JP3752519B2 - 真空断熱体およびその真空断熱体を用いた断熱箱体 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、冷蔵庫、冷凍庫などの断熱材として使用可能な真空断熱体およびその真空断熱体を用いた断熱箱体に関するものである。
背景技術
近年、冷蔵庫や冷凍庫などに用いられる断熱材で、発泡剤として使用されているCFC(クロロフルオロカーボン)11によるオゾン層破壊が地球環境保護の観点から、世界的規模で問題とされている。
このような背景から、CFC11に代わる代替フロン系または非フロン系の新規発泡剤を用いた断熱材の研究が行われている。代替フロン発泡剤としてはHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)141bが使用されている。非フロン系発泡剤としてはシクロペンタンなどが使用され始めている。
しかしながら、これらの新規発泡剤はいずれもCFC11より気体熱伝導率が高いので、これらの使用により冷蔵庫などにおける断熱性能の低下は避けられない状況であった。
一方、将来のエネルギー規制などに対応して、冷蔵庫などにおける省エネ化は避けられない課題である。その具体的な解決策として断熱性能を向上させることは重要なことである。
以上のように、従来の断熱材は、代替フロンの使用による断熱性能の低下という現実と、断熱材を使用した機器の省エネ化達成のための断熱性能の向上の要求、という相反する課題を有していた。
このような相反する課題を解決する一手段として、例えば特開昭57−173689号公報や特開昭61−144492号公報に開示された真空断熱体がある。これらの真空断熱体は、無機粉末を用いた真空断熱体である。その内容は、フィルム状プラスチック容器にシリカの粉末を充填し内部を減圧後密閉することにより真空断熱体を得るというものであった。
上記のような従来の真空断熱体における利点は、工業化が容易な0.1〜1mmHgの真空度で製造することが可能である事である。また、従来の真空断熱体でシリカ粒子を有するものには、シリカ粒子が微粉末であるため、同じ真空度でシリカ粒子を有しない場合に比較して、真空断熱体の断熱性能がより向上する利点を有していた。
真空断熱体の断熱原理は、熱を伝える気体、例えば空気を断熱すべき扉や壁などの薄い箱状体の主要部から排除することである。しかしながら、工業的(量産的)レベルで高真空にすることは困難であり、実用的に達成可能な真空度は0.1〜10mmHgである。したがって、真空断熱体は、前述のような範囲の真空度で目的とする断熱特性が得られなければならなかった。
空気を介在して熱伝導が行なわれる場合、断熱特性に影響をおよぼす物性として気体分子の平均自由行程がある。
平均自由行程とは、気体、例えば空気を構成する分子の一つが別の分子と衝突するまでに進む距離のことである。平均自由行程の大きさよりも形成された空隙が大きい場合には、空隙内において分子同士が衝突し、空気による熱伝導が生じる。このため、真空断熱体の熱伝導率は大きくなる。逆に平均自由行程よりも空隙が小さい場合には、真空断熱体の熱伝導率は小さくなる。なぜならば、その場合には、気体、例えば空気の衝突による熱伝導がほとんどなくなるためである。
したがって、真空断熱体の断熱性能を高めるためには、分子の平均自由行程よりも小さい空隙を形成することが必要になる。このため、シリカ粉末などの微細な粒径を有する粉末を用いれば空隙が細かくなり、空気の衝突による熱伝導がほとんどなくなる。この結果、真空断熱体の断熱性能が向上する。
しかし、従来の構成ではシリカ粉末を大量に使用しているため真空断熱体の重量が重くなり、かつ、コストが高くなる欠点があった。
発明の開示
本発明では、断熱性能に優れ、軽量で低コストな真空断熱体およびその真空断熱体を用いた断熱箱体を得るために、真空断熱体が互いに異なる2種類以上の粉末からなる芯材と吸着剤とを具備している。なお、本発明で真空とは10mmHg以下の真空度をいう。
また、本発明の真空断熱体は、少なくとも比表面積の互いに異なる2種類以上の粉末からなる芯材を具備している。但しここで比表面積とは、粉末の単位質量当たりの表面積をいう。
また、本発明の真空断熱体は、芯材が有機材料の粉末と無機材料の粉末からなる芯材を有している。
また、本発明の真空断熱体は実質的に、比表面積が20m2/gを超える無機粉末と、比表面積が20m2/g以下である有機粉末とからなる。
また、本発明の真空断熱体は、芯材における無機材料の粉末の充填量が2重量パーセント以上50重量パーセント以下である。
また、本発明の真空断熱体は、有機材料のための表面改質材料として針状形状の結晶形態を有する無機材料の粉末を含有する。
また、本発明の真空断熱体は、表面改質材料としての無機材料が実質的に珪酸カルシウム粉末である。
また、本発明の真空断熱体は、表面改質材料として珪酸カルシウム粉末を構成するSiO2/CaOのモル比が2以上、3以下である。
また、本発明の真空断熱体は、表面改質材料としての珪酸カルシウム粉末が疎水化処理されている。
また、本発明の真空断熱体は、表面改質された有機材料の粉末が疎水化処理されている。
また、本発明の真空断熱体は、表面改質された有機材料の粉末が繊維材料との混合粒である。
また、本発明の真空断熱体は、表面改質材料として少なくとも脂肪酸塩を含有する粉末を主成分として含む。
また、本発明の真空断熱体は、摩砕より得られた発泡プラスチック粉末を主成分として含む。
また、本発明の真空断熱体は、有機材料の粉末の結晶形態が針状である。
また、本発明の真空断熱体は、被吸着物質の分子径よりも5%〜20%大きい細孔を有する無機材料の粉末を吸着剤として主成分として含む。
また、本発明の真空断熱体は、無機材料の一つとして少なくとも反射率が0.9以上の粉末を主成分として含む。
さらに、本発明の真空断熱体は、無機材料の一つとして湿式シリカ粉末を主成分として含む。
また、本発明の真空断熱体は、芯材の気相容積率が60%以上である。
また、本発明の真空断熱体は、実質的に平均粒径が150μm以下である有機粉末からなる。
また、本発明の真空断熱体は、実質的に嵩密度が150kg/m3以下である有機材料の粉末からなる。
また、本発明の真空断熱体は、有機材料の粉末と無機材料の粉末からなる芯材の平均細孔径が実質的に100μm以下である。
本発明の断熱箱体は、外箱と、内箱と、前記外箱と前記内箱によって形成される空間に充填された発泡断熱材と、前記外箱または前記内箱の内壁に取り付けられ、互いに異なる2種類以上の粉末からなる芯材と吸着剤とを有する真空断熱体と、を具備する。
このため、本発明の断熱箱体は、長期間にわたって高い断熱性能を維持できる。したがって断熱性能劣化によるコンプレッサーの運転率過大や、冷蔵庫内の食品の品質の低下などの問題を解決できる。
また、本発明の断熱箱体は実質的に、芯材が有機材料の粉末と無機材料の粉末からなる。
また、本発明の断熱箱体は、有機材料の粉末の比表面積が20m2/g以下である。
また、本発明の断熱箱体は、有機材料の粉末のための表面改質材料として針状形状の結晶形態を有する無機材料の粉末を主成分として含む。
また、本発明の断熱箱体は、有機材料の粉末のための表面改質材料として少なくとも脂肪酸塩を含有する粉末を主成分として含む。
また、本発明の断熱箱体は実質的に、有機材料の粉末が針状形状の結晶形態を有する。
また、本発明の断熱箱体は、芯材の気相容積率が60%以上である。
【図面の簡単な説明】
図1は本発明の実施例1における真空断熱体の断面図である。
図2は本発明の実施例1における断熱箱体の断面図である。
図3は本発明の実施例1における真空度と熱伝導率との関係を示す特性図である。
図4は本発明の実施例2におけるシリカ粉末添加比率と熱伝導率との関係を示す特性図である。
図5は本発明の実施例5における真空断熱体の経時日数と熱伝導率との関係を示す特性図である。
発明を実施するための最良の形態
《実施例1》
以下に、本発明の実施例1を図1と図2を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1の真空断熱体1の断面図であり、図2は図1の真空断熱体1を用いた断熱箱体を示す断面図である。
図1において、真空断熱体1は、ウレタンフォームの平均粒径150μm粉砕粉末と合成シリカ粉末を攪拌ミルにより高速回転(3600rpm)して得られた混合粉末を有している。ウレタンフォームの粉砕粉末は、150μmの粒度の研磨布に押し付けて粉砕して形成した。
上記のように形成された混合粉末は、通気性を有する不織布内に充填されて芯材2となる。この芯材2は金属−プラスチックのラミネートフィルムからなる外装材3内に配置されている。真空断熱体1は外装材3に囲まれた内部スペースの内圧が0.1mmHgとなるように真空ポンプにより減圧密閉して形成したものである。
表1は外装材3の内部に充填された粉末の比表面積(m2/g)、添加比率(重量%)、密度(kg/m3)および0.1mmHgにおける熱伝導率(kcal/mh℃)を示したものである。図3は表1に示した各粉末を用いた場合の真空度と熱伝導率との関係を示した特性図である。
Figure 0003752519
表1および図3から、無機材料の粉末であるシリカ粉末において、比表面積の大きく異なる2種類のシリカ粉末(比表面積:35.2m2/gのシリカ粉末(1)と比表面積:62.1m2/gのシリカ粉末(2)の混合粉末)(粉末2)を混合することにより、密度はシリカ粉末単独(粉末1)と同じであっても、断熱性能が向上するのがわかる。これは、比表面積の大きなシリカ粉末によって大きな空隙が埋められるためであり、比表面積の異なる粉末を混合させることの効果が表れている。
