JP3741709B1 - Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法 - Google Patents

Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、ウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(低融点)を両立させるとともに、微摺動摩耗等の不都合を伴うことなく薄くかつ均一な厚みを有するSn合金薄膜を形成する方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明は、基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法であって、この方法は、該基材をめっき浴に浸漬し、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を該基材上の全面または部分に電気めっきにより形成するものであり、このめっき浴は、少なくともSn化合物と、Ag化合物と、Cu化合物と、無機系キレート剤と、有機系キレート剤とを含み、該無機系キレート剤は、該Ag化合物1質量部に対して1質量部以上300質量部以下の比率で配合され、該有機系キレート剤は、該Cu化合物1質量部に対して1質量部以上200質量部以下の比率で配合されることを特徴とするものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法に関する。より詳細には、電気、電子製品や半導体製品あるいは自動車等において広く接続を目的として用いられている端子(たとえばコネクタ、リレー、スライドスイッチ、はんだ付端子等)等の物品に極めて有用に利用することができるSn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成方法に関する。
半導体製品、電気製品、電子製品、太陽電池、自動車等の各種製品において、電気を導通させる手段としては、導電性基体からなる端子を用いてはんだ付や接触を行なう方法を挙げることができる。
このような端子は、通常、導電性基体の表面に対してはんだ付性を改善したり耐食性を改善することを目的として、Au、Ag、Pd、Cu、Ni、In、SnおよびSn−Pb合金等の金属でその表面を被覆することが行なわれている(たとえば特許文献1)。これらの金属の中でも、コスト等を考慮するとSnおよびSn−Pb合金を使用することが最も一般的であり、またその被覆方法としては電気めっき法を採用することが多い。
しかし、Snを単独で電気めっきした場合、そのように被覆された薄膜中において巨大な柱状の結晶が発生し、これが原因となってウィスカの発生が助長されていた。ウィスカが発生すると電気的短絡の原因となるため、その発生を防止することが要求される。
このようなウィスカの発生を防止する一つの手段として、従来、Snを合金化すること、すなわちSn−Pb合金等の使用が試みられてきたが、Pbは周知の通り有毒金属であるため、環境的配慮からその使用が制限されている。また、Sn−Pb合金は、自動車等の振動の多い製品に使用されると、表面が擦れて酸化されることにより接触抵抗が高くなる所謂微摺動摩耗という好ましくない現象が発生することがあった。
そこで、Sn−Pb合金に代わる種々のSn系合金を電気めっきにより形成する方法の開発やこれらをSn単独めっき層と組み合わせて使用することが試みられている(特許文献2、3)。たとえば、Sn−Cu合金は、Sn99.3質量%、Cu0.7質量%において融点が最小(227℃)となり、良好なはんだ付性を示すが、Cuの含有量が少ないため、ウィスカ(柱状結晶)の発生を有効に防止することができない。これに対して、Cuの含有量を増加させると、融点が急激に上昇するためはんだ付性が悪化することになる。
なお、上記のような端子を単に接着することのみを目的として、Sn系合金をはんだディップやクリームはんだ等の溶融はんだとして用いることがあり、このようなSn系合金として、Sn、Ag、Cuからなる合金を用いる場合がある(特許文献4)。
しかし、このような用いられ方をするSn系合金は、Sn、Ag、Cuの各金属(またはこれらの各金属を溶融混合して得られるインゴット)を単に熱溶融(溶融はんだ)することによって接着作用を示すものに過ぎず、その塗布厚を制御することができないことから該基材上において100μm以下の薄い厚みの薄膜を均一にコートすることはできなかった。
このように薄い厚みの薄膜を均一にコートできなければ外観性状の安定性に欠けるばかりではなく、電気的短絡の原因ともなる。しかも、ピンホール等が容易に発生し、耐食性を悪化させることになる。
一方、上記のような問題点を解決する試みとして、錫−銀−銅3元系合金めっきを施したコネクタなどの端子に関する提案がなされている(特許文献5)。しかし、この提案に開示された方法は、めっき浴中に特定のイオウ化合物を含有することを特徴とするものであり、これにより該めっき浴中の銅化合物のスズ電極への析出を防止しようとするものである。しかしながら、該めっき浴中の銅化合物の濃度を高くするためにはイオウ化合物の濃度も高くする必要があり、これにより該めっき浴の各成分のバランスが崩れる可能性がある。このため、めっき浴中で高濃度の銅化合物を用いることができず、錫−銀−銅3元系合金めっき膜中の銅濃度を上げることができないことから低い融点のめっき薄膜を得ることができないという問題点があった。
また、水溶性錫塩および水溶性銅塩とともに水溶性銀塩を用いる錫−銀−銅3元系合金めっきについても提案されている(特許文献6)。しかし、この提案においても、チオアミド化合物やチオール化合物等のイオウ化合物が用いられており、上記同様低い融点のめっき薄膜を得ることができないという問題があった。
特開平1−298617号公報 特開平10−229152号公報 特開2003−342784号公報 特開平5−50286号公報 特開2001−164396号公報 特開2001−26898号公報
本発明は、上述のような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(低融点)を両立させるとともに、微摺動摩耗等の不都合を伴うことなく薄くかつ均一な厚みを有するSn合金薄膜を形成する方法を提供することにある。
本発明は、基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法であって、この方法は、該基材をめっき浴に浸漬し、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を該基材上の全面または部分に電気めっきにより形成するものであり、このめっき浴は、少なくともSn化合物と、Ag化合物と、Cu化合物と、無機系キレート剤と、有機系キレート剤とを含み、該無機系キレート剤は、該Ag化合物1質量部に対して1質量部以上300質量部以下の比率で配合され、該有機系キレート剤は、該Cu化合物1質量部に対して1質量部以上200質量部以下の比率で配合されることを特徴とするものである。
ここで、上記Sn化合物、Ag化合物およびCu化合物は、それぞれ共通の陰イオンを対イオンとして含有する可溶性塩であることが好ましい。また、上記無機系キレート剤は、ポリリン酸キレート剤または以下の化学式(I)で表される金属フルオロ錯体系キレート剤のいずれかであることが好ましい。
MFX (X-Y)-・・・(I)
上記化学式(I)中、Mは任意の金属を示し、Xは任意の自然数を示し、YはMの酸化数を示す。
上記ポリリン酸キレート剤は、ポリリン酸と、Na、K、Mg、AlまたはMnのいずれか1以上の金属との塩とすることができ、上記金属フルオロ錯体系キレート剤は、TiF6 2-またはSiF6 2-のいずれかとすることができる。
また、上記有機系キレート剤は、3以上のカルボキシル基と1以上の窒素原子とを少なくとも含む分子量190以上の化合物、ジピバロイルメタン、フタロシアニン類、または以下の化学式(II)で表される化合物のいずれかであることが好ましい。
R−(CH2CH2O)n−A・・・(II)
上記化学式(II)中、Rは炭素数8〜30のアルキル基を示し、AはCH2COONaまたはCH2SO4Naを示し、nは自然数を示す。
また、上記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜は、Snが70〜99.8質量%、Agが0.1〜15質量%、Cuが0.1〜15質量%の比率で構成され、その融点が200〜240℃であり、Sn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態で形成されるものとすることができる。
