本発明者等は、アルミニウム支持体の表面処理において、種々の検討を行った結果、側鎖に重合性ビニルフェニル基を有するポリマー及び重合開始剤を少なくとも含有する感光層を設けたレーザー露光用ネガ型感光性平版印刷版においては、微小ピットを有し、且つ、ピットの発生頻度が多いアルミニウム支持体を用いることが、画像の欠落の防止に有効で、現像ラチチュードを広げることができることを見出した。
以下本発明について詳細に説明する。本発明の開口径0.02〜0.3μmの微小ピットは、1mm2あたりの数Nが、前記式1を満たすものであり、開口径0.02〜0.3μmの微小ピット数Nと平均開口面積Aは、走査型電子顕微鏡を用いて50,000倍で開口径0.02〜0.3μmの微小ピットが鮮明に撮影できるように明るさとコントラストを調整して撮影した写真から求める。その具体的な方法としては、上記写真をスキャナーでデジタル画像化し、その後、画像処理モノクロ2階調画像に変換する。ここで、開口径0.02〜0.3μmの微小ピット以外のピットは全て消去する。この時、ピット形状が真円でない場合は、長さが短い部分の開口径を対象とする。
この画像からピットの数を数え、1mm2あたりの数に換算してNを算出する。また、このモノクロ2階調画像の白部と黒部のビット数を数え、ピット部である黒部の面積率を求め、ピットの総面積を算出する。この総面積をピット数Nで割ることによって、平均開口面積Aを求める。つまり、前記式1は、開口径に応じたピットの発生頻度をアルミニウムの表面積が2対し、ピットの開口面積が1以上であることを意味する。
この開口径0.02〜0.3μmの微小ピットは、開口径0.1μm以下の微小ピットが多く存在することが好ましい。また、本発明の開口径0.02〜0.3μmの微小ピットは、開口径0.3μm程度のピットの中に、開口径0.02μm程度のピットが存在する重畳構造を有していてもよく、この場合、小さい方のピットを計算の対象とする。この開口径0.02〜0.3μmの微小ピットの中心深さまたは高さは、ピットの開口径の1/3以上、好ましくは1/2〜3くらいが望ましい。
本発明の開口径0.02〜0.3μmの微小ピットを有するアルミニウム支持体は、一般的な平版印刷版で用いられるアルミニウム支持体の製造方法において、各工程の様々は、表面処理条件を組み合わせる事によって作製することができる。その作製方法としては、例えば、電解粗面化処理の条件と、デスマット処理の条件の組み合わせる方法、または陽極酸化処理における液組成の選択、或いは陽極酸化処理後に後処理を施す方法がある。
電解粗面化処理条件とデスマット処理条件との組み合わせで作製する場合は、例えば、電解液として1質量%の塩酸溶液を用い、処理温度が40℃、電圧が12V、電気量が450クーロン/dm2で電解粗面化処理した後、2質量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、25℃以下でデスマット処理し、さらにその後、一般的な陽極酸化処理を施すことによって得ることができる。
また、陽極酸化処理の液組成の選択によって作製する場合は、例えば、一般的な粗面化処理、デスマット処理の後に、25質量%の硫酸と5質量%の燐酸の混合液を用いて、処理温度が30℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧5〜30Vで陽極酸化処理することによって得ることができる。
さらにまた、後処理の選択によって作製する場合は、例えば、一般的な粗面化処理、デスマット処理、陽極酸化処理の後に、90℃以上の熱水で処理することによって得ることができる。
以下に一般的な平版印刷版で用いられる表面処理方法について説明する。アルミニウム板には純アルミニウム及び各種の金属、例えば、珪素、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、クロム、チタン等を少量含むアルミニウム合金板が使用される。
上記アルミニウム板はオフセット印刷版用の支持体とするため、感光層を塗布する前に表面処理が施される。表面処理では一般に脱脂、粗面化、デスマット、陽極酸化の各処理が行われる。これらの処理は通常アルミニウムのコイルを用いて連続的に行われ、各処理の後には必要に応じて水洗が加えられる。
脱脂処理はアルミニウム表面の圧延時の油或は空気との接触により生成する酸化膜等を除去し、清浄なアルミニウム板の表面を露出させて、以降の工程がムラなく処理できるように施される。脱脂処理の方法としては、例えばトリクロロエチレン、パークロロエチレン、等による溶剤脱脂、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、燐酸三ナトリウム、ピロ燐酸四ナトリウム、石鹸等、或はこれらの混合物によるアルカリ脱脂、界面活性剤、ケロシン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム等を組合せたエマルジョン脱脂、さらに上記の化学脱脂では取れない汚染を除く仕上げ脱脂と呼ばれる電解脱脂等の方法がある。
一般に粗面化処理は表面に凹凸を与えるものであり、ブラシグレイニング、ボールグレイニング、液体ホーニング等の機械的粗面化方法、塩酸或は硝酸等による化学的エッチングによる化学的粗面化方法、或はこれらの酸による電気化学的エッチングによる電解粗面化方法、或はこれらを組合せて粗面化する方法が知られている。