一方、比表面積:7.2m2/gのウレタン粉末(1)と比表面積:62.1m2/gのシリカ粉末(2)とを混合した粉末4についてその結果を表1で見ると、比表面積の大きなシリカ粉末をウレタン粉末に添加することにより著しい断熱性能の向上が見られた。ウレタン粉末単独(粉末3)では形成される空隙が大きいため、空気の衝突による気体熱伝導の影響を大きく受け、真空断熱体としての断熱性能は低いものであった。
しかし、発明者の実験的研究から明らかとなったことは、少量のシリカ粉末を添加するだけで断熱性能の向上が図られたことである。したがって、従来利用不可能とされていたウレタンフォーム粉砕品の利用が可能となった。この結果、実施例1の真空断熱体1は、廃材として出されるウレタンフォームを利用することにより、著しい低コスト化が図られる。
また、実施例1の真空断熱体1では、ウレタンフォーム粉砕粉末を利用することにより粉末断熱材の密度低減が図られている。シリカなどの無機粉末は比表面積が大きいため、それだけを単独で用いた場合、シリカ粉末の充填率が高く、その結果断熱材は重くなる。しかし、ウレタンフォーム粉砕粉末にシリカ粉末を添加した場合、シリカ粉末の添加部数が少ない。そのため、シリカ粉末の充填率は低くなり、その結果断熱材は軽量化が図られるのである。これを裏付ける結果として、表1の粉末4と粉末5(比表面積:2.1m2/gのウレタン粉末(2)と比表面積:62.1m2/gのシリカ粉末(2)の混合粉末)を比較すると、ウレタン粉末の比表面積が小さくなるにしたがってシリカ粉末の添加比率が減少している。このため粉末5のウレタンフォーム粉末とシリカ粉末の混合粉末を用いることにより、実施例1の真空断熱体1は、大幅に軽量化が図られる。
以上のように、前述の混合粉末であるウレタン粉末とシリカ粉末を混合して使用することにより、断熱性能に優れ、かつ軽量化と低コスト化を満足した真空断熱体1を得ることができる。なお、無機材料の粉末としては、合成シリカに限定されるものでない。即ち無機材料として、パーライト、けいそう土、アルミナ、酸化チタンなどを用いることが可能で、前述の混合粉末と同様の効果が得られる。
次に図1について前述した真空断熱体1を用いた断熱箱体4について説明する。この断熱箱体4は、例えば冷蔵庫のドア等の薄い箱状体である。
図2に示すように、断熱箱体4は前述の真空断熱体1と硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材5と冷蔵庫の外側に配置される外箱(即ち冷蔵庫の外面となる部材)6と冷蔵庫の内側に配置される内箱(即ち冷蔵庫の内面となる部材)7によって構成される。図2に示す真空断熱体1は、内箱7の内壁の内側の大部分の面積に亘って取り付けてあるが、逆に外箱6の内側に取り付けることも可能である。硬質ウレタンフォームは、シクロペンタン発泡ポリウレタンフォームである。内箱7はABS樹脂により形成されており、外箱6は鋼板により形成されている。なお、実施例1において用いた真空断熱体1の大きさは1.0m×0.5m×0.02mである。
以上のような構成からなる断熱箱体4は、真空断熱体1を用いて、優れた断熱性能を発揮する。このため、実施例1の断熱箱体4を有する冷蔵庫を長期間使用しても、急激な断熱性能の低下によるコンプレッサーの運転率過大を招くことはない。故に、長期間使用による冷蔵庫の品質が低下するといった問題は解決される。
以上のように、実施例1の真空断熱体1は、少なくとも比表面積の異なる2種類以上の粉末を外装材3中に充填した真空断熱体である。それ故、比表面積が小さい粉末によって形成される大きな空隙を、比表面積が大きい粉末が埋め、それにより空隙が小さくなる。このため、空気の分子間の衝突による気体の熱伝導が著しく減少し、真空断熱体の断熱性能が向上している。
また、この実施例の真空断熱体は、有機材料と向き材料の混合粉末からなるので、無機材料の添加比率が小さくなる。この結果、無機材料に比べて比重の軽い有機材料の比率が高くなり、真空断熱体は軽量化が図られている。
また、この実施例の真空断熱体は、有機材料の粉末としてプラスチックフォームの粉砕品を用いているので、廃材利用が可能であり、著しい低コスト化が図られている。
また、この実施例における断熱箱体は、箱体によって形成される空間に発泡断熱材と上記真空断熱体とを複層に形成している。このため、真空断熱体は断熱性能を長期間維持することができる。
《実施例2》
以下に、本発明の実施例2の真空断熱体1およびその真空断熱体1を用いた断熱箱体4について説明する。実施例2の真空断熱体1および断熱箱体4の構造は、前述の実施例1の図1と図2に示した構造と同様であるため、図1、図2についての説明が適用される。故に構造に関する重複した部分の説明は省略する。
実施例2の真空断熱体1は、ウレタンフォーム粉砕品と合成シリカ粉末を混合した混合粉末を金属−プラスチックラミネートフィルムからなる外装材3内に充填し、その後外装材3の内部を減圧密閉して得たものである。
Figure 0003752519
Figure 0003752519
表2はウレタンフォーム粉砕粉末における比表面積と粉塵爆発との関係を示したものである。この粉塵爆発実験では、ウレタンフォーム粉砕粉末が100g充填された真空断熱体1を140℃の温度にて1時間乾燥して行った。表3は混合されるウレタンフォーム粉砕粉末および合成シリカ粉末における比表面積と密度との関係を示したものである。表3において、それぞれの熱伝導率は一定値(0.0060kcal/mh℃)になるようにウレタンフォーム粉砕粉末と合成シリカ粉末が混合されている。
表2から、有機粉末であるウレタンフォーム粉砕粉末の比表面積と粉塵爆発との間には相関があることがわかる。比表面積が20m2/gを越えると粉塵爆発が生じていることが実験的に分かった。その理由は、比表面積が増大することにより有機粉末の活性度が高まり、空気との過剰な酸化反応が、酸化発熱量の増大を生じ爆発する、ものと考え得る。
実施例2においては、発明者の上記実験的知見により、有機粉末の比表面積を20m2/g以下に限定した。このため過剰な酸化反応に起因した粉塵爆発といった問題が解決された。この結果、実施例2の真空断熱体1の断熱材として、ウレタンフォーム粉砕品などの廃材の利用が可能となり、著しい低コスト化と省資源が図られた。
また、表3から、真空断熱体1の軽量化を図るためには混合する無機粉末の比表面積を限定する必要がある。無機粉末の比表面積が有機粉末の比表面積よりも小さい場合、有機粉末によって形成される空間を充填するのに多量の無機粉末が必要になる。この結果、熱伝導率を同等とするためには、無機粉末の比表面積が有機粉末の比表面積に比べて小さい場合、重量が重くなっていた。
実施例2の真空断熱体1では、無機粉末の比表面積を20m2/g以上に限定して、有機粉末の比表面積以上に設定した。この結果、従来の混合粉末の真空断熱体が有していた重量が重いとういう問題が解決され、実施例2の真空断熱体1は軽量化が図られている。
図4は、上記内容を満足する混合粉末として比表面積が20m2/gのウレタンフォーム粉砕粉末と比表面積が50m2/gのシリカ粉末を用いた場合における、シリカ粉末添加比率と熱伝導率との関係を示したものである。
図4から理解できるように、ウレタンフォーム粉砕粉末にシリカ粉末を20重量パーセントになるまで添加していくと、真空断熱体1の熱伝導率は低下し、断熱性能は向上した。さらに、シリカ粉末を添加していくと真空断熱体1の断熱性能は悪化していき、50重量パーセントを越えるとウレタンフォーム粉砕品単独での断熱性能よりも悪くなった。
以上のような断熱性能を示す熱伝導率の変化は、次の理由によると考えられる。
シリカ粉末が20重量パーセントまで添加されていくときは、ウレタンフォーム粉砕粉末によって形成される空間距離が短縮される。この結果、気体分子の衝突による熱伝導が低減するため断熱性能が向上していく。一方、20重量パーセントを越えるとシリカ粉末の過剰添加となり、粉末同士の接触面積が増大することにより断熱性能が悪化していく。以上のように推定される。
実施例2の真空断熱体1では、シリカ粉末の添加比率を2重量パーセント以上50重量パーセント以下に限定した。それにより、ウレタンフォーム粉砕粉末の単独のものより、シリカ粉末添加による熱伝導率の低下、即ち断熱性能の向上という効果を発揮させている。この結果、実施例2の真空断熱体1は断熱性能に優れ、圧力依存性の低い断熱材となった。
次に実施例2における断熱箱体4について説明する。実施例2の断熱箱体4は前述の実施例1の断熱箱体4の構造と同様であるため、図2についての説明が適用される。すなわち実施例2の断熱箱体4は真空断熱体1と硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材5と外箱6と内箱7によって構成されている。断熱箱体4における真空断熱体1は、内箱7または外箱6の内壁に取り付けてある。また、実施例2の真空断熱体1の大きさは1.0m×0.5m×0.02mであった。
以上のような構成からなる断熱箱体4は、真空断熱体1の断熱性能が優れており、かつ圧力依存性が非常に低い。このため、長期間使用しても急激な断熱性能の劣化によるコンプレッサーの運転率過大を招くことがなく、冷蔵庫内の食品の品質低下等の問題は解決される。
以上のように、実施例2の真空断熱体1は、有機粉末の比表面積を20m2/g以下に限定した真空断熱体1である。それ故、有機粉末の活性度の高まりによる粉塵爆発といった問題が解決されている。この結果、ウレタンフォーム粉砕品などの廃材利用が可能となり、実施例2の真空断熱体1は大幅な低コスト化が図られている。