また、上記基材は、導電性基体とすることができ、導電性基体上の全面または部分にSn層を形成したものとすることもできる。また、上記めっき浴において、陽極として不溶性極板を用いることができる。
また、本発明の物品は、基材上に、上記の方法によりSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成したものとすることができ、該物品は、コネクタ、リレー、スライドスイッチ、抵抗、コンデンサ、コイルまたは基板のいずれかとすることができる。
本発明は、上記のような構成を採用したことにより、ウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(低融点)を両立させるとともに、鉛を含有しないことから微摺動摩耗等の不都合を伴うこともなく、かつその厚みを薄くかつ均一なものしたSn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成を可能としたものである。
<Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成方法>
本発明は、基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法であって、この方法は、該基材をめっき浴に浸漬し、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を該基材上の全面または部分に電気めっきにより形成するものである。以下、具体的な形成方法の説明をするに際して、まずSn−Ag−Cu三元合金薄膜について説明する。
<Sn−Ag−Cu三元合金薄膜>
本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、極微量の不可避不純物の混入を除き、Sn、AgおよびCuの3種の金属のみにより構成されるものである。特に好ましくは、Snが70〜99.8質量%、Agが0.1〜15質量%、Cuが0.1〜15質量%の比率で構成され、その融点が200〜240℃であり、Sn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態で形成されたものとすることが好適である。このような構成のSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、ウィスカを発生することがなく、かつ良好な低融点を示すものであり、また鉛を含有しないことから微摺動摩耗等の不都合を伴うこともなく、かつ厚みが薄く均一なものであるが、このような優れた特性は本発明の形成方法によって初めてもたらされるものである。
ここで、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜において、Snの配合比率は、より好ましくはその上限が97質量%、さらに好ましくは95質量%であり、その下限が80質量%、さらに好ましくは90質量%である。Snの配合比率が70質量%未満の場合には、融点が高くなりすぎ、良好なはんだ付性(低融点)を示さなくなる場合がある。また、Snの配合比率が99.8質量%を超えると、ウィスカの発生が顕著となる。
また、Agの配合比率は、より好ましくはその上限が12質量%、さらに好ましくは8質量%であり、その下限が0.5質量%、さらに好ましくは1質量%である。Agの配合比率が0.1質量%未満の場合には、ウィスカの発生が顕著となる。また、Agの配合比率が15質量%を超えると、融点が高くなりすぎ、良好なはんだ付性を示さなくなる場合がある。
また、Cuの配合比率は、より好ましくはその上限が12質量%、さらに好ましくは8質量%であり、その下限が0.5質量%、さらに好ましくは1質量%である。Cuの配合比率が0.1質量%未満の場合には、ウィスカの発生が顕著となる。また、Cuの配合比率が15質量%を超えると、融点が高くなりすぎ、良好なはんだ付性を示さなくなる場合がある。
そして、このようなSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、上記のような配合比率を有することにより、その融点が200〜240℃となるものが好ましく、より好ましくはその上限が235℃、さらに好ましくは230℃、その下限が205℃、さらに好ましくは210℃である。このような範囲の融点を示すことにより、良好なはんだ付性が示される。
さらにこのようなSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、電気めっきにより形成されるものであるため、厚みを薄くかつ均一なものとすることができるとともに、その硬度を自由に制御することができる。したがって、このようなSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、0.1〜100μmの厚みで形成することが好ましく、より好ましくはその上限を12μm、さらに好ましくは8μm、その下限を0.5μm、さらに好ましくは1.5μmとすることが好適である。
また、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、Sn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態となり、このような微小な粒状の結晶状態は電気めっき以外の方法では形成することができないものである。
しかも、該薄膜が本願のように微小な粒状の結晶状態で形成されると、結晶粒子間の空隙に存在する各種添加剤が結晶粒子に対する不純物として作用し、はんだ付時において結晶粒子固有の融点よりも低い温度で溶融することによって、はんだ付性が飛躍的に向上することになる。
なお、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜がSn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態で形成されるとは、Sn単独で薄膜を形成した場合に生じるような、その薄膜の厚さと同様の厚み(長さ)を有する柱状結晶や巨大結晶に比し、その粒子径が小さい粒状の状態で形成されることをいい、その粒子径は0.01〜10μm、より好ましくはその上限が5μm、さらに好ましくは3μm、その下限が0.1μm、さらに好ましくは0.5μmである。
<めっき浴>
上記のような優れた特性を有するSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、以下のような構成を有するめっき浴(媒体として水を含む)に基材(被めっき材)を浸漬して電気めっきすることにより形成することができる。
すなわち、本発明のめっき浴は、少なくともSn化合物と、Ag化合物と、Cu化合物と、無機系キレート剤と、有機系キレート剤とを含み、該無機系キレート剤は、該Ag化合物1質量部に対して1質量部以上300質量部以下の比率で配合され、該有機系キレート剤は、該Cu化合物1質量部に対して1質量部以上200質量部以下の比率で配合されることを特徴とするものである。
ここで、上記Sn化合物とは、少なくともSnを含む化合物であって、たとえば酸化第1スズ、硫酸第1スズ、各種有機酸のスズ塩等を挙げることができる。上記Ag化合物とは、少なくともAgを含む化合物であって、たとえば酸化銀、各種有機酸の銀塩等を挙げることができる。上記Cu化合物とは、少なくともCuを含む化合物であって、たとえば硫酸銅、塩化銅、各種有機酸の銅塩等を挙げることができる。
このようなSn化合物、Ag化合物およびCu化合物は、それぞれ共通の陰イオンを対イオンとして含有する可溶性塩であることが特に好ましい。これにより、無機系キレート剤および有機系キレート剤との併用と相俟って、めっき浴からAgおよびCuの分離析出を極めて有効に防止することができる。たとえばそのような陰イオンとしては、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、塩化物イオン、フッ化水素酸イオン等の無機酸に由来する陰イオンや、メタンスルホン酸アニオンやエタンスルホン酸アニオンのように、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、アルカノールスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、フタル酸、シュウ酸、アジピン酸、乳酸、クエン酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸に由来する陰イオンを挙げることができる。