電解粗面化方法におけるアルミニウム板に供給される電力は、電解液の組成、温度、電極間距離等により変わるが、印刷版として適切な砂目を得るためには、一般に、電圧では1〜60V、処理面における電流密度では5〜60A/dm2、電気量では50〜4000クーロンの範囲で使われる。また、電解液の温度は0〜60℃、電極とアルミニウム板との距離は1〜10cmの範囲である。
電解液としては、硝酸或はその塩、塩酸或はその塩、或はそれらの1種或は2種以上の混合物の水溶液が使用できる。さらに必要に応じて硫酸、燐酸、クロム酸、ほう酸、有機酸、或はそれらの塩、硝酸塩、塩化物、アンモニウム塩、アミン類、界面活性剤、その他の腐食促進剤、腐食抑制剤、安定化剤等を加えて使用される。
電解液の濃度としては上記の酸類の濃度が0.1〜10質量%であり、電解液中のアルミニウムイオンの濃度を0〜10g/リットル範囲に維持したものが使われる。また、電解粗面化処理では電解の進行により、アルミニウムがとけ込み、酸類が消費されるので、電解液の組成が所定の設定範囲をはずれないように、電解液の一部を廃棄しながら、酸類を補給するのが一般的である。
デスマット処理とは、粗面化処理で生成したスマットを溶解除去するための処理である。粗面化処理後、デスマットすることにより、スマットが溶解し、ピット面が現われる。デスマット処理には、水酸化ナトリウム等アルカリ剤、或いは燐酸、硫酸、硝酸、過塩素酸等の酸、或いはそれらの混合物が使用できるが、それぞれスマット除去能力に違いがあり、処理液の種類或いはその濃度或いは処理温度によってその除去能力を調整して使用される。
粗面化され、デスマットされたアルミニウム板には、次に陽極酸化処理が施される。オフセット印刷版用支持体では、表面の保水性と感光層の接着性向上を図るため酸化膜としては多孔性の陽極酸化膜が形成される。
陽極酸化の電解液としては生成酸化膜の溶解性が低い酸が好ましく、硫酸、蓚酸、クロム酸、燐酸等或はこれらの混合物が使用できる。陽極酸化に際して生成する陽極酸化膜のマイクロポアの大きさは上記酸の種類によって変化し、通常0.01μm程度であり、本発明の開口径が0.02〜0.3μmの範囲から外れる。しかし、陽極酸化処理の方法によっては、開口径が0.02〜0.3μmの範囲のマイクロポアを作製することができ、その場合には本発明の対象となる。
陽極酸化膜は陽極にのみ生成するので、電流は通常直流電流が使用される。陽極酸化の条件としては、液濃度1〜40質量%、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧5〜30Vの範囲で使用され、電流は直接給電法或いは間接給電法により供給される。陽極酸化膜の厚みは電流密度と時間により変えられ、印刷版の耐刷グレードによって適宜調整される。温度は陽極酸化膜の硬度に影響を与え、低温の方が硬度は高くなるが、可撓性に劣るため、通常は常温付近の温度で陽極酸化される。陽極酸化処理後水洗処理が施される。
一般的な平版印刷版では、必要に応じて陽極酸化処理後に後処理を行う。後処理の方法としては、例えば、熱水処理する方法、英国特許第1,230,447号に開示されたポリビニルホスホン酸の水溶液中に浸漬処理する方法やケイ酸塩溶液に浸漬処理する方法、親水性高分子の下塗層を設ける方法が知られている。
本発明において、アルミニウム支持体上に設けられる感光層の組成は、詳しくは後述するが、少なくとも、側鎖に重合性ビニルフェニル基を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマー、及び光重合開始剤を含有し、好ましくは更に重合性モノマーを含有する。更に、増感色素、重合禁止剤、界面活性剤、着色顔料等が必要に応じて添加される。従って、感光層の塗工液は、上記したような薬剤が有機溶剤中に溶解あるいは分散された状態で含有する。
塗工液中における上記した全薬剤の濃度は、5〜30質量%程度の濃度で調製される。その中でポリマーの濃度は、1〜25質量%の濃度で含有するのが好ましい。感光層の乾燥膜厚は、0.5〜10μmの範囲で形成するのが好ましく、特に1〜5μmの範囲が好ましい。従って、塗工液の塗布量は、予め設定された感光層の厚み及び塗工液中のポリマー濃度から設定される。
塗布方式としては、例えばロールコーティング、ディップコーティング、エアナイフコーティング、グラビアコーティング、ホッパーコーティング、ブレードコーティング、ワイヤドクターコーティングなどが挙げられる。
本発明の塗工液に使用される全有機溶剤の50質量%以上含有する沸点が110℃未満の有機溶剤としては、大気圧下で沸点が110℃未満の有機溶剤であれば特に限定される物ではなく使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。特に好ましい有機溶剤としてテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランが挙げられる。全有機溶剤に対して50質量%以上含有する必要があり、好ましくは、70質量%以上、更に好ましくは、80質量%以上含有する事である。
