JP3747498B2 - 多孔質蒸着材料及びその製造方法 - Google Patents

多孔質蒸着材料及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品や医薬品等の包装材料として有用な、ガスバリア性ケイ素酸化物蒸着層を有する包装材料を製造する際に使用する蒸着材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、食品や医薬品等の包装材料に対しては、内容物の変質を防止することが求められている。例えば、食品用包装材料に対しては、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、更に風味や鮮度を保持できることが求められ、また、無菌状態での取扱が必要とされる医薬品用包装材料に対しては、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能を保持できることが求められている。
【0003】
ところで、このような内容物の変質は、包装材料を透過する酸素や水蒸気、あるいは内容物と反応するような他のガスにより引き起こされている。
【0004】
従って、食品や医薬品等の包装材料に対しては、酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが求められており、そのような性質を有する包装材料として、ケイ素酸化物を高分子フィルム基材に蒸着させたものが知られており、高い透明性と高いガスバリア性との点から一酸化ケイ素蒸着層を有するものが注目されている。
【0005】
このようなケイ素酸化物が蒸着されたフィルム材料は、蒸着材料であるSiO等のケイ素酸化物を抵抗加熱して高分子フィルムに真空蒸着させることにより製造されているが、ここで用いられている蒸着材料のSiO等のケイ素酸化物は、SiとSiO2とを原料として真空蒸着法により製造されているために、以下の(1)及び(2)に示すような欠点を有している。
【0006】
(1)真空蒸着法は大量生産に適した製造方法ではないので、SiO蒸着材料の製造コストが高くなるという問題がある。
【0007】
(2)真空蒸着法により製造されたSiOは真密度に非常に近い密度を有し、非常に緻密な構造となっている。このため、この蒸着材料を蒸着させてフィルム材料を製造した場合には、蒸着の際の加熱による熱衝撃や内部から発生するガスの圧力などにより、気化していない蒸着材料が、高温の微細な粒のまま飛散する現象(スプラッシュ現象)が生じやすいという問題がある。このような高温の微細粒が蒸着基材である高分子フィルムに衝突した場合には、蒸着したSiO薄膜にピンホールが生じて、そのSiO薄膜を有する包装材料のガスバリア性が低下するという問題や、蒸着させた後に包装材料をロールに巻き取る際に、その微細粒が異物として包装材料の間に巻取られ、最終的に製品中に混入するという問題もある。また、高分子フィルム基材に貫通孔を生じさせるという問題も生じる。
【0008】
また、近年では、坩堝や加熱ヒーターなどを使用する従来の抵抗加熱蒸着法に代えて、蒸着材料を局部的に急速に加熱でき、しかも蒸着材料の堆積速度を速め、そのため巻取蒸着加工速度を向上させて包装材料の生産性を高めることができる電子ビーム加熱蒸着法が採用される傾向があるが、この電子ビーム加熱蒸着法の場合、抵抗加熱蒸着法の場合に比べ、蒸着材料が受ける熱衝撃のレベルが格段と高くなるので、上記(2)の問題がいっそう顕著に現れるようになる。
【0009】
そこで、従来このような問題を解決するために、例えば、蒸着材料であるSiOを蒸着法により予めSiとSiO2とから製造しておくのではなく、SiとSiO2とを乾式で混合して加圧成形し焼結したものをSiO用の蒸着材料とすることが提案されている(特開昭63−310961号公報)。また、その際にケイ素と酸素との原子比(Si/O)を、SiO(原子比)=1/1を基準とした場合に酸素が過剰となるように1/1.2〜1/1.7に調整することも提案されている(特開平7−34224号公報)。あるいは、Si粉末とSiO2粉末とケイ酸ナトリウムなどの塩基性アルカリ金属化合物と水などの媒体とを混合して粘土状混合物を作り、発生する水素ガスを発泡に利用しながら成形し、乾燥した後で焼成したものをSiO用の蒸着材料とすることが提案されている(特開平4−353531号公報、特開平4−353532号公報)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭63−310961号公報や特開平4−353531号公報又は特開平4−353532号公報に記載されたように製造された蒸着材料は、焼結法を利用しているために比較的低コストで製造できるが、(2)の問題に関しては、生産性を向上させる目的で電子ビームの出力レベルを従来以上にあげた場合、十分な程度にまでスプラッシュ現象を抑制することができないという問題があった。