また、実施例2の真空断熱体1は、比表面積が20m2/g以上である無機粉末を用いた。それ故、無機粉末の比表面積が有機粉末の比表面積と同等以上になり軽量化が達成された。
また、実施例2の真空断熱体1は、無機粉末の充填量を2重量パーセント以上50重量パーセント以下に限定した。この結果、シリカ粉末添加による熱伝導率低下の効果を十分に発揮することができるため、実施例2の真空断熱体1は、断熱性能に優れ圧力依存性の低い断熱材となった。
また、実施例2における断熱箱体4は、断熱箱体4によって形成される空間に発泡断熱材5と実施例2の真空断熱体1とを複層に形成した。このため、実施例2の断熱箱体4は優れた断熱性能を長期間維持することができた。
《実施例3》
以下、本発明の実施例3の真空断熱体1およびその真空断熱体1を用いた断熱箱体4について説明する。実施例3の真空断熱体1および断熱箱体4の構造は、前述の実施例1の図1と図2に示した構造と実質的に同様であるため、図1、図2についての説明が適用される。故に、構造に関する重複した部分の説明は省略する。なお、実施例3においては、7つの具体例を示し、それぞれの具体例について説明する。
(具体例1)
以下、具体例1の真空断熱体1について説明する。
具体例1の真空断熱体1では、ウレタンフォーム粉砕粉末(平均粒子径100μm)と針状の結晶構造を持つ珪酸カルシウム粉末(平均粒子径10μm)とを攪拌ミルにより高速回転(3600rpm)して混合した。こうして微粉化した混合粉末を、通気性を有する不織布内に充填して芯材2が形成されている。この芯材2は、金属−プラスチックラミネートフィルムからなる外装材3内に配置した。実施例3の真空断熱体1は、外装材3の内圧が0.1mmHgとなるよう真空ポンプにより減圧密封されて、形成した。
具体例1の真空断熱体1は、有機粉末表面に凝集した針状粉末が嵩高付与性を持ち、有機粉末が細密充填となるのを防止し、気相比率を増大させた。本実施例において、粉末における嵩高付与性とは、粒子の表面に突起が多数あり、その粒子のみを又は他の種類の粒子と混合したものを、空間に充填したとき、前記突起により相当に大きな割合の空間が形成され、又は占有され、それにより嵩密度を小さく保つ性質を言う。
このように、具体例1の真空断熱体1は、大きな嵩高付与性を有する粉末を有し、気相比率を増大させているため、混合粉末における固体の接触による熱伝導を低減し、断熱性能を向上することができた。また、具体例1の真空断熱体1は、比重の小さな有機粉末を主要材料として使用したので、軽量化を達成することができた。
Figure 0003752519
表4は、無機粉末の添加量とその添加量で有機粉末を表面改質した芯材2を充填した真空断熱体1の熱伝導率を示したものである。表4において、具体例1は無機粉末として珪酸カルシウムを用いた場合の最適添加量を調べたものである。比較例1および2は、表面改質剤として珪酸カルシウムの代わりに4SiO2・3MgO・H2Oによって表されるタルク粉末(平均粒径3μm)とCaCO3によって表される炭酸カルシウム粉末(平均粒径10μm)を用いた場合である。表4に示すように、具体例1における最適添加量は1.0重量%であり、比較例1および2ではそれぞれ5重量%であった。
Figure 0003752519
表5は、無機粉末の結晶構造、最適添加量における表面改質剤の嵩密度および表面改質された粉体の断熱性能に対応する熱伝導率を示している。表5における比較例1および2は、表4と同じように、4SiO2・3MgO・H2Oによって表されるタルク粉末(平均粒径3μm)とCaCO3によって表される炭酸カルシウム粉末(平均粒径10μm)を用いた場合である。
なお、真空断熱体の断熱性能を示す熱伝導率の測定は、日本国、東京の英弘精機社製のAuto−Λ(HC−072)により平均温度24℃において測定した。
表5から、最適添加量における断熱性能は、針状の無機粉末を表面改質材として用いた場合が最も優れていることが判る。また、このときの嵩密度を比較すると、表面改質材としての無機粉末が針状、板状、球状の順に大きかった。
断熱性能の違いは、有機粉末表面に凝集した表面改質材の嵩高付与性が違うために起こると考えられる。このような嵩高付与性は、針状粉末の場合が最も大きく、有機粉末が細密充填となるのを防止し、気相比率を増大させている。このため、具体例1の真空断熱体1は、混合粉末における固体の接触による熱伝導が低減した。嵩密度の違いも同様に嵩高付与性の違いにより起こると考えられる。
具体例1の真空断熱体1は、比重の小さな有機粉末を主要材料として使用できるため、軽量化を図ることができる。また、この真空断熱体1は針状の表面改質材を用いることにより断熱性能を向上させることができる。
(具体例2)
次に、具体例2の真空断熱体1について説明する。
具体例2の真空断熱体1は、CaSiO4によって表される珪酸カルシウムが芯材中に充填されている。珪酸カルシウムは、表面に多くのシラノール基を有しているので、極性が強い。したがって、微量の添加でも表面改質可能となり、凝集体によって形成される細孔が小さくなる。この結果、ウレタンフォーム廃材などを有機粉末として適用した場合においても、具体例2の真空断熱体1は、気体分子の衝突に起因した気体熱伝導の影響が低減され、断熱性能が向上している。また、具体例2の真空断熱体1は、廃材の利用が可能となることに加え、各種添加剤として大量生産され工業的に廉価で入手することができる珪酸カルシウムを使用することで、大幅な低コスト化が図られる。
前述の表4から、表面改質材の添加量によって真空断熱体1の断熱性能は変化し、それぞれの表面改質材によって特有の最適添加量を有することが判る。特に、珪酸カルシウムを表面改質材に用いた場合、1.0重量%と非常に少ない添加量で優れた断熱性能を示した。
他の表面改質材と違い珪酸カルシウムがその結晶構造における特徴から、表面に多くのシラノール基を有しているため極性が強くなる。したがって、微量の珪酸カルシウムを添加して高速攪拌すれば、ウレタンフォーム表面に珪酸カルシウムが分散し、凝集体によって形成される細孔は小さくなる。このため、珪酸カルシウムを表面改質材に用いると、添加量が少量でも他の表面改質剤と同様の効果が得られた。
したがって、ウレタンフォーム廃材などの有機粉末を利用し、且つ工業的に廉価で入手可能な珪酸カルシウムを表面改質材に用いた具体例2の真空断熱体1は、低コスト化が可能となる。
(具体例3)
次に、具体例3の真空断熱体1について説明する。
具体例3の真空断熱体1において、CaSiO4によって表される珪酸カルシウムの結晶形態は、一般的に針状の結晶構造を持つ材料であるが、SiO2/CaOのモル比によっては結晶構造が異なる場合がある。したがって、珪酸カルシウムが確実に針状の結晶構造を有するためには、SiO2/CaOのモル比を限定することが重要となる。前記モル比が2より小さければ、珪酸カルシウムは板状および針状構造を示した。また、モル比が3より大きくなると、珪酸カルシウムは花弁状または塊状の結晶構造を示す。これに対し、モル比2から3の間では、珪酸カルシウムは針状の凝集体構造を示した。
このような針状の凝集体構造を持つ粉体は、表面改質によって有機粉末表面に付着し、嵩高付与性の能力を増大させ、混合粉末で構成される芯材2が最密充填となるのを防いでいる。その結果、このような針状の凝集体構造を持つ粉体は、粉末同士が過度に接触することがなく、固体熱伝導率を小さくすることができる。また、このような粉末は、非常に優れた可撓性を示すため、大きな細孔を形成しない。その結果、工業的に容易に達成することができる0.1〜10mmHgの圧力における空気の平均自由行程以上の空隙間距離を有する細孔を少なくすることができる。具体例3の真空断熱体1は、SiO2/CaOのモル比が2〜3の珪酸カルシウムを用いている。このため、珪酸カルシウムは針状の凝集体構造であり、具体例3の真空断熱体1は断熱性能の向上が図られている。
Figure 0003752519
表6の具体例3は、SiO2/CaOのモル比が2.0から3.0で分布する珪酸カルシウムをウレタンフォーム粉砕粉末に0.5重量%添加したときの真空断熱体1の熱伝導率を示したものである。比較例1および2は、SiO2/CaOにおけるモル比が1.0〜1.5の範囲で分布する珪酸カルシウム、及び同比が3.5以上で分布する珪酸カルシウムをそれぞれ用いたときの熱伝導率を示した。
表6に示すように、各種のSiO2/CaOの中で、SiO2/CaOのモル比が2.0〜3.0の範囲で分布する珪酸カルシウムを用いて表面改質したウレタンフォーム粉砕粉末は、一番小さい熱伝導率を示した。
珪酸カルシウムをウレタンフォーム粉砕粉末に添加した前記真空断熱体を製造した後、その真空断熱体を顕微鏡観察した結果、モル比が1.0〜1.5の粉末は、板状および針状の粉末が密に充填された構造を持っていた。また、モル比が3.5より大きい粉末は花弁状または塊状構造を持っており、モル比が2.0から3.0の粉末では、板状または針状の凝集体構造を持っていた。
この板状または針状の凝集体構造が表面改質によって有機粉末表面に付着すると、嵩高付与性が増大し、混合粉末で構成される芯材2が最密充填されることを防ぐ。その結果、粉末同士が過度に接触することがなく、無機粉末の添加による混合粉末における固体間の熱伝導の増加を僅かなものとする。また、珪酸カルシウムをウレタンフォーム粉砕粉末に添加した具体例3の真空断熱体1は、有機粉末同士の接触面積が減少して、接触熱抵抗を増加させている。また、前記真空断熱体1は、非常に優れた可撓性を示すため、大きな細孔を形成しない。その結果、工業的に容易に達成することができる0.1mmHgの圧力において、具体例3の真空断熱体1は、空気の平均自由行程以上の空隙間距離を有する細孔を少なくすることができ、優れた断熱性能を有している。