そして本発明のめっき浴は、これらのSn化合物、Ag化合物およびCu化合物とともに、さらに無機系キレート剤と有機系キレート剤とを含むことを特徴とするものである。従来、Sn、Ag、Cuという複数の金属の化合物(塩)を含むめっき浴においては、いずれかの金属、特にAgやCuが容易に分離析出し、かつ各金属の基材への析出速度にも差があるため所望の組成のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を得ることを非常に困難なものとしていた。特にめっき浴にAgやCuが高濃度で含まれている場合にその傾向が強く、このためSn−Ag−Cu三元合金薄膜においてAgおよびCuを高濃度で含有することによりウィスカの発生防止と低融点の実現という効果を得ることを困難なものとしていた。
本発明は、正しくこの問題点を解決するものであり、無機系キレート剤と有機系キレート剤とを併用することによってめっき浴からAgおよびCuが分離析出するのを極めて有効に防止するとともに、各金属の基材への析出速度を調節することを可能としたものである。すなわち、本発明者の研究により、Agの分離析出と、Cuの分離析出とを有効に防止するキレート剤の種類が異なるのではないかという知見が得られ、さらに研究を重ねることにより、無機系キレート剤がAgの分離析出に対して特に有効に作用し、また有機系キレート剤がCuの分離析出に対して特に有効に作用することが明らかとなった。また、それとともに、これらの無機系キレート剤と有機系キレート剤とを併用することにより各金属の基材への析出速度を調節できることが明らかとなった。
しかも、この無機系キレート剤を、該Ag化合物1質量部に対して1質量部以上300質量部以下の比率で配合し、かつ有機系キレート剤を、該Cu化合物1質量部に対して1質量部以上200質量部以下の比率で配合する場合に定常的にAgおよびCuの分離析出を有効に防止できることが明らかとなり、各金属の基材への析出速度を有効に調節できることが明らかとなった。無機系キレート剤の上記比率が1質量部未満の場合にはAgが分離析出し、その比率が300質量部を超えるとめっき浴自体のバランスが崩れ有機系キレート剤等を凝集析出することになる。一方、有機系キレート剤の上記比率が1質量部未満の場合にはCuが分離析出し、その比率が200質量部を超えるとめっき浴自体のバランスが崩れ無機系キレート剤等を凝集析出することになる。
無機系キレート剤のAg化合物に対する比率は、好ましくはその上限が200質量部、より好ましくは150質量部、その下限が3質量部、より好ましくは4質量部である。また、有機系キレート剤のCu化合物に対する比率は、好ましくはその上限が150質量部、より好ましくは130質量部、その下限が2質量部、より好ましくは3質量部である。
ここで、このような無機系キレート剤とは、無機化合物からなるキレート剤であり、たとえばポリリン酸キレート剤または以下の化学式(I)で表される金属フルオロ錯体系キレート剤を挙げることができる。
MFX (X-Y)-・・・(I)
上記化学式(I)中、Mは任意の金属を示し、Xは任意の自然数を示し、YはMの酸化数を示す。
そして、より具体的には、上記ポリリン酸キレート剤としては、ポリリン酸と、Na、K、Mg、AlまたはMnのいずれか1以上の金属との塩を挙げることができる。また、上記ポリリン酸としては、広義のポリリン酸(重合(縮合)リン酸)をはじめ、ピロリン酸、トリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸などのように各種金属と酸素によって二座配位子ないし三座配位子等としてキレーションするものが挙げられる。
また、上記化学式(I)で表される金属フルオロ錯体系キレート剤としては、MがTiやSi等の金属であり、Xが6であるものが挙げられるが、それらがクラスター化したものも含まれる。より具体的にはTiF6 2-(Tiの酸化数は4)またはSiF6 2-(Siの酸化数は4)、およびそれらのクラスター化したもの等を挙げることができる。このように該キレート剤がクラスター化している場合であっても、本願では上記化学式(I)で表すものとする。なお、このような金属フルオロ錯体系キレート剤を用いる場合は、遊離のフッ化物イオンを安定な錯イオンとするため、フッ化物イオン捕捉剤として、たとえば硼酸を添加剤として併用することが好ましい。
また有機系キレート剤とは、有機化合物からなるキレート剤であり、たとえば3以上のカルボキシル基(塩の状態となっているものも含む)と1以上の窒素原子とを少なくとも含む分子量190以上の化合物、ジピバロイルメタン(2、2、6、6−テトラメチル−3、5−ヘプタンジオン)、フタロシアニン類、または以下の化学式(II)で表される化合物を挙げることができる。
R−(CH2CH2O)n−A・・・(II)
上記化学式(II)中、Rは炭素数8〜30のアルキル基を示し、AはCH2COONaまたはCH2SO4Naを示し、nは自然数を示す。
そして、より具体的には、3以上のカルボキシル基と1以上の窒素原子とを少なくとも含む分子量190以上の化合物としては、たとえばニトリロ三酢酸(C69NO6)、エチレンジアミン四酢酸(C101628)、ジエチレントリアミン五酢酸(C1423310)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(C101827)等を挙げることができる。なお、該化合物において分子量の上限は特に限定されるものではないが、好ましくは1500以下とすることが好適である。分子量が1500を超えると、キレート剤自身がめっき浴から分離析出する場合があるからである。
また、フタロシアニン類とは、所謂フタロシアニン骨格を分子中に有する化合物であり、各種誘導体も含まれる。該化合物中の中心金属の種類は特に限定されるものではないが(この点、中心金属を有さず水素が結合しているものも含まれる)、好ましくはNa(ナトリウムフタロシアニン)またはCu(銅フタロシアニン)等が挙げられる。
また、上記化学式(II)で表される化合物としては、好ましくはRが炭素数12〜18のアルキル基であり、AがCH2COONaまたはCH2SO4Naであり、nが1〜10の自然数であるものを挙げることができる。より具体的には、Rがラウリル基であり、AがCH2COONaであり、nが3である化合物を挙げることができる。
上記のような無機系キレート剤および有機系キレート剤は、各々単独で用いることができるとともに、2以上のものを組み合せて用いることもできる。なお、上記に挙げた無機系キレート剤および有機系キレート剤は、通常のキレーション効果を示すものばかりではなく、目的金属を取り囲みクラスター化することにより安定化を示すような効果を有するものも含まれる。
上記に例示したような無機系キレート剤と有機系キレート剤とを併用すれば、無機系キレート剤に含まれる金属が触媒的に作用して有機系キレート剤に含まれる脂肪族基等を重合化することがなく、以って高分子量化された有機系キレート剤がめっき浴から析出するという不都合を防止することができるため極めて好適である。
なお、本発明のめっき浴は、上記の各化合物の他、各種添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、従来公知の任意の添加剤を特に限定することなく用いることができ、たとえば、無機酸、有機酸(これらの無機酸、有機酸としては、解離して上記Sn化合物、Ag化合物、Cu化合物に含まれる陰イオンと同一の陰イオンを放出するものが好ましい)、ポリエチレングリコール、ポリオキシアルキレンナフトール、芳香族カルボニル化合物、芳香族スルホン酸、にかわ、硼酸等を挙げることができる。
<極板>
上記めっき浴において、陽極としてはSn、Sn合金または不溶性極板を用いることが好ましく、中でも不溶性極板を用いることが特に好ましい。不溶性極板を用いることにより、上述の無機系キレート剤および有機系キレート剤の併用と相俟って、めっき浴からのAgおよびCuの分離析出、特に陽極への置換現象を極めて有効に防止することができるからである。したがって、めっき浴中におけるAg化合物およびCu化合物を高濃度で含有することが可能となり、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜におけるAgおよびCuの含有比率を高めることができ、以ってウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(低融点)とを極めて有効に両立させることができる。