【0011】
特に、特開平4−353531号公報及び特開平4−353532号公報に記載された蒸着材料の場合、蒸着材料中にアルカリ金属が残留し、ガスバリア性蒸着膜の性能に悪影響を与えるという問題もあった。更に、発泡により多孔質化した蒸着材料は大きな気孔を有するが、微視的には、なお非気孔部分に緻密相が存在するので、その緻密相におけるスプラッシュ現象の発生を十分に抑制することができないという問題もあった。
【0012】
更に、特開平7−34224号公報に記載されたようにSiに対し酸素を過剰とすると、蒸着時に二酸化ケイ素が一酸化ケイ素と酸素ガスとに分解し、その酸素ガスにより真空蒸着装置内の真空度が低下し、意図した蒸着速度を維持できなくなり、蒸着膜密度の低下や蒸着膜のガスバリア性の低下を引き起こすという問題があった。
【0013】
本発明は、以上の従来技術の問題を解決しようとするものであり、高分子フィルムなどの基材上に蒸着させてガスバリア性の包装材料を製造するための、金属ケイ素とケイ素酸化物とを含有する蒸着材料であって、生産性向上のために高い出力レベルの電子ビーム加熱蒸着法を利用した場合でもスプラッシュ現象の発生を抑制でき、低コストでガスバリア性包装材料を製造することを可能とする蒸着材料を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の密封気孔率と嵩密度とを有し、しかもアルカリ金属とアルカリ土類金属との含有量を低減させた蒸着材料が上述の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、金属ケイ素及びケイ素酸化物を含有する多孔質蒸着材料において、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が1重量%以下であり、密封気孔率が10%以下であり、嵩密度が真密度の30〜70%でありケイ素と酸素との原子比(Si/O)が0.83以上であり、且つ該ケイ素酸化物が二酸化ケイ素であり、その二酸化ケイ素の20%はX線的に石英型の結晶構造を有していることを特徴とする多孔質蒸着材料を提供する。また、本発明は、この多孔質蒸着材料を用いて、高分子フィルム上に真空蒸着法によりガスバリア性蒸着膜を設けることを特徴とするガスバリア性包装材料の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、金属ケイ素及びケイ素酸化物を含有し、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が1重量%以下であり、密封気孔率が10%以下であり、嵩密度が真密度の30〜70%であり、且つケイ素と酸素との原子比(Si/O)が0.83以上である多孔質蒸着材料の製造方法において、金属ケイ素及びケイ素酸化物の粉末とシリカゾル又はアルコキシシランと溶媒とを混合して造粒し、乾式成形し、焼成することを特徴とする多孔質蒸着材料の製造方法を提供する。
【0017】
更に、本発明は、金属ケイ素及びケイ素酸化物を含有し、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が1重量%以下であり、密封気孔率が10%以下であり、嵩密度が真密度の30〜70%であり、且つケイ素と酸素との原子比(Si/O)が0.83以上である多孔質蒸着材料の製造方法において、金属ケイ素及びケイ素酸化物の粉末とシリカゾル又はアルコキシシランと溶媒とを含有するスラリーを湿式成形し、その成形の際にゲル化させ、得られた成形物を乾燥し焼成することを特徴とする多孔質蒸着材料の製造方法を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の金属ケイ素とケイ素酸化物を含有する蒸着材料は多孔質構造を有する。従って、本発明の蒸着材料は、電子ビームによる熱衝撃に対して破壊されにくくなる。即ち、耐熱衝撃性が向上し、スプラッシュ現象が抑制されたものとなる。また、一般に、緻密構造よりも多孔質構造の方が熱伝導性が低いので、蒸着の際に予め予備加熱しておけば、蒸着材料の移動時に温度の大幅な低下を防止することができ、急激な熱変化を抑制することができる。更に、蒸着材料が多孔質構造を有すると、電子ビーム加熱による蒸着の際に、粒子間の焼結やガラス相の生成を抑制することができる。