前記有機溶剤の他に塗工液中の分散体の安定性、塗工面の安定助剤等、種々の目的に応じて、110℃以上の高沸点溶剤を含有する事は好ましい形態の1つで、例えば、N.Nジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテル等が、好ましく用いられる。しかし、感光層中に多量に残存する事は前述した様に、経時保存安定性の悪化、印刷性能としての耐刷性の悪化を引き起こす原因になる為好ましくない。含有量には注意が必要で好ましくは全有機溶剤の30質量%以下、更に好ましくは20%以下である。
本発明に使用される、側鎖にビニルフェニル基を有しかつカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーについて説明する。カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
本発明に用いられるポリマーとして、重合性ビニルフェニル基を側鎖に有し、かつカルボキシ基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーである。ビニルフェニル基は、直接もしくは連結基を介して主鎖と結合したものであり、連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。また、フェニル基は置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。上記した側鎖にビニルフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記化1で表される基を側鎖に有するものである。
式中、Z1は連結基を表し、R1、R2、及びR3は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R4は置換可能な基または原子を表す。n1は0または1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
上記一般式について更に詳細に説明する。Z1の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基、及び下記化2で表される基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。
化1で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
上記化1で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R1及びR2が水素原子でR3が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。更に、Z1の連結基としては複素環を含むものが好ましく、k1は1または2であるものが好ましい。
化1で示される基を有し、かつカルボキシ基含有モノマーを共重合成分として有するポリマーの例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
本発明のポリマーは、更に他のモノマーを共重合体成分として含んでもよい。他のモノマーとしては、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマー、が挙げられる。
本発明に係わるポリマーの分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量として1000から100万の範囲にあることが好ましく、さらに5000から50万の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明の重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生し得る化合物であれば任意の化合物を使用することができる。例えば、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物として トリアジン化合物およびオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、有機ホウ素塩、が好ましく用いられ、更に好ましくは、有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物を使用することである。好ましく用いられる有機ホウ素塩としては、化12で示される有機ホウ素アニオンを有する化合物を用いることである。
化12において、R11,R12,R13およびR14は各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11,R12,R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
上記の有機ホウ素塩としては、先に示した化12で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を以下に示す。