ここで、不溶性極板とは、Tiからなる電極の表面を、たとえばPt、Ir、Ru、Rh、またはこれらのいずれか2以上によりコートしたものをいう。これらの中でもTiからなる電極の表面にPtをコートしたものを用いることにより、上記置換現象をより有効に防止することができるため特に好適な例とすることができる。
<基材>
本発明の基材は、被めっき材となるものであるが、その種類は特に限定されない。電気めっきにより、その全面または部分に上記のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することができるものであれば、いかなるものも用いることができる。このような基材としては、好ましくは導電性基体を挙げることができる。
このような導電性基体は、電気、電子製品や半導体製品あるいは自動車等の用途に用いられる従来公知の導電性基体であればいずれのものであっても用いることができる。たとえば、銅(Cu)、リン青銅、黄銅、ベリリウム銅、チタン銅、洋白(Cu、Ni、Zn)等の銅合金系素材、鉄(Fe)、Fe−Ni合金、ステンレス鋼等の鉄合金系素材、その他ニッケル系素材等の金属を少なくとも表面に有するものであれば、いずれのものであっても本発明の導電性基体に含まれる。したがって、たとえば各種基板上の銅パターン等も含まれる。このように、本発明の基材として用いられる導電性基体としては、各種の金属、またはポリマーフィルムやセラミック等からなる絶縁性基体上に金属層(すなわち各種の回路パターン)が形成されているもの等を好適な例として挙げることができる。なお、このような導電性基体の形状は、たとえばテープ状のものなど平面的なものに限らず、プレス成型品のような立体的なものも含まれ、その他いずれのような形状のものであっても差し支えない。
さらに本発明の好適な基材としては、上記のような導電性基体上の全面または部分にSn層を形成したものを挙げることができる。このような基材を用いる場合、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜は少なくともこのSn層上の全面または部分に形成されることになる。
このように導電性基体上の全面または部分にSn層を形成した基材を用いると、コストを低く抑えつつ、ウィスカの発生防止と低融点の実現という観点から導電性基体上に直接本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する場合と同様の効果が得られるというメリットを有する。これは、本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成に使用されるSn化合物、Ag化合物およびCu化合物が比較的高価なことから、このような化合物の使用量を大幅に低減することができるからである。したがって、特に面積の大きな箇所にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する必要がある場合や、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みを厚く形成する必要がある場合にこのようなSn層が形成された基材を用いると有利である。
なお、このようなSn層は、電気めっきにより導電性基体上に形成することが好ましく、特にSnを陽極として電気めっきすることがコスト的に有利である。このようなSn層は、通常導電性基体上に0.1〜80μmの厚みをもって形成することができる。
<具体的形成方法>
本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成方法は、上記基材をめっき浴に浸漬し、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を該基材上の全面または部分に電気めっきにより形成するものである。なお、本発明の形成方法は、この電気めっき工程以外にも、前処理工程や下地層形成工程等を含むことができる。以下、より具体的に説明する。
<前処理工程>
まず、本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成方法においては、上記基材の全面または部分に、電気めっきすることにより上記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する工程に先立ち、該基材を前処理する前処理工程を含むことができる。
この前処理工程は、上記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜が密着性高くしかもピンホールの発生なく安定に形成されることを目的として行なわれるものである。該基材が、リン青銅等の金属を圧延したようなものである場合に、この前処理工程は特に有効となる。
すなわち、このような前処理工程は、少なくとも上記基材のSn−Ag−Cu三元合金薄膜が形成される部分に対してpH5以下の酸を作用させること(酸処理)により行なうことができる。さらに本発明の前処理工程は、水溶液に上記基材を浸漬する第1の洗浄処理と、水溶液中で上記基材を電解する第2の洗浄処理と、pH5以下の酸を上記基材に作用させる酸処理と、を含むことが好ましい。
より具体的には、まず水溶液を充填した槽に上記基材を浸漬させることにより第1の洗浄処理を行ない、数回水洗を繰り返す。
ここで、第1の洗浄処理における水溶液のpHは、0.01以上とすることが好ましく、より好ましくは、pHが9以上のアルカリ性で処理することが好適である。さらにそのpHの範囲を特定すると、その上限を13.8、さらに好ましくは13.5、一方そのpHの下限は9.5、さらに好ましくは10である。pHが0.01未満になったり、pHが13.8を超えると、基材表面が過度に粗化または劣化されるため好ましくない。
なお、上記pHの範囲となる限り、使用するアルカリは特に限定されず、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、キレート剤、界面活性剤等広範囲のものが使用できる。また、第1の洗浄処理における水溶液の温度は、20〜90℃、好ましくは40〜60℃である。
続いて、上記基材を電極として水溶液中で電解する第2の洗浄処理を行ない、再度数回の水洗を繰り返す。これにより、上記基材表面においてガスが発生し、このガスによる酸化還元作用とガスの気泡による物理的作用により基材表面の汚染がさらに効率良く除去されることになる。
ここで、第2の洗浄処理における水溶液のpHは、0.01以上とすることが好ましく、より好ましくは、pHが9以上のアルカリ性で処理することが好適である。さらにそのpHの範囲を特定すると、その上限を13.8、さらに好ましくは13.5、一方そのpHの下限は9.5、さらに好ましくは10である。pHが0.01未満になったり、pHが13.8を超えると、基材表面が過度に粗化または劣化されるため好ましくない。
なお、上記pHの範囲となる限り、使用するアルカリは特に限定されず、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、キレート剤、界面活性剤等広範囲のものが使用できる。
また、上記電解の条件としては、液温20〜90℃、好ましくは30〜60℃、電流密度0.1〜20A/dm、好ましくは2〜8A/dm、電解時間0.1〜5分間、好ましくは0.5〜2分間とすることができる。また、基材は、陽極としても陰極としてもどちらでもよく、処理中に陽極と陰極とを順次切り替えることもできる。
その後、硫酸、塩酸、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の酸を含有した槽に該基材を浸漬させ、該基材の表面に対して酸を作用させることにより酸処理(活性化処理)を行なうことができる。
ここで、酸のpHは、6以下とすることが好ましく、より好ましくは、そのpHの上限を4.5、さらに好ましくは3、一方そのpHの下限は0.001、さらに好ましくは0.1である。pHが6を超えると、十分な活性化処理を行なうことができず、またpHが0.001未満になると、基材表面が過度に粗化または劣化されるため好ましくない。
また、前記酸を含有した槽に該基材を浸漬させる浸漬時間は、0.1〜10分間とすることが好ましく、より好ましくは、その上限を5分間、さらに好ましくは3分間、一方その下限は0.5分間、さらに好ましくは1分間である。浸漬時間が0.1分間未満となる場合は、十分な活性化処理を行なうことができず、また10分間を超えると、基材表面が過度に粗化または劣化されるため好ましくない。
