JP3753191B2 - プロペラシャフトのダイナミックダンパー取付構造 - Google Patents
プロペラシャフトのダイナミックダンパー取付構造 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、円筒状をなすプロペラシャフトの内部に配置されるダイナミックダンパーの取付構造に関するものである。
【0002】
【従来技術】
車両の前部に搭載された内燃機関の出力は、一般に変速機を経てプロペラシャフトにより後方の駆動輪に伝達されるが、このプロペラシャフトの特性は車両の振動に大きな影響を与えるため、プロペラシャフトの円筒内部にダイナミックダンパーを装着して振動特性を改善した例が種々提案されている。
【0003】
例えば実開平4−27238号公報に記載されたダイナミックダンパー01は、図8に示すように外筒部(外環部材)02とその内側に設けられるウェイト部(インナーウェイト)03と外筒部02内部にウェイト部03を支持する制振部材(弾性部材)04とからなり、外筒部02をプロペラシャフトの内部に圧入してダイナミックダンパー01をプロペラシャフトに取り付ける。
【0004】
【解決しようとする課題】
しかし外筒部02は完全な円筒状をなしており、これをプロペラシャフトに圧入して固定しなければならないので、外筒部02の外径とプロペラシャフトの内径を高精度に加工する必要がある。
そこで外筒部02の外周面は切削の精密加工が要求され、一方プロペラシャフトは引抜管とする等して、圧入荷重精度(スリップトルク)を維持する必要があり、コストが非常に高いものとなってしまう。
【0005】
そこで実開平4−122843号公報に開示されたように、プロペラシャフトの内径より所定量大きい外径を有する鋼板製の外筒部の一部を切り欠いて、弾性変形により簡単に径を縮小できるようにし、プロペラシャフトへの嵌入を容易にした例がある。
【0006】
しかしかかるダイナミックダンパーは、外筒部および制振部材の弾性力によってプロペラシャフトに固定される構造なので、プロペラシャフトと外筒部との間に十分なスリップトルクを確保することが困難で、プロペラシャフトを急停止させたときなどプロペラシャフトに対しダイナミックダンパーがスリップして独自に回転してしまい振動特性を改善することができない。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、加工が簡単でプロペラシャフトへのダイナミックダンパーの圧入が容易であるとともに十分なスリップトルクが得られるプロペラシャフトのダイナミックダンパー取付構造を供する点にある。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用】
上記目的を達成するために、本発明は、内燃機関側の駆動力を駆動輪側に伝達する円筒状のプロペラシャフトの内部にダイナミックダンパーを取り付ける構造において、前記ダイナミックダンパーは、前記プロペラシャフトに嵌入される円環状の外環部材とその内側に位置するインナーウェイトとを弾性部材で連結した構造を有し、前記外環部材は、外側に膨出し軸方向に傾斜した膨出側面を有した膨出部を周方向に亘って等間隔に複数形成し、前記インナーウェイトが円柱状をなして前記外環部材の中心に配置され、前記弾性部材が前記インナーウェイトの外周面より放射状に複数条の連結部を延出して前記外環部材の内周面に連結し、前記弾性部材の複数条の連結部と前記外環部材の複数の膨出部を、互いに周方向にずれた相対位置関係に配置構成し、前記プロペラシャフトの内側に前記外環部材を前記膨出部の変形を伴って圧入させダイナミックダンパーを取り付けたプロペラシャフトのダイナミックダンパー取付構造とした。
【0009】
プロペラシャフトにダイナミックダンパーを取り付けるのに、弾性部材の複数条の連結部と互いに周方向にずれた相対位置関係にあって外環部材に周方向に等間隔に膨出形成された膨出部を変形させて圧入するので、圧入作業が容易にでき、かつ圧入後は変形した膨出部がプロペラシャフトの内面に圧着され十分なスリップトルクを確保することができる。
【0010】
外環部材に周方向に等間隔に膨出形成された膨出部は、プロペラシャフトの内径のバラツキを吸収して圧入されるので、プロペラシャフトの加工精度にそれ程高いものが要求されず、外環部材の膨出部もプレス加工で形成し切削加工を必要とせず、いずれも加工作業が簡単で製造コストを低減することができる。
