JP3750880B2 - 全輪駆動式車両 - Google Patents

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  • One-Way And Automatic Clutches, And Combinations Of Different Clutches (AREA)
  • Arrangement And Driving Of Transmission Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、前後輪を駆動する自動2輪車のような全輪駆動式車両に関する。
【0002】
【従来の技術】
全輪駆動形式の自動2輪車は公知であり、常時前後輪を駆動するフルタイム駆動と、前輪駆動経路に駆動形式切換クラッチを設けて前輪側への駆動力伝達を随時断続するパートタイム駆動がある。
【0003】
このようなパートタイム駆動の自動2輪車として構成された従来例の一つとして、特開平3−220083号がある。
【0004】
この自動2輪車は、エンジンの動力をその出力軸からチェーンを介して平行な取出軸へ伝達し、この軸端に設けられた電磁クラッチを介して前輪側へ伝達し、さらに前輪のハブに設けられたワンウエイクラッチを介して前輪を駆動するようになっている。
【0005】
さらに、このような電磁クラッチに代えてドッグ駆動形式切換クラッチを設けたパートタイム駆動の自動2輪車も公知であり、これらの駆動形式切換クラッチはいずれも手動操作で切り換えるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動2輪車における前後輪駆動の最も大きな利点は走破性の向上であり、これが最も有効に得られるのは低速走行時である。
【0007】
すなわち、高速走行時には、フリクションが増大し、パワーロスや燃費悪化並びに騒音増大等の現象が生じ、前後輪駆動よりもむしろ後輪単独駆動の方が有利になるからである。
【0008】
したがって、自動2輪車の場合はパートタイム駆動の方が使用勝手上有利であるが、前記従来例のように駆動形式切換クラッチを手動操作で切り換えなければならないものでは、その操作が著しく煩わしくなる。
【0009】
そのうえ、ドッグ駆動形式切換クラッチを用いた場合は、断続時のショックが大きいため、操作時にはその都度走行を停止することが望ましく、操作が不便である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本願発明は、共通のエンジンにより前輪及び後輪を駆動するとともに、前輪駆動経路に前輪側への駆動力伝達を断続することにより、前後輪駆動と後輪単独駆動とを切り換えるための駆動形式切換クラッチを設けた全輪駆動式車両において、
前記車両は鞍乗り型車両であって、前記駆動形式切換クラッチは、車速感応手段を備え、所定の車速以下のときは前後輪駆動とし、所定の車速より大きくなったときは後輪単独駆動となるように、車速に応じて自動的に切り換えるとともに、所定の車速以下のときに動力伝達するよう弾性部材で弾性付勢された摩擦板を備え、所定の車速を越えたときは前記弾性部材の付勢力に抗して前記摩擦板の動力伝達を遮断するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この駆動形式切換クラッチをエンジンの出力軸近傍へ設けることができる。
【0012】
また、前輪のハブにワンウエイクラッチを設け、前輪駆動経路にエンジンの動力が伝達されたときのみワンウエイクラッチを介して前輪と前輪駆動経路を接続することができる。
【0013】
このとき、駆動形式切換クラッチを自動遠心クラッチや電磁クラッチにすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は、本願発明が適用された自動2輪車の駆動系統の原理を示す図であり、低速走行時と高速走行時を併記したものである。図2は車体側面における駆動系統を示す図、図3は駆動形式切換クラッチの断面図である。
【0015】
図2に明らかなように、前輪1はフロントフォーク2に支持され、フロントフォーク2の上端部にはハンドル3が取付けられている。
【0016】
フロントフォーク2の中間部でフロントフェンダ4の上方に設けられ方向転換ギヤケース5の前面にはフロントキャリヤ6が取付けられている。
【0017】
フロントフォーク2を支持する車体フレーム(後述)上には、燃料タンク7及びその背面から斜め上りに後方へ延びる荷台8が支持され、荷台8の中間部上方にシート9が支持されている。