なお、該基材がポリマーフィルム上に銅または銅合金からなる銅層を回路状に形成させたものである場合は、上記のような第1および第2の洗浄処理を行なうことなく、酸による処理(酸処理)のみを行なうようにすることもできる。アルカリによる洗浄処理によりポリマーフィルムが劣化するのを防止するためである。なお、この場合にも酸による処理(酸処理)は上記と同様の条件を採用することができる。
このように、基材の表面に対して前処理を行なうことにより、上記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜をピンホールの発生なく均一かつ強力な密着力をもって基材上に形成させることが可能となる。
<下地層形成工程>
本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜の形成方法においては、上記の前処理工程に続いて下地層形成工程を実施することができる。このような下地層形成工程は、基材がたとえばSUSや鉄である場合のようにSn−Ag−Cu三元合金薄膜と密着しにくい素材の場合に有効となる。本発明においては、このように下地層が形成されている場合であっても、基材上の全面または部分にSn−Ag−Cu三元合金薄膜が形成されているという表現をとるものとし、この点該下地層が金属で構成されている限り該下地層は基材自体と解することもできる。
このような下地層としては、たとえば基材がSUSである場合、Niを0.1〜5μm、好ましくは0.5〜3μmの厚みで電気めっきすることにより形成することができる。また、基材が黄銅である場合には、上記と同じ程度の厚みでNiまたはCuを電気めっきすることにより下地層を形成することができる。
このような下地層の形成は、特に基材が黄銅である場合に該黄銅に含まれているZnがSn−Ag−Cu三元合金薄膜に拡散し、はんだ付性を阻害するのを防止するのに効果的である。
<Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する工程>
基材の全面または部分に対して、直接または上記のような前処理工程および/または下地層形成工程を経た後、電気めっきすることによりSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することができる。
ここで、上記電気めっきの条件としては、めっき浴(Sn化合物を50〜450g/l、好ましくは150〜350g/l、Ag化合物を0.1〜100g/l、好ましくは1〜50g/l、Cu化合物を0.1〜100g/l、好ましくは1〜50g/l、無機系キレート剤を10〜500g/l、好ましくは100〜300g/l、有機系キレート剤を10〜500g/l、好ましくは100〜300g/l、その他の添加剤を含むもの)を用いて、液温10〜80℃、好ましくは20〜40℃、電流密度0.1〜30A/dm、好ましくは2〜25A/dmとすることができる。そして、上記めっき浴においては、陽極としてSn、Sn合金または不溶性極板を用いることが好ましく、中でも不溶性極板を用いることが特に好ましい。
なお、上記の電気めっきを実施するのに使用されるめっき装置としては、特に限られるものではないが、たとえばバレルめっき装置、引掛けめっき装置または連続めっき装置のいずれかを用いることにより実施することが好ましい。これらの装置を用いることにより本発明のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を極めて効率良く製造することができる。
ここで、バレルめっき装置とは、被めっき材を一個づつ個別にめっきする装置であり、連続めっき装置とは、一度に複数個の被めっき材を連続的にめっきする装置であり、また引掛けめっき装置とは、前二者の中間に位置するものであり中規模の製造効率を持った装置である。これらの装置は、めっき業界において良く知られた装置であり、構造自体も公知のものである限りいずれのものも使用することができる。
<物品>
本発明の物品は、基材上に、上記の方法によりSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成したものとすることができ、該物品は、コネクタ、リレー、スライドスイッチ、抵抗、コンデンサ、コイルまたは基板のいずれかとすることができる。
このような物品は、それが部品や製品として目的とする機能を発揮できるように、たとえばはんだ付により電気的に導通するものや接触により電気的に導通するものが含まれる。またこのような物品は、高度な耐食性や外観性状の安定性が求められるような用途に好適に用いることができる。
さらにこのような物品には、回路基板の回路(配線部)、フレキシブル基板、バンプ、ビア等も含まれるとともに、フラットケーブル、電線、太陽電池のリード部等も含まれる。
本発明の物品は、たとえば、半導体製品、電気製品、電子製品、太陽電池、自動車等に極めて有効に利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
まず、基材として導電性基体である厚さ0.3mm、幅30mmに圧延加工したテープ状の形状のリン青銅を、コネクタの形状にプレス加工し、多数のコネクタ端子が連なった形状としたものを長さ100mにカットした後、リールに巻き取った。そして、このリールを連続めっき装置の送出しシャフトにセットした。
次いで、液温48℃の水酸化ナトリウムを含有する水溶液(エスクリーン30(奥野製薬工業製)を50g/l使用、pH12.5)を充填した上記連続めっき装置の浸漬浴に、上記基材を1分間連続的に浸漬させることにより、第1の洗浄処理を行なった。その後、数回の水洗を行なった。
続いて、上記連続めっき装置のpHをアルカリとした電解槽(水酸化ナトリウム水溶液としてNCラストール(奥野製薬工業製)を100g/l使用、pH13.2)において、上記の第1の洗浄処理を経た基材を陰極として、液温50℃、電流密度5A/dmの条件下1分間電解を行なうことにより第2の洗浄処理を行なった後、再度5回の水洗を繰り返した。
次いで、このように洗浄処理された基材を、pH0.5の硫酸が充填された液温30℃の活性化槽に1分間浸漬することにより、基材の表面に対して酸を作用させる酸による酸処理を行なった。その後水洗を3回繰り返した。
次に、上記の処理を経た基材に対して、Niからなる下地層を形成する下地層形成工程を実施した。すなわち、上記の連続めっき装置のめっき浴にNiめっき液(硫酸ニッケル240g/l、塩化ニッケル45g/l、硼酸40g/l含有)を充填し、液温55℃、pH3.8、電流密度4A/dmの条件下で5分間、電気めっきすることにより、Niからなる下地層を形成した。その後、水洗を3回行なった。
続いて、上記のように下地層を形成した基材に対して、電気めっきすることにより基材上(上記下地層上)の全面にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法を実行した。すなわち、下地層を形成した基材を陰極とし、陽極としてTiからなる電極の表面にPtをコートしたものを用い、そして上記の連続めっき装置のめっき浴にSn化合物(メタンスルホン酸Sn塩)250g/l、Ag化合物(メタンスルホン酸Ag塩)25g/l、Cu化合物(メタンスルホン酸Cu塩)8g/l、無機系キレート剤(トリリン酸ナトリウム(トリポリリン酸ナトリウム、Na5103))250g/l(上記Ag化合物1質量部に対して10質量部)、有機系キレート剤(エチレンジアミン四酢酸)80g/l(上記Cu化合物1質量部に対して10質量部)、添加剤(ポリエチレングリコール30cc/l、メタンスルホン酸100g/l)を充填し、液温31℃、pH0.5、電流密度10A/dmの条件下で2分間、電気めっきすることにより、基材上の全面にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。その後、水洗を4回行なった後、エアによる水切り後、70℃の熱風で2分間乾燥することにより、基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成したコネクタである本発明の物品を得た。
このようにして得られた物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB(Focused Ion Beam)装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Niからなる下地層の厚みは1.1μmであり、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みは3.4μmであった。しかも、そのSn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みは極めて均一なものであった。
