上記範囲に調整するためのアルカリ性化合物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等が挙げられるが、これらの内、特にアルカノールアミン類が好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。また、各種界面活性剤の添加も好ましく行うことが出来る。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアガム、デキストリン類等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中の部は質量部を示す。
<感光性平版印刷版の作製>
砂目立て及び陽極酸化処理が施された厚み0.24mmのアルミニウム板上に、下記の感光層塗工液を乾燥厚みが2.5μmあるいは3.5μmになるよう塗布を行い、75℃の温風にて乾燥を行った。サンプル内容を表1に示す。
<感光層塗工液処方>
重合体(P−1;質量平均分子量約9万) 10質量部
ウレタン化合物(U−1) 3質量部
重合性二重結合モノマー(C−5) 2質量部
光重合開始剤1(BC−6) 2質量部
光重合開始剤2(BS−1) 1質量部
増感色素(S−39) 0.4質量部
10%フタロシアニン分散液 0.5質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 20質量部
ポリマー粒子(表1に記載) 0.2質量部もしくは無し
界面活性剤(表1に記載) 0.01質量部もしくは無し
<ポリマー粒子>
ポリマー粒子として、真球形であるシリコーン樹脂粒子(平均粒径が、0.3、0.7、2.0、3.0、4.5、6.0、7.5、12.0μmの8種類)、無機微粒子として湿式法シリカ微粒子(不定形、4.5μm)を用いた。
<界面活性剤>
フッ素系界面活性剤として(株)ネオス社製FTX―218G(前述で例示)を用い、比較の界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテルノニオン性界面活性剤(花王(株)の商品名エマルゲン104P)を用いた。
上記のようにして得られた平版印刷版サンプルについて、以下の評価を行った。その結果を表2に示す。
<ピンホール評価方法>
サンプルを1m2正方形に裁断し、各サンプルにつき計10枚分(計10m2分)の塗布面を観察し、ピンホールの有無を調べた。
○:ピンホール無し。
×:ピンホール有り(1個以上のピンホールが存在)。
<耐ブロッキング性評価方法>
サンプルを5cm2正方形に裁断し、端面のバリを除去し感光層面と支持体の裏面が接する様に重ね、15kg/cm2の加重を感光層面に与えながら、温度35度、湿度80%RHの加温機に1ヶ月静置し、目視にてブロッキングの有無を確認した。
○:ブロッキング無し。
×:ブロッキング有り(裏面に感光層の1部が張り付く又は、2枚同時に持ち上がる等)。
<耐傷性の評価方法>
HEIDON−18型連続加重式引掻試験機を使用し、針先500μmの針を装着し、針先とサンプルの感光層との接触角度を60°とし、加重50gをかけて引っ掻いた時の傷の入り方を下記評価基準で評価した。
○:傷が入らない。
×:傷が入る。
<画質評価方法>
サンプルを、830nm半導体レーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター、大日本スクリーン製造株式会社製PT−R4000を使用して、ドラム回転速度1000rpm解像度2400dpi、レーザー照射エネルギー100mJ/cm2の条件で50%平網露光を行った。露光後に自動現像機として大日本スクリーン製造株式会社製PS版用自動現像機PD−1310を使用し、下記現像液を使用して現像処理(現像液温度29℃15秒処理)を行い、続いて下記処方のガム液を塗布した。
<現像液>
35%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム
(花王(株)製界面活性剤) 30g
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド 60g
リン酸 10g
N−エチルモノエタノールアミン 35g
EDTA2Na 1g
水で 1L
<ガム液>
リン酸1カリ 5g
アラビアガム 25g
デヒドロ酢酸 0.5g
EDTA2Na 1g
水で 1L
上記のようにして作成した平版印刷板について、網点ドットのエッジ部のシャープさを観察し下記評価基準で画質の評価を行った。
○:画像のエッジ部がシャープで均一な網画像を形成している。
×:画像のエッジ部に凹凸が見られ不均一な網画像を形成している。
<溶出性評価方法>
上述の画質評価方法と同様の露光を行い、上述の画質評価方法と同様の自動現像機、現像液及びガム液を用いて、現像液温度29℃10秒処理にて平版印刷版(版のサイズは398mm×1100mm)を得た。この平版印刷版の非画像部の溶出性(現像性)を下記評価基準で評価した。結果を表2に示す。
○:非画像部に残膜がない。
×:非画像部に残膜がある。
<クリーナー耐性評価方法>
上述の画質評価方法と同様に、露光及び現像処理を行い、得られた平版印刷版を下記方法にて印刷試験を行った。
印刷機はハイデルベルグTOK(ハイデルベルグ社製のオフセット印刷機の商標)、インキはNew Champion墨H(大日本インキ化学工業(株)製)、湿し水はアストロマークIII(日研化学(株)製)の1%水溶液を使用し、10000枚印刷した後にPSマルチクリーナー(富士写真フイルム(株)製)にて版を拭く工程を5回繰り返し、再度10000枚印刷したときの印刷物の50%網点画像を下記評価基準で評価した。
○:画像に欠落がない。
△:画像の一部に欠落がある。
×:画像の全体にわたって欠落がある。
本発明のサンプルは比較のサンプルに比して、ピンホール、耐ブロッキング性、耐傷性、溶出性、画質及びクリーナー耐性の全ての項目に於いて優れている。
上記結果より本発明が、画質を悪化させる事なく、オーバー層を必要とせずに、ピンホール、耐ブロッキング性、耐傷性、溶出性、画質、及びクリーナー耐性を充分保持している事が判る。