感光層中に於ける有機ホウ素塩の割合については好ましい範囲が存在し、感光層トータル100質量部において該有機ホウ素塩は0.1質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
本発明に係わる有機ホウ素塩と併用し使用する、好ましい重合開始剤としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。ここで言うトリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を以下に示す。
トリハロアルキル置換化合物を用いる場合に於いて、その感光性平版印刷版の感光層中に於ける好ましい範囲が存在し、感光層トータル100質量部中に於ける割合として0.1質量部から50質量部の範囲で含まれることが好ましい。さらに、これらは前述した有機ホウ素塩とともに感光層中に含まれている場合において特に感度が向上するため好ましく、この場合有機ホウ素塩に対する割合としては、有機ホウ素塩1質量部に対してトリハロアルキル置換化合物は0.1質量部から50質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
本発明のネガ型感光性平版印刷版の感光層は、重合性モノマーを含有するのが好ましい。これを組み合わせることによって更に高感度が実現でき、また印刷性能に優れた平版印刷版を得ることができる。
重合性モノマーとしては、重合性二重結合を有する重合性化合物が挙げられる。好ましい重合性モノマーの例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリル系モノマーが挙げられる。
或いは、上記の重合性化合物に代えてラジカル重合性を有するオリゴマーも好ましく使用され、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用されるが、これらもエチレン性不飽和化合物として同様に好ましく用いることができる。
重合性モノマーとして、更に好ましい態様は、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上を有する重合性化合物が挙げられる。該化合物を使用した場合に於いて、発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、高感度のネガ型感光性平版印刷版を作成する上で極めて好ましい。
分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する重合性化合物は、代表的には下記一般式で表される。
式中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R24は置換可能な基または原子を表す。m2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
更に詳細に説明する。Z2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R25)−、−C(O)−O−、−C(R26)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基等の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR25及びR26は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
上記化17で表される化合物の中でも好ましい化合物が存在する。即ち、R21及びR22は水素原子でR23は水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k2は2〜10の化合物が好ましい。以下に化17で表される化合物の具体例を示すが、これらの例に限定されるものではない。
上記のような重合性モノマーが、ネガ型感光性平版印刷版の感光層中に占める割合に関しては好ましい範囲が存在し、感光層トータル100質量部中において重合性モノマーは1質量部から60質量部の範囲で含まれることが好ましく、さらに5質量部から50質量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
本発明のネガ型感光性平版印刷板の感光層に増感色素を添加することは好ましい。添加する増感色素としては、380nm〜1300nmの波長域において重合開始剤の分解を増感するものであり、種々のカチオン性色素、アニオン性色素および電荷を有しない中性の色素としてメロシアニン、クマリン、キサンテン、チオキサンテン、アゾ色素等が使用できる。これらの内で特に好ましい例は、カチオン色素としてのシアニン、カルボシアニン、へミシアニン、メチン、ポリメチン、トリアリールメタン、インドリン、アジン、チアジン、キサンテン、オキサジン、アクリジン、ローダミン、およびアザメチン色素から選ばれる色素である。これらのカチオン性色素との組み合わせに於いては特に高感度でかつ保存性に優れるために好ましく使用される。さらには近年380〜410nmの範囲に発振波長を有するバイオレット半導体レーザーを搭載した出力機(プレートセッター)が開発されている。この出力機に対応する高感度である感光系としては増感色素としてピリリウム系化合物やチオピリリウム系化合物を含む系が好ましい。本発明に関わる好ましい増感色素の例を以下に示す。