【0018】
車体フレームは、フロントフォーク2を回動自在に支持するヘッドパイプ10をガセット11を介して前端部へ取付け、かつ前後方向へ延びるメインパイプ12と、その後端部に左右合せで一体化されたボデイ部13とを備える。
【0019】
ボデイ部13にはエンジン14が支持され、その吸気通路にはキャブレタ15を介してエアクリーナ16が接続され、このエアクリーナ16はメインパイプ12へ支持されている。
【0020】
さらに、ボデイ部13の後部にはリヤスイングアーム17が回動自在に支持され、その後端部には後輪18が支持され、ボデイ部13の後端上部とリヤスイングアーム17の後部との間にはリヤクッション19が取付けられている。
【0021】
この自動2輪車は前後輪を駆動する全輪駆動式であり、前輪駆動系は、エンジン14に設けられた前輪動力取出軸20から、メインパイプ12内へ回動自在に支持されているドライブシャフト21及びジョイント22を介して方向転換ギヤケース5内の方向転換ギヤ列23へ伝達され、さらにチェーン24で前輪1の車軸25を同心とするフロントスプロケット26へ伝達される。
【0022】
車軸25とフロントスプロケット26はワンウエイクラッチ27を介して連結され(図1参照)、前輪駆動系へ動力が伝達されたときは、フロントスプロケット26は車軸25と一体に回転して前輪1へ動力を伝達し、前輪駆動系へ動力が伝達されないときは、フロントスプロケット26が車軸25と分離され、車軸25及び前輪1が前輪駆動系と無関係に回転するようになっている。
【0023】
なお、前輪サスペンションは、一端に車軸25を支持したリンクアーム28の他端をフロントフォーク2の下端部へピボット28aで回動自在に支持し、リンクアーム28の中間部とフロントフォーク2のピボット28a上方位置とへ取付けられたフロントクッション29で構成される。
【0024】
後輪駆動系は、エンジン14のミッションにおけるカウンタ軸である出力軸30の一端に設けられている出力スプロケット31と後輪スプロケット32間にチエーン33を巻き掛けることにより構成されている。
【0025】
図1に明らかなように、出力軸30は、一端に出力スプロケット31を有するとともに、中間部に設けた第1ギヤ34が前輪動力取出軸20上の第2ギヤ35と噛み合う。
【0026】
前輪動力取出軸20は出力軸30と平行し、進行方向左側軸端部へ第2ギヤ35が取り付けられ、他端側は外軸36の内側へ挿入されて内外二重軸になっている。
【0027】
この両軸の進行方向右側における軸端部間に駆動形式切換クラッチ37が設けられている。
【0028】
外軸36の外周部に設けられた第1ベーベルギヤ38は、第2ベーベルギヤ39と噛み合い、この第2ベーベルギヤ39はドライブシャフト21の軸端部に取付けられ、その回転中心すなわちドライブシャフト21の中心軸線は、車体中心と一致するようになっている。
【0029】
図3に明らかなように、駆動形式切換クラッチ37は、前輪動力取出軸20に連結されたインナ40と外軸36に連結されたアウタ41との間に設けた複数のインナ側摩擦板42及びアウタ側摩擦板43を交互に組み合わせ、さらにクラッチスプリング44により所定のセット荷重で摩擦板42、43を圧接した公知の構造である。
【0030】
インナ側摩擦板42はインナ40に形成されたスプライン溝40aに沿って軸方向移動自在であり、アウタ側摩擦板43もアウタ41の切り溝41aに沿って軸方向移動自在である。
【0031】
この駆動形式切換クラッチ37は、前輪動力取出軸20と外軸36間にクラッチスプリング44のセット荷重より大きなトルク差が発生すると、摩擦板42、43の間に滑りを生じて前輪動力取出軸20から外軸36へのトルク伝達を抑制し、前後輪間の回転差を吸収する差動機構を兼ねている。
【0032】
さらに、インナ40のインナ側摩擦板42近傍には、速度に応じて拡開する遠心ウエイト45が軸46で取り付けられ、その一端部に突起状のリリースカム47が形成され、インナ側摩擦板42に形成された凹部48へ嵌合している。
【0033】
リリースカム47は、遠心ウエイト45の拡開につれて軸46を中心に回動して、凹部48を次第にクラッチスプリング44の押し圧方向と反対方向へ移動させるように作用する。
【0034】
凹部48はインナ側摩擦板42のうち、最も遠心ウエイト45に近いものの側面に遠心ウエイト45側へ突出して形成され、その突出端部にはクラッチスプリング44の一端が当接されている。