(具体例4)
次に、具体例4の真空断熱体1について説明する。
珪酸カルシウムのような無機粉末は、非常に微細な構造であるため比表面積が非常に大きい。このため、大気中の水分を吸着し、これが真空断熱体1内で解離して内圧を上昇させるため、珪酸カルシウムの粉末は断熱性能を経時的に悪化させている。
具体例4の真空断熱体1は、CaSiO4によって表される珪酸カルシウム表面をシリル化によって疎水化処理した粉末を芯材2中に充填している。具体例4の真空断熱体1は、予め珪酸カルシウムを疎水化処理されているため、吸着水分の解離による内圧の上昇が防止され、それ故真空断熱体1の断熱性能の経時的悪化は防止されている。
Figure 0003752519
表7の具体例4は、疎水化処理した珪酸カルシウムを0.5重量%添加して、有機粉末を表面改質したときの50℃大気中における熱伝導率の経時変化を示したものである。比較例は、疎水化処理をしていないものにおける同様の状態の熱伝導率の経時変化を示したものである。
疎水化処理には、結合剤としてシラノール基を有して有機材料と無機材料を結合させるシランカップリング法を用いた。珪酸カルシウム表面を希塩酸等で洗浄した後、エタノール/水混合液にビニルエトキシシランを溶かした溶液中で充分に攪拌した後シリカ粉末を添加した。
表7から、疎水化処理をしていないものには、疎水化処理を施したものに比べて、熱伝導率が経時的に高くなっており、断熱性能は大きく悪化した。
この理由は、表面改質後に珪酸カルシウムに吸着した水分が経時的に離散し、真空断熱体1中のガスの圧力を高め、気体熱伝導を大きくしたためと考えられる。
具体例4の真空断熱体1では、疎水化処理を施しているため、減圧密封前の加熱処理により容易に水分を離散することができ、断熱性能の経時的悪化を抑えることができる。
(具体例5)
次に、具体例5の真空断熱体1について説明する。
具体例5の真空断熱体1はCaSiO4によって表される珪酸カルシウム表面とウレタンフォーム粉砕粉末の表面をシリル化によって疎水化処理した粉末を芯材2中に充填している。有機粉末が疎水化処理されているため、ウレタンフォーム廃材の粉末から経時的に発生するガスの90%を占める水分率を低減することができる。更に、具体例5の真空断熱体1においては表面改質材との摩擦係数が小さくなり、改質後の流動性が著しく向上する。そのため、有機粉末の充填形態の配向性が向上している。これらの結果、具体例5の真空断熱体1は更に優れた断熱性能を長期間に亘って維持することができた。
Figure 0003752519
表8の具体例5は、疎水化処理した珪酸カルシウムを0.5重量%添加し、それにより疎水化処理した有機粉末を表面改質したときの、50℃大気中における熱伝導率の経時変化を示したものである。表8における比較例は、珪酸カルシウムのみを疎水化処理した場合である。
上記疎水化処理には、シランカップリング法を用いた。珪酸カルシウム表面を希塩酸等で洗浄した後、エタノール/水混合液にビニルエトキシシランを溶かした溶液中で充分に攪拌した後シリカ粉末を添加した。
表8に示すように、無機粉末と有機粉末を疎水化処理した場合、熱伝導率の経時変化がほとんどみられなかった。
この理由は、有機粉末の破砕工程で離散しきれなかった未反応分が充分に洗浄され、シランカップリングされたことにより、ウレタン粉末の経時的なガス発生の90%を占める水分率が低減されたためである。
以上のように、具体例5の真空断熱体1は無機粉末と有機粉末が疎水化処理されているため、ウレタンフォーム粉末から発生するガスの大半を占める水分を除去することができた。更に、具体例5の真空断熱体1は、表面改質材との摩擦係数が小さくなり、改質後の流動性が著しく向上した。このため、具体例5の真空断熱体1は、有機粉末の充填形態の配向性が向上した。これらの結果、具体例5の真空断熱体1は、更に優れた断熱性能を長期間に亘って維持することができる。
(具体例6)
次に、具体例6の真空断熱体1について説明する。
具体例6の真空断熱体1はウレタンフォーム粉砕粉末と繊維材料を混合造粒した粒体を芯材2中に充填している。このため、球状の造粒粒子の表面に多数の繊維材料が突出した形状となり、嵩高付与性による効果が大きくなっている。この結果、具体例6の真空断熱体1は大幅な軽量化が図られた。
また、具体例6の真空断熱体1において、生成する造粒体は表面改質後の嵩密度が非常に小さくなる。このため、真空断熱体1はさらに大幅な軽量化を図ることができた。
Figure 0003752519
表9は、有機粉末(粒径10μmのウレタンフォーム粉末)と針状の繊維材料(長径200μmのガラスウール)を混合造粒した場合の粒径と嵩密度の関係を表したものである。比較例は、球状の粉末材料を混合造粒した場合である。
表9から、混合粒子の形状の違いにかかわらず、造粒粒子の粒子径が大きくなるにつれて嵩密度が小さくなることが判る。この理由は、造粒粒子が小さくなるにつれて最密充填となるためである。
造粒粒子は、粉体の電解液中での電荷特性を利用して凝集させるため、粒子形状を制御することが難しい。しかし、造粒によって容易に形成される粒子形状(球状またはペレット状)と構造的に最もかけ離れた針状の繊維材料を混合造粒することにより、造粒粒子に嵩高付与性を付与することができる。この混合造粒が、嵩密度に大きく影響し、造粒粒子の密度を小さくすることができる。このため、具体例6の真空断熱体1は、その重量が大きく軽減されている。
(具体例7)
次に、実施例3における具体例7の断熱箱体4について説明する。具体例7の断熱箱体4は、前述の具体例1から6に示した真空断熱体1と硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材5と外箱6と内箱7によって前述の図2を用いて示した実施例1の断熱箱体4と同様に構成されている。真空断熱体1は、内箱7または外箱6の内側に埋設されている。また、具体例7の真空断熱体1の大きさは、0.5m×0.5m×0.02mである。
以上のような構成から得られる断熱箱体4は、信頼性が高く、かつ断熱性能が優れている。このため、上記断熱箱体4は長期間使用しても断熱性能の低下が抑制されている。したがって、具体例7の断熱箱体4を用いた冷蔵庫又は冷凍庫は、外界の急激な温度変化によってコンプレッサーを過剰に運転することがなく、断熱箱体4としての信頼性が低下するといった問題がない。
《実施例4》
以下、本発明の実施例4の真空断熱体1およびその真空断熱体1を用いた断熱箱体4について説明する。実施例4の真空断熱体1および断熱箱体4の構造は、前述の実施例1の図1と図2に示した構造と実質的に同様であるため、図1、図2についての説明が適用される。故に、構造に関して重複した説明は省略する。なお、実施例4においては、5つの具体例を示し、それぞれの具体例について説明する。
(具体例1)
以下、具体例1の真空断熱体1について説明する。具体例1の真空断熱体1は、ウレタンフォーム粉砕粉末(平均粒子径150μm)と凝集シリカ粉末(平均粒子径7μm)およびステアリン酸カルシウム粉末(平均粒子径0.1μm)からなる芯材2を外装材3内に配置し、内圧が0.1mmHgとなるよう減圧密封して得たものである。外装材3は、アルミ箔ラミネーフィルムで形成されている。このアルミ箔ラミネーフィルムは、表面保護層としてポリエチレンテレフタレート(厚み12μm)と、アルミ箔(6μm)と、熱溶着層が高密度ポリエチレン(60μm)とから構成されている。
具体例1の真空断熱体1は、以下のようにして製造された。
凝集シリカ粉末(平均粒径5μm)とステアリン酸カルシウム粉末(平均粒径0.1μm)1重量%を有機粉末(平均粒径150μm)を攪拌ミル内で3600rpmの高速回転で混合して芯材2を得た。次に、その芯材2を予め真空断熱体1の大きさが0.30×0.30×0.03mとなるよう袋状にしたポリプロピレン系不織布に充填し封止した。その後、アルミ箔ラミネートフィルムの外装材3内に充填し内部圧力が0.1mmHg以下となるよう減圧密封した。
上記のように製造された具体例1の真空断熱体1は、脂肪酸塩粉末であるステアリン酸カルシウム粉末が有機粉末表面の分子配向性をなくしている。また、これと同時にシリカ粉末が有機粉末表面に凝集する。このため、不規則形状の有機粉末端部の破砕を起こすことがなく、最密充填となるのが防止されて、気相比率が高くなっている。このため、具体例1の真空断熱体1は、混合粉体における固体の接触による熱伝導を低減し断熱性能を向上することができる。また、具体例1の真空断熱体1においては、比重の小さな有機粉末を主要材料として使用することにより、軽量化を図ることができる。
Figure 0003752519
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表10の具体例1は、ウレタンフォーム粉砕粉末に対する凝集シリカ粉末の各種添加量とそれぞれの添加量での真空断熱体1の断熱性能としての熱伝導率を示したものである。また、比較例1は第2成分の無機粉末としてのステアリン酸カルシウム粉末を添加しなかった場合である。比較例2と比較例3はそれぞれ第2成分の無機粉末としての4SiO2・3MgO・H2Oによって表されるタルク粉末(平均粒径3μm)とCaCO3によって表される炭酸カルシウム粉末(平均粒径10μm)を用いた場合である。
表10における比較例4は、ラウリン酸カルシウム粉末を1重量%添加したときの凝集シリカの添加量と断熱性能との関係を示しており、後述する具体例2において説明する。