なお前記ダイナミックダンパーは、前記インナーウェイトが円柱状をなして前記外環部材の中心に配置され、前記弾性部材が前記インナーウェイトの外周面より放射状に複数条延出して前記外環部材の内周面に連結されている構造とすることで、ダンパーとしての十分な振動低減効果を得ることができる。
【0011】
また外環部材の膨出部は、外側に膨出し軸方向に傾斜した膨出側面を有しているため、プロペラシャフトの開口端縁が膨出側面の傾斜面に沿いながら外環部材がプロペラシャフトに圧入されるので、益々圧入作業が容易となる。
【0012】
なお前記ダイナミックダンパーは、前記インナーウェイトが円柱状をなして前記外環部材の中心に配置され、前記弾性部材が前記インナーウェイトの外周面より放射状に複数条延出して前記外環部材の内周面に連結されている構造とすることで、ダンパーとしての十分な振動低減効果を得ることができる。
【0013】
【実施例】
以下図1ないし図7に図示した本発明の一実施例について説明する。
図1は車両の動力伝達機構の一部を示しており、部分的に省略して第1プロペラシャフト1と第2プロペラシャフト2の連結した状態を示している。
【0014】
第1プロペラシャフト1は前端をクロスジョイント3を介して内燃機関の出力側に連結され、第2プロペラシャフト2はリング状のベアリングサポート5に回転自在に支持された前部が第1プロペラシャフト1とトリポード型の等速自在継手4によって連結され、第2プロペラシャフト2の後端はクロスジョイント6を介して次段の動力伝達部材に連結される。
【0015】
かかる構造の動力伝達機構の第1プロペラシャフト1の内部にダイナミックダンパー10が装着されている。
本ダイナミックダンパー10は、円筒状の外環部材11とその内側に位置する円柱状のインナーウェイト12と両者を連結するゴム部材13とからなる。
【0016】
外環部材11は、厚さ1mmの冷間圧延鋼板SPCCからなり、図4ないし図7に示すようにプレス加工により外径53.2mm,幅長25mmの概ね偏平な円筒状をなし、周壁には一方の開口端縁から他方の開口端縁近傍まで軸方向に長尺矩形の膨出部11aが周方向に亘って等間隔に5個外方に向かって0.65mm程打出しにより膨出して形成されている。
【0017】
各膨出部11aの矩形の幅は約14.2mmで軸方向の長さは約22mmあり、該膨出部11aの矩形の頂面11bは円周面をなし、その4辺のうち1辺は開口端縁であり、他の3辺の膨出側面11cは図6および図7に図示するように滑らかな傾斜面をなしているので、一方の開口部11dは膨出部11aによる凹凸を有し他方の開口部11eは完全な円形をなしている。
【0018】
かかる外環部材11の内側に位置するインナーウェイト12は、直径34.8mm,幅長33mmの円柱状をなしている。
そして図2および図3に図示するように外環部材11の内側中心位置にインナーウェイト12を支持するゴム部材13は、外環部材11の内周面に加硫接着される円筒部13aとインナーウェイト12の外周面に加硫接着される円筒部13bとを円筒部13bから放射状に延出した5本の連結部13cが連結した形状をしている。
【0019】
ダイナミックダンパー10は以上のような構造をしており、かかるダイナミックダンパー10が装着される第1プロペラシャフト1は内径が約54.0mmであり、外環部材11の膨出部11aを加えた最大径54.5mmより若干小さい。
そこでかかるダイナミックダンパー10を第1プロペラシャフト1に装着する場合、第1プロペラシャフト1の一方の円筒開口に対し外環部材11の完全な円形を形成した開口部11e側を先にして挿入する。
【0020】
外環部材11の開口部11eの外径(53.2mm)は第1プロペラシャフト1の内径(54.0mm)より小さいので、開口部11eは第1プロペラシャフト1の開口に簡単に挿入され、軸合わせが自ずとなされ、膨出部11aの膨出側面11cが第1プロペラシャフト1の開口端縁に当接する。
【0021】
その後第1プロペラシャフト1内にダイナミックダンパー10を圧入すると、当初第1プロペラシャフト1の開口部に外環部材11の膨出部11aが膨出側面11cを介してもぐり込むようにして変形して外環部材11が圧入されていき、所定位置に装着される。
【0022】