また、、上述のように、スプラッシュ現象が抑制されているので、電子ビーム加熱による蒸着の際には、蒸着材料の表層に高融点物が濃縮されて残留層が形成されるので、これによっても、電子ビーム加熱の際の焼結による緻密化や溶融層の生成を抑制することができる。このため、本発明の蒸着材料は、蒸発速度が低下することなく、その多孔質構造を保持することができる。このように、本発明の蒸着材料によれば、蒸着材料内部からの蒸気の突沸などによるスプラッシュ現象を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の蒸着材料の密封気孔率は、10%以下、好ましくは5%以下である。これは、密封気孔率が10%を超えると、蒸着材料の内部から発生したガスの通過抵抗が大きくなり、しかも微視的な緻密相が増加するので、十分にスプラッシュ現象を抑制することができない。
【0021】
また、本発明の蒸着材料の嵩密度は、真密度の30〜70%、好ましくは40〜60%である。嵩密度が真密度の30%未満であると、蒸着材料が大きな容積を必要とするので、限られた坩堝容積に収容できなくなるおそれがある。また、嵩密度が真密度の70重量%を超えると、材料が緻密となり、急激な加熱による熱衝撃に絶えられなくなるおそれがある。
【0022】
なお、蒸着材料の気孔の径を大きくすると、その材料のある領域においては気孔率を向上させることができるが、微視的には、なお緻密相が存在し、材料が不均一な状態となり、スプラッシュ現象を抑制できにくくなる。従って、蒸着材料の最大気孔径は1mm以下、好ましくは0.5mm以下として材料全体を均質な多孔質構造とすることが好ましい。
【0023】
本発明の蒸着材料を構成する物質(原料)は、前述したように金属ケイ素とケイ素酸化物である。ケイ素酸化物としては、二酸化ケイ素を好ましく使用することができる。この場合、ケイ素(Si)と酸素(O)との原子比(Si/O)が0.83以上となるようにする。これにより、SiO2の分解による酸素ガスの発生を抑制することができる。しかし、ケイ素の比率が大き過ぎると、蒸着材料表面に残存する高融点の蒸発残留層の量が過度に増加し、蒸着ガスの通過を妨げるようになり、蒸発速度の低下が生じるおそれがある。またスプラッシュ現象が頻発するおそれも生ずる。従って、ケイ素/酸素の原子比は、好ましくは1/0.5〜1/1.2、より好ましくは1/0.8〜1/1.15とする。
【0024】
また、ケイ素酸化物として使用する二酸化ケイ素としては、その20%がX線的に石英型の結晶構造を有しているものを使用することが好ましい。これにより蒸発残留層の高融点化と良好な多孔質構造の形成という効果が得られる。
【0025】
なお、これらの金属ケイ素やケイ素酸化物は、粉末状で使用することが好ましい。この場合、平均粒径はこれらの成形方法などに応じて適宜定まるが、一般に50μm以下の径のものが特に好ましい。
【0026】
また、本発明の蒸着材料は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を1重量%以下に抑制したものである。このため、蒸着層中のアルカリ金属等の含有量を大きく低下させて、ガスバリア性蒸着膜の性能を低下させないようにすることができる。
【0027】
本発明の多孔質蒸着材料は、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの有機バインダーを利用して成形し、脱脂焼成して多孔質化することにより製造することができる。この場合、粒子径、粒子形態、造粒径等を適宜調整し、更に成形条件、乾燥条件、焼成条件等を適宜選択する。但し、特開平4−353531号公報や特開平4−353532号公報に記載されたような塩基性アルカリ金属化合物を使用して発泡成形により製造することは好ましくない。これは、蒸着材料中のアルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量が1重量%を大きく超えてしまうからである。
【0028】
本発明の多孔質蒸着材料は、上述したように種々の方法で製造することができるが、アルカリ金属やアルカリ土類金属の含有量を実質的になくすことができ、気孔率と密封気孔率とを意図した範囲に設定しやすいという点から、以下にのべつような二つの方法で製造することが特に好ましい。
【0029】
本発明の第1の製造方法においては、まず金属ケイ素及びケイ素酸化物の粉末を含有するスラリーを常法に従って調製する。ここで、スラリー化する際に使用する媒体としては、水、アルコールあるいはこれらの混合媒体を使用することができる。
【0030】