【0035】
図3は低速走行時と高速走行時の各状態を上下に併記した図であり、上側の低速走行状態では、遠心ウエイト45は拡開せず、リリースカム47が凹部48の移動を規制しないので、インナ側摩擦板42は自由に移動でき、クラッチスプリング44に押されてアウタ側摩擦板43と摩擦結合した状態にある。
【0036】
一方、下側の高速走行状態では、遠心ウエイト45の拡開により、リリースカム47が回動して凹部48をクラッチスプリング44の弾力に抗して移動させるため、インナ側摩擦板42とアウタ側摩擦板43の結合が解かれた状態になる。
【0037】
したがって、駆動形式切換クラッチ37は自動遠心式クラッチを構成し、所定の速度で自動的に断続する。この断続切り換えの速度は、クラッチスプリング44の強さと遠心ウエイト45の質量及び構造等によって任意に設定できる。
【0038】
次に、本実施形態の作用を説明する。まず、低速走行時では、図1及び3に明らかなように、自動遠心式クラッチである駆動形式切換クラッチ37が自動的に接続状態になるため、エンジン14の動力は、前輪側へ伝達され、ワンウエイクラッチを介して前輪が駆動される。
【0039】
したがって、低速走行時では前後輪駆動による走破性の向上を十分に享受できる。しかも、駆動形式切換クラッチ37は自動遠心式クラッチのみならず差動機構を兼ねているので、差動機構を別体に設ける必要がなく、装置全体をコンパクトにできる。
【0040】
所定速度以上の高速走行時では、自動遠心式クラッチである駆動形式切換クラッチ37が自動的に断絶状態になるので、前輪側への動力伝達が断たれ、後輪単独駆動になる。
【0041】
このため、高速走行によるフリクション増大が生じても、前後輪駆動を続けるときのような、パワーロスや燃費悪化並びに騒音増大等の現象を防止できる。
【0042】
しかも、このような駆動形式切換クラッチ37の断続切り換えは、走行中に設定速度に応じて自動的に行われるので、駆動形式切換クラッチ操作の度に停止するような煩わしさが無くなり、快適な走行が可能になる。
【0043】
そのうえ、駆動形式切換クラッチ37を機械式の自動遠心式駆動形式切換クラッチを用いたため、最もシンプルでかつ低コストにすることができる。
【0044】
また、比較的重量のある駆動形式切換クラッチ37をエンジン14の出力軸30近傍に配設したので、前輪側駆動系における非駆動時の回転しない部分を可及的に長くでき、動力ロスを最小にできるとともに、マスの集中を図って走行性能を向上させることができる。
【0045】
そのうえ、車軸25とフロントスプロケット26をワンウエイクラッチ27を介して連結したので、前輪駆動系へ動力が伝達されないときは、フロントスプロケット26が車軸25と分離され、車軸25及び前輪1が前輪駆動系と無関係に回転し、前輪駆動系を回転させないので、この点でも動力ロスが少なくなる。
【0046】
図4は駆動形式切換クラッチ37を進行方向左側へ設けた変形例であり、この例では、 前輪動力取出軸20の一端に第1ベーベルギヤ38を設けるとともに、外軸36には第2ギヤ35を設けてある。
【0047】
このようにすると、前輪動力取出軸20全体を短くでき、差動機構がコンパクトになると同時に重量軽減に役立つ。
【0048】
また、前輪動力取出軸20が短くなることにより、その延長上に他種部品の配設スペースを確保でき、スペース効率が向上する。なお、駆動形式切換クラッチ37など他の構成は前の例と同じであり、共通部を同一符号で示す(次の例も同様)。
【0049】
図5は駆動形式切換クラッチ37をエンジン14の出力軸30に直結して設けた例であり、この場合、外軸36に第1ギヤ34を設け、これと噛み合う第2ギヤ35を前輪動力取出軸20の進行方向左側端部に設け、他端に第1ベーベルギヤ38を設けてある。
【0050】
このようにすると、エンジン回りをよりコンパクトにでき、かつマスの集中もより強くなる。
【0051】
なお、本願発明は種々変形可能であり、例えば、自動遠心式クラッチに代えて電磁クラッチを用いることもできる。この場合には、適宜構造の速度センサにより速度を検知し、マイクロコンピュータなどの電子又は電気的制御手段を介して自動的に断続制御させることができる。
【0052】
図6はこのような電磁クラッチを用いた場合の図3に相当する図であり、エンジン14の出力軸30等の周囲に設けられた速度センサ50からマイクロコンピュータ式等のコントローラ51へ速度検出信号を出入し、所定の速度になるとコントローラ51がソレノイド52を励磁して、凹部48をクラッチスプリング44の弾力に抗して移動させることにより、駆動形式切換クラッチ37が自動的に断絶状態になる。