また、EPMA(電子プローブマイクロアナライザ:Electron Probe Micro−Analyzer)を用いてSn−Ag−Cu三元合金薄膜の合金比率を測定したところ、薄膜中においてほぼ均一な比率であり、Sn93.4質量%、Ag5.1質量%、Cu1.5質量%であった。また、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜の融点は、227℃であり、良好なはんだ付性(低融点)を示すものであった。また、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、Sn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態(粒子径:1〜3μm)で形成されていた。
そして、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、高温高湿槽(60℃、湿度90%)で2000時間保持してもウィスカの発生は観察されなかった。すなわち、ウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(すなわち低融点)とを両立させたSn−Ag−Cu三元合金薄膜を得ることができた。
<実施例2〜10>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴に代えて、以下の表1に記載した配合のめっき浴を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した本発明の物品(実施例2〜10)を得た。なお、表1において無機系キレート剤として挙げられているメタリン酸アルミニウム、メタリン酸マンガン、メタリン酸マグネシウムは、各々AlO93、MnO93、Mg382で表される化合物を示す。また、添加剤としては、それぞれさらに有機酸(解離して各実施例のSn化合物、Ag化合物、Cu化合物に含まれる陰イオンと同一の陰イオンを放出するもの)100g/lを含むが、表1ではその記載を省略している。
このようにして得られた各物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Niからなる下地層の厚みは各々1.1μmであり、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みは以下の表2に記載した通りのものであった。しかも、それらのSn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みはいずれのものも極めて均一なものであった。
また、EPMAを用いて各Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の合金比率を測定したところ、各薄膜中においてほぼ均一な比率であり、以下の表2に記載した通りの合金比率を有していた。また、各Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の融点は、表2に示した通り良好なはんだ付性を示すものであった。また、各Sn−Ag−Cu三元合金薄膜は、いずれのものもSn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態(粒子径:1〜3μm)で形成されていた。
そして、これらのSn−Ag−Cu三元合金薄膜はいずれも、高温高湿槽(60℃、湿度90%)で2000時間保持してもウィスカの発生は観察されなかった。すなわち、ウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(すなわち低融点)とを両立させたSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することができた。
Figure 0003741709
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<実施例11>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、無機系キレート剤のAg化合物1質量部に対する比率を1質量部、50質量部、100質量部、300質量部にそれぞれ変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
これらのいずれのめっき浴においても、めっき浴からAgおよびCuが分離析出したり、無機系キレート剤と有機系キレート剤との凝集が起こることもなく、基材上に実施例1同様のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することができた。
<実施例12>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、有機系キレート剤のCu化合物1質量部に対する比率を1質量部、50質量部、100質量部、200質量部にそれぞれ変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
これらのいずれのめっき浴においても、めっき浴からAgおよびCuが分離析出したり、無機系キレート剤と有機系キレート剤との凝集が起こることもなく、基材上に実施例1同様のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することができた。
<比較例1>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴に代えて、Cu化合物と有機系キレート剤とを含まないめっき浴(Sn化合物(メタンスルホン酸Sn塩)250g/l、Ag化合物(メタンスルホン酸Ag塩)25g/l、無機系キレート剤(トリリン酸ナトリウム(トリポリリン酸ナトリウム、Na5103))250g/l(上記Ag化合物1質量部に対して10質量部)、添加剤(ポリエチレングリコール30cc/l、メタンスルホン酸100g/l))を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag二元合金薄膜を形成した物品を得た。
このようにして得られた物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Niからなる下地層の厚みは1.1μmであり、Sn−Ag二元合金薄膜の厚みは3.5μmであった。
また、EPMAを用いてSn−Ag二元合金薄膜の合金比率を測定したところ、Sn96.5質量%、Ag3.5質量%であった。また、このSn−Ag二元合金薄膜の融点は、227℃であった。
このSn−Ag二元合金薄膜は、実施例1のSn−Ag−Cu三元合金薄膜と同じ融点を示したが、高温高湿槽(60℃、湿度90%)で2000時間保持したところウィスカ(5〜10μm)が発生した。すなわち、このような二元合金薄膜を基材上に形成した物品においては、ウィスカが発生し、以ってウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(すなわち低融点)とを両立させることができなかった。
<比較例2>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴に代えて、Ag化合物と無機系キレート剤とを含まないめっき浴(Sn化合物(メタンスルホン酸Sn塩)250g/l、Cu化合物(メタンスルホン酸Cu塩)8g/l、有機系キレート剤(エチレンジアミン四酢酸)80g/l(上記Cu化合物1質量部に対して10質量部)、添加剤(ポリエチレングリコール30cc/l、メタンスルホン酸100g/l))を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Cu二元合金薄膜を形成した物品を得た。
このようにして得られた物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Niからなる下地層の厚みは1.1μmであり、Sn−Cu二元合金薄膜の厚みは3.5μmであった。
また、EPMAを用いてSn−Cu二元合金薄膜の合金比率を測定したところ、Sn99.3質量%、Cu0.7質量%であった。また、このSn−Cu二元合金薄膜の融点は、227℃であった。