このように外環部材11は、膨出部11aの傾斜した膨出側面11cに沿って第1プロペラシャフト1内に圧入され、膨出部11aの部分的な変形によって圧入されるので、圧入作業が容易にできる。
【0023】
周方向に5か所に設けられた膨出部11aが第1プロペラシャフト1の内径のバラツキを吸収して外環部材11が圧入されるので、変形した5か所の膨出部11aが第1プロペラシャフト1の内周面に圧着され最適なスリップトルクを確保することができ、また同時にプロペラシャフトにそれ程高い加工精度が要求されず、外環部材11自体も簡単なプレス加工で製作でき切削加工が不要で、製造コストを削減できる。
【0024】
ダイナミックダンパー10が最適スリップトルクを維持して第1プロペラシャフト1に装着されるので、第1プロペラシャフト1を急停止させたときでも外環部材11がスリップすることなくゴム部材13とインナーウェイト12が有効に振動を吸収することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、プロペラシャフトにダイナミックダンパーを取り付けるのに、外環部材に周方向に等間隔に膨出形成された膨出部を変形させて圧入するので、圧入作業が容易にでき、かつ圧入後は変形した膨出部がプロペラシャフトの内面に圧着され十分なスリップトルクを確保することができ、常にダイナミックダンパーとしての振動吸収効果を維持できる。
【0026】
外環部材に周方向に等間隔に膨出形成された膨出部は、プロペラシャフトの内径のバラツキを吸収して圧入されるので、プロペラシャフトの加工精度にそれ程高いものが要求されず、外環部材の膨出部もプレス加工で形成し切削加工を必要とせず、いずれも加工作業が簡単で製造コストを低減することができる。
【0027】
また前記外環部材の膨出部は膨出側面が傾斜面をなすことで、プロペラシャフトの開口端縁が膨出部の傾斜面に沿いながら外環部材がプロペラシャフトに圧入されるので、益々圧入作業が容易となる。
【0028】
弾性部材が円柱状のインナーウェイトより放射状に複数条延出して外環部材に連結されるダイナミックダンパー構造とすることで、効果的に振動エネルギーを吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る車両のプロペラシャフトによる動力伝達機構の一部を示した一部省略した側面図である。
【図2】同実施例のダイナミックダンパーの正面図である。
【図3】図2におけるIII − III線で切断した断面図である。
【図4】同ダイナミックダンパーの外環部材の正面図である。
【図5】同一部断面とした側面図である。
【図6】図4における一部拡大図である。
【図7】図5における一部拡大図である。
【図8】従来のダイナミックダンパーの正面図である。
【符号の説明】
1…第1プロペラシャフト、2…第2プロペラシャフト、3…クロスジョイント、4…等速自在継手、5…ベアリングサポート、6…クロスジョイント、
10…ダイナミックダンパー、11…外環部材、12…インナーウェイト、13…ゴム部材。
Claims (2)
- 内燃機関側の駆動力を駆動輪側に伝達する円筒状のプロペラシャフトの内部にダイナミックダンパーを取り付ける構造において、
前記ダイナミックダンパーは、前記プロペラシャフトに嵌入される円環状の外環部材とその内側に位置するインナーウェイトとを弾性部材で連結した構造を有し、
前記外環部材は、外側に膨出し軸方向に傾斜した膨出側面を有した膨出部を周方向に亘って等間隔に複数形成し、
前記インナーウェイトが円柱状をなして前記外環部材の中心に配置され、
前記弾性部材が前記インナーウェイトの外周面より放射状に複数条の連結部を延出して前記外環部材の内周面に連結し、
前記弾性部材の複数条の連結部と前記外環部材の複数の膨出部を、互いに周方向にずれた相対位置関係に配置構成し、
前記プロペラシャフトの内側に前記外環部材を前記膨出部の変形を伴って圧入させダイナミックダンパーを取り付けたことを特徴とするプロペラシャフトのダイナミックダンパー取付構造。 - 前記外環部材の膨出部の膨出側面が周方向に傾斜した傾斜面をも有することを特徴とする請求項1記載のプロペラシャフトのダイナミックダンパー取付構造。
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