【0053】
なお、この例では駆動形式切換クラッチ37の構造として、ソレノイド52を除き、図3のものを利用している。但し、電磁クラッチとしてはこのような構造に限定されず、種々の公知構造を利用できる。また、速度センサ50についても同様であり、かつ検出位置も車軸等の適宜な場所が可能である。
【0054】
また、差動機構を駆動形式切換クラッチと別に設けることもでき、さらにこの差動機構としてワンウエイクラッチ、ビスカスカップリング等の公知構造を採用できる。そのうえ、本願発明を自動3輪車又は4輪車にも適用できる。
【0055】
【発明の効果】
本願発明に係る鞍乗り型の全輪駆動式車両における駆動形式切換クラッチは、所定の車速以下のときは前後輪駆動とし、所定の車速より大きくなったときは後輪単独駆動となるように、車速に応じて自動的に切り換える。また、弾性部材で弾性付勢された摩擦板を備え、所定の車速以下のときに動力伝達し、所定の車速を越えたときは弾性部材の付勢力に抗して摩擦板の動力伝達を遮断する。
【0056】
したがって、クラッチを切り換える度に手動操作したり、場合によってはわざわざ停止するような煩わしさがないので、快適な走行を実現できる。しかも、高速走行によるフリクション増大が生じても、前後輪駆動を続けるときのような、パワーロスや燃費悪化並びに騒音増大等の現象を防止できる。
【0057】
この駆動形式切換クラッチをエンジンの出力軸近傍へ設けると、前輪側駆動系における非駆動時の回転しない部分を可及的に長くでき、動力ロスを最小にできるとともに、マスの集中を図って走行性能を向上させることができる。
【0058】
また、前輪のハブにワンウエイクラッチを設け、前輪駆動経路にエンジンの動力が伝達されたときのみワンウエイクラッチを介して前輪と前輪駆動経路を接続すると、前輪駆動系へ動力が伝達されないときは、前輪が前輪駆動系と無関係に回転して前輪駆動系を回転させないので、この点でも動力ロスを少なくできる。
【0059】
また、この駆動形式切換クラッチを自動遠心クラッチとすれば、最もシンプルかつ安価に製造できる。
【0060】
そのうえ、駆動形式切換クラッチを電磁クラッチで構成すれば、電気又は電子式のクラッチ断続制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願発明の駆動系を原理的に示す図
【図2】 本願発明の適用された自動2輪車の外観側面に駆動系を示す図
【図3】 クラッチの断面図
【図4】 別形態の駆動系を原理的に示す図
【図5】 さらに別形態の駆動系を原理的に示す図
【図6】 電磁クラッチを使用した他の形態における図3に相当する図
【符号の説明】
1:前輪、2:フロントフォーク、14:エンジン、20:前輪動力取出軸、21:ドライブシャフト、30:出力軸(カウンタ軸)、37:駆動切換クラッチ44:クラッチスプリング、45:遠心ウエイト、47:リリースカム

Claims (5)

  1. 共通のエンジンにより前輪及び後輪を駆動するとともに、前輪駆動経路に前輪側への駆動力伝達を断続することにより、前後輪駆動と後輪単独駆動とを切り換えるための駆動形式切換クラッチを設けた全輪駆動式車両において、
    前記車両は鞍乗り型車両であって、前記駆動形式切換クラッチは、車速感応手段を備え、所定の車速以下のときは前後輪駆動とし、所定の車速より大きくなったときは後輪単独駆動となるように、車速に応じて自動的に切り換えるとともに、所定の車速以下のときに動力伝達するよう弾性部材で弾性付勢された摩擦板を備え、所定の車速を越えたときは前記弾性部材の付勢力に抗して前記摩擦板の動力伝達を遮断するように構成されていることを特徴とする全輪駆動式車両。
  2. 前記駆動形式切換クラッチをエンジンの出力軸近傍へ設けたことを特徴とする請求項1記載の全輪駆動式車両。
  3. 前輪のハブにワンウエイクラッチを設け、前輪駆動経路にエンジンの動力が伝達されたときのみワンウエイクラッチを介して前輪と前輪駆動経路を接続することを特徴とする請求項1記載の全輪駆動式車両。
  4. 前記駆動形式切換クラッチが自動遠心クラッチであることを特徴とする請求項1記載の全輪駆動式車両。
  5. 前記駆動形式切換クラッチが電磁クラッチであることを特徴とする請求項1記載の全輪駆動式車両。
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