このSn−Cu二元合金薄膜は、実施例1のSn−Ag−Cu三元合金薄膜と同じ融点を示したが、高温高湿槽(60℃、湿度90%)で300時間保持したところウィスカ(100〜500μm)が発生した。すなわち、このような二元合金薄膜を基材上に形成した物品においては、ウィスカが発生し、以ってウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(すなわち低融点)とを両立させることができなかった。
<比較例3>
実施例2で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴に代えて、Cu化合物と有機系キレート剤とを含まないめっき浴(Sn化合物(p−トルエンスルホン酸Sn塩)250g/l、Ag化合物(p−トルエンスルホン酸Ag塩)24g/l、無機系キレート剤(トリリン酸ナトリウム)240g/l(上記Ag化合物1質量部に対して10質量部)、添加剤(ポリエチレングリコール30cc/l、p−トルエンスルホン酸100g/l))を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag二元合金薄膜を形成した物品を得た。
このようにして得られた物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Niからなる下地層の厚みは1.1μmであり、Sn−Ag二元合金薄膜の厚みは3.5μmであった。
また、EPMAを用いてSn−Ag二元合金薄膜の合金比率を測定したところ、Sn93.6質量%、Ag6.4質量%であった。また、このSn−Ag二元合金薄膜の融点は、257℃であった。
このSn−Ag二元合金薄膜は、実施例2のSn−Ag−Cu三元合金薄膜とSnの含有率は同じであるにもかかわらず、その融点は30℃も高くなり、はんだ付け性に劣るものであった。
<比較例4>
実施例2で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴に代えて、Ag化合物と無機系キレート剤とを含まないめっき浴(Sn化合物(p−トルエンスルホン酸Sn塩)250g/l、Cu化合物(p−トルエンスルホン酸Cu塩)9g/l、有機系キレート剤(エチレンジアミン四酢酸)90g/l(上記Cu化合物1質量部に対して10質量部)、添加剤(ポリエチレングリコール30cc/l、p−トルエンスルホン酸100g/l))を用いることを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Cu二元合金薄膜を形成した物品を得た。
このようにして得られた物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Niからなる下地層の厚みは1.1μmであり、Sn−Cu二元合金薄膜の厚みは3.5μmであった。
また、EPMAを用いてSn−Cu二元合金薄膜の合金比率を測定したところ、Sn93.6質量%、Cu6.4質量%であった。また、この表面層の融点は、287℃であった。
このSn−Cu二元合金薄膜は、実施例2のSn−Ag−Cu三元合金薄膜とSnの含有率は同じであるにもかかわらず、その融点は60℃も高くなり、はんだ付け性に劣るものであった。また、このSn−Cu二元合金薄膜は、高温高湿槽(60℃、湿度90%)で2000時間保持したところウィスカ(100〜300μm)が発生した。
<比較例5>
実施例1で用いたのと同じ基材に対して、実施例1で形成したSn−Ag−Cu三元合金薄膜と同じ組成を有するSn−Ag−Cu三元合金のインゴットを溶融はんだし、基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、該Sn−Ag−Cu三元合金薄膜は、100μm以上の厚みを有し、しかもその厚みは極めて不均一なものであった。一方、そのSn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みを100μm以下にすると、多数のピンホールが発生し耐食性が劣ったものとなった。
<比較例6>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、無機系キレート剤を含まないことを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、このめっき浴においては、めっき浴からAgの分離析出が顕著に起こり、基材上に所望のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することはできなかった。
<比較例7>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、無機系キレート剤のAg化合物1質量部に対する比率を0.5質量部に変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、このめっき浴においては、めっき浴からAgの分離析出が起こり、基材上に所望のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することはできなかった。
<比較例8>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、無機系キレート剤のAg化合物1質量部に対する比率を400質量部に変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、このめっき浴においては、無機系キレート剤と有機系キレート剤との凝集が起こるとともに、AgおよびCuの分離析出が起こり、基材上に所望のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することはできなかった。
<比較例9>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、有機系キレート剤を含まないことを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、このめっき浴においては、めっき浴からCuの分離析出が顕著に起こり、基材上に所望のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することはできなかった。
<比較例10>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、有機系キレート剤のCu化合物1質量部に対する比率を0.5質量部に変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、このめっき浴においては、めっき浴からCuの分離析出が起こり、基材上に所望のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することはできなかった。
<比較例11>
実施例1で用いたSn−Ag−Cu三元合金薄膜形成用のめっき浴において、有機系キレート剤のCu化合物1質量部に対する比率を300質量部に変更することを除き、他は全て実施例1と同様にして基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。
しかし、このめっき浴においては、無機系キレート剤と有機系キレート剤との凝集が起こるとともに、AgおよびCuの分離析出が起こり、基材上に所望のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成することはできなかった。
<実施例13>
まず、基材として導電性基体である厚さ0.3mm、幅30mmに圧延加工したテープ状の形状の銅を、コネクタの形状にプレス加工し、多数のコネクタ端子が連なった形状としたものを長さ100mにカットした後、リールに巻き取った。そして、このリールを連続めっき装置の送出しシャフトにセットした。
次いで、液温48℃の水酸化ナトリウムを含有する水溶液(エスクリーン30(奥野製薬工業製)を50g/l使用、pH12.5)を充填した上記連続めっき装置の浸漬浴に、上記基材を1分間連続的に浸漬させることにより、第1の洗浄処理を行なった。その後、数回の水洗を行なった。
続いて、上記連続めっき装置のpHをアルカリとした電解槽(水酸化ナトリウム水溶液としてNCラストール(奥野製薬工業製)を100g/l使用、pH13.2)において、上記の第1の洗浄処理を経た基材を陰極として、液温50℃、電流密度5A/dmの条件下1分間電解を行なうことにより第2の洗浄処理を行なった後、再度5回の水洗を繰り返した。
次いで、このように洗浄処理された基材を、pH0.5の硫酸が充填された液温30℃の活性化槽に1分間浸漬することにより、導電性基体の表面に対して酸を作用させる酸による酸処理を行なった。その後水洗を3回繰り返した。