次に得られたスラリーを鋳型成形やドクターブレード成形などの湿式成形法により成形するが、この成形の際にスラリーをゲル化させることが必要である。ゲル化させることにより、3次元網目構造が形成され、その構造が焼成後もある程度保持できる。このようにゲル化し、それと共に原料粒子の大きさ、使用量、媒体の量と種類、ゲル化時間等を適宜調整することにより、10%以下の密封気孔率と真密度の30〜70%の嵩密度を蒸着材料に実現することができる。
【0031】
なお、スラリーのゲル化を行う際にはバインダーとして、シリカゾル又はテトラエトキシシランなどのアルコキシシランを使用することができる。これにより、塩基性アルカリ金属化合物を使用することなく低温下で金属ケイ素とケイ素酸化物の粉末を十分に結合させることができる。特に、シリカゾルを使用した場合には、それらが金属ケイ素の表面を保護する機能を有するので、大気雰囲気中での焼成も可能となり、より製造コストを下げることができる。
【0032】
なお、シリカゾルによるゲル化は、スラリーに酸を添加してゾルを不安定化することにより行うことができる。また、テトラエトキシシランなどのアルコキシシランによるゲル化は、それらの加水分解と競争的に生じる重縮合がポキシロキサンを形成することにより行うことができる。
【0033】
次にゲル化した成形物を、乾燥し200〜1500℃程度の温度で焼成する。これにより、本発明の蒸着材料が得られる。
【0034】
また、本発明の第2の製造方法においては、スラリーを湿式成形してゲル化させるのではなく、金属ケイ素及びケイ素酸化物の粉末と造粒用バインダーであるシリカゾル又はアルコキシシランと溶媒とを混合して造粒し、乾式成形することを特徴としており、それ以外は第1の製造方法と同様である。ここで、造粒方法や乾式成形方法は公知の方法を採用することができる。このように造粒する際にもバインダーとしてシリカゾル又はアルコキシシランを使用することにより、低温且つ大気雰囲気下での焼成処理が可能となる。
【0035】
このようにして得られる本発明の蒸着材料は、従来の蒸着材料と同様に真空蒸着法に適用することができるが、特に従来の蒸着材料に対して適用することが困難であった電子ビーム加熱蒸着法に対しても、スプラッシュ現象を生じさせることなく適用することができる。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0037】
実施例1〜4
Si粉末(50μm以下の径を有する粉末が95%以上)、SiO2粉末(50μm以下の径を有する粉末が95%以上)、平均粒径10nmのシリカゾル、及び水を用いて、焼成後の気孔率、密封気孔率、嵩密度及びケイ素と酸素との原子比(Si/O)が表1に示す数値となるように混合造粒し、プレス成形した後に、10℃/分の速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間焼成することにより蒸着材料を得た。得られた蒸着材料の気孔率、密封気孔率、及び真密度に対する嵩密度の割合を、幾何学的手法とアルキメデス法とにより測定した。その結果を表1に示す。
【0038】
また、蒸着材料中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を蛍光X線分析法により測定した。その結果を表1に示す。
【0039】
比較例1及び2
焼成後の気孔率、密封気孔率、嵩密度及びケイ素と酸素との原子比(Si/O)が表1に示す数値となるように、実施例1と同様の操作に従って、比較例1及び比較例2の蒸着材料を製造した。また、蒸着材料中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を表1に示す。
【0040】
比較例3及び4
焼成後の気孔率、密封気孔率、嵩密度及びケイ素と酸素との原子比(Si/O)が表1に示す数値となるように、Si粉末(50μm以下の径を有する粉末が95%以上)、SiO2粉末(50μm以下の最大径を有する粉末が95%以上)、ケイ酸ナトリウム、及び水を用いてスラリーを調製し、このスラリーを型に流し込み、発泡成形した。この成形物を乾燥した後、1200℃で1時間焼成することにより比較例3及び4の蒸着材料を製造した。また、蒸着材料中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量を表1に示す。
【0041】
(評価)
電子ビーム加熱方式の巻取式蒸着装置を用いて、実施例及び比較例の蒸着材料を、20m/分の速度で巻き取られている12μm厚のポリエステルフィルムに、60nm厚のSiOが蒸着するように堆積速度100nm/分で真空蒸着させ、ガスバリア性包装材料を得た。同様に、200m/分の速度で流れている12μm厚のポリエステルフィルムに、60nm厚のSiOが蒸着するように堆積速度1000nm/分で真空蒸着させ、ガスバリア性包装材料を得た。