750nm以上の近赤外から赤外光の波長領域の光に感光性を持たせる系に於いて増感色素として特に好ましい例を以下に示す。
上記のような増感色素と重合開始剤との量的な比率に於いて好ましい範囲が存在する。増感色素1重量部に対して光重合開始剤は0.01重量部から100重量部の範囲で用いることが好ましく、更に好ましくは光重合開始剤は0.1重量部から50重量部の範囲で使用することが好ましい。
本発明の感光性平版印刷版の感光層に着色剤を含有する事が好ましい。画像部の視認性を高める為に使用されるものであるが、更に好ましくは、セーフライト性向上の為に、可視光領域に吸収を有するものである。又、画質向上の為に、感光波長域の着色剤を含有する事も好ましい。これら着色剤の例としては、下記のような、無機顔料、有機顔料、色素などが挙げることができる。
無機顔料としては、雲母状酸化鉄、鉛丹、黄鉛、銀朱、群青、二酸化チタン、被覆雲母、ストンチームクロメート、チタニウムイエロー、ジンククロロメート、モリブデン赤、酸化クロム、鉛酸カルシウム等が挙げられる。又、有機顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニン顔料、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、縮合アゾ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、アンスロン顔料、キナクリドン顔料、アンスラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ジオキサジン顔料、インダスロン顔料、ピランスロン顔料等が挙げられる。又、色素としては、フタロシアニン系色素、トリアリールメタン系色素、アントラキノン系色素、アゾ系色素等の各種の色素が挙げられる。
上記顔料、色素は、単独で用いてもかまわないが、2種以上を併用して用いてもよい。
感光性平版印刷版を構成する他の要素として重合禁止剤の添加も好ましく行うことが出来る。例えば、キノン系、フェノール系等の化合物が好ましく使用され、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、カテコール、t−ブチルカテコール、2−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等の化合物が好ましく用いられる。これらの重合禁止剤と先に述べたエチレン性不飽和化合物との好ましい割合は、エチレン性不飽和化合物 質量部に対して0.001から0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
本発明の感光層は、フェニルビニル基を有するポリマーを用いており、十分な感度を有しているため、感光層上部に酸素バリア性を高める目的としたポリビニルアルコール等からなるオーバー層を設ける必要はない。
本発明の現像液としては、pH8以上であれば、任意のアルカリ水溶液を使用することができる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウムおよび第3リン酸アンモニウム等の無機アルカリ剤や、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−エチルエタノールアイミン、N−n−ブチルエタノールアミン、N−t−ブチルエタノールアミン、N−n−ブチルジエタノールアミン、N−t−ブチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−アミノエチルエタノールアミン、N−アミノエチルプロパノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アルカリ剤、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムおよびケイ酸リチウムのようなアルカリ金属ケイ酸塩やケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明に用いられる現像液にはその他の種々界面活性剤と併用することができ、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤が挙げられる。これらの併用する界面活性剤は、現像液中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
本発明に用いられる現像液には、種々現像安定化剤が用いる事ができる。それらの好ましい例として、特開平6−282079号公報記載の糖アルコールのポリエチレングリコール付加物、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩及びジフェニルヨードニウムクロライドなどのヨードニウム塩が好ましい例として挙げられる。更には、特開昭50−51324号公報記載のアニオン界面活性剤又は両性界面活性剤、また特開昭55−95946号公報記載の水溶性カチオン性ポリマー、特開昭56−142528号公報に記載されている水溶性の両性高分子電解質がある。更に、特開昭59−84241号公報のアルキレングリコールが付加された有機ホウ素化合物、特開昭61−215554号公報記載の重量平均分子量300以上のポリエチレングリコール、特開昭63−175858号公報のカチオン性基を有する含フッ素界面活性剤、特開平2−39157号公報の酸又はアルコールニ4モル以上のエチレンオキシドを付加して得られる水溶性エチレンオキシド付加物と、水溶性ポリアルキレン化合物などが挙げられる。