表11は、具体例1と比較例1のそれぞれの凝集シリカ粉末添加量における嵩密度を示したものである。また、比較例2として、凝集シリカ粉末のみの嵩密度を示した。
なお、真空断熱体の断熱性能に対応する熱伝導率の測定は、前記の英弘精機社製のAuto−Λ(HC−072)により平均温度24℃において測定した。
表10から、凝集シリカ粉末のみを表面改質材に用いた場合(比較例1)には、添加量が1.0重量%が最適添加量であった。この1.0重量%の添加量のときの比較例1と比較して、ステアリン酸カルシウム粉末を2.0重量%添加した場合の具体例1の断熱性能は、約0.0003kcal/mh℃だけ優れていた。また、凝集シリカ粉末にタルク粉末または炭酸カルシウム粉末を混合した場合にも、具体例1の場合と比較すると、断熱性能は悪化していた。
この理由は、脂肪酸塩粉末であるステアリン酸カルシウム粉末が有機粉末表面の分子配向性をなくすと同時に、シリカ粉末が有機粉末表面に凝集し、それにより、不規則形状の有機粉末端部の破砕が起こらなかったことによると考えられる。この結果、具体例1の真空断熱体1は、最密充填となるのが防止されている。このため、具体例1の真空断熱体1の気相比率が増大し、固体の接触による熱伝導が低減し、断熱性能は向上している。また、比較例2と3のタルク粉末と炭酸カルシウム粉末は、粉末そのものの固体熱伝導率が大きいため、結果として、真空断熱体の断熱性能を悪化させていたと考えられる。
また、表11から、具体例1は、凝集シリカ粉末のみを芯材に用いた場合(比較例2)と比較して、嵩密度が約25%以上小さくなった。
この理由は、比重の小さな有機粉末を主要材料として使用しているためである。
以上のように、具体例1の真空断熱体1では、脂肪酸塩が無機粉末及び有機粉末の表面における摩擦係数を小さくし、表面改質を行ったときに改質工程によって起こる有機粉末の摩擦破砕といった問題が解決されている。このため、有機粉末が本来持っていた嵩高付与性を損なうことなく、有機粉末が最密充填となるのを防止し、気相比率を高めている。このため、具体例1の真空断熱体1は、固体の接触による熱伝導を低減し断熱性能を向上することができる。また、具体例1の真空断熱体1は比重の小さな有機粉末を主要材料として使用しているため、軽量化を図ることができる。
(具体例2)
次に、具体例2の真空断熱体1について説明する。
具体例2の真空断熱体1の芯材2は、(C1735COO)2Caによって表される無機粉末としてのステアリン酸カルシウム粉末を芯材2中に充填している。発明者らの実験によると、ステアリン酸塩は、ラウリン酸塩やパルチミン酸塩等の炭素数の少ない脂肪酸塩よりも有機粉末表面の摩擦係数を小さくすることが判った。また、ステアリン酸カルシウムは、その他のステアリン酸塩と比較して表面改質のための混合による発熱温度が低いことが判った。この理由は、水分を含有した無機粉末が脱水反応を起こす時に起こる発熱を上記ステアリン酸カルシウム(C17352Caが抑えるためと考えられる。
したがって、具体例2の真空断熱体1では、表面改質時に起こる摩擦によって有機粉末端部が削されて破砕を起こすことがなく、大きな気相容積を保ったまま改質後の有機粉末が形成する空隙間距離を小さくすることができる。このため、具体例2の真空断熱体1は、工業的に容易に達成することができる0.1〜10mmHgの圧力において、空気の平均自由行程以上の空隙間距離を有する細孔を少なくすることができ、それにより断熱性能の向上を達成している。また、ステアリン酸カルシウム粉末は工業的に大量に生産されており、低コスト化を図ることができる。
前述の表10において、比較例4は脂肪酸塩粉末としてラウリン酸カルシウム粉末を1重量%添加したときの凝集シリカの添加量と断熱性能に対応する熱伝導率との関係を示したものである。
表10から分かるように、ラウリン酸カルシウム粉末を添加したものでも、断熱性能の向上は見られたものの、ステアリン酸カルシウム粉末を添加したほどの優れた効果は得られなかった。
したがって、有機粉末表面の摩擦係数を小さくする脂肪酸塩の中でも、ステアリン酸カルシウム粉末が特に効果的であることが理解できる。
ステアリン酸カルシウムは脂肪酸塩の中でも、特に界面活性力が大きいためである。有機物表面に水分が存在すると陽イオンがヒドロキシル化され、陰イオンがプロトンと結合する。その結果、破砕面にアルカリ土類金属の潤滑面ができ、すべりを良くするため、表面改質材料に対して有機粉末の硬度が小さい場合でも破砕されることがない。したがって、混合粉末における固体の接触による熱伝導の増加を起こすことなく気体の熱伝導を減らすことができる。また、ステアリン酸カルシウム粉末は工業的に大量に生産されており、低コスト化を図ることができる。
以上のように、ウレタンフォーム廃材の粉末などの有機粉末を利用し、工業的に廉価で入手可能な脂肪酸塩、特にステアリン酸カルシウム粉末を表面改質材に用いた真空断熱体は、低コスト化を達成することができる。
(具体例3)
次に、具体例3の真空断熱体1について説明する。
具体例3の真空断熱体1の芯材2は、有機粉末と(C1735COO)2Caによって表されるステアリン酸カルシウム粉末とSiO2によって表されるシリカ粉末(平均粒径5μm)を混合したものである。
極性のシラノール基を有するシリカ粉末が有機粉末に表面吸着する際、ステアリン酸カルシウムが有機粉末表面の摩擦係数を小さくしシリカ粉末の分散性を向上させる。また、ステアリン酸カルシウムのCH結合末端がシリカ粉末表面を覆うように凝集する。したがって、シリカ表面に付着した水分を除去し、またCOOCa末端の疎水性により水分が吸着するのを防止する。
この結果、真空断熱体1の内部の吸着水分の解離による内圧の上昇を防止し、真空断熱体1の断熱性能の経時的悪化を防止することができる。
Figure 0003752519
Figure 0003752519
表12の具体例3は、珪酸カルシウム粉末を表面改質材とし、ステアリン酸カルシウム粉末を1重量%添加したときの珪酸カルシウム粉末添加量と断熱性能に対応する熱伝導率との関係を示したものである。比較例1は、ステアリン酸カルシウム粉末のような滑材としてでなく、表面改質材としてタルク粉末を添加した場合である。また比較例2は炭酸カルシウム粉末を表面改質材として添加した場合である。
また、表13は表12の具体例3、比較例1および比較例2における30℃雰囲気での50日後、100日後、および150日後の断熱性能に対応した熱伝導率を示したものである。
表12から、表面改質材として珪酸カルシウム粉末を用いた場合には、凝集シリカ粉末と同等の効果が得られたにもかかわらず、タルク粉末および炭酸カルシウム粉末を表面改質材として用いた場合には、ほとんど効果が得られなかった。
また、表13から次のことが分かった。珪酸カルシウム粉末以外の無機粉末を表面改質材として用いた比較例1および2では、150日後の断熱性能が初期と比較して0.001kcal/mh℃悪化した。これに対して、珪酸カルシウム粉末を表面改質材として用いた具体例3においては、僅か0.0002kcal/mh℃の悪化であった。
以上のように、具体例3の珪酸カルシウム粉末は前述の具体例2の凝集シリカ粉末と同様の効果を奏した。
極性のシラノール基を有するシリカ粉末や珪酸塩粉末が有機粉末に表面吸着する際、ステアリン酸カルシウムがシリカ粉末や珪酸塩粉末の分散を助長し、ステアリン酸カルシウムのCH結合末端がその表面を覆うように凝集する。したがって、シリカや珪酸カルシウムの表面に吸着した水分を除去し、また水分の凝集が起こるのを防いでいる。
シリカ粉末や珪酸塩粉末は、その結晶構造における特徴により、表面に多くのシラノール基を有している。したがって、極性が強く少量の添加でも表面改質が可能となり、凝集体によって形成される細孔が小さくなる。
この結果、具体例3の真空断熱体1においては、分子の衝突に起因した気体熱伝導の影響が低減し高性能化が図れるとともに、廃材の利用が可能となる。したがって、具体例3の真空断熱体1は著しい低コスト化が可能となる。
また、シリカや珪酸カルシウムような無機粉末は、非常に微細な構造であるため比表面積が非常に大きい。このため、大気中の水分を吸着し、これが真空断熱体内で解離し内圧を上昇するため断熱性能を経時的に悪化させている。
具体例3の真空断熱体1では、ステアリン酸カルシウムを含有しているため、有機粉末との改質後に残存するシラノール基を疎水性のステアリン酸カルシウム膜で覆うことが可能となる。それにより、水分の吸着を防ぎ、吸着水分の解離による内圧の上昇を防止し、真空断熱体の断熱性能の経時的悪化を防止することができる。
(具体例4)
次に、具体例4の真空断熱体1について説明する。
一般に、発泡プラスチックは軽量であり、かつ圧縮強度が大きい。したがって、発泡プラスチックを粉砕する方法として、カッターミルなどによる体積粉砕を用いると、微粉砕化は困難であった。そのため、発泡プラスチックが有する独立気泡を完全に破砕することは困難であり、軽量な発泡プラスチックを真空断熱体における断熱材として有効に利用することができなかった。
具体例4の真空断熱体1では、表面破砕の一つである摩砕を適用しているため、効果的にかつ確実に微粉砕化が可能となる。したがって、真空断熱体1は軽量な発泡プラスチックを用いて形成することができるため、その重量を軽量化することができる。
具体例4の真空断熱体1の芯材2は、発泡プラスチックを150μmの粒度の研摩布に約1kg/cm2の力で押し付け破砕させて粉末とし、次にこの粉末にステアリン酸カルシウム粉末(平均粒径0.1μm)とSiO2によって表されるシリカ粉末(平均粒径5μm)を混合して作る。