次に、上記の処理を経た基材に対して、電気めっきすることによりSnからなるSn層を形成するステップを実施した。すなわち、上記の処理を経た基材を上記の連続めっき装置のめっき浴に浸漬し、該基材自体を陰極とするとともに陽極としてSnを用い、そして該連続めっき装置のめっき浴にメタンスルホン酸Sn塩350g/l、添加剤(商品名:メタスSBS、ユケン工業(株)製)50cc/lを充填し、液温35℃、pH0.5、電流密度4A/dmの条件下で2分間、電気めっきすることにより、該導電性基体上にSn層を形成した基材を得た。
続いて、上記のようにSn層を形成した基材を引き続き上記連続めっき装置のめっき浴に浸漬し、電気めっきすることにより上記Sn層上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成するステップを実施した。すなわち、Sn層を形成した基材を陰極とし、陽極としてTiからなる電極の表面にPtをコートしたものを用い、そして上記の連続めっき装置のめっき浴にSn化合物(メタンスルホン酸Sn塩)260g/l、Ag化合物(メタンスルホン酸Ag塩)10g/l、Cu化合物(メタンスルホン酸Cu塩)2.5g/l、無機系キレート剤(トリリン酸ナトリウム(トリポリリン酸ナトリウム、Na5103))100g/l(上記Ag化合物1質量部に対して10質量部)、有機系キレート剤(エチレンジアミン四酢酸)25g/l(上記Cu化合物1質量部に対して10質量部)、添加剤(ポリエチレングリコール30cc/l、メタンスルホン酸100g/l)を充填し、液温30℃、pH0.5、電流密度4A/dmの条件下で0.5分間、電気めっきすることにより、Sn層上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した。その後、水洗を4回行なった後、エアによる水切り後、70℃の熱風で2分間乾燥することにより導電性基体上にSn層を形成した基材に対して、そのSn層上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成した本発明の物品を得た。
このようにして得られた物品について、端から10mの地点と90mの地点においてサンプリングを行ない、FIB装置を用いて断面をカットし厚みを測定したところ、Sn層の厚みは4μmであり、Sn−Ag−Cu三元合金薄膜の厚みは1μmであり、かつその厚みは均一なものであった。
また、EPMAを用いてSn−Ag−Cu三元合金薄膜の合金比率を測定したところ、薄膜中においてほぼ均一な比率であり、Sn96質量%、Ag3.6質量%、Cu0.4質量%という含有比率であった。また、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜の融点は、215℃であり、良好なはんだ付性を示すものであった。また、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、Sn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態(粒子径:1〜3μm)で形成されていた。
そして、このSn−Ag−Cu三元合金薄膜は、高温高湿槽(60℃、湿度90%)で2000時間保持してもウィスカの発生は観察されなかった。すなわち、ウィスカの発生防止と良好なはんだ付性(すなわち低融点)とを両立させたSn−Ag−Cu三元合金薄膜を得ることができた。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

Claims (11)

  1. 基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法であって、
    前記方法は、前記基材をめっき浴に浸漬し、前記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を前記基材上の全面または部分に電気めっきにより形成するものであり、
    前記めっき浴は、少なくともSn化合物と、Ag化合物と、Cu化合物と、無機系キレート剤と、有機系キレート剤とを含み、
    前記無機系キレート剤は、ポリリン酸キレート剤または以下の化学式(I)で表される金属フルオロ錯体系キレート剤のいずれかであり、前記Ag化合物1質量部に対して1質量部以上300質量部以下の比率で配合され、
    前記有機系キレート剤は、ジピバロイルメタンまたはフタロシアニン類のいずれかであり、前記Cu化合物1質量部に対して1質量部以上200質量部以下の比率で配合されることを特徴とするSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
    MFX (X-Y)-・・・(I)
    (上記式(I)中、Mは任意の金属を示し、Xは任意の自然数を示し、YはMの酸化数を示す。)
  2. 基材上にSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法であって、
    前記方法は、前記基材をめっき浴に浸漬し、前記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜を前記基材上の全面または部分に電気めっきにより形成するものであり、
    前記めっき浴は、少なくともSn化合物と、Ag化合物と、Cu化合物と、無機系キレート剤と、有機系キレート剤とを含み、
    前記無機系キレート剤は、以下の化学式(I)で表される金属フルオロ錯体系キレート剤であり、前記Ag化合物1質量部に対して1質量部以上300質量部以下の比率で配合され、
    前記有機系キレート剤は、以下の化学式(II)で表される化合物であり、前記Cu化合物1質量部に対して1質量部以上200質量部以下の比率で配合されることを特徴とするSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
    MFX (X-Y)-・・・(I)
    (上記式(I)中、Mは任意の金属を示し、Xは任意の自然数を示し、YはMの酸化数を示す。)
    R−(CH2CH2O)n−A・・・(II)
    (上記式(II)中、Rは炭素数8〜30のアルキル基を示し、AはCH2COONaまたはCH2SO4Naを示し、nは自然数を示す。)
  3. 前記Sn化合物、Ag化合物およびCu化合物は、それぞれ共通の陰イオンを対イオンとして含有する可溶性塩であることを特徴とする請求項1または2記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  4. 前記ポリリン酸キレート剤は、ポリリン酸と、Na、K、Mg、AlまたはMnのいずれか1以上の金属との塩である請求項1記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  5. 前記金属フルオロ錯体系キレート剤は、TiF6 2-またはSiF6 2-のいずれかである請求項1または2記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  6. 前記Sn−Ag−Cu三元合金薄膜は、Snが70〜99.8質量%、Agが0.1〜15質量%、Cuが0.1〜15質量%の比率で構成され、その融点が200〜240℃であり、Sn単独で形成される薄膜に比し微小な粒状の結晶状態で形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  7. 前記基材は、導電性基体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  8. 前記基材は、導電性基体上の全面または部分にSn層を形成したものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  9. 前記めっき浴において、陽極として不溶性極板を用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成する方法。
  10. 基材上に、請求項1〜9のいずれかに記載の方法によりSn−Ag−Cu三元合金薄膜を形成したことを特徴とする物品。
  11. 前記物品は、コネクタ、リレー、スライドスイッチ、抵抗、コンデンサ、コイルまたは基板のいずれかである請求項10記載の物品。
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