【0042】
これらの蒸着の際のスプラッシュ現象の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0043】
スプラッシュ現象評価基準
ランク 状態
◎ : 全くスプラッシュ現象が観察されない場合
○ : スプラッシュ現象がわずかに観察されたが実用上全く問題がない場合
△ : スプラッシュ現象が観察された場合
× : スプラッシュ現象が非常に多く観察され、実用に供せない場合
【0044】
次に、堆積速度1000nm/分で真空蒸着させることにより得られたガスバリア性包装材料の酸素バリア性に関し、その酸素透過度[cc/cm2・atm・24hr]を酸素透過度測定装置(MOCON OXTRAN 10/50A,モダンコントロール社製)を用いて25℃−100%RH雰囲気の条件で測定した。また、水蒸気バリア性に関し、その水蒸気透過度[g/cm2・atm・24hr]を水蒸気透過度測定装置(PERMATORAN W6, モダンコントロール社製)を用いて40℃−90%RH雰囲気の条件で測定した。得られた結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0003747498
【0046】
表1からわかるように、実施例1〜4の蒸着材料は、非常に高い蒸発速度(電子ビームの出力レベルが高い場合)で蒸着された場合でも、スプラッシュ現象は観察されず、得られた包装材料のガスバリア性も良好であった。
【0047】
一方、比較例1の蒸着材料は、嵩密度が大きく真密度に近いために、スプラッシュ現象が観察された。また、得られた包装材料のガスバリア性も低下していることがわかる。比較例2の蒸着材料は、ケイ素に対して酸素が大過剰に含まれているために、蒸着の際に酸素ガスが発生し、安定したケイ素酸化物の蒸着が困難となり、スプラッシュ現象が発生し、ガスバリア性も大きく低下した。比較例3の蒸着材料は、ナトリウムの含有量が非常に高いために、特に高速蒸着の場合にスプラッシュ現象が多発した。比較例4の蒸着材料は、比較例3の場合と同様にナトリウムの含有量が非常に高く、しかも密封気孔率の割合が高過ぎるために、スプラッシュ現象が基材に貫通孔が発生してしまうような激しいスプラッシュ現象が発生した。
【0048】
実施例5
モル比1:1のSi粉末(50μm以下の径を有する粉末が95%以上)、SiO2粉末(50μm以下の径を有する粉末が95%以上)、平均粒径10nmのシリカゾル、及び水を用いて固形分50%のスラリーを調製した。
【0049】
次に、このスラリーに塩酸を添加し、そのpHを5〜6に調整し、型に流し込み、数時間放置して十分にゲル化した。このゲル化物を乾燥した後、10℃/分の速度で500℃まで昇温し、その温度で1時間焼成することにより蒸着材料を得た。この材料の気孔率、密封気孔率、及び真密度に対する嵩密度の割合は実施例1の蒸着材料とほぼ同様の数値を示した。また、アルカリ金属とアルカリ土類金属の含有量も実施例1の蒸着材料と同様に非常に低い値を示した。得られた蒸着材料について、実施例1と同様にスプラッシュ現象及びガスバリア特性について評価したところ、実施例1と同様の良好な結果を示した。
【0050】
【発明の効果】
本発明の蒸着材料によれば、生産性向上のために高い出力レベルの電子ビーム加熱蒸着法を利用した場合でもスプラッシュ現象の発生を抑制でき、低コストでガスバリア性包装材料を製造することができる。

Claims (4)

  1. 金属ケイ素及びケイ素酸化物を含有する多孔質蒸着材料において、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量が1重量%以下であり、密封気孔率が10%以下であり、嵩密度が真密度の30〜70%でありケイ素と酸素との原子比(Si/O)が0.83以上であり、且つ該ケイ素酸化物が二酸化ケイ素であり、その二酸化ケイ素の20%はX線的に石英型の結晶構造を有していることを特徴とする多孔質蒸着材料。
  2. 最大気孔径が1mm以下である請求項1記載の多孔質蒸着材料。
  3. ケイ素と酸素との原子比(Si/O)が1/0.5〜1/1.2である請求項1又は2記載の多孔質蒸着材料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質蒸着材料を用いて、高分子フィルム上に真空蒸着法によりガスバリア性蒸着膜を設けることを特徴とするガスバリア性包装材料の製造方法。
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