具体例4の真空断熱体1では、上記のように発泡プラスチックを表面粉砕の一つである研磨布を用いた摩砕によって粉砕している。カッターミルとは、ナイフ状カッターを何枚か束ねて回転させ、材料を粉砕するものである。したがって、具体例4の真空断熱体1では、カッターミルなどの体積粉砕では180μmが限界であった粉砕粒度をさらに小さくすることが可能となった。
以上のように、具体例4の真空断熱体1では、軽量な発泡プラスチック粉末を経時的ガス発生による断熱性能の低下を起こさずに利用することができる。
また、具体例4における摩砕は、研磨布の代わりに研磨紙などを用いて、安価な設備投資で対応することができる。このため、具体例4の真空断熱体1はさらに低コスト化を図ることが可能である。
Figure 0003752519
表14の具体例4は、摩砕によって得られた発泡ポリウレタンフォームの嵩密度を示す。比較例として、カッターミルによって粉砕した場合の嵩密度を示す。嵩密度とは、空隙間を有した状態における堆積した粉末の密度のことである。カッターミルによる粉砕は、ロールミルにより平均粒径1mm程度に粗粉砕した後、カッターミルであるパルベライザにより粉砕したものである。両ミルはいずれも日本国、大阪の細川ミクロン(株)社製の粉砕機を用いた。
表14から、平均粒径が同じ180μmの時、具体例4と比較例では嵩密度において12kg/m3の差がみられた。また、カッターミルでは、180μm以下の粉砕を行うことができなかった。
以上のように、摩砕により形成された粉末はカッターミルにより形成された粉末に比べて嵩密度が小さくなっている。この理由は、摩砕によって得られた発泡ウレタンフォーム粉末が嵩高付与性を損なうこと無く粉砕されるためである。したがって、具体例4の真空断熱体1は軽量化を図ることができる。
また、具体例4の真空断熱体1は、廃棄処分が困難とされており、安価で回収することができる発泡プラスチックを用いることができる。そのため、具体例4の真空断熱体1は、低コスト化を図ることができる。
(具体例5)
次に、上記真空断熱体1を用いた具体例5の断熱箱体4について説明する。
具体例5の断熱箱体4は、前述の具体例1から5に示した真空断熱体1と硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材5と外箱6と内箱7によって構成されている。真空断熱体1は、内箱7または外箱6の内壁に取り付けられて埋設されている。発泡断熱材5は、シクロペンタンを用いた発泡ポリウレタンフォーム(断熱性能0.0130kcal/mh℃)からなる。外箱6は、厚さ500μmの鋼板であり、内箱7は、厚さ600μmのABS樹脂からなる。また、真空断熱体1の大きさは、0.5m×0.5m×0.02mである。
以上のような構成から得られる上記断熱箱体4は、信頼性が高く、かつ断熱性能が優れているので長期間使用しても断熱性能の低下が少ない。したがって、上記断熱箱体4を用いた冷蔵庫又は冷凍庫は、外界の急激な温度変化によってコンプレッサーを過大に運転することがなく、冷蔵庫内の食品の品質の低下等の問題が解決されている。
《実施例5》
以下、本発明の実施例5の真空断熱体1およびその真空断熱体1を用いた断熱箱体4について説明する。実施例5の真空断熱体1および断熱箱体4の構造は、前述の実施例1の図1と図2に示した構造と同様であるため、図1、図2についての説明が適用される。故に構造に関する重複した部分の説明は省略する。
実施例5の真空断熱体1の芯材2は、有機粉末としてウレタンフォーム粉砕品、無機粉末として湿式シリカ粉末、吸着剤として窒素ガスの分子径よりも5〜20%大きい細孔を有する活性炭粉末を含む。この芯材2にはさらに輻射低減剤として、反射率0.9以上を有するアルミニウム粉末を含む。この芯材2は通気性を有する不織布内に充填された後、金属−プラスチックラミネートフィルムからなる外装材3内に配置されている。実施例5の真空断熱体1は、上記外装材3の内部を減圧密閉して得たものである。
粉末真空断熱体の重要な課題は、如何に重量の軽減を図るかである。粉末真空断熱体が重くなる主たる理由は、粉末が球状であるため最密充填形態をとるからと考えられる。したがって、軽量化を図るためには粉末の形状の工夫によって充填形態を制御する必要がある。実施例5の真空断熱体1では、芯材2として用いる有機粉末の形状を針状に選定している。したがって、実施例5の真空断熱体1は、有機粉末の嵩高付与性によって有機粉末が最密充填形態を形成せず、軽量化ができる。
Figure 0003752519
表15は芯材に用いるウレタンフォーム粉砕粉末の粒子形状および粒子径と嵩密度との関係を示したものである。実施例5のウレタンフォーム粉砕粉末の粒子形状は針状であり、比較例の粒子形状は球状のものを用いた。なお、粒子形状は粉砕方法によって変わり、カッターミルなどの方法で粉砕すれば針状の粉末粒子が得られ、ボールミルなどの方法で粉砕すれば球状の粉末粒子が得られた。
なお、カッターミルはナイフ状のカッターを複数枚束ねて回転させて、粉砕するものである。また、ボールミルは回転円筒内に粉砕媒体としてスチール製のボールを入れて粉砕するものである。
表15に示されているように、粒子径が小さくなるにしたがって粒子形状の違いに関係なく、嵩密度は大きくなっている。これは、微粉末になることによって粉末の凝集形態が細密充填形態に近ずくからである。
それでも、実施例5の真空断熱体1は、粒子形状が針状であるため、比較例の球状粉末より嵩密度が小さく軽量化が図られた。粒子形状を針状にすることにより粉末の凝集作用に対して嵩高付与性が働き、細密充填形態がとれなくなる。この結果、実施例5の真空断熱体1は、嵩密度が小さくなり軽量化が達成された。
以上のように、粒子形状を針状に限定することにより、粉末真空断熱体の課題であった軽量化が実現できた。
また、真空断熱体における性能に関する課題としては、長期間の信頼性の確保と断熱性能の向上および低コスト化がある。
真空断熱体を長きに亘って使用する場合、空気やウレタンフォームの発泡剤として用いられる炭化水素系の有機ガスなどが真空断熱体内部に侵入してくる。この結果、真空度が低下し、気体熱伝導率の増大によって断熱性能が低下する。
このような状態では真空断熱体を長きに亘って使用することができず、長期間の信頼性を確保することは困難である。したがって、外部から侵入してくる有機ガスなどの気体分子を吸着除去することが求められる。
気体分子を吸着除去する方法としては化学吸着と物理吸着とがある。化学吸着とは化学反応によって気体分子を吸着することである。化学吸着は、気体分子との結合エネルギーが大きく、一度吸着すると脱離しにくい。しかし、化学反応であるため副生ガスが発生するから、真空断熱体には適さない。
一方、物理吸着とは、毛細管現象によって粉末の小さな空隙に気体分子が取り込まれ、表面吸着エネルギーによって吸着することである。
物理吸着は、しかし、吸着エネルギーが小さい。このため、取り込む空間が大きい場合などは気体分子の運動エネルギーが吸着エネルギーよりも大きくなり、目的とする気体分子を吸着除去することができない。したがって、物理吸着によって気体分子を吸着除去するためには、吸着剤として用いる粉末の中に含まれる細孔の大きさを限定する必要がある。
実施例5の真空断熱体1では上記の考察に鑑み、吸着剤として被吸着分子の径よりも5%〜20%大きい細孔を有する無機粉末を用いている。したがって、毛細管現象によって細孔内に取り込まれた気体分子の運動エネルギーが小さくなり、吸着エネルギーが支配的となる。この結果、実施例5の真空断熱体1は、物理吸着を利用するものであっても充分実用に供することが可能となり、長きに亘って使用することができる。
Figure 0003752519
表16および図5は窒素雰囲気中に真空断熱体を配置し、所定日数経過後の真空度を測定した表およびグラフである。表16における実施例5のA、B、及びCは、窒素分子よりも5%、10%、及び20%それぞれ大きい細孔を有する活性炭を吸着剤として用いた。また、比較例a、b、cでは5%よりも小さい3%の細孔しか有しない活性炭(比較例a)および20%よりも大きい25%と40%の細孔しか有しない活性炭(比較例b)、(比較例c)を吸着剤として用いた。また、比較例dでは吸着剤を全く有しない真空断熱体を用いた。
なお、吸着剤の効果をより的確に評価するため、外装材にはガス透過性のよい15μmの厚みのポリエチレンフィルムを用い、初期の真空度を0.1mmHgにして行った。
表16および図5から分かるように、実施例5では90日間放置しておいても真空度の変化は殆ど認められないが、比較例では、いずれの吸着剤でも真空度が悪化した。活性炭のように物理吸着によって気体分子を吸着する場合、被吸着体である気体分子と吸着剤の細孔径との関係が問題となる。実施例5の真空断熱体1では、その細孔径が被吸着体である気体分子よりも僅か5%〜20%だけ大きいだけの細いものである。このため毛細管現象によって細孔内に取り込まれた気体分子の運動エネルギーが非常に小さくなり、吸着エネルギーが支配的となる。この結果、物理吸着を真空断熱体に適用することが可能となる。すなわち、物理吸着を用いた実施例5の真空断熱体1は長期間放置しておいても真空度を悪化させるこことなく断熱性能を維持することができた。
粉末真空断熱体の熱伝導を構成する因子としては、粉末同士の接触による固体熱伝導と、粉末の細孔内部での気体分子同士の衝突による気体熱伝導、および輻射熱伝導がある。したがって、断熱性能を向上させるためには、各々の熱伝導を低減させる必要がある。