本発明に用いられる現像液は使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当であり、含有物にもよるが、通常、濃縮液:水=1:0〜1:10程度に濃縮する事ができる。又、容器としてはアルカリ性であることから、炭酸ガスを透過しない、しかも安全上輸送中に破損することのない材料を用いることが好ましく、通常ハードボトル、キュービテナー等の樹脂製容器が好ましく用いられる。
本発明の処理方法においては、露光後通常自動現像機で処理を行う。自動現像機は、一般に現像部と後処理部とからなり、印刷版を搬送する装置と、各処理液槽及びスプレー槽から成り、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで組み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像及び後処理するものである。又、最近は現像液が満たされた現像槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて現像処理する方法が開発されており、この様な現像方法も本発明に好適に適用できる。この様な自動現像液においては、現像処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。
この様な組成の現像液で現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムやデンプン誘導体等を主成分とするフィニッシャーや保護ガム液で後処理を施される。本発明の印刷版の後処理はこれらの処理を種々組み合わせて用いることができ、例えば、現像→水洗→界面活性剤を含有するリンス液処理や現像→水洗→フィニッシャー液による処理がリンス液やフィニッシャー液の疲労が少なく好ましい。更にリンス液やフィニッシャー液を用いた向流多段処理も好ましい態様である。これらの後処理は、一般に現像部と後処理部とからなる自動現像機を用いて行われる。後処理液は、スプレーノズルから吹き付ける方法、処理液が満たされた処理槽中を搬送する方法が用いられる。又、現像後一定量の少量の水性水を版面に供給して水洗し、その廃液を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。この様な自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することが出来る。また、実質的に未使用の後処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。この様な処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、印刷に用いられる。
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中の部は質量部を示す。
<本発明の平版印刷版Aの作製>
幅1030mm、厚み0.24mmの合金組成がA1050タイプのアルミニウム板を25℃、2質量%−水酸化ナトリウム水溶液に30秒間浸漬した後、水洗し、ナイロンブラシとパーミストンの水懸濁液を用いてブラシ研磨し、水洗し、2質量%−水酸化ナトリウム水溶液に30秒間浸漬し、水洗した。これを30℃の1質量%−塩酸と0.5質量%−酢酸の混合液に満たした間接給電方式の電解槽に浸漬し、12V、450クーロン/dm2で交流電解粗面化し、水洗し、その後25℃、2質量%−水酸化ナトリウム水溶液に30秒間浸漬してデスマットし、水洗し、さらに30℃、25質量%−硫酸水溶液を用いて陽極酸化処理を施した後、水洗、乾燥し、アルミニウム支持体を作製した。
上記アルミニウム支持体表面を、走査型電子顕微鏡を用い、50,000倍の拡大倍率で観察した結果、このアルミニウム板の表面には、開口径0.02〜0.3μmの微小ピットが1mm2当たり6.8×107個存在しており、この開口径0.02〜0.3μmの微小ピットの平均開口面積Aを求めたところ、1.5×10−8mm2であった。1/(A×2)を求めたところ、3.3×107個であり、このアルミニウム支持体は、前記式1を満足していることが確認できた。
下記処方による感光層の塗工液を作製し、上記アルミニウム支持体上に乾燥膜厚が3μmになる様に塗設し、本発明の平版印刷版Aを作製した。
<感光層の塗工液>
ポリマー (P−1;質量平均分子量約9万) 30部
ポリマーの溶剤として1,3−ジオキソラン 70部
重合開始剤 (BC−5) 4部
(BS−1) 2部
重合性モノマー (C−5) 15部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 10部