粉末真空断熱体1では、粉末によって形成される空隙が非常に小さい。したがって、気体分子の衝突に起因した気体熱伝導の影響は小さい。一方、粉末同士の接触による固体熱伝導は、有機粉末の形状などの制御によって低減が可能である。しかし、断熱性能の向上を図るためには、さらに輻射による熱伝導を低減させる必要がある。
輻射による熱伝導の低減には、如何にして輻射による振動エネルギーを吸収させないように構成するかが重要である。振動エネルギーの吸収に対する特性は材料固有のものであり、反射率として表わされる。反射率が高ければ振動エネルギーを反射するため、輻射による熱伝導が低減する。したがって、反射率の最適化を図ることが重要となる。
実施例5の真空断熱体1では、反射率を0.9以上に限定している。したがって、実施例5の真空断熱体1は、輻射による熱伝導が低減し、断熱性能の向上が得られた。
Figure 0003752519
表17は実施例5として、輻射による熱伝導を低減することにより断熱性能を向上させるべく、熱線反射率が0.9以上のアルミニウム粉末を添加した場合の断熱性能を表わしたものである。また、比較例としては、反射率が0.9より小さい金属粉末を用いた場合の断熱性能を表わした。なお、条件を同一にするため添加量を5重量%で一定とし、真空度は0.1mmHgに調整した。断熱性能は前記(株)英弘精機製の熱伝導率測定装置AUTO-Λを用い、平均温度24℃で測定した熱伝導率を用いた。
表17から、反射率が0.9以上のアルミニウム粉末を添加した実施例5においては断熱性能が向上している。一方、比較例の場合、反射率が0.9より小さいため、振動エネルギーを吸収してしまう。このため、比較例では輻射による熱伝導を低減することができず、断熱性能を向上させることができなかった。
一方、低コスト化については、有機粉末としてウレタンフォーム廃材などを用いれば材料費がかからないため、劇的にコスト低減を図ることが可能となる。しかし、ウレタンフォーム廃材などを利用する場合、粉砕などによっては微粉末にはできない。このため、有機粉末の凝集体によって形成される空隙が大きくなり、気体分子同士の衝突に起因した気体熱伝導が増大する。
前記課題を解決する方法として無機粉末の添加によって有機粉末の表面改質を行い、粉末の流動特性を向上させることにより、凝集体によって形成される空隙の微細化を図る方法がある。無機粉末添加によって表面改質が行われる理由は、有機粉末と無機粉末との混合、攪拌により運動エネルギーを与えられることによりメカノケミカル反応を起こすためと考えられ、使用する無機粉末の活性度によりその効果が異なる。したがって、低コスト化を実現するためには無機粉末の限定が重要となる。
実施例5では、使用する無機粉末として湿式シリカ粉末を選択している。湿式シリカ粉末は製造工程上の特徴から、乾式シリカに比べシリカ表面に多数のシラノール基を有している。したがって、極性が強く微量の添加でも表面改質が可能となり、凝集体によって形成される細孔が小さくなる。この結果、ウレタンフォーム廃材などを有機粉末として適用した場合においても、気体分子の衝突に起因した気体熱伝導の影響が低減する。したがって、高い断熱性能が図れるとともに、廃材の利用が可能で著しい低コスト化が図れる。
Figure 0003752519
表18は改質剤として使用する無機粉末に実施例として湿式シリカ粉末を、また、比較例として乾式シリカ粉末を添加し場合の添加量と断熱性能との関係を示したものである。なお、条件を同一にするため、シリカ粉末の添加量を5、10、15重量%の3水準とし、真空度は0.1mmHgに調整した。断熱性能に対応する熱伝導率は前記(株)英弘精機製の熱伝導率測定装置AUTO-Λを用い、平均温度24℃において測定した。
表18から分かるように、実施例の湿式シリカ粉末を用いた場合、各比較例の場合に比べて断熱性能が向上している。湿式シリカ粉末は製造工程上の特徴から、乾式シリカに比べてシリカ表面に多数のシラノール基を有している。したがって、湿式シリカ粉末を用いた場合、その強い極性のため微量の添加でも表面改質が可能となる。この結果、ウレタンフォーム廃材などを有機粉末として適用した場合においても、気体分子の衝突に起因した気体熱伝導の影響が低減する。故に、実施例の湿式シリカ粉末を用いた場合には、高い断熱性能が得られるとともに、廃材の利用が可能となるので著しい低コスト化が図れる。
本実施例の断熱箱体4は、前述の湿式シリカ粉末を用いた実施例の真空断熱体1を硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材5の一表面部に配置し、それを外箱6と内箱7によって構成される密閉空間に収容した構成である。その密閉空間内で真空断熱体1は内箱7または外箱6の内壁に取り付けてある。また、真空断熱体1の大きさは1.0m×0.5m×0.02mである。
以上のように、真空断熱体1の断熱性能は優れており、かつ時間の経過に対する信頼性は非常に高い。このため、上記構成の断熱箱体は、長期間に亘って高い断熱性能を維持する。また、断熱箱体4を用いた冷蔵庫は、外界の急激な温度変化によってコンプレッサーの運転率過大を招くことがなく、冷蔵庫内の食品の品質の低下という問題は解決されている。
以上のように、実施例5の真空断熱体1は、芯材2として用いる有機粉末の形状を針状に限定している。したがって、真空断熱体1は、有機粉末の嵩高付与性によって最密充填形態となることがなく、軽量化を図ることができる。
また、実施例5の真空断熱体1は、吸着剤として被吸着分子の径よりも5%〜20%大きい細孔を有する無機粉末を用いている。したがって、毛細管現象によって細孔内に取り込まれた気体分子の運動エネルギーが小さくなり、吸着エネルギーが支配的となる。この結果、物理吸着においても真空断熱体1に適用することが可能となり、実施例5の真空断熱体1は長期間に亘って使用することができる。
さらに、実施例5の真空断熱体1は、反射率が0.9以上の粉末材料を添加している。したがって、輻射による振動エネルギーは吸収されることがない。この結果、実施例5の真空断熱体1は、輻射による熱伝導を低減することが可能となり、断熱性能の向上が図れる。
また、実施例5の真空断熱体1では、表面改質剤として使用する無機粉末を湿式シリカ粉末に限定している。このため、ウレタンフォーム廃材などを有機粉末として適用した場合においても、実施例5の真空断熱体1は、気体分子の衝突に起因した気体熱伝導の影響が低減し高性能化が図れる。
また、実施例5の真空断熱体1は、廃材の利用が可能となるので著しい低コスト化が図れる。
また、前記真空断熱体1が長時間信頼性が高く、かつ断熱性能に優れているので、上記真空断熱体1と発泡断熱材5を複層にした断熱箱体4の場合、長期間高い断熱性能が維持される。したがって、実施例5の断熱箱体4を用いた冷蔵庫又は冷凍庫は、外界の急激な温度変化によってコンプレッサーを過大に運転することがなく、冷蔵庫内の食品の品質の低下などの問題が解決されている。
《実施例6》
以下、本発明の実施例6の真空断熱体1およびその真空断熱体1を用いた断熱箱体4について説明する。実施例6の真空断熱体1および断熱箱体4の構造は、前述の実施例1の図1と図2に示した構造と同様であるため、図1と図2についての説明が適用される。故に構造関する重複した部分の説明は省略する。
真空断熱体1は、ウレタンフォーム粉砕粉末と合成シリカ粉末からなる芯材2を通気性を有する不織布内に充填後、金属−プラスチックラミネートフィルムからなる外装材3内に配置し、内部を減圧密閉して、得たものである。
Figure 0003752519
表19は芯材2の有する気相容積率と断熱性能に対応する熱伝導率との関係を示したものである。なお、気相容積率は、下記式(1)により算出されるものである。
気相容積率(%)=(1−粉末の嵩密度/粉末の真密度)×100・・・・・(1)
なお、嵩密度とは、多数の粉末が空隙を有して堆積した状態における空隙を含めたある量の粉末全体としての密度のことである。また、真密度とは、空隙を除いた粉末材料の固体部分のみの実質的な密度のことであり、単位体積当たりの質量を示す。
表19から、気相容積率が低下するにしたがって断熱性能が低下していくのがわかる。特に、気相容積率が60%より小さくなると極端に断熱性能は低下している。
その理由は、気相容積率が低下するにしたがって粉末同士の接触が増加し、固体による熱伝導が増加するためと考えられる。また、気相容積率が60%より小さくなると粉末同士がより密に接近する。このため、粉末の持つ運動エネルギーよりも凝集エネルギーが大きくなり細密充填構造をとる。このため、固体による熱伝導が著しく増加し、極端に断熱性能が悪化する。
実施例6の真空断熱体1では気相容積率を60%以上に選定しているため粉末が細密充填構造をとることがなく、断熱性能の向上が図られている。
Figure 0003752519
表20はウレタンフォームを粉砕した時の平均粒径と断熱性能に対応する熱伝導率の経時変化を示したものである。
表20から分かるように、平均粒径が150μm以下では断熱性能の経時変化はあまり認められないが、150μmより大きい粒径を用いた場合には、断熱性能が経時的に大きく低下した。ウレタンフォーム粉末を有機粉末として用いる場合、粉砕によって適当な粒径の粉末にする。しかし、ウレタンフォームは独立気泡を有しており、粉砕粒径が適切でない場合などは、気泡内部にフロンガスなどの気体が閉じ込められている。この結果、このようなウレタンフォーム粉末では、気泡内部のガスの経時的拡散のため、真空度が悪化し断熱性能の低下を招いている。
したがって、ウレタンフォームを有機粉末として用いる場合などは、粉砕した後の粒径を限定することが非常に重要となる。
実施例6では、平均粒径を150μm以下に限定している。この結果、ウレタンフォームの粉砕粉末を有機粉末として用いた場合においても、独立気泡などの残存がない。したがって、実施例6の真空断熱体1では、気泡内部のガスの経時的拡散による、真空度の悪化が避けられ、それ故断熱性能の低下の問題が解決されている。
Figure 0003752519
表21は有機粉末の嵩密度と無機粉末の添加量を変化させた時の断熱性能に対応する熱伝導率の変化を示したものである。
表21に示すように、嵩密度が150kg/m3以下の場合は、無機粉末を添加することによって断熱性能は向上している。しかし、嵩密度が150kg/m3を超えると、無機粉末を添加することによって断熱性能は反対に低下している。
有機粉末の嵩密度が150kg/m3以下の場合において、無機粉末添加により断熱性能が向上するのは下記理由による。
無機粉末の添加によって粉末の流動特性が改善され、粉末同士が密な充填構造をとる。この結果、空気の平均自由行程よりも大きな空隙が消失し、気体分子の衝突に起因する気体熱伝導が低減する。それ故、有機粉末に無機粉末を添加した真空断熱体は、断熱性能が向上するのである。
しかし、有機粉末自体が非常に密な状態の場合、無機粉末添加によって更に充填構造が密になり、混合粉末における固体熱伝導の増加により断熱性能が低下する。このため、有機粉末の充填程度を限定することは、断熱性能を向上させるためには非常に重要である。
実施例6の真空断熱体1では、有機粉末の充填率を表わす指標として前述の嵩密度を選定し、有機粉末の嵩密度を150kg/m3以下に限定している。この結果、有機粉末の充填率の適切化が可能となり、無機粉末の添加によって断熱性能の向上が図れる。
Figure 0003752519
表22は有機粉末に無機粉末を添加して得られた混合粉末の平均細孔径と各真空度における断熱性能に対応する熱伝導率との関係を示したものである。平均細孔径とは、粉末全体の細孔容積と比表面積から導き出した数値であり、粉末における細孔の平均値を示す。
表22から、平均細孔径が100μmを超えると、真空度が変化することにより、真空断熱体は急激に断熱性能が低下している。
この理由は、空気の平均自由行程よりも混合粉末の有する細孔径が大きいため、真空度が低くなると細孔内部で気体分子が衝突し、気体熱伝導が指数関数的に増加するためと考えられる。このように、真空度の変化に対して断熱性能が変化することを圧力依存性が高いという。圧力依存性を低くすることは真空断熱体を有する製品の信頼性を向上させる点において非常に重要である。このため、混合粉末の細孔径を制御することが必要となる。
実施例6の真空断熱体1では、平均細孔径を100μm以下に限定している。この結果、実施例6の真空断熱体1においては、空気の平均自由行程よりも大きな細孔は極わずかとなり、圧力依存性は低くすることができる。
実施例6における断熱箱体4は、上記真空断熱体1と硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材5と外箱6と内箱7によって構成されている。断熱箱体4の真空断熱体1は、内箱7または外箱6の内壁に取り付けてある。また、真空断熱体1の大きさは1.0m×0.5m×0.02mである。
前述のように実施例6の真空断熱体1は断熱性能が優れており、かつ圧力依存性が非常に低い。そのため、上記構成からなる断熱箱体4は長期間高い断熱性能が保たれており、この断熱箱体4を用いた冷蔵庫や冷凍庫は、外界の急激な温度変化によってコンプレッサーを過大に運転することがなく、冷蔵庫内の食品の品質の低下等の問題が解決されている。
以上のように、実施例6の真空断熱体1では、芯材2の気相容積率を60%以上に選択したので粉末同士の接触が少ない。この結果、実施例6の真空断熱体1では、粉末同士の接触を介して行われる固体熱伝導が低減し、高性能な断熱性能を有する。
また、実施例6の真空断熱体1は、有機粉末の平均粒径が150μm以下に選択しているため、独立気泡の発泡ウレタンフォーム粉砕品の適用が可能となる。即ち、発泡ウレタンフォームの独立気泡が残存して独立気泡内部のガスが拡散することによる真空度の悪化、及びその結果としての断熱性能の低下の問題は解決されている。このため、実施例6の真空断熱体1は、ウレタンフォーム廃材などを再利用することが可能となり、大幅な低コスト化を図ることができる。
また、実施例6の真空断熱体1は、有機粉末の嵩密度を150kg/m3以下に選択しているので、無機粉末の添加によって粉末同士が過度に接触することが無く断熱性能の向上が可能となる。
また、実施例6の真空断熱体1は、有機粉末と無機粉末の混合によって得られた混合粉末について、平均細孔径を100μm以下に選択している。このため、工業的に安価で容易に実施できる0.1mmHgの低い真空度において、細孔内部での気体分子の衝突が少なくなる。この結果、実施例6の真空断熱体1は、優れた断熱性能を得ることができるとともに、圧力依存性を低減することができる。
また、実施例6の断熱箱体4は、箱体によって形成される空間に発泡断熱材と上記真空断熱体1とを複層形式に形成している。このため、実施例6の断熱箱体4は、優れた断熱性能を長期間維持するものとなる。
発明はある程度の詳細さをもって好適な形態として説明したが、この好適形態の現開示内容は構成の細部において変化してしかるべきであり、各部品の組合せや配置は、以下に請求する発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得ると理解される。
産業上の利用の可能性
本発明の真空断熱体およびその真空断熱体を用いた断熱箱体は、冷蔵庫や冷凍庫などの断熱材として使用されるものである。、本発明を適用した冷蔵庫や冷凍庫などは断熱性能に優れ、軽量で低コストであるとともに、長年使用しても高い断熱性能を維持するものである。

Claims (27)

  1. 外装材中に芯材を充填してなる真空断熱体において、前記芯材が有機材料の粉末と無機材料の粉末からなり、前記有機材料の粉末の比表面積が実質的に20m 2 /g以下である真空断熱体。
  2. 前記芯材の有機材料の粉末としてプラスチックフォームの粉砕粉末を用いた請求項1記載の真空断熱体。
  3. 前記無機材料の粉末の比表面積が実質的に20m2/gを超える請求項1記載の真空断熱体。
  4. 前記芯材における前記無機材料の粉末の充填率が2重量パーセント以上、50重量パーセント以下である請求項1記載の真空断熱体。
  5. 前記有機材料の粉末のための表面改質材料として針状形状の結晶形態を有する無機材料の粉末を含有する請求項1記載の真空断熱体。
  6. 表面改質材料としての前記無機材料が実質的に珪酸カルシウム粉末である請求項5記載の真空断熱体。
  7. 珪酸カルシウム粉末を構成するSiO2/CaOのモル比が2以上、3以下である請求項6記載の真空断熱体。
  8. 珪酸カルシウム粉末が疎水化処理されてなる請求項6記載の真空断熱体。
  9. 前記有機材料の粉末が疎水化処理されてなる請求項5記載の真空断熱体。
  10. 前記有機材料の粉末が繊維材料との混合粒からなる請求項5記載の真空断熱体。
  11. 前記有機材料の粉末のための表面改質材料として少なくとも脂肪酸塩を含有する粉末を含む請求項1記載の真空断熱体。
  12. 表面改質材料としての前記脂肪酸塩が少なくともステアリン酸カルシウム粉末を含有する請求項11記載の真空断熱体。
  13. 表面改質材料として、シリカ粉末または珪酸カルシウム粉末およびステアリン酸カルシウム粉末を含有する請求項11記載の真空断熱体。
  14. 前記有機材料の粉末が摩砕によって得られた発泡プラスチック粉砕粉末を含む請求項11記載の真空断熱体。
  15. 前記有機材料の粉末が針状形状の結晶形態を有する請求項1記載の真空断熱体。
  16. 前記外装材中に吸着剤を有し、前記吸着剤が窒素ガスの分子径よりも5%〜20%大きい細孔を有する無機材料の粉末である請求項1記載の真空断熱体。
  17. 前記芯材の一つの粉末として少なくとも反射率が0.9以上の粉末を含む請求項1記載の真空断熱体。
  18. 前記無機材料の粉末湿式シリカ粉末を含む請求項1記載の真空断熱体。
  19. 前記芯材の気相容積率が60%以上である請求項1記載の真空断熱体。
  20. 前記有機材料の粉末の平均粒径が実質的に150μm以下である請求項1記載の真空断熱体。
  21. 前記有機材料の粉末の嵩密度が実質的に150kg/m3以下である請求項1記載の真空断熱体。
  22. 前記有機材料の粉末と無機材料の粉末からなる芯材の平均細孔径が実質的に100μm以下である請求項1記載の真空断熱体。
  23. 外箱と、
    内箱と、
    前記外箱と前記内箱によって形成される空間に充填された発泡断熱材と、
    前記外箱または前記内箱の内壁に取り付けられ、芯材を有する真空断熱体とを具備し、
    前記芯材が有機材料の粉末と無機材料の粉末からなり、前記有機材料の粉末の比表面積が実質的に20m 2 /g以下であることを特徴とする断熱箱体。
  24. 前記有機材料の粉末のための表面改質材料として針状形状の結晶形態を有する無機材料の粉末を含む請求項23記載の断熱箱体。
  25. 前記有機材料の粉末のための表面改質材料として少なくとも脂肪酸塩を含有する粉末を含む請求項23記載の断熱箱体。
  26. 前記有機材料の粉末が針状形状の結晶形態を有する請求項23記載の断熱箱体。
  27. 前記芯材の気相容積率が60%以上である請求項23記載の断熱箱体。
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