増感色素 (S−33) 0.4部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール 0.2部
平均粒径185nmのカーボンブラック 4部
<比較の平版印刷版Bの作製>
上記平版印刷版Aのアルミニウム支持体において、デスマット温度を40℃にすること以外同様にして、比較の平版印刷版Bを作製した。尚、このアルミニウム支持体からは開口径0.02〜0.3μmの微小ピットは観察されなかったので、本発明の対象とするアルミニウム支持体ではない。
<比較の平版印刷版Cの作製>
上記平版印刷版Aのアルミニウム支持体において、デスマット温度を30℃にすること以外同様にして、比較の平版印刷版Cを作製した。尚、このアルミニウム支持体には、開口径0.02〜0.3μmの微小ピットが1mm2当たり7.3×106個存在しており、この開口径0.02〜0.3μmの微小ピットの平均開口面積Aを求めたところ、2.0×10−8mm2であった。1/(A×2)を求めたところ、2.5×106個であり、このアルミニウム支持体は、前記式1を満足していないことが確認できた。
<比較の平版印刷版Dの作製>
上記平版印刷版Aのアルミニウム支持体において、電解粗面化条件を24V、950クーロン/dm2にすること以外同様にして、比較の平版印刷版Dを作製した。尚、このアルミニウム支持体からは開口径0.02〜0.3μmの微小ピットは観察されなかったので、本発明の対象とするアルミニウム支持体ではない。
<本発明の平版印刷版Eの作製>
上記平版印刷版Bのアルミニウム支持体において、陽極酸化処理後、さらに95℃の熱水に1分間浸漬した後、水洗、乾燥し、アルミニウム支持体を作製すること以外同様にして、本発明の平版印刷版Eを作製した。尚、このアルミニウム支持体には、開口径0.02〜0.3μmの微小ピットが1mm2当たり4.5×108個存在しており、この開口径0.02〜0.3μmの微小ピットの平均開口面積Aを求めたところ、2.2×10−9mm2であった。1/(A×2)を求めたところ、2.3×108個であり、このアルミニウム支持体は、前記式1を満足していることが確認できた。
<本発明の平版印刷版Fの作製>
上記平版印刷版Bのアルミニウム支持体において、陽極酸化処理液として25質量%−硫酸と5%−質量%の燐酸の混合液を用いること以外同様にして、本発明の平版印刷版Fを作製した。尚、このアルミニウム支持体には、開口径0.02〜0.3μmの微小ピットが1mm2当たり1.7×109個存在しており、この開口径0.02〜0.3μmの微小ピットの平均開口面積Aを求めたところ、5.9×10−10mm2であった。1/(A×2)を求めたところ、8.5×108個であり、このアルミニウム支持体は、前記式1を満足していることが確認できた。
作製した各々の平版印刷版を、830nm半導体レーザーを搭載した外面ドラム方式プレートセッター(大日本スクリーン製造(株)製PT−R4000)を使用して、ドラム回転速度1000rpm解像度2400dpi、レーザー照射エネルギー100mJ/cm2の条件で印刷テストチャート画像の露光を行った。露光後に自動現像機として大日本スクリーン製造(株)製PS版用自動現像機PD−1310を使用し、下記現像液を使用して現像処理30℃の液温で15秒間処理)を行ない、続いて下記処方のガム液を塗布した。
<現像液>
35%アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム
(花王(株)製界面活性剤) 30g
KOH 25g
20%珪酸カリ水溶液(SiO2を20%含む) 50g
N−アミノエチルエタノールアミン 30g
水で 1L
<ガム液>
リン酸1カリ 5g
アラビアガム 25g
デヒドロ酢酸 0.5g
EDTA2Na 1g
水で 1L
上記のようにして作製した平版印刷版A〜Eについて、溶出性、現像処理後の画像の欠落状態及び耐刷性を評価した。耐刷試験としては、印刷機はハイデルベルグTOK(Heidelberg社製オフセット印刷機の商標)を使用し、インキはBEST ONE墨H(T&KTOKA(株)製)、湿し水はアストロマークIII((株)日研化学研究所製湿し水)の1%水溶液を使用し、各々の結果を下記評価基準にて評価した。
溶出性
○:非画像部に感光層が全く残っていない状態
△:非画像部に感光層が僅かに残存している状態
×:非画像部に感光層が残存している状態
画像の欠落状態
○:画像が全く欠落していない状態
×:画像が欠落してしまった状態
耐刷性
○:20万枚以上
×:5万枚以下(元々画像が欠落しているものも含む)
上記現像処理において、30℃15秒間から30℃40秒間処理すること以外同様にして、非画像部の溶出性、現像後の画像の欠落状態及び耐刷性を評価した。各々の結果を表1〜3に示す。
上記結果より、比較の平版印刷版B、C、Dは、30℃15秒現像処理では、非画像部の溶出性が良好で、画像が欠落せず、十分な耐刷性を示したが、30℃40秒現像処理では、画像が欠落してしまっている。これに対し、本発明の平版印刷版A、E、Fは、30℃15秒、30℃40秒現像処理とも、非画像部の溶出性が良好で、画像も欠落せず、十分な耐刷性が得られた。
以上の結果より、本発明の平版印刷版は、現像ラチチュードが広く、良好な耐刷性を